説明

既存の建物の梁に貫通穴を設ける前に梁を補強する方法

【課題】既存の建物の梁に貫通穴を設ける前に前記梁を補強する際に該梁の側部に取り付ける部材を軽量化し、該部材の取扱いを容易にすること。
【解決手段】梁の補強方法は、前記梁の側部における、穿孔領域から各端部分に向けて第1間隔を、上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に第1非貫通穴を、下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に第2非貫通穴を設けること、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を、一端部分に向けて前記第2間隔を置かれた第3位置に第3非貫通穴を、他端部分に向けて前記第2間隔を置かれた第4位置に第4非貫通穴を設けること、第1鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴に挿入し、各端部を前記梁の内部に固定すること、第2鉄筋の一端部を前記第3非貫通穴に、他端部を前記第4非貫通穴に挿入し、各端部を前記梁の内部に固定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁に配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート製の梁を有する既存の建物を改装するとき、前記梁に、該梁の側部を経て前記梁をその幅方向に貫く貫通穴を設け、該貫通穴の中に給水管、排水管、ガス管、換気用ダクト等のような管を配置することがある。前記梁に前記貫通穴を設けることにより、前記梁の一部の断面が欠損するため、前記梁のせん断強度が著しく損なわれる。このため、前記梁に前記貫通穴を設ける前に前記梁を補強する必要がある。
【0003】
従来、前記梁の補強方法には、前記梁の前記側部に、該側部における、前記貫通穴が設けられる穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する鋼板を取り付けるものがある(非特許文献1参照)。前記梁が積載荷重、地震力等を受けて前記梁にせん断力が作用したとき、前記鋼板は前記せん断力に抵抗する。これにより前記梁は補強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)1995年9月」第165頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記鋼板は比較的重く、前記鋼板の持運びに多くの労力を要し、前記鋼板の取扱いが困難である。このため、前記梁の補強時の作業性が良くない。
【0006】
本発明の目的は、既存の建物の梁に貫通穴を設ける前に前記梁を補強する際に該梁の側部に取り付ける部材を軽量化し、該部材の取扱いを容易にすることにより、前記梁の補強時の作業性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、梁を補強する際、前記梁の側部における、穿孔領域から各端部分に向けて水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に第1鉄筋の一端部を、前記穿孔領域から各端部分に向けて水平方向に第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に前記第1鉄筋の他端部を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて水平方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に第2鉄筋の一端部を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて水平方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に前記第2鉄筋の他端部をそれぞれ取り付ける。これにより、梁の側部に、穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する鋼板を取り付ける従来の場合と比べ、梁の側部に取り付ける部材を軽量化し、該部材の取扱いを容易にし、梁の補強時の作業性を向上させる。
【0008】
本発明に係る梁の補強方法は、第1水平方向に伸びる、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁であって前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分及び底部分と、前記頂部分と前記底部分との間に設けられた穿孔領域とを有する、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に対して垂直な側部を有する梁に、前記穿孔領域を経て前記梁を前記第2水平方向に貫く、配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法である。この補強方法は、前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設ける第1ステップと、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に、該第3位置において開放され、前記第3位置から第2水平方向内方へ伸びる第3非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に、該第4位置において開放され、前記第4位置から第2水平方向内方へ伸びる第4非貫通穴をそれぞれ設ける第2ステップと、上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第1鉄筋を用意する第3ステップと、前記第1鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定する第4ステップと、前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第2鉄筋を用意する第5ステップと、前記第2鉄筋の一端部を前記第3非貫通穴に、他端部を前記第4非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定する第6ステップとを含む。このようにして前記第1位置及び前記第2位置にそれぞれ前記第1鉄筋の前記一端部及び前記他端部を取り付け、前記第3位置及び前記第4位置にそれぞれ前記第2鉄筋の前記一端部及び前記他端部を取り付ける。
【0009】
前記梁が積載荷重、地震力等を受けて前記梁にせん断力が作用したとき、前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋のそれぞれは前記せん断力に抵抗する。これにより前記梁は補強される。前記梁を補強する際に前記第1位置及び前記第2位置にそれぞれ前記第1鉄筋の前記一端部及び前記他端部を取り付け、前記第3位置及び前記第4位置にそれぞれ前記第2鉄筋の前記一端部及び前記他端部を取り付けるため、梁の側部に、穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する鋼板を取り付ける従来の場合と比べ、梁の側部に取り付ける部材を軽量化することができ、該部材の取扱いを容易にすることができる。これにより梁の補強時の作業性を向上させることができる。
【0010】
前記補強方法は、前記第6ステップの後に前記梁の前記側部に、該側部から第2水平方向外方へ突出し、前記穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する、コンクリート又はモルタルからなる突起であって前記第1鉄筋の前記中央部と前記第2鉄筋の前記中央部とを覆う突起を形成する第7ステップを含むものとすることができる。また、前記補強方法は、前記第1ステップの前又は前記第2ステップと前記第3ステップとの間に前記梁の前記側部に、第2水平方向外方へ開放され、前記第1位置から前記第2位置へ上下方向に伸びる第1溝と、前記第3位置から前記第4位置へ前記第1水平方向に伸びる第2溝とを設ける第8ステップを含み、前記第4ステップにおいて前記第1鉄筋の前記中央部が前記第1溝に受け入れられるようにし、前記第6ステップにおいて前記第2鉄筋の前記中央部が前記第2溝に受け入れられるようにし、前記第6ステップの後に前記第1溝及び前記第2溝のそれぞれに、モルタルからなる充填材を満たす第9ステップを含むものとすることができる。
【0011】
前記補強方法は、前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する鉄筋を用意すること、該鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含むものとすることができる。
【0012】
前記補強方法は、前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する鉄筋を用意すること、該鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含むものとすることができる。
【0013】
前記補強方法は、前記第2水平方向に対して垂直な面で見て、前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に対してほぼ45度の角度をなして交差する第1傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1傾斜方向と直交する第2傾斜方向に前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に、該第3位置において開放され、前記第3位置から第2水平方向内方へ伸びる第3非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に、該第4位置において開放され、前記第4位置から第2水平方向内方へ伸びる第4非貫通穴をそれぞれ設けること、前記第2傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第1鉄筋を用意すること、該第1鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定すること、前記第1傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第2鉄筋を用意すること、該第2鉄筋の一端部を前記第3非貫通穴に、他端部を前記第4非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、梁を補強する際、該梁の側部における、穿孔領域から各端部分に向けて第1水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に第1鉄筋の一端部を、穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に前記第1鉄筋の他端部を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に第2鉄筋の一端部を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に前記第2鉄筋の他端部をそれぞれ取り付けるため、梁の側部に、穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する鋼板を取り付ける従来の場合と比べ、梁の側部に取り付ける部材を軽量化することができ、該部材の取扱いを容易にすることができる。これにより梁の補強時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】建物の梁の側面図。
【図2】梁の側部に第1非貫通穴と第2非貫通穴と第3非貫通穴と第4非貫通穴とを設けた後の、図1の線2における梁の側面図。
【図3】第2鉄筋の一端部を第2非貫通穴に、他端部を第3非貫通穴にそれぞれ挿入した後の梁の側面図。
【図4】図3の線4における梁の断面図。
【図5】梁の側部に突起を形成した後の梁の側面図。
【図6】図5の線6における梁の断面図。
【図7】梁に貫通穴を設けた後の梁の側面図。
【図8】図7の線8における梁の断面図。
【図9】梁の側部に第1溝と第2溝とを設けた後の梁の側面図。
【図10】第1鉄筋の中央部が第1溝に、第2鉄筋の中央部が第2溝にそれぞれ受け入れられた状態における梁の側面図。
【図11】図10の線11における梁の断面図。
【図12】第1溝及び第2溝のそれぞれに充填材を満たした後の梁の側面図。
【図13】図12の線13における梁の断面図。
【図14】梁の各側部に第1鉄筋と第2鉄筋とを取り付けたことを示す図。
【図15】第1鉄筋及び第2鉄筋のそれぞれが複数の部材からなることを示す図。
【図16】梁の側部に第3鉄筋と第4鉄筋と取り付けたことを示す図。
【図17】第1位置及び第2位置が第2傾斜方向に間隔を置かれ、第3位置及び第4位置が第1傾斜方向に間隔を置かれていることを示す図。
【図18】梁の側部に第1鉄筋のみを取り付けたことを示す図。
【図19】梁の側部に第2鉄筋のみを取り付けたことを示す図。
【図20】建物の壁を補強したことを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、第1水平方向(図1における左右方向)に伸びる、既存の建物10の鉄筋コンクリート製の梁12が存在する。梁12は、前記第1水平方向と直交する第2水平方向(図1における奥行き方向)に対して垂直な側部14を有し、該側部は、前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分16、18と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分20及び底部分22と、頂部分20と底部分22との間に設けられた穿孔領域24とを有する。梁12は、前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの柱26の間に設けられており、梁12に床スラブ28が支持されている。
【0017】
建物10の改装時、梁12に、穿孔領域24を経て梁12を前記第2水平方向に貫く貫通穴30(図7)を設け、該貫通穴の中に、給水管、排水管、ガス管、換気用ダクト等のような管(図示せず)を配置する。梁12に貫通穴30を設けることにより、梁12の一部の断面が欠損し、梁12のせん断強度が損なわれるため、梁12に貫通穴30を設けることに先立ち、梁12を補強する。
【0018】
梁12を補強するとき、まず、図2に示すように、梁12の側部14における、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて前記第1水平方向に第1間隔(図2に符号32で示す。)を置かれ、かつ穿孔領域24から上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔(図2に符号34で示す。)を置かれた第1位置36に第1非貫通穴38を、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ穿孔領域24から下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置40に第2非貫通穴42をそれぞれ設ける。第1非貫通穴38は、第1位置36において開放され、該第1位置から第2水平方向内方へ伸び、第2非貫通穴42は、第2位置40において開放され、該第2位置から第2水平方向内方へ伸びている。
【0019】
次に、梁12の側部14における、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ穿孔領域24から一端部分16に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第3位置44に第3非貫通穴46を、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ穿孔領域24から他端部分18に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第4位置48に第4非貫通穴50をそれぞれ設ける。第3非貫通穴46は、第3位置44において開放され、該第3位置から第2水平方向内方へ伸び、第4非貫通穴50は、第4位置48において開放され、該第4位置から第2水平方向内方へ伸びている。
【0020】
第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けた後、図3、4に示すように、上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部52及び該端部の間に設けられた、各端部52に対して垂直な中央部54を有する第1鉄筋56を用意し、該第1鉄筋の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入し、かつ、各端部52を梁12の内部に固定する。第1鉄筋56の一端部52及び他端部52をそれぞれ第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42に挿入する前に第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42のそれぞれに樹脂系の接着剤58を満たしておく。第1鉄筋56の一端部52及び他端部52をそれぞれ第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42に挿入したとき、前記接着剤により各端部52が梁12の内部に固定される。第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42のそれぞれに接着剤58を満たす上記の例に代え、モルタルからなる充填材(図示せず)を満たしてもよい。この場合、前記充填材の硬化により第1鉄筋56の各端部52が梁12の内部に固定される。このようにして第1位置36に第1鉄筋56の一端部52を、第2位置40に第1鉄筋56の他端部52をそれぞれ取り付ける。
【0021】
その後、前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部60及び該端部の間に設けられた、各端部60に対して垂直な中央部62を有する第2鉄筋64を用意し、該第2鉄筋の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入し、かつ、各端部60を梁12の内部に固定する。第2鉄筋64の一端部60及び他端部60をそれぞれ第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50に挿入する前に第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50のそれぞれに樹脂系の接着剤(図示せず)又はモルタルからなる充填材(図示せず)を満たしておく。第2鉄筋64の一端部60及び他端部60をそれぞれ第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50に挿入したとき、前記接着剤により又は前記充填材の硬化により各端部60が梁12の内部に固定される。このようにして第3位置44に第2鉄筋64の一端部60を、第4位置48に第2鉄筋64の他端部60をそれぞれ取り付ける。
【0022】
その後、図5、6に示すように、梁12の側部14に、該側部から第2水平方向外方へ突出し、穿孔領域24を取り巻く環状の平面形状を有する突起66であって第1鉄筋56の中央部54と第2鉄筋64の中央部62とを覆う突起66を形成する。突起66は、コンクリート又はモルタルからなる。突起66の形成の前、突起66を梁12の側部14に確実に付着させるため、梁12の側部14における、穿孔領域24を取り巻く領域に目荒らしをする。突起66の形成の後、図7、8に示すように、梁12に貫通穴30を設ける。
【0023】
梁12が積載荷重、地震力等を受けて梁12にせん断力が作用したとき、前記第2水平方向に対して垂直な面で見て、第1位置36及び第4位置48がそれぞれ第2位置40及び第3位置44に対して前記第1水平方向とほぼ45度の角度をなして交差する方向にずれようとする。このとき、第1鉄筋56は、第1位置36が第2位置40に対してずれることを阻止し、第2鉄筋64は、第4位置48が第3位置44に対してずれることを阻止する。このように第1鉄筋56及び第2鉄筋64のそれぞれは前記せん断力に抵抗する。これにより梁12は補強される。
【0024】
梁12を補強する際、第1位置36に第1鉄筋56の一端部52を、第2位置40に第1鉄筋56の他端部52を、第3位置44に第2鉄筋64の一端部60を、第4位置48に第2鉄筋64の他端部60をそれぞれ取り付けるため、梁の側部に、穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する鋼板を取り付ける従来の場合と比べ、梁の側部に取り付ける部材を軽量化することができ、該部材の取扱いを容易にすることができる。これにより梁の補強時の作業性を向上させることができる。
【0025】
第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けることを、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42を設けることの後に行う上記の例に代え、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42を設けることの前に行ってもよいし、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42を設けることと同時に行ってもよい。
【0026】
第2鉄筋64の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入し、かつ、各端部60を梁12の内部に固定することを、第1鉄筋56の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入し、かつ、各端部52を梁12の内部に固定することの後に行う上記の例に代え、第1鉄筋56の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入し、かつ、各端部52を梁12の内部に固定することの前に行ってもよい。梁12に対する補強を、該梁に貫通穴30を設ける前に行う上記の例に代え、梁12に貫通穴30を設けた後に行ってもよい。
【0027】
図9に示す例では、第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けた後、第1鉄筋56を用意する前に梁12の側部14に、第1位置36から第2位置40へ上下方向に伸びる第1溝68と、第3位置44から第4位置48へ前記第1水平方向に伸びる第2溝70とを設ける。第1溝68及び第2溝70のそれぞれは第2水平方向外方へ開放されている。
【0028】
この場合、図10、11に示すように、第1鉄筋56の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入し、かつ、各端部52を梁12の内部に固定するとき、第1鉄筋56の中央部54が第1溝68に受け入れられるようにする。また、第2鉄筋64の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入し、かつ、各端部60を梁12の内部に固定するとき、第2鉄筋64の中央部62が第2溝70に受け入れられるようにする。梁12の内部への第1鉄筋56の各端部52の固定と、第2鉄筋64の各端部60の固定とを行った後、図12、13に示すように、第1溝68及び第2溝70のそれぞれに、モルタルからなる充填材72を満たす。これにより第1鉄筋56の中央部54及び第2鉄筋64の中央部62のそれぞれが充填材72に被覆される。梁12の側部14への突起66の形成を要しないため、該突起により梁12の外観が損なわれることがない。
【0029】
梁12の側部14に第1溝68と第2溝70とを設けることを、第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けた後、第1鉄筋56を用意する前に行う上記の例に代え、第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設ける前に行ってもよい。
【0030】
図14に示す例では、梁12の1つの側部14における第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付け、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付ける図6に示した例に代え、梁12の各側部14における第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付け、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付ける。この場合、梁12は、前記第2水平方向に間隔を置かれた、相対する2つの側部14を有し、各側部が、前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分16、18と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分20及び底部分22と、頂部分20と底部分22との間に設けられた穿孔領域24とを有する。
【0031】
図15に示す例では、第1鉄筋56は、1つの部材からなる図5に示した例に代え、複数の部材からなる。第1鉄筋56は、上下方向に間隔を置かれた第1部材56a及び第2部材56bであってそれぞれが、上下方向に伸びる縦部分及び該縦部分に対して垂直な、前記第2水平方向に伸びる横部分からなるL字形を呈する第1部材56a及び第2部材56bと、上端部が第1部材56aの前記縦部分に、下端部が第2部材56bの前記縦部分にそれぞれ固定された、上下方向に伸びる直線状の第3部材56cとからなる。第1鉄筋56の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入するとき、第1部材56aの前記横部分を第1非貫通穴38に、第2部材56bの前記横部分を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入する。
【0032】
前記挿入を、第3部材56cの前記上端部が第1部材56aの前記縦部分に、第3部材56cの前記下端部が第2部材56bの前記縦部分にそれぞれ固定された状態で行ってもよいし、前記挿入の後に、第3部材56cの前記上端部を第1部材56aの前記縦部分に、第3部材56cの前記下端部を第2部材56bの前記縦部分にそれぞれ固定してもよい。この場合、第1非貫通穴38及び第2非貫通穴42のそれぞれの位置に施工上の誤差があったとしても、前記挿入が妨げられることがない。第1鉄筋56は、第1部材56aと第2部材56bと第3部材56cとからなる図15に示した例に代え、第1部材56aと第2部材56bとからなり、第3部材56cを有しないものでもよい。この場合、第2部材56bの前記縦部分は第1部材56aの前記縦部分に固定されている。
【0033】
第2鉄筋64は、図15に示した例では、前記第1水平方向に間隔を置かれた第1部材64a及び第2部材64bであってそれぞれが、前記第1水平方向に伸びる縦部分及び該縦部分に対して垂直な、前記第2水平方向に伸びる横部分からなるL字形を呈する第1部材64a及び第2部材64bと、一端部が第1部材64aの前記縦部分に、他端部が第2部材64bの前記縦部分にそれぞれ固定された、前記第1水平方向に伸びる直線状の第3部材64cとからなる。第2鉄筋64の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入するとき、第1部材64aの前記横部分を第3非貫通穴46に、第2部材64bの前記横部分を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入する。第2鉄筋64は、第1部材64aと第2部材64bと第3部材64cとからなる図15に示した例に代え、第1部材64aと第2部材64bとからなり、第3部材64cを有しないものでもよい。この場合、第2部材64bの前記縦部分は第1部材64aの前記縦部分に固定されている。
【0034】
図16に示す例では、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付け、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付けることに加え、第5位置74及び第6位置76にそれぞれ第3鉄筋78の一端部及び他端部を取り付け、第7位置80及び第8位置82にそれぞれ第4鉄筋84の一端部及び他端部を取り付ける。
【0035】
この場合、第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けた後、第1鉄筋56を用意する前に、梁12の側部14における、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔より大きく、前記第2間隔より小さい第3間隔(図16に符号86で示す。)を置かれ、かつ上方へ前記第2間隔を置かれた第5位置74に第5非貫通穴88を、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて前記第1水平方向に前記第3間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第6位置76に第6非貫通穴90をそれぞれ設ける。第5非貫通穴88は、第5位置74において開放され、該第5位置から第2水平方向内方へ伸び、第6非貫通穴90は、第6位置76において開放され、該第6位置から第2水平方向内方へ伸びている。
【0036】
第5位置74及び第6位置76にそれぞれ第5非貫通穴88及び第6非貫通穴90を設けた後、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第3間隔を置かれ、かつ一端部分16に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第7位置80に第7非貫通穴92を、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第3間隔を置かれ、かつ他端部分18に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第8位置82に第8非貫通穴94をそれぞれ設ける。第7非貫通穴92は、第7位置80において開放され、該第7位置から第2水平方向内方へ伸び、第8非貫通穴94は、第8位置82において開放され、該第8位置から第2水平方向内方へ伸びている。
【0037】
第7位置80及び第8位置82にそれぞれ第7非貫通穴92及び第8非貫通穴94を設けた後、第1鉄筋56を用意し、該第1鉄筋の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入し、かつ、各端部52を梁12の内部に固定する。その後、上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第3鉄筋78を用意し、該第3鉄筋の一端部を第5非貫通穴88に、他端部を第6非貫通穴90にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を梁12の内部に固定する。
【0038】
その後、第2鉄筋64を用意し、該第2鉄筋の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入し、かつ、各端部60を梁12の内部に固定する。その後、前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第4鉄筋84を用意し、該第4鉄筋の一端部を第7非貫通穴92に、他端部を第8非貫通穴94にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を梁12の内部に固定する。その後、梁12の側部14に突起66を形成する。突起66は第1鉄筋56の中央部54と第2鉄筋64の中央部62と第3鉄筋78の前記中央部と第4鉄筋84の前記中央部とを覆う。
【0039】
図17に示す例では、第1位置36は、前記第2水平方向に対して垂直な面で見て、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて、前記第1水平方向に対してほぼ45度の角度をなして交差する第1傾斜方向に前記第1間隔(図17に符号32で示す。)を置かれ、かつ上方へ前記第1傾斜方向と直交する第2傾斜方向に前記第2間隔(図17に符号34で示す。)を置かれており、第2位置40は、穿孔領域24から各端部分16、18に向けて前記第1傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2傾斜方向に前記第2間隔を置かれている。また、第3位置44は、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分16に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれており、第4位置48は、穿孔領域24から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分18に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれている。
【0040】
この場合、第1鉄筋56は、前記第2傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部52及び該端部の間に設けられた、各端部52に対して垂直な中央部54を有する。また、第2鉄筋64は、前記第1傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部60及び該端部の間に設けられた、各端部60に対して垂直な中央部62を有する。図17に示した例では、第2鉄筋64の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入し、かつ、各端部60を梁12の内部に固定した後、梁12の側部14に突起66を形成する。
【0041】
梁12の側部14に突起66を形成する図17に示した例に代え、突起66を形成しなくてもよい。この場合、第1位置36、第2位置40、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第1非貫通穴38、第2非貫通穴42、第3非貫通穴46及び第4非貫通穴50を設けた後、第1鉄筋56を用意する前に梁12の側部14に、第2水平方向外方へ開放され、第1位置36から第2位置40へ前記第2傾斜方向に伸びる第1溝(図示せず)と、第2水平方向外方へ開放され、第3位置44から第4位置48へ前記第1傾斜方向に伸びる第2溝(図示せず)とを設ける。その後、第1鉄筋56の一端部52を第1非貫通穴38に、他端部52を第2非貫通穴42にそれぞれ挿入するとき、第1鉄筋56の中央部54が前記第1溝に受け入れられるようにし、第2鉄筋64の一端部60を第3非貫通穴46に、他端部60を第4非貫通穴50にそれぞれ挿入するとき、第2鉄筋64の中央部62が前記第2溝に受け入れられるようにする。梁12の内部への第1鉄筋56の各端部52の固定と、第2鉄筋64の各端部60の固定とを行った後、前記第1溝及び前記第2溝のそれぞれに、モルタルからなる充填材を満たす。
【0042】
梁12に作用する前記せん断力が比較的小さい場合、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付けること及び第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付けることの双方を行う図5に示した例に代え、図18に示すように、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付けることのみを行い、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付けることを行わなくてもよい。また、図19に示すように、第3位置44及び第4位置48にそれぞれ第2鉄筋64の一端部60及び他端部60を取り付けることのみを行い、第1位置36及び第2位置40にそれぞれ第1鉄筋56の一端部52及び他端部52を取り付けることを行わなくてもよい。
【0043】
上記の補強方法を、梁12に適用することに代え、図20に示すように、水平面で見て前記第1水平方向に伸びる壁96に適用してもよい。また、上記の補強方法を床スラブ28に適用してもよい。この場合、床スラブ28は、前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に前記第2水平方向に間隔を置かれた2つの側部分と、該側部分の間に設けられた穿孔領域とを有する、水平な頂部又は底部を有し、床スラブ28に対する補強は、該床スラブに、前記穿孔領域を経て床スラブ28を上下方向に貫く貫通穴を設ける前になされる。
【符号の説明】
【0044】
10 建物
12 梁
14 側部
16、18 端部分
20 頂部分
22 底部分
24 穿孔領域
30 貫通穴
36 第1位置
38 第1非貫通穴
40 第2位置
42 第2非貫通穴
44 第3位置
46 第3非貫通穴
48 第4位置
50 第4非貫通穴
52 第1鉄筋の端部
54 第1鉄筋の中央部
56 第1鉄筋
60 第2鉄筋の端部
62 第2鉄筋の中央部
64 第2鉄筋
66 突起
68 第1溝
70 第2溝
72 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1水平方向に伸びる、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁であって前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分及び底部分と、前記頂部分と前記底部分との間に設けられた穿孔領域とを有する、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に対して垂直な側部を有する梁に、前記穿孔領域を経て前記梁を前記第2水平方向に貫く、配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法であって、
前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設ける第1ステップと、
前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に、該第3位置において開放され、前記第3位置から第2水平方向内方へ伸びる第3非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に、該第4位置において開放され、前記第4位置から第2水平方向内方へ伸びる第4非貫通穴をそれぞれ設ける第2ステップと、
上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第1鉄筋を用意する第3ステップと、
前記第1鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定する第4ステップと、
前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第2鉄筋を用意する第5ステップと、
前記第2鉄筋の一端部を前記第3非貫通穴に、他端部を前記第4非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定する第6ステップとを含む、梁の補強方法。
【請求項2】
前記第6ステップの後に前記梁の前記側部に、該側部から第2水平方向外方へ突出し、前記穿孔領域を取り巻く環状の平面形状を有する、コンクリート又はモルタルからなる突起であって前記第1鉄筋の前記中央部と前記第2鉄筋の前記中央部とを覆う突起を形成する第7ステップを含む、請求項1に記載の梁の補強方法。
【請求項3】
前記第1ステップの前又は前記第2ステップと前記第3ステップとの間に前記梁の前記側部に、第2水平方向外方へ開放され、前記第1位置から前記第2位置へ上下方向に伸びる第1溝と、前記第3位置から前記第4位置へ前記第1水平方向に伸びる第2溝とを設ける第8ステップを含み、
前記第4ステップにおいて前記第1鉄筋の前記中央部が前記第1溝に受け入れられるようにし、前記第6ステップにおいて前記第2鉄筋の前記中央部が前記第2溝に受け入れられるようにし、
前記第6ステップの後に前記第1溝及び前記第2溝のそれぞれに、モルタルからなる充填材を満たす第9ステップを含む、請求項1に記載の梁の補強方法。
【請求項4】
第1水平方向に伸びる、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁であって前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分及び底部分と、前記頂部分と前記底部分との間に設けられた穿孔領域とを有する、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に対して垂直な側部を有する梁に、前記穿孔領域を経て前記梁を前記第2水平方向に貫く、配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法であって、
前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、
上下方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する鉄筋を用意すること、
前記鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含む、梁の補強方法。
【請求項5】
第1水平方向に伸びる、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁であって前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分及び底部分と、前記頂部分と前記底部分との間に設けられた穿孔領域とを有する、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に対して垂直な側部を有する梁に、前記穿孔領域を経て前記梁を前記第2水平方向に貫く、配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法であって、
前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1水平方向に前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1水平方向に前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、
前記第1水平方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する鉄筋を用意すること、
前記鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含む、梁の補強方法。
【請求項6】
第1水平方向に伸びる、既存の建物の鉄筋コンクリート製の梁であって前記第1水平方向に間隔を置かれた2つの端部分と、該端部分の間に間隔を置かれた頂部分及び底部分と、前記頂部分と前記底部分との間に設けられた穿孔領域とを有する、前記第1水平方向と直交する第2水平方向に対して垂直な側部を有する梁に、前記穿孔領域を経て前記梁を前記第2水平方向に貫く、配管のための貫通穴を設ける前に前記梁を補強する方法であって、
前記第2水平方向に対して垂直な面で見て、前記梁の前記側部における、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1水平方向に対してほぼ45度の角度をなして交差する第1傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ上方へ前記第1傾斜方向と直交する第2傾斜方向に前記第1間隔より大きい第2間隔を置かれた第1位置に、該第1位置において開放され、前記第1位置から第2水平方向内方へ伸びる第1非貫通穴を、前記穿孔領域から各端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ下方へ前記第2傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第2位置に、該第2位置において開放され、前記第2位置から第2水平方向内方へ伸びる第2非貫通穴をそれぞれ設けること、
前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ一端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第3位置に、該第3位置において開放され、前記第3位置から第2水平方向内方へ伸びる第3非貫通穴を、前記穿孔領域から上方及び下方のそれぞれへ前記第2傾斜方向に前記第1間隔を置かれ、かつ他端部分に向けて前記第1傾斜方向に前記第2間隔を置かれた第4位置に、該第4位置において開放され、前記第4位置から第2水平方向内方へ伸びる第4非貫通穴をそれぞれ設けること、
前記第2傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第1鉄筋を用意すること、
前記第1鉄筋の一端部を前記第1非貫通穴に、他端部を前記第2非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定すること、
前記第1傾斜方向に間隔を置かれ、それぞれが前記第2水平方向に伸びる、平行な2つの端部及び該端部の間に設けられた、各端部に対して垂直な中央部を有する第2鉄筋を用意すること、
前記第2鉄筋の一端部を前記第3非貫通穴に、他端部を前記第4非貫通穴にそれぞれ挿入し、かつ、各端部を前記梁の内部に固定することを含む、梁の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−208392(P2011−208392A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75598(P2010−75598)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】