説明

昇圧作用を有する新規ポリペプチド

【課題】本発明は組織におけるレニン・アンジオテンシン系に関与するポリペプチドを明らかにすることを目的とする。
【解決手段】本発明者らはレニン・アンジオテンシン系に関与するポリペプチドとして、アンジオテンシノーゲンのN末端の第1番〜第12番のアミノ酸配列からなるポリペプチドを見出した。このポリペプチドは強力な昇圧作用を有することから、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患の予防又は治療のために有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇圧作用を有する新規ポリペプチド、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン・アンジオテンシン (RA)系は生体内の重要な昇圧系である。循環血中のRA系は、ラットではアミノ酸453個、ヒトではアミノ酸452個からなるアンジオテンシノーゲン(ATN)から、おもに腎臓より分泌されるレニンによってアンジオテンシンI (Ang I)となり、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシン II(Ang II)に変換され、Ang IIがAT1受容体に作用し、血管収縮作用や昇圧作用を引き起こす。そして、レニン・アンジオテンシン系を阻害する薬剤(アンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬等)は高血圧・心不全等の治療薬として使用されている(例えば特許文献1、2及び3参照)。
【0003】
近年、血液中に循環しているレニン・アンジオテンシン系以外に、組織におけるレニン・アンジオテンシン系の存在が指摘されている。組織中にもAng IIが確かに存在するが、組織におけるレニン・アンジオテンシン系では、Ang IIが、レニンとACEによりATNから生合成されるか否かは疑問のあるところである。
【0004】
【特許文献1】特開2005-154326号公報
【特許文献2】特許第3068656号公報
【特許文献3】特許第2990354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組織におけるレニン・アンジオテンシン系に関与するポリペプチドの正確な構造を知ることができれば、レニン・アンジオテンシン系に関連する疾患の予防又は治療のために有用であると期待される。
【0006】
そこで本発明は組織におけるレニン・アンジオテンシン系に関与するポリペプチドを明らかにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、組織でのAng IIの生合成機構を明確にするため、アンジオテンシンのN末端を認識するラジオイムノアッセイを確立し、このラジオイムノアッセイを用いて、組織のアンジオテンシンの分子型を明らかにした。そして、Ang I のC末端に2個のアミノ酸が付加した、配列番号1又は2のアミノ酸配列を有する内在性のアンジオテンシノーゲン(1-12)に相当するポリペプチドが主要なアンジオテンシン関連のポリペプチドであることを明らかにして、α-プロテンシン(α-protensin)と命名した。さらに、α-プロテンシンの昇圧活性、血管収縮活性を明らかにした。また、α-プロテンシンの測定系を確立し、α-プロテンシンがAng I やAng IIに匹敵する濃度で存在することを明らかにした。
【0008】
すなわち本発明は以下の発明を包含する。
(1) アンジオテンシノーゲンのN末端の第1番〜第12番のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2) 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる(1)記載のポリペプチド。
(3) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる(1)記載のポリペプチド。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドを含有する、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患の予防又は治療剤。
(5) 被検体から単離された試料中における、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドの量を測定することを含む、レニン・アンジオテンシン系の評価方法。
(6) (1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
(7) (1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体を含有する、レニン・アンジオテンシン系の評価用試薬。
(8) 低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、
(i) 候補化合物を用意し、
(ii) 血圧上昇活性又は血管収縮活性のアッセイ系を用いて、前記候補化合物と(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドとの存在下における血圧上昇活性又は血管収縮活性を測定し、
(iii) 上記(ii)で測定された活性が、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドは存在するが前記候補化合物は存在しない条件下での血圧上昇活性又は血管収縮活性と比較して高い場合に、前記候補化合物は低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬であると判定することを含む方法。
(9) 高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、
(i) 候補化合物を用意し、
(ii) 血圧上昇活性又は血管収縮活性のアッセイ系を用いて、前記候補化合物と(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドとの存在下における血圧上昇活性又は血管収縮活性を測定し、
(iii) 上記(ii)で測定された活性が、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチドは存在するが前記候補化合物は存在しない条件下での血圧上昇活性又は血管収縮活性と比較して低い場合に、前記候補化合物は高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬であると判定することを含む方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態は、組織におけるレニン・アンジオテンシン系に関与する新規ポリペプチドを提供する。
【0010】
本発明の一実施形態は、当該新規ポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
本発明の一実施形態は、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患の予防又は治療のための手段を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態は、レニン・アンジオテンシン系を評価するための手段を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態は、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬のスクリーニング方法を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態は、高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬のスクリーニング方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(α-プロテンシン)
本発明者らは、ラットの組織中から、Ang IよりもC末側に2アミノ酸長い12アミノ酸(Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Leu-Tyr)からなり、ラットのアンジオテンシノーゲン(1-12)に相当する新規ポリペプチドを単離することに成功した。本発明者らはまた、C末端の2アミノ酸配列が異なるAsp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ileのアミノ酸配列からなる、ヒトのアンジオテンシノーゲン(1-12)に相当するポリペプチドがヒトの組織中にも存在することを証明した。このペプチドは後に述べるように、アンジオテンシン変換酵素によりAng II になることで、昇圧活性を示すことから、Ang II(アンジオテンシン)のプロペプチドと言う意味からα-Protensin(α-プロテンシン)と名付けた。本明細書において起源を特に限定することなく「α-プロテンシン」という用語を用いる場合、この用語は、各種生物に由来するアンジオテンシノーゲンのN末端の第1番〜第12番のアミノ酸配列からなるポリペプチドの総称である。
【0015】
α-プロテンシンは公知のポリペプチド合成方法、例えば全自動ポリペプチド合成装置を用いた方法により製造することができる。また、ヒト、ラット等の動物から単離精製したものであってもよい。
【0016】
α-プロテンシンは、必要に応じて塩の形態、好ましくは生理学的に許容される酸付加塩の形態であってもよい。そのような塩としては、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)の塩、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)の塩等が挙げられる。
【0017】
(α-プロテンシンの医薬用途)
α-プロテンシンは実施例に示すように血管を収縮させる活性及び血圧を上昇させる活性を有する。従って、α-プロテンシンを体内に投与することにより、血圧を高めることができ、それにより低血圧症又は血圧低下に起因する各種の疾患を予防又は治療することができる。
【0018】
予防又は治療を受ける動物は、哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなど)であれば特に限定されないが、ヒトが特に好ましい。
【0019】
予防又は治療され得る「血圧低下に起因する疾患」としては、敗血症性ショック、本態性低血圧、自律神経障害等が挙げられる。
【0020】
α-プロテンシンの投与経路は特に限定されない。投与経路の一例としては静脈内投与、点鼻投与、吸入投与、経口投与等が挙げられる。α-プロテンシンを含有する薬剤の調製にあたっては、採用する投与経路に応じて適切な剤型を選択すればよい。剤型としては、例えば、注射剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤等が挙げられる。本発明の薬剤は、医薬上許容される担体又は賦形剤、或いは採用される剤型に必要な他の添加物を含んでもよい。注射剤とする場合は、上記有効成分にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加することができる。注射剤としては粉末として用時調製して使用してもよい。
【0021】
上記の各投与単位剤型中に配合されるα-プロテンシンの量は、治療又は予防上有効な量である限り、これを適用すべき患者の症状により、あるいはその剤型等に応じて適宜決定することができるが、一般的には投与単位剤型あたり、経口剤では約0.3〜6mg、注射剤では約5〜100 ngとするのが望ましい。また、上記投与剤型を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人1日あたり1〜18mgとすればよい。
【0022】
(レニン・アンジオテンシン系の評価方法)
被検体から単離された試料中におけるα-プロテンシンの量を測定することにより、当該被検体におけるレニン・アンジオテンシン系を評価することができる。
【0023】
ここで「レニン・アンジオテンシン系を評価する」とは、レニン・アンジオテンシン系の活性を評価することを意味する。例えば、被検体から単離された試料中にα-プロテンシンが高濃度で存在する場合、当該被検体におけるレニン・アンジオテンシン系の活性が高いと結論付けることができる。そして更に、当該被検体が高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に罹患しているか、罹患する可能性が高いと診断することができる。また、被検体から単離された試料中にα-プロテンシンが低濃度で存在する場合、当該被検体におけるレニン・アンジオテンシン系の活性が低いと結論付けることができる。そして更に、当該被検体が低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に罹患しているか、罹患する可能性が高いと診断することができる。すなわち、本発明における「レニン・アンジオテンシン系の評価方法」には、「高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患の診断方法」又は「低血圧症又は血圧低下に起因する疾患の診断方法」が包含され得る。
【0024】
被検体からの試料中のα-プロテンシン量を測定する際には、健常検体からの試料中におけるα-プロテンシン量を対照値とすることができる。或いは、被検体からの試料中に存在する、レニン・アンジオテンシン系の活性レベルにかかわらず濃度がほぼ一定に保たれるタンパク質又はポリペプチドの濃度を内部標準として採用してもよい。
【0025】
被検体は、哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなど)であれば特に限定されないが、ヒトが特に好ましい。
【0026】
被検体から単離された試料としては、被検体から単離された組織又は血液に由来する試料を使用することができ、特に、組織に由来する試料が好ましい。組織に由来する試料としては小腸、脾臓、腎臓、肝臓、胃、肺、副腎、心臓、脳、膵臓、大動脈等に由来する試料が挙げられる。血液に由来する試料としては血漿が挙げられる。
【0027】
(α-プロテンシンに対する抗体)
α-プロテンシンの定量は、α-プロテンシンに特異的に結合する抗体を用いた免疫学的測定方法により行われることが好ましい。
【0028】
α-プロテンシンに特異的に結合する抗体は、α-プロテンシン、又はα-プロテンシンの部分配列からなるポリペプチドを抗原として用い、常法により作成された抗体を好適に使用できる。α-プロテンシンとAng I及びAng IIとはN末端が共通していることから、α-プロテンシンを抗原として誘導された抗体が、Ang I及びAng IIにも結合性を示すことがある。その場合は、α-プロテンシンのC末端を含む部分配列からなるポリペプチド (例えばIle-His-Pro-Phe-His-Leu-Leu-Tyr、Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ile) を用いたアフィニティカラムによりα-プロテンシン特異的抗体を精製することが好ましい。また、α-プロテンシンのC末端を含む部分配列からなるポリペプチド (例えばIle-His-Pro-Phe-His-Leu-Leu-Tyr、Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ile) を抗原として用いることにより、α-プロテンシン特異的抗体を調製することもできる。
【0029】
抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また抗体はα-プロテンシンに特異的に結合し得る限り断片として使用することもできる。抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab)’断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。
【0030】
モノクローナル抗体は例えば次の手順で作成することができる。
上記の抗原を、動物に対して、抗原の投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。用いられる動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどの哺乳動物が挙げられるが、マウスが好ましい。抗血清中の抗体価の測定は常法により行うことができる。
【0031】
抗原を免疫された動物マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。融合操作は既知の方法、例えば、Nature 256: 495 (1975)記載の方法に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などが挙げられる。骨髄腫細胞としては、例えば、NS-1、P3U1、SP2/0などが挙げられる。
【0032】
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0033】
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様の、例えば塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどを用いた特異的精製法による免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0034】
一方、ポリクローナル抗体は例えば次の手順で作成することができる。
ポリクローナル抗体は、例えば、抗原とキャリアーとの複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、免疫動物からα-プロテンシンに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。ポリクローナル抗体の作成に使用する抗原はモノクローナル抗体の作成におけるのと同様である。抗原とキャリアーとの複合体を形成する際に、キャリアーの種類および抗原とキャリアーとの混合比は、キャリアーに架橋させた抗原に対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよい。キャリアーとしては、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、スカシ貝ヘモシアニン等が用いられる。また、抗原とキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
【0035】
抗原とキャリアーとの複合体は、免疫される動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。用いられる動物としては、モノクローナル抗体作成の場合と同様の哺乳動物が挙げられ、なかでもウサギやヤギが好ましい。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の手順で行なうことができる。
【0036】
(免疫学的測定方法)
本発明に用いることができる免疫学的測定方法としては、特に限定されないが、ラジオイムノアッセイ法 (RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、IRMA(immunoradio metric assay)が挙げられる。なかでもラジオイムノアッセイ法が好ましい。
【0037】
(レニン・アンジオテンシン系の評価用試薬)
本発明はまた、α-プロテンシンに特異的に結合する抗体を含む、レニン・アンジオテンシン系の評価用試薬に関する。
【0038】
本発明の試薬は、必要な試薬とともにキット化することもできる。例えばラジオイムノアッセイ用のキットには放射線標識されたトレーサーペプチドが含まれ得る。
【0039】
キットには更に、標準試料、緩衝液、溶解液、洗浄液、反応停止液、使用説明書などが含まれていてもよい。
【0040】
また、α-プロテンシンに特異的に結合する抗体はチップ上に高密度に貼り付けてプロテインチップとしてよく、このようなプロテインチップも本発明の試薬に包含される。
【0041】
(スクリーニング方法)
本発明はまた、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬、或いは、高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬をスクリーニングする方法に関する。
【0042】
本発明のこの形態では、候補化合物が、α-プロテンシンによる血圧上昇活性又は血管収縮活性を促進する場合には当該候補化合物を低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬と判定し、候補化合物が、α-プロテンシンによる血圧上昇活性又は血管収縮活性を抑制する場合には当該候補化合物を高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬と判定する。
【0043】
血圧上昇活性のアッセイ系としては、実施例に示すように、ラット等の実験動物に候補化合物及びα-プロテンシン(対照実験ではα-プロテンシンのみ)を投与し、血圧上昇を観察するアッセイ系が挙げられる。血管収縮活性のアッセイ系としては、実施例に示すように、大動脈リング試料に候補化合物及びα-プロテンシン(対照実験ではα-プロテンシンのみ)を付与し、リングの収縮を観察するアッセイ系が挙げられる。もちろん、血圧上昇活性又は血管収縮活性を評価することができる方法であれば、これらの例以外のアッセイ系も採用しうる。
【実施例1】
【0044】
ラットα-プロテンシンの単離及び分析
材料及び動物
Ang I(アンジオテンシンI)及びAng II (アンジオテンシンII) は株式会社ペプチド研究所(大阪、日本)より購入した。合成ラットα-プロテンシンは株式会社ベックス (東京、日本)により合成されたものを使用した。6-7週齢のウィスターラットは日本チャールズリバー株式会社より購入した。ニュージーランドシロウサギは九動株式会社(佐賀、日本)より購入した。本実験は動物愛護管理法に従って行われた。本実験はまた、宮崎大学動物実験委員会の承諾を得て行われた。本実験は米国国立衛生研究所により刊行されているthe Guide of the Care and Use of Laboratory Animals (NIH Publication No. 85-23, 1996年改訂)に準拠している。
【0045】
ラットα-プロテンシンの精製及び配列決定
Ang IIのN末端のラジオイムノアッセイ
Ang IIのN末端に対する抗血清を調製する目的で、合成されたAng II-Cysとスカシ貝ヘモシアニンとを室温にて2時間コンジュゲートした。50mM PBS中で透析を4回反復した後、コンジュゲートの溶液を等量のTiter Max Gold (Sigma-Aldrich, 東京、日本)とともにエマルション化し、得られたエマルションをニュージーランドシロウサギに、2週間間隔で3ヶ月間に亘り皮下注射した。特異的なラジオイムノアッセイ(RIA)を、免疫されたウサギから得られた抗血清により調製した。用いた抗血清はAng I及びAng IIIとはそれぞれ50%及び12.5%の交叉反応性を示すが、Ang IV及びAng(1-7)とは交叉反応性を示さない。組織中での免疫反応性N末端Ang IIを評価するために、麻酔をかけたラットから得られた種々の組織1.0gを迅速に10分間煮沸しプロテアーゼを失活させた。その後、試料をホモジェナイズし、12000rpmにて20分間遠心分離した。そして上清をSep-Pak C18カートリッジにより抽出した。0.1%トリフルオロ酢酸60% CH3CNにより溶出した後、ペプチド抽出物を、ODS-120Aカラムを用いた逆相(RP)高性能液体クロマトグラフィー (HPLC) に供した。このHPLCにおける各画分中の免疫反応性N末端Ang IIをラジオイムノアッセイにより測定した。
【0046】
精製手順
上述の方法により380gのラット小腸からペプチド抽出物を得た。なお、ラットの小腸の組織は、RP-HPLC分析においてAng I及びAng IIとは明確に異なる位置で免疫反応性N末端Ang IIの最大のピークを示した。得られた試料をSP (SP Sephadex C-25) カラムに適用し、2.0 mol/Lピリジンにより溶出を行い、次いでSephadex G-50によりゲルろ過を行い、さらに、抗N末端Ang II血清を用いて調製されたアフィニティカラム (Affi-gel Protein A MAPS II Kit, BIO RAD) により精製を行った。これらの精製過程はラジオイムノアッセイにより免疫反応性N末端Ang IIを追跡しながら行った。抽出物をさらに、ODS-120Aカラム, DIPHENYLカラム 及びChamco sorb3-ODS-Hカラムを用いた3段階のHPLCにより精製した。最終的に精製されたペプチドのアミノ酸配列を飛行時間型(TOF)質量分析(MS)装置により決定した。
【0047】
配列決定
最終的に精製されたペプチドのアミノ酸配列及び分子量を決定するために、質量分析及びタンデム質量分析を、四重極飛行時間型質量分析装置であるQTof-2 (Micromass, 英国)を用いて行った。質量分析は、ペプチドをエレクトロスプレイ(ESI)法で正イオン化して実施した。試料を水 / メタノール / 酢酸を容積比 49 : 49 : 2で混合した溶液中に溶解し、オフラインのMSエミッター(Proxeon, Denmark)から1.5kVのキャピラリー電圧と30Vのコーン電圧の条件で、ナノスプレー法でイオン化した。マススペクトラムはm/z200からm/z2000の範囲で得られた。タンデム質量分析には、3価でm/z524.97のものを、衝突エネルギーを 30eVとして設定し、衝突誘起解離させた。データの獲得と処理はMassLynx v4.0(Micromass)を用いて行った。タンデム質量分析の結果はマスコットMS/MSイオンサーチ(Matrixscience,UK)を用いて行い、またPepSeq(Micromass)でも解析した。
【0048】
ex vivo 及びin vivo での薬学的研究
ラットから単離された大動脈を用いて血管収縮に対するラットα-プロテンシンの作用を検討した。大動脈リングに1gの張力をかけた状態で、37℃にて、95% O2及び5% CO2で酸素を供給したKrebs-Henseleit溶液を含有する器官槽中に設置し、60分間静置して平衡化した。大動脈リングの生存性は、60 mM KCl, 10-7mol/L フェニルフリン及び10-6 mol/L アセチルコリンに反応することにより確認した。Ang I, Ang II 及びラットα-プロテンシンを所定の濃度で潅流液に添加する前後において、大動脈リング試料の収縮を記録した。これらのペプチドに対する反応は、アンジオテンシン変換酵素(ACE) 阻害剤である 10-7 mol/L カプトプリルの存在下においても評価した。次に、ラットα-プロテンシンの血圧に対する効果を、通常のラット飼料を与えたラットを用いて確認した。体重250-300gのオスのウィスターラットに50 mg/kgペントバルビタールナトリウムを腹腔内注射して麻酔した。合成ラットα-プロテンシンを生理食塩水中に溶解した溶液を所定の用量にて頚静脈に注射し、注射の前後における血圧及び心拍数を、圧力トランスデューサーに接続された頚動脈カテーテルにより測定した。0.03 mg/kgのカプトプリルを静脈内注射してから2分後において同様の方法によりラットα-プロテンシンを投与し反応を評価した。
【0049】
ラットα-プロテンシンの組織及び血漿中のレベルの測定
組織及び血漿中におけるラットα-プロテンシンのレベルを特異的に測定するために、既に報告しているように、発明者らはペプチドのC末端部分に対応する抗血清を用いたラジオイムノアッセイを開発した。合成ラットα-プロテンシンを、室温にて15分間グルタルアルデヒド法によりウシチログロブリンとコンジュゲート化した。上述の手順により透析したコンジュゲートにより、ニュージーランドシロウサギを免疫した。免疫を行った後、ラットα-プロテンシンのC末端ペプチド (Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Leu-Tyr) を用いたアフィニティカラム (NHS-活性化Sepharose 4 Fast Flow)により抗血清から特異的抗体を精製した。ラットの組織及び血漿中におけるラットα-プロテンシンのレベルを、上記で精製された抗体を用いたRIAにより測定した。次いで、上述のようにSep-Pak C18カートリッジで抽出を行った。このRIAの交差活性は、アンジオテンシノーゲン (1-14) 1.6%と、アンジオテンシノーゲン (1-17) 3.1%であった。しかしながら、Ang I, Ang II, Ang III, Ang IV又はAng (1-7)とは交叉反応性を示さなかった。ラット小腸の抽出物中における免疫反応性C末端α-プロテンシンを分析するために、逆相HPLC (RP-HPLC)分析を上記のようにODS-120Aカラムを用いて行った。
【0050】
統計的分析
すべてのデータは、分散分析(ANOVA)により行い、次いでScheffe’s検定を行うことにより比較した。数値は平均値±S.E.で示す。統計的な有意差はP<0.05に設定した。
【0051】
結果
ラットα-プロテンシンの単離及び同定
Ang II関連ペプチドの単離のための第1ステップとして、ラットの種々の組織から単離されたペプチド試料中の免疫反応性N末端Ang IIを、RP-HPLC及びラジオイムノアッセイを用いて分析した。これらの分析から、本発明者らは小腸等の組織において、免疫反応性N末端Ang IIの3つのピークを見出した(図1a)。図1aにおいて保持時間の最も短いピーク(A) 及びその次のピーク(B)がそれぞれAng II及びAng Iに対応するものであった。興味深いことに、ラット小腸における最大のピーク(C)はAng Iよりも遅く現れた。この結果から、Ang IIのN末端部位に類似する配列を有すると考えられる未知のペプチドの存在が示唆された。そこで本発明者らは、この未知のペプチドを、上記方法の章に示すとおり、380gのラット小腸からイオン交換、ゲルろ過、アフィニティクロマトグラフィー、及びHPLCよりなる複数の過程により精製した。図1bはHPLCによる精製の最終段階を示す。図1bでは当該未知ペプチドが単独のピークとして得られた。最終的に精製されたペプチドの試料を次にTOF質量分析に供したところ、当該未知ペプチドはAng IのC末端に2アミノ酸が付加された、12個のアミノ酸から構成され、アンジオテンシノーゲン(1-12)に相当する新規ペプチドであることが判明した (図1c、図2、及び、配列表の配列番号1参照)。薬学的性質及び組織部分布より、この新規ペプチドは、組織におけるAng IIの前駆体であると想定され、本発明者らはこの新規ペプチドをα-プロテンシンと命名した。
【0052】
ラットα-プロテンシンの血管収縮作用及び昇圧作用
ラットα-プロテンシンの生物学的作用を検討する目的で、本発明者らはラットの大動脈リングの血管緊張に対する作用を観察した。図3に示すように、ラットα-プロテンシンはラット大動脈に対する用量依存的な収縮作用を示した。Ang I及びラットα-プロテンシンの血管収縮作用は3-30 nmol/Lの濃度範囲ではAng IIよりも弱かった。しかし100 nmol/Lにおいては3つのペプチドは同等の収縮作用を示した。ラットα-プロテンシンの血管収縮作用は、ACE 阻害剤であるカプトプリルが存在すると、ほとんど消失した。さらに、本発明者らは麻酔したラットにおいて血圧レベルに対するα-プロテンシンの作用を評価した。ラットにα-プロテンシンを静脈内に単回注射すると動脈血圧の急激な上昇が観察され、その後3-4分間かけて血圧は基底レベルに戻った(図4a)。この昇圧効果は用量依存的であった(図4b)。またカプトプリルをあらかじめ投与した場合には昇圧効果は抑制された(図4c)。これらの結果は上記の大動脈リングでの実験結果と合致する。
【0053】
組織及び血漿中のラットα-プロテンシンレベル
組織分布を検討するために、本発明者らはラットα-プロテンシンのC末端部分を特異的に検出するラジオイムノアッセイを開発し、ラットα-プロテンシンの免疫反応性のレベルを測定した。表1に示す通り、α-プロテンシンはラットの種々の組織においてかなりの濃度で検出された。肺、副腎、膵臓及び大動脈以外ではAng I又はAng IIのレベルよりもα-プロテンシンのレベルのほうが高かった。HPLC分析では小腸における免疫反応性のα-プロテンシンは、合成ラットα-プロテンシンの位置に溶出した(図5)。
【0054】
【表1】

【実施例2】
【0055】
ヒトα-プロテンシンの単離及び分析
材料及び動物
ヒトアンジオテンシノーゲン(1-12)に相当する配列番号2に示すアミノ酸配列からなる合成ヒトα-プロテンシンは株式会社ベックス (東京、日本)により合成されたものを使用した。また実験動物に関しては、実施例1と同様に行った。
【0056】
ヒトα-プロテンシンのC末端のラジオイムノアッセイ
ヒトにおけるα-プロテンシンを単離、同定し、組織や血漿中の濃度を特異的に測定するために、発明者らはペプチドのC末端部分に対応する抗血清を用いたラジオイムノアッセイを開発した。合成ヒトα-プロテンシンを、室温にて15分間グルタルアルデヒド法によりウシサイログロブリンとコンジュゲート化した。上述の手順により透析し、コンジュゲートを作成しニュージーランドシロウサギを免疫した。免疫を行った後、ヒトα-プロテンシンのC末端ペプチド (Ile-His-Pro-Phe-His-Leu-Val-Ile) を用いたアフィニティカラム (NHS-活性化Sepharose 4 Fast Flow)により抗血清から特異的抗体を精製した。この抗体を使用したRIAはアンジオテンシノーゲン (1-14)1.6%、アンジオテンシノーゲン (1-17)0.8%、ラットα-プロテンシン12.5%の交差反応性を示した。しかしながら、Ang I, Ang II, Ang III, Ang IV又はAng (1-7)とは交叉反応性を示さなかった。
【0057】
ヒトα-プロテンシン精製手順
実施例1と同様の手順により125gのヒトの胎盤からペプチド抽出物を得た。得られた試料をSephadex G-50によりゲルろ過を行った。抽出物をさらに、CMカラム、ODS-120Aカラム, DIPHENYLカラム 及びμ-BONDASPHEREカラムやChamco sorb3-ODS-Hカラムを用いてHPLCにより精製した。これらの精製過程はヒトα-プロテンシンのC末端を認識するラジオイムノアッセイを指標として行った。
【0058】
ヒトα-プロテンシン合成品の薬学的研究
ヒトα-プロテンシンの血圧に対する効果を、実施例1に上述したように、通常のラット飼料を与えたラットを用いて、投与量100pmol、200pmolにて確認した。
【0059】
結果
ヒトα-プロテンシンのC精製
ヒト胎盤のペプチド抽出物をゲルろ過して、合成ヒトα-プロテンシンの溶出部位に一致したペプチドの存在を確認した。こうして存在が確認されたヒトα-プロテンシンのアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。上記方法の章に示すとおり、125gのヒト胎盤からゲルろ過、及びHPLCよりなる複数の過程によりヒトα-プロテンシンのC末端を認識するラジオイムノアッセイを指標として精製した。
【0060】
ヒトα-プロテンシン合成品の昇圧作用
麻酔したラットの血圧レベルに対するヒトα-プロテンシンの作用を評価した。ラットにα-プロテンシンを静脈内に注射すると動脈血圧の急激な上昇が観察され、その後3-4分間かけて血圧は基底レベルに戻った。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1はラットα-プロテンシンの単離及び精製の結果を示す図である。図1aはラット小腸における免疫反応性N末端Ang IIのRP-HPLC分析結果を示す。ラット小腸の組織抽出物をRP-HPLCに供し、特異的ラジオイムノアッセイ(RIA)により、各画分の免疫反応性N末端Ang IIを検出した。1 ml/分の流速で0.1%トリフルオロ酢酸を含む10% CH3CNから60% CH3CNへの60分間の濃度勾配にて溶出した。図1bはRP-HPLCによる最終的な精製の結果を示す。図1cは飛行時間型質量分析による配列決定の結果を示す。
【図2】図2は飛行時間型質量分析により決定されたラットα-プロテンシンのアミノ酸配列を示す。
【図3】図3はラット大動脈に対するAng I, Ang II及びラットα-プロテンシンの血管収縮作用を示す。図3ではKClによる血管収縮を100%とした場合の血管収縮率を示す。カプトプリルは10-7mol/Lの濃度で用いた。結果を6-7個の試料からの平均値±S.E.として示す。*はラットα-プロテンシンに対してP<0.05であることを示す。
【図4】図4aは麻酔したラットに50 pmolのラットα-プロテンシンを静脈内に単回注射した後の血圧変化の典型的な記録を示す。図4bはラットα-プロテンシンの用量依存的な昇圧作用を示す。ΔMBPは平均血圧(mean blood pressure, MBP)の基底値からの最大の上昇幅を指す。図4cは、カプトプリルによるラットα-プロテンシンの昇圧作用の抑制作用を示す。カプトプリルを、ラットα-プロテンシンを投与する2分前に所定の用量で投与した。結果は、試験に用いたラットにける平均値±S.E.として示す。*はラットα-プロテンシンに対してP<0.05であることを示す。
【図5】図5はRP-HPLC及びラジオイムノアッセイによる免疫反応性C末端ラットα-プロテンシンの分析結果を示す。RP-HPLCは図1についての説明で記載したのと同様の方法で行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンジオテンシノーゲンのN末端の第1番〜第12番のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドを含有する、低血圧症又は血圧低下に起因する疾患の予防又は治療剤。
【請求項5】
被検体から単離された試料中における、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドの量を測定することを含む、レニン・アンジオテンシン系の評価方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体を含有する、レニン・アンジオテンシン系の評価用試薬。
【請求項8】
低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、
(1) 候補化合物を用意し、
(2) 血圧上昇活性又は血管収縮活性のアッセイ系を用いて、前記候補化合物と請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドとの存在下における血圧上昇活性又は血管収縮活性を測定し、
(3) 上記(2)で測定された活性が、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドは存在するが前記候補化合物は存在しない条件下での血圧上昇活性又は血管収縮活性と比較して高い場合に、前記候補化合物は低血圧症又は血圧低下に起因する疾患に対する治療薬であると判定することを含む方法。
【請求項9】
高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、
(1) 候補化合物を用意し、
(2) 血圧上昇活性又は血管収縮活性のアッセイ系を用いて、前記候補化合物と請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドとの存在下における血圧上昇活性又は血管収縮活性を測定し、
(3) 上記(2)で測定された活性が、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドは存在するが前記候補化合物は存在しない条件下での血圧上昇活性又は血管収縮活性と比較して低い場合に、前記候補化合物は高血圧症又は血圧上昇に起因する疾患に対する治療薬であると判定することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−7482(P2008−7482A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181709(P2006−181709)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】