説明

早産の合併症の治療および診断のための方法

早産の合併症を治療および/または予防する方法および組成物が提供される。この方法は、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の被験体への投与を含む。早産の合併症を診断または予測する方法も提供される。この方法は2-メトキシエストラジオールまたはその前駆体もしくは代謝産物の検出を含む。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
極度の早期産児の死亡率は着実に低下しているが、そのような早期産児の生存率にはかなりの罹患率が伴うことが大きな問題である。早期産児の介護の基礎は、可能なかぎり多くの項目、すなわち、いくつか挙げてみるならば、温度調節、栄養、酸/塩基平衡および酸素供給に関して子宮内環境を模倣するよう試みることである。
【0002】
正期産児は、上昇した母体2ME2レベルの抗血管新生効果に曝されるが、これは母親が産生して胎盤を通過するものと、胎盤自体が産生するものの両方の多数の他の血管新生促進因子および抗血管新生因子により平衡が保たれている。胎児はいったん分娩されると、もはや母体または胎盤いずれの血管新生促進因子および抗血管新生因子も受けず、自分自身の因子を産生および調節する能力は未熟である可能性が高い。脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)、未熟児網膜症(ROP)、および血管腫形成などのいくつかの一般的な早産の合併症は、血管新生および血管漏出がこれらのプロセスに対抗する因子との釣り合いを欠いて生じていることを示唆している。
【0003】
この血管新生促進因子および抗血管新生因子の不均衡は、早産児の未熟な脈管構造の発生の進行中に起こっていると思われ、均衡に対して成体よりも大きな意味を与えている。子宮内での正常な血管新生の均衡を理解することにより、在胎齢による正常な均衡を模倣するために血管新生抑制および促進因子を補足する、最終的な治療介入の可能性が提供される。
【発明の開示】
【0004】
概要
一つの局面において、本明細書では脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)、未熟児網膜症(ROP)、および血管腫形成などの、血管新生促進および抑制因子の不均衡に関連する様々な障害に対して、早産児のより安全で有効な治療を可能にする新規の予防および治療の方法および組成物を特徴とする。一つの態様において、本方法は早産児に2-メトキシエストラジオール含有組成物の有効量を投与する段階を含む。
【0005】
もう一つの態様において、本発明は、早期産児またはその母親の2-メトキシエストラジオールレベルを、単独でアッセイするかまたは他のバイオマーカーのレベルに加えてアッセイすることにより、早産による合併症を発症する危険性が高い早期産児を特定する方法を特徴とする。
【0006】
新規の診断および治療の方法を実施するための、2-メトキシエストラジオールおよび他の治療薬の製剤、ならびにキットも本明細書において記載する。
【0007】
本発明のこれらの態様、他の態様、およびそれらの特徴および特性は、以下の説明、図面、および特許請求の範囲から明らかである。
【0008】
詳細な説明
A. 定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語をここに集めている。特に規定されないかぎり、本明細書におけるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0009】
冠詞「a」および「an」は本明細書において一つまたは複数の(すなわち、少なくとも一つの)冠詞の文法上の目的語を指すために用いられる。例として、「要素(an element)」は一つの要素または複数の要素を意味する。
【0010】
「含む(comprise)」および「含む(comprising)」なる用語は、包括的で開かれた意味で用いられ、追加の要素が含まれてもよいことを意味する。
【0011】
「含む(including)」なる用語は「含むが、それらに限定されるわけではない」ことを意味するために用いられる。「含む」および「含むが、それらに限定されるわけではない」は交換可能に用いられる。
【0012】
2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルに関して本明細書において用いられる「対照」なる用語は、少なくとも一個体の正期産児または少なくとも一個体の早産の合併症を患っていない早期産児における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを意味する。対照は、複数の正期産児または早産の合併症を患っていない早期産児からの2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルの平均値を反映していてもよい。対照は、正期または所与の時点の早期における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のあらかじめ定量されたレベルであってもよい。一つの態様において、対照は様々な在胎齢(早期、正期など)における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)の対照レベルを表すグラフまたは図表である。一つの例示的態様において、対照は妊娠の全段階(例えば、三半期ごと、月ごと、週ごと、または日ごと)を通しての2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)の対照レベルを表すグラフまたは図表である。
【0013】
本明細書において用いられる「早産の合併症」なる用語は、被験体の2-メトキシエストラジオールの異常なレベルに関連する、在胎齢40週前に生まれた乳児における任意の疾患または障害を意味する。「2-メトキシエストラジオールの異常なレベルに関連する」疾患または障害は、被験体において2-メトキシエストラジオールの異常なレベルによって直接もしくは間接的に引き起こされる疾患もしくは障害、または独立の根源的原因を有するが、2-メトキシエストラジオールの異常なレベルに関連する疾患もしくは障害を含むことになる。早産の合併症は、被験体が対照被験体よりも高いレベルの2-メトキシエストラジオールを有する、在胎齢40週前に生まれたことに関連する疾患または障害を意味することもある。または、早産の合併症は、被験体が対照被験体よりも低いレベルの2-メトキシエストラジオールを有する、在胎齢40週前に生まれたことに関連する疾患または障害を意味することもある。早産の合併症は、母親、胎児、胎盤、子宮などの異常な血管新生に関連する疾患または障害を意味することもある。早産の合併症の例には下記の一つまたは複数が含まれる:脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)、未熟児網膜症(ROP)、および血管腫。
【0014】
本明細書において用いられる「診断」または「診断すること」は、臨床試験の参加者を含む患者を診断、予後、モニター、特徴づけ、選択またはスクリーニングすること、および特定の障害の危険性が高い患者、もしくはそのような障害を有する患者、または特定の治療に反応する可能性が高い患者を特定すること、あるいは特定の治療への患者の反応を評価またはモニターすることを含む。
【0015】
「在胎齢」なる用語は、母親の最後の月経期の初日から出産日までの経過週数から計算した、新生児の胎齢を意味する。
【0016】
「2-メトキシエストラジオール類似体」なる用語は、「早産の合併症」を患っている被験体に投与したときに、2-メトキシエストラジオールと類似の治療効果を示す、2-メトキシエストラジオールの誘導体または類似体を意味する。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオール類似体は、早産の合併症を患っている被験体に投与したときに治療効果を示す。一つの態様において、2-メトキシエストラジオール類似体は、被験体に投与したときに、2-メトキシエストラジオール自体よりも高い安定性を示す。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオール類似体は式Iの化合物である。本明細書に記載の方法と関連して用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体の例は、例えば、米国特許第6,528,676号、ならびに米国特許出願第2003/0236408号、第2002/0147183号、第2003/0187076号、および第2003/0236439号を含む、様々な米国特許および公開出願にも記載されている。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールの類似体にはコルヒチンおよびコンブレタスタチンA-4が含まれる。
【0017】
2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体に関して本明細書において用いられる「前駆体」なる用語は、代謝過程において生じる少なくとも一つの代謝産物として、2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体を生成する化合物を意味する。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールの前駆体には、例えば、エストラジオール、2-ヒドロキシエストラジオールなどが含まれる。
【0018】
2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体に関して本明細書において用いられる「代謝産物」なる用語は、2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体の代謝により生成される化合物を意味する。代謝産物は同化産物および異化産物の両方を含むことになる。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールの代謝産物には、例えば、2-メトキシエストロンなどが含まれる。
【0019】
「生体試料」なる用語は、組織、組織試料、または細胞試料(例えば、絨毛膜絨毛試料または組織生検材料、例えば、吸引生検材料、ブラシ生検材料、擦過生検材料、針生検材料、パンチ生検材料、切除生検材料、直視下生検材料、切開生検材料、または内視鏡生検材料)、腫瘍、腫瘍試料、または生物体液(例えば、血液、血清、血漿、羊水、尿、リンパ、または髄液)を含む、被験体から得た、または被験体内に存在する、生物学的材料の試料を意味する。一つの例示的態様において、被験体はヒト被験体でありうる。
【0020】
被験体における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルに関して本明細書において用いられる「ほぼ対照レベル」なる用語は、2-メトキシエストラジオールの対照レベルと50%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、または1%未満異なる2-メトキシエストラジオールのレベルを意味する。
【0021】
「シス」なる用語は当技術分野において認識されており、二重結合の周りの二つの原子または基が二重結合の同じ側にあるような原子または基の配列を意味する。シス配置は(Z)配置と表示されることが多い。
【0022】
「トランス」なる用語は当技術分野において認識されており、二重結合の周りの二つの原子または基が二重結合の反対側にあるような原子または基の配列を意味する。トランス配置は(E)配置と表示されることが多い。
【0023】
「共有結合」なる用語は当技術分野において認識されており、電子が二つの原子の両方の核に静電気的に誘引され、核の間の電子密度の高まりの正味効果が核間反発を相殺する、二つの原子間の結合を意味する。共有結合なる用語は、結合が金属イオンとのものである場合、配位結合を含む。
【0024】
「治療薬」なる用語は当技術分野において認識されており、被験体において局所または全身で作用する、生物学的、生理学的、または薬理学的活性物質である、任意の化学成分を意味する。「薬物」とも呼ばれる治療薬の例は、Merck Index、the Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsなどの周知の参照文献に記載されており、これらには医用製剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは病気の治療、予防、診断、治癒もしくは緩和のために用いられる物質;体の構造もしくは機能に影響をおよぼす物質;または生理的環境に置かれた後、生物活性もしくはより活性になるプロドラッグが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0025】
「治療効果」なる用語は当技術分野において認識されており、動物、特に哺乳動物、特にヒトにおいて薬理活性物質によって引き起こされる局所または全身効果を意味する。「薬理活性物質」なる用語は、動物またはヒトの疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防において、または望ましい身体もしくは精神の発達および/もしくは状態の促進において用いることが意図される任意の物質を含む。「治療上有効な量」なる語句は、任意の治療に適用できる妥当な損益比で、いくらかの望ましい局所または全身効果をもたらす、そのような物質の量を意味する。そのような物質の治療上有効な量は、治療中の被験体および疾患の状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式などに応じて変動することになり、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、本明細書に記載の特定の組成物を、そのような治療に適用できる妥当な損益比で、効果を生じるのに十分な量で投与しうる。
【0026】
「合成(の)」なる用語は当技術分野において認識されており、インビトロでの化学的または酵素的合成による産生を意味する。
【0027】
「メソ化合物」なる用語は当技術分野において認識されており、少なくとも二つのキラル中心を有するが、対称面または点によりアキラルである化合物を意味する。
【0028】
「キラル」なる用語は当技術分野において認識されており、鏡像相手と重ね合わせることができないとの特性を有する分子を意味する一方で、「アキラル」なる用語は鏡像相手と重ね合わせることができる分子を意味する。「プロキラル分子」は、特定の工程においてキラルな分子に変換される可能性を有する分子である。
【0029】
「立体異性体」なる用語は当技術分野において認識されており、同じ化学構造を有するが、空間における原子または基の配置が異なる化合物を意味し、特に、「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、化合物の二つの立体異性体を意味する。一方、「ジアステレオマー」は、複数の非対称中心を有し、分子が互いに鏡像ではない立体異性体を意味する。
【0030】
さらに、「立体選択的工程」は、反応生成物の特定の立体異性体を、その生成物の他の可能な立体異性体に優先して生成するものである。「エナンチオ選択的工程」は、反応生成物の二つの可能な鏡像異性体の一方を優先して生成するものである。
【0031】
「位置異性体」なる用語は当技術分野において認識されており、同じ分子式を有するが、原子の連結が異なる化合物を意味する。したがって、「位置選択的工程」は、特定の位置異性体を他の異性体よりも優先して生成するもので、例えば、反応は特定の位置異性体の収率が統計学的有意に高くなる。
【0032】
「エピマー」なる用語は当技術分野において認識されており、同じ化学構造を有し、複数の立体中心を含むが、これらの立体中心の一つだけで立体配置が異なる分子を意味する。
【0033】
「ED50」なる用語は当技術分野において認識されている。特定の態様において、ED50はその最大反応もしくは効果の50%を生じる薬物の用量、または被験体もしくは製剤の50%であらかじめ決められた反応を生じる用量を意味する。「LD50」なる用語は当技術分野において認識されている。特定の態様において、LD50は試験被験体の50%で致死的である薬物の用量を意味する。「治療指数」なる用語は当技術分野において認識されている用語で、LD50/ED50と定義されている薬物の治療指数を意味する。
【0034】
「プロドラッグ」なる用語は当技術分野において認識されており、生理的条件下で、例えば、本明細書に記載の2-メトキシエストラジオール化合物などの薬物に変換される化合物を含むことが意図される。プロドラッグの一般的調製法は、生理的条件下で加水分解されて所望の化合物を提供する部分を選択し、結合させることである。他の態様において、プロドラッグは宿主動物の酵素活性によって変換される。
【0035】
「構造-活性相関」または「(SAR)」なる用語は当技術分野において認識されており、薬物または他の化合物の分子構造を変化させることで、その受容体、酵素、核酸または他の標的などとの相互作用が変化する様式を意味する。
【0036】
「脂肪族」なる用語は当技術分野において認識されており、直鎖、分枝、環式アルカン、アルケン、またはアルキンを意味する。特定の態様において、脂肪族基は直鎖でも分枝でもよく、1から約20個の炭素原子を有する。
【0037】
「アルキル」なる用語は当技術分野において認識されており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基が含まれる。特定の態様において、直鎖または分枝鎖アルキルはその主鎖に約30個以下(例えば、直鎖の場合はC1〜C30、分枝鎖の場合はC3〜C30)、または約20個以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造に約3から約10個の炭素原子、または環構造に約5、6もしくは7個の炭素を有する。「アルキル」なる用語は、ハロ置換アルキルを含むとも定義される。
【0038】
「アラルキル」なる用語は当技術分野において認識されており、アリール基(例えば、芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を意味する。
【0039】
「アルケニル」および「アルキニル」なる用語は当技術分野において認識されており、長さおよび可能な置換は前述のアルキルに類似であるが、それぞれ少なくとも一つの二重または三重結合を含む、不飽和脂肪族基を意味する。
【0040】
炭素数が特に規定されていないかぎり、「低級アルキル」とは、前述の定義のとおりであるが、その主鎖構造に1から約10個の炭素、または1から約6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は類似の鎖長を有する。
【0041】
「ヘテロ原子」なる用語は当技術分野において認識されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。例示的ヘテロ原子にはホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンが含まれる。
【0042】
「アリール」なる用語は当技術分野において認識されており、ゼロから4個のヘテロ原子を含んでいてもよい5、6および7員単環式芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを意味する。環構造にヘテロ原子を有するアリール基は「ヘテロアリール」と呼んでもよい。芳香環は環の一つまたは複数の位置で前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどを意味する。「アリール」なる用語は、複数の炭素が二つの隣接する環に共通であり(環は「縮合」環である)、環の少なくとも一つが芳香族であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってもよい、複数の環を有する多環式の環系も含む。
【0043】
オルト、メタおよびパラなる用語は当技術分野において認識されており、それぞれ1,2-、1,3-および1,4-二置換ベンゼンを意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンおよびオルト-ジメチルベンゼンなる名称は同義である。
【0044】
「ヘテロシクリル」または「複素環基」なる用語は当技術分野において認識されており、環構造が1から4個のヘテロ原子を含む、3から約10員環構造、または3から7員環を意味する。複素環は多環であってもよい。ヘテロシクリル基には、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが含まれる。複素環は一つまたは複数の位置で前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどで置換されていてもよい。
【0045】
「ポリシクリル」または「多環式基」なる用語は当技術分野において認識されており、複数の炭素が二つの隣接する環に共通である、例えば、環が「縮合環」である、複数の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を意味する。非隣接原子を通して連結されている環は「架橋」環と呼ぶ。多環の環はそれぞれ前述のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどで置換されていてもよい。
【0046】
「炭素環」なる用語は当技術分野において認識されており、環の各原子が炭素である芳香環または非芳香環を意味する。
【0047】
「ニトロ」なる用語は当技術分野において認識されており、-NO2を意味し;「ハロゲン」なる用語は当技術分野において認識されており、-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;「スルフヒドリル」なる用語は当技術分野において認識されており、-SHを意味し;「ヒドロキシル」なる用語は-OHを意味し;かつ「スルホニル」なる用語は当技術分野において認識されており、-SO2-を意味する。「ハロゲン化物」はハロゲンの対応するアニオンを指し、「擬ハロゲン化物」はCottonおよびWilkinsonによる「Advanced Inorganic Chemistry」の560ページに示されている定義を有する。
【0048】
「アミン」および「アミノ」なる用語は当技術分野において認識されており、無置換および置換両方のアミン、例えば、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R50、R51およびR52はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61を意味するか、またはR50およびR51はそれらが結合しているN原子と一緒になって環構造に4から8個の原子を有する複素環を完成し;R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を意味し;かつmはゼロまたは1から8の範囲の整数である。特定の態様において、R50またはR51の一つだけがカルボニルであってもよく、例えば、R50、R51および窒素は一緒になってイミドを形成することはない。他の態様において、R50およびR51(および任意にR52)はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、または-(CH2)m-R61を意味する。したがって、「アルキルアミン」なる用語は、それに結合している置換または無置換アルキルを有する、すなわち、R50およびR51の少なくとも一つがアルキル基である、前述の定義のアミン基を含む。
【0049】
「アシルアミノ」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R50は前述の定義のとおりであり、R54は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61を意味し、ここでmおよびR61は前述の定義のとおりである。
【0050】
「アミド」なる用語は当技術分野においてアミノ置換カルボニルとして認識されており、下記の一般式で表しうる部分を含む:

式中、R50およびR51は前述の定義のとおりである。本明細書に記載のアミドの特定の態様は、不安定でありうるイミドを含まない。
【0051】
「アルキルチオ」なる用語は、それに結合している硫黄基を有する、前述の定義のアルキル基を意味する。特定の態様において、「アルキルチオ」部分は-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S-(CH2)m-R61の一つで表され、ここでmおよびR61は上で定義している。代表的アルキルチオ基には、メチルチオ、エチルチオなどが含まれる。
【0052】
「カルボニル」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうるような部分を含む:

式中、X50は結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表し、R55およびR56は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61または薬学的に許容される塩を表し、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61を表し、ここでmおよびR61は上で定義している。X50が酸素であり、R55またはR56が水素ではない場合、この式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が前述の定義のとおりである場合、この部分は本明細書においてカルボキシル基と呼び、特にR55が水素である場合、式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素である場合、この式は「ギ酸エステル」を表す。一般に、上の式の酸素原子が硫黄で置き換えられた場合、式は「チオールカルボニル」基を表す。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素ではない場合、この式は「チオールエステル」を表す。X50が硫黄であり、R55が水素である場合、式は「チオールカルボン酸」を表す。X50が硫黄であり、R56が水素である場合、この式は「チオールギ酸エステル」を表す。一方、X50が結合であり、R55が水素ではない場合、上の式は「ケトン」基を表す。X50が結合であり、R55が水素である場合、上の式は「アルデヒド」基を表す。
【0053】
「アルコキシル」または「アルコキシ」なる用語は当技術分野において認識されており、それに結合している酸素基を有する、前述の定義のアルキル基を意味する。代表的アルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は酸素によって共有結合された二つの炭化水素である。したがって、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O--(CH2)m-R61(mおよびR61は上で定義している)の一つで表しうるような、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基はアルコキシルであるか、アルコキシルに類似である。
【0054】
「スルホネート」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0055】
「サルフェート」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を含む:

式中、R57は前述の定義のとおりである。
【0056】
「スルホンアミド」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を含む:

式中、R50およびR56は前述の定義のとおりである。
【0057】
「スルファモイル」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R50およびR51は前述の定義のとおりである。
【0058】
「スルホニル」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R58は下記の一つである:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール。
【0059】
「スルホキシド」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる部分を意味する:

式中、R58は上で定義している。
【0060】
「ホスホリル」なる用語は当技術分野において認識されており、一般に下記の式で表しうる:

式中、Q50はSまたはOを表し、R59は水素、低級アルキルまたはアリールを表す。例えば、アルキルを置換するために用いる場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は下記の一般式で表しうる:

式中、Q50およびR59はそれぞれ独立に上で定義しており、Q51はO、SまたはNを表す。Q50がSである場合、ホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
【0061】
「ホスホルアミダイト」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる:

式中、Q51、R50、R51およびR59は前述の定義のとおりである。
【0062】
「ホスホンアミダイト」なる用語は当技術分野において認識されており、下記の一般式で表しうる:

式中、Q51、R50、R51およびR59は前述の定義のとおりであり、R60は低級アルキルまたはアリールを表す。
【0063】
類似の置換をアルケニルおよびアルキニル基に行って、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成してもよい。
【0064】
それぞれの表現、例えば、アルキル、m、nなどが任意の構造中に複数出現する場合、その定義は同じ構造中の他所のその定義とは独立であることが意図される。
【0065】
「セレノアルキル」なる用語は当技術分野において認識されており、それに結合している置換セレノ基を有するアルキル基を意味する。アルキル上に置換しうる例示的「セレノエーテル」は、-Se-アルキル、-Se-アルケニル、-Se-アルキニル、および-Se-(CH2)m-R61(mおよびR61は上で定義している)の一つから選択される。
【0066】
トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルなる用語は当技術分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基を意味する。トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフラートなる用語は当技術分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基および該基を含む分子を意味する。
【0067】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsなる略語はそれぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表す。有機化学の当業者が用いる略語のより包括的リストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の最初の号に記載されており;このリストは典型的にはStandard List of Abbreviationsなる表題の表に示されている。
【0068】
本明細書に記載の組成物に含まれる特定の化合物は、特に幾何または立体異性体で存在しうる。加えて、本明細書に記載のポリマーは光学活性であってもよい。シスおよびトランス異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、そのラセミ混合物、およびその他の混合物を含む、すべてのそのような化合物が本明細書において企図される。アルキル基などの置換基において追加の不斉炭素原子が存在してもよい。すべてのそのような異性体、ならびにその混合物は、本明細書に記載の組成物に含まれることが意図される。
【0069】
例えば、本明細書に記載の化合物の特定の鏡像異性体が望まれる場合、これは不斉合成により調製してもよく、またはキラル補助剤を用いての誘導により調製してもよく、その場合得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して、純粋な所望の鏡像異性体を得る。または、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、適当な光学活性の酸または塩基とジアステレオマー塩を形成した後、そのように形成したジアステレオマー塩を当技術分野において周知の分別結晶またはクロマトグラフィの手段により分割し、続いて純粋な鏡像異性体を回収する。
【0070】
「置換」または「で置換された」は、そのような置換が置換される原子および置換基の許容される原子価に一致しており、置換によって安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離、または他の反応などによる変換を自然に起こすことのない化合物を生じるという暗黙の条件を含むことが理解される。
【0071】
「置換(された)」なる用語は有機化合物のすべての許容できる置換基を含むことも企図される。広い局面において、許容できる置換基には有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。例示的置換基には、例えば、本明細書において前述したものが含まれる。許容できる置換基は適当な有機化合物に対して一つでも複数でもよく、同じでも異なっていてもよい。特定の態様において、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容できる置換基を有していてもよい。有機化合物の許容できる置換基は本記載によっていかなる様式でも限定されるものではない。
【0072】
化学元素はPeriodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87, inside coverに従って同定しうる。加えて、「炭化水素」なる用語は、少なくとも一つの水素と一つの炭素原子を有するすべての許容できる化合物を含むことが企図される。広い局面において、許容できる炭化水素には、置換または無置換でありうる非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族有機化合物が含まれる。
【0073】
「保護基」なる用語は当技術分野において認識されており、反応する可能性のある官能基を望ましくない化学変換から保護する一時的置換基を意味する。そのような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにアルデヒドおよびケトンのそれぞれアセタールおよびケタールが含まれる。保護基化学の分野はGreene and Wuts in Protective Groups in Organic Synthesis (2nd ed., Wiley: New York, 1991)によって総説が記載されている。
【0074】
「ヒドロキシル保護基」なる用語は当技術分野において認識されており、合成手順の間の望ましくない反応に対してヒドロキシル基を保護することを意図した基を意味し、例えば、ベンジルまたは当技術分野において公知の他の適当なエステルもしくはエーテル基が含まれる。
【0075】
「カルボキシル保護基」なる用語は当技術分野において認識されており、合成手順の間の望ましくない反応に対して、アミノ酸もしくはペプチドのC末端または酸性もしくはヒドロキシルアゼピン環置換基などのカルボン酸基を保護することを意図した基を意味し、含む。カルボキシル基の保護基の例には、例えば、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、4-ニトロベンジルエステル、t-ブチルエステル、4-ピリジルメチルエステルなどが含まれる。
【0076】
「アミノ保護基」なる用語は当技術分野において認識されており、アミノ基が他の官能基に対して行われる反応に関与することを防止するが、望まれる場合にアミンから除去することができる基を意味する。そのような基は、上で引用したGreene and WutsのCh. 7、およびBarton, Protective Groups in Organic Chemistry ch. 2 (McOmie, ed., Plenum Press, New York, 1973)によって論じられている。適当な基の例には、例示のために、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、メトキシスクシニル、ベンジルならびに3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、およびトリフェニルメチルなどの置換ベンジルなどのアシル保護基;式-COOR(Rにはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2,2,2-トリクロロエチル、1-メチル-1-フェニルエチル、イソブチル、t-ブチル、t-アミル、ビニル、アリル、フェニル、ベンジル、p-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、および2,4-ジクロロベンジルなどの基が含まれる)のもの;ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、およびp-メトキシベンゾイルなどのアシル基および置換アシル;ならびにメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、p-ブロモベンゼンスルホニル、p-ニトロフェニルエチル、およびp-トルエンスルホニル-アミノカルボニルなどの他の基が含まれる。好ましいアミノ保護基はベンジル(-CH2C6H5)、アシル[C(O)R1]またはSiR13(R1はC1〜C4アルキル、ハロメチル、または2-ハロ-置換-(C2〜C4アルコキシ)、例えばカルボニルベンジルオキシ(Cbz)などの芳香族ウレタン基;およびt-ブチルオキシカルボニル(Boc)または9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)などの脂肪族ウレタン保護基である。
【0077】
それぞれの表現、例えば、低級アルキル、m、n、pなどが任意の構造中に複数出現する場合、その定義は同じ構造中の他所のその定義とは独立であることが意図される。
【0078】
「電子吸引基」なる用語は当技術分野において認識されており、隣接原子から価電子を誘引する置換基の傾向を意味し、すなわち、置換基は隣接原子に対して電気陰性である。電子吸引能のレベルの定量はHammettシグマ(σ)定数により得られる。この周知の定数は多くの参照文献、例えば、March, Advanced Organic Chemistry 251-59 (McGraw Hill Book Company: New York, 1977)に記載されている。Hammett定数の値は一般に電子供与基については負で(NH2ではσ(P)=-0.66)、電子吸引基については正であり(ニトロ基ではσ(P)=0.78)、σ(P)はパラ置換を示している。例示的電子吸引基にはニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、塩化物などが含まれる。例示的電子供与基にはアミノ、メトキシなどが含まれる。
【0079】
官能性または生物活性またはプロセス(例えば、酵素活性または受容体結合)に関して用いられる場合、「調節(modulation)」なる用語は、アップレギュレートする(例えば、活性化または刺激する)、ダウンレギュレートする(例えば、阻害または抑制する)、またはそれ以外にそのような性質、活性もしくはプロセスの質を変化させる能力を意味する。特定の場合には、そのような調節(regulation)はシグナル伝達経路の活性化などの特定の事象の出現に左右されることがあり、かつ/または特定の細胞型でのみ現れることもある。
【0080】
「治療(すること)」なる用語は当技術分野において認識されており、任意の状態または疾患の少なくとも一つの症状を治癒ならびに改善することを意味する。一つの例示的態様において、早産の合併症を治療することには、例えば、疾患もしくは障害を阻害する、例えば、その発症を停止する、または疾患もしくは障害の少なくとも一つの症状を改善もしくは軽減する、例えば、合併症の退行を引き起こすことが含まれる。
【0081】
早産の合併症の「予防的」または「治療的」処置なる用語は、宿主への本発明の組成物の一つまたは複数の投与を意味する。望まれていない状態(例えば、宿主動物の疾患または他の望まれていない状態)の臨床発現前に投与する場合、治療は予防的である、すなわち宿主を望まれていない状態の発生に対して保護するのに対し、望まれていない状態の発現後に投与する場合、治療は治療的である(すなわち、既存の望まれていない状態またはその副作用を減少、改善または維持することが意図される)。
【0082】
本発明の方法により治療する「患者」、「被験体」または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味しうる。
【0083】
「哺乳動物」なる用語は当技術分野において公知で、例示的哺乳動物にはヒト、霊長類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。
【0084】
化合物の文脈における「生物利用可能」なる用語は当技術分野において認識されており、化合物が投与される被験体または患者に吸収される、取り込まれる、またはそうではなく生理的に利用可能であることを可能にする化合物の形、または投与量の一部を意味する。
【0085】
「薬学的に許容される塩」なる用語は当技術分野において認識されており、例えば、本明細書に記載の組成物に含まれるものを含む、化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩を意味する。
【0086】
「薬学的に許容される担体」なる用語は当技術分野において認識されており、任意の本発明の組成物またはその成分を一つの臓器、または体の一部から別の臓器、または体の一部へ運ぶ、または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。それぞれの担体は本発明の組成物およびその成分と適合性であり、患者にとって有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には下記が含まれる:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質なしの水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)薬学的製剤において用いられる他の非毒性適合性物質。
【0087】
「全身投与」、「全身に投与される」、「末梢投与」および「末梢に投与される」なる用語は当技術分野において認識されており、本発明の組成物、治療薬または他の材料が患者の系に入り、したがって、代謝および他の同様のプロセスを受けやすいような、中枢神経系に直接以外のその投与、例えば、皮下投与を意味する。
【0088】
「非経口投与」および「非経口で投与される」なる用語は当技術分野において認識されており、腸内および局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経器官、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内注射および注入が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0089】
本明細書に記載の組成物の企図される等価物には、関心対象の組成物の特徴に有害な影響を与えない、置換基または成分の一つまたは複数の単純な変更が行われる、それ以外はそれに対応し、その同じ一般的性質を有する組成物が含まれる。一般に、本明細書に記載の組成物の成分は容易に入手可能な出発材料、試薬、および通常の合成法を用いて調製しうる。これらの反応において、それ自体は公知であるが、本明細書では言及しない、変形物を利用することも可能である。
【0090】
B. 早産の合併症の治療、予防および診断法
本明細書において早産の合併症を治療、予防および/または診断するための方法および組成物が提供される。一つの態様において、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を用いて、早産の合併症を治療または予防する方法および組成物が提供される。もう一つの態様において、被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを定量することにより、早産の合併症を診断する方法が提供される。一つの例示的態様において、本明細書に記載の方法および組成物を、それを必要としている被験体に2-メトキシエストラジオールまたは2-メトキシエストラジオールの類似体を投与することにより、早産の合併症を治療または予防するために用いてもよい。もう一つの例示的態様において、本明細書に記載の方法および組成物を、早産の合併症、または早産の合併症を発症する見込みの診断であって、被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを検出する段階を含む診断のために用いてもよい。
【0091】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、まず早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている被験体を特定することを含みうる。早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている被験体は、患者によって示される早産の合併症の症状を認識することにより特定してもよい。または、早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている被験体は、被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを定量し、対照と比較することにより特定してもよい。2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)の対照レベルからのいかなる偏りも、早産の合併症を患っている被験体を示すものでありうる。一つの例示的態様において、早産の合併症の診断のため、または早産の合併症の病期もしくは発症をモニターするために、被験体を定期的に(または一定間隔で)2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルについてスクリーニングしてもよい。一つの態様において、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルのスクリーニングを定期的、例えば、ほぼ一ヶ月に一回、3週間に一回、2週間に一回、10日に一回、1週間に一回、またはほぼ144、120、96、72、48、24、もしくは12時間に一回実施してもよい。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルのスクリーニングを用いて、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療の候補でありうる被験体を特定してもよい。もう一つの態様において、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルのスクリーニングを用いて、被験体に投与するのに有効な用量を算出してもよい。
【0092】
対照に比べて低いレベルまたは高いレベルの2-メトキシエストラジオールを有すると特定された被験体は、早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている可能性がある。一つの態様において、対照に比べて低いレベルの2-メトキシエストラジオールを有する被験体は、以下の早産の合併症の一つまたは複数を起こしやすい、またはそれを患っている可能性がある:脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)、未熟児網膜症(ROP)、および血管腫形成。
【0093】
早産の合併症の程度または重症度は、対照と比べての被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルにおける偏りの程度に基づいて評価してもよい。例えば、対照に比べて2-メトキシエストラジオールのレベルにおける偏りが大きい被験体ほど、早産の合併症のより重症例を起こしやすい、またはそれを患っていることを示している可能性がある。
【0094】
2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルのスクリーニングを用いて、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療の経過をモニターしてもよい。2-メトキシエストラジオールの類似体で被験体を治療する場合、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルおよび/または2-メトキシエストラジオール類似体(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを定量することはモニターのために有用でありうる。一つの例示的態様において、被験体に投与している2-メトキシエストラジオールのレベルおよび2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを定量することは有用でありうる。もう一つの態様において、2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルおよび2-メトキシエストラジオール類似体の前駆体のレベルを定量することは有用でありうる。さらにもう一つの態様において、2-メトキシエストラジオールの代謝産物のレベルおよび2-メトキシエストラジオール類似体の代謝産物のレベルを定量することは有用でありうる。
【0095】
被験体における2-メトキシエストラジオールのレベルを、2-メトキシエストラジオール自体のレベルを測定することにより直接定量してもよい。または、2-メトキシエストラジオールのレベルを、2-メトキシエストラジオールの前駆体または代謝産物のレベルを測定することにより間接的に定量してもよい。同様に、2-メトキシエストラジオールの類似体のレベルを、被験体における類似体のレベルを直接測定することにより定量してもよく、または類似体の前駆体もしくは代謝産物のレベルを測定することにより間接的に定量してもよい。さらにもう一つの態様において、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の前駆体または代謝産物のレベルを、診断またはモニターのために直接測定してもよい。この場合、前駆体または分析物を2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルの代用として用いているのではなく、むしろ診断またはモニターのために直接用いている。
【0096】
2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルを、被験体または対照被験体の生体試料中で定量してもよい。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールのレベルを、被験体からの尿、血液または血漿試料中で定量してもよい。
【0097】
被験体の生体試料中の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルを対照と直接比較してもよい。もう一つの態様において、被験体の生体試料中の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルを用いて、被験体においてみられる2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の生理的濃度を計算してもよい。次いで、被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の生理的濃度を対照と任意に比較してもよい。
【0098】
試料中、例えば、臍帯血、羊水、血漿、母乳などにおける2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)または2-メトキシエストラジオールの類似体(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルを、当技術分野において公知の任意の方法を用いて定量してもよい。例えば、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを、ガスクロマトグラフィ-質量分析(GC-MS)を用いて測定してもよく、これを用いて臍帯血、羊水、血漿、母乳などにおける2ME2またはその類似体のレベルを測定するために用いてもよい。GC-MSは2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体などの低分子量ステロイドを検出および定量するための基準となる試験法である。もう一つの例示的態様において、試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体(およびその前駆体または代謝産物)のレベルを、薄層クロマトグラフィ(TLC)、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などの他のクロマトグラフィ法を用いて定量してもよい。または、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体(およびその前駆体または代謝産物)のレベルを、ELISA、RIAなどのイムノアッセイ法を用いて定量してもよい。
【0099】
さらに、エストロゲン、エストラジオールなどの2-メトキシエストラジオールの前駆体を検出する方法(2-メトキシエストラジオールへの経路の総説についてはB.T. Zhu and A.H. Conney, Cancer Research (1998) 58:2269参照)を用いてもよい。例えば、血清エストロゲンアッセイ法、例えば、本来全尿エストロゲンを測定するために設計された市販の赤血球凝集阻止キット(Hi-Estrotec)を、17-ベータ-エストラジオール100pgの最小感度を有し、2.5時間未満で完了するよう改変して、Kasekiらによって開発された、迅速で高感度かつ単純な非放射性血清エストロゲンアッセイ法などの赤血球凝集阻止アッセイ法を用いてもよい。本発明の方法において用いうるエストロゲンアッセイ法のもう一つの例は、Applied Biosystemsの商標HitHunter Enzyme Fragment Complementation (EFC)アッセイ法である。このアッセイ法は、二つの断片-酵素受容体(EA)および酵素供与体(ED)からなる操作されたβ-ガラクトシダーゼ酵素に基づいている。断片が分離していると、β-ガラクトシダーゼ活性はないが、断片が一緒になると、結合(補完)して活性酵素を形成する。EFCアッセイ法は、分析物が抗体または受容体などの特定の結合タンパク質によって認識されうる、ED-分析物結合体を用いる。特定の結合タンパク質非存在下で、ED-分析物結合体はEAを補完して活性β-ガラクトシダーゼを形成し、陽性発光シグナルを生じることができる。ED-分析物結合体に特定の結合タンパク質が結合した場合、EAとの補完が妨害され、シグナルは生じない。遊離の分析物が(試料中に)提供されると、これは特定の結合タンパク質への結合に対し、ED-分析物結合体と競合することになり;遊離分析物はEAとの補完のためにED-分析物結合体を放出し、試料中の遊離分析物の量に応じてシグナルを生じることになる。
【0100】
被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその前駆体もしくは類似体のレベルを、対照と定量的または定性的に比較してもよい。例えば、定性的(または無単位)比較を、被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルが対照よりも高い、低い、またはほぼ同じのいずれであるかを評価することにより実施してもよい。任意に、定性的比較を用いて、対照と比較して、例えば、2倍の変化、50%の変化などの、被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルの相違の程度を推定してもよい。定量的比較は、被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の量を、対照における量と比較して評価することにより実施してもよく、ここで量は何らかの形の単位が付けられている(例えば、タンパク質mg、ゲル中のスポット/バンドの量、蛍光画像装置またはオートラジオグラム曝露のスポット強度、クロマトグラフィプレート上のスポットの量など)。
【0101】
被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝産物)のレベルをモニターするのに加えて、またはその代わりに、早産の合併症の症状をモニターすることが望ましいこともある。例えば、未熟児網膜症を患っている、またはそれを起こしやすい被験体において、本発明の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療前、治療中および/または治療後に被験体の眼検査を行うことが望ましいこともある。それぞれの眼に一連の拡張点眼剤を滴下した後、網膜を検眼鏡で検査する。例えば、脳室内出血を患っている、またはそれを起こしやすい被験体において、本発明の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療前、治療中および/または治療後に被験体の頭蓋超音波を行うことが望ましいこともある。この試験は内部構造の画像を作成するために音波を用いる。頭蓋超音波は乳児の脳の内部を、乳児の頭の骨間の空隙である泉門を通して見ることができる。超音波により、出血の量を等級付けすることができる。壊死性腸炎を患っている、またはそれを起こしやすい被験体において、本発明の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療前、治療中および/または治療後に被験体の腹部X線および/または血液検査を行うことが望ましいこともある。壊死性腸炎を有する被験体の腹部のX線は、腸内の泡状の様相および肝大静脈内の空気またはガスの徴候を示すことがある。空気は腹部の腸の外側にも見られることがある。針を腹腔に挿入してもよい。腹部から腸液が採取されることは、腸に孔がある徴候であることが多い。血管腫を患っている、またはそれを起こしやすい被験体において、本発明の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体による治療前、治療中および/または治療後に被験体の身体検査、CTスキャンおよび/またはMRIスキャンを行うことが望ましいこともある。
【0102】
一つの態様において、本明細書に記載の方法は2-メトキシエストラジオールを被験体に投与する段階を含む。または、2-メトキシエストラジオールおよび2-メトキシエストラジオールの一つもしくは複数の類似体の混合物、または2-メトキシエストラジオールの複数の類似体の混合物を被験体に投与することが望ましいこともある。他の態様において、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体を被験体に、早産の合併症の少なくとも一つの症状を治療または改善するのに有効なもう一つの治療薬との組み合わせで投与することが望ましいこともある。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールを、例えば、肺が正常に機能するのを助けるための肺表面活性剤などの、早産の合併症を治療または改善するのに有効なもう一つの治療薬と共に投与する。例示的肺表面活性剤には、コルホスセリル(登録商標Exosurf)、登録商標Survanta、および登録商標Surfaxinが含まれるが、それらに限定されるわけではない。併用療法を目的とする態様において、薬物を混合物として一緒に製剤して投与してもよく、または別々に製剤して投与してもよい。
【0103】
一つの例示的態様において、低レベルの2-メトキシエストラジオールに関連する早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている被験体に、2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベル+2-メトキシエストラジオール類似体のレベル)を対照被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同程度まで高めるのに十分な量の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を投与する。さらなる態様において、被験体に、被験体の2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベル+2-メトキシエストラジオール類似体のレベル)を対照レベルとほぼ同程度に維持するのに十分な量の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を定期的に投与してもよい。例えば、特定の態様において、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体を被験体に、一月ごと、一週間ごと、または毎日投与することが望ましいこともある。一つの例示的態様において、2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベル+2-メトキシエストラジオール類似体のレベル)を被験体において妊娠期間中を通して対照レベルとほぼ同程度に維持する。被験体の2-メトキシエストラジオールの適当なレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベル+2-メトキシエストラジオール類似体のレベル)を維持するために、2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベル+2-メトキシエストラジオール類似体のレベル)について被験体を定期的にモニターし、それに応じて被験体に投与する治療薬の量を調節することが望ましいこともある。
【0104】
一つの態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は式Iの化合物を含む:

式中、それぞれの出現について独立に:
RはH、C1-6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
R1およびR2は-OR、-SR、または-N(R)2であり;
R3はH、ハロゲン化物、C1-6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
R4、R5、およびR6はH、ハロゲン化物、C1-6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
mは1〜5までの整数であり;かつ
nおよびpは1〜6までの整数である。
【0105】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0106】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R1がOHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0107】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R2がOHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0108】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R3がメチルである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0109】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R4がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0110】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R5がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0111】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0112】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、かつR1がOHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0113】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、かつR2がOHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0114】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、かつR3がメチルである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0115】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、R1がOHであり、かつR2がOHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0116】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、R1がOHであり、R2がOHであり、かつR3がメチルである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0117】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、R4、R5、およびR6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0118】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、かつR4、R5、およびR6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0119】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、R1がOHであり、かつR4、R5、およびR6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0120】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、R1がOHであり、R2がOHであり、かつR4、R5、およびR6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0121】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、Rがメチルであり、R1がOHであり、R2がOHであり、R3がメチルであり、かつR4、R5、およびR6がHである式Iおよび付帯の定義の化合物を含む。
【0122】
式Iの薬学的に許容される付加塩および複合体も本明細書に記載の組成物および方法に含まれる。化合物が一つまたは複数のキラル中心を有しうる場合、特に明示されないかぎり、本明細書に記載の組成物はそれぞれの特有のラセミ化合物、ならびにそれぞれの特有の非ラセミ化合物を含む。
【0123】
化合物が不飽和炭素-炭素二重結合を有する場合、シス(Z)およびトランス(E)異性体の両方が本明細書に記載の化合物と関連して含まれることが意図される。化合物が、

および

などの、ケト-エノール互変異性体などの互変異性型で存在しうる場合、それぞれの互変異性型は、平衡状態またはR'による適当な置換により一つの型にロックされた状態のいずれで存在しようと、本明細書に記載の化合物と関連して含まれることが意図される。任意の一つの出現における任意の置換基の意味は、任意の他の出現におけるその意味または任意の他の置換基の意味とは独立である。
【0124】
2-メトキシエストラジオールおよび式Iの化合物のプロドラッグも本明細書に記載の方法および組成物に含まれる。
【0125】
式Iの化合物は、類似の化合物の調製のために有用な任意の通常の方法により調製してもよい。この工程のための出発原料は公知であるか、または市販の材料から公知の工程により調製することができる。本明細書に記載の方法において用いられる化合物を本明細書に記載の方法において用いられるもう一つの化合物に、通常の方法を用いて変換することができる。反応の生成物は抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィなどの通常の手段で単離する。
【0126】
本発明に従って用いられる公知の化合物および本発明の新規化合物への前駆体は、例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, Steraloids and Research Plusから購入することができる。本発明の他の化合物は公に入手可能な前駆体から公知の方法に従って合成することができる。
【0127】
エストラジオールの化学合成が記載されている(Eder, V. et al., Ber 109, 2948 (1976);Oppolzer, D. A. and Roberts, D A. Helv. Chim. Acta. 63, 1703, (1980))。本発明の2-メトキシエストラジオール類似体のいくつかを調製するために用いる合成経路は、エストラジオール誘導体およびジメチルヒドラゾンの公表された文献法を改変したものに基づいている(Trembley et al., Bioorganic & Med. Chem. 1995 3, 505-523;Fevig et al., J. Org. Chem., 1987 52, 247-251;Gonzalez et al., Steroids 1982, 40, 171-187;Trembley et al., Synthetic Communications 1995, 25, 2483-2495;Newkome et al., J. Org. Chem. 1966, 31, 677-681;Corey et al Tetrahedron Lett 1976, 3-6;Corey et al., Tetrahedron Lett, 1976, 3667-3668)およびドイツ特許第2757157号(1977)。
【0128】
例示的態様において、本明細書に記載の組成物および方法と共に用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体は、米国特許第6,528,676号、および米国特許出願第2003/0236408号、第2002/0147183号、第2003/0187076号、第2002/0082433号、および第2003/0236439号に記載されている。2-メトキシエストラジオールまたはその類似体は商業的に利用可能な供給会社から購入してもよく、または例えば米国特許第6,528,676号、および米国特許出願第2003/0236408号、第2002/0147183号、第2003/0187076号、第2002/0082433号、および第2003/0236439号に記載されているとおりに調製してもよい。本明細書に記載の方法および組成物に従って用いるのに適した2-メトキシエストラジオール類似体の例には下記の一つまたは複数が含まれる:17置換2-メトキシエストラジオール誘導体:エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17α-ジオール、2-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、17β-アミノエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-17-オキシム-3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オン、2-メトキシ-3,17β-ビス(アセチルオキシ)エストラ-1,3,5,(10)-トリエン、2-メトキシ-17β-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17(20)-Z-プロピリデンエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3-オール、17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-(N-n-(1)プロピルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-19-ノルプレグナ-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メトキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17-(4-トシルヒドラゾン)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17(20)-Z-ブチリデンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-ブチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール;2置換エストラジオール誘導体:2-アセチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-ホルミルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(ヒドロキシメチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-ニトロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-アミノエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミドエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(N-メチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCl、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCl、2-アミノエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(N,N-ジメチルアミノ)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCL、2-(1'-プロピニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-アジドエストラ1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-エトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン3,17β-ジオール、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール;16置換2-メトキシエストラジオール誘導体:2-メトキシ-16α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン- 3,17β-ジオール、2-メトキシ-16-エチルエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3,17β-ジオール、16α-(ヒドロキシメチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、16β-(ヒドロキシメチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-イソ-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-(N,N-ジメチルアミノメチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール;脱水素/置換2-メトキシエストラジオール誘導体:2-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)9(11)-テトラエン-3,17β-ジオール;他の2-メトキシエストラジオール誘導体:2-エトキシ-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-ホルミル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-ホルムアミド-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メチエンヒドロキシ-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-エチル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メチル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-エトキシ-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミドエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(メチレンヒドロキシ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-メチレンヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-(カルボキシリ酸)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、コルヒチン、コンブレタスタチンA-4、ジエチルスチルベストロール、2-ブロモエストラジオール、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストラジオール、4-ヒドロキシエストラジオール、17-エチニルエストラジオール、2-フルオロエストラジオール、エストラジオール、エストロン、2-メトキシ-17-エチニルエストラジオール、エストリオール、2-メトキシエストリオール、エストラジオール-3-O-メチルエーテル、2-メトキシエストラジオール-3-O-メチルエーテル、4-メトキシエストラジオール、4-メトクスエストラジオール-3-O-メチルエーテル、ポドフィロトキシン、ジヒドロコンブレタスタチンA-4、3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16α-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16β-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-アルキル-16-カルボメトキシ-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-メタン-ジメチレンアミン-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-カルボメトキシ-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストラ-17β-ジオール、16-メタノール-3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、16-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、16β-メチル-2-メトキシエストラジオール、16α-メチル-2-メトキシエストラジオール、16-エチル-2-メトキシエストラジオール、16α-n-プロピル-2-メトキシエストラジオール、16β-n-プロピル-2-メトキシエストラジオール、16β-n-ブチル-2-メトキシエストラジオール、16β-イソブチル-2-メトキシエストラジオール、16β-メチル(ジメチルアミン)-2-メトキシエストラジオール、16β-メタノール-2-メトキシエストラジオール、2-メトキシ-17-デオキシエストロン、17-エチル-2-メトキシエストロン、17-メチル-2-メトキシエストロン、2-N,N-ジメチルアミノ-17-デオキシエストロン、2-アジド-エストラジオール、および16α-メタノール-2-メトキシエストラジオール(例えば、米国特許第6,528,676号および米国特許出願第2002/0147183号および第2002/0082433号参照)。
【0129】
特定の態様において、本明細書に記載の方法において有用な2-メトキシエストラジオールまたはその類似体および組成物を、使用者に組成物を本明細書に記載の方法において本明細書に記載の目的に用いるための指示を示す説明書付きのキットで供給してもよい。使用説明書は組成物を収納する容器に印刷してもよく、または組成物と共に含まれる別のシートに印刷してもよい。特に、説明書は、例えば、使用者に組成物を使用するための指示を示してもよく、またそのような使用の目的は、例えば、IVH、NEC、ROPおよび血管腫形成などの早産の合併症の症状またはそれに関連する症状を阻害する、または別の方法で防止するためであることを示してもよい。説明書は、早産の合併症を起こしやすい(または素因を有する)可能性がある個体、および/または早産の合併症を有するとすでに診断された個体で用いるためのものであってもよい。
【0130】
C. 製剤
本明細書に記載の組成物は、当技術分野において周知のとおり、それらの意図される用途に応じて様々な手段で投与してもよい。例えば、組成物を経口投与する場合、それらは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤またはシロップ剤として製剤してもよい。組成物の液体製剤を、母乳代用物または「乳児用調製粉乳」として製剤してもよい。特定の態様において、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を、小さい錠剤または水性液剤もしくは懸濁剤として経口投与用に製剤する。
【0131】
特定の態様において、製剤の液体組成物、例えば、水性液剤または懸濁剤を、例えば、胃管から強制栄養法により腸内投与する。強制栄養投与法は日常的で当業者には周知である。そのような懸濁剤および液剤は任意に甘味媒体(例えば、シロップまたはエリキシル剤)と共に製剤してもよい。懸濁剤または液剤は特定の濃度で製剤し、各単位用量、例えば、液剤1ミリリットル、小匙1、大匙1などが例えば0.25mgから1250mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)を含みうるように、例えば、チューブ、匙またはピペットなどの計量/投与器具で供給してもよい。特定の態様において、懸濁剤または液剤を強制栄養管により腸内投与する。
【0132】
または、製剤を注射剤(静脈内、筋肉内、経皮パッチ、エアロゾルまたは皮下)、点滴製剤または坐剤で非経口投与してもよい。これらの製剤は通常の手段で製剤してもよく、望まれる場合には、組成物を賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯正剤、可溶化剤、懸濁化剤、乳化剤またはコーティング剤などの任意の通常の添加剤と混合してもよい。
【0133】
本明細書に記載の製剤において、湿潤剤、乳化剤や、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに着色剤、遊離剤、コーティング剤、甘味、矯味矯臭および着香剤、保存剤や、抗酸化剤が製剤した薬剤中に含まれていてもよい。
【0134】
本発明の組成物は経口、鼻内、局所(口腔内および舌下を含む)、直腸、膣、エアロゾルおよび/または非経口投与のために適当でありうる。製剤は単位用量剤形で都合よく提供してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法により調製してもよい。単一用量を生成するために担体材料と混合しうる組成物の量は、治療中の被験体、早産の合併症の重症度、投薬の状態、および特定の投与様式に応じて変動する。
【0135】
これらの製剤の調製法は、本明細書に記載の組成物を担体および任意に一つまたは複数の補助成分と混合する段階を含む。一般に、製剤は薬剤を液体担体もしくは微粒子固体担体、または両方と均質かつ密接に混合し、次いで必要があれば生成物を成形することにより調製する。
【0136】
経口投与に適した製剤は、それぞれ活性成分としてその本発明の組成物のあらかじめ決められた量を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(矯味矯臭基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いて)、散剤、顆粒剤の形、または水性もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁剤として、または水中油もしくは油中水型液体乳剤として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いて)としてでありうる。本明細書に記載の組成物はボーラス、舐剤、またはペーストとして投与してもよい。
【0137】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、本発明の組成物をクエン酸ナトリウムもしくはリン酸2カルシウム、および/または下記のいずれかなどの一つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合する:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤または結晶配合成分などの吸収遅延剤;(7)例えば、アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイトクレーなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑沢剤;および(10)着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、組成物は緩衝剤を含んでいてもよい。同様の型の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いてゼラチン軟および硬カプセル中の充填剤として用いてもよい。
【0138】
錠剤を、任意に一つまたは複数の補助成分と共に圧縮または成形により調製してもよい。圧縮錠は結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸デンプンナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性または分散剤を用いて調製してもよい。成形錠は適当な機器中、不活性液体希釈剤で加湿した本発明の組成物の混合物を成形することにより調製してもよい。錠剤や、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの他の固体剤形は、任意に割線を入れてもよく、または腸溶コーティングおよび薬学-製剤の技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製してもよい。
【0139】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。本発明の組成物に加えて、液体剤形は例えば、水またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などの他の溶媒、可溶化剤および乳化剤などの、当技術分野において一般に用いられる不活性希釈剤を含んでいてもよい。
【0140】
懸濁剤は、本発明の組成物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁化剤を含んでいてもよい。
【0141】
直腸または膣投与用の製剤は坐剤として提供してもよく、これは本発明の組成物を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチル酸塩を含む一つまたは複数の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製してもよく、またこれは室温では固体であるが、体温では液体で、したがって体腔内で融解して、活性薬剤を放出することになる。膣投与に適した製剤には、当技術分野において適当であることが公知である担体などを含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたは噴霧製剤も含まれる。
【0142】
本発明の組成物の経皮投与用の剤形には、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性成分を無菌条件下で薬学的に許容される担体、および任意の保存剤、緩衝剤、または要求されることがある噴射剤と混合してもよい。
【0143】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはその混合物などの賦形剤を含んでいてもよい。
【0144】
散剤および噴霧剤は、本発明の組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはそのような物質の混合物などの賦形剤を含んでいてもよい。噴霧剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素や、ブタンおよびプロパンなどの揮発性無置換炭化水素などの、通例の噴射剤を含んでいてもよい。
【0145】
または、本明細書に記載の組成物および化合物をエアロゾルにより投与してもよい。これは化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム製剤または固体粒子を調製することにより達成される。非水性(例えば、フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を用いることもできる。音波ネブライザーは、本発明の組成物中に含まれる化合物の分解を引き起こしうる剪断力に薬剤が曝されるのを最小にするため、これを用いてもよい。
【0146】
通常は、水性エアロゾルを、本発明の組成物の水溶液または懸濁液を通常の薬学的に許容される担体および安定化剤と共に製剤することにより調製する。担体および安定化剤は特定の本発明の組成物の要求条件により変動するが、典型的には非イオン性界面活性剤(トゥイーン、プルロニック、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖または糖アルコールが含まれる。エアロゾルは一般に等張溶液から調製する。
【0147】
非経口投与のために適当でありうる薬学的組成物は、本発明の組成物を一つまたは複数の薬学的に許容される滅菌等張水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液、または使用直前に滅菌注射用液剤もしくは分散剤に再構成しうる滅菌粉末との組み合わせで含み、これらは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を所期の受容者の血液と等張にする溶質または懸濁化もしくは増粘剤を含んでいてもよい。
【0148】
本明細書に記載の薬学的組成物中で用いうる適当な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適当な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には要求される粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持してもよい。
【0149】
特定の態様において、10錠以下で治療用量を提供するために、本発明の化合物を錠剤、丸剤、カプセル剤または他の適当な摂取可能製剤(以下、総称して「錠剤」)として製剤してもよい。もう一つの例において、治療用量は50、40、30、20、15、10、5または3錠で提供する。
【0150】
2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の錠剤型は、20錠中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の量が、一緒に摂取した場合に、少なくとも50%有効量(ED50)、例えば、個体の少なくとも50%が早産の合併症に関連する少なくとも一つの症状の低減の計数的効果を示した用量を提供するように製剤してもよい。さらなる態様において、10、5、2または1錠中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の全量が患者(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に少なくともED50用量を提供するように、錠剤を製剤する。他の態様において、24時間の間に摂取した20、10、5または2錠中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の量は、平均で、少なくともED50濃度の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の平均血漿レベルを提供する投与計画を提供する。他の態様において、ED50の100倍、10倍、または5倍未満が提供される。他の態様において、一回用量の錠剤(1〜20錠)は約0.25mgから1250mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)を提供する。一つの例示的態様において、一回用量の錠剤(1〜20錠)は約0.5から5mg、約1から約3mg、または約2.5mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)を提供する。
【0151】
同様に、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を非経口投与用に、例えば、皮下、筋肉内または静脈内注射用に製剤することができ、例えば、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を滅菌液剤または懸濁剤(以下、総称して「注射用液剤」)中で提供することができる。注射用液剤は、ボーラス注射剤200cc中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の量が、少なくとも50%有効量、またはED50の100倍未満、またはED50の10もしくは5倍未満の用量を提供するように製剤する。注射用液剤は、注射剤100、50、25、10、5、2.5、または1cc 中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の全量が患者にED50用量、またはED50の100倍未満、またはED50の10もしくは5倍未満の用量を提供するように製剤してもよい。他の態様において、24時間の間に少なくとも二回注射する100cc、50、25、5または2ccの全量中で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の量は、平均で、少なくともED50濃度、またはED50の100倍未満、またはED50の10もしくは5倍未満の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)の平均血漿レベルを提供する投与計画を提供する。他の態様において、一回用量の注射剤は約0.25mgから1250mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)を提供する。一つの例示的態様において、一回用量の注射剤は約0.5から5mg、約1から約3mg、または約2.5mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(またはその組み合わせ)を提供する。
【0152】
実施例
本発明を概括的に記載しているが、以下の実施例を参照することでさらに容易に理解されると思われるが、実施例は本発明の特定の局面および態様を例示するために示すにすぎず、本発明を限定する意図はない。
【0153】
実施例1:早産が原因の合併症における2-メトキシエストラジオールの役割
2-メトキシエストラジオール(2ME2)はエストロゲンの天然代謝物で、エストロゲン活性はほとんど、または全くない。2ME2は低酸素誘導因子1アルファ(HIF-1α)の発現を抑制する強力な血管新生阻害剤である。HIF-1αは、血管内皮増殖因子(VEGF)を含む複数の血管新生促進タンパク質の転写を刺激する血管新生促進転写因子である。VEGFは、血管内の透過性を誘導する内皮マイトジェンおよび生存因子である。VEGFは血管漏出剤としてヒスタミンよりも50,000倍強力である。
【0154】
男性における2ME2の中央値は<10pg/mLで、生殖可能年齢の女性では、卵胞期で46pg/mL、黄体期で70pg/mLである。妊娠中、母親の血清2ME2は劇的に上昇して、11〜16週には中央値674pg/mLに達する。血清レベルは妊娠37〜40週までに3768pg/mLの最高値を示し、これは妊娠前レベルのほぼ100倍の上昇である。妊娠中に2ME2レベルが高まるのは、胎盤および胎児における短時間の低酸素症発現に反応してのHIF-1αの急増に対して防護していると考えられる。
【0155】
新生児の臍帯血清は2ME2を中央値1606pg/mLで含み、これは正期における母体血流中のレベルの約40%である(図1参照)。早産児の臍帯血もしくは血清、早期もしくは正期産児の羊水、またはその母親の初乳もしくは母乳中の2ME2レベルに関するデータはない。さらに、早期産または正期産のいずれであろうと、新生児でいつこのレベルが「正常」に戻るかについてのデータも発表されていない。しかし、胎児の2ME2レベルが母親のレベルの40%であるとの前述のデータから外挿することにより、本発明者らは妊娠25週児の出生時の2ME2レベルは約750pg/mLと予測している。さらに、早産児の2ME2の半減期が成体の半減期10時間とほぼ同等であるならば、2ME2は出生後2.5日以内に25pg/mL未満にまで低下すると考えられる。
【0156】
本発明者らは、出生時の2ME2レベルは妊娠齢に直接比例し、したがって乳児の出生が早期であるほど、出生時の2ME2レベルは低く、子宮内での期間に伴ってレベルは上がり、最終的に正期産児のレベルに達すると考えている。早期産児は自身の2ME2を大量に産生する見込みはないため、母体および胎盤供給源から提供されるものに限られ、約10時間という2ME2の半減期に基づき、そのレベルは急速に低下すると考えられる。2ME2はHIF-1αに対して防護するために必須であるため、2ME2レベルが低い乳児における低酸素症発現はHIF-1αの急増につながり、続く循環VEGF増大などの下流事象を伴うと考えられる。
【0157】
低レベルの2ME2と、その結果としての高レベルのVEGFの生体への影響は、早産の多くの合併症に寄与すると考えられる。これは二つの理由から脳室内出血(IVH)、壊死性腸炎(NEC)、未熟児網膜症(ROP)、および血管腫の原因となりうる。第一の理由は、2ME2の直接の血管新生抑制効果の消失で、第二の理由は、その結果として、HIF-1α阻害の欠如によりVEGFが高レベルとなり、血管漏出および出芽形成を引き起こす。まとめると下記のとおりとなる:
三番目の三半期の正常な2ME2急増に曝された正期産児:
↑2ME2→↓HIF-1<→↓VEGF(および正常な血管形成)
三番目の三半期の2ME2急増前に産まれた早期産児:
↓2ME2→↑HIF-1<→↑VEGF→↑血管漏出(IVH、NEC)および
↑血管出芽形成(ROP、血管腫)
【0158】
羊水、臍帯血、または母体血清は、乳児がIVH、NECおよびROPの臨床徴候を示す前にこれらを発症する危険性が高いかどうかを予測しうるタンパク質生物マーカーを有している可能性がある。そのような一連のマーカーは、どの患者がこれらの合併症を発症する危険性がより高いかを調べるのに役立つと思われる。本発明者らは、血管新生促進および抑制因子の平衡は、子宮内の在胎齢で対応させた対照群に比べて早期産児では過度の血管新生に相対的に傾いていると仮説を立てている。過度の血管新生は、早期産児においては強力な血管新生抑制因子2-メトキシエストラジオール(2ME2)が相対的に欠乏していることが原因と考えられ、これはIVH、網膜新血管新生およびROP、NEC、ならびに生命を脅かす可能性のある血管腫の危険性の増大を引き起こしうる。
【0159】
本発明者らは、妊婦の血中2-メトキシエストラジオールのレベルの着実な上昇は胎児の血中でも並行して起こり、胎盤中の短時間の低酸素症発現に反応しての低酸素誘導因子-1アルファ(HIF-1アルファ)の急増に対して胎児を防護するとの仮説を立てている。
【0160】
本発明者らは、下記の実施例に記載のとおり、様々な血管新生促進および抑制因子を比較し、IVH、NEC、ROPおよび血管腫に関する転帰データを収集するために、早期産児およびその母親ならびに健常な正期対照群から血液、羊水および母乳を採取する。早産児に関連する病的状態の発生率増大に対する統一された分子的基礎が提供され、予防的治療につながると考えられる。
【0161】
どの早産児が臨床症状の発症前にIVH、NEC、またはROPを発症するかを出生時に特定することで、これらの乳児に合わせた治療が可能になると思われる。経口または非経口投与する正しい血管新生カクテルによる置換療法は、これらの合併症を予防するのに十分であると考えられる(図2)。現在のところ、2ME2は進行した前立腺癌に対する臨床試験(第2相および第3相)において試験中で、副作用は報告されていない。注目すべきは、これは異常な(例えば、腫瘍学的)血管の成長を阻害するが、正常な血管の成長または活性には影響をおよぼさないようである。このことは、早産児で実際にこの血管新生抑制因子が相対的に欠乏していることが判明すれば、最終的に2ME2を補足する理論的機会を提供することになる。
【0162】
特に、本試験中に下記の問題に取り組む。
【0163】
1. 早期陣痛と低い2ME2レベルとの間に関連があるか?早期陣痛中の妊婦の2ME2レベルを早期陣痛中でない在胎齢で対応させた対照群と比較することにより、2ME2レベルと早期陣痛(PTL)との間に関連があるかどうかを調べることができ、低2ME2が早産を誘発するかどうかという因果問題が生じる。
【0164】
2. 肺機能を成熟させるために早産の前に母親に投与するベタメタゾンも、不明の理由によりIVH発生率を低下させる。ベタメタゾンは、IVH発生率低下のメカニズムの可能性がある、胎盤による2ME2産生を刺激するか?
【0165】
3. 最終的にIVH、NEC、ROPまたは血管腫を発症することになる早産児を、母体の血清、羊水、または臍帯血の一連のタンパク質生物マーカーを用いて、疾患の徴候の前の出生時に特定することができるか?
【0166】
4. IVH、NEC、ROPまたは血管腫を発症する早産児は、これらの合併症のない年齢を対応させた早産児に比べて、出生時の2ME2レベルが低いか?
【0167】
5. 乳児の2ME2の半減期は?半減期が短ければ低酸素症の突発に対する防護が不適当に短い危険が生じるか?
【0168】
6. 早産児の母親の2ME2低下率から乳児の低下率を予測することができるか?
【0169】
7. 羊水は理論的には2ME2ならびに他の血管新生促進および抑制因子を含むため、平衡のとれた血管新生「カクテル」の供給源となる可能性がある。
【0170】
8. 母乳は早産児に防護を提供しうる2ME2を含むと考えられる。母乳中の2ME2レベルはいかほどか、また母乳で育てた早産児は、母乳で育てていない早産児に比べて、IVH、NEC、ROPおよび血管腫に対して防護されるか?
【0171】
机上の実施例2:出生時の2-メトキシエストラジオールのレベル(臍帯血、羊水、母体胎盤)、ならびに乳児血漿および母乳中の2ME2半減期の評価
ガスクロマトグラフィ-質量分析(GC-MS)を用いて、臍帯血、羊水、血漿、母乳などの2ME2またはその類似体のレベルを測定しうる。GC-MSは2-メトキシエストラジオールなどの低分子量ステロイド(Mw=302g/mol)を検出および定量するための基準となる試験法である。
【0172】
本発明者らは、それぞれの乳児からいくつの試料が必要かを微調整するために、妊婦および新生児における2ME2レベルの大まかな範囲および動態を調べることを含む、本発明者らの実験手順を改良するためのパイロット試験から始める。したがって、本発明者らは、帝王切開により産まれた正期産児(妊娠37〜42週)の母親5名(実施例2a)、母親5名およびNICUの入院が必要なその正期産児(実施例2b)、ならびに母親10名およびその超未熟児(妊娠<28週)(実施例2c)由来の約270試料の2ME2を測定する。これらの試料、ならびに試験中の他のすべての試料は2〜10mL量である。
【0173】
血液試料は正常な正期産児からは採取できない(正期産児は通常の分析用に血液をまったく必要としないため)ため、本発明者らは帝王切開後に産まれた正常な正期産児からは臍帯血、母体血清、羊水、および母体初乳だけを採取する。2ME2半減期を正期産児(妊娠37〜40週)で測定するが、これはNICUでの入院を必要とし、また経時的に複数回の血液分析を必要とする。
【0174】
正期産児からのデータは、新生児および母乳中の2ME2レベルの範囲をもとめ、2ME2レベルの低下率を評価するための、対照として役立つことになる。早産児からのデータを分析して、早産児の2ME2が正期産児と同じ動態に従うかどうかを調べる。これらのデータは、早産児および正期産児において2ME2レベルが検出できなくなる時期に基づき、本発明者らの実験アッセイ法を改良し、早期産児の残りからいくつの試料を採取する必要があるかを調べる助けとなると思われる。
【0175】
実施例2A:パイロット試験、帝王切開による正期産児の母親
患者登録/除外基準:出生時に妊娠37 0/7〜42完全週、帝王切開による出産、出産後は健常、好ましくは授乳を期待
患者数:母親5名
採取する試料:全試料=50
【0176】
【表1】

【0177】
実施例2B:パイロット試験、母親およびNICUに入院したその病気の正期産児
患者登録/除外基準:出生時に妊娠37 0/7〜42完全週、任意の理由によりNICUに入院して4日以上の入院期間が見込まれ、母乳栄養の予定
患者数:母親5名および乳児5名
採取する試料:全試料=60
【0178】
【表2】

DOL=生後日数
^ 常に臨床的に指示された採血と連係して行う。
* 10日または退院のいずれか早い方。
【0179】
実施例2C:パイロット試験、母親およびその早産児
患者登録/除外基準:妊娠28週以下(例えば、28 6/7週)、優先的に帝王切開による出産で母乳栄養の予定
患者数:母親10名および乳児10名
採取する試料:全試料=160
【0180】
【表3】

DOL=生後日数
^ 常に臨床的に指示された採血と連係して行う。
* 10日または退院時のいずれか早い方。
血液量の詳細:
目標はいつでも可能なときに1ccを送ること
要求:8週間毎に3cc/kg
0.5kgの乳児では、最大1.5cc=4×0.37cc
1kgの乳児では、最大3cc=4×0.75ccの試料
1.5kgの乳児では、最大4.5cc=4×1.1ccの試料
2kgの乳児では、最大6cc=4×1.5ccの試料
【0181】
試料は、好ましくは採血後30分以内に、Li-ヘパリンチューブに入れて遠心沈降し(母乳を除く)、血漿相を-70℃で凍結する。
【0182】
机上の実施例3:臍帯血中で測定した一連の血管新生促進および抑制因子の相関と、IVH、NEC、ROPおよび血管腫形成に関する転帰のデータ
多重抗体プラットフォームおよびELISAを用いて、本発明者らは、在胎齢による正味の「血管新生平衡」を評価し、これをIVH、NEC、ROPおよび乳児性血管腫形成と相関させるために、異なる増殖因子の相対的存在量を調べる。このために、羊水および臍帯血試料を採取するか、または入手可能であれば保管された試料を使用する。廃棄ヒト材料として臍帯血が採取可能な、妊娠32週未満(例えば、32 6/7週)の乳児からの試料2〜5mLを用いる。
【0183】
IVH(任意の等級)、NECおよびROP(任意の病期)の有病率が5〜10%であること、およびこれらそれぞれの合併症を発症しつつある乳児15〜20名からの臍帯血を採取するという目標に基づき、本発明者らは約300の臍帯血試料を採取する必要があると推定する。
【0184】
本発明者らは、試験のこの部分に登録された母親/乳児組からの廃棄ヒト材料として臍帯血を採取する。本発明者らの仮説に基づくと、これら四つの合併症は主に血管新生促進環境から起こる。臍帯血を以下の因子について分析し、IVH、NEC、ROPおよび血管腫形成に関する転帰のデータと相関させる。
【0185】
1. これら四つの合併症を発症する乳児では出生時にこの血管新生阻害因子レベルが低いかどうかを確認するための、2ME2血漿レベル
【0186】
2. 複数の血管新生および血管新生抑制マーカーの血漿レベル
本発明者らは、IVH、NEC、ROPおよび血管腫形成を発症する乳児では、在胎齢で対応させた対照群に比べて、出生時に他の公知の血管新生抑制因子(トロンボスポンジンなど)のレベルが低いか、または血管新生増殖因子(VEGF、bFGF、PlGFなど)のレベルが高いかを調べたいと考えている。本発明者らは、数十から数百の生物マーカーの少量での同時測定を可能にする、多重モノクローナル抗体マイクロアレイシステムを用いる。
【0187】
3. 生物マーカー発見
血管新生/血管新生抑制プロファイリングで、患者の転帰を正確に予測しうる生物マーカー群が見つからないと判明した場合、本発明者らは二次元ゲル電気泳動およびDIGEシステムを用いて、IVH、NEC、ROPまたは血管腫に対する生物マーカーとして役立ちうる新規タンパク質を特定する。
【0188】
机上の実施例4:臍帯血中のタンパク質生物マーカーの発見と定量
一連の生物マーカーの検出により、単一のマーカーよりも診断および予後に対する高い感受性および特異性が得られる。本発明者らは、臍帯血漿中のタンパク質存在量の変化が早産児において臨床症状発現前のIVH、NEC、ROPおよび乳児性血管腫形成を予測する指標となりうるかどうかを調べる。本発明者らは、新規タンパク質生物マーカーを発見するためにDIGEシステム(GE)を用いる。
【0189】
等価物
本発明の特定の態様について論じてきたが、前述の明細書は例示的であって、限定的なものではない。本明細書を綿密に読むことにより、当業者には本発明の多くの変形物が明らかになる。添付の特許請求の範囲はそのような態様および変形物のすべてを請求しようとするものではなく、本発明の全範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物の全範囲、および明細書とそのような変形物を参照することによって決められるべきである。
【0190】
以下に列挙するものを含む、本明細書において言及されるすべての出版物および特許は、それぞれ個々の出版物または特許が具体的かつ個別に参照により組み入れられると示されたがごとく、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合には、本明細書における任意の定義を含む本出願が支配することになる。
【0191】

【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】妊娠中の2ME2の母体血清レベルおよび正期産児の臍帯血値を示す(黒字)。25週齢の早産児の外挿した母体および臍帯血レベル(赤字、括弧)。成体の2ME2の半減期測定値に基づく、子宮内の胎児血清レベルに対応する2ME2の臍帯血レベルにおける変化予想(青線)と、25週齢早産児の2ME2の血清レベルにおける低下予想(赤線)。赤の数字および線は外挿であることに留意されたい。
【図2】超早産児における2ME2の生理的レベルの、在胎齢で対応させた対照群の血清で見られるレベルへの回復を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
早産の合併症を治療または予防する方法であって、それを必要としている被験体に2-メトキシエストラジオール(2-ME)、その類似体、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項2】
まず早産の合併症を起こしやすい被験体を特定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
まず早産の合併症を患っている被験体を特定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを定量する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の前駆体または代謝産物のレベルを定量することにより2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルが定量される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルと比較する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルを定量する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルを対照における2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルと比較する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の代謝産物のレベルを定量する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の代謝産物のレベルを対照における2-メトキシエストラジオールの代謝産物のレベルと比較する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
生体試料が尿、血液、または血漿である、請求項4記載の方法。
【請求項12】
対照が、早産の合併症を患っていない少なくとも一個体の被験者由来のあらかじめ定量された標準である、請求項4記載の方法。
【請求項13】
被験体における2-メトキシエストラジオールのレベルが対照における2-メトキシエストラジオールのレベルよりも低い場合、被験体における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同じレベルまで高めるのに有効な量の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を被験体に投与する段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項14】
被験体における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを対照と比べて定期的に定量する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項15】
定期が約1、2、3、4、5、6、7、10、14、28、または35日に一回である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
被験体に投与される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルを、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルが該被験体において対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同じレベルに維持されるように定期的に調節する段階をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
約0.1、0.3、1、2.5、または5mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を被験体に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を経口、鼻内、非経口、または経皮投与する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を強制栄養管により腸内投与する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
被験体を早産の合併症の一つまたは複数の症状についてモニターする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
早産の合併症が、脳室内出血、壊死性腸炎、未熟児網膜症、および血管腫からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
2-メトキシエストラジオール、その類似体、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグでない少なくとも一つの第二の治療薬を被験体に投与する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
第二の治療薬を被験体に2-メトキシエストラジオールまたはその類似体と同時に投与する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
2-メトキシエストラジオール類似体が式Iの化合物である、請求項1記載の方法:

式中、それぞれの出現について独立に:
RはH、アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
R1およびR2は-OR、-SR、または-N(R)2であり;
R3はH、ハロゲン化物、アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
R4、R5、およびR6はH、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、チオール、アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであり;
mは1〜5までの整数であり;かつ
nおよびpは1〜6までの整数である。
【請求項26】
2-メトキシエストラジオール類似体がコルヒチンまたはコンブレタスタチンA-4である、請求項1記載の方法。
【請求項27】
早産の合併症を治療または予防する方法であって、下記の段階を含む方法:
a)早期産被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオールのレベルを定量し、該レベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルと比較する段階であって、該対照は少なくとも一個体の非早期産被験体由来または早産の合併症を有しておらず該早期産被験体と同じ在胎齢を有する早期産被験体由来のあらかじめ定量された標準である段階と;
b)該被験体の生体試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを該対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同じレベルまで高めるのに十分な量の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を該早期産被験体に投与する段階と;
c)段階a)およびb)を定期的に繰り返し、それにより該被験体における2-メトキシエストラジオールのレベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同じレベルに維持する段階。
【請求項28】
生体試料が尿、血液、または血漿である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
まず早産の合併症を起こしやすい、またはそれを患っている被験体を特定する段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオールのレベルを定量し、該レベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルと比較する段階を含む、被験体における早産の合併症の発症を診断または予測する方法であって、該対照は、少なくとも一個体の早産の合併症を有しておらず該被験体とほぼ同じ在胎齢の被験体由来または少なくとも一個体の正期産児である被験体由来のあらかじめ定量された標準であり、対照に比べて低いレベルの該被験体試料中の2-メトキシエストラジオールは、被験体が早産の合併症を起こしやすいかまたはそれを患っていることを示す、方法。
【請求項31】
早産の合併症の重症度を、対照と比較した被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルの相違の程度に基づいて決定し、対照からの偏りが大きいほど早産の合併症がより重症であることを示す、請求項30記載の方法。
【請求項32】
生体試料が尿、血液、または血漿である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
被験体がヒトである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオール代謝産物のレベルを定量し、該レベルを対照における2-メトキシエストラジオール代謝産物のレベルと比較する段階を含む、被験体における早産の合併症の発症を診断または予測する方法であって、該対照は、少なくとも一個体の早産の合併症を有しておらず該被験体とほぼ同じ在胎齢の被験体由来または少なくとも一個体の正期産児である被験体由来のあらかじめ定量された標準であり、対照と比較して低いレベルの該被験体試料中の2-メトキシエストラジオール代謝産物は、被験体が早産の合併症を起こしやすいかまたはそれを患っていることを示す、方法。
【請求項35】
被験体由来の生体試料中の2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルを定量し、該レベルを対照における2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルと比較する段階を含む、被験体における早産の合併症の発症を診断または予測する方法であって、該対照は、少なくとも一個体の早産の合併症を有しておらず該被験体とほぼ同じ在胎齢の被験体由来または少なくとも一個体の正期産児である被験体由来のあらかじめ定量された標準であり、対照と比較した該被験体試料中の2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルの変化は、被験体が早産の合併症を起こしやすいかまたはそれを患っていることを示す、方法。
【請求項36】
対照と比較して高いレベルの被験体試料中の2-メトキシエストラジオール前駆体は、被験体が早産の合併症を起こしやすいかまたはそれを患っていることを示す、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501729(P2009−501729A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521718(P2008−521718)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027808
【国際公開番号】WO2007/011926
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506069273)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S MEDICAL CENTER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston,MA 02115 (US).
【Fターム(参考)】