説明

旋光成分分析装置および旋光成分分析方法ならびに旋光度の温度特性または波長特性測定装置

【課題】 本発明は旋光性をもつ糖質、生体の組織、血液、分子などの検体に含まれる旋光物質の成分分析ができまた微侵襲または無侵襲で生体の旋光物質の成分分析ができる旋光成分分析装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 課題を解決するために本発明の旋光成分分析装置では、リング光干渉計のループ光路の途中に対向する偏光変換光学系セットを設け検体の温度または光源波長をN種類変化させN種類の旋光物質の濃度を計算によって求める方法を採用した。また偏光変換光学系の偏波面保存光ファイバの出射端をレンズの焦点距離から外すことによって生体内で散乱する散乱光を十分な信号対雑音比で受光するようにし無侵襲で血糖値を指定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は旋光成分分析装置および旋光成分分析方法ならびに旋光度の温度特性または波長特性測定装置に関し、例えば糖液、血液、生体のような旋光特性を有する物質の成分分析装置および旋光成分分析方法ならびに旋光度の温度特性または波長特性測定装置に関する。
【0002】
特に検体の旋光度の温度または波長特性を高精度に測定し解析することにより検体に含まれる旋光成分の濃度を分析することができる光方式の旋光成分分析装置および分析方法ならびに旋光度の温度特性または波長特性測定装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は旋光成分分析装置用の改善された部品を提供することができるものである。
【背景技術】
【0004】
従来の光方式の旋光測定方法は大別すると3つある。第1の方法は、特許文献1に記載があるような、指などの生体の一部に赤外レーザ光を照射し、血管や生体などからの散乱光を分光し血液や生体に含まれるグルコースを非侵襲に推定するものである。これはグルコース濃度に比例して散乱光が低減することを利用している。この方法は散乱光の光強度が皮膚の水分や油成分や温度に依存するという問題があるので現在あまり普及していない。
【0005】
第2の方式は、非特許文献1および特許文献2などに記載されているように、グルコースに直交する偏光成分を伝搬させて複屈折や直交偏光成分の減衰量の差をオープンループで計測するものである。しかしこの方法では健常者の血糖値レベルである0.1g(グラム)/dL(デシリットル)を長さが10mm程度のグルコース溶液の検体で測定すると誤差が20%程度と大きい。
【0006】
前記第1の方法と第2の方法は単一の旋光成分のみが含まれている検体についてさえその検出精度が低く実用化が困難であり、まして、複数種類の旋光成分が含まれている検体について各旋光成分の測定を期待することなど到底できないものであった。
【0007】
第3の方法は特許文献3に示す複屈折率測定装置で測定する方法である。この方法は干渉計のリングの中に対向する非相反の光学系を設け、検体をその内部においてその旋光度を非特許文献2に示す光ファイバジャイロの位相計測方法を利用して測定するものである。この方法では健常者の血糖値レベルである0.1g/dLと同等の濃度のグルコースを厚さ10mm程度の検体で十分な精度で測定することができる。しかしこの方法では検体に複数の旋光成分が含まれる場合には個別の旋光物質の濃度を分離して分析することができない。
【0008】
なお、前記第1の方法と第2の方法は単一の旋光成分のみが含まれている検体についてさえその検出精度が低く実用化が困難であり、まして、複数種類の旋光成分が含まれている検体について各旋光成分の測定を期待することなど到底できないものであった。すなわち従来の光方式の旋光特性測定方法では検体に複数の旋光物質が含まれる場合、各旋光物質の濃度を計測できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−313554号公報
【特許文献2】特開2007−093289号公報
【特許文献3】特開2005−274380号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】横田 正幸他、「鉛ガラスファイバ偏光変調器を用いたグルコースセンサー」 第31回光波センシング技術研究会LST31−8,PP.51−56,2003年8月
【非特許文献2】梶岡、於保、「光ファイバジャイロの開発」、第3回光波センシング技術研究会、LST3−9,PP.55−62,1989年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、糖溶液、血液、組織、分子などに含まれる旋光物質の成分を高精度に分析することができる旋光成分分析装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の一例として、例えば第1の発明(以下、発明1という)は、少なくとも、検体配置部に配置された検体の旋光度を測定する信号光の光路上に配置された、前記検体配置部を挟んで信号光のリング光干渉計のループ光路(以下、リング光路という)を形成するように配置された偏波面保存光ファイバと、前記検体配置部と、前記偏波面保存光ファイバと前記検体配置部の間に配置された偏光変換光学系を有する旋光度の温度特性または波長特性測定装置において、前記リング光路を伝搬する左右両回り信号光が前記偏波面保存光ファイバ内を同一の偏光状態で伝搬するとともに前記検体部分では互いに直交する偏光状態で伝搬するように構成されており、前記偏光変換光学系は偏光面回転素子として、偏光面回転素子の一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子を用いており、前記旋光度の温度特性または波長特性測定装置は前記検体に導かれる前記信号光の波長を変化させる波長変化手段と前記検体の温度を変化させる温度変化手段の少なくとも一方を有していることを特徴とする旋光度の温度または波長特性測定装置の発明である。
【0013】
発明1を展開してなされた本発明の他の例としての第2の発明(以下、発明2という)は、発明1に記載の旋光度の温度特性または波長特性測定装置において、光源から発せられた信号光をその光路に配置された第1のカプラと偏光子と第2のカプラに導き、前記第2のカプラで前記信号光を検体を挟んでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び該第2のカプラ、該偏光子に導き該第1のカプラで受光器に導き、前記リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムにおいて検体の温度または光源の波長のいずれか一方を変化させるかあるいはその両方を変化させることを特徴とする旋光度の温度または波長特性測定装置の発明である。
【0014】
課題を解決するためになされた本発明の他の例としての第3の発明(以下、発明3という)は、少なくとも、検体配置部に配置された検体の旋光度を測定する信号光の光路上に配置された、前記検体配置部を挟んで信号光のリング光干渉計のループ光路(以下、リング光路という)を形成するように配置された偏波面保存光ファイバと、前記検体配置部と、前記偏波面保存光ファイバと前記検体配置部の間に配置された偏光変換光学系を有する旋光成分分析装置において、前記リング光路を伝搬する左右両回り信号光が前記偏波面保存光ファイバ内を同一の偏光状態で伝搬するとともに前記検体部分では互いに直交する偏光状態で伝搬するように構成されており、前記偏光変換光学系は偏光面回転素子として、偏光面回転素子の一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子を用いており、前記旋光成分分析装置は前記検体に導かれる前記信号光の波長を変化させる波長変化手段と前記検体の温度を変化させる温度変化手段の少なくとも一方を有しており、信号光の波長変化と検体の温度変化の少なくとも一方による検体の位相差情報の変化の測定結果から検体に含まれる旋光性分の情報を求めることを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0015】
発明3を展開してなされた本発明の更に他の例としての第4の発明(以下、発明4という)は、発明3に記載の旋光成分分析装置において、光源から発せられた信号光をその光路に配置された第1のカプラと偏光子と第2のカプラに導き、前記第2のカプラで前記信号光を検体を挟んでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び該第2のカプラ、該偏光子を経て該第1のカプラで受光器に導き、検体の温度または光源の波長のいずれか一方を変化させるかあるいはその両方を変化させるて前記リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムを用いて検体の旋光成分を分析することを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0016】
発明3または4を展開してなされた本発明の他の例としての第5の発明(以下、発明5という)は、Nを整数として、請求項3または4に記載の旋光成分分析測定装置において、検体の温度または光源波長あるいはその両方をN通り変化させた場合の検体の旋光度を測定し、N元1次連立方程式を解くことによって検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求めることを特徴とする旋光成分分析測定装置の発明である。
【0017】
発明3〜5を展開してなされた本発明の更に他の例としての第6の発明(以下、発明6という)は、発明3〜5のいずれかに記載の旋光成分分析測定装置において、前記旋光成分分析測定装置は検体の温度または光源波長あるいはその両方の変化情報と、検体の旋光度変化と旋光成分と旋光成分濃度のうちの少なくとも1つとの対応関係を判断できる対応表を用いて検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求めることを特徴とする旋光成分分析測定装置の発明である。
【0018】
発明3〜6を展開してなされた本発明の他の例としての第7の発明(以下、発明7という)は、発明3〜6のいずれかに記載の旋光成分分析測定装置において、前記旋光成分分析測定装置は、光源から発せられた信号光を前記信号光の光路に配置された第1のカプラ、偏光子、第2のカプラに導きリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐しそれぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリングの中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リングを構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラに導き、前記第1のカプラで受光器に導きリング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムとして構成されており、前記検体を挟んで対向する偏光変換光学系の片方が可動のリニアガイド上に設置されており、該対向偏光変換光学系同志の間隔が変化しても偏波面保存光ファイバ同志の光結合が維持される対向コリメータ光学系を有していることを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0019】
発明7を展開してなされた本発明の他の一例としての第8の発明(以下、発明8という)は、発明7に記載の旋光成分分析測定装置において、固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータの間におかれた検体を鉗子状のツールで挟み込むことを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0020】
発明8を展開してなされた本発明の他の一例としての第9の発明(以下、発明9という)は、発明8に記載の旋光成分分析測定装置において、前記固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータがそれぞれ前記鉗子状のツールの前記検体を挟み込む部分に対向して組み込まれていることを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0021】
発明8または9を展開してなされた本発明の更に他の一例としての第10の発明(以下、発明10という)は、発明8または9に記載の旋光成分分析測定装置において、前記鉗子状のツールの前記検体を挟み込む部分に対向して組み込まれている前記固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータが、前記リング光路を構成する光ファイバと光コネクタで着脱可能に接続されることを特徴とする旋光成分分析装置の発明である。
【0022】
課題を解決するためになされた本発明の一例としての第11の発明(以下、発明11という)は、発明3〜10のいずれかに記載の旋光度の温度または波長特性測定装置にける旋光成分分析方法において、検体の温度または光源波長あるいはその両方をN通り変化させた場合の検体の旋光度を測定し、N元1次連立方程式を解くことによって検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求める旋光成分分析方法の発明である。
【0023】
課題を解決するためになされた本発明の一例としての第12の発明は、光源から発せられた信号光をその光路上に配置した第1のカプラ、偏光子、第2のカプラに導き、前記第2のカプラでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導き、その透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラに導き、前記第1のカプラで受光器に導き、リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムにおいて、検体が溶液であり検体に特定の旋光物質を分解する試薬を加え検体の旋光度の変化を測定することで検体の特定の旋光成分を測定する旋光成分分析方法の発明である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果は、糖溶液、血液、生体などに含まれるグルコースやその他の旋光性を有する旋光物質の成分分析を高い精度で行うことができることである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る一実施の形態例に用いる旋光度の計測システムの構成図である。
【図2】本発明に係る一実施の形態例に用いる偏光変換光学系の構成図である。
【0026】
【図3】本発明に係る一実施の形態例に用いる偏光変換光学系の構成図である。
【図4】本発明に係る一実施の形態例に用いる偏光変換光学系における偏光方位を説明する原理図である。
【0027】
【図5】本発明に係る一実施の形態例に用いる偏光変換光学系における偏光方位を説明する原理図である。
【図6】本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置の偏光変換部の構成図である。
【0028】
【図7】本発明に係る一実施の形態例に用いる波長可変光源の構成図である。
【図8】本発明に係る一実施の形態例に用いるギャップが可変の対向偏光変換光学系の構成図である。
【0029】
【図9】本発明に係る一実施の形態例としての鉗子状のツールによる生体の旋光成分分析装置を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1:SLD光源
2−1,2−2:カプラ
4,4−1,4−2:偏波面保存光ファイバ(PMF)
5:位相変調器
6−1,6−2:レンズ
7−1,7−2:偏光子
8−1,8−2:ファラデー素子
9−1,9−2:4分の1波長板
10:検体
【0031】
11:受光器
12:信号処理回路
13:位相変調信号
14―1,14−2:光ファイバフェルール
15−1,15−2:光ファイバフェルールホルダ
16−1,16−2:レンズホルダ
17−1,17−2:偏光子ホルダ
18−1,18−2:ファラデー素子ホルダ
19−1,19−2:4分の1波長板ホルダ
【0032】
20−1,20−2:偏光変換光学系
20−3:可動型偏光変換光学系
21−1,21−2:偏波面保存光ファイバの断面図
22−1,22−2:偏波面保存光ファイバの出射偏光方位を説明する矢印
23:ベース
24:温度制御装置(恒温槽)
25:波長可変フィルタ
26−1,26−2:シングルモード光ファイバ
27:固定台
28:可動台(リニアガイド)
29:鉗子
30:検体部と対向する偏光変換光学系以外の光干渉計部
31:矢印
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施の形態の例について説明する。なお、説明に用いる各図は本発明に係る一実施の形態例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。そして説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、本発明にかかる一実施の形態例の説明に用いる図は、必ずしも実際の製品などの実物や記述と相似形でない場合もある。
【0034】
また、各図において、同様な構成成分については同一の番号を付けて示し、重複する説明を省略することもある。場合によっては図中において構成部分の一部に斜線をつけたり塗りつぶしをしたりすることもあるが、これは他の構成部品との区別の都合上便宜的につける場合もあり、必ずしも断面図を意味する斜線ではない場合もある。これらは通常は説明の文章から判断可能である。
【0035】
また、以下の説明では、旋光度の温度特性または波長特性測定装置の説明がそれだけに限らず旋光物質の旋光度測定装置、旋光成分分析装置,旋光成分分析方法などの説明を兼ねる場合がある。すなわち、これらの説明は重複する部分が多く、説明の重複を避けるため、誤解を生じないようにしつつ、特に言及せずに、旋光物質の旋光度測定装置の説明で旋光成分分析装置や旋光成分分析方法の部分的説明を兼ねたり、その逆のこともある。
【0036】
図1、図2、図3を用いて本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に使用される旋光度測定方法について説明する。以下に詳述するように、本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置は、検体に複数の旋光成分が含まれている場合に、各旋光成分を相互に分離する手段を用いなくても、複数の旋光成分が混在した状態で各旋光成分を高い精度で分析できるようにしたところに最大の特徴を有する。
【0037】
図1は本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる旋光度の計測システムの構成図である。図1のSLD(Super luminescent Diode)光源1から発せられた光(信号光)の光路上において、SLD光源1から発せられた信号光は第1のカプラ2−1で分岐され分岐された信号光は偏光子3に導かれ直線偏光化され、第2のカプラ2−2によってリング光干渉計のループ光路(以下、リング光路あるいは単にリングという)を構成する偏波面保存光ファイバ4−1と4−2に分岐される。
【0038】
偏波面保存光ファイバ4−1に分岐された信号光は、その光路上において、位相変調器5を介してレンズ6−1、偏光子7−1、ファラデー素子8−1、4分の1波長板9−1からなる偏光変換光学系を介して右(あるいは左)回り円偏光として検体配置部(図示せず)に配置された検体10に導かれる。
【0039】
一方偏波面保存光ファイバ4−2に分岐された信号光は、その光路上において、左(あるいは右)回り円偏光としてレンズ6−2、偏光子7−2、ファラデー素子8−2、4分の1波長板9−2からなる偏光変換光学系を介して検体10に導かれる。図1の光源1は800nm帯のSLDを採用したがASE光源も使用できる。
【0040】
そして、図1の本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置は、後述の如く、検体10に導かれる前記光の波長を変化させる手段と検体10の温度を変化させる手段の少なくとも一方を有している。
【0041】
検体10を両方向に伝搬した円偏光は該偏光変換光学系で元の直線偏光に戻され該カプラ2−2で干渉し偏光子3、第1のカプラ2−1を介して受光器11に導かれさらに信号処理回路によってリングを両方向に伝搬する信号光の位相差に比例した電気信号を出力する。この場合の信号処理方法は非特許文献2に記載の方法に基づく方法を用いた。位相変調信号13は約20KHzの正弦波信号を用いた。
【0042】
位相変調器5はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)圧電素子に光ファイバ約1mを巻き付けたタイプを使用した。この変調器は信号処理部12から共振周波数の20KHzの正弦波変調信号13で変調される。非特許文献2に記載の光ファイバジャイロは、変調器を正弦波で変調し、受光部でその基本波、2倍波、4倍波成分を検出し、基本波と2倍波の振幅比の逆正接(tan−1)で位相差を、2倍波、4倍波成分の比で変調度を一定に制御する方式である。
【0043】
試作した信号処理部12の電気出力インターフェースはRS232Cを用いたが市販の変換器を使えばUSBでも出力できる。なお検体に角度Φの旋光度があればリングを左右に伝搬する両周り信号光に位相差2Φが発生することは公知である。
【0044】
本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる偏光変換光学系について説明する。本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置の旋光成分検出精度を高める特に好ましい例では、前記偏光変換光学系に用いる偏光面回転素子として、偏光面回転素子の一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子を用いている。
【0045】
図2および図3は本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる偏光変換光学系の構成図である。図2と図3は構成は同一で上述した偏光を変換する部品が対称に配置されている。
【0046】
ここでは図2についてのみ構成をさらに詳細に説明する。偏波面保存光ファイバ4−1の先端はフェルール14−1で8度に斜め研磨されフェルールホルダ15−1に固定されている。PMF4−1から出射した信号光はレンズホルダ16−1によって固定されたレンズ6−1によってコリメートされ偏光子ホルダ17−1によって固定された偏光子7−1を介しファラデー素子ホルダ18−1で固定されたファラデー素子8−1で直線偏光の方位が45度回転される。さらに4分の1波長板ホルダ19−1によって固定された4分の1波長板9−1を介し円偏光として出射する。図2ではこの偏光変換光学系を20−1で表している。
【0047】
図3で、符号4−2は先端が8度に斜め研磨された偏波面保存光ファイバ、6−2はレンズホルダ16−2によって固定されたレンズ、7−2は偏光子ホルダ17−2によって固定された偏光子、8−2はファラデー素子ホルダ18−2で固定されたファラデー素子、9−2は4分の1波長板ホルダ19−2によって固定された4分の1波長板、14−2はフェルールホルダ15−2に固定され先端が8度に斜め研磨されたフェルール、20−2は偏光変換光学系で、作用は構成が左右逆方向になっていることに基づくことを除いて図2の場合と同様である。
【0048】
図4は本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる偏光変換光学系における偏光方位を示す原理図である。偏波面保存光ファイバ4−1と4−2はコアが楕円のタイプを用いたがストレス印加タイプも使える。
【0049】
符号21−1,21−2は該偏波面保存光ファイバ4−1、4−2の断面図を示す。符号22−1,22−2はそれぞれ偏波面保存光ファイバ4−1,4−2の出射偏光方位を表す。偏光方位は互いに直交させている。ファラデー回転素子8−1,8−2は空間的に同一方向に45度入射偏光方位を回転させることができる。
【0050】
このようにすると偏光変換光学系20−1,20−2を両方向に伝搬した信号光は一旦左右の円偏光に変換されるが検体を通過後に再び対向する偏波面保存光ファイバの入射時と同じ固有直線偏光モードとしてループを伝搬して第2のカプラ2−2を経て受光器11に戻ってくる。もし検体に旋光性があれば左右の円偏光に位相差が発生しいわゆるリング光干渉計の原理によって信号処理回路12によって検出される。
【0051】
図5は本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる偏光変換光学系における偏光方位を示すもう一つの原理図である。図5においては偏光を変換する偏光子、ファラデー素子、波長板などの光学素子をレンズ6−1とPMF4−1の間およびレンズ6−2とPMF4−2の間にそれぞれ設置している。
【0052】
このようにすることによってレンズ間距離を短くすることができる。検体としての指などの生体を対向光学系としての偏光変換光学系20−1,20−2で挟んだ場合に生体内の散乱光を効率よく受光するためにはレンズ間距離を短くすることが有効であるので、測定精度を高めるには図4の光学系よりも図5の光学系の方が有利である。
【0053】
図4,図5を用いて説明した本発明に係る一実施の形態例としての旋光成分分析装置に用いる偏光変換光学系では、前記説明からも明らかなように、リング光路を構成するPMF4−1とPMF4−2を両方向に伝搬する信号光はそれぞれ互いに同一の偏光状態、すなわち前記第2のカプラ2−2からそれぞれPMF4−1とPMF4−2に入射した信号光と同じ偏光状態で伝搬し、検体10の部分を両方向に伝搬する信号光は互いに直交する円偏光状態で伝搬するように構成されている。
【0054】
図6は本発明の旋光成分分析装置の偏光変換部の構成図である。ベース23の上に偏光変換光学系20−1と20−2が検体10を挟んで対向して置かれている。光ファイバフェルール部分は結合調芯したあとにYAGレーザで熔着固定した。
【0055】
検体10は温度制御装置24の中に設置されている。温度制御装置すなわち恒温槽24は両サイドに信号光が透過する窓がある。実施例においては株式会社オプトクエストの小型温度コントローラCTC500を用いたがセル状の検体にヒータを装着しその温度を変えてもよい。
【0056】
図7は本発明の波長可変光源の実施例の構成図である。SLD光源1の出力は波長可変フィルタ25とシングルモード光ファイバ26−1を介して接続されている。ここで光源のスペクトル幅は780nmを中心に約30nmである。波長可変フィルタは中心波長が光源のスペクトル幅の範囲で変化させることができる。ここでは透過波長幅は5nmのものを用いた。光源の波長を変化させるには波長可変レーザを用いることもできるし中心波長が離散的なSLD光源を用いることもできる。
【0057】
図8はギャップが可変の対向偏光変換光学系の構成図である。偏光変換光学系20−1は固定の台27に、一方の可動型偏光変換光学系20−3は可動のリニアガイド28に搭載されている。この光学系においてはリニアガイドに搭載された可動型偏光変換光学系20−3を矢印31方向に移動させて対向する光学系20−1に接近させても偏波面保存光ファイバ4−1,4−2の結合が保たれるように光軸調整を行った。
【0058】
図9は本発明に係る一発明の実施の形態例の鉗子状のツール29による生体の旋光成分分析装置を示す全体構成図である。図9における鉗子状のツール29はその先端に偏光変換光学系20−1,20―2が小型化されて装着されておりギャップが変化しても偏波面保存光ファイバ4−1,4−2の結合が保たれるように光軸調整を行った。
【0059】
図9の符号30は本発明の偏光変換光学系以外の光干渉計部分を表す。また、光干渉計部分30とPMF4−1,4−2は光コネクタ接続に構成することができ、さらに、光コネクタ接続部分においては屈折率整合剤を少なくとも接続部分に介在させて結合損失を低減させることがより好ましい。このような構成にすることにより、鉗子状のツール29を着脱可能にし、使い勝手を高めることができる。
【0060】
図9で、鉗子状のツール29の先端部に装着されている偏光変換光学系20−1とPMF4−1ならびに偏光変換光学系20−2とPMF4−2は、それぞれPMFの先端部がフェルールに装着され、フェルールがフェルールホルダに固定されている。
【0061】
鉗子状のツール29の先端に装着されている偏光変換光学系20−1ならびに偏光変換光学系20−2のフェルールホルダを光コネクタにし、PMF4−1とPMF4−2のフェルールを着脱可能に構成し、フェルールフォルダには短尺ファイバを配置して、短尺ファイバの一方の端面でフェルールに装着された各PMFとの光結合をさせるとともに他方の端面で図2,図3あるいは図4〜図9の偏光変換光学系を構成する各素子との位置関係を正確に維持するにすることができる。
【0062】
このように構成することにより、この測定系から先端部に偏光変換光学系20−1とPMF4−1ならびに偏光変換光学系20−2を装着した鉗子状のツール29を着脱可能にすることができ、たとえば各被検者用の可搬型測定ジグにすることができる。この場合も光コネクタ接続部分においては屈折率整合剤を少なくとも接続部分に介在させて結合損失を低減させることがより好ましい。
【0063】
また、光ファイバの端面近傍をコア拡大ファイバにして結合損失を低減したり、短尺ファイバにコア径の大きなファイバを用いたりして結合を低減したりすることができる。
【0064】
ここで検体が全血や指など光の散乱が大きな物質の場合に種々実験した結果、検体内の散乱光を受光するためには偏波面保存光ファイバ4−1,4−2の先端部をレンズ6−1,6−2の焦点距離に置かずにデフォーカスした方がよいことがわかった。もっとも損失が低かったのは光ファイバをレンズに接触させた場合であった。
【0065】
従来の旋光測定装置では検体に含まれる複数の旋光性のある物質の分離ができない。しかし、上述したように本発明の旋光成分分析装置によればセル長が10mmの場合に血糖値を0.001g/dL以下の精度で旋光度の温度特性や波長特性が測定できるので複数の糖質成分の濃度の分析が可能となる。以下にその方法を説明する。
【0066】
今i番目の成分の濃度をCiとし,温度T,波長λにおける比旋光度をAi(T,λ)とすると検体の長さをLとすると成分がN種類の場合の旋光角θ(T,λ)は次式(1)で表示される。
【数1】

ここにCiの単位はg/dl(グラム/デシリットル)、長さLの単位はdm(デシメートル)である。ちなみにグルコースの場合T=20度C,波長λ=589nmの場合の比旋光度Aはおよそ52.7であるので健常者の血糖レベルである濃度C=0.1の場合にはθは0.005度となる。
【0067】
ここで分析対象とする糖が3種類と仮定しその糖の種類が分かっている場合を説明する。旋光物質が糖の場合、糖の種類がわかれば理科年表などで比旋光度を調べることもできるが波長によっては実験データがない場合がある。そこで本実施の形態例の旋光成分分析装置で計測対象となる純粋な旋光物質の比旋光度の波長を数点変化させ、各波長で温度をたとえば0,20,40度Cと3点変化させて計測する。すなわち(1)式のAi(T,λ)Lの項がi=1,2,3に対して明らかになる。
【0068】
次に3種類の旋光物質が混合している検体の温度をおなじく0,20,40度Cの3点変化させ、それぞれの温度における旋光角θを測定する。この操作によって未知数がC1,C2,C3の3元1次連立方程式が得られるのでそれを解くことによって3種類の旋光物質の濃度が計算で求められることになる。N元連立方程式を立てる場合には温度をN点変える代わりに波長をN点変えてもよい。特に無侵襲で血液や生体などの旋光成分の分析を行う場合には光源の波長を変える方がやりやすい。
【0069】
ここでグルコースの旋光度とその計測に必要な受光パワーの関係について考察する。健常者の血液の血糖値レベルはおよそ0.1g/100ccで、光源にオレンジ色のレーザを用いた場合の旋光角度は検体長L=10mmで約0.005度であることはよく知られている。
【0070】
上記した旋光度の温度特性から旋光成分の分析を行うためには温度変化による微小な旋光度の変化を計測することが必須となる。ここでは健常者の血糖値レベルの0.1%程度で測定することを目標に考える。リング干渉系の左右両周り信号光の位相差でいえば0.01度の1000分の1、すなわち0.00001度の位相測定精度の計測を目標とした。
【0071】
ここで位相変調方式の光ファイバジャイロでθ=0.00001度の位相変化を測定するのに必要な受信部のS/Nを考察する。
変調度が最大に設定された場合、S/Nは非特許文献2に示されるように、受光パワーが比較的大きい場合には近似的に次式で表される。
【数2】

ここにPrは受光パワー、eは電子の電荷(1.6x10−19)、Bは受信帯域幅(積分時間の逆数)である。
【0072】
この式に、θ=0.00001度、Pr=100μW、B=1Hz(1秒)を代入するとS/N〜10が得られる。
【0073】
すなわち、これは位相差 0.00001 度を積分時間1秒でS/N〜10dBで測定するには受光パワーPrがおよそ100 μW あればよいことを意味する。計測時間に余裕があり積分時間が10秒でよい場合には10μWでよい。逆に0.1秒で測定する必要がある場合には1000μWの受光レベルが必要である。
【0074】
本発明に係る一実施例に使用した光源波長が800nm帯の場合の旋光成分分析装置の損失レベルはおおよそ以下の通りであった。
光源出力:〜20mW(Superlum社製SLD)
光干渉計損失:〜10dB(光カプラ6dB,偏光子3dB,その外1dB)
検体部および偏光変換光学系損失:5dB
セル部の長さが10mmの場合の侵襲測定の場合には損失が1dB程度であるのでおよそ500μWが受光できることになる。これは0.00001度の位相差をS/N=10で積分時間が0.1〜0.2秒であり測定するのに十分な受光量である。
【0075】
次に検体が人体の一部、すなわち指の付け根の厚さ1.5mm程度のひだ部である場合を説明する。この場合には生体の体液や血管に含まれる血液による旋光度を測定することになる。偏波面保存光ファイバ4−1と4−2間の生体の挿入損失は通常のコア径が4〜5μmの偏波面保存光ファイバの場合60dB程度と非常に大きい。
【0076】
コア径の異なる種々の偏波面保存光ファイバで指のひだ部を挟んで光ファイバ対光ファイバの結合損失を種々実験によって確認した。その結果、波長1060nm用のコア径が20μmの偏波面保存光ファイバの場合に挿入損失45dBを得た。
【0077】
この場合の損失レベルはおおよそ以下の通りであった。
光源出力:〜30mW(波長1060nm帯SLD)
光干渉計損失:〜10dB(光カプラ6dB,偏光子3dB,その外1dB)
検体部および偏光変換光学系損失:5dB
指のひだ部の損失:45dB
その他の損失:10dB
以上によりトータルで70dBとなり3nWが受光できることになる。
【0078】
上記のその他の損失10dBはリングのループに使った通常のコア径が8μmの偏波面保存光ファイバと偏光変換光学系に用いたコア径が20μmの偏波面保存光ファイバをつなぐモードサイズ変換部の損失である。このモード変換部はいわゆるファイバ端面を加熱するコア拡大方法を用いた。なお指のひだ部の旋光度を図9に示す方法で測定する場合の受光器11には浜松ホトニクス製のAPDモジュールC5460−936460(X)を用いた。
【0079】
上記の生体の旋光度の測定においては脈拍計を用い脈拍に同期した成分を検出した。このような同期成分は血管の寄与によるものであり上記の受光パワー3nWの数%が脈拍に同期した信号である。上記のAPDモジュールは100KHzの受信帯域の場合5pWの受光感度があるので血管のグルコースによる旋光度を測定することができる。さらに、光源の波長を数点変化させ各波長の旋光度を測定し前述したN元連立方程式を解くことによって血液に含まれる数種の旋光物質を分離測定することができる。
【0080】
光源の波長変化と旋光成分およびその濃度の関係、検体の温度変化の状態と旋光成分およびその濃度の関係、ならびに光源の波長変化および検体の温度変化の状態と旋光成分およびその濃度の関係を予め測定しておいて波長・温度塩化−旋光成分データ表を作成しておき、旋光度の測定値と対応させて検体に含まれる旋光物質の成分やその濃度を分析し、結果を表示するように構成し、測定装置の実用価値を大幅に高めることができる。
【0081】
以上、図を参照しながら本発明に係る一実施の形態例を説明したが、本発明はこれに狭く限定されるものでなく、本発明の技術思想に基づいて多くのバリエーションを可能とするものである。
【0082】
光源から発せられた信号光をその光路上に配置した第1のカプラ、偏光子、第2のカプラに導き、前記第2のカプラでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導き、その透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラに導き、前記第1のカプラで受光器に導き、リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムにおいて、検体が溶液であり検体に特定の糖を分解する試薬を加え検体の旋光度の変化を測定することで検体の特定の旋光成分を測定する旋光成分分析方法を用いて本発明の旋光成分分析装置を構成することができる。それに、前記本発明に係る一実施の形態例に用いた信号光の波長変化、検体の温度変化を利用する測定方法を適用し、検出精度の一層高い旋光成分分析装置にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の旋光成分分析装置は、旋光性を有する物質の旋光度の温度特性や波長特性を侵襲あるいは無侵襲で高精度に測定することによってその成分濃度の分析ができるので、血糖値や血液と疾病の関連性などが明らかになり、医療分野などにおいて広く利用できるものである。
【0084】
特に、無侵襲で血糖成分の分析ができることにより、第1に、採血の痛みから解放されること、第2に、採血しないので衛生的であることに加えて採血器具等を介する病気の感染が防げること、第3に、酵素を使わないので経済的であること、第4に、注射針や酵素などの廃棄物がでないこと等のメリットがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検体配置部に配置された検体の旋光度を測定する信号光の光路上に配置された前記検体配置部を挟んで信号光のリング光干渉計のループ光路(以下、リング光路という)を形成するように配置された偏波面保存光ファイバと、前記検体配置部と、前記偏波面保存光ファイバと前記検体配置部の間に配置された偏光変換光学系を有する旋光度の温度特性または波長特性測定装置において、
前記リング光路を伝搬する左右両回り信号光が前記偏波面保存光ファイバ内を同一の偏光状態で伝搬するとともに前記検体部分では互いに直交する偏光状態で伝搬するように構成されており、
前記偏光変換光学系は偏光面回転素子として、偏光面回転素子の一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、
偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子を用いており、
前記旋光度の温度特性または波長特性測定装置は前記検体に導かれる前記信号光の波長を変化させる波長変化手段と前記検体の温度を変化させる温度変化手段の少なくとも一方を有していることを特徴とする旋光度の温度または波長特性測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋光度の温度特性または波長特性測定装置において、
光源から発せられた信号光をその光路に配置された第1のカプラと偏光子と第2のカプラに導き、前記第2のカプラで前記信号光を検体を挟んでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び該第2のカプラ、該偏光子に導き該第1のカプラで受光器に導き、前記リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムにおいて検体の温度または光源の波長のいずれか一方を変化させるかあるいはその両方を変化させることを特徴とする旋光度の温度または波長特性測定装置。
【請求項3】
少なくとも、検体配置部に配置された検体の旋光度を測定する信号光の光路上に配置された、前記検体配置部を挟んで信号光のリング光干渉計のループ光路(以下、リング光路という)を形成するように配置された偏波面保存光ファイバと、前記検体配置部と、前記偏波面保存光ファイバと前記検体配置部の間に配置された偏光変換光学系を有する旋光成分分析装置において、
前記リング光路を伝搬する左右両回り信号光が前記偏波面保存光ファイバ内を同一の偏光状態で伝搬するとともに前記検体部分では互いに直交する偏光状態で伝搬するように構成されており、
前記偏光変換光学系は偏光面回転素子として、偏光面回転素子の一方の側から信号光としての偏光ビームを入射させたときには信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって時計回りまたは反時計回りに所定角度だけ回転させ、偏光面回転素子の他方の側から信号光として偏光ビームを入射させたときには当該信号光の偏光面を当該信号光の進行方向に向かって前記一方の側から入射させた場合とは逆方向に所定角度だけ回転させるように作用する偏光面回転素子を用いており、
前記旋光成分分析装置は前記検体に導かれる前記信号光の波長を変化させる波長変化手段と前記検体の温度を変化させる温度変化手段の少なくとも一方を有しており、
信号光の波長変化と検体の温度変化の少なくとも一方による検体の位相差情報の変化の測定結果から検体に含まれる旋光性分の情報を求めることを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の旋光成分分析装置において、
光源から発せられた信号光をその光路に配置された第1のカプラと偏光子と第2のカプラに導き、前記第2のカプラで前記信号光を検体を挟んでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び該第2のカプラ、該偏光子を経て該第1のカプラで受光器に導き、検体の温度または光源の波長のいずれか一方を変化させるかあるいはその両方を変化させるて前記リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムを用いて検体の旋光成分を分析することを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項5】
Nを整数として、請求項3または4に記載の旋光成分分析測定装置において、
検体の温度または光源波長あるいはその両方をN通り変化させた場合の検体の旋光度を測定し、N元1次連立方程式を解くことによって検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求めることを特徴とする旋光成分分析測定装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の旋光成分分析測定装置において、
前記旋光成分分析測定装置は検体の温度または光源波長あるいはその両方の変化情報と、検体の旋光度変化と旋光成分と旋光成分濃度のうちの少なくとも1つとの対応関係を判断できる対応表を用いて検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求めることを特徴とする旋光成分分析測定装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の旋光成分分析測定装置において、
前記旋光成分分析測定装置は、光源から発せられた信号光を前記信号光の光路に配置された第1のカプラ、偏光子、第2のカプラに導きリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐しそれぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリングの中に置かれた検体に両方向から導きその透過光を該リングを構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラに導き、前記第1のカプラで受光器に導きリング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムとして構成されており、前記検体を挟んで対向する偏光変換光学系の片方が可動のリニアガイド上に設置されており、該対向偏光変換光学系同志の間隔が変化しても偏波面保存光ファイバ同志の光結合が維持される対向コリメータ光学系を有していることを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の旋光成分分析測定装置において、
固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータの間におかれた検体を鉗子状のツールで挟み込むことを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の旋光成分分析測定装置において、
前記固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータがそれぞれ前記鉗子状のツールの前記検体を挟み込む部分に対向して組み込まれていることを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の旋光成分分析測定装置において、
前記鉗子状のツールの前記検体を挟み込む部分に対向して組み込まれている前記固定側の偏光変換コリメータと可動側の偏光変換コリメータが、前記リング光路を構成する光ファイバと光コネクタで着脱可能に接続されることを特徴とする旋光成分分析装置。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか1項に記載の旋光度の温度または波長特性測定装置にける旋光成分分析方法において、
検体の温度または光源波長あるいはその両方をN通り変化させた場合の検体の旋光度を測定し、N元1次連立方程式を解くことによって検体に含まれるN種類の旋光物質の成分濃度を求める旋光成分分析方法。
【請求項12】
光源から発せられた信号光をその光路上に配置した第1のカプラ、偏光子、第2のカプラに導き、前記第2のカプラでリング光路を構成する偏波面保存光ファイバを両方向に伝搬する2つの直線偏光に分岐し、それぞれ互いに直交する円偏光に変換する偏光変換光学系を介してリング光路の中に置かれた検体に両方向から導き、その透過光を該リング光路を構成する偏波面保存光ファイバに結合し入射した直線偏光と同一のモードとして再び前記第2のカプラ、前記偏光子、前記第1のカプラに導き、前記第1のカプラで受光器に導き、リング光路を左右に伝搬した信号光の位相差情報から検体の円複屈折率を測定する旋光度計測システムにおいて、
検体が溶液であり検体に特定の旋光物質を分解する試薬を加え検体の旋光度の変化を測定することで検体の特定の旋光成分を測定する旋光成分分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−112907(P2012−112907A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264354(P2010−264354)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(303000774)株式会社グローバルファイバオプティックス (8)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】