説明

昇華インク転写用インクジェット記録媒体及び転写記録方法

【課題】昇華性染料を含有するインクを用いて記録した画像を任意のプリント媒体と重ね合せて加熱することにより昇華性染料をプリント媒体に転写してプリント物を得る記録方法において、インク吸収性に優れ、かつ転写画像の解像性とベタ画像部の発色性にも優れ、裏抜け防止性にも優れたインクジェット記録媒体及び転写記録方法を提供する。
【解決手段】木材繊維からなる支持体の少なくとも片面に2層以上のインク受理性のある塗層を設けてなるインクジェット記録媒体において、支持体に直接塗工される該インク受理性のある塗層が熱可塑性微粒子と結着剤を含有する熱可塑性粒子層であり、その上に形成される該インク受理性のある塗層が顔料と結着剤を主体としてなる多孔質層であり、2層以上の各塗層が該熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されることを特徴とする昇華インク転写用インクジェット被記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華性染料を含有するインクを用いて記録するインクジェット記録媒体に関するものであり、更に詳しくはインクジェット記録後に、任意のプリント媒体と重ね合せて加熱することにより、昇華性染料をプリント媒体に転写する際に使用する昇華インク転写用インクジェット記録媒体とその転写記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途に於いて急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。又、作成部数が少なくて済む用途に於いては、写真技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
又、昇華性染料を含有するインクを使用して、グラビア印刷、オフセット印刷等によって印刷した転写用記録媒体を作成し、布帛等に熱転写する昇華転写捺染方法が従来から知られている。
【0004】
一方、インクジェット記録で作成した画像等を任意のプリント媒体に転写して、プリント物を得る技術も開発されている。例えば、インクジェット記録画像受像層を設け、その受像層が支持体から熱、圧力等により容易に剥離するようにすることによって、任意のプリント媒体に受像層ごと転写する技術が提案されている。
【0005】
更に、昇華性染料を含有するインクを使用して、インクジェット記録し、染料だけを任意のプリント媒体に熱等によって転写する方法も提案されている。例えば、昇華性インクを使用して転写用記録媒体を得ることにより、印刷版が不要になり、小ロットの転写用記録媒体を得る場合でも安価に作ることが出来るという技術、また、昇華性染料を使用したインクでミラーイメージ画像を作成し、任意のプリント媒体に重ね合わせて加熱し、画像をプリント媒体へ昇華転写する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
プリント媒体に良好な画像を昇華転写するために転写用インクジェット記録媒体に求められる特性は、一般的なインクジェット記録シートと同様に、印字濃度、色調の鮮明性、ハジキやムラをなくすためのインク吸収性、汚れをなくすためのインク乾燥性等である。さらに、画像をプリント媒体に昇華転写する際の昇華インクのプリント媒体への高い転写率が要求される。しかし、転写用インクジェット記録媒体が上記の印字濃度、色調の鮮明性等を実現するためには、一般のインクジェット記録シートと同様にできるだけ嵩高、すなわち多孔質な構造とする必要がある。しかし、それはプリント媒体への昇華インクの転写率を低下させてしまう上、昇華インクが裏面への転移するため転写用インクジェット被記録媒体の裏面に当てられているヒーター(熱板)表面を汚し、作業性を低下させてしまう。
【0007】
そこで、転写紙のインク受理層の反対面にバックコートを設けたり、フィルム、あるいは金属泊等を貼り合わせ昇華インクが裏面に転移し、転写率が下がるのを防止する方法が考えられている(例えば、特許文献2〜3参照)が、転写効率をさらに上げる方法が要望されている。
【特許文献1】特開2000−15926号公報
【特許文献2】特開2002−347333号公報
【特許文献3】特開2001−277706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、昇華性染料を含有するインクを用いて記録した画像を任意のプリント媒体と重ね合せて加熱することにより昇華性染料をプリント媒体に転写してプリント物を得る記録方法において、インク吸収性に優れ、かつ転写画像の解像性とベタ画像部の発色性にも優れ、裏抜け防止性にも優れたインクジェット記録媒体及び転写記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究した結果、木材繊維からなる支持体の少なくとも片面に2層以上のインク受理性のある塗層を設けてなるインクジェット記録媒体において、支持体に直接塗工される該インク受理性のある塗層が熱可塑性微粒子と結着剤を含有する熱可塑性粒子層であり、その上に形成される該インク受理性のある塗層が顔料と結着剤を主体としてなる多孔質層であり、2層以上の各塗層が該熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されることによって、前記目的を達成できるインクジェット記録媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
熱可塑性粒子層の塗工量が5g/m2以上15g/m2以下であると好ましい。
【0011】
熱可塑性微粒子の最低造膜温度は50℃以上140℃以下であると好ましい。
【0012】
熱可塑性微粒子がポリオレフィン系熱可塑性微粒子であると好ましく、更にポリオレフィン系熱可塑性微粒子がポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体のいずれかであるとより好ましい。
【0013】
また、本発明はこれらのインクジェット記録媒体に、昇華性染料を含有するインクを用いてインクジェット記録後、任意のプリント媒体と重ね合わせて加熱し、昇華性染料をプリント媒体へ転写することを特徴とする転写記録方法の発明である。
【発明の効果】
【0014】
支持体上に2層以上のインク受理性のある塗層を設けてなるインクジェット記録媒体において、木材繊維からなる支持体に直接塗工される熱可塑性微粒子と結着剤からなるインク受理性のある熱可塑性粒子層を形成し、その上に顔料と結着剤を主体としてなるインク受理性のある多孔質層を形成し、2層以上の各塗層が熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されたインクジェット記録媒体を使用することにより、インク吸収性と画像色彩性に優れたインクジェット画像が得られる。また、任意のプリント媒体と重ね合わせて加熱して昇華性染料をプリント媒体へ転写する際に、支持体上の熱可塑性粒子層が加熱による熱で膜を形成することにより、ヒーター(熱板)の汚れを防止すると共にプリント媒体への昇華性染料の転写効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録媒体について詳細に説明する。本発明の昇華インク転写用インクジェット記録媒体は、木材繊維からなる支持体の少なくとも片面に2層以上のインク受理性のある塗層を設けてなるインクジェット記録媒体である。支持体に直接塗工されるインク受理性のある塗層が熱可塑性微粒子と結着剤を含有する熱可塑性粒子層(以下熱可塑性粒子層と記す)であり、その上に顔料と結着剤を主体としてなるインク受理性のある多孔質層(以下多孔質層と記す)を形成し、インク受理性のある2層以上の各塗層が熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されるものである。
【0016】
本発明において、支持体の上に直接塗工される熱可塑性粒子層とその上に形成される多孔質層は熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されるため、熱可塑性粒子層は完全な膜を形成していないのでインク吸収性を有する塗層を形成する。そのため印刷時のインク吸収性を阻害することはなく、支持体の上に形成された2層以上のインク受理性のある塗層はインク吸収性に優れ、良好な品質の印刷画像を形成することができる。
【0017】
また、任意のプリント媒体と重ね合わせて加熱して昇華性染料をプリント媒体へ転写する熱転写の際に、支持体上の熱可塑性粒子層は加熱による熱で膜を形成し、昇華性染料の支持体側への拡散を防止するバリアー層として働き、ヒーター(熱板)の汚れを防止する。更に昇華性染料の支持体側への拡散を防止するバリアー層により昇華性染料の多孔質層側への拡散量が多くなり、プリント媒体への昇華性染料の転写効率は大幅に向上する。
【0018】
本発明の熱可塑性粒子層について鋭意研究した結果、熱可塑性粒子層の塗工量は5g/m2以上15g/m2以下が好ましいことが判った。5g/m2より少ないと熱転写の際に形成される熱可塑性粒子層の膜の厚さが十分ではなく、バリアー層としての働きが不十分となる。また、15g/m2より多くなるとインク吸収性に影響することがあり、熱可塑性粒子層の上に多孔質層を設けた時にベタ画像の均一性がなくなり、画像品質に悪影響を与えることが判った。熱転写時の処理温度及び熱可塑性粒子層の形成のし易さから熱可塑性微粒子の最低造膜温度は50℃以上140℃以下が好ましい。また、原因は定かではないが、熱可塑性微粒子がポリオレフィン系熱可塑性微粒子であり、該ポリオレフィン系熱可塑性微粒子がポリエチレンまたはエチレン−プロピレン共重合体であれば、バリアー層としての効果が大きいことが判った。
【0019】
本発明で使用できる熱可塑性微粒子としては、例えばポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリクロルスチレン等のポリモノビニリデン芳香族、ポリ塩化ビニル、ポリビニルシクロヘキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のポリオレフィン及びポリハロオレフィン類、ポリメタクリレート、ポリクロルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のα、β−エチレン性不飽和酸のエステル類の重合体等及びこれらの共重合体等が挙げられる。昇華インクの吸収性や昇華性染料の転写性から見ると、より好ましくはポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンである。その理由は定かではないが、熱可塑性微粒子の粒子径や昇華性染料に対する染着性の違いが関係していると推測する。
【0020】
熱可塑性微粒子は、通常平均粒子径(直径)0.01μm〜20μmのものが使用され、特に平均粒子径0.1μm〜10μmのものが好ましく使用される。直径が0.01μmより小さいと形成される空隙が小さくなりすぎ、インクの吸収性を低下させる傾向がある。また、20μmより大きいと熱可塑性粒子層の上に形成する多孔質層の形成に影響を与え、画質が低下する傾向を示す。
【0021】
熱可塑性微粒子の最低造膜温度(MFT)は、50℃以上、140℃以下であることが好ましい。最低造膜温度(MFT)が50℃に満たない場合は、支持体に塗工液を塗工し、乾燥する際に緻密な膜となりやすく、多孔性を得るのが困難となり、インク吸収性が低下する傾向がある。また、最低造膜温度(MFT)が140℃を超える場合は、熱転写の際の処理温度にもよるが、熱可塑性粒子層の成膜化が十分でなくなりバリアー層として働き不十分になる場合がある。
【0022】
一般に熱可塑性微粒子は低温域で高い弾性率を示し、ガラス転移温度(Tg)付近でゴム状にその状態を変化する。多くの熱可塑性微粒子はこのTg付近で造膜を開始し、さらに高温域では流動化する。大部分の熱可塑性微粒子の最低造膜温度(MFT)はほぼTgと一致する。
【0023】
熱可塑性粒子層で使用される結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコール等;無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或いはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性バインダー;ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダーを挙げることができる。これらの結着剤は、単独または複数を併用してもよく、通常は熱可塑性微粒子に対して1〜30質量%を添加して使用され、好ましくは3〜20質量%である。上記の添加量の範囲未満では熱可塑性微粒子の接着性が悪化する傾向になり、添加量の範囲より多くなるとインク吸収性を低下する傾向を示すので好ましくない。
【0024】
熱可塑性粒子層の塗工方法としては、例えば、スライドホッパー方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアーナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等の通常用いられている各種塗工方式が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0025】
塗工後に乾燥する手段としては、一般の公知の方法を用いることができ、限定されない。例えば、熱源により発生した加熱空気を送風した加温器内に搬送する方法、ヒーター等の熱源近傍を通過させる方法等がある。塗工層表面の温度が熱可塑性微粒子の最低造膜温度(MFT)未満の温度で乾燥を行うことができればどんな乾燥方法でもよい。
【0026】
本発明においては、熱可塑性粒子層の上に形成される多孔質層は、インクを吸収・保持して画像が形成される層であり、顔料と結着剤を主体としてなることが好ましい。
【0027】
多孔質層に使用される顔料としては、公知の顔料を一種類以上用いることができる。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、チタンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリスチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料などが挙げられる。上記の中でも多孔質層の主体成分として含有する顔料としては多孔性無機顔料が好ましく、多孔性合成非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナが挙げられ、特に細孔容量の大きい多孔性合成非晶質シリカが好ましい。
【0028】
多孔質層に使用する結着剤としては、例えば、澱粉およびその変性物、ゼラチンおよびそれらの変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリビニルアルコールまたはそのカチオン変性物や、シラノール変性物、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体や、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のラテックス類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸の重合体またはその共重合体等を挙げることができ、単独または二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
多孔質層に含有される結着剤の配合量は、顔料の全固形分に対して、3〜70質量%、好ましくは5〜50質量%であり、3質量%より少ないと多孔質層の塗層強度が不足しやすくなり、70質量%を越えると多孔質層のインク吸収性に影響を与え、画像品質に滲みなどの悪影響を与えることがある。
【0030】
多孔質層には顔料および結着剤に加え、必要に応じて界面活性剤、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等の公知の各種添加剤を使用することもできる。
【0031】
熱可塑性粒子層の上に設けられる多孔質層の塗工量(乾燥固形分)としては、5g/m2以上30g/m2以下が好ましい。塗工量が5g/m2より少なくなると多孔質層のインク吸収性に影響を与え、画像品質に滲みなどの悪影響を与えることがある。また、塗工量が30g/m2より多くなると熱可塑性粒子層との接着性が不良になったり、多孔質層にヒビ割れが発生したりすることがある。この多孔質層はインク吸収性・インク発色性等のインクジェット記録媒体としての適性と品質を向上させる塗工層であり、一層でもよいし、目的に応じて複数の多孔質層を設けてもよい。
【0032】
多孔質層の塗工方法としては、例えば、スライドホッパー方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアーナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等の通常用いられている各種塗工方式が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0033】
また、塗工後に乾燥する手段としては、一般の公知の方法を用いることができ、限定されない。例えば、熱源により発生した加熱空気を送風した加温器内に搬送する方法、ヒーター等の熱源近傍を通過させる方法等がある。塗工層表面の温度が熱可塑性微粒子の最低造膜温度(MFT)未満の温度で乾燥を行うことができればどんな方法でもよい。
【0034】
本発明のインクジェット記録媒体の支持体としては、木材繊維主体の紙、または木材繊維を主体としたシート状物質を挙げることができる。紙の場合に使用される木材パルプは、NBKP、LBKP、NBSP、LBSP、GP、TMPなどの他に、古紙パルプが挙げられ、必要に応じて単独あるいは併用して用いられる。
【0035】
なお、本発明で言う古紙パルプの原料としては、(財)古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。さらに具体例としては、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙などのプリンター用紙、およびPPC用紙などのOA古紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙などの塗工紙、あるいは上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートンなどの非塗工紙などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが使用されるが、印字、複写、印刷、非印刷を問わず特に限定されるものではない。
【0036】
本発明において、紙料中には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜配合することもできる。
【0037】
本発明のインクジェット記録媒体支持体の抄紙方法において、抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を適宜使用できる。
【0038】
本発明における支持体には、帯電防止性、搬送性、カール防止性、筆記性、糊付け性等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には、無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、滑剤、界面活性剤等を適宜組み合わせて含有させることができる。
【0039】
本発明に用いる支持体の厚さについては特に制限する必要はないが、ハンドリング性とプリンタの通紙適性から、50〜300μm程度のものが好ましい。
【0040】
昇華性染料としては、カチオン染料又は分散染料がある。例えば分散染料としては、アゾ系及びアゾ誘導体、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメチン系、キサンテン系、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体、スチロジピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、スチリル系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、トリアジン系、チクリジン系、ジアジン系、ローダミンラクタム系等の染料が挙げられる。また、「WHITE SERIES No.78昇華型感熱転写記録技術」(田口信義監修、株式会社トリケップス発行、昭和63年5月31日)に昇華性色素の代表的なものが記されている。
【0041】
また、これらの染料は1成分のみでなく、2種以上を混合して用いても良い。これ等の染料を樹脂微粒子中に含有させて、液体中に分散させインクとする。例えば、樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用い、分散染料をテトラヒドロフラン中に分散させ、高沸点飽和炭化水素中に分散しながら投入することによって、高沸点溶剤タイプのインクとすることが出来る。また、同様に水ベースのインクの作製も可能である。
【0042】
本発明の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を用いての熱転写物の作製は、被記録媒体の記録画像面を昇華性染料の定着性を向上する処理が施されたプリント媒体と重ね合わせ、熱転写用プレス機等を用いて、それぞれのプリント媒体に適した転写温度と転写時間で処理をして作製する。プリント媒体としては、ポリエステエルフィルムを基本としたフィルム素材、アルミ、ステンレスなどの金属素材、ポリエステル布素材などがある。
【0043】
実施例
以下に本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。なお、配合において示す部数は実質成分(固形分)の数量である。
【0044】
<支持体の作製>
濾水度450mlCSFのLBKP70部、濾水度450mlCSFのNBKP30部から成る木材パルプ100部に、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5部、市販アルキルケテンダイマー0.1部、市販カチオン系アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉10部、硫酸バンド0.5部を水に混合し、スラリーを調製後、長網抄紙機を用いて坪量100g/m2で抄造し、市販酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量5g/m2を付着させて乾燥して支持体を得た。
【0045】
<多孔質層塗工液>
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B:株式会社トクヤマ製)100部、ポリビニルアルコールのシラノール変性物(R1130:クラレ株式会社製)30部、カチオン性ポリマー(スミレーズレジン1001:住友化学工業株式会社製)20部を水に混合し、固形分濃度16%に調整して塗工液を得た。
【実施例1】
【0046】
熱可塑性微粒子としてポリゾールAT−2000(スチレン・アクリル系共重合体、MFT=85℃:昭和高分子株式会社製)100部、結着剤としてスミカフレックスS−400(エチレン・酢酸ビニル系共重合体エマルジョン:住友化学工業株式会社製)20部を水に混合し、固形分濃度を25%に調整して塗工液を作製した。塗工液を乾燥後の塗工量が8g/m2になるように上記支持体の一方の面にエアーナイフコーターで塗工し、乾燥して熱可塑性粒子層を設けた。この時、乾燥時の熱可塑性粒子層の表面温度は80℃であった。さらに多孔質層塗工液を乾燥後の塗工量が10g/m2になるように熱可塑性粒子層の上にエアーナイフコーターで塗工し、乾燥して多孔質層を設けた。この時、乾燥時の多孔質層の表面温度は80℃であった。次にこれをスーパーカレンダー処理して本発明の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例2】
【0047】
実施例1における熱可塑性微粒子をアクアテックスMC−4400(エチレン・酢酸ビニル系共重合体、MFT=85℃:中央理化工業株式会社)に替える以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例3】
【0048】
実施例1における熱可塑性微粒子をアクアテックスAC−3100(エチレン・メタクリル酸系共重合体、MFT=90℃:中央理化工業株式会社製)に替える以外は、実施例1と同様の方法で実施例3の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例4】
【0049】
実施例1における熱可塑性微粒子をポリオレフィン系熱可塑性微粒子のケミパールWP−100(ポリプロピレン、MFT=142℃:三井化学株式会社製)に替え、乾燥時の熱可塑性粒子層及び多孔質層の表面温度が100℃であった以外は、実施例1と同様の方法で実施例4の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例5】
【0050】
実施例1における熱可塑性微粒子をポリオレフィン系熱可塑性微粒子のケミパールM−200(ポリエチレン、MFT=105℃:三井化学株式会社製)に替え、乾燥時の熱可塑性粒子層及び多孔質層の表面温度が95℃であった以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例6】
【0051】
実施例1における熱可塑性微粒子をポリオレフィン系熱可塑性微粒子のケミパールA−100(エチレン・プロピレン系共重合体、MFT=85℃:三井化学株式会社製)に替える以外は、実施例1と同様の方法で実施例6の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例7】
【0052】
実施例5における結着剤をヨドゾールAD−81B(スチレン・アクリル系共重合体エマルジョン:日本エヌエスシー株式会社製)に替える以外は、実施例5と同様の方法で実施例7の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例8】
【0053】
実施例5における結着剤をモビニール760H(酢酸ビニル・アクリル系共重合エマルジョン:クラリアントポリマー株式会社製)に替える以外は、実施例5と同様の方法で実施例8の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例9】
【0054】
実施例5における熱可塑性粒子層の塗工量を4g/m2とする以外は、実施例5と同様の方法で実施例9の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【実施例10】
【0055】
実施例5における熱可塑性粒子層の塗工量を17g/m2とする以外は、実施例5と同様の方法で実施例10の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【0056】
(比較例1)
実施例1における熱可塑性微粒子をアクアテックスES−50(アクリル・スチレン系共重合体、MFT=28℃:中央理化工業株式会社製)に替える以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【0057】
(比較例2)
実施例1の熱可塑性微粒子を使用しない以外は、実施例1と同様の方法で比較例2の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【0058】
(比較例3)
実施例7の熱可塑性微粒子を使用しない以外は、実施例7と同様の方法で比較例3の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【0059】
(比較例4)
実施例8の熱可塑性微粒子を使用しない以外は、実施例8と同様の方法で比較例4の昇華インク転写用インクジェット記録媒体を得た。
【0060】
〈試験方法〉
インク受理性
実施例および比較例で作製した昇華インク転写用インクジェット記録媒体のインク受理性を評価した。インクジェットプリンタ((株)ミマキエンジニアリング JV2−130II)を用いて、昇華インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)による写真画像を記録媒体上に印刷し、インクの溢れ程度を目視で判定して、インク吸収性、解像性を評価した。A,Bが実用できるレベルである。
A:インク吸収性、解像性ともに良好。
B:解像性がやや劣るが実用上全く問題が無い。
C:解像性が悪く、ニジミが発生する。
D:解像性、吸収性共に悪く、ニジミが大きい。
【0061】
昇華性染料転写性
インク受理性の評価に使用した記録媒体の画像面を昇華性染料の定着性を向上する処理が施されたプリント媒体(白色ポリエステルフィルム;紀和化学社製)に重ね合せ、さらに記録媒体の裏面にも昇華性染料の裏抜け評価用として同じ白色ポリエステルフィルムを重ね、熱転写用プレス機(INSTA社製;手動ワイドスインガーModel 221)を用い、140℃、10分間加熱し、昇華性染料をプリント媒体に転写した。プリント媒体は、(1)解像性の評価、(2)ベタ画像部の評価(ベタ画像部の画像濃度と均一性)に分けて目視で判定して昇華性染料転写性を評価した。解像性はA,B,Cが、画像濃度はA,Bのものが実用できるレベルである。
(1)解像性
A:解像性良好。
B:解像性がやや劣るが、実用上全く問題が無い。
C:解像性がやや悪いが、条件によって使用可能。
D:解像性が悪く、使用不可。
(2)ベタ画像部
A:画像濃度が高く、ベタ画像部にムラがない。
B:画像濃度が高く、ややベタ画像部にムラがあるが実用上全く問題がない。
C:画像濃度は高いが、ベタ画像部にムラが認められる。
D:画像濃度がやや低く、ベタ画像部にムラが認められる。
E:画像濃度が低く、ベタ画像部に多くのムラが認められる。
【0062】
昇華性染料裏抜け防止性
裏抜け評価用の白色ポリエステルフィルムに染着した昇華性染料の濃度を目視で判定して裏抜け防止性を評価した。裏移りが無いA,Bが実用できるレベルである。
A:昇華性染料の裏抜けが全くない。
B:僅かに昇華性染料の裏抜けがあるが実用上全く問題がない。
C:昇華性染料の裏抜けが認められ、裏移りが発生する。
D:昇華性染料の裏抜けが多く認められ、装置を汚す危険性がある。
【0063】
【表1】

【0064】
評価:
表1より明らかなように、本発明はインク受理性に優れ、転写画像の解像性とベタ画像部の発色性にも優れ、裏抜け防止性に優れた昇華インク転写用のインクジェット記録媒体及び転写記録方法を提供するものである。比較例の記録媒体は支持体に直接形成された塗層のインク吸収性とバリアー性が不十分なため、インク受理性が悪く、裏抜け防止性も不十分な記録媒体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材繊維からなる支持体の少なくとも片面に2層以上のインク受理性のある塗層を設けてなるインクジェット記録媒体において、支持体に直接塗工される該インク受理性のある塗層が熱可塑性微粒子と結着剤を含有する熱可塑性粒子層であり、その上に形成される該インク受理性のある塗層が顔料と結着剤を主体としてなる多孔質層であり、2層以上の各塗層が該熱可塑性微粒子の最低造膜温度未満の乾燥温度で形成されることを特徴とする昇華インク転写用インクジェット記録媒体。
【請求項2】
該熱可塑性粒子層の塗工量が5g/m2以上15g/m2以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
該熱可塑性微粒子の最低造膜温度が50℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
該熱可塑性微粒子がポリオレフィン系熱可塑性微粒子である請求項1〜3のいずれか一項記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
該ポリオレフィン系熱可塑性微粒子がポリエチレンまたはエチレン−プロピレン共重合体である請求項4記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のインクジェット記録媒体に、昇華性染料を含有するインクを用いてインクジェット記録後、任意のプリント媒体と重ね合わせて加熱し、該昇華性染料をプリント媒体へ転写することを特徴とする転写記録方法。

【公開番号】特開2007−118532(P2007−118532A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317138(P2005−317138)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】