説明

日射遮蔽用合わせ構造体

高い日射遮蔽特性を有し、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
タングステン酸を還元性雰囲気下で焼成して日射遮蔽機能を有する微粒子11を得、当該微粒子と高分子系分散剤と溶剤とを粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液を調製し、調製された日射遮蔽体形成用分散液をビニル樹脂へ加えて当該ビニル樹脂をシート状に成形して中間膜12を得、当該中間膜12を板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板1の間に挟み込んで中間層2とし、加熱接着して日射遮蔽用合わせ構造体を製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用、建築用、航空機用の窓材などとして用いられる日射遮蔽用合わせ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用などに用いられる安全ガラスとして、2枚の板ガラス間に日射遮蔽膜を挟み込んで合わせガラスを構成し、当該合わせガラスにより入射する太陽エネルギーを遮断して冷房負荷や人の熱暑感の軽減を目的としたものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の板ガラス間に0.1μm以下の微細な粒径の酸化錫あるいは酸化インジウムから成る熱線遮蔽性金属酸化物を含有した軟質樹脂層を介在させた合わせガラスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも2枚の板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、この酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散した中間層を設けて構成した合わせガラスが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、TiO、ZrO、SnO、Inから成る微粒子と有機ケイ素あるいは有機ケイ素化合物から成るガラス成分とを透明板状部材の間に介在させた自動車用窓ガラスが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に3層から成る中間層を設け、中間層のうち第2層の中間層にはSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散し、また第1層と第3層の中間層を樹脂層とした合わせガラスが開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1〜4に開示されている従来の合わせガラスは、いずれも高い可視光透過率が求められたときの日射遮蔽機能は十分でないという問題点が存在した。
【0008】
一方、本件出願人は、日射遮蔽機能を有する中間層を2枚の板ガラス間に介在させて成り、この中間層が、六ホウ化物微粒子単独若しくは六ホウ化物微粒子とITO微粒子および/またはATO微粒子とビニル系樹脂を含有する中間膜により構成された日射遮蔽用合わせガラス、あるいは、上記中間層が、少なくとも一方の板ガラスの内側に位置する面に形成された上記微粒子が含まれる日射遮蔽膜と、上記2枚の板ガラス間に介在されるビニル系樹脂を含有する中間膜とで構成された日射遮蔽用合わせガラスを特許文献5として提案している。そして、特許文献5に記載したように、六ホウ化物微粒子単独若しくは六ホウ化物微粒子とITO微粒子および/またはATO微粒子が適用された日射遮蔽用合わせガラスの光学特性は、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外領域に強い吸収を発現して透過率の極小を持つことから、特許文献1〜4に記載された従来の合わせガラスに比べて、可視光透過率70%以上で日射透過率が50%台まで改善されている。
しかし、実用的な合わせ構造体とするには、より高い日射遮蔽特性が求められており、さらに透明基材の曇り具合を示すヘイズ値も車両用窓材で1%以下、建築用窓材で3%以下とする必要があるため、特許文献5に記載された日射遮蔽用合わせガラスにおいても、未だ改善の余地を有していた。
【0009】
【特許文献1】:特開平8−217500号公報(段落0018)
【特許文献2】:特開平8−259279号公報(段落0012)
【特許文献3】:特開平4−160041号公報(特許請求の範囲第1項、公報3貢右上欄9〜14行、公報3貢左下欄16行〜末行)
【特許文献4】:特開平10−297945号公報(段落0018)
【特許文献5】:特開平2001−89202号公報(段落0012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこの様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さく、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、上記課題を解決するため本発明者等が鋭意研究を継続した結果、日射遮蔽用合わせ構造体に用いる日射遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<x/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子および/または一般式MxWyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合酸化物の微粒子を適用することにより達成されることを見出すに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る第1の手段は、
日射遮蔽機能を有する微粒子を含む中間層を、板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
前記日射遮蔽機能を有する微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子で構成されることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0013】
第2の手段は、
日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間層を、
日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックの合わせ板と、
板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた合わせ板と、の間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有する微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子で構成されることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0014】
第3の手段は、
前記日射遮蔽機能を有する微粒子の直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする第1または第2の手段に記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0015】
第4の手段は、
前記タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子のL表色系における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15の範囲内にあることを特徴とする第1〜第3の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0016】
第5の手段は、
前記日射遮蔽機能を有する微粒子が、六方晶もしくは単斜晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物の微粒子を含むことを特徴とする第1〜第4の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0017】
第6の手段は、
前記日射遮蔽機能を有する微粒子として、
前記タングステン酸化物の微粒子および/または前記複合タングステン酸化物の微粒子と、
Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合体を用いることを特徴とする第1〜第5の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0018】
第7の手段は、
前記タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子と、
前記Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合割合が、重量比で95:5〜5:95の範囲であることを特徴とする第6の手段に記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0019】
第8の手段は、
前記プラスチックが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂の、シートまたはフィルムであることを特徴とする第1〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0020】
第9の手段は、
前記中間層は、中間膜を有し、当該中間膜中に前記日射遮蔽機能を有する微粒子が分散していることを特徴とする第1、第3〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0021】
第10の手段は、
前記中間層は、2層以上の積層した中間膜を有し、当該中間膜の少なくとも1層に、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が分散されていることを特徴とする第1、第3〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0022】
第11の手段は、
前記中間層は、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の少なくとも一方の内側の面に形成された前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層と重なり合う中間膜と、を有することを特徴とする第1、第3〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0023】
第12の手段は、
前記中間層は、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層が延性を有する樹脂フィルム基板の片面上もしくは内部に形成された日射遮蔽延性フィルム基板が、2層以上の積層した中間膜の間に積層されていることを特徴とする第1、第3〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0024】
第13の手段は、
前記中間層は、
中間膜または2層以上の積層した中間膜と、
接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体と、を有し、
前記積層体の接着剤層は、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた一方の合わせ板の内側の面に接着し、
前記積層体の剥離層は、前記中間膜または2層以上の積層した中間膜と接着していることを特徴とする第1、第3〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0025】
第14の手段は、
前記中間層は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜または2層以上の積層した日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜を有していることを特徴とする第2〜第7の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0026】
第15の手段は、
前記中間膜を構成する樹脂は、ビニル系樹脂であることを特徴とする第9〜第14の手段のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【0027】
第16の手段は、
前記中間膜を構成するビニル系樹脂は、ポリビニルブチラールもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする第15の手段に記載の日射遮蔽用合わせ構造体である。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段に係る日射遮蔽用合わせ構造体によれば、日射遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子および/または一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子が、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在する中間層等に含まれているので、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さく、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0029】
第2の手段に係る日射遮蔽用合わせ構造体によれば、当該構造体を構成する2枚の合わせ板の少なくとも一方に、日射遮蔽機能を有する微粒子として、上述した一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物の微粒子および/または一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物の微粒子を含むプラスチック板を用い、2枚の合わせ板間に介在する中間層には当該日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させていないため、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さく、生産コストは安価な上、所望により、当該中間膜へ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0030】
第3の手段に係る日射遮蔽機能を有する微粒子の直径が、1nm以上800nm以下であると、当該日射遮蔽機能を有する微粒子の工業的な製造が容易であると伴に、可視光線領域の光の散乱が低減される結果、透明性の高い日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0031】
第4の手段に係るタングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子のL表色系における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15の範囲内にあると、当該微粒子は日射遮蔽用微粒子として好ましい光学特性を発揮するので、当該微粒子を日射遮蔽用微粒子として用いることで日射遮蔽特性に優れた日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0032】
第5の手段に係る日射遮蔽機能を有する微粒子が、六方晶もしくは単斜晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物の微粒子を含むと、これらの結晶構造を有する微粒子は化学的に安定であり、日射遮蔽用微粒子として好ましい光学特性を発揮するので、当該微粒子を日射遮蔽用微粒子として用いることで、安定性と日射遮蔽特性とに優れた日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0033】
第6の手段に係る日射遮蔽機能を有する微粒子として、タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子と、
Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合体を用いることで、タングステン酸化物の微粒子、および/または、複合タングステン酸化物の微粒子の使用量を削減することができ、コスト削減効果を発揮させることが出来る。
【0034】
第7の手段に記載したように、前記タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子と、
前記Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合割合が重量比で95:5〜5:95の範囲であることで、十分な日射遮蔽特性を維持したままコスト削減効果を発揮させることが出来る。
【0035】
第8の手段に記載した、日射遮蔽用合わせ構造体の合わせ板に用いられるプラスチックが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂の、シートまたはフィルムである日射遮蔽用合わせ構造体は、これらの樹脂が透明樹脂であることから、自動車等の輸送機器等に好適に適用することが出来る。
【0036】
第9の手段に記載した、中間層が中間膜を有し、当該中間膜中に日射遮蔽機能を有する微粒子を分散させた日射遮蔽用合わせ構造体は、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい上、製造が容易で生産コストが安い。
【0037】
第10の手段に記載した、中間層が2層以上の積層した中間膜を有し、当該中間膜の少なくとも1層に、日射遮蔽機能を有する微粒子が分散されている日射遮蔽用合わせ構造体は、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい上、製造が容易で生産コストが安いことに加え、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜と、合わせ板との接着性を上げることができるので、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高い。さらに、所望により、当該日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜へ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0038】
第11の手段に記載した、中間層が板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の少なくとも一方の内側の面に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層と重なり合う中間膜と、を有する日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。さらに、所望により、当該中間膜を日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜とすることで、ここへ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0039】
第12の手段に記載した、中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層が延性を有する樹脂フィルム基板の片面上もしくは内部に形成された日射遮蔽延性フィルム基板が、中間膜と積層され、または、2層以上の積層した中間膜の間に積層されている日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。さらに、所望により、当該中間膜を日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜とすることで、ここへ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0040】
第13の手段に記載した、前記中間層が、中間膜または2層以上の積層した中間膜と、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体と、を有し、
前記積層体の接着剤層は、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた一方の合わせ板の内側の面に接着し、
前記積層体の剥離層は、前記中間膜または2層以上の積層した中間膜と接着している日射遮蔽用合わせ構造体は、当該日射遮蔽層を容易に膜厚の薄いものとすることが出来る。
【0041】
第14の手段に記載した、中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜または2層以上の積層した日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜を有している日射遮蔽用合わせ構造体は、中間膜と合わせ板との間で適度な接着性を得ることができる上、所望により、当該日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜へ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0042】
第15の手段に記載したように、中間膜を構成する樹脂がビニル系樹脂であると、光学的特性、力学的性質、材料コストの観点から好ましい日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができ、第16の手段に記載したように、当該ビニル系樹脂が、ポリビニルブチラールもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体であると、さらに好ましい光学的特性、力学的性質を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態に関し、まず日射遮蔽機能を有する微粒子、次に当該日射遮蔽機能を有する微粒子を用いた日射遮蔽用合わせ構造体について詳細に説明する。
【0044】
[日射遮蔽機能を有する微粒子]
本発明に適用される日射遮蔽機能を有する微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子である。上記一般式を具備するタングステン酸化物の微粒子や複合タングステン酸化物の微粒子は、日射遮蔽用合わせ構造体へ適用した際、所望の光学特性を得ることができる。
【0045】
当該タングステンと酸素との組成範囲は、当該赤外線遮蔽材料であるタングステン酸化物の微粒子をWyOzと記載したとき、タングステンに対する酸素の組成比が好ましくは2.0よりも大きく3.0未満である。このz/yの値が2.0よりも大きければ、当該赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWOの結晶相が現われるのを回避することができると共に、材料としての化学的安定性を得ることができるので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。
一方、このz/yの値が、3.0未満であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となる。
【0046】
また、タングステン酸化物の微粒子を一般式WyOzと表記したとき、2.45≦z/y≦2.99で表される組成比を有するマグネリ相は化学的に安定であり、近赤外領域の吸収特性もよいので、赤外線遮蔽材料としてはさらに好ましい。例えば、WO2.92、WO2.90、W2058、W2468、W1747、W1849等を挙げることができる。
【0047】
さらに、当該タングステン酸化物の微粒子へ、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素)を添加し、複合タングステン酸化物の微粒子とすることで、当該複合タングステン酸化物の微粒子中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるために好ましい。
【0048】
また、当該複合タングステン酸化物の微粒子は、上述した酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用することで、より効率のよい赤外線遮蔽材料を得ることができる。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素の添加とを併用した赤外線遮蔽材料の一般式を、MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0の関係を満たすことが望ましく、さらには六方晶や単斜晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物の微粒子であることが望ましい。
【0049】
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線遮蔽効果を得ることができる。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加して赤外線遮蔽効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1以下であれば、当該赤外線遮蔽材料中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5である。
また、元素MはH、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上であることが好ましい。
【0050】
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物材料においても、上述したWyOzで表記されるタングステン酸化物材料と同様の機構が働くことに加え、z/y≦3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、好ましくは2.0<z/y≦3.0であり、より好ましくは2.2≦z/y≦2.99、さらに好ましくは2.45≦z/y≦2.99である。さらに当該複合タングステン酸化物の微粒子が六方晶もしくは単斜晶の結晶構造をとると化学的に安定であり、近赤外領域の吸収特性もよいので、赤外線遮蔽材料としてはさらに好ましい。
【0051】
本発明に係る、タングステン酸化物の微粒子、および/または、複合タングステン酸化物の微粒子を含有する赤外線遮蔽材料は近赤外線領域、特に1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。また、当該赤外線遮蔽材料の粒子径は、その使用目的によって適宜選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0052】
この粒子による散乱の低減を重視するときは、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、粒子の粒子径が小さければ幾何学散乱もしくはミー散乱による380nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに、粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
【0053】
前記粒子径を上述の範囲で適宜に選択することにより、当該日射遮蔽材料微粒子を媒体中に分散させた日射遮蔽材料微粒子分散体のヘイズ値を、可視光透過率85%以下でヘイズ値30%以下とすることができる。ヘイズ値が30%以下であると、当該日射遮蔽材料微粒子分散体を塗布した透明基体が、曇りガラスのようになるのを回避でき、鮮明な透明性が得られる。
【0054】
また、本発明の日射遮蔽機能を発揮する微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性向上の観点から好ましい。
【0055】
所望とする日射遮蔽用合わせ構造体を得るには、前記タングステン酸化物の微粒子、および/または、複合タングステン酸化物の微粒子の粉体色が、国際照明委員会(CIE)が推奨しているL表色系(JIS Z 8729)における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15である条件を満たすことが望ましい。
【0056】
ここで、本発明に係る日射遮蔽用微粒子が当該粉体色を有しており、好ましい光学特性を発揮する理由を簡単に説明する。まず、一般的な光と物質内の電子の相互作用について説明すると、ある物質には固有のプラズマ周波数があってこの周波数より長波長の光は反射され、短波長の光は透過されることが知られている。プラズマ周波数ωは式(2)で表される。
ω=nq/εm (2)
ここで、nは伝導電子密度、qは電子の電荷、εは誘電率、mは電子の有効質量である。
式(2)から明らかなように、当該物質の伝導電子密度が増加するとプラズマ周波数が大きくなるため、より短波長側の光まで反射されることになる。伝導電子密度は金属で1022/cm台であるため、金属では可視光領域からすでに反射率が高いが、タングステン酸化物では、可視光線は透過し近赤外線域から吸収率が高くなるので、タングステン酸化物は日射遮蔽膜として用いることができる。一方、タングステン酸化物の微粒子を還元性ガスで処理すると、その粉体色は淡黄色→黄緑色→濃青色→暗青色と変化すると同時に、その圧粉の電気抵抗値も減少する。これは、タングステン酸化物の微粒子が還元性ガスで処理されることによって、当該微粒子中に酸素の空孔が生じ、これによって当該微粒子中の自由電子が増加したためと考えられる。即ち、タングステン酸化物の微粒子の粉体色と伝導電子密度、そしてプラズマ周波数との間には密接な関係があると考えられる。
【0057】
また、上記タングステン酸化物の微粒子、および/または、上記複合タングステン酸化物の微粒子と、Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた少なくとも2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子から選ばれた少なくとも1種の微粒子とが混合され、その混合割合が、重量比で95:5〜5:95の範囲に設定されたものも日射遮蔽機能を有する微粒子として好ましい。
【0058】
この混合割合が95:5以下であればタングステン酸化物の微粒子、および/または、複合タングステン酸化物の微粒子の使用量を削減することができコスト削減効果が期待できる。一方、この混合割合が5:95以上であれば十分な日射遮蔽特性を期待することができる。
【0059】
[日射遮蔽機能を有する微粒子の製造方法]
日射遮蔽機能を有する微粒子である一般式WyOzで表されるタングステン酸化物の微粒子と、一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表されるタングステン酸化物の微粒子との製造方法について説明する。
(a).一般式WyOzで表されるタングステン酸化物の微粒子の製造方法
上述した、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表されるタングステン酸化物の微粒子は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成することにより得られる。ここで、原料として用いるタングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステンには、特に制限は無い。
【0060】
但し、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、または六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を焼成してタングステン酸化物の微粒子を製造する場合、当該焼成温度は、所望とする微粒子と光学特性の観点から200℃以上1000℃以下とすることが好ましい。当該焼成温度が200℃以上1000℃以下の範囲にあると、所望の光学特性を有するタングステン酸化物の微粒子を製造することが出来る。焼成時間は、焼成温度に応じて適宜選択すればよいが、10分間以上5時間以下で十分である。
【0061】
次に、前記タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を焼成して調製したタングステン酸化物の微粒子へ酸素空孔を生成させるために、当該タングステン酸化物の微粒子を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成する。ここで、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどのガスを用いることができ、還元性ガスとしては、水素やアルコールなどのガスを用いることができる。そして、当該タングステン酸化物の微粒子を、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成する場合、不活性ガス中の還元性ガスの濃度は焼成温度に応じて適宜選択すれば特に限定されないが、好ましくは20vol%以下、より好ましくは10vol%以下、さらに好ましくは7〜0.01vol%である。不活性ガス中の還元性ガスの濃度が20vol%以下であると、当該タングステン酸化物の微粒子の急速な還元を回避することができ、日射遮蔽機能を有しないWOの生成を回避できる。
【0062】
当該タングステン酸化物の微粒子へ酸素空孔を生成させる際の処理温度は、雰囲気に応じて適宜選択すればよいが、不活性ガス単独の場合は日射遮蔽用微粒子としての結晶性や隠ぺい力の観点から650℃を超え、1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下である。一方、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスの場合は、還元性ガス濃度に応じてWOが生成しない温度を適宜選択すればよい。さらに、不活性ガス単独と、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスという、両雰囲気下で行う2ステップ反応の場合は、例えば1ステップ目に不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下、100℃以上650℃以下で焼成し、2ステップ目に不活性ガス雰囲気下、650℃を超え1200℃以下で焼成することも日射遮蔽特性の観点から好ましい。このときの焼成処理時間は温度に応じて適宜選択すればよいが、5分間以上5時間以下で十分である。
【0063】
製造されたタングステン酸化物の微粒子は、L表色系における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15の範囲内にあった。さらに当該タングステン酸化物の微粒子について、X線回折測定を行うと、WO3−x相の回折ピークが見られ、W2058、W1849などのいわゆるマグネリ相の存在が確認された。化学分析の結果に依れば、WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)相となっていると判断される。
【0064】
(b).一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子の製造方法
上述した一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物の微粒子は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物と、M元素の酸化物または/及び水酸化物の粉体と、を乾式混合した混合粉体を不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、1ステップ目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成しさらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下において焼成するという2段の焼成を行なうことにより得られる。また、前記タングステン化合物に替えて、(a)にて製造したタングステン酸化物の微粒子を用いても良い。
【0065】
当該複合タングステン酸化物の微粒子の異なる製造方法として、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物と、前記M元素の塩を含む水溶液と、を湿式混合した混合液を乾燥して得た乾燥粉を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、1ステップ目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、さらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下で焼成するという2段の焼成を行なうことによっても得られる。また、前記タングステン化合物に替えて、(a)にて製造したタングステン酸化物の微粒子を用いても良い。
【0066】
上述したように、添加するM元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちから選択される1種類以上の元素が好ましい。これらの元素は、いずれも複合タングステン酸化物の微粒子の日射遮蔽特性の向上、耐候性の向上を図ることができるが、日射遮蔽特性を向上させる観点からはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属に属する元素が好ましく、耐候性を向上させる観点からは、3B族元素、4B族元素、5B族元素、4A族元素が好ましい。
【0067】
タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物の微粒子、から選ばれる1種以上へ乾式混合法を用いてM元素を添加するときの、M元素の化合物としては酸化物、水酸化物が好ましい。そして、このM元素の酸化物、水酸化物と、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物の微粒子、から選ばれる1種以上とを混合する。当該乾式混合は、市販の擂潰機、ボールミル等で行えばよい。
【0068】
また、当該乾式混合法とは異なる混合方法として、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステンをアルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物の微粒子、から選ばれる1種以上へ、前記M元素の塩を水溶液化したものを湿式混合法により混合した後、乾燥して乾燥粉を得ることとしても良い。この場合、前記M元素の塩は特に限定されるものでなく、例えば硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩などが挙げられる。前記湿式混合後の乾燥温度や時間は特に限定されるものでない。
【0069】
次に、前記複合タングステン酸化物の微粒子へ酸素空孔を生成させるために、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、1ステップ目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、さらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下で焼成するという2段の焼成を行なう。当該焼成処理に用いる不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス、不活性ガス中の還元性ガスの濃度、焼成処理温度は、前記(a)にて説明した不活性ガスまたは還元性ガス、不活性ガス中の還元性ガスの濃度、焼成処理温度と同様である。
【0070】
製造された複合タングステン酸化物の微粒子は、L表色系における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15の範囲内にあった。さらに当該複合タングステン酸化物の微粒子について、X線回折測定を行うと六方晶または単斜晶の存在が確認された。化学分析の結果に依れば、MxWyOz(但し、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)相になっていると判断される。
【0071】
[日射遮蔽用合わせ構造体]
次に、中間層を、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させ、且つ前記中間層またはプラスチックの少なくともいずれか1つが日射遮蔽機能を有する微粒子を含んで成る日射遮蔽用合わせ構造体について説明する。
まず合わせ板は、中間層をその両側から挟み合わせる板であり、可視光領域において透明な、板ガラス、板状のプラスチックが用いられる。このとき、板ガラス、板状のプラスチックから選ばれる2枚の合わせ板とは、板ガラスと板ガラスの場合、板ガラスとプラスチックの場合、プラスチックとプラスチックの場合、の各構成を含むものである。
尚、日射遮蔽用合わせ構造体にプラスチックを用いる場合の当該プラスチックの材質は、当該日射遮蔽用合わせ構造体の用途に合わせて適宜に選択され、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であるが、例えば、自動車等の輸送機器に用いる場合は、当該輸送機器の運転者や搭乗者の透視性を確保する観点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂といった透明樹脂が好ましが、他にも、PET樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、等が使用可能である。
当該合わせ板の形態例として、板ガラスや前記のプラスチックをそのまま用いる形態(本明細書においては便宜的に形態Aと記載する。)と、前記プラスチックに日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させて用いる形態(本明細書においては便宜的に形態Bと記載する。)とがある。次に、形態Bにおいて、前記プラスチックに日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させる方法について、説明する。
【0072】
日射遮蔽用微粒子を前記プラスチックに練り込むときは、前記プラスチックを融点付近の温度(200〜300℃前後)迄加熱して日射遮蔽用微粒子を混合する。そして、プラスチックと日射遮蔽用微粒子との混合物をペレット化し、所望の方式でフィルムやシート状等に形成することが可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などにより形成可能である。この時のフィルムやボード等の厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよい。前記プラスチックに対する日射遮蔽用微粒子の添加量は、フィルムやシート材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
【0073】
日射遮蔽機能を有する中間層の形態例として、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させる中間膜で構成する形態(本明細書においては便宜的に形態1と記載する。)と、2層以上の中間膜から成り、少なくともその内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させる形態(本明細書においては便宜的に形態2と記載する。)と、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側の面に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層を形成し、当該日射遮蔽層に中間膜を重ねる形態(本明細書においては便宜的に形態3と記載する。)と、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上、または延性フィルム基板の内部に形成した日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とで構成される形態(本明細書においては便宜的に形態4と記載する。)と、中間膜の一方の面に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層を形成する形態(本明細書においては便宜的に形態5と記載する。)と、中間層が、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の一方の内側の面に、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の前記接着剤層を接着させ、さらに、前記積層体の前記剥離層側へ前記積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜と、を有している形態(本明細書においては便宜的に形態6と記載する。)とがある。さらに、中間層が日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない形態(本明細書においては便宜的に形態7と記載する。)がある。
【0074】
ここで、中間膜を構成する材料としては、光学的特性、力学的性質、材料コストの観点から合成樹脂であることが好ましく、ビニル系樹脂であることがさらに好ましい。さらには、同様の観点から、ビニル系樹脂の中でもポリビニルブチラールもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
以下、中間膜としてビニル系樹脂を用いた場合を例としながら、上述した合わせ板の形態A、Bと組み合わせた形態1〜7の各形態例について、図2〜図8を参照しながら説明する。尚、図2〜図8は、日射遮蔽用合わせ構造体の模式的な断面図である。
【0075】
(形態A−1)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子と中間膜とで構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液を、ビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
尚、上記説明では、可塑剤中に日射遮蔽機能を有する微粒子を分散させる例について説明したが、日射遮蔽機能を有する微粒子を可塑剤でない適宜溶媒に分散した分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤は別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。
【0076】
これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。
図2に、当該(形態A−1)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図2に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、日射遮蔽機能を有する微粒子11が分散して含有される中間膜12により構成されている。
【0077】
(形態B−1)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子と中間膜とで構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−1と同様に製造することができる。
【0078】
当該形態も形態A−1と同様に高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法も、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。
【0079】
(形態A−2)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、2層以上の中間膜を有し、少なくともその内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子が含有される中間膜により構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない他の中間膜のシートと積層させるか、もしくは日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない2層の中間膜のシート間に介在させ、これを板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
尚、形態1と同様に、日射遮蔽機能を有する微粒子を可塑剤に分散させるのではなく、適宜溶媒に分散された分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤を別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。
これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
【0080】
当該方法によれば、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートと、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板との接着性を上げることができるので、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
【0081】
また、例えば、少なくとも片面にスパッタ法等によってAl膜やAg膜等を形成したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを作製し、当該PETフィルムを、上記中間膜間に介在させて中間層を構成したり、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することとしても良い。これら、フィルムの介在や添加剤の添加により、UVカット、色調調整等の機能付加を行うことができる。
図3に、当該(形態A−2)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図3に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、日射遮蔽機能を有する微粒子11が分散して含有される中間膜11が、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない中間膜12に挟み込まれて構成されている。
【0082】
(形態B−2)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、2層以上の中間膜を有し、少なくともその内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子が含有される中間膜により構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−2と同様に製造することができる。
【0083】
これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
【0084】
当該方法によっても、A−2と同様に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートと、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板との接着性を上げることができるので、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
【0085】
(形態A−3)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側の面に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層に重ねられた中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
可塑剤若しくは適宜溶媒に日射遮蔽機能を有する微粒子が分散された添加液へ、適宜なバインダー成分(シリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等)を配合して塗布液を調製する。この調製された塗布液を用いて、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側に位置する面へ日射遮蔽膜を形成する。次に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、前記日射遮蔽膜が形成された少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内面側と、日射遮蔽膜が形成されていないもう一方の板ガラスまたはプラスチック間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
【0086】
当該方法によれば、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
図4に、当該(形態A−3)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図4に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない中間膜12上に日射遮蔽機能を有する微粒子11を含む日射遮蔽膜13が形成されている。
【0087】
(形態B−3)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側の面に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層に重ねられた中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−3と同様に製造することができる。
【0088】
当該方法によっても、A−3と同様に、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
【0089】
(形態A−4)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上、または延性フィルム基板の内部に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
(イ)中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する場合について説明する。
例えば、可塑剤若しくは適宜溶媒に日射遮蔽機能を有する微粒子が分散された塗布液、もしくは前記添加液に適宜バインダー成分(シリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等)を配合して調製した塗布液を用いて、延性を有する樹脂フィルムの片面に日射遮蔽膜を形成する。当該延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に日射遮蔽膜を形成する際、樹脂フィルム表面に対し、樹脂バインダーとの結着性向上を目的として、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理などによる表面処理を施してもよい。次に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まないビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得る。この中間膜のシートを2枚用いて、前記片面に日射遮蔽層が形成された延性を有する樹脂フィルム基板、または、内部に日射遮蔽機能を有する微粒子を含む延性を有する樹脂フィルム基板を、当該中間膜のシートの間に配置して中間層とすることが好ましい。当該構成を採ることで、前記片面に日射遮蔽層が形成された延性を有する樹脂フィルム基板または内部に日射遮蔽機能を有する微粒子を含む延性を有する樹脂フィルム基板と、合わせ板との間で接着性に関する問題が起きるのを回避できるからである。ここで、2層以上の積層した中間膜の内の1層に、日射遮蔽機能を有する微粒子や、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を含有させても勿論よい。
【0090】
(ロ)中間層が、延性フィルム基板の内部に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する場合について説明する。
延性を有する樹脂を、その融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱し、日射遮蔽機能を有する微粒子と混合する。さらに、当該延性を有する樹脂と日射遮蔽機能を有する微粒子との混合物をペレット化し、所定の方式でフィルムやボード等を形成する。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などにより形成可能である。この時のフィルムやボード等の厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよい。当該延性を有する樹脂に添加する日射遮蔽機能を有する微粒子量は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。次に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まないビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得る。前記延性を有し日射遮蔽機能を有する微粒子を含む樹脂フィルムを、当該2枚の中間膜のシートの間に配置し中間層とする。この中間層を、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。ここで、2層以上の積層した中間膜の内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させても勿論よい。
さらに、所望により、当該日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜へ、UVカット、色調調整、等の効果を有する適宜な添加剤を自在且つ容易に添加することができ、多機能を有する日射遮蔽用合わせ構造体を得ることができる。
【0091】
当該(イ)(ロ)にて説明した方法によっても、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
図5に、当該(形態A−4(イ))に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図5に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、延性を有する樹脂フィルム14上に日射遮蔽機能を有する微粒子11を含む日射遮蔽膜13が形成され、当該樹脂フィルムと日射遮蔽膜との積層体が日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない中間膜12に挟み込まれて構成されている。
図6に、当該(形態A−4(ロ))に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図6に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、日射遮蔽機能を有する微粒子11を含む延性を有する樹脂フィルム15が日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない中間膜12に挟み込まれて構成されている。
【0092】
(形態B−4)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有するか、または、中間層が、延性フィルム基板の内部に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、2層以上の積層した中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−4と同様に製造することができる。
【0093】
当該方法によっても、A−4と同様に、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調整、等の機能付加を行なうことができる。
【0094】
(形態A−5)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、中間膜の一方の面に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層が形成されたものである日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
可塑剤若しくは適宜溶媒に日射遮蔽機能を有する微粒子が分散された添加液に適宜バインダー成分(シリケート等の無機バインダーあるいはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等)を配合して塗布液を調製する。この塗布液を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形した中間膜シートの一方の面に塗布して日射遮蔽膜を形成する。次に、この日射遮蔽膜が形成された中間膜を、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合わせることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
【0095】
当該方法によれば、日射遮蔽機能を有する微粒子を含む膜を中間膜のシートの表面に形成しているので、当該日射遮蔽機能を有する微粒子へ、さらにフィラー等の添加物を所望に応じて添加することができ、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
【0096】
(形態B−5)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、中間膜の一方の面に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層が形成されたものである日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−5と同様に製造することができる。
【0097】
当該方法によっても、日射遮蔽機能を有する微粒子を含む膜を中間膜のシートの表面に形成しているので、当該日射遮蔽機能を有する微粒子へ、さらにフィラー等の添加物を所望に応じて添加することができ、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
【0098】
(形態A−6)
合わせ板として板ガラスや日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しないプラスチックを用い、中間層が、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の一方の内側の面に、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の前記接着剤層を接着させ、さらに、前記積層体の前記剥離層側へ前記積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜と、を有している日射遮蔽用合わせ構造体(すなわち、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、「一方の合わせ板/接着剤層/日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層/剥離層/中間膜または2層以上の積層した中間膜/他方の合わせ板」の構造を有している。)は、例えば、以下のようにして製造されるが、当該工程を図7(A)〜(C)を用いて説明する。図7(A)〜(C)は、(形態A−6)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の、製造工程における断面図を示す。
まず図7(A)に示すように、フィルムシート17(例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素などの合成樹脂フィルム、紙、セロファンなどが挙げられる。)の一方の面に剥離層16(例えば、ワックス、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールなど)を形成し、この剥離層上に日射遮蔽機能を有する微粒子11が含まれる日射遮蔽層13を形成し、この日射遮蔽層上に接着剤層18(例えば、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。)を形成して積層体とし転写フィルム19を得る。
この転写フィルム19の接着剤層18を、一方の板ガラスまたはプラスチックの合わせ板1の内側の面に加圧下で接着した後、前記転写フィルムからフィルムシート17を剥離する。すると、剥離層16の効果により積層体よりフィルムシート17のみが剥離される。この状態を図7(B)に示す。
このフィルムシート17の剥離の後、上述した中間膜12または2層以上の積層した中間膜を介して、もう一方の板ガラスまたはプラスチックの合わせ板1の内側の面と加圧下で接着させることにより、図7(C)に示す日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
この結果、得られる(形態A−6)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例は、図7(C)に示すように当該2枚の合わせ板1にて中間層2を挟み込んでいる。そして、当該中間層2は、微粒子を含有しない中間膜12、剥離層16、日射遮蔽機能を有する微粒子11を含む日射遮蔽膜13、接着剤層18から構成される。
【0099】
当該方法によれば、容易に膜厚の薄い日射遮蔽層を製造することが出来、さらに、中間膜、剥離層や接着剤層へ、適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行なうことができる。
【0100】
(形態B−6)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の一方の内側の面に、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の前記接着剤層を接着させ、さらに、前記積層体の前記剥離層側へ前記積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜と、を有している日射遮蔽用合わせ構造体(すなわち、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、「一方の合わせ板/接着剤層/日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層/剥離層/中間膜または2層以上の積層した中間膜/他方の合わせ板」の構造を有している。)は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない2枚の板ガラス、プラスチックの少なくとも1枚を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有するプラスチックに代替する以外は、形態A−6と同様に製造することができる。
【0101】
当該方法によっても、容易に膜厚の薄い日射遮蔽層を製造することが出来、さらに、剥離層や接着剤層へ、適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行なうことができる。
【0102】
(形態B−7)
少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない、例えば、ビニル系樹脂を含む中間膜により構成された日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。可塑剤をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜用シートを得る。当該中間膜シートの少なくとも一方の合わせ板として日射遮蔽機能を有する微粒子を含有したプラスチックを用い、他方の合わせ板にガラス板、プラスチックを用いればよい。
【0103】
当該方法により、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストの安価な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。
さらに、中間膜および/または他方の合わせ板のプラスチックへ適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行うことができる。
図8に、当該(形態B−7)に係る日射遮蔽用合わせ構造体の一例の断面図を示す。図8に示すように、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、日射遮蔽機能を有する微粒子11を含有する合わせ板20と、当該微粒子を含有しない合わせ板1とで、中間層2を挟み込んでいる。当該中間層2は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有しない中間膜12上により形成されている。
【0104】
(日射遮蔽用合わせ構造体の製造方法)
日射遮蔽機能を有する上記微粒子を可塑剤もしくは適宜溶媒に分散する方法は、微粒子が可塑剤もしくは適宜溶媒中に均一に分散できる方法であれば任意である。例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散等の方法を挙げることができ、上記微粒子を可塑剤もしくは適宜溶媒に均一に分散することによって本発明の日射遮蔽用合わせガラスの製造に適用される上記添加液あるいは塗布液が調製される。
【0105】
日射遮蔽機能を有する上記微粒子を分散させる溶媒としては特に限定されるものではなく、日射遮蔽膜を形成する条件およびビニル系樹脂組成物を調製する際に配合されるビニル系樹脂等に合わせて適宜選択することが可能である。例えば、水やエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン等のケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。また、必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、上記塗布液中における微粒子の分散安定性を一層向上させるため、各種の界面活性剤、カップリング剤等の添加も勿論よい。
【0106】
また、上記ビニル系樹脂の可塑性を調整する可塑剤についても特に限定されず、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ脂肪酸モノエステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキソエート、セバシン酸ジブチル、ジブチルセバケート等が挙げられる。
【0107】
また、上記ビニル系樹脂としては、例えばポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、塩化ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニルエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール−ポリビニルブチラール混合物等が挙げられるが、ガラスやプラスチックとの接着性、透明性、安全性などの観点からポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールやエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0108】
次に、日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる中間膜用シートあるいは日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートの形成方法には公知の方法が用いられ、例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。特に日射遮蔽機能を有する微粒子とビニル系樹脂組成物が含まれる前者の中間膜用シートにおいて、上記ビニル系樹脂組成物は、例えば日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加し、混練して上記微粒子が均一に分散して成るものであり、このように調製されたビニル系樹脂組成物をシート状に成形することができる。尚、ビニル系樹脂組成物をシート状に成形する際には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽材等を配合し、また、シートの貫通性制御のために接着力調整剤(例えば金属塩)を配合してもよい。また、本発明の合わせ構造体の製造方法は、上述した合わせ構造体の構成をとる方法であれば、限定されるものではない。
【0109】
(日射遮蔽体形成用分散液の製造方法)
日射遮蔽用合わせ構造体へ好個に適用できる日射遮蔽体形成用分散液の製造方法について説明する。
本発明に係る日射遮蔽体形成用分散液は、溶媒と日射遮蔽用微粒子とを含有し、当該日射遮蔽用微粒子が当該溶媒中に分散している日射遮蔽体形成用分散液である。この日射遮蔽用微粒子は、前記した一般式WyOz(但し、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子で構成される。また、当該日射遮蔽用微粒子を含む粉体は、その粉体色がL表色系において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15であるタングステン酸化物の微粒子である。そして、前記溶媒中に分散された当該タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径は800nm以下である。前記溶媒中に分散されるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径が800nm以下まで十分細かく、かつ、均一に分散した日射遮蔽体形成用分散液を適用することにより、高い日射遮蔽特性を有する日射遮蔽体を得ることができる。
【0110】
ここで、日射遮蔽体形成用分散液中における、当該タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径について簡単に説明する。タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径とは、溶媒中に分散しているタングステン酸化物の微粒子が凝集して生成した凝集粒子の径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、タングステン酸化物の微粒子分散液からタングステン酸化物の微粒子の単体や凝集体が存在する状態のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした大塚電子(株)社製ELS−8000にて測定することで求めることができる。
【0111】
当該日射遮蔽体形成用分散液において、前記タングステン酸化物の微粒子の分散粒子径は800nm以下であることが望ましい。分散粒子径が800nm以下であると、得られた日射遮蔽体が単調に透過率の減少した灰色系の膜や成形体(板、シートなど)になってしまうことを回避でき、高い日射遮蔽特性を示すからである。さらに、当該日射遮蔽体形成用分散液が凝集した粗大粒子を多く含んでいなければ、これら粗大粒子が光散乱源となって曇り(ヘイズ)を発生させ、可視光透過率が減少する原因となるのを回避することができるので好ましい。
【0112】
なお、当該タングステン酸化物の微粒子を溶媒へ分散させる方法は、均一に分散できる方法であれば特に限定されず、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどを用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。これらの器材を用いた分散処理によって、タングステン酸化物の微粒子の溶媒中への分散と同時にタングステン酸化物の微粒子同士の衝突等による微粒子化も進行し、タングステン酸化物粒子をより微粒子化して分散させることができる(すなわち、粉砕・分散処理される)。
【0113】
さらに、Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから選択される2種以上の元素を含む酸化物の微粒子、
または、一般式XB(但し、Xはアルカリ土類金属元素またはイットリウム(Y)を含む希土類元素から選択された元素、Bはホウ素、4≦m<6.3)で表されるホウ化物の微粒子、
または、InSn12などのインジウム錫複合酸化物の微粒子、から選択される少なくとも1種の微粒子を前記日射遮蔽体形成用分散液へ添加して、当該分散液中の溶媒中に分散させるのも好ましい構成である。
【0114】
上述の構成により、日射遮蔽体の日射遮蔽特性の向上、日射遮蔽体の色調の調整、添加フィラー量の削減、等の効果を得ることができるが、日射遮蔽特性の向上の観点からは、Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから選択される2種以上の元素を含む酸化物の微粒子やインジウム錫複合酸化物の微粒子が好ましく、色調の調整、添加フィラー量の削減の観点からは、ホウ化物の微粒子が好ましい。さらに、可視光により近い近赤外線に対する遮蔽特性向上の観点からはホウ化物の微粒子が好ましい。尚、このときの添加割合は、所望とする日射遮蔽特性に応じて適宜選択すればよい。
【0115】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液は、無機バインダーまたは/及び樹脂バインダーを含む構成とすることができる。無機バインダーや樹脂バインダーの種類は特に限定されるものではない。例えば、当該無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、若しくはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物あるいはオルガノシラザンが挙げられ、また、当該樹脂バインダーとして、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが利用できる。
【0116】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液において、タングステン酸化物の微粒子を分散した溶媒は特に限定されるものではなく、塗布・練り込み条件、塗布・練り込み環境、さらに、無機バインダーや樹脂バインダーを含有させたときはバインダーに合わせて適宜選択すればよい。
【0117】
当該溶媒としては、例えば、水やエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、メチルエーテル,エチルエーテル,プロピルエーテルなどのエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。また必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、分散液中の微粒子の分散安定性を一層向上させるためには、各種の界面活性剤、カップリング剤などの添加も勿論可能である。
【0118】
さらに、前記日射遮蔽体形成用分散液を用いて透明基材上に被膜を形成したとき、当該膜の導電性は、当該タングステン酸化物の微粒子の接触個所を経由した導電パスに沿って得られる。そこで、例えば、前記日射遮蔽体形成用分散液中の界面活性剤やカップリング剤の量を加減することで、当該導電パスを部分的に切断することができ、10Ω/□以上の表面電気抵抗値にして膜の導電性を低下させることは容易である。また、前記日射遮蔽体形成用分散液中の無機バインダーまたは/及び樹脂バインダーの含有量の加減によっても当該膜の導電性を制御できる。
【0119】
次に、前記日射遮蔽体形成用分散液を適宜な透明基材上に塗布して被膜を形成する場合、当該塗布方法は特に限定されない。当該塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、ロールコート法、流し塗りなど、分散液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0120】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液中に無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属アルコキシド及びその加水分解重合物を含む場合、分散液の塗布後の基材加熱温度を100℃以上とすることで、塗膜中に含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合反応を殆ど完結させることができる。重合反応を殆ど完結させることで、水や有機溶媒が膜中に残留して加熱後の膜の可視光透過率の低減の原因となることを回避できることから、前記加熱温度は100℃以上が好ましく、さらに好ましくは分散液中の溶媒の沸点以上である。
【0121】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液中に樹脂バインダーを使用した場合は、それぞれの樹脂バインダーの硬化方法に従って硬化させればよい。例えば、樹脂バインダーが紫外線硬化樹脂であれば紫外線を適宜照射すればよく、また常温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよい。
【0122】
また、日射遮蔽体形成用分散液が樹脂バインダーまたは無機バインダーを含まない場合、透明基材上に得られる被膜は、前記タングステン酸化物の微粒子のみが堆積した膜構造になる。そして当該被膜はこのままでも日射遮蔽効果を示す。しかし、この膜上へ、さらに珪素、ジルコニウム、チタン、またはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物などの無機バインダー、または樹脂バインダーを含む塗布液を塗布して被膜を形成して多層膜とするとよい。当該構成を採ることにより、前記塗布液成分が第1層のタングステン酸化物の微粒子の堆積した間隙を埋めて成膜されるため、膜のヘイズが低減して可視光透過率が向上し、また微粒子の基材への結着性が向上する。
【0123】
以上のようにして成膜された、透明基材とこの上に形成された被膜とで構成される本発明に係る日射遮蔽体は、タングステン酸化物の微粒子が前記被膜内に適度に分散しているため、膜内を結晶が緻密に埋めた鏡面状表面をもつ物理成膜法による酸化物薄膜に比べて可視光領域での反射が少なく、ギラギラした外観を呈することが回避できる。その一方で、可視域から近赤外域にプラズマ周波数をもつため、これに伴うプラズマ反射が近赤外域で大きくなり日射遮蔽性に優れている。
【0124】
また、当該被膜の可視光領域における反射をさらに抑制したい場合には、タングステン酸化物の微粒子が分散された被膜の上に、SiOやMgFのような低屈折率の膜を成膜することにより、容易に視感反射率1%以下の多層膜を得ることができる。
【0125】
また、本発明に係る日射遮蔽体へ、さらに紫外線遮蔽機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの粒子、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどの少なくとも1種以上を添加してもよい。
また、当該日射遮蔽膜の可視光透過率を向上させるために、さらにATO、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、インジウム錫複合酸化物などの粒子を混合してもよい。これらの透明粒子は、添加量を増すと750nm付近の透過率が増加する一方、近赤外線を遮蔽するため、可視光透過率が高く、かつ日射遮蔽特性のより高い日射遮蔽体が得られる。
【実施例】
【0126】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例および比較例においては、日射遮蔽用合わせ構造体を、合わせ構造体と略記する。
尚、各実施例において、タングステン酸化物の微粒子や複合タングステン酸化物の微粒子の粉体色(10°視野、光源D65)、および合わせ構造体の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)製HR−200を用いて測定した。
【実施例1】
【0127】
WO50gを入れた石英ボートを石英管状炉にセットし、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下、800℃で30分焼成して微粒子aを得た。この微粒子aの粉体色は、Lが36.9288、aが1.2573、bが−9.1526であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、W1849単相であった。
次に、当該微粒子a5重量%、高分子系分散剤5重量%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル90重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(A液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(A液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、80nmであった。
次に、得られた分散液(A液)をポリビニルブチラールに添加し、そこへ可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、微粒子aの濃度が0.0366重量%、ポリビニルブチラール濃度が71.1重量%となるように中間膜用組成物を調製した。調製された当該組成物をロールで混練して、0.76mm厚のシート状に成形し中間膜を作製した。作製された中間膜を、100mm×100mm×約2mm厚のグリーンガラス基板2枚の間に挟み込み、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cmのオートクレーブにより本接着を行い、合わせ構造体Aを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率70.8%のときの日射透過率は47.6%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例2〜実施例3】
【0128】
2枚のグリーンガラスの内1枚をクリアガラスに替えた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合わせ構造体Bを、2枚のグリーンガラスの内1枚をポリカーボネートに替えた以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る合わせ構造体Cを作製した。
図1の一覧表に示すように、実施例2の合わせ構造体Bの、可視光透過率72.0%のときの日射透過率は49.4%で、ヘイズ値は0.3%であり、実施例3の合わせ構造体Cの可視光透過率75.8%のときの日射透過率は47.8%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例4〜実施例6】
【0129】
WO50gとAl(OH)21.3g(Al/W=0.2相当)をメノウ乳鉢で十分混合した粉末を、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下、800℃で30分焼成して微粒子b(粉体色Lが38.6656、aが0.5999、bが−6.9896)を得た以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る合わせガラス構造体Dを作製した。
また、HWO50gとCu(OH)17.0g(Cu/W=0.3相当)をメノウ乳鉢で十分混合した粉末を、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下、800℃で30分焼成して微粒子c(粉体色Lが35.2745、aが1.4918、bが−5.3118)を得た以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る合わせ構造体Eを作製した。
また、HWO50gとCu(OH)11.3g(Cu/W=0.2相当)をメノウ乳鉢で十分混合した粉末を、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給しながら加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下、800℃で30分焼成して微粒子d(粉体色Lが35.2065、aが1.9305、bが−6.9258)を得た以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る合わせ構造体Fを作製した。
図1の一覧表に示すように、実施例4の合わせ構造体Dの可視光透過率71.0%のときの日射透過率は42.6%で、ヘイズ値は0.4%であった。実施例5の合わせ構造体Eの可視光透過率70.9%のときの日射透過率は41.4%で、ヘイズ値は0.4%であった。実施例6の合わせ構造体Fの可視光透過率71.0%のときの日射透過率は39.9%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例7】
【0130】
実施例1の微粒子a7.7重量%、高分子系分散剤9.1重量%、アクリル系樹脂7.7重量%、メチルイソブチルケトン75.5重量%秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(B液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(B液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、82nmであった。
上記分散液(B液)を、番手24のバーで100mm×100mm×厚さ約2mmのグリーンガラス基板に塗布した後、180℃で1時間焼成して日射遮蔽膜を形成した。
次に、日射遮蔽膜が形成されていないグリーンガラス基板と日射遮蔽膜が形成された前記グリーンガラス基板とを上記日射遮蔽膜が内側になるように対向させ、かつこれら一対のグリーンガラス基板間に0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを介在させると共に、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cmのオートクレーブにより本接着を行って実施例7に係る合わせ構造体Gを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率73.5%のときの日射透過率は48.1%であり、ヘイズ値は0.3%であった。
【実施例8】
【0131】
実施例1で調製した上記分散液(A液)のジプロピレングリコールモノメチルエーテルをトルエンに替えた以外は、実施例1と同様にして日射遮蔽体形成用分散液(C液)調製した。
上記分散液(C液)を、バーコーターで延性ポリエステルフィルム(厚さ50μm)の片面に塗布した後、乾燥し、70℃で1分の条件で高圧水銀ランプを照射して日射遮蔽層を形成した。当該日射遮蔽層を、2枚の0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシート間に配置し、これを2枚の100mm×100mm×厚さ約2mmのグリーンガラス間に介在させて、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cmのオートクレーブにより本接着を行って実施例8に係る合わせ構造体Hを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.2%のときの日射透過率は48.1%であり、ヘイズ値は0.5%であった。
【実施例9】
【0132】
実施例1で調製した0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを、日射遮蔽微粒子を含有しない2枚の中間膜用ポリビニルブチラールシート間に介在させ中間層を3層構造とした以外は、実施例1と同様にして合わせガラス化して実施例9に係る合わせ構造体Iを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率72.3%のときの日射透過率は48.2%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例10】
【0133】
0.76mm厚の中間膜用エチレン−酢酸ビニル共重合体シートを、実施例7で調製した日射遮蔽層を付与したグリーンガラスの日射遮蔽層側と厚さ50μmのPETフィルムとの間に介在させて、グリーンガラス/エチレン−酢酸ビニル共重合体シート/PETフィルムの構成を有するバイレイヤーガラスとし、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cmのオートクレーブにより本接着を行って実施例10に係る合わせ構造体Jを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.8%のときの日射透過率は46.8%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例11】
【0134】
比表面積43.7m/gのアンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子30重量%、メチルイソブチルケトン65重量%、高分子系分散剤5重量%を混合し、0.15mmφのガラスビーズと共に容器に充填した後、1.5時間のビーズミル分散処理を施してATO分散液を調製した(D液)。
前記実施例1で調製した分散液(A液)とATO分散液(D液)を、微粒子aとATOとの重量比が70:30となるようによく混合して分散液(E液)を調製した。得られた分散液(E液)を、微粒子aの濃度が1.80重量%、ATO微粒子濃度0.77重量%、常温硬化性バインダー15重量%、メチルイソブチルケトン70.63重量%および高分子系分散剤11.8重量%からなる分散液(F液)を、フローコートで100mm×100mm×約2mm厚のグリーンガラス基板に塗布した後、180℃で1時間焼成して日射遮蔽ガラスを得た。当該日射遮蔽ガラスの膜面が内側になるようにして、もう一方のグリーンガラス基板との間に0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートで挟み込み、80℃に加熱して仮装着した後、140℃で14kg/cmの条件でオートクレーブによる本接着を行って実施例11に係る合わせ構造体Kを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率73.5%のときの日射透過率は48.2%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例12】
【0135】
平均粒径約1μmの六ホウ化ランタン(LaB)粒子20重量%、高分子系分散剤5重量%、トルエン75重量%を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで24時間分散処理することにより、平均分散粒子径86nmのLaB分散液を調製した(G液)。次に、実施例1で調製した分散液(A液)とLaB分散液(G液)を、微粒子aとLaBとの重量比が80:20となるようによく混合して分散液(H液)を調製た。得られた分散液(H液)をポリビニルブチラールに添加し、そこへ可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、微粒子aの濃度が0.0293重量%、LaB微粒子濃度が0.001重量%、ポリビニルブチラール濃度が71.1重量%となるように中間膜用組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして実施例12に係る合わせ構造体Lを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率72.0%のときの日射透過率は41.1%であり、ヘイズ値は0.3%であった。
【実施例13】
【0136】
平均粒子径約4μmのインジウム錫複合酸化物(InSn12)粒子30重量%、メチルイソブチルケトン56重量%、高分子系分散剤14重量%を混合し、0.15mmφのガラスビーズと共に容器に充填した後、1時間のビーズミル分散処理を施して平均分散粒子径50nmのInSn12複合酸化物微粒子分散液(I液)を調製した。
次に、実施例1で調製した上記分散液(A液)とInSn12分散液(I液)を、微粒子aとInSn12との重量比が85:15となるように混合し分散液(I液)を調製した。得られた分散液(I液)をポリビニルブチラールに添加し、そこへ可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、微粒子aの濃度が0.031重量%、InSn12微粒子濃度が0.030重量%、ポリビニルブチラール濃度が71.1重量%となるように中間膜用組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして実施例13に係る合わせ構造体Mを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.0%のときの日射透過率は46.3%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例14】
【0137】
ポリビニルブチラールに替えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体とした以外は実施例1と同様にして実施例14に係る合わせ構造体Nを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.1%のときの日射透過率は48.0%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例15】
【0138】
実施例10の中間膜用エチレン−酢酸ビニル共通重合体に替えて、ポリビニルブチラールを用いた以外は、実施例10と同様にして実施例15に係る合わせ構造体Oを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率72.0%のときの日射遮蔽透過率は46.9%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例16】
【0139】
水16.5gにCsCO10.8gを溶解し、当該溶液をHWO50gに添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物へNガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、Nガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子eを得た。微粒子eの粉体色は、Lが37.4562、aが−0.3485、bが−4.6939であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、Cs0.33WO単相であった。
次に、当該微粒子e8重量%、トルエン84重量%、高分子系分散剤8重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(J液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(J液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、62nmであった。以上のようにして得られた分散液(J液)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例16に係る合わせ構造体Pを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率70.0%のときの日射透過率は35.7%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例17】
【0140】
実施例16で調製した日射遮蔽体形成用分散液(J液)を、ポリカーボネート樹脂へ、Cs0.33WO濃度が0.07重量%となるように添加混合した後、当該混合物を、ブレンダー、二軸押し出し機で均一に溶融混合し、さらに、Tダイを用いて厚さ2mmに押し出し成形し、Cs0.33WO微粒子が樹脂全体に均一に分散した日射遮蔽体(熱線遮蔽ポリカーボネートシート)を得た。当該日射遮蔽体を一方の合わせ板とし、もう一方の合わせ板であるグリーンガラス基板との間に中間層として、0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを挟み込んだ以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体Qを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.0%のときの日射透過率は39.4%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例18】
【0141】
ポリカーボネート樹脂の替わりにポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、実施例17と同様の操作を行い、厚さ2mmでCs0.33WO微粒子が樹脂全体に均一に分散した日射遮蔽体(熱線遮蔽ポリエチレンテレフタレートシート)を得た。当該日射遮蔽体を一方の合わせ板とし、もう一方の合わせ板であるグリーンガラス基板との間に中間層として、0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを挟み込んだ以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体Rを作製した。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率72.0%のときの日射透過率は40.2%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【実施例19】
【0142】
水13.5gにRbNO8.8gを溶解し、これをHWO45.3gに添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物を、Nガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、同温度でNガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子fを得た。微粒子fの粉体色は、Lが36.3938、aが−0.2385、bが−3.8318であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、Rb0.33WO単相であった。
次に、当該微粒子f8重量%、トルエン84重量%、高分子系分散剤8重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(K液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(K液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、64nmであった。以上のようにして得られた分散液(K液)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例19に係る合わせ構造体Sを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率75.0%のときの日射透過率は45.0%であり、ヘイズ値は0.3%であった。
【実施例20】
【0143】
水5.6gにKNO3.7gを溶解し、これをHWO45.3gに添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物を、Nガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、同温度でNガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子gを得た。微粒子gの粉体色は、Lが36.9875、aが−0.2365、bが−4.0526であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、W1849単相であった。
次に、当該微粒子g8重量%、トルエン84重量%、高分子系分散剤8重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(L液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(L液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、62nmであった。以上のようにして得られた分散液(L液)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例20に係る合わせ構造体Tを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率66.4%のときの日射透過率は44.0%であり、ヘイズ値は0.5%であった。
【実施例21】
【0144】
水24.7gにTI(NO3HO16.1gを溶解し、これをHWO45.3gに添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物を、Nガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、同温度でNガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子hを得た。微粒子hの粉体色は、Lが36.9986、aが−0.2998、bが−4.1326であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、W49単相であった。
次に、当該微粒子h8重量%、トルエン84重量%、高分子系分散剤8重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(M液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(L液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、62mnであった。以上のようにして得られた分散液(M液)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例21に係る合わせ構造体Uを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率66.5%のときの日射透過率は42.5%であり、ヘイズ値は0.5%であった。
【実施例22】
【0145】
WO54.2gへ耐候性向上を目的として、スノーテックスN(日産化学社製)を2.8g添加して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物を、Nガスをキャリアーとした2%Hガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、同温度でNガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子iを得た。微粒子iの粉体色は、Lが35.4446、aが2.0391、bが−7.4738であり、粉末X線回折による結晶相の同定の結果、Si0.043WO2.839単相であった。
次に、当該微粒子i8重量%、トルエン84重量%、高分子系分散剤8重量%を秤量し、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって日射遮蔽体形成用分散液(N液)を調製した。ここで、日射遮蔽体形成用分散液(N液)内におけるタングステン酸化物の微粒子の分散粒子径を測定したところ、68nmであった。以上のようにして得られた分散液(N液)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例22に係る合わせ構造体Vを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率71.5%のときの日射透過率は45.5%であり、ヘイズ値は0.4%であった。
【0146】
[比較例1]
市販のWO(関東化学社製、粉体色Lが92.5456、aが−11.3853、bが34.5477)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る合わせ構造体Wを得た。
図1の一覧表に示すように、可視光透過率72.0%のときの日射透過率は53.2%で、ヘイズ値は0.4%であった。
【0147】
[評価]
比較例1に係る合わせ構造体Wを、その日射透過率が実施例1〜22に係る合わせ構造体よりも劣ることが確認された。図1の一覧表に記載された日射遮蔽特性から、実施例1〜22に係る合わせ構造体の日射透過率を検討してみると、可視光透過率76.0%以下での日射透過率は全て50.0%未満であったが、比較例に係る合わせ構造体の日射透過率は53.2%であったことから、実施例に係る合わせ構造体の優位性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0148】
[図1]本発明の実施例および比較例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性一覧表である。
[図2]本発明の実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
[図3]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
[図4]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
[図5]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
[図6]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
[図7]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の製造工程における断面図である。
[図8]本発明の異なる実施形態例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の断面図である。
【符号の説明】
【0149】
1.合わせ板
2.中間層
11.日射遮蔽機能を有する微粒子
12.中間膜
13.日射遮蔽膜
14.延性を有する樹脂フィルム
15.日射遮蔽機能を有する微粒子を含む延性を有する樹脂フィルム
16.剥離層
17.フィルムシート
18.接着剤層
20.日射遮蔽機能を有する微粒子を含有する合わせ板
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射遮蔽機能を有する微粒子を含む中間層を、板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
前記日射遮蔽機能を有する微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子で構成されることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項2】
日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間層を、
日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックの合わせ板と、
板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた合わせ板と、の間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有する微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、および/または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子で構成されることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項3】
前記日射遮蔽機能を有する微粒子の直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項4】
前記タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子のL表色系における粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項5】
前記日射遮蔽機能を有する微粒子が、六方晶もしくは単斜晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物の微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項6】
前記日射遮蔽機能を有する微粒子として、
前記タングステン酸化物の微粒子および/または前記複合タングステン酸化物の微粒子と、
Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合体を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項7】
前記タングステン酸化物の微粒子および/または複合タングステン酸化物の微粒子と、
前記Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Tb、Lu、Sr、Caから成る群から選ばれた2種以上の元素から成る酸化物の微粒子、複合酸化物の微粒子、ホウ化物の微粒子の内の少なくとも1種の微粒子と、の混合割合が、重量比で95:5〜5:95の範囲であることを特徴とする請求項6記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項8】
前記プラスチックが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂の、シートまたはフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項9】
前記中間層は、中間膜を有し、当該中間膜中に前記日射遮蔽機能を有する微粒子が分散していることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項10】
前記中間層は、2層以上の積層した中間膜を有し、当該中間膜の少なくとも1層に、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が分散されていることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項11】
前記中間層は、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の少なくとも一方の内側の面に形成された前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層と重なり合う中間膜と、を有することを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項12】
前記中間層は、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層が延性を有する樹脂フィルム基板の片面上もしくは内部に形成された日射遮蔽延性フィルム基板が、2層以上の積層した中間膜の間に積層されていることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項13】
前記中間層は、
中間膜または2層以上の積層した中間膜と、
接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体と、を有し、
前記積層体の接着剤層は、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた一方の合わせ板の内側の面に接着し、
前記積層体の剥離層は、前記中間膜または2層以上の積層した中間膜と接着していることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項14】
前記中間層は、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜または2層以上の積層した日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜を有していることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項15】
前記中間膜を構成する樹脂は、ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項16】
前記中間膜を構成するビニル系樹脂は、ポリビニルブチラールもしくはエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項15に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。

【国際公開番号】WO2005/087680
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509256(P2005−509256)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015378
【国際出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】