説明

既設管渠の更生方法、及び治具等

【課題】本管と取り付け管との接続部において本管に連通させるための穿孔を正確かつ迅速に形成することができる既設管渠の更生方法を提供すること。
【解決手段】磁石配置工程では、本管1と取り付け管2との接続部5において、取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を配置する。補修工程では、本管1を補修すべくその内周面の全周にわたって更生材6を配設する。磁石吸着工程では、更生材6によって塞がれた取り付け管2の接続部5に対応した位置に、待受側磁石片8の磁力を利用し、更生材6を介して探査側磁石片9を吸着させる。穿孔工程では、探査側磁石片9を目印として、その探査側磁石片9を中心位置に合わせた状態で更生材6に対して穿孔を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管渠の更生方法、磁石配置用治具、装着用工具、磁石ホルスター、及び補修部材に関するものである。特に本発明は、小口径の本管及び小口径の取り付け管を有する既設管渠の補修時に用いる更生材の穿孔に特徴を有する既設管渠の更生方法、磁石配置用治具、装着用工具、磁石ホルスター、及び補修部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路などの地中に管渠(例えば、下水管渠や雨水管渠)が埋設されている。図1には、本管1と取り付け管2と汚水桝3とからなる下水管渠10の一例を示している。この下水管渠10において、家庭の敷地内に設けられる汚水桝3が取り付け管2を介して本管1に接続されており、家庭の雑排水が汚水桝3から取り付け管2を介して本管1に排出される。
【0003】
このような既設の管渠は、長期間の使用によって老朽化が進むことに加え、重量車両の交通や地震などによる振動が原因で破損や漏水が生じてしまうことがある。特に、下水管渠10は重要なライフラインとなっており、下水管渠10の本管1に破損や漏水が生じる場合、一般市民の生活に支障をきたすため、破損や漏水などが生じた下水管渠10を補修して更生させる工事が必要となる。
【0004】
この管渠の更生工法としては、地面を掘削して損傷した既設管渠を撤去した後、新しい管渠を敷設する開削方式の工法や、地面を掘削しないで既設管渠の内周面を補修する非開削方式の工法が知られている。開削方式の工法では、地面の掘削を行うために、道路の交通を遮断しなければならず、工事期間の長期化も問題となる。従って、幹線道路、生活道路、多種多様の管渠が交錯している場所などにおいて公共性が優先される場合、開削方式の工法で既設管渠を補修することは困難となる。これに対して、非開削方式の工法では、既設管渠を掘り起こす必要がなく、施工に必要なスペースも少なくて済む。そのため、道路交通への影響を最小限に抑えつつ、既設管渠の損傷箇所を迅速に補修することが可能である。
【0005】
非開削方式の更生工法としては、既設管の内周面の全周にわたって補修する工法が知られている。具体的には、未硬化の樹脂を含浸させた不織布(更生材)を畳んだ状態で既設管内に引き込むか、空気圧または水圧により更生材を反転させて既設管内の全周に配置させる。そして、空気圧または水圧により加圧することで、更生材を既設管の内周面に密着させる。その状態を保持しながら更生材の樹脂を温水、蒸気、紫外線などにより硬化させて、既設管を補修する。その結果、図21に示されるように、既設の本管1内に更生材6によって新しい管渠が構築される。
【0006】
また、他の更生方法としては、図22に示されるように、既設の本管1内に塩化ビニールの帯板を巻いて円形に製管して更生管71を構築する。そして、本管1と更生管71との間の隙間にモルタルなどの裏込め材75を充填して既設の本管1の補修を行う方法が知られている。
【0007】
ところで、上記のような更生方法で既設の本管1を補修した場合、その本管1と取り付け管2との接続部5が更生材6や更生管71によって塞がれるため、その接続部5に穿孔を形成して本管1と取り付け管2とを連通させる必要がある。このため、例えば、先端に穿孔刃を有するフレキシブルシャフトを取り付け管2側から挿入し、更生材6や更生管71を取り付け管2側から穿孔する穿孔装置が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、汚水桝3と本管1との距離が離れ取り付け管2が長くなる場合や、取り付け管2が複雑に曲りくねっている場合などでは、特許文献1の穿孔装置を用いることができない。さらに、住宅が取り壊されて汚水桝3が除去された場合、いわゆる不明桝となる場合にも、特許文献1の穿孔装置を用いることができない。このような場合には、既設の本管1側から取り付け管2がある位置に穿孔を形成しなければならない。
【0009】
また、既設の本管1の大半は、作業者等が入れない小口径(例えば、直径が80cm以下)の管渠である。そのため、位置確認用のカメラや穿孔用のカッターを有するロボット車を本管内に搬入して穿孔を形成する穿孔装置が実用化されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−1585号公報
【特許文献2】特開平10−231955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図21や図22に示されるように、既設の本管1を更生した場合、取り付け管2がある位置(取り付け管2の接続部5)は、ロボット車のカメラなどを用いて本管1側から確認することができない不可視部分となるため、その位置の特定が困難となる。そのため、従来では、マンホールなどからの距離を測ることで取り付け管2がある位置を予測して穿孔を形成しなければならず、穿孔の位置ズレや削孔忘れなどの問題が生じてしまう。また、小さい孔を開け、取り付け管2がある位置を確認した後、孔の径を大きくして取り付け管2と本管1とを連通させる方法も検討されているが、この方法は、手間がかかり作業時間が長くなるといった問題が生じる。
【0011】
因みに、特許文献2には、取り付け管2(サービス管)側に磁石を挿入し、新設の本管1側の壁面に磁力で金属粉を吸着させて、取り付け管2の位置を特定する方法が開示されている。この特許文献2の方法では、磁石の磁力は本管1の壁面を通過することで弱くなるので、壁面に金属粉を接近させたり直接押し付けたりしないと、金属粉を確実に吸着させることができない。ここで、作業者が入ることができる大口径の管渠を更生する場合では、作業者によって本管1の壁面に金属粉を付着させ、取り付け管2の位置を特定することが可能である。これに対して、小口径の管渠を更生する場合、金属粉を吸着させるためにロボット車を用いる必要がある。この場合、本管1の壁面から距離が離れると磁石の磁力が弱まり金属粉が吸着しないため、ロボット車を用いて金属粉が吸着しうる位置に接近させたり、壁面に金属粉を押し付けたりする必要があるが、金属粉は扱いにくく的確に吸着させることは困難である。
【0012】
また、特許文献2には、取り付け管における磁石の設置位置に関する記載は開示されてない。ここで、例えば、取り付け管の中心からずれた位置に磁石が配置された場合には、取り付け管に合わせて穿孔を正確に形成することができないといった問題も生じてしまう。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、本管と取り付け管との接続部において本管に連通させるための穿孔を正確かつ迅速に形成することができる既設管渠の更生方法を提供することにある。また、第2の目的は、既設管渠の更生方法において待受側磁石を正確に配置させることができる磁石配置用治具を提供することにある。また、第3の目的は、磁石配置用治具を本管と取り付け管との接続部に確実に装着することができる装着用工具を提供することにある。また、第4の目的は、既設管渠の更生方法において探査側磁石片を接続部に対応する位置に吸着させることができる磁石ホルスターを提供することにある。さらに、第5の目的は、既設管渠の更生方法において本管と取り付け管との接続部に形成された隙間を確実に塞ぐことができる補修部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地中に埋設された本管とその本管に接続された取り付け管とを有する既設管渠を、非開削の状態で補修するための既設管渠の更生方法であって、前記本管と前記取り付け管との接続部において、前記取り付け管の中心となる位置に待受側磁石を配置する磁石配置工程と、前記本管を補修すべくその内周面の全周にわたって更生材を配設する補修工程と、前記更生材によって塞がれた前記取り付け管の接続部に対応した位置に、前記待受側磁石の磁力を利用し、前記更生材を介して探査側磁石片を吸着させる磁石吸着工程と、前記探査側磁石片を目印として、その探査側磁石片を中心位置に合わせた状態で前記更生材に対して穿孔を行う穿孔工程とを含むことを特徴とする既設管渠の更生方法をその要旨とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、磁石配置工程では、本管と取り付け管との接続部において、取り付け管の中心となる位置に待受側磁石が配置される。続く、補修工程では、本管の内周面の全周にわたって更生材が配設されることで本管が補修される。この場合、本管と取り付け管との接続部が更生材によって塞がれてしまうが、取り付け管の中心となる位置に待受側磁石が配置されているので、磁石吸着工程において、その待受側磁石の磁力を利用して、更生材を介して探査側磁石片を吸着させることができる。この磁石吸着工程では、従来技術のように金属粉ではなく、探査側磁石片を用いているので、待受側磁石との間で働く磁力が十分に確保され、比較的に離れた位置から探査側磁石片を容易に吸着させることが可能となる。また、探査側磁石片は取り付け管の中心となる位置に正確に吸着される。従って、穿孔工程において、探査側磁石片を中心位置に合わせた状態で更生材に対して穿孔を行うことにより、取り付け管の接続部において本管に連通させるための穿孔を正確かつ迅速に形成することができる。さらに、探査側磁石片は、金属粉のように微細なものではないため、穿孔の形成後において容易に回収することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、前記取り付け配管と前記本管との接続部に配置された状態で流体圧の作用により膨張し、前記取り付け管側から本管側に流入する排水を止水するパッカーを備え、前記パッカーにおける本管側端部の中心位置に前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具をその要旨とする。
【0017】
請求項2に記載の磁石配置用治具によれば、パッカーにおける本管側端部の中心位置に待受側磁石が設けられている。磁石配置工程では、その磁石配置用治具のパッカーが取り付け管側から挿入され、本管との接続部に配置される。そして、流体圧の作用によってパッカーを膨張させることにより、取り付け管と本管との接続部にパッカーを固定することができ、取り付け管側から本管側に流入する排水が止水される。また、そのパッカーにより、本管との接続部において取り付け管の中心となる位置に待受側磁石を正確に配置させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、前記取り付け管の内径よりも拡がるように中心部から放射状に伸びる複数の弾性片を備え、前記各弾性片の中心に前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具をその要旨とする。
【0019】
請求項3に記載の磁石配置用治具によれば、複数の弾性片が取り付け管の内径よりも拡がるように中心部から放射状に伸び、各弾性片の中心に待受側磁石が設けられている。磁石配置工程では、その磁石配置用治具が取り付け管内に挿入され本管との接続部に配置される。この場合、本管と取り付け管との接続部において、各弾性片の弾性力により磁石配置用治具が固定され、取り付け管の中心となる位置に待受側磁石を確実に配置させることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、前記取り付け管の内径と同径の外径を有するリング状に形成され、その一部を切欠いたリング部材と、前記リング部材の内側となる複数個所に設けられ、前記リング部材を縮径すべく装着用工具を掛止させるための掛止部とを備え、前記リング部材の中心にワイヤを介して前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具をその要旨とする。
【0021】
請求項4に記載の磁石配置用治具によれば、取り付け管の内径と同径の外径を有するリング状のリング部材の中心にワイヤを介して待受側磁石が設けられている。また、リング部材は、一部が切欠かれており、その内側となる複数個所に掛止部が設けられている。磁石配置工程では、リング部材の複数の掛止部に装着用工具を掛止させた後、その装着用工具を窄めることでリング部材を確実に縮径させることができる。そして、そのリング部材を縮径させた状態で取り付け管内に挿入して本管との接続部に配置した後、装着用工具を拡げることでリング部材を拡径させる。この場合、リング部材が取り付け管の内径と同一となり本管と取り付け管との接続部に磁石配置用治具が固定され、取り付け管の中心となる位置に待受側磁石を確実に配置させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の磁石配置用治具を前記接続部に装着するために用いられ、カメラを有する自走式のロボット車に着脱可能に取り付けられる装着用工具であって、前記リング部材の掛止部に掛止する複数の爪部材を備え、前記爪部材を窄めることで前記リング部材を縮径させ、前記カメラによって確認された前記接続部に前記リング部材を配置した後、前記爪部材を拡げることで前記リング部材を拡径させて前記接続部に前記磁石配置用治具を装着することを特徴とする装着用工具をその要旨とする。
【0023】
請求項5に記載の装着用工具によれば、カメラを有する自走式のロボット車に取り付けられた状態で、複数の爪部材を前記リング部材の掛止部に掛止して、各爪部材を窄めることでリング部材を縮径させることができる。そして、作業者が入ることができない本管内において、ロボット車を移動させ、カメラにより取り付け管の接続部を確認して、その接続部にリング部材を配置させることができる。また、リング部材の配置後において、各爪部材を拡げることでリング部材を拡径させて接続部に磁石配置用治具を装着することができる。従って、この装着用工具を用いれば、作業者が入ることができない本管であっても、その本管の内側から取り付け管の接続部に磁石配置用治具を確実に装着することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石吸着工程を行うために用いられ、カメラを有する自走式のロボット車に着脱可能に取り付けられる磁石ホルスターであって、前記探査側磁石片を1つずつ収納するための複数の収納凹部と、前記複数の収納凹部のうちの1つの収納凹部を選択的に開放し、残りの収納凹部を閉塞するカバーとを有する磁石保持部材と、前記磁石保持部材において開放された収納凹部内の探査側磁石片が前記接続部に配置された前記待受側磁石に接近するよう前記磁石保持部材を移動させる移動機構とを備えたことを特徴とする磁石ホルスターをその要旨とする。
【0025】
請求項6に記載の磁石ホルスターによれば、磁石保持部材において複数の収納凹部に探査側磁石片が1つずつ収納されており、カバーによって、複数の収納凹部のうちの1つの収納凹部が選択的に開放されている。磁石吸着工程において、その磁石ホルスターがカメラを有する自走式のロボット車に取り付けられ、作業者が入ることができない本管内においてカメラで位置を確認しながらそのロボット車が移動される。そして、移動機構によって、開放された収納凹部内の探査側磁石片が本管と取り付け管との接続部に配置された待受側磁石に接近するように、磁石保持部材が移動される。その結果、待受側磁石の磁力により、収納凹部内から探査側磁石片が引き寄せられ、更生材を介して待受側磁石に吸着される。また、磁石保持部材には複数の収納凹部にそれぞれ探査側磁石片が収納されており、カバーによって開放される収納凹部を変更して、接続部に対応する位置に磁石保持部材を接近させることにより、目印となる探査側磁石片を順次吸着させることができる。このようにすれば、1つの探査側磁石片を吸着させる度に、自走式のロボット車を本管から搬出する必要がなく、複数の接続部に対応する位置に探査側磁石片を迅速に吸着させることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の既設管渠の更生方法において前記接続部に形成された隙間を塞ぐために用いられるハット型の補修部材であって、前記補修工程は、損傷した既設の本管内に前記更生材としての更生管を挿入し、既設の本管と更生管との隙間に裏込め材を充填して既設管渠の補修を行うものであり、先端側が前記取り付け管に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の基端側に設けられ、前記更生管の内周面に接着固定される鍔部と、前記取り付け管と本体部との間の隙間を通した前記裏込め材の流れ込みを防止すべく前記本体部の側面にその全周にわたって形成された襞部とを備えたことを特徴とする補修部材をその要旨とする。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、補修工程において、損傷した既設の本管内に更生管が挿入され、既設の本管と更生管との隙間に裏込め材が充填されることで既設管渠の補修が行われる。この補修工程では、補修部材の本体部の先端側が取り付け管に挿入され、本体部の基端側に設けられた鍔部が更生管の内周面に接着固定される。この補修部材には本体部の側面の全周にわたって襞部が形成されているので、既設の本管と更生管との隙間に裏込め材を充填する際に、取り付け管と本体部との間の隙間を通した裏込め材の流れ込みが防止される。またこのとき、裏込め材と襞部との摩擦抵抗により補修部材を押し上げる力が加わるため、本体部の鍔部と更生管の内周面との密着度が増し、接続部に形成された隙間を確実に塞ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によると、本管と取り付け管との接続部において本管に連通させるための穿孔を正確かつ迅速に形成することができる既設管渠の更生方法を提供することができる。また、請求項2〜4に記載の発明によると、本管と取り付け管との接続部に待受側磁石を正確に配置させることができる磁石配置用治具を提供することができる。また、請求項5に記載の発明によると、請求項4に記載の磁石配置用治具を装着するのに最適な装着用工具を提供することができる。また、請求項6に記載の発明によると、接続部に対応する位置に探査側磁石片を吸着させることができる。さらに、請求項7に記載の発明によると、本管と取り付け管との接続部に形成された隙間を確実に塞ぐことができる補修部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1の実施の形態]
【0030】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0031】
本実施の形態では、図1に示すように、既設本管1と取り付け管2と汚水桝3からなる下水管渠(既設管渠)10の内周面を地面を掘削しないで補修する非開削方式の更生方法を採用している。本実施の形態の更生方法において、本管1内の全周に更生材が貼り付けられることで損傷箇所が補修される。この補修により、図2に示すように、本管1と取り付け管2との接続部5は更生材6で塞がれてしまうため、本管1と取り付け管2との接続部5の位置を一対の永久磁石片(待受側磁石片8及び探査側磁石片9)を用いて特定し、本管1側からその位置に穿孔を形成することで本管1と取り付け管2とを連通させるようにしている。なお、待受側磁石片8及び探査側磁石片9は、その磁力で互いに吸着する状態が確認され、その両面8a,9aに着色が施されている(図3参照)。各磁石片8,9に着色を施すことにより、同じ極(N極−N極、S極−S極)が対向して反発しないように各磁石片8,9を配置することが可能となる。また、各磁石片8,9としては、比較的磁力が強力なネオジウム磁石などの永久磁石が用いられる。
【0032】
図4は、本管1と取り付け管2との接続部5において、取り付け管2側から待受側磁石片8を配置させるための磁石配置用治具11を示している。また、図5は、その接続部5において、本管1側から探査側磁石片9を配置させるための磁石ホルスター12を示している。さらに、図6は、その接続部5に穿孔を形成するための穿孔用のロボット車13を示している。
【0033】
図4に示されるように、磁石配置用治具11は、取り付け管2の形状に合わせて円筒形状に膨らむ止水用のパッカー15を備え、その先端部(本管側端部)に待受側磁石片8が固定されている。パッカー15は、円筒形状に形成されたゴム製の袋体であり、内部に流体(具体的には、空気)が供給されていないときには、取り付け管2の内径よりも小さい径を有する。このパッカー15には空気を供給するためのホース16が接続されており、エアポンプ17からホース16を介してパッカー15の内部に空気を供給すると、取り付け管2の内径と同程度もしくはその内径以上となるまでパッカー15が膨らむ。
【0034】
磁石配置用治具11はパッカー15に空気が供給されていない状態で汚水桝3から取り付け管2内に挿入される。そして、その磁石配置用治具11(パッカー15)は、比較的に自在に曲がる更生用の作業棒(図示略)を用いて押し込まれることで、本管1との接続部5まで挿入される。その後、空気を供給してパッカー15を膨らませることにより、磁石配置用治具11が本管1との接続部5に固定されるとともに、その接続部5において取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8が配置される。
【0035】
図5に示されるように、磁石ホルスター12は、カメラ21を有する自走式のロボット車22に着脱可能に取り付けられている。ロボット車22は、車輪24やその車輪24を駆動するための駆動モータ(図示略)を有する車体25と、その車体25の先端に設けられた可動ヘッド部26とを備える。ロボット車22において、車体25と可動ヘッド部26とは連結部材27を介して連結されており、その連結部材27を支点として可動ヘッド部26の先端側が上下方向に回動可能に設けられている。また、可動ヘッド部26の先端にはアタッチメント装着部28が設けられ、そのアタッチメント装着部28に磁石ホルスター12が装着されている。このアタッチメント装着部28には回動機構29が設けられており、その回動機構29により磁石ホルスター12が回動される。
【0036】
図5及び図7に示されるように、磁石ホルスター12は、基端部がアタッチメント装着部28に装着される略円柱状の支持部材31と、その支持部材31の先端部に固定された磁石保持器32(磁石保持部材)とを備える。本実施の形態では、アタッチメント装着部28の回動機構29によって、左右方向(支持部材31の軸心を中心とした回転方向)及び上下方向(支持部材31の基端部を支点とした回転方向)に磁石ホルスター12が回動するよう構成されている。
【0037】
磁石保持器32は、円盤状の本体34とその本体34を覆うカバー35とからなり、本体34の側面には、その径方向の外側に開口する収納凹部36が周方向に所定の間隔をあけて複数(本実施の形態では、8個)設けられている。そして、各収納凹部36には、探査側磁石片9が1つずつ収納されている。なおここで、各探査側磁石片9は、待受側磁石片8に吸着させるために、着色した面9aを揃えて各収納凹部36に収納されている。
【0038】
カバー35は、その一部(図5では上部)に切り欠き部37が形成されており、本体34に形成された複数の収納凹部36のうちの1つの収納凹部36を選択的に開放し、残りの収納凹部36を閉塞するよう設けられている。また、磁石保持器32の中央部から突設された連結部材39には、駆動ベルト40を介して小型モータ41(移動機構)の回転軸42が連結されている。この小型モータ41の駆動により、駆動ベルト40及び連結部材39を介して本体34がその周方向に回転し、切り欠き部37によって開放される収納凹部36が変更される。具体的には、小型モータ41の駆動により、本体34が所定角度(本実施の形態では、45度)ずつ回転することで、開放される収納凹部36が切り替わるように構成されている。
【0039】
図6に示されるように、穿孔用のロボット車13は、車輪43やその車輪43を駆動するための駆動モータ(図示略)を有する車体44と、その車体44の先端に設けられた可動ヘッド部45とを備える。ロボット車13において、車体44と可動ヘッド部45とは連結部材46を介して連結されており、その連結部材46を支点として可動ヘッド部45が回動可能に設けられている。
【0040】
可動ヘッド部45の中央部には、円筒状の回転カッター(円筒刃)48が上下方向に昇降可能に設けられている。また、可動ヘッド部45の内部には、回転カッター48を駆動するための回転モータ(図示略)が設けられている。さらに、可動ヘッド部45の先端部には、探査側磁石片9を目印とした穿孔の形成位置を確認するためのカメラ49が設けられている。
【0041】
上述したロボット車13,22は、図示しない移動車両に搭載されたコントローラ(操作盤)にケーブルを介して接続されており、カメラ21,49で撮影した画像がコントローラの監視モニターで確認されるとともに所定の位置に移動されるように構成されている。
【0042】
次に、本実施の形態における下水管渠10の更生方法について詳述する。
【0043】
先ず、洗浄工程において、下水管渠10の本管1に繋がるマンホールの蓋を開け、そのマンホールから本管1内に高圧洗浄機のノズルを挿入する。そして、そのノズルから高圧の洗浄水を放水することにより本管1内を洗浄する。
【0044】
次に、調査工程において、本管1内にカメラを有する自走式のロボット車を搬入して、本管内の破損箇所や取り付け管2の位置を調査する。なお、ロボット車としては、図5のロボット車22や図6のロボット車13を用いてもよいし、調査専用のロボット車を用いてもよい。
【0045】
そして、本管1内において取り付け管2が接続されている場合、本管1と取り付け管2との接続部5に待受側磁石片8を配置させるための磁石配置工程を行う。
【0046】
この磁石配置工程では、磁石配置用治具11のパッカー15を汚水桝3から取り付け管2内に入れ、そのパッカー15を更生用の作業棒を用いて押し込むことで本管との接続部5まで挿入する(図4参照)。その後、エアポンプ17からホース16を介してパッカー15に空気を供給し、その空気圧の作用によりパッカー15を膨らませ、パッカー15を本管1との接続部5に固定する。またここで、パッカー15が膨らむことで取り付け管2の中心位置に待受側磁石片8が配置される。なお、補修領域の複数個所に取り付け管2が接続されている場合、それらの接続部5毎に磁石配置用治具11が固定され待受側磁石片8が配置される。
【0047】
次いで、本管1を補修するための補修工程を行う。具体的には、未硬化の樹脂を含浸させた不織布(更生材)6を畳んだ状態で本管1内の所定の位置に引き込む(図8参照)。または、不織布(更生材)6を空気圧または水圧P1で加圧反転しながら本管1内に挿入して所定の位置に配置させる(図9参照)。次に、空気圧または水圧P1によって更生材6を膨らませ本管1の内周面に密着させる。この状態で温水、蒸気、紫外線などを更生材6に当てることにより更生材6の樹脂を硬化させ本管1を更生する。
【0048】
なお、本管1の更生工法としては、上記の工法以外に、例えば製管工法を用いてもよい。すなわち、塩化ビニールの帯板を円形状に製管して所定の長さの更生管を構築し、その更生管と既設本管1との隙間にセメント系の裏込め材を充填することで既設本管1を更生する。
【0049】
上述したいずれの工法であっても、本管1の内周面は、その全周にわたって更生材6が貼り付けられた状態となり、結果として、本管1と取り付け管2との接続部5は更生材6で塞がれる(図10参照)。
【0050】
磁石吸着工程では、図11に示されるように、本管1内にロボット車22を搬入して、取り付け管2との接続部5の近傍まで移動させる。そして、ロボット車22の可動ヘッド部26及びアタッチメント装着部28を駆動し、磁石ホルスター12の磁石保持器32においてカバー35により開放された収納凹部36(探査側磁石片9)を本管1の内周面に接近させるとともに、内周面に沿って移動させる。ここで、磁石保持器32の探査側磁石片9が、接続部5に配置されている待受側磁石片8に接近し、その待受側磁石片8との距離が約10cm未満となると、待受側磁石片8の磁力により収納凹部36内の探査側磁石片9が引き寄せられて更生材6を介して待受側磁石片8に吸着される。これにより、本管1の内周面において取り付け管2との接続部5に対応する位置に探査側磁石片9が配置される。
【0051】
そして、補修領域に探査側磁石片9を配置していない別の接続部5が存在する場合、磁石ホルスター12において、小型モータ41を駆動して本体34を回転させ、探査側磁石片9が収納されている別の収納凹部36をカバー35の切り欠き部37により開放させる。その後、別の接続部5の近傍にロボット車22を移動させ、可動ヘッド部26及びアタッチメント装着部28を駆動することにより、探査側磁石片9をその接続部5に対応する位置に吸着させる。
【0052】
このように各接続部5に対応する位置に探査側磁石片9を配置させた後、各接続部5に対応する位置に穿孔を形成するための穿孔工程を行う。具体的には、ロボット車22を本管1内から搬出し、代わりに穿孔用のロボット車13を本管1内に搬入する(図12参照)。そして、探査側磁石片9を目印としてそのロボット車13を移動させ、カメラ49で探査側磁石片9の位置を確認し、その探査側磁石片9を回転カッター48の中心位置に合わせる。その状態で回転カッター48を駆動して更生材6に対して穿孔を形成する。この穿孔によって、本管1と取り付け管2との接続部5が連通する。
【0053】
また、本実施の形態では、回転カッター48で穿孔を開始するのと同時に、接続部5に配置されている磁石配置用治具11のパッカー15の空気を抜きそのパッカー15を縮径させた後、磁石配置用治具11を取り付け管2内から引き抜いて汚水桝3から取り出す。同様に、各接続部5に対応する位置に穿孔を形成するとともに、各接続部5の磁石配置用治具11を取り出す。さらに、磁石配置用治具11が接続部5から離間する際に、待受側磁石片8の磁力が作用しなくなり、接続部5に対応する位置にそれまで吸着していた探査側磁石片9が落下する。この探査側磁石片9は、その下方に配置されている円筒状の回転カッター48の内側に収納され回収される。その後、穿孔用のロボット車13を本管1内から搬出することにより、下水管渠10を更生するための作業が完了する。
【0054】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0055】
(1)本実施の形態では、従来技術のように金属粉ではなく、探査側磁石片9を用いているので、待受側磁石片8との間で働く磁力が十分に確保され、比較的に離れた位置から探査側磁石片9を容易に吸着させることが可能となる。また、探査側磁石片9は取り付け管2の中心となる位置に正確に吸着されるので、穿孔工程において、探査側磁石片9を目印として更生材6に穿孔を形成することにより、取り付け管2の接続部5において本管1に連通させるための穿孔を正確かつ迅速に形成することができる。さらに、探査側磁石片9は、金属粉のように微細なものではないため、穿孔の形成後において容易に回収することができる。
【0056】
(2)本実施の形態の磁石配置用治具11は、パッカー15の本管側端部の中心位置に待受側磁石片8が設けられている。そして、磁石配置工程において、その磁石配置用治具11のパッカー15が取り付け管2側から挿入され、空気圧の作用によってパッカー15を膨張させることにより、取り付け管2と本管1との接続部5にパッカー15を固定することができる。このパッカー15により、取り付け管2側から本管1側に流入する排水を止水することができる。また、パッカー15により、取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を正確に配置させることができる。このように、止水用のパッカー15を用いて磁石配置用治具11を構成すれば、その磁石配置用治具11の製造コストを抑えることができる。
【0057】
(3)本実施の形態では、カメラ21を有する自走式のロボット車22に磁石ホルスター12が取り付けられている。この磁石ホルスター12の磁石保持器32には複数の収納凹部36に探査側磁石片9が1つずつ収納されており、カバー35によって、複数の収納凹部36のうちの1つの収納凹部36を選択的に開放することができる。そして、磁石吸着工程では、作業者が入ることができない本管1内においてロボット車22が搬入され、開放された収納凹部36内の探査側磁石片9が本管1と取り付け管2との接続部5に配置された待受側磁石片8に接近するよう磁石保持器32が移動される。その結果、待受側磁石片8の磁力により、収納凹部36内から探査側磁石片9が引き寄せられ、更生材6を介して待受側磁石片8に吸着される。また、取り付け管2の接続部5が複数ある場合、カバー35によって開放される収納凹部36を変更することにより、各接続部5に対応する位置に、目印となる探査側磁石片9を順次吸着させることができる。このようにすれば、1つの探査側磁石片9を吸着させる度に、自走式のロボット車22を本管1から搬出する必要がなく、複数の接続部5に対応する位置に探査側磁石片9を迅速に吸着させることができる。
[第2の実施の形態]
【0058】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。上記第1の実施の形態では、パッカー15を有する磁石配置用治具11を用いて、本管1と取り付け管2との接続部5に待受側磁石片8を配置していたが、本実施の形態では、その磁石配置用治具11に代えて図13(a)に示す磁石配置用治具55を用いる。また、その磁石配置用治具55を本管1と取り付け管2との接続部5に配置させるために、図13(b)に示す装着用工具56を用いる。
【0059】
具体的には、汚水桝3と本管1との距離が離れ取り付け管2が長くなる場合や住宅が取り壊されて汚水桝3が除去された場合(不明桝の場合)では、第1の実施の形態のように、取り付け管2側から磁石配置用治具11を挿入して接続部5に待受側磁石片8を配置することができない。その場合に本実施の形態の磁石配置用治具55を用いて、本管1側から接続部5に待受側磁石片8を配置する。
【0060】
詳述すると、図13(a)に示されるように、磁石配置用治具55は、取り付け管2の内径と同径の外径を有するリング状に形成されたリング部材57と、リング部材57の内側となる複数個所(本実施の形態では3箇所)に設けられた掛止部58とを備える。この磁石配置用治具55において、リング部材57の一部が切り欠かれており、そのリング部材57の中心にワイヤ59を介して待受側磁石片8が設けられている。なお、磁石配置用治具55におけるリング部材57は、塩化ビニールなどの樹脂、板ばね材、ステンレスなど、可撓性があり復元性を有する材料を用いて形成される。
【0061】
図13(b)に示されるように、装着用工具56は、磁石配置用治具55の掛止部58に掛止する3つの爪部材61を備え、爪部材61を窄めることで磁石配置用治具55のリング部材57を縮径させる。この装着用工具56は、第1実施の形態で用いたロボット車22におけるアタッチメント装着部28に、磁石ホルスター12の代わりに装着され使用される。
【0062】
そして、磁石配置工程では、図14に示されるように、ロボット車22によって、装着用工具56の爪部材61に磁石配置用治具55を装着した状態で、本管1と取り付け管2との接続部5まで搬送する。そして、装着用工具56の爪部材61によって磁石配置用治具55のリング部材57を縮径させた状態で、カメラ21で接続部5の位置を確認しながら取り付け管2の接続部5に磁石配置用治具55を配置する。その後、装着用工具56の爪部材61を拡げることでリング部材57を拡径させて接続部5に磁石配置用治具55を装着する。これにより、本管1と取り付け管2との接続部5において取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を配置することができる。
【0063】
その後、上記第1の実施の形態と同様に、補修工程、磁石吸着工程、穿孔工程を実施することにより、本管1と取り付け管2との接続部5に穿孔を正確かつ迅速に形成することができる。また、穿孔の形成後において、鍵手を有する脱離用工具をロボット車22に取り付け、その脱離用工具の鍵手を磁石配置用治具55のリング部材57に引っ掛けることにより、磁石配置用治具55を接続部5から脱離させる。これにより、下水管渠10を更生するための作業が完了する。
[第3の実施の形態]
【0064】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を説明する。上記第1及び第2の実施の形態では、本管1の内周面に更生材6を圧着することで損傷箇所の補修を行うものであった。これに対し、本実施の形態では、既設の本管1よりも径が小さな更生管を本管1の内側に挿入するか、製管工法により塩化ビニールの帯板を本管1の内側に嵌合させ円形状に製管して更生管を構築した後、本管1と更生管との間の隙間にモルタルなどの裏込め材を充填して下水管渠10を補修する更生方法を採用している。この更生方法では、図15及び図16に示すハット型の補修部材70を用いて、取り付け管2と更生管71とが接続される。
【0065】
具体的には、補修部材70は、筒状の本体部72と、その本体部72の基端側(図15では下側)に設けられた鍔部73と、本体部72の側面にその全周にわたって形成された襞部74とを備える。本実施の形態の補修部材70では、襞部74は本体部72の側面の二箇所に設けられている。この補修部材70は、本体部72の先端側が取り付け管2に挿入され、鍔部73が更生管71の内周面に接着固定される。
【0066】
本実施の形態の更生方法では、上記第1の実施の形態と同様に、磁石配置工程において磁石配置用治具11を用いて本管1と取り付け管2との接続部5に待受側磁石片8を配置する。そして、補修工程において本管1の内側に更生管71を挿入する。その後、磁石吸着工程において、ロボット車22を更生管71内に搬入し、磁石ホルスター12を用いて接続部5に対応する位置に探査側磁石片9を吸着させる。さらに、穿孔工程において、穿孔用のロボット車13を更生管71内に搬入し、探査側磁石片9を目印として取り付け管2との接続部5に対応する位置に穿孔を形成する。
【0067】
ここで、取り付け管2の接続部5に対応する位置には隙間が形成されるため、その隙間を補修部材70を用いて塞ぐ(図16参照)。具体的には、ロボット車22に取り付けられた装着用工具(図示略)を用い、補修部材70の本体部72の先端を取り付け管2に挿入し、鍔部73を更生管71の内周面に接着固定する。その後、既設の本管1と更生管71との隙間に裏込め材75を充填する(図17参照)。本実施の形態の補修部材70には本体部72の側面の全周にわたって襞部74が形成されているので、取り付け管2と本体部72との間の隙間を通した裏込め材75の流れ込みが襞部74によって防止される。また、この裏込め材75の充填時には、その襞部74と裏込め材75との摩擦抵抗により、補修部材70を押し上げる力が加わる。その結果、補修部材70の鍔部73と更生管71の内周面との密着度が増し、その補修部材70によって、接続部5に形成された隙間を確実に塞ぐことができる。
【0068】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0069】
・上記各実施の形態では、本管1と取り付け管2との接続部5に待受側磁石片8を配置させるために、図4の磁石配置用治具11や図13の磁石配置用治具55を用いたがこれに限定されるものではない。例えば、図18に示す磁石配置用治具81や図19に示す磁石配置用治具82を用いてもよい。具体的には、図18の磁石配置用治具81は、取り付け管2の内径よりも拡がるように中心部から放射状に伸びる複数の弾性片83を備え、各弾性片83の中心位置であって挿入方向(図18のX方向)の先端側に待受側磁石片8が設けられている。この磁石配置用治具81は、複数の弾性片83の間隔が後端側ほど拡がるように羽状に形成されている。なお、複数の弾性片83の形成材料としては、例えば、めっきを施した薄い鋼板(ブリキ板)やポリエチレン等の樹脂板が用いられる。
【0070】
磁石配置工程において、磁石配置用治具81は、第1の実施の形態と同様に、汚水桝3から取り付け管2内に挿入され、更生用の作業棒を用いて押し込まれることで本管1との接続部5に配置される。これにより、各弾性片83の弾性力によってその接続部5に磁石配置用治具81が固定され、取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を配置させることができる。
【0071】
また、図19の磁石配置用治具82も、取り付け管2の内径よりも拡がるように中心部から放射状に伸びる複数の弾性片84を備え、各弾性片84の中心位置であって挿入方向(図19のX方向)の後端側に待受側磁石片8が設けられている。この磁石配置用治具82では、複数の弾性片84の間隔は中間部分が最も拡がっており先端側及び後端側ほど狭くなるよう形成されている。なお、複数の弾性片84も、例えば、めっきを施した薄い鋼板やポリエチレン等の樹脂板を用いて形成される。
【0072】
磁石配置工程において、磁石配置用治具82は、第2の実施の形態と同様に、自走式のロボット車22に装着された装着用工具(図示略)を用いて、本管1側から取り付け管2に挿入され、本管1と取り付け管2との接続部5に配置される。これにより、各弾性片84の弾性力によってその接続部5に磁石配置用治具82が固定され、取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を配置させることができる。
【0073】
・上記第2の実施の形態における磁石配置用治具55の変更例として、図20に示すような磁石配置用治具85に具体化してもよい。この磁石配置用治具85では、リング部材86の内側となる2箇所に掛止部87が設けられている。また、軟質ビニール88を用いて、リング部材86の中心に待受側磁石片8が固定されている。この磁石配置用治具85を用いた場合でも、本管1と取り付け管2との接続部5において取り付け管2の中心となる位置に待受側磁石片8を配置することができる。なお、磁石配置用治具55,85における掛止部58,87の個数は適宜変更することができる。但し、掛止部58,87を必要以上に多く形成すると、磁石配置用治具55,85や装着用工具56の製造コストが高くなる。そのため、磁石配置用治具55のように3つの掛止部58を形成した場合や磁石配置用治具85のように2つの掛止部87を形成した場合では、製造コストを抑えることができ、リング部材57を的確に縮径できるので、実用上好ましいものとなる。
また、各磁石配置用治具55,85では、円形のリング部材57,86を用いて構成したが、これに限定されるものではない。弾性片を使用して接続部5に配置される部材であれば、円形以外の多角形の部材を用いることが可能である。但し、製造コストが高くならないように、加工性を考慮した形状とすることが好ましい。
【0074】
・上記第2の実施の形態において、磁石配置用治具55を取り付けるための装着用工具56(図13(b)参照)は、機械的な上下運動や円運動の作用により、リング部材57の縮径・拡径を行うことができるものであれば、その構成を適宜変更してもよい。
・上記各実施の形態において、待受側磁石として、永久磁石からなる磁石片8を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば電磁石を用いてもよい。
【0075】
・上記各実施の形態では、既設管渠として下水管渠10を補修するものであったが、それ以外に埋設管渠を補修してもよい。また、既設管渠を構成する材質としては、コンクリート製以外に、陶器製や樹脂製であってもよい。さらに、既設管渠としては、円形以外に、矩形、馬蹄形、卵形などであってもよい。
【0076】
・上記第1及び第2の実施の形態において、更生材6の材料としては、水中硬化形樹脂以外に、光硬化形樹脂、熱硬化形樹脂、熱可塑性塩化ビニール又は塩化ビニール、ポリエチレンなどを用いてもよい。
【0077】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0078】
(1)請求項3において、挿入方向の先端側に前記待受側磁石が設けられ、前記取り付け管側から挿入されて前記接続部に配置されることを特徴とする磁石配置用治具。
【0079】
(2)請求項3において、挿入方向の後端側に前記待受側磁石が設けられ、前記本管側から挿入されて前記接続部に配置されることを特徴とする磁石配置用治具。
【0080】
(3)請求項6に記載の磁石ホルスターを備える自走式のロボット車。
【0081】
(4)カメラを有する自走式のロボット車に着脱可能に設けられ、請求項3または4に記載の磁石配置用治具を前記接続部から脱離させることを特徴とする脱離用工具。
【0082】
(5)請求項1において、前記本管は、作業者が入ることが不可能な小口径の管であることを特徴とする既設管渠の更生方法。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】一実施の形態の既設管渠を示す断面図。
【図2】本管と取り付け管との接続部に配置される磁石片を示す断面図。
【図3】各磁石片を示す側面図。
【図4】第1の実施の形態における磁石配置用治具を説明するための断面図。
【図5】磁石ホルスターを装着したロボット車を示す側面図。
【図6】穿孔用のロボット車を示す側面図。
【図7】磁石ホルスターを示す断面図。
【図8】本管1の更生工法を示す説明図。
【図9】本管1の更生工法を示す説明図。
【図10】補修工程後の状態を説明するための断面図。
【図11】磁石吸着工程を説明するための断面図。
【図12】穿孔工程を説明するための断面図。
【図13】(a)は、第2の実施の形態の磁石配置用治具を示す斜視図、(b)は、その磁石配置用治具を装着するための装着用工具を示す斜視図。
【図14】第2の実施の形態における磁石配置工程を説明するための断面図。
【図15】第3の実施の形態における補修部材を示す斜視図。
【図16】接続部における補修部材の装着状態を示す断面図。
【図17】接続部における補修部材の装着状態を示す断面図。
【図18】(a)は、別の実施の形態の磁石配置用治具を示す側面図、(b)は、接続部における磁石配置用治具の配置状態を示す説明図。
【図19】(a)は、別の実施の形態の磁石配置用治具を示す側面図、(b)は、接続部における磁石配置用治具の配置状態を示す説明図。
【図20】別の実施の形態の磁石配置用治具を示す平面図。
【図21】更生後の管渠を示す断面図。
【図22】更生後の管渠を示す断面図。
【符号の説明】
【0084】
1…本管
2…取り付け管
5…接続部
6…更生材
8…待受側磁石片
9…探査側磁石片
10…既設管渠としての下水管渠
11,55,81,82,85…磁石配置用治具
12…磁石ホルスター
22…ロボット車
15…パッカー
21…カメラ
32…磁石保持部材としての磁石保持器
35…カバー
36…収納凹部
41…移動機構を構成する小型モータ
56…装着用工具
57,86…リング部材
58,87…掛止部
59…ワイヤ
61…爪部材
70…補修部材
71…更生管
72…本体部
73…鍔部
74…襞部
75…裏込め材
83,84…弾性片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された本管とその本管に接続された取り付け管とを有する既設管渠を、非開削の状態で補修するための既設管渠の更生方法であって、
前記本管と前記取り付け管との接続部において、前記取り付け管の中心となる位置に待受側磁石を配置する磁石配置工程と、
前記本管を補修すべくその内周面の全周にわたって更生材を配設する補修工程と、
前記更生材によって塞がれた前記取り付け管の接続部に対応した位置に、前記待受側磁石の磁力を利用し、前記更生材を介して探査側磁石片を吸着させる磁石吸着工程と、
前記探査側磁石片を目印として、その探査側磁石片を中心位置に合わせた状態で前記更生材に対して穿孔を行う穿孔工程と
を含むことを特徴とする既設管渠の更生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、
前記取り付け配管と前記本管との接続部に配置された状態で流体圧の作用により膨張し、前記取り付け管側から本管側に流入する排水を止水するパッカーを備え、
前記パッカーにおける本管側端部の中心位置に前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具。
【請求項3】
請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、
前記取り付け管の内径よりも拡がるように中心部から放射状に伸びる複数の弾性片を備え、前記各弾性片の中心に前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具。
【請求項4】
請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石配置工程を行うために用いられる磁石配置用治具であって、
前記取り付け管の内径と同径の外径を有するリング状に形成され、その一部を切欠いたリング部材と、
前記リング部材の内側となる複数個所に設けられ、前記リング部材を縮径すべく装着用工具を掛止させるための掛止部と
を備え、前記リング部材の中心にワイヤを介して前記待受側磁石が設けられていることを特徴とする磁石配置用治具。
【請求項5】
請求項4に記載の磁石配置用治具を前記接続部に装着するために用いられ、カメラを有する自走式のロボット車に着脱可能に取り付けられる装着用工具であって、
前記リング部材の掛止部に掛止する複数の爪部材を備え、
前記爪部材を窄めることで前記リング部材を縮径させ、前記カメラによって確認された前記接続部に前記リング部材を配置した後、前記爪部材を拡げることで前記リング部材を拡径させて前記接続部に前記磁石配置用治具を装着することを特徴とする装着用工具。
【請求項6】
請求項1に記載の既設管渠の更生方法における磁石吸着工程を行うために用いられ、カメラを有する自走式のロボット車に着脱可能に取り付けられる磁石ホルスターであって、
前記探査側磁石片を1つずつ収納するための複数の収納凹部と、前記複数の収納凹部のうちの1つの収納凹部を選択的に開放し、残りの収納凹部を閉塞するカバーとを有する磁石保持部材と、
前記磁石保持部材において開放された収納凹部内の探査側磁石片が前記接続部に配置された前記待受側磁石に接近するよう前記磁石保持部材を移動させる移動機構と
を備えたことを特徴とする磁石ホルスター。
【請求項7】
請求項1に記載の既設管渠の更生方法において前記接続部に形成された隙間を塞ぐために用いられるハット型の補修部材であって、
前記補修工程は、損傷した既設の本管内に前記更生材としての更生管を挿入し、既設の本管と更生管との隙間に裏込め材を充填して既設管渠の補修を行うものであり、
先端側が前記取り付け管に挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の基端側に設けられ、前記更生管の内周面に接着固定される鍔部と、
前記取り付け管と本体部との間の隙間を通した前記裏込め材の流れ込みを防止すべく前記本体部の側面にその全周にわたって形成された襞部と
を備えたことを特徴とする補修部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−215370(P2008−215370A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49364(P2007−49364)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(502278390)株式会社山越 (8)
【Fターム(参考)】