説明

旋回関節機構及びその制御方法

【課題】ベルト破断時の出力軸の落下を防止することができる旋回関節機構を提供する。
【解決手段】本発明に係る旋回関節機構の一態様は、出力軸12と、モータ1の動力を出力軸12に伝達する伝達部材(例えば、ベルト2)と、作動状態において出力軸12を保持するブレーキ5と、伝達部材の破断を検出し、検出信号Sを出力するセンサ6と、センサ6から出力された検出信号Sに基づきブレーキに対して当該ブレーキを作動状態に設定する制御信号を出力するブレーキ駆動装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット等に設けられる旋回関節機構及びその制御方法に関し、特に旋回関節機構における出力軸の落下を防止する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボット等に設けられる旋回関節機構においては、軸ユニットの小型化を図るため、モータと出力軸をオフセット配置し、ベルトによってモータの動力を出力軸に伝達する技術が知られている(特許文献1)。また、このような関節機構において、出力軸に動力を伝達するベルトの破断を検出し、ベルトが破断した際には、警報を発する技術が知られている(特許文献2)。
【0003】
また、このような技術は、特許文献3乃至5にも開示されている。
【特許文献1】特開平05−237789号公報
【特許文献2】特開平05−88895号公報
【特許文献3】特開平11−77560号公報
【特許文献4】特開平06−285785号公報
【特許文献5】特開平10−249787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ベルトが破断した際に、ベルトによって保持されていた出力軸が落下するという問題がある。また、これを防止するためにベルトの代わりに、破断しにくいギア等の動力伝達手段を用いると、装置が大きくなるという問題がある。特許文献2も同様に、ベルトが破断した際に出力軸の落下を防止する構成については、何ら開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る旋回関節機構の一態様は、出力軸と、モータの動力を前記出力軸に伝達する伝達部材と、作動状態において前記出力軸を保持するブレーキと、前記伝達部材の破断を検出し、検出信号を出力するセンサと、前記センサから出力された検出信号に基づき前記ブレーキに対して当該ブレーキを前記作動状態に設定する制御信号を出力するブレーキ駆動装置と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る旋回関節機構の一態様によれば、モータと出力軸がオフセット配置された関節機構において、出力軸を保持するブレーキを設け、伝達部材の破断を検出した際にブレーキを作動させることで、伝達部材の破断時にブレーキによって出力軸を保持することで、出力軸の落下を防止することができる。
【0007】
また、本発明に係る旋回関節機構の制御方法の一態様は、モータの動力を出力軸に伝達する伝達部材の破断を検出し、前記伝達部材の破断が検出されたことに基づいて、ブレーキを作動させて前記出力軸を保持することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る旋回関節機構の制御方法の一態様によれば、伝達部材の破断に基づいて、出力軸を保持するブレーキを作動させることで、伝達部材の破断時における出力軸の落下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る旋回関節機構の一態様によれば、伝達部材の破断時において出力軸の落下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して本発明の最良な実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る旋回関節機構100の全体構成例を示す縦断面図である。この旋回関節機構100は、出力軸12と、モータ1の動力を出力軸12に伝達する伝達部材と、作動状態において出力軸12を保持するブレーキ5と、伝達部材の破断を検出し、検出信号Sを出力するセンサ6と、センサ6から出力された検出信号Sに基づきブレーキ5に対して当該ブレーキ5を作動状態に設定する制御信号Sを出力するブレーキ駆動装置8と、を備えている。なお、説明では、伝達部材をベルト2として説明を行う。また、説明では、紙面左側を入力側とし、紙面右側を出力側として説明を行う。
【0012】
モータ1の出力軸及び旋回関節機構100の出力軸12は、同軸でなく、かつ、平行に配されている。モータ1の出力軸には、入力側プーリ10が設けられている。また、出力軸12の入力側には、出力側プーリ11が設けられている。入力側プーリ10及び出力側プーリ11は、紙面上下方向の対応する位置に配され、入力側プーリ10及び出力側プーリ11に係合するベルト2によって連結されている。なお、モータ1の動力を出力軸12に伝達する伝達部材としては、ベルト2の代わりにワイヤ等を用いることもできる。このように、本発明の実施の形態では、モータ1の出力軸と、旋回関節機構100の出力軸12をベルト2によって連結することで、モータ1と旋回関節機構100をオフセット配置としている。
【0013】
出力軸12は、同軸上に配された中間出力軸7及び最終出力軸4を備えている。中間出力軸7の入力側には、減速機3を介して最終出力軸4が連結されている。減速機3は、出力軸12(中間出力軸7及び最終出力軸4)と同軸である円筒形状を有しており、内部に円筒形状に切り抜かれた孔3aが形成されている。減速機3は、出力側プーリ11を介して伝達されたトルクを、所定の減速比で減速し、最終出力軸4に伝達する。通常の動作時においては、出力軸12(中間出力軸7)の入力側端部は、ベルト2によって保持されている。
【0014】
中間出力軸7の出力側端部には、ブレーキ5が設けられている。ブレーキ5は、中間出力軸7と同軸である円筒形状を有している。
【0015】
ベルト2の一部には、所定の隙間を介してベルト2の破断を検出するセンサ6が設置されている。センサ6としては、例えば、光ファイバセンサ等を用いることができる。なお、センサ6は、ベルト2と対向していればどのような位置に設けられていてもよい。
【0016】
次に、このように構成された旋回関節機構100の動作について説明する。センサ6は、ベルト2の破断を検出すると、ブレーキ駆動装置8に対して検出信号Sを出力する。ブレーキ駆動装置8は、センサ6から検出信号Sが入力されると、ブレーキ5に対して制御信号Sを出力する。ブレーキ5においてブレーキ駆動装置8から制御信号Sが入力されると、ブレーキ5が作動する。これにより、ベルト2の破断時においては、出力軸12(中間出力軸7)の出力側端部がブレーキ5によって保持される。
【0017】
このように、本発明の実施の形態によれば、ベルト2の破断をセンサ6によって検出し、ベルト2の破断時には、ブレーキ5によって出力軸12を保持することにより、ベルト2等の簡易な動力伝達機構を採用しつつ、ベルト2の破断によって生じる出力軸12の落下を防止することができる。このように、本発明の実施の形態によれば、ベルト2等の簡易な動力伝達機構を使用することができ、モータ1の出力軸や出力軸12等からなる軸ユニットの小型化を図ることができる。
【0018】
また、モータ1の動力をベルト2によって出力軸12に伝達することで、簡易な構成で大きな減速比を得ることができる。また、モータ1の出力軸と出力軸12をオフセット配置することができるため、複数のモータ1を繰り返し配置することもできる。
【0019】
また、減速機3に孔3aを形成し、減速機3の内部を中空とすることで、出力軸12の軽量化を図ることができる。これにより、ベルト2に負荷される荷重を削減し、ベルト2を破断しにくくすることができる。
【0020】
この旋回関節機構100は、直動動作だけでなく、旋回動作が可能であり、例えば、垂直多関節ロボットに採用することができる。なお、本発明は、上記の実施形態に限られず、種々の設計変更を実施することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る旋回関節機構100の全体構成例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 モータ
2 ベルト
3 減速機
3a 孔
4 最終出力軸
5 ブレーキ
6 センサ
7 中間出力軸
8 ブレーキ駆動装置
10 入力側プーリ
11 出力側プーリ
12 出力軸
100 旋回関節機構
制御信号
検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
モータの動力を前記出力軸に伝達する伝達部材と、
作動状態において前記出力軸を保持するブレーキと、
前記伝達部材の破断を検出し、検出信号を出力するセンサと、
前記センサから出力された検出信号に基づき前記ブレーキに対して当該ブレーキを前記作動状態に設定する制御信号を出力するブレーキ駆動装置と、
を備える旋回関節機構。
【請求項2】
モータの動力を出力軸に伝達する伝達部材の破断を検出し、
前記伝達部材の破断が検出されたことに基づいて、ブレーキを作動させて前記出力軸を保持する
旋回関節機構の制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−142895(P2010−142895A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321828(P2008−321828)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】