説明

既設構造物の補強構造および補強工法

【課題】溶接作業を不要とし作業効率が良好な既設構造物の補強技術を提供する。
【解決手段】既設構造物10である杭、柱、および梁の周囲を取り囲むべく、該既設構造物10の周方向に互いに連結した複数の補強部材30からなる補強環40と、既設構造物10と補強環40との間に充填され固化した固化材3とで構成される構造であって、前記補強環40をなす各補強部材30が、前記周方向における他の補強部材30との接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部31と、該凸状部31の間で内側ほど幅広な凹状部32とを具備するものであり、前記補強環40は、一方の補強部材30の凸状部31が他方の補強部材30の凹状部32に嵌合し補強部材同士が互いに連結することで環状をなし、既設構造物10と離間してその外周を取り囲むものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設構造物の補強構造および補強工法に関するものであり、具体的には、溶接作業を不要とし作業効率が良好な補強技術に関する。
【背景技術】
【0002】
示方書改訂等に対応した耐震性向上を目的とし、既存のパイルベント橋脚など各種既設構造物に対する補強ニーズが存在する。こうした補強ニーズに応える従来工法としては、以下のようなものが提案されてきた。
【0003】
例えば、杭式橋脚(パイルベントピア)などに用いられる単柱基礎の補強方法を提供するとの課題の下、複数のセグメントピースで構設されるとともに単柱基礎の周囲の地盤に全部又は一部が圧入される沈設体を、前記単柱基礎の曲げ剛性を高める補剛体の原型として使用することを特徴とする単柱基礎の補強方法(特許文献1)が提案されている。
【0004】
また、既存杭の補強に必要な深度まで周辺地盤を掘削せず、地上レベル作業で既存杭の外周に外巻き鋼管を地中に圧入して補強する方法を提供するとの課題の下、 杭で支持された構造物の前記既存杭の外周に外巻き鋼管を巻いて既存杭を補強する方法において、 地盤を掘削して前記既存杭の頭部が露出する程度の作業スペースを形成し、その作業スペース上で杭頭部の外周に外巻き鋼管ユニットを巻く段階と、前記構造物の基礎下底面に設置した圧入装置により前記外巻き鋼管ユニットを既存杭に沿って地中に圧入する段階と、杭頭部外周に次上位の外巻き鋼管ユニットを巻き、地中に圧入された前記下位の外巻き鋼管ユニットと接合し、圧入装置により当該次上位の外巻き鋼管ユニットを地中に圧入する段階と、前記外巻き鋼管ユニットの杭頭部外周への外巻きと地中への圧入を繰り返し行い、既存杭の補強対象範囲を複数の外巻き鋼管ユニットにより完成された外巻き鋼管で巻く段階と、既存杭と外巻き鋼管との間隙の土砂排除後に充填材を充填する段階と、補強完了後に作業スペースを埋め戻す段階と、より成ることを特徴とする、外巻き鋼管の圧入による既存杭の補強方法(特許文献2)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−152746号公報
【特許文献2】特開平10−131176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既設杭の外周に、より大径の補強部材(鋼管など)を巻き立て、相互に継ぎながら地盤に順次圧入させる手法を採用する場合、補強部材同士の溶接作業が発生する。この溶接作業は、補強部材を巻き立てる毎に発生するため、溶接工の配置と多大な作業時間が必要となる。また、溶接作業の実行可否は天候に左右されやすく、天候不良時の工程への悪影響も少なくない。更には、溶接工の熟練度によって溶接結果の良否に差が生じるため、品質管理に注意が必要となる。また、各補強部材のフランジ部分やタブをボルト締結するなどして互いに連結する場合、こうしたボルト締結構造によって補強部材の内外周に突起が生じ、地盤圧入時における抵抗となりやすく、更に充填材が未充填となる箇所の発生が懸念される。
【0007】
そこで本発明は、溶接作業を不要とし作業効率が良好な既設構造物の補強技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の既設構造物の補強構造は、既設構造物である杭、柱、および梁の周囲を取り囲むべく、該既設構造物の周方向に互いに連結した複数の補強部材からなる補強環と、前記既設構造物と前記補強環との間に充填され固化した固化材とで構成される構造であって、前記補強環をなす各補強部材が、前記周方向に隣接する他の補強部材との接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部と、該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部とを具備するものであり、前記補強環は、一の補強部材の凸状部が、前記周方向に隣接する他の補強部材の凹状部に嵌合し補強部材同士が互いに連結することで環状をなし、前記既設構造物と離間してその外周を取り囲むものである、
ことを特徴とする。
【0009】
このような構造を採用すれば、既設構造物を囲む補強部材同士の連結に溶接作業を要しないことになり、熟練した溶接工や多大な作業時間も不要となる。また、溶接作業の如く作業の実行可否が天候に左右されることも無く、安定して工事を行うことが可能である。更には、補強部材同士を嵌合させるというシンプルな作業に特段の熟練度は要求されないから、作業員間で作業品質に差が生じるおそれも少ない。また、連結された補強部材らの内外周に大きな突起が生じることがなく、スムーズな地盤圧入が可能となる。したがって、溶接作業を不要とし、作業効率が良好な既設構造物の補強技術を提供できることができる。
【0010】
なお、前記既設構造物の補強構造において、前記補強環の外層側に、互いの凸状部と凹状部の嵌合部位をずらす配置で設置した他の補強環と、各補強環の間を一体に拘束する所定の拘束材と、前記既設構造物と各補強環のうち内側の補強環との間に充填され固化した固化材とを含むとしてもよい。
【0011】
これによれば、補強環がなす肉厚も二倍となり、補強効果もより高まることになる。また、固化材の充填による、補強環を外方に膨張させようとする力に対抗して、補強環をなす内層側、外層側の補強部材間の連結をより確実に維持することができる。また、固化材の充填による、補強環を外方に膨張させようとする力によって、一方の補強環をなす補強部材が前記嵌合部位で離散しようとしても、一体に拘束されている他方の補強環の補強部材が前記嵌合部位に当接して離散を抑止することになる。したがって、二層構造をなす補強環らが互いに構造の維持を図ることが可能となり、補強効果もより高まることになる。
【0012】
また、前記既設構造物の補強構造において、既設構造物の延伸方向に沿って互いに連結した複数の補強環を含み、前記補強環をなす各補強部材は、前記補強環同士の接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部または凹状部を更に備えたものであり、前記連結した複数の補強環は、一の補強環における補強部材の前記凸状部が、隣接する他の補強環における補強部材の前記凹状部に嵌合し補強環同士が互いに連結したものであり、前記連結した補強環と前記既設構造物との間に充填され固化した固化材を含むとしてもよい。これによれば、長尺の既設構造物に対する、溶接不要で作業効率良好な補強が可能となる。
【0013】
また、前記既設構造物の補強構造において、前記連結した複数の補強環が、地盤中における既設構造物の延伸方向に沿って配置された構造であるとしてもよい。これによれば、土中にあって長尺の既設構造物に対する、溶接不要で作業効率良好な補強が可能となる。
【0014】
また、本発明の既設構造物の補強工法は、既設構造物である杭、柱、および梁の補強工法であって、既設構造物を取り囲む環状の所定部材を、既設構造物の延長方向に沿って地盤に圧入する圧入装置を、該既設構造物の所定箇所に設置する第1の工程と、外側ほど幅広な複数の凸状部と該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部とを具備する複数の補強部材同士を、前記所定面の凸状部と凹状部とを嵌合させることで互いに連結し、前記既設構造物の周囲を取り囲む環状の補強環を形成する第2の工程と、既設構造物の周囲を取り囲んだ前記補強環を前記圧入装置により地盤中に圧入する第3の工程と、圧入済み補強環の補強部材における、当該圧入済みの補強環に隣接する他の補強環を構成する補強部材との接合面に備わる外側ほど幅広な複数の凸状部ないし該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部に対し、前記他の補強環の補強部材における前記接合面に備わる凹状部ないし凸状部を嵌合させて補強環の継ぎ足しを行い、前記圧入装置により、前記他の補強環と前記圧入済みの補強環とを更に地盤に圧入させる第4の工程と、前記継ぎ足しにより連続した補強環が所定の延伸長さに達するまで前記第4の工程を繰り返し実行する第5の工程と、各圧入作業と並行して、もしくは各圧入作業後、もしくは全ての圧入作業後に、補強環と既設構造物との間の土砂を除去する第6の工程と、土砂が除去された、既設構造物の周面とこれを取り囲む補強環との間の空間に、固化材を充填する第7の工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接作業を不要とし作業効率が良好な既設構造物の補強技術の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における既設構造物の補強工法の全体工程例を示す図である。
【図2】本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例1を示す図である。
【図3】本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例2を示す図である。
【図4】本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例3を示す図である。
【図5】本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例4を示す図である。
【図6】他の実施形態における既設構造物の補強工法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における既設構造物の補強工法の全体工程例を示す図である。本実施形態では、補強工法を適用する既設構造物の例として、パイルベント橋脚をなす杭10をあげる。パイルベント橋脚は、基礎杭をそのまま地表より所定の高さまで立ち上げ、頭部を鉄筋コンクリート等の横梁で結合した構造を備える。かかる構造は、水密締め切り等の仮設工事が不要となることから、工事効率に優れ、これまで数多く採用されているが、地震時の応答変位が大きく、耐震補強を要する場合が多い。よって、本実施形態での補強対象とした。ただし、本発明の適用対象はパイルベント橋脚の杭に限定されず、既設の杭の他、柱、および梁といった棒状部材のいずれについても適用できる。
【0018】
まず、本実施形態の既設構造物の補強工法の全体工程について説明する。杭10は地盤5に打設されており、杭頭11にシュー12などを介して橋梁の桁13を載置している。この場合まず、杭頭11に対し、リブ1を備えた鋼板2を巻き立てて固定する(手順1)。この鋼板2のリブ1は、補強部材30を地盤5に圧入させるジャッキなど圧入装置20の反力支点となる。次に、リブ1に支点を置いて、杭10を把持する形で圧入装置20を設置する(手順2)。
【0019】
圧入装置20の設置後、該圧入装置20の下方空間で、補強部材30の設置作業を実施する(手順3)。本実施形態における補強部材30は、補強対象となる前記杭10の外周において補強部材同士が周方向に互いに連結する構造を備えている。すなわち、補強部材同士の接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部と、該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部とを備えた部材であり、断面が弧状の鋼板である。こうした構造の複数の補強部材30について、一方の補強部材30の凸状部を他方の補強部材30の凹状部に嵌合させることで互いに連結させ、杭10の周面と一定距離だけ離間して、杭10の外周を取り囲む。この補強部材30の設置作業について詳細は後述する。
【0020】
前記手順3により、杭10の外周を取り囲んだ補強部材群(以下、補強環40と称する)が、圧入装置20の下方空間に構成される。次に、圧入装置20は、前記リブ1に反力支点を得て、補強環40を地盤5に向けて圧入する(手順4)。圧入装置20は、所定の油圧装置から駆動力を得て伸縮するシリンダー21を延伸し、前記補強環40を地盤5の所定深度まで圧入させた後、シリンダー21を収縮させることにより、再び補強部材30を連結して補強環40を構成するための領域を確保する。
【0021】
1つの補強環40を地盤5に圧入した後、圧入装置20の下方空間において、前記圧入済みの補強環40の上端部に備わる凸状部ないし凹状部(前記接合面に備わるものと同様のもの)に対し、他の補強部材30の下端部に備わる凹状部ないし凸状部を嵌合させて新たな補強環50を継ぎ足し、この新たな補強環50ごと圧入済みの補強環40を更に地盤5に圧入させる(手順5)。なお、杭10の補強に関して予め算定している深さに補強環40が到達するまで、前記手順6の補強環の継ぎ足し作業と圧入作業とを繰り返し実行する。
【0022】
杭10の周囲において、必要な長さ分だけ補強環40を連結して設置したならば、杭10の周面とこれを取り囲む補強環40との間に例えば加圧水を噴射して、土砂を除去する(手順6)。また、手順7により土砂が除去された後に残された空間、つまり、杭10の周面とこれを取り囲む補強環40らとの間の空間に、モルタルなどの固化材3を充填する(手順7)。固化材3により杭10と補強環40とは一体となり、杭10は実質的に拡径され強度が向上したことになる。こうして、補強環40、50と固化した固化材3とで構成される補強構造が構成される。
【0023】
なお上記では、杭10の周囲において、必要な長さ分だけ補強環40を連結し全て設置した後に、杭10の周面と補強環40との間の土砂を除去し、残された空間に固化材3を充填するとしたが、例えば、補強環40および補強環50の1組を地盤5に圧入するのと並行して、或いは前記1組を圧入するごとに前記土砂の除去を行うとしてもよい。
【0024】
続いて、補強部材30を互いに連結させて補強環40を順次構成していく手順について説明する。図2は本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例1を、図3は本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例2を、図4は本実施形態における既設構造物の補強工法の手順例3をそれぞれ示す図である。
【0025】
ここでは、前記補強環40を内層側と外層側の二層設ける場合について説明する。また、補強部材30は、同じ補強環を構成する他の補強部材30との接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部31と、該凸状部31の間で内側ほど幅広な凹状部32を備えた構造となっている。図2の手順Aに示すように、杭10と一定の距離dだけ離間した位置で、断面が弧状の補強部材30を前記接合面の凹凸をもって互いに嵌合、連結させ、杭10を取り囲む環状の補強環40(内層側の補強環)を構成する。こうした補強部材同士の連結は、一方の補強部材30の凸状部31を、他方の補強部材30の凹状部32に嵌合させることで実行される。凸状部31は外側ほど幅広となる形状であり、凹状部32は凸状部31の形状に対応して内側ほど幅広となる形状であって、互いに噛合しているから、連結後の補強部材間に離間する向きの力が作用しても連結を解くことはない。
【0026】
杭10の外周を、まず内層側の補強環40で取り囲んだならば、続いて、この補強環40の外周上に外層側の補強環50を更に構成する(手順B)。この場合、補強環40における、凸状部31と凹状部32との嵌合部位30a(前記接合面と言える)を跨ぐ位置に、補強環50の補強部材30を配置する。また、この補強環50と補強環40とは、両者を貫通するボルト8(拘束材)で一体に締結する(手順C)。このボルト8による補強環40、50の締結に際しては、ボルト貫通位置が各補強環40、50における補強部材30のつなぎ目(嵌合部位)に当たらぬよう、前記つなぎ目を避けてボルト8の貫通、締結を行うものとする。
【0027】
なお、内層側の補強環40の上端より所定距離cだけ下方に、外層側の補強環50を構成することにする。このようにすれば、後に、補強環40(地盤中に圧入処理済み)の上端に次の段の補強環継ぎ足しを行う際に、上端における凸状部45ないし凹状部46が露出しており、次の段の補強部材30の下端との連結が確実に行えることとなる。
【0028】
続いて、図3にて示すように、上記までの手順で一体に構成された二重の補強環40、50を、圧入装置20によって、杭10の延伸方向に沿って地盤5に圧入させる(手順D)。なお、ここで圧入した補強環40、50の下端部は、他の補強部材30の如く凸状部45ないし凹状部46を備えていないものとすれば好適である。これは、補強環40の下端部が地盤に圧入される先端となることを考慮し、圧入時に変形しにくくするためである。
【0029】
また、ここで圧入した補強環40、50のうち、内層側の補強環40を構成する補強部材30の上端部(すなわち補強環同士の接合面)に備わる凸状部45ないし凹状部46に対し、新たな補強部材30の下端部(補強環同士の接合面)に備わる凹状部32ないし凸状部31を嵌合させて(手順E)、内層側の補強環60を継ぎ足す作業を実行する(手順F、手順G)。
【0030】
また、図4にて示すように、前記補強環40、50のうち、外層側の補強環50を構成する補強部材30の上端部に備わる凸状部45ないし凹状部46に対し、新たな補強部材30の下端部に備わる凹状部32ないし凸状部31を嵌合させて(手順H)、外層側の補強環70を継ぎ足す作業を実行する(手順I、手順J)。
【0031】
こうした、補強部材30の連結と圧入を必要なだけ繰り返した後、図5に示すように、杭10の外周面と補強環40、60の内周面との間の土砂6に対し高圧水9を噴射して泥水化させ、これを泥水ポンプでくみ出す(手順K、手順L)。土砂6が除去された、杭10の外周面と補強環40、60の内周面との間の領域には、無収縮モルタルなどの固化材3を充填し、杭10と補強環40、50、60、70との一体化を図る(手順M)。なお、図5に例示するように、杭10と補強環40、60とが一定距離をもって離間するように、適宜なスペーサー90を設置すると好適である。
【0032】
上述の形態とは別に、図6に示すような形態で補強部材30を連結させ、補強工法を実施するとしてもよい。図6に示す例では、断面がL字型の補強部材35と、I字型の補強部材36とを連結させ、矩形の補強環を構成している。上段の例では、内層側の補強環80を4つのL字型補強部材35と、4つのI字型補強部材36の計8つの補強部材で構成し、外層側の補強環81を、4つのL字型補強部材35と、2つのI字型補強部材36の計6つの補強部材で構成している。
【0033】
また、下段の例では、内層側の補強環80を2つのコの字型補強部材37と、2つのI字型補強部材36の計4つの補強部材で構成し、外層側の補強環81を、2つのコの字型補強部材37と、2つのI字型補強部材36の計4つの補強部材で構成している。この場合でも、各補強部材は、上述した凸状部31や凹状部32を同様に備えて互いに連結される。また、圧入作業や継ぎ足し作業も上述の実施形態と同様に実行される。
【0034】
以上、本実施形態によれば、溶接作業を不要とし作業効率が良好な既設杭補強技術の提供が可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 リブ
2 鋼板
3 固化材
5 地盤
6 土砂
8 ボルト
10 杭(既設構造物)
11 杭頭
12 シュー
13 橋梁の桁
20 圧入装置
21 シリンダー
30 補強部材
30a 嵌合部位
31 凸状部
32 凹状部
35 L字型補強部材
36 I字型補強部材
37 コの字型補強部材
40〜81 補強環
45 凸状部
46 凹状部
90 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物である杭、柱、および梁の周囲を取り囲むべく、該既設構造物の周方向に互いに連結した複数の補強部材からなる補強環と、前記既設構造物と前記補強環との間に充填され固化した固化材とで構成される構造であって、
前記補強環をなす各補強部材が、前記周方向に隣接する他の補強部材との接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部と、該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部とを具備するものであり、
前記補強環は、一の補強部材の凸状部が、前記周方向に隣接する他の補強部材の凹状部に嵌合し補強部材同士が互いに連結することで環状をなし、前記既設構造物と離間してその外周を取り囲むものである、
ことを特徴とする既設構造物の補強構造。
【請求項2】
前記補強環の外層側に、互いの凸状部と凹状部の嵌合部位をずらす配置で設置した他の補強環と、各補強環の間を一体に拘束する所定の拘束材と、
前記既設構造物と各補強環のうち内側の補強環との間に充填され固化した固化材と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の既設構造物の補強構造。
【請求項3】
既設構造物の延伸方向に沿って互いに連結した複数の補強環を含み、
前記補強環をなす各補強部材は、前記補強環同士の接合面において、外側ほど幅広な複数の凸状部または凹状部を更に備えたものであり、
前記連結した複数の補強環は、一の補強環における補強部材の前記凸状部が、隣接する他の補強環における補強部材の前記凹状部に嵌合し補強環同士が互いに連結したものであり、
前記連結した補強環と前記既設構造物との間に充填され固化した固化材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の既設構造物の補強構造。
【請求項4】
前記連結した複数の補強環が、地盤中における既設構造物の延伸方向に沿って配置された構造であることを特徴とする請求項3に記載の既設構造物の補強構造。
【請求項5】
既設構造物である杭、柱、および梁の補強工法であって、
既設構造物を取り囲む環状の所定部材を、既設構造物の延長方向に沿って地盤に圧入する圧入装置を、該既設構造物の所定箇所に設置する第1の工程と、
外側ほど幅広な複数の凸状部と該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部とを具備する複数の補強部材同士を、前記所定面の凸状部と凹状部とを嵌合させることで互いに連結し、前記既設構造物の周囲を取り囲む環状の補強環を形成する第2の工程と、
既設構造物の周囲を取り囲んだ前記補強環を前記圧入装置により地盤中に圧入する第3の工程と、
圧入済み補強環の補強部材における、当該圧入済みの補強環に隣接する他の補強環を構成する補強部材との接合面に備わる外側ほど幅広な複数の凸状部ないし該凸状部の間で内側ほど幅広な凹状部に対し、前記他の補強環の補強部材における前記接合面に備わる凹状部ないし凸状部を嵌合させて補強環の継ぎ足しを行い、前記圧入装置により、前記他の補強環と前記圧入済みの補強環とを更に地盤に圧入させる第4の工程と、
前記継ぎ足しにより連続した補強環が所定の延伸長さに達するまで前記第4の工程を繰り返し実行する第5の工程と、
各圧入作業と並行して、もしくは各圧入作業後、もしくは全ての圧入作業後に、補強環と既設構造物との間の土砂を除去する第6の工程と、
土砂が除去された、既設構造物の周面とこれを取り囲む補強環との間の空間に、固化材を充填する第7の工程と、
を含むことを特徴とする既設構造物の補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246627(P2012−246627A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117252(P2011−117252)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】