説明

既設柱の耐震補強構造

【課題】 耐震補強された既設柱の周りを安全に通行できると共に、この既設柱の周りの利用スペースを広げることができる既設柱の耐震補強構造を提供することにある。
【解決手段】 この既設柱の耐震補強構造は、断面四角形の既設柱9と、略一続きになってこの既設柱9の略全周を囲む一組の4本の線材4と、この一組の4本の線材4によって上記既設柱9の角を把持するように隣り合う上記線材4,4を連結する連結部材1とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄筋コンクリート建造物における既設柱を地震などに対して補強するために用いられる既設柱の耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の既設柱の耐震補強構造は、断面四角形の既設柱と、この既設柱の角に配設された係合部材と、隣り合う上記係合部材を連結する緊締部材とを備えていた(特許第3293777号公報:特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の既設柱の耐震補強構造では、上記係合部材は、上記既設柱の角から突出するので、上記既設柱が人通りの多い場所にある場合には、通行人に危険性があった。
【0004】
また、上記係合部材は上記既設柱の外接円の外側に配置されるので、上記既設柱の横断面の径方向の長さが大きくなって、上記既設柱の周囲の利用スペースを狭めていた。また、上記既設柱の周囲を板材等の仕上げ材で覆うと、この断面積は大きくなって、特に駅舎のコンコース、駐車場、店舗や倉庫内の利用スペースや通行域が狭くなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3293777号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、耐震補強された既設柱の周りを安全に通行できると共に、この既設柱の周りの利用スペースを広げることができる既設柱の耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の既設柱の耐震補強構造は、
断面多角形の既設柱と、
略一続きになってこの既設柱の略全周を囲む一組の複数の線材と、
この一組の複数の線材によって上記既設柱の角を把持するように隣り合う上記線材を連結する連結部材と
を備え、
上記各線材は、上記既設柱の少なくとも1つの角を囲むと共に、上記既設柱の辺の位置に端部を有し、
上記連結部材は、上記既設柱の辺の位置にあり、上記隣り合う線材の隣り合う端部を連結することを特徴としている。
【0007】
ここで、上記既設柱の断面形状は、3角形以上の多角形である。
【0008】
この発明の既設柱の耐震補強構造によれば、上記連結部材は、上記既設柱の辺に配設されて、上記隣り合う線材を連結しているので、上記既設柱の角には、上記連結部材がなくて、上記既設柱が人通りの多い場所にある場合でも、通行人に危険性がない。
【0009】
また、上記連結部材を上記既設柱の外接円の内側に配置することができて、上記既設柱の横断面の径方向の長さが大きくならなく、上記既設柱の周囲の利用スペースを狭めることがない。また、上記既設柱の周囲を板材等の仕上げ材で覆っても、この断面積はあまり大きくならず、特に駅舎のコンコース、駐車場、店舗や倉庫内の利用スペースや通行域は狭くならない。
【0010】
また、一実施形態の既設柱の耐震補強構造では、上記一組の複数の線材を上記既設柱の軸に沿って複数組配設しており、上記連結部材は、上記既設柱の軸に沿って延びて、上記複数組の複数の線材を連結している。
【0011】
この一実施形態の既設柱の耐震補強構造によれば、上記連結部材は、上記既設柱の軸に沿って延びて、上記複数組の複数の線材を連結しているので、上記連結部材の部品数を削減して、コストを低減できる。また、上記線材の間隔を確実に保持できる。また、上記連結部材が支えになって、上記線材の取り付け作業が容易になる。
【0012】
また、一実施形態の既設柱の耐震補強構造では、
上記線材の両端部は、雄ネジを設け、
上記連結部材は、
上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数設けた本体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有している。
【0013】
この一実施形態の既設柱の耐震補強構造によれば、上記隣り合う線材のうちの一方の線材の端部を、上記連結部材本体の一の貫通孔に挿通し、この端部に上記ナットを螺合すると共に、上記隣り合う線材のうちの他方の線材の端部を、上記連結部材本体の他の貫通孔に挿通し、この端部に上記ナットを螺合して、上記連結部材によって、上記隣り合う線材の隣り合う端部を連結する。このように、上記連結部材の構成を簡単にできて、コストの低減を図ることができる。
【0014】
また、一実施形態の既設柱の耐震補強構造では、
上記線材の両端部は、雄ネジを設け、
上記連結部材は、
上記線材の一方の端部を連結する第1の連結部と、
上記線材の他方の端部を連結する第2の連結部と
を有し、
上記第1の連結部は、
上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数設けた本体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有し、
上記第2の連結部は、
互いの面を接合して上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数形成した第1の半割体および第2の半割体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有している。
【0015】
この一実施形態の既設柱の耐震補強構造によれば、上記線材の一方の端部を、上記第1の連結部の貫通孔に挿通してから、上記線材の他方の端部を、上記第1の半割体および上記第2の半割体で挟んでこの接合面に設けられた上記貫通孔に配置する。このように、上記第1の連結部および上記第2の連結部に上記線材を取り付けやすくなる。
【0016】
また、一実施形態の既設柱の耐震補強構造では、上記隣り合う線材の隣り合う端部は、互いに逆向きの螺旋を有する雄ネジを設け、上記連結部材は、互いに逆向きの螺旋を有する雌ネジを設けたターンバックルである。
【0017】
この一実施形態の既設柱の耐震補強構造によれば、上記連結部材は、ターンバックルであるので、上記連結部材を一方向に回転させることで、上記隣り合う線材を同時に締め付けて連結することができる。このように、上記線材と上記連結部材との連結を容易に行うことができる。
【0018】
また、一実施形態の既設柱の耐震補強構造では、上記既設柱の軸に沿って延びていると共に上記既設柱の角と上記線材との間に配置される鋼板を備えている。
【0019】
この一実施形態の既設柱の耐震補強構造によれば、上記鋼板は、上記既設柱の角と上記線材との間に配置されるので、上記既設柱の角を上記既設柱の軸方向にわたって略均一に締め付けることができる。したがって、上記一組の複数の線材を上記既設柱の軸に沿って複数組配設した場合、上記鋼板は、上記既設柱の角と上記複数組の複数の線材との間に配置されるので、隣り合う組の線材の間のピッチを大きくできて、上記線材の本数を減少できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の既設柱の耐震補強構造によれば、上記連結部材は、上記既設柱の辺に配設されて、上記隣り合う線材を連結しているので、耐震補強された既設柱の周りを安全に通行できると共に、この既設柱の周りの利用スペースを広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の既設柱の耐震補強構造の一実施形態である斜視図を示している。この既設柱の耐震補強構造は、断面四角形の既設柱9と、略一続きになってこの既設柱9の略全周を囲む一組の4本の線材4と、この一組の4本の線材4によって上記既設柱9の角を把持するように隣り合う上記線材4,4を連結する4本の連結部材1とを備えている。
【0023】
上記一組の4本の線材4を上記既設柱9の軸91の長さ方向に沿って複数組配設している。上記4本の連結部材1は、上記既設柱9の各辺の位置にあり、上記既設柱9の軸91に沿って延びて、上記複数組の4本の線材4を連結する。
【0024】
上記既設柱9の角と上記複数組の4本の線材4との間には、上記既設柱9の軸91に沿って延びている鋼板6を配置している。
【0025】
上記既設柱9は、例えば、鉄筋コンクリート製であり、駅舎のコンコース、駐車場、店舗や倉庫内などに配設されている。上記既設柱9の角は、実際、面取りされている。
【0026】
上記線材4は、上記既設柱9の1つの角を囲むと共に、上記既設柱9の辺の位置に端部を有している。すなわち、上記線材4は、鋼製であり、略L形に屈曲形成されている。上記線材4の両端部は、雄ネジを設けている。隣接する上記線材4,4の隣接する端部は、上下方向(つまり、上記既設柱9の軸91方向)に、重なっている。
【0027】
上記連結部材1は、上記隣り合う線材4,4の隣り合う端部を連結する。上記連結部材1は、上記線材4の一方の端部を連結する第1の連結部10と、上記線材4の他方の端部を連結する第2の連結部20とを有する。
【0028】
上記第1の連結部10は、上記既設柱9の対向する一方の一対の辺のそれぞれに設けられ、上記第2の連結部20は、上記既設柱9の対向する他方の一対の辺のそれぞれに設けられている。
【0029】
上記第1の連結部10は、上記線材4の端部を挿通する貫通孔13を長さ方向に複数設けた本体11と、上記線材4の端部の雄ネジに螺合して上記線材4の端部を上記貫通孔13から抜け止めするナット14とを有する。
【0030】
上記本体11は、上記既設柱9の軸91に沿って延びた長尺部材であり、上記既設柱9の辺に設けられている。上記貫通孔13は、上記既設柱9の辺に沿うと共に上記本体11の長さ方向に垂直な方向に上記本体11を貫通して設けた孔である。複数の上記貫通孔13は、上記既設柱9の軸91に沿って、所定間隔離隔して設けられている。
【0031】
そして、上記隣り合う線材4,4のうちの一方の線材4の端部は、上記本体11の一の貫通孔13に一方から他方に向かって挿通され、この端部に上記ナット14が螺合される。上記隣り合う線材4,4のうちの他方の線材4の端部は、上記本体11の他の貫通孔13に他方から一方に向かって挿通され、この端部に上記ナット14が螺合される。このように、上記第1の連結部10によって、上記隣り合う線材4,4の隣り合う端部を連結する。もう一方の第1の連結部10は、上記既設柱9の対向辺に設けられ、隣り合う線材4,4の端部を同様に連結する。
【0032】
上記第2の連結部20は、互いの面を接合して上記線材4の端部を挿通する貫通孔23を長さ方向に複数形成した第1の半割体21および第2の半割体22と、上記線材4の端部の雄ネジに螺合して上記線材4の端部を上記貫通孔23から抜け止めするナット24とを有する。
【0033】
上記第1の半割体21は、上記既設柱9の軸91に沿って延びた長尺部材であり、上記既設柱9の辺に設けられている。上記第1の半割体21の上記第2の半割体22に対向する面には、上記既設柱9の軸91に沿って所定間隔離隔して複数の凹溝21aが設けられている。この凹溝21aは、上記既設柱9の辺に沿うと共に上記第1の半割体21の長さ方向に垂直な方向に上記第1の半割体21の全幅にわたって設けた溝である。上記第1の半割体21には、隣り合う上記凹溝21aの間に、雌ネジを付したボルト孔25aが穿孔されている。
【0034】
上記第2の半割体22は、上記既設柱9の軸91に沿って延びた長尺部材であり、上記第1の半割体21に関して上記既設柱9と反対側にある。上記第2の半割体22の上記第1の半割体21に対向する面には、上記第1の半割体21の上記凹溝21aに対応して、上記既設柱9の軸91に沿って所定間隔離隔して複数の凹溝22aが設けられている。この凹溝22aは、上記既設柱9の辺に沿うと共に上記第2の半割体22の長さ方向に垂直な方向に上記第2の半割体22の全幅にわたって設けた溝である。上記第2の半割体22には、隣り合う上記凹溝22aの間に、上記ボルト孔25aに対応して、ボルト挿通孔25bが穿孔されている。
【0035】
上記第1の半割体21と上記第2の半割体22とは、上記ボルト25を上記ボルト挿通孔25bに挿通して上記ボルト孔25aに螺合することで、結合される。上記第1の半割体21の凹溝21aと上記第2の半割体22の凹溝22aとの合体にて上記貫通孔23を形成する。
【0036】
そして、上記隣り合う線材4,4のうちの一方の線材4の端部は、上記第1の半割体21の一の凹溝21aに嵌め込まれると共に、上記隣り合う線材4,4のうちの他方の線材4の端部は、上記第1の半割体21の他の凹溝21aに嵌め込まれる。
【0037】
上記第2の半割体22を上記第1の半割体21に結合することで、上記一方の線材4の端部は、上記第2の半割体22の一の凹溝22aに嵌め込まれると共に、上記他方の線材4の端部は、上記第2の半割体22の他の凹溝22aに嵌め込まれる。
【0038】
すなわち、上記一方の線材4の端部は、一の上記貫通孔23を貫通し、上記他方の線材4の端部は、他の上記貫通孔23を貫通する。上記一方の線材4の端部に上記ナット24が螺合され、上記他方の線材4の端部に上記ナット24が螺合される。このように、上記第2の連結部20によって、上記隣り合う線材4,4の隣り合う端部を連結する。
【0039】
次に、上記既設柱9を耐震補強する方法を説明する。
【0040】
上記第1の連結部10の上記本体11を、上記既設柱9の一の対向2辺に仮止めし、上記第2の連結部20の上記第1の半割体21を、上記既設柱9の他の対向2辺に仮止めし、上記鋼板6を上記既設柱9の角に仮止めする。
【0041】
そして、上記線材4の一方の端部を、上記第1の連結部10の上記貫通孔13に挿通しつつ、上記線材4の他方の端部を、上記第2の連結部20の上記第1の半割体21の上記凹溝21aに嵌め込んで、全ての線材4を位置決めする。
【0042】
その後、上記第2の連結部20の上記第2の半割体22を上記第1の半割体21に、上記ボルト25を上記ボルト挿通孔25bに挿通して上記ボルト孔25aに螺合することで、取り付けて、上記線材4の他方の端部を上記第1の半割体21および上記第2の半割体22で挟んでこの接合面に設けられた上記貫通孔23に配置する。
【0043】
そして、上記線材4の両端部に上記ナット14,24を螺合して、上記第1の連結部10および上記第2の連結部20に上記線材4を取り付ける。
【0044】
このように、上記線材4によって、上記鋼板6を介して、上記既設柱9の四角を上記既設柱9の軸91に沿った略全長に渡って締め付ける。したがって、地震時の応力によって、上記既設柱9にひび割れや破壊が生じないようにできる。すなわち、上記既設柱9は、剛性が小さくて、地震時に破壊される可能性が高く、この既設柱9を締め付けることで、上記既設柱9の補強を図ることができる。
【0045】
上記構成の既設柱の耐震補強構造によれば、上記連結部材1は、上記既設柱9の辺に配設されて、上記隣り合う線材4,4を連結しているので、上記既設柱9の角には、上記連結部材1がなくて、上記既設柱9が人通りの多い場所にある場合でも、通行人に危険性がない。特に、駅舎のコンコース、駐車場、店舗や倉庫内などの既設柱9の補強に有利である。
【0046】
また、図2に示すように、上記連結部材1を上記既設柱9の外接円92の内側に配置することができて、上記既設柱9の横断面の径方向の長さが小さくなって、上記既設柱9の周囲の利用スペースを広げることができる。また、上記既設柱9の周囲を板材等の仕上げ材で覆っても、この断面積はあまり大きくならず、通行域は狭くならない。
【0047】
また、上記線材4を連結して上記既設柱9を締めつけるのは、上記線材4と上記既設柱9とが密接する程度に締めつければよくて、大きな張力を付与する特殊な装置は必要なく、作業も簡単である。
【0048】
また、上記連結部材1は、上記既設柱9の軸91に沿って延びて、上記複数組の線材4を連結しているので、上記連結部材1の部品数を削減して、コストを低減できる。
【0049】
また、上記鋼板6は、上記既設柱9の角と上記複数組の線材4との間に配置されるので、上記既設柱9の角を上記既設柱9の軸91方向にわたって略均一に締め付けることができる。したがって、上記既設柱9の軸91方向の隣り合う組の線材4,4の間のピッチを大きくできて、上記線材4の本数を減少できる。
【0050】
(第2の実施形態)
図3は、この発明の既設柱の耐震補強構造の第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、線材5は、上記既設柱9の隣接する2つの角を囲むと共に、上記既設柱9の対向する一対の辺に端部を有している。すなわち、上記線材5は、略U形に屈曲形成されている。そして、2本の上記線材5,5によって上記既設柱9の全周を囲む。
【0051】
上記既設柱9の対向する上記一対の辺にのみ連結部材3,3を設けている。この連結部材3は、上記第1の実施形態の上記第1の連結部10と同じ構成であり、上記線材5の端部を挿通する貫通孔32を長さ方向に複数設けた長尺な本体31と、上記線材5の端部の雄ネジに螺合して上記線材5の端部を上記貫通孔32から抜け止めするナット34とを有する。
【0052】
そして、上記隣り合う線材5,5のうちの一方の線材5の一方の端部は、一方の上記本体31の一の貫通孔32に一方から他方に向かって挿通され、この端部に上記ナット34が螺合される。上記一方の線材5の他方の端部は、他方の上記本体31の一の貫通孔32に一方から他方に向かって挿通され、この端部に上記ナット34が螺合される。また、上記隣り合う線材5,5のうちの他方の線材5の一方の端部は、一方の上記本体31の他の貫通孔32に他方から一方に向かって挿通され、この端部に上記ナット34が螺合される。上記他方の線材5の他方の端部は、他方の上記本体31の他の貫通孔32に他方から一方に向かって挿通され、この端部に上記ナット34が螺合される。このように、上記連結部材3によって、上記隣り合う線材5,5の隣り合う端部を連結する。
【0053】
上記略U形の線材5は、例えば橋脚用の既設柱の中で最も大きい既設柱の幅に合わせて加工されている。そして、幅の小さい上記既設柱9に上記線材5を用いる場合、この既設柱9と上記鋼板6との間に調整ライナ7を嵌め込んで、上記既設柱9の四角を有効に締め付ける。
【0054】
上記構成の既設柱の耐震補強構造によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、上記連結部材3の構成を簡単にできて、コストの低減を図ることができる。
【0055】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、図示しないが、隣り合う線材の隣り合う端部は、互いに逆向きの螺旋を有する雄ネジを設け、連結部材は、互いに逆向きの螺旋を有する雌ネジを設けたターンバックルにしてもよく、上記連結部材を一方向に回転させることで、上記隣り合う線材を同時に締め付けて連結することができて、上記線材と上記連結部材との連結を容易に行うことができる。
【0056】
また、上記第1の実施形態において、上記第2の連結部20(分割型連結部材)に代えて、上記第1の連結部10(一体型連結部材)としてもよく、全ての連結部材を一体型連結部材にして、連結部材の構成を簡単にできて、コストを低減できる。または、全ての連結部材を、分割型連結部材にしてもよい。
【0057】
また、上記既設柱の断面形状は、三角形または五角形以上の多角形であってもよい。また、上記鋼板を省略して上記線材を直接に上記既設柱の角に接触させてもよい。また、上記鋼板の代わりに、上記既設柱の軸に沿って延びる他の鋼線を用いてもよい。また、上記連結部材を上記既設柱の軸に沿って複数個に分割してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の既設柱の耐震補強構造の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】この既設柱の耐震補強構造の平面図である。
【図3】本発明の既設柱の耐震補強構造の第2実施形態を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 連結部材
10 第1の連結部
11 本体
13 貫通孔
14 ナット
20 第2の連結部
21 第1の半割体
21a 凹溝
22 第2の半割体
22a 凹溝
23 貫通孔
24 ナット
25 ボルト
3 連結部材
31 本体
32 貫通孔
34 ナット
4 線材
5 線材
6 鋼板
7 調整ライナ
9 既設柱
91 軸
92 外接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面多角形の既設柱と、
略一続きになってこの既設柱の略全周を囲む一組の複数の線材と、
この一組の複数の線材によって上記既設柱の角を把持するように隣り合う上記線材を連結する連結部材と
を備え、
上記各線材は、上記既設柱の少なくとも1つの角を囲むと共に、上記既設柱の辺の位置に端部を有し、
上記連結部材は、上記既設柱の辺の位置にあり、上記隣り合う線材の隣り合う端部を連結することを特徴とする既設柱の耐震補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の既設柱の耐震補強構造において、
上記一組の複数の線材を上記既設柱の軸に沿って複数組配設しており、
上記連結部材は、上記既設柱の軸に沿って延びて、上記複数組の複数の線材を連結することを特徴とする既設柱の耐震補強構造。
【請求項3】
請求項1に記載の既設柱の耐震補強構造において、
上記線材の両端部は、雄ネジを設け、
上記連結部材は、
上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数設けた本体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有することを特徴とする既設柱の耐震補強構造。
【請求項4】
請求項1に記載の既設柱の耐震補強構造において、
上記線材の両端部は、雄ネジを設け、
上記連結部材は、
上記線材の一方の端部を連結する第1の連結部と、
上記線材の他方の端部を連結する第2の連結部と
を有し、
上記第1の連結部は、
上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数設けた本体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有し、
上記第2の連結部は、
互いの面を接合して上記線材の端部を挿通する貫通孔を長さ方向に複数形成した第1の半割体および第2の半割体と、
上記線材の端部の雄ネジに螺合して上記線材の端部を上記貫通孔から抜け止めするナットと
を有することを特徴とする既設柱の耐震補強構造。
【請求項5】
請求項1に記載の既設柱の耐震補強構造において、
上記隣り合う線材の隣り合う端部は、互いに逆向きの螺旋を有する雄ネジを設け、
上記連結部材は、互いに逆向きの螺旋を有する雌ネジを設けたターンバックルであることを特徴とする既設柱の耐震補強構造。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の既設柱の耐震補強構造において、
上記既設柱の軸に沿って延びていると共に上記既設柱の角と上記線材との間に配置される鋼板を備えることを特徴とする既設柱の耐震補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−56498(P2007−56498A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241273(P2005−241273)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】