説明

昇圧型DCDC電源回路

【課題】リアクトルを含む昇圧型DCDC電源回路において、遮断スイッチを作動させてもリアクトルの過大な逆起電力が半導体トランジスタにかからないようにすることである。
【解決手段】昇圧型DCDC電源回路の昇圧回路部の出力側の第2スイッチ素子52の一方側端子とVOUT端子との間に出力側遮断素子54が設けられると共に、第2スイッチ素子52と出力側遮断素子54の接続点とリアクトル46のVIN側との間にバイパス用スイッチ素子56が設けられる。出力遮断状態のときは、EN端子16からのEN信号がHレベルからLレベルに変化するので、出力側遮断素子54がオフされると共に、バイパス用スイッチ素子56がオンして、リアクトル46−ダイオードD2の順方向−バイパス用スイッチ素子56−蓄電装置12のルートが形成され、リアクトル46の逆起電力が回生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧型DCDC電源回路に係り、特にリアクトルを用いて昇圧を行なう昇圧型DCDC電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電池等の1次電源の電圧を所望の電圧に昇圧して負荷等へ供給するために昇圧回路内蔵電源回路が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、直流昇圧回路の従来技術として、ダイオードD1を逆並列接続した半導体スイッチT1とダイオードD2を逆並列接続した半導体スイッチT2とを直列接続した半導体素子直列アームを用い、半導体素子直列アームと並列にコンデンサと負荷とを接続して出力側とし、半導体スイッチT1と並列に直流電源とリアクトルの直列回路を接続して入力側とする昇圧チョッパ回路が示されている。
【0004】
この従来技術の昇圧チョッパ回路は、半導体スイッチT1をオンすることで、直流電源−リアクトル−半導体スイッチT1−接地の経路で電流が流れ、リアクトルにエネルギが蓄積される。そして、次に半導体スイッチT1をオフすることで、直流電源−リアクトル−ダイオードD1−コンデンサ−接地の経路に転流し、リアクトルに蓄えられていたエネルギによりコンデンサに直流電源よりも高い電圧に充電する。ここで半導体スイッチT1のオン・オフ比を適当に設定することで所望の昇圧比の昇圧を行うことができ、負荷に直流電源よりも高い電圧を供給できると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−81696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に述べられている従来技術の昇圧チョッパ回路は、昇圧型DCDC電源回路と呼ばれるが、この昇圧型DCDC電源回路において、負荷への電力供給を遮断するために、例えば、半導体スイッチT2と負荷との間に遮断スイッチを設けることが行なわれる。この場合、半導体スイッチT1はオフであるときに遮断スイッチが作動すると、リアクトルから負荷へ流れていた電流が急に遮断されることになり、リアクトルによって過大な逆起電力が発生し、半導体スイッチT2の電位が跳ね上がる。これにより、半導体スイッチT2が損傷する恐れが生じる。
【0007】
本発明の目的は、遮断スイッチを作動させてもリアクトルの過大な逆起電力が半導体トランジスタにかからないようにできる昇圧型DCDC電源回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る昇圧型DCDC電源回路は、第1ダイオードを逆並列接続した第1スイッチ素子と第2ダイオードを逆並列接続した第2スイッチ素子とを直列接続した半導体素子直列アームと、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子の接続点に他方端が接続され一方端が入力電源側端子となり、入力電源と共に第1スイッチ素子に並列に接続配置されるリアクトルと、半導体素子直列アームの第2スイッチ素子側の一方側端子に一方側端子が接続され、他方側端子が接地されて、半導体素子直列アームと並列に接続配置されるコンデンサと、コンデンサの一方側端子を負荷に接続される出力側端子として、出力側端子の電圧である出力電圧が予め定めた所定の昇圧電圧となるように、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子のオン・オフを制御する昇圧制御回路部と、半導体素子直列アームの第2スイッチ素子側の一方側端子に他方端が接続され、一方端が出力側端子に接続される出力側遮断素子と、半導体素子直列アームと出力側遮断素子の接続点と、リアクトルの入力電源側端子との間に接続されるバイパス用スイッチ素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、半導体素子直列アームの一方側端子と出力側端子との間に出力側遮断素子が設けられると共に、半導体素子直列アームと出力側遮断素子の接続点とリアクトルの入力電源側端子との間に接続されるバイパス用スイッチが設けられる。バイパス用スイッチをオンすることで、出力側遮断素子の作動によりリアクトルに発生する逆起電力を抑制でき、半導体素子直列アームを構成するスイッチング素子の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施の形態の昇圧型DCDC電源回路の構成を説明する図である。
【図2】リアクトルを用いる昇圧回路部の動作の前半部分を説明する図である。
【図3】図2に引き続く動作の後半部分を説明する図である。
【図4】リアクトルを用いる昇圧回路部で、出力側を遮断したときの様子を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の昇圧型DCDC電源回路の昇圧回路部の構成を詳細に説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の昇圧型DCDC電源回路の昇圧回路部の動作を説明するタイムチャートである。
【図7】昇圧回路部の別の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。以下では、昇圧回路部の出力電圧が予め定めた所定の昇圧電圧となるようにする方法として、出力電圧をフィードバックして基準電圧と比較しPWM信号を生成してそのPWM信号による制御を用いるものとして説明するが、これ以外の方法を用いることもできる。例えば、PWM信号でなく、フィードバックを用いた単なるスイッチングのオン・オフ制御としてもよく、予め昇圧比に応じたスイッチングオン・オフ比を定めておくオープンループ制御を用いてもよい。
【0012】
なお、以下でスイッチング素子は、nチャンネル型とpチャンネル型のMOSトランジスタとして説明するが、MOSトランジスタに代えて、MISトランジスタ等他の空間電界トランジスタを用いるものとしてもよい。また、回路構成を適切に変更することで、nチャンネル型とpチャンネル型のMOSトランジスタを、npnトランジスタとpnpトランジスタのバイポーラトランジスタを用いるものとすることもできる。
【0013】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、昇圧型DCDC電源回路20を用いて負荷14に電力を供給する負荷駆動システム10の様子を示す図である。昇圧型DCDC電源回路20は、端子として、VIN端子、VOUT端子、イネーブル端子であるEN端子を有し、内部に昇圧回路部60と、それ以外の昇圧制御回路部等を内蔵する半導体集積回路である。
【0015】
IN端子に接続される蓄電装置12は、昇圧型DCDC電源回路20において入力電源として用いられる電池であって、例えば、携帯電話等に用いられる数Vのバッテリである。なお、図1にはもう1つVIN端子が設けられ、後述するPWM信号生成のためのデータフリップフロップ34のデータとして、蓄電装置12の電圧が用いられる。勿論、昇圧型DCDC電源回路20の中で蓄電装置12の電圧を導く信号線を配置して、このもう1つのVIN端子を設けないものとしてもよい。
【0016】
OUT端子に接続される負荷14は、昇圧型DCDC電源回路20からの昇圧された定電圧電力の供給によって動作するもので、例えば、携帯電話の発光素子等である。
【0017】
EN端子16は、図示されていない外部の制御装置からのイネーブル信号が入力される端子である。以下ではイネーブル信号をEN信号として説明を続ける。ここでは、EN信号がHレベルのときに、VOUTから定電圧電力を出力し、EN信号がLレベルのときに、VOUTからの定電圧電力の出力を止める。これによって、EN信号を用いて負荷14の駆動を制御することができる。Hレベル、Lレベルとは、相対的な状態であるが、それぞれ、電圧が高い状態、低い状態を示す。nチャンネル型MOSトランジスタではゲート端子にHレベルが与えられるとオンし、Lレベルが与えられるとオフし、pチャンネル型MOSトランジスタではゲート端子にHレベルが与えられるとオフし、Lレベルが与えられるとオンする。
【0018】
昇圧型DCDC電源回路20の内部の構成について、昇圧回路部60の前に、それ以外の要素の説明を行う。昇圧回路部60以外の構成要素としては、昇圧回路部60に供給される昇圧用スイッチング信号としてのPWM信号を生成する昇圧制御回路部と、EN端子16から入力されるEN信号を反転するインバータ44がある。インバータ44は、EN信号が供給される先が複数あって、そのMOSトランジスタの極性が相違するために設けられる信号反転素子である。
【0019】
昇圧制御回路部は、昇圧回路部60とインバータ44を除くその他の要素から構成される。2つの抵抗素子22,24は、昇圧回路部60の出力端子でもあるVOUT端子と接地との間に直列に接続されて配置される内蔵抵抗である。抵抗素子22と抵抗素子24の接続点の電圧が、出力電圧VOUTに比例する電圧として、次に述べるエラーアンプ28の他方側入力端子に入力される。
【0020】
エラーアンプ28は、一方側入力端子に基準電圧26が入力され、他方側入力端子に上記の出力電圧VOUTに比例した電圧が入力され、他方側入力端子の電圧と一方側入力端子の電圧との間に差があるときには、その差に基づくエラーフィードバック値を出力する機能を有する差動増幅器である。
【0021】
発振器30は、所定の周期を有するクロック信号を生成して出力する素子または発振回路である。このクロック信号に基づいて、後述する昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52のためのオン・オフ信号の1周期が定められる。
【0022】
PWM制御部32は、三角波とエラーアンプ28の出力であるエラーフィードバック値とを比較して、エラーフィードバック値に対応するデューティ比を有するPWM信号を生成する機能を有する回路である。ここで、三角波の周期は、発振器30から供給されるクロック信号の周期に基づいて設定される。デューティ比は、昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52のためのオン・オフ信号の1周期についてのものである。例えば、昇圧回路部60は、デューティ比が大きいほど昇圧比が高くなるものと設定されるので、PWM制御部32は、昇圧比を変更する機能を有する回路である。
【0023】
上記のように昇圧回路部60においてデューティ比が大きいほど昇圧比が高くなるように設定されるとして説明を続けると、基準電圧と比較して、VOUTが所望の昇圧電圧よりも低いほど、大きなデューティ比を出力するように、PWM制御部32の構成が設定される。
【0024】
データフリップフロップ34は、昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52のためのオン・オフ信号を生成する機能を有する回路である。ここでは、オン・オフ信号の振幅を決めるデータ信号として、蓄電装置12の電圧がD端子に入力され、オン・オフ信号の1周期を定める周期信号として、発振器30からのクロック信号がCL端子に入力され、オン・オフ信号の1周期におけるデューティ比を定めるためにPWM制御部32の出力が立下りリセット信号として用いられるように、RN端子に入力される。
【0025】
データフリップフロップ34は、クロック信号の立上がりでデータ信号を取得してオン・オフ信号のHレベルを生成し、PWM制御部32の出力の立下りをリセット信号として、オン・オフ信号のLレベルとなるタイミングを決める。そして次のクロック信号の立上りで再びオン・オフ信号のHレベルを生成する。これを繰り返して、PWM制御部32で設定されたデューティ比を有するオン・オフ信号を生成し、Q端子に出力する。Q端子の出力信号の反転信号も出力され、図1では、その反転信号を出力する端子を、Qの上に横線を付したQバー端子として示されている。
【0026】
データフリップフロップ34の互いに反転関係のある信号は、昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52にそれぞれ供給されるが、その間に、ラッチ回路36と、NOR回路38と、ドライバ40,42が設けられる。
【0027】
ラッチ回路36は、Q端子、Qバー端子から出力される互いに反転の関係にある2つの信号に遅延があっても、正しく状態を保持するための回路である。NOR回路38は、EN信号がLとなったときに、昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52のうち、接地側のスイッチ素子50を強制的にオフする機能を有するものである。ドライバ40,42は、昇圧回路部60の2つのスイッチ素子50,52のオン・オフを十分に迅速に行なえるようにするための駆動用トランジスタである。
【0028】
ここで、EL信号がHレベルの状態のままのときは、ラッチ回路36とNOR回路38の機能によって、Q端子からHレベル、Qバー端子からLレベルが出力されると、ドライバ40,42には共にHレベルが入力され、Q端子からLレベル、Qバー端子からHレベルが出力されると、ドライバ40,42には共にLレベルが入力される。つまり、EL信号がHレベルの状態のままのときは、第1スイッチ素子50と第2スイッチ素子52は、いずれか一方がオンとのとき、他方がオフとなる。
【0029】
以上で、昇圧型DCDC電源回路20の内部の構成について、昇圧回路部60以外の構成要素の説明が終ったので、次に昇圧回路部60の詳細を説明する。昇圧回路部60は、ダイオードを逆並列接続したスイッチ素子50,52を2つ直列に接続した半導体素子直列アームを用い、半導体素子直列アームと並列にコンデンサ48と負荷14とを接続して出力側とし、接地側のスイッチ素子50と並列に蓄電装置12とリアクトル46の直列回路を接続して入力側とする昇圧チョッパ回路を基本構成とする。そして、半導体素子直列アームの出力側のスイッチ素子52の一方側端子とVOUT端子との間に出力側遮断素子54と、半導体素子直列アームと出力側遮断素子54の接続点とリアクトル46のVIN側との間にバイパス用スイッチ素子56が設けられる。
【0030】
昇圧回路部60の基本構成である昇圧チョッパ回路は、昇圧制御回路部で生成されたオン・オフ信号を用いて、スイッチ素子50をオンさせることで蓄電装置12からリアクトル46に電流を流して電磁エネルギを蓄積し、スイッチ素子50をオフさせてその蓄積させた電磁エネルギとともに蓄電装置12からコンデンサ48に電荷を移して昇圧する機能を有する回路である。
【0031】
図2,3は、昇圧回路部60の昇圧チョッパ回路の部分を抜き出し、昇圧動作を説明する図である。図2は昇圧動作の前半部分を示し、図3はそれに引き続く後半部分を示す図である。
【0032】
昇圧回路部60の昇圧チョッパ回路は、上記のように、リアクトル46と、コンデンサ48と、ダイオードを逆並列接続したスイッチ素子50,52を2つ直列に接続した半導体素子直列アームを含んで構成される。ここで、スイッチ素子50,52を区別して、接地側のスイッチ素子50を第1スイッチ素子50、VOUT側のスイッチ素子52を第2スイッチ素子52と呼ぶことにする。
【0033】
第1スイッチ素子50は、nチャンネル型MOSトランジスタM1で、そのソース端子はnチャンネル型MOSトランジスタの基板と共に接地に接続され、ドレイン端子は第2スイッチ素子52のドレイン端子に接続され、ゲート端子は昇圧制御回路部のドライバ40の出力端子に接続される。
【0034】
第1スイッチ素子50は、第1ダイオードD1が並列に逆接続される。第1ダイオードD1は特別に付加されたものでなくても、第1スイッチ素子50のn型ドレインとp型基板とで形成される寄生ダイオードを用いることができる。逆接続とは、MOSトランジスタの電流の流れる向きとダイオードの順方向とが互いに逆向きとなる接続のことである。第1スイッチ素子50は、nチャンネル型MOSトランジスタM1であるので、ドレイン端子からソース端子に向かって電流が流れる。第1ダイオードD1はアノード側からカソード側へ向かう方向が順方向である。したがって、逆接続とは、第1スイッチ素子50のドレイン端子に第1ダイオードD1のカソードが接続され、第1スイッチ素子50のソース端子に第1ダイオードD1のアノードが接続される状態である。
【0035】
第2スイッチ素子52は、pチャンネル型MOSトランジスタM2で、そのソース端子はVOUT端子に接続され、ドレイン端子はpチャンネル型MOSトランジスタM2の基板と共に第1スイッチ素子50のドレイン端子に接続され、ゲート端子は昇圧制御回路部のドライバ42の出力端子に接続される。
【0036】
第2スイッチ素子52は、第2ダイオードD2が並列に逆接続される。第1ダイオードD1と同様に、第2ダイオードD2は、第2スイッチ素子52のp型ドレインとn型基板とで形成される寄生ダイオードを用いることができる。
【0037】
かかる構成の昇圧動作について、図2は、その動作の前半部分を示す図である。昇圧動作の前半部分は、第1スイッチ素子50がオンとされる期間である。上記のように、EN信号がHレベルであるとき、第1スイッチ素子50には、予め定めた周期についてPWM制御部32で設定されたデューティ比を有するオン・オフ信号がゲート端子に供給される。このデューティ比で与えられるオン期間が、図2の状態である。
【0038】
第1スイッチ素子50がオンとされると、蓄電装置12からの電流は、リアクトル46を通り、第1スイッチ素子50を介して接地へと流れる。換言すれば、蓄電装置12−リアクトル46−第1スイッチ素子50−接地−蓄電装置12と電流が流れる。なお、通常状態では、コンデンサ48の電位であるVOUTは、蓄電装置12の電圧よりも高いので、第2スイッチ素子52がオンしても、蓄電装置12から第2スイッチ素子52を通ってコンデンサ48に電流が流れない。このように、第1スイッチ素子50がオンの期間は、蓄電装置12からリアクトル46に電流が流れ、蓄電装置12のエネルギが電磁エネルギとしてリアクトル46に蓄積される。
【0039】
図3は、昇圧動作の後半部分を示す図である。昇圧動作の後半部分は、第1スイッチ素子50がオフとされる期間である。このオフ期間は、予め定めた周期についてPWM制御部32で設定されたデューティ比を有するオン・オフ信号がゲート端子に供給されるが、このデューティ比で与えられるオフ期間が、図3の状態である。
【0040】
第1スイッチ素子50がオフとされると、蓄電装置12からの電流は、リアクトル46を通り、今度は第2ダイオードD2の順方向を通ってコンデンサ48に流れ込む。このとき、前半部分でリアクトル46に蓄積されたエネルギも共にコンデンサに運ばれるので、コンデンサ48の電位であるVOUTの電圧は、蓄電装置12の電圧よりも高くなる。なお、このときに第2スイッチ素子52がオンしていると、コンデンサ48に過剰にエネルギが蓄積された場合に、第2スイッチ素子52を通して蓄電装置12にその過剰分が回生されるようにできる。このように、第1スイッチ素子50がオフの期間は、蓄電装置12からの電流がリアクトル46に蓄積されたエネルギとともにコンデンサ48に運び込まれて、コンデンサ48の電位であるVOUTが上昇する。これがリアクトル46を用いた昇圧動作である。
【0041】
このようにしてコンデンサ48には、蓄電装置12の電圧よりも昇圧された電圧の電力が蓄積される。この電圧が出力電圧VOUTとなる。そして、昇圧制御回路部のところで説明したように、VOUTが2つの抵抗素子22,24によってエラーアンプ28に戻され、基準電圧26と比較されて、所定の一定電圧となるように、PWM制御部32においてオン・オフ信号のデューティ比が調整される。こうして、VOUTが所定の一定電圧に維持され、VOUT端子から負荷14に定電圧電力として供給される。
【0042】
図4は、負荷14に対する電力の供給を止めるために半導体素子直列アームとVOUT端子との間を遮断したとすると、そのときに生じる状態を説明する図である。このとき、第1スイッチ素子50がオン状態のままであると、蓄電装置12からリアクトル46を通り第1スイッチング素子50に電流が流れ続けることになり、リアクトル46、第1スイッチング素子50に損傷を与えるおそれが生じる。また、蓄電装置12から電流が流れ続けることは、出力側遮断素子54によって出力遮断しても電力消耗を抑制できないことになる。そこで、半導体素子直列アームとVOUT端子との間を遮断するときは、第1スイッチ素子50をオフすることが好ましい。
【0043】
第1スイッチ素子50がオフであるときに半導体素子直列アームとVOUT端子との間が遮断されると、それまで蓄電装置12からリアクトル46を通り第2ダイオードD2の順方向を介してコンデンサ48に流れていた電流が急に遮断されることになる。いままで流れていた電流が急に遮断されると、リアクトル46の電流を流し続けようとする作用により、逆起電力が発生し、半導体素子直列アームのVOUT側の素子である第2スイッチ素子52の電位が跳ね上がる。これによって、第2スイッチ素子52が損傷を受ける恐れがある。
【0044】
図5は、昇圧型DCDC電源回路20において、図4で説明した課題を解決する構成の部分を抜き出して示す図である。ここでは、半導体素子直列アームの出力側の第2スイッチ素子52の一方側端子とVOUT端子との間に出力側遮断素子54が設けられると共に、半導体素子直列アームと出力側遮断素子54の接続点とリアクトル46のVIN側との間にバイパス用スイッチ素子56が設けられる。
【0045】
出力側遮断素子54は、負荷14に対する電力の供給を止めるために半導体素子直列アームとVOUT端子との間を遮断する機能を有する半導体スイッチ素子である。具体的には、出力側遮断素子54は、pチャンネル型MOSトランジスタM3で構成される。ここで、ソースとドレインの接続関係は、pチャンネル型MOSトランジスタM3の寄生ダイオードD3のカソードが、第2スイッチ素子52のソースと接続されるように配置される。
【0046】
すなわち、出力側遮断素子54のドレイン端子はVOUT端子と接続され、ソース端子はpチャンネル型MOSトランジスタM3の基板と共に、第2スイッチ素子52のソースと接続される。ゲート端子は、インバータ44を介してEN端子16と接続される。
【0047】
バイパス用スイッチ素子56は、図4で説明したリアクトル46に生じる逆起電力を蓄電装置12側に回生するルートを形成するために設けられる半導体スイッチである。具体的には、バイパス用スイッチ素子56は、pチャンネル型MOSトランジスタM4で構成される。ここで、ソースとドレインの接続関係は、pチャンネル型MOSトランジスタM4の寄生ダイオードD4のカソードが、第2スイッチ素子52のソースと接続されるように配置される。
【0048】
すなわち、バイパス用スイッチ素子56のドレイン端子はVIN端子と接続され、ソース端子はpチャンネル型MOSトランジスタM4の基板と共に、第2スイッチ素子52のソースと接続される。ゲート端子は、EN端子16と接続される。
【0049】
EN端子16からのEN信号は、昇圧回路部60が作動して、VOUT端子から負荷14に定電圧電力を供給しているときは、Hレベルであるが、負荷14に対して電力供給を止めるときはLレベルとされる。Hレベルのときを通常動作状態、Lレベルのときを出力遮断状態とすると、通常動作状態のときは、出力側遮断素子54にはこれをオン状態とするようにLレベルの信号が与えられ、バイパス用スイッチ素子56にはこれをオフ状態とするようにHレベルの信号が与えられる。また、出力遮断状態のときは、出力側遮断素子54にはこれをオフ状態とするようにHレベルの信号が与えられ、バイパス用スイッチ素子56にはこれをオン状態とするようにLレベルの信号が与えられる。
【0050】
図5には、出力遮断状態における蓄電装置12からの電流の流れが示されている。ここで、第1スイッチ素子50はオフ状態、出力側遮断素子54はオフ状態、バイパス用スイッチ素子56はオン状態である。バイパス用スイッチ素子56が設けられないときには、図4で説明したように、リアクトル46の逆起電力により、第2スイッチ素子52の電位が跳ね上がる。バイパス用スイッチ素子56が設けられ、これがオンすると、リアクトル46−第2ダイオードD2の順方向−バイパス用スイッチ素子56−蓄電装置12の回生ルートが形成される。
【0051】
この回生ルートの形成によって、第2スイッチ素子52の電位の上昇は、(蓄電装置12の電圧VIN)+(リアクトル46を流れる電流)×(バイパス用スイッチ素子56のオン抵抗)に抑制される。このようにして、出力遮断状態において、第2スイッチ素子52の電位の上昇が効果的に抑制されるので、第2スイッチ素子52の損傷が抑制される。
【0052】
バイパス用スイッチ素子56は、そのオン抵抗が第2スイッチ素子52における電位上昇を抑制するのに十分な程度に小さければ足りるので、昇圧効率に関係する出力側遮断素子54のオン抵抗ほど小さくなくてもよい。すなわち、バイパス用スイッチ素子56の寸法は、出力側遮断素子54の寸法よりも小さくできる。
【0053】
図6は、昇圧型DCDC電源回路20の昇圧回路部60に関連する素子の動作状態を説明するタイムチャートである。図6の横軸は時間がとられ、縦軸には、最上段側から最下段側に向かって順に、EN信号、バイパス用スイッチ素子56のpチャンネル型MOSトランジスタM4のオン・オフ状態、出力側遮断素子54のpチャンネル型MOSトランジスタM3のオン・オフ状態、第2スイッチ素子52のpチャンネル型MOSトランジスタM2のオン・オフ状態、第1スイッチ素子50のnチャンネル型MOSトランジスタM1のオン・オフ状態が示されている。
【0054】
EN信号が時間t1においてHレベルからLレベルに状態が変わると、昇圧型DCDC電源回路20は、通常動作状態から出力遮断状態に変わる。図6に示されるように、この時間t1において、バイパス用スイッチ素子56のpチャンネル型MOSトランジスタM4がオフ状態からオン状態に切り替えられる。これによって、図5で説明したリアクトル46に逆起電力が発生したときにこれを回生するルートが形成される。
【0055】
そして、バイパス用スイッチ素子56のpチャンネル型MOSトランジスタM4がオン状態となる時間t1から予め定めた遅延時間をおいた時間t2に、出力側遮断素子54のpチャンネル型MOSトランジスタM3がオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、VOUT端子からの電力供給が遮断される。また、この時間t2において、第1スイッチ素子50のnチャンネル型MOSトランジスタM1が強制的にオフ状態とされる。これによって蓄電装置12からリアクトル46を通り第1スイッチ素子50に向かう電流が止まる。この作用は、NOR回路38にEN信号の反転信号であるHレベルが入力されることで行なわれる。これによって、出力遮断のときに蓄電装置12からリアクトルへの充電を停止させて、蓄電装置12の電力消費を抑制することができる。なお、第2スイッチ素子52はオンでもオフでも構わない。
【0056】
時間t1から時間t2の間の遅延時間は、出力側遮断素子54がオフする際に、リアクトル46に逆起電力が発生したときにこれを回生するルートがすでに形成されるようにするためである。その遅延時間は、特別な遅延素子を設けなくても、インバータ44が設けられていることで実現することができる。1つのインバータ44による遅延時間で不十分なときは、さらに2つのインバータを追加する、適当な抵抗素子を接続する等によって、必要な遅延時間を確保することができる。
【0057】
上記では、スイッチング素子として、nチャンネル型とpチャンネル型のMOSトランジスタを適宜使い分けるものとして説明したが、このチャンネル型は、回路構成における電位関係を適切に変更することで、例えば、nチャンネル型をpチャンネル型に変更し、pチャンネル型をnチャンネル型に変更することができる。図7は、MOSトランジスタをすべてnチャンネル型に揃えた昇圧回路部の構成例を説明する図である。ここでは、図1、図5で説明した構成に対し、3つのpチャンネル型MOSトランジスタがそれぞれnチャンネル型MOSトランジスタに変更されている。
【0058】
この場合でも、ダイオードD1,D2,D3,D4の順方向の向きは変更されない。例えば、図7の構成でも図1、図5の構成と同様に、出力側遮断素子55の寄生ダイオードD3のカソード側と、バイパス用スイッチ素子57の寄生ダイオードD4のカソード側と、第2ダイオードD2のカソード側とが、半導体素子直列アームの第2スイッチ素子53と出力側遮断素子55の接続点にそれぞれ接続される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る昇圧型DCDC電源回路は、リアクトルのエネルギ蓄積作用を利用する電源回路に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 負荷駆動システム、12 蓄電装置、14 負荷、16 EN端子、20 昇圧型DCDC電源回路、22,24 抵抗素子、26 基準電圧、28 エラーアンプ、30 発振器、32 PWM制御部、34 データフリップフロップ、36 ラッチ回路、38 NOR回路、40,42 ドライバ、44 インバータ、46 リアクトル、48 コンデンサ、50 (第1)スイッチ素子、52,53 (第2)スイッチ素子、54,55 出力側遮断素子、56,57 バイパス用スイッチ素子、60 昇圧回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ダイオードを逆並列接続した第1スイッチ素子と第2ダイオードを逆並列接続した第2スイッチ素子とを直列接続した半導体素子直列アームと、
第1スイッチ素子と第2スイッチ素子の接続点に他方端が接続され一方端が入力電源側端子となり、入力電源と共に第1スイッチ素子に並列に接続配置されるリアクトルと、
半導体素子直列アームの第2スイッチ素子側の一方側端子に一方側端子が接続され、他方側端子が接地されて、半導体素子直列アームと並列に接続配置されるコンデンサと、
コンデンサの一方側端子を負荷に接続される出力側端子として、出力側端子の電圧である出力電圧が予め定めた所定の昇圧電圧となるように、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子のオン・オフを制御する昇圧制御回路部と、
半導体素子直列アームの第2スイッチ素子側の一方側端子に他方端が接続され、一方端が出力側端子に接続される出力側遮断素子と、
半導体素子直列アームと出力側遮断素子の接続点と、リアクトルの入力電源側端子との間に接続されるバイパス用スイッチ素子と、
を備えることを特徴とする昇圧型DCDC電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の昇圧型DCDC電源回路において、
出力側遮断素子は、バイパス用スイッチ素子をオンしたときから予め定めた遅延時間を有する遅延タイミングの時期にオフされることを特徴とする昇圧型DCDC電源回路。
【請求項3】
請求項2に記載の昇圧型DCDC電源回路において、
バイパス用スイッチ素子をオンする際に、第1スイッチ素子がオンの状態である場合には、出力側遮断素子をオフする前に、第1スイッチ素子をオフできるように、遅延タイミングが設定されることを特徴とする昇圧型DCDC電源回路。
【請求項4】
請求項3に記載の昇圧型DCDC電源回路において、
バイパス用スイッチ素子は、出力側遮断素子よりも小さな寸法を有することを特徴とする昇圧型DCDC電源回路。
【請求項5】
請求項1に記載の昇圧型DCDC電源回路において、
出力側遮断素子の寄生ダイオードのカソード側と、バイパス用スイッチ素子の寄生ダイオードのカソード側と、第2ダイオードのカソード側とが、半導体素子直列アームと出力側遮断素子の接続点にそれぞれ接続されることを特徴とする昇圧型DCDC電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−85395(P2012−85395A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227675(P2010−227675)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】