昇降装置
【課題】 可動フロアが停止するときの上部位置付近または下部位置付近における移動速度を、その途中での移動速度よりも低速化して停止時の騒音の発生を低減することが可能な昇降装置を提供する。
【解決手段】 可動フロア11を上部位置と下部位置との間で昇降させる車両用フロアリフト装置Sであって、昇降手段20は、駆動手段40によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部(スライドバー22,駆動バー27)と、駆動力伝達部が変位することによって可動フロア11を上下方向に移動させる昇降部とを備え、駆動手段40は、駆動モータ41と、クランク機構43とを備え、クランク機構43は、上部位置付近および下部位置付近の可動フロア11の移動速度を、中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、駆動力伝達部の変位速度が可動フロア11の位置に応じて異なるように駆動力を駆動力伝達部へ伝達する。
【解決手段】 可動フロア11を上部位置と下部位置との間で昇降させる車両用フロアリフト装置Sであって、昇降手段20は、駆動手段40によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部(スライドバー22,駆動バー27)と、駆動力伝達部が変位することによって可動フロア11を上下方向に移動させる昇降部とを備え、駆動手段40は、駆動モータ41と、クランク機構43とを備え、クランク機構43は、上部位置付近および下部位置付近の可動フロア11の移動速度を、中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、駆動力伝達部の変位速度が可動フロア11の位置に応じて異なるように駆動力を駆動力伝達部へ伝達する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降装置に係り、特にフロアの段部において可動フロアを上下移動させてフロア間高低差を緩和する昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワンボックスカー等の車両においては、車両フロアが比較的高く設定されているため、乗降口側には一段低くなるように乗降用ステップが設けられている。
しかし、車両フロアに乗降用ステップを設けると、その分だけ車両フロアの有効面積が小さくなってしまう。また、乗降用ステップの側部や後部に設置された座席に乗員が着座したとき、足元に形成された乗降用ステップによる凹部空間によって、乗員が不自然な着座姿勢を強いられたり、あるいは凹部空間へ荷物が落下してしまったりするという不都合があった。そこで、これらの事情に鑑み、種々の車両用フロアリフト装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の昇降装置では、乗降用ステップにリンク機構を介して可動フロアが配設されており、このリンク機構がスライドドアの開閉動作に連動して駆動されることによって、スライドドアの閉時には可動フロアが乗降用ステップの底面近傍から車両フロアと同一面まで上昇し、スライドドアの開時には可動フロアが車両フロア付近から乗降用ステップの底面近傍まで下降するように構成されている。このように、特許文献1に記載の昇降装置では、スライドドアの閉時には乗降用ステップの上部空間を塞いで車両フロアの面積を拡大できるようになっている。
【0004】
詳しくは、特許文献1に記載の昇降装置のリンク機構では、一端が乗降ステップ側に回動可能に固定された従動リンクと、この従動リンクの他端に回動可能に一端が連結され他端がスライドドアに連結される軸に取付けられた駆動リンクとを備えており、上記従動リンクと駆動リンクの連結部には、可動フロアの裏面側で転動するローラが配設されている。この構成により、スライドドアに連動して軸が水平移動すると、駆動リンクの他端が水平方向に移動し、この移動によって従動リンクと駆動リンクとが屈曲する。この屈曲によってローラは可動フロアの裏面側で転動しながら、可動フロアを上下方向に移動させることができる。
【0005】
また、観覧席用の可動フロアを昇降させる昇降装置として、可動フロアを駆動リンクと従動リンクを中間位置で回動可能に連結した、いわゆるXリンク機構で上下移動させるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の昇降装置では、駆動リンクの一端は可動フロアに回動可能に連結され、他端は水平方向に形成された長孔によって摺動規制されている。
特許文献2に記載の昇降装置の駆動手段は、正逆回動可能な駆動軸と、この駆動軸に一端が固定された回動アームと、この回動アームの他端に回動可能に連結された昇降動作用リンクを備えている。この昇降動作用リンクは、駆動リンクの他端に回動可能に連結されている。
【0006】
このような構成により、駆動軸が正逆回転すると、回転方向に応じて昇降動作用リンクが駆動リンクの他端を長孔に沿って進退動させる。これにより、Xリンクが屈曲して可動フロアを上下移動させるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−207673号公報(第2−3頁、図1、図3)
【特許文献2】特開平10−196143号公報(第3−4頁、図3−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の昇降装置では、リンク機構の構成上、スライドドアを開けていくと、可動フロアは、上側(上部位置付近)では下降速度が小さく、下側(下部位置付近)では下降速度が大きくなる。したがって、可動フロアは停止時に乗降ステップと勢いよく衝突して騒音を発生させてしまうおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2に記載の昇降装置の駆動手段は、回転アームが上方へ向いた位置にあるときに可動フロアを下部位置に保持し、回転アームが上方を向いた位置から約90度回動して水平方向を向いたときに可動フロアを上部位置に保持するように構成されている。駆動軸が等速度で回動すると、可動フロアは、上部位置付近では下降速度が小さく、下部位置付近では下降速度が大きくなる。したがって、特許文献2に記載の昇降装置においても、可動フロアは停止時に下部構成部材と勢いよく衝突して騒音を発生させてしまうおそれがあった。
また、このような騒音の発生を防止するために、特許文献2の構成において駆動軸の回転速度を制御して、可動フロアがいわゆるスローストップするように構成した場合には、その制御が複雑となってコスト高になってしまう。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動フロアが停止するときの上部位置付近または下部位置付近における移動速度を、その途中での移動速度よりも低速化して停止時の騒音の発生を低減することが可能な昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明によれば、可動フロアと、該可動フロアを上部位置と下部位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段を駆動する駆動手段と、を備えた昇降装置であって、前記昇降手段は、前記駆動手段に連結され該駆動手段によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に連結され該駆動力伝達部が変位することによって前記可動フロアを上下方向に移動させる昇降部と、を備え、前記駆動手段は、駆動力を発生する駆動部と、該駆動部による駆動力を前記駆動力伝達部に伝達する連結機構と、を備え、該連結機構は、前記上部位置付近および前記下部位置付近の前記可動フロアの移動速度を、前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、前記駆動力伝達部の変位速度が前記可動フロアの位置に応じて異なるように前記駆動力を前記駆動力伝達部へ伝達することにより解決される。
【0012】
このように、本発明の昇降装置では、昇降手段が駆動手段によって駆動されることにより可動フロアを上下動させる。そして、駆動手段を構成する連結機構は、可動フロアの位置によって駆動部からの駆動力を異なるように伝達するよう構成されている。すなわち、上部位置付近および下部位置付近では中間位置よりも可動フロアの移動速度を低速化するために、連結機構は昇降手段の駆動力伝達部の変位速度を異ならせるように構成されている。これにより、本発明の昇降装置では、機構的に可動フロアをスロースタート,スローストップさせることが可能となり、停止時に衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【0013】
また、前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置付近および前記下部位置付近にあるときには、前記可動フロアが前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近にあるときよりも、前記駆動力伝達部の変位速度を小さくするように構成することができる。
【0014】
また、前記連結機構は、前記駆動部の出力軸に一端が固定され該出力軸と共に回動するクランクアームと、該クランクアームの他端に回動可能に一端が連結されると共に他端が前記駆動力伝達部に回動可能に連結された連結リンクと、を備え、前記連結機構は、前記駆動部の出力軸が回動することによって、前記駆動力伝達部を進退動させるように構成することができる。
このように構成すると、出力軸の回動によってクランクアームが回動し、これによって連結リンクに連結された駆動力伝達部を進退動させることができる。そして、出力軸が等速回転しても、回動角度によって連結リンクの他端に連結された駆動力伝達部の進退動方向への変位速度を異ならせることができる。これにより、可動フロアの上下方向の移動速度を異ならせることが可能となる。
【0015】
また、前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置および前記下部位置にあるときに、前記クランクアームと前記連結アームが前記駆動力伝達部の進退動方向において略直線状に並ぶように配設されると好適である。このように構成すると、上部位置および下部位置において可動フロアに下向き荷重が掛かり、この荷重が昇降手段を介して駆動手段に伝達されても、出力軸を回動させる回動力とはならない。したがって、下向き荷重によって可動フロアが不用意に沈み込んでしまうことを防止することができる。
【0016】
また、前記駆動部は、前記可動フロアの前記上部位置と前記下部位置の間の1往復動作に対応して、前記出力軸を1回転させると好適である。このように構成すると、出力軸を一方向のみに回転させればよいので、駆動部の構成を簡単にすることができる。
【0017】
また、少なくとも前記可動フロアまたは前記昇降手段には緩衝材が配設され、前記可動フロアが下部位置に到達するときに前記可動フロアと前記昇降手段の当接部位同士または該昇降手段間の当接部位同士が前記緩衝材を介して互いに当接するように構成すると好適である。このように構成すると、下部位置において衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の昇降装置では、駆動手段から昇降手段への駆動力の伝達速度を可動フロアの位置に応じて異ならせ、可動フロアが上部位置付近と下部位置付近では中間位置よりも低速で移動するように構成されたので、可動フロアの停止時に衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図12は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は車両用フロアリフト装置の車載状態の説明図、図2は図1に示す車両用フロアリフト装置の構成図、図3は可動フロアリフタの斜視図、図4は可動フロアリフタの作動機構の斜視図、図5は可動フロアリフタの断面図、図6は可動フロアリフタの緩衝材の作動説明図、図7は駆動バーとスライドバーの連結部位の説明図、図8は可動フロアリフタの動作説明図、図9は駆動バーとリンクガイドの部分拡大図、図10は可動フロアリフタの動作説明図、図11はクランク機構の動作説明図、図12はクランク機構の回動角度と先端位置の関係を表すグラフである。
【0020】
以下に本発明の昇降装置を車両用フロアリフト装置に適用した一実施形態について説明する。本例の車両用フロアリフト装置Sは、例えば、ワンボックスカーや、いわゆるミニバン等に好適に搭載されるものである。図1に示すように、車両1には、車両フロア2の乗降口3に一段下がったステップ面である乗降用ステップ4を形成する凹部空間5が設けられている。そして、この乗降口3はスライド式のドア6によって開閉される。
本例の車両用フロアリフト装置Sは、この乗降用ステップ4上の凹部空間5内で可動フロア11をドア6の開閉動作に連動して昇降させるものである。可動フロア11は、乗降用ステップ4近傍の下部位置である乗降位置と、車両フロア2近傍で車両フロア2と略面一な上部位置であるフロア展開位置との間で昇降可能である。
本例の可動フロア11は、ドア開時には乗降し易くするために乗降位置まで降下し、ドア閉時には車両フロア2の有効面積を拡張するためにフロア展開位置まで上昇する。なお、図1では理解の容易のため、ドア6は開いているが可動フロア11をフロア展開位置まで上昇させた状態を示している。
【0021】
本例では、車両フロア2が地表面に対して車両進行方向に所定角度(本例では約5度)だけ前傾している。しかしながら、乗降用ステップ4は地表面と平行になるように略水平に形成されている。したがって、乗降用ステップ4と車両フロア2とは平行に構成されていない。
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、可動フロア11が乗降位置では乗降用ステップ4および地表面と略平行となり、フロア展開位置では傾斜した車両フロア2と略面一となるように昇降される。つまり、本例では可動フロア11は、水平に保持される乗降位置から傾斜状態に保持されるフロア展開位置に向けて徐々に前傾するように姿勢を変えながら上昇するように構成されている。
【0022】
車両用フロアリフト装置Sの概略構成を図2に示す。図2に示すように、本例の車両用フロアリフト装置Sは、駆動モータ41によって可動フロア11を昇降させる可動フロアリフタ10と、駆動モータ41の作動を制御する中央制御部50と、中央制御部50からの制御信号に基づいて駆動モータ41に電源を供給する電源供給部52と、ドア6の開閉状態を検出して検出信号を中央制御部50へ出力するドア開閉検出部60を主要構成要素としている。
【0023】
可動フロアリフタ10は、図3に示すように、車両1に対して着脱自在なワンユニット化された装置として構成されており、樹脂材料等により形成された板状部材である可動フロア11と、乗降口3の凹部空間5に配設可能に形成されたステップカバー13と、可動フロア11を昇降動作させる昇降手段20と、昇降手段20を駆動する駆動手段40を主要構成要素としている。なお、図3(A)は可動フロア11が乗降位置にある状態を示しており、図3(B)は可動フロア11がフロア展開位置にある状態を示している。
【0024】
本例のステップカバー13は、凹部空間5に嵌め込んで装着可能なように樹脂材料により一体に形成されたものであり、凹部空間5に沿う車両フロア2の一部を覆うように形成された上面部13aと、乗降用ステップ4を囲む車両の側壁を覆うための背面部13cと、乗降用ステップ4の車両前後側の側面をそれぞれ覆う側面部13b,13dと、乗降用ステップ4上を覆う底面部13eから構成されている。側面部13b,背面部13c,側面部13dは、上面部13aの縁部から下方へ延出するように一体に形成されている。また、底面部13eは、側面部13b,背面部13c,側面部13dと連繋されて一体に形成されている。可動フロア11は、底面部13e上を昇降動作する。
【0025】
図4に昇降手段20および駆動手段40の斜視図を示す。
駆動手段40は、駆動モータ41と、駆動モータ41と一体に連結された減速機構42と、垂直方向に突出する減速機構42の出力軸42aに連結されたクランク機構43とを有している。クランク機構43は、出力軸42aに一端が固設されたクランクアーム44と、クランクアーム44の他端に回動可能に一端が連結された連結リンク45からなる。連結リンク45の他端は昇降手段20に回動可能に連結されている。本例の駆動モータ41,減速機構42は、本発明の駆動力を発生する駆動部に相当し、クランク機構43は駆動力を昇降手段20へ伝達する連結機構に相当する。
【0026】
本例の駆動手段40では、中央制御部50からの制御信号に応じて駆動モータ41が一方向へ回転するように構成されている。すなわち、可動フロア11が乗降位置にある状態から、駆動モータ41が所定方向へ所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11がフロア展開位置まで移動する。また、可動フロア11がフロア展開位置にある状態から、駆動モータ41が同方向へ所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11が乗降位置まで移動する。
このような可動フロア11の1往復動作(展開動作および格納動作)において、出力軸42aに基端部が固定されたクランクアーム44は、それぞれ略180度回動し、1回転してもとの位置へ戻るように構成されている。
【0027】
可動フロア11が乗降位置にあるときには、クランクアーム44の先端は昇降手段20と反対方向を向いており、クランクアーム44は連結リンク45と上下に重なって直線状に並んで、連結リンク45を最も駆動モータ41側へ引き込んでいる。詳しくは、連結リンク45には後述するように駆動バー27が回動可能に連結されており、乗降位置では、駆動バー27の摺動方向に、駆動バー27と連結リンク45の回動連結点,出力軸42a,連結リンク45とクランクアーム44の回動連結点がこの順に直線状に並ぶように構成されている。
なお、駆動バー27はクランク機構43に駆動されることによって進退動するように構成されているが、この進退動方向の延長線上に出力軸42aが配設されている。そして、クランクアーム44が回転することによって、連結リンク45を介して駆動バー27(およびスライドバー22)は往復動可能となっている。
【0028】
一方、可動フロア11がフロア展開位置にあるときには、クランクアーム44の先端は昇降手段20側へ向いており、クランクアーム44は連結リンク45と直線状に並んで、連結リンク45を最も昇降手段20側へ押し出している(図4参照)。詳しくは、フロア展開位置では、駆動バー27の摺動方向に、駆動バー27と連結リンク45の回動連結点,連結リンク45とクランクアーム44の回動連結点,出力軸42aがこの順に直線状に並ぶように構成されている。
【0029】
このように本例では、乗降位置およびフロア展開位置において、クランク機構43が直線状に並ぶように構成されているので、可動フロア11に下向きの荷重が掛かっても、昇降手段20およびクランク機構43を介して出力軸42aには、これを回動させるトルクは掛からない。したがって、不用意に可動フロア11が下方へ移動してしまうことを防止することができる。
なお、本例では、出力軸42aを同方向へ一回転させることによって可動フロア11を乗降位置とフロア展開位置との間で1往復動作させるように構成しているので、駆動モータ41の回転方向を切り替える必要がなく構成を簡単にすることができる。しかし、これに限らず、展開動作と格納動作で駆動モータ41の回転方向を反転させて、それぞれの動作においてクランクアーム44を略180度反対方向へ回動させるように構成してもよい。
【0030】
昇降手段20は、ステップカバー13の底面部13eに固定される長尺な部材である下部のリンクガイド21と、リンクガイド21に形成されたガイド溝内を長手方向に沿って案内される長尺なスライドバー22と、スライドバー22に一端が回動可能に取付けられた駆動リンク23A,24A,25Aと、駆動リンク23A,24A,25Aの中間部位に一端が回動可能に連結され他端がリンクガイド21に回動可能に連結された従動リンク23B,24B,25Bと、駆動リンク23A,24A,25Aの他端が回動可能に連結された上部のリンクガイド26(図5,図8参照)と、スライドバー22と連動してリンクガイド21の長手方向に沿って移動するように連結された駆動バー27を主要構成要素としている。
【0031】
駆動リンク23A,24A,25Aと、これらにそれぞれ連結された従動リンク23B,24B,25Bは、本発明の昇降部に相当する。
また、スライドバー22およびこれと連動する駆動バー27は、本発明の駆動力伝達部に相当する。
【0032】
駆動リンク23A,24A,25Aは、駆動手段40に近い側からこの順に略等間隔にスライドバー22に取付けられている。スライドバー22には、側端から上側へ延出するように一対のリンク取付部22Aが長手方向の3箇所に略等間隔に離間して形成されている。各駆動リンクは、スライドバー22を挟んで平行に配設された一対の同じ作動長さのリンク部材と、これらの上下端部をそれぞれ連結する連結ロッド28で構成されている。一対のリンク部材は、これらの下端部を連結する連結ロッド28がスライドバー22のリンク取付部22Aに回動可能に取付けられ、上端部を連結する連結ロッド28がリンクガイド26に回動可能に連結されている。
【0033】
また、図5に示すように、一対のリンク部材の下端部を連結する連結ロッド28の両端部にはローラ29が配設され、このローラ29がリンクガイド21の側部に形成された凹状のレール21a内を案内されるように構成されている。
これら駆動リンク23A,24A,25Aを構成するリンク部材はそれぞれ長さが異なり、駆動リンク23A,24A,25Aの順に長くなるように設定されている。本例では、駆動リンク23Aと駆動リンク24Aのリンク部材の作動長さの差と、駆動リンク24Aと駆動リンク25Aのリンク部材の作動長さの差は、略同じ長さに設定されている。
【0034】
一方、従動リンク23B,24B,25Bは、駆動手段40に近い側からこの順に略等間隔にリンクガイド21に取付けられている。リンクガイド21には、側端から上側へ延出するように一対のリンク取付部が長手方向の3箇所に離間して略等間隔に形成されている。これら従動リンク23B,24B,25Bは、スライドバー22を挟んで平行に配設された一対の同じ作動長さのリンク部材から構成されている。従動リンク23B,24B,25Bを構成するリンク部材は同一の作動長さを有しており、本例では駆動リンク23Aよりも短く設定されている。これらリンク部材は、リンク取付部に回動可能に取付けられている。なお、作動長さとはリンク部材の連結点である支点間の長さを意味する。
【0035】
また、本例では、レール21aの上面に、ゴム等の弾性材料からなる緩衝材30が配設されている。この緩衝材30は、図6に示すように、可動フロア11が乗降位置に到達するときにリンクガイド26の下面と当接して弾性変形する。このように、本例では、乗降位置において、リンクガイド21とリンクガイド26とを緩衝材30を介して弾性的に当接させることにより、衝突音の発生を防止している。
なお、本例では、緩衝材30をリンクガイド21に配設したが、これに限らず、可動フロア11と昇降手段20との当接部位、または、昇降手段20間の当接部位において、これら当接部位の少なくともいずれか一方に緩衝材30を配設すればよい。
【0036】
リンクガイド21は、長手方向(車両前後方向)にスライドバー22を摺動可能に保持する。また、リンクガイド21は、駆動手段40側に延出しており、この延出部に駆動手段40が取付けられている。そして、駆動手段40と一体に組み付けられた状態で、ステップカバー13の底面部13eに取付けられている。
駆動バー27の駆動手段40側の端部は、駆動手段40の連結リンク45に回動可能に連結されている。駆動バー27は、駆動モータ41が作動してクランクアーム44が回動すると、クランクアーム44に連結された連結リンク45に駆動されて、リンクガイド21の長手方向に沿ってスライドバー22上で所定の変位量だけ往復動作する。
【0037】
図7に示すように、本例では、駆動バー27には長手方向に沿って長孔27aが穿設されており、スライドバー22には上面側に突出するように固定ピン22aが固設されている。この固定ピン22aは、駆動バー27の長孔27aに挿通され、遊嵌した状態となっている。
図7(A)は、固定ピン22aが長孔27aの右端部に位置している状態を示しており、この状態で駆動モータ41が正回転し始めると、駆動バー27が長孔27aの長さ分だけ右方向に移動したときに長孔27aの左端部が固定ピン22aに当接する。そして、さらに駆動バー27が長手方向右側(展開方向)に移動すると、長孔27aと固定ピン22aとの当接によってスライドバー22が右方向に押し出される。これにより、スライドバー22は駆動バー27よりも時間的に遅れて右方向へ移動を始める。
【0038】
一方、図7(B)の状態から駆動モータ41が逆回転すると、駆動バー27が長孔27aの長さ分だけ左方向へ移動した後、スライドバー22は駆動バー27と共に左側(格納方向)へ移動し始める。このように、スライドバー22と駆動バー27は連動して長手方向に移動可能に連結されているが、スライドバー22は、駆動バー27よりも時間的にわずかに遅れて同方向へ移動するように構成されている。
なお、本例では、駆動バー27に長孔27aを形成したが、これに限らず、スライドバー22に長孔を形成し、駆動バー27に固定ピンを配設する構成でもよい。
【0039】
図8に示すように、リンクガイド26の上面には可動フロア11が取付けられており、リンクガイド26は可動フロア11を支持している。また、リンクガイド26の側面には、長手方向に沿う長孔26a,26cが形成されている。駆動リンク23A,25Aの連結ロッドは、この長孔26a,26cにそれぞれ挿通され、長孔26a,26c内を長手方向に沿ってスライド移動可能であると共に、回動可能となっている。一方、駆動リンク24Aの連結ロッドは、リンクガイド26に形成された支持孔(不図示)に挿通されているので長手方向には移動できないが、この支持孔内で回動可能となっている。
【0040】
本例では、駆動リンク23A,24A,25Aの端部が、リンクガイド26の長手方向に離間する複数の支持部位に連結され、駆動リンク23A,24A,25Aは、この支持部位を介して可動フロア11を支持している。
なお、本例では駆動リンク23A,25Aの連結ロッドを取付けるために長孔26a,26cが設けられているが、これに限らず、駆動リンク23A,24A,25Aのうち少なくとも2の連結ロッドに対して取付用の長孔が形成されていればよい。
【0041】
図9に示すように、リンクガイド26の下面には、一部を上側に折り曲げた傾斜片26dが形成されている。この傾斜片26dは、プレス加工によってリンクガイド26の下面に長手方向に沿ってコ字型の切り込みを入れて、その部位を上側に折り曲げたものである。傾斜片26dは、基部側がリンクガイド26の下面に対して所定の傾斜角をなすように折り曲げられて傾斜面(スロープ面)が形成され、さらに端部側がリンクガイド26の下面と平行になるように折り曲げられて平行面が形成されている。これにより、傾斜片26dの下側部分には開口26eが形成されている。
なお、リンクガイド26の下面と可動フロア11との間には、所定の間隙が設けられており、傾斜片26dはこの間隙内に突出するように形成されている。
【0042】
また、駆動バー27にも同様の傾斜片27b,開口27cが形成されている。ただし、開口26e内に入り込むことができるように、傾斜片27bは傾斜片26dよりも幅狭に形成されている。傾斜片26d,傾斜片27bはスロープ機構を構成する。
可動フロア11が乗降位置にあるときには、駆動バー27は最も駆動手段40寄りに保持されており、図9はこの状態を示している。この状態では、傾斜片27bはリンクガイド26の開口26e内に入り込んだ状態となっている。すなわち、傾斜片27bの上端部は、リンクガイド26の下面よりも上側に位置している。
この状態から、駆動バー27が駆動手段40から離れる方向(展開方向)に移動すると、傾斜片27bの傾斜面(スロープ面)がリンクガイド26の傾斜片26dの傾斜面と当接し、傾斜片27bはリンクガイド26を僅かに上側に持ち上げようとする。そして、このリンクガイド26を持ち上げようとする力により、リンク部材等の連結の遊び分だけリンクガイド26は上側に持ち上げられる。
【0043】
このとき、スライドバー22の固定ピン22aは、まだ駆動バー27に形成された長孔27aの駆動手段40側の端部と当接しておらず、スライドバー22は静止したままである。
乗降位置では駆動リンク23A,24A,25Aと、従動リンク23B,24B,25Bの作用点および支点はそれぞれ一直線上に並んだ状態であるが、リンクガイド26がわずかに上側に持ち上げられることにより、作用点および支点が直線上からずれる。すなわち、乗降位置では、駆動リンク23A,24A,25Aの両端部の作用点(連結点)と、従動リンク23B,24B,25Bの両端部の作用点(連結点)と、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの支点(連結点)が、それぞれ一直線上に並んでいるが、リンクガイド26の上側への移動により、駆動リンク23A,24A,25Aのリンクガイド26との連結点、および従動リンク23B,24B,25Bの駆動リンク23A,24A,25Aとの連結点が他の連結点よりも上側へずれる。
【0044】
これにより、この後、駆動バー27と連動してスライドバー22が駆動手段40から離れる方向(展開方向)へ移動することによって駆動リンク23A,24A,25Aのスライドバー22との連結点が、駆動手段40から離れる方向に移動しようとしたときに、突っ張ってしまうことなく駆動リンク23A,24A,25Aと従動リンク23B,24B,25Bは、一直線上に展開した状態から、リンクガイド26を上側へ持ち上げるように屈曲することが可能となる。
【0045】
中央制御部50は、例えば、各種演算を行うためのCPUと、このCPUを動作させるためのプログラムが格納されたROMと、CPUによって処理された情報を一時的に保存するRAM等を備えた電気回路で構成されている。この中央制御部50は、ドア開閉検出部60からの検出信号を検出することにより、電源供給部52に電源供給指令信号(制御信号)を出力することができるように構成されている。なお、中央制御部50は、車両1に備えられた不図示の中央制御装置に一体に組み込まれていても良いし、ステップカバー13に取付けられていてもよい。
電源供給部52は、車両1に備えられたバッテリを含む電源装置によって構成されており、中央制御部50からの電源供給指令信号に応じて、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定の電圧を印加することができるように構成されている。
【0046】
ドア開閉検出部60は、車両1に備えられたドア6の開閉を検出するものであり、ドア6が閉じた状態にあるときには、ドア閉信号を中央制御部50へ出力し、ドア6が開いたときには、ドア開信号を中央制御部50へ出力するように構成されている。ドア開閉検出部60は、カーテシスイッチとしてもよいし、専用のスイッチとしてもよい。また、ドア開閉検出部60は、ドア6が完全に閉まった状態でドア閉信号を出力し、ドア6が完全に閉まった状態から僅かに開方向に移動したときにドア開信号を出力するようにしてもよいし、ドア6が完全に開いた状態でドア開信号を出力し、ドア6が完全に開いた状態から僅かに閉方向に移動したときにドア閉信号を出力するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記各構成からなる車両用フロアリフト装置Sの動作について説明する。
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、可動フロア11が、車両1に設けられたドア6の開閉動作に連動するように作動する。すなわち、ドア6が開いている状態では、図8(A)に示すように乗降の容易のため、可動フロア11を乗降位置まで降下させこの位置に保持する。そして、ドア6が閉動作に連動して、図8(B)に示すように車両フロア2の有効面積を拡張するため、可動フロア11をフロア展開位置まで上昇させこの位置に保持する。そしてドア6が開けられると、再び図8(A)に示す状態に変位する。
なお、ドア6が閉められて所定時間後に可動フロア11がフロア展開位置まで上昇し、またドア6が開けられて所定時間後に可動フロア11が乗降位置まで下降するような構成であっても良い。さらに、可動フロア11が昇降する際に、不図示の表示器で報知したりスピーカから警告音を発したりするような構成であっても良い。
【0048】
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、ドア6が開けられた状態から閉められた状態となると、ドア開閉検出部60からドア閉信号が中央制御部50に出力され、中央制御部50はドア6が閉められたと判定する。
中央制御部50は、ドア閉状態と判定すると、電源供給部52に所定の電源供給指令信号を出力する。電源供給部52は電源供給指令信号を検出すると、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定極性からなる電圧を印加する。これにより、駆動モータ41が正方向に回転し、クランク機構43を介して駆動バー27を展開方向へ移動させる。
【0049】
上述のように、この駆動バー27の展開方向への移動によってスロープ機構を構成する傾斜片27bがリンクガイド26および可動フロア11をわずかに持ち上げ、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの直線状態が解除される。これに引き続いて駆動バー27によってスライドバー22が展開方向へ移動を始めると、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bが連結点を中心として屈曲するように作動する。
スライドバー22が展開方向へ移動すると、駆動リンク23A,24A,25Aとスライドバー22との連結点が同じ距離(駆動量)だけ展開方向(右方向)へ移動し、これにより駆動リンク23A,24A,25Aと連結された従動リンク23B,24B,25Bが時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク23A,24A,25Aが起立状態へと変位していく。
【0050】
このとき、同じように起立状態に変位していっても、駆動リンク23A,24A,25Aの作動長さの相違によって先端部の上昇速度が異なるため、先端部に連結されたリンクガイド26が水平状態から徐々に傾斜していく。すなわち、本例では駆動リンク25Aの方が駆動リンク23Aよりも長いので、上下方向のストローク差が生じ、リンクガイド26および可動フロア11は車両前後方向に前傾していく。なお、駆動リンク23A,24A,25Aの作動長さの相違により、起立していくうちに駆動リンク23A,24A,25Aの先端部分間の距離が近くなっていく。このため、駆動リンク23A,25Aの先端連結部部分は、長孔26a,26c内をスライドしていく。
【0051】
そして、中央制御部50は、駆動モータ41が所定回転数だけ回転したことを検出すると、電源供給指令信号の出力を停止して駆動モータ41を停止させる。駆動モータ41が所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11はフロア展開位置まで上昇する。このとき、可動フロア11は車両フロア2と略同一角度だけ前傾した姿勢となる。このフロア展開位置では、可動フロア11は車両フロア2と連続する略同一面を形成し、有効面積を拡張する。また、このとき上述のようにクランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となる。
なお、可動フロア11がフロア展開位置に到達したことを位置検出センサで検出して、駆動モータ41の作動を停止させるようにしてもよい。
【0052】
また、ドア6が閉められた状態から開けられた状態となると、ドア開閉検出部60からドア開信号が中央制御部50に出力され、中央制御部50はドア6が開けられたと判定する。
中央制御部50は、ドア開状態と判定すると、電源供給部52に所定の電源供給指令信号を出力して、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定極性からなる電圧を印加させる。これにより、駆動モータ41が展開方向と同方向へ回転し、クランク機構43を介して駆動バー27を格納方向(左方向)へ移動させる。
【0053】
駆動バー27の格納方向への移動により、駆動リンク23A,24A,25Aとスライドバー22との連結点が格納方向へ移動し、これにより駆動リンク23A,24A,25Aと連結された従動リンク23B,24B,25Bが反時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク23A,24A,25Aが従動リンク23B,24B,25Bと直線状になるように変位していく。このとき、リンクガイド26および可動フロア11は徐々に水平状態に戻っていく。
【0054】
そして、本例では、中央制御部50は、駆動モータ41が所定回転数だけ回転したことを検出すると、電源供給指令信号の出力を停止して駆動モータ41を停止させる。駆動モータ41が所定回転数だけ回転することによって、リンクガイド26および可動フロア11は完全に水平状態となった乗降位置まで降下した状態となる。また、このとき上述のようにクランクアーム44と連結リンク45とが上下に重なると共に、これらと駆動バー27とが直線状に並んだ状態となる。
なお、可動フロア11が乗降位置に到達したことを位置検出センサで検出して、駆動モータ41の作動を停止させるようにしてもよい。
【0055】
上述のように、乗降位置では駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの作用点(連結点)はそれぞれ一直線上に並ぶ。このように一直線上に並ぶことにより、本例の可動フロアリフタ10では、乗降位置において可動フロア11下部の厚さを薄くして、可動フロア11上面の地上高さを低く抑えている。
すなわち、本例の可動フロアリフタ10には、作用点の直線上の並列状態を解除するためのスロープ機構が設けられており、乗降位置から可動フロア11を上昇動作させるときに、駆動バー27に設けた傾斜片27bによって可動フロア11を支持しているリンクガイド26をわずかに持ち上げることによって、一直線上に並んだ駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bをわずかに屈曲させた状態にすることができる。これにより、直線上に並んだ作用点をずらして、この後のスライドバー22の展開方向への移動によって駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bを突っ張らせずに屈曲させていくことができる。
【0056】
図10は、可動フロア11がフロア展開位置から乗降位置まで下降していく状態を示している。また、図11は、このときのクランク機構43の回動状態を表している。
図11(A)は、フロア展開位置でのクランク機構43の状態を示しており、このとき出力軸42a,クランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となっている。
図11(B),(C),(D)は、それぞれクランクアーム44が出力軸42aを中心に40度,90度,140度回動した状態を示している。
図11(E)は、クランクアーム44が出力軸42aを中心に180度回動して、乗降位置に到達したときのクランク機構43の状態を示している。このとき、出力軸42a,クランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となっている。
【0057】
図10(A)〜(E)は、それぞれ図11(A)〜(E)のクランク機構43の回動状態に対応している。
図11から分かるように、駆動バー27は一端が出力軸42aに固定されたクランクアーム44と連結リンク45とを回動可能に連結したクランク機構43によって駆動され進退動する。そして、クランクアーム44によって移動する連結リンク45の先端部の移動速度は、回動角度が0度付近,180度付近でもっとも小さく、90度付近でもっとも大きくなることが分かる。
図12は、クランクアーム44が回動したときの、出力軸42aに対する連結リンク45と駆動バー27との連結部までの距離(クランク機構43の長さ)の変化をグラフで表示したものである。図12から、フロア展開位置付近(0度付近)と乗降位置付近(180度付近)では、これらの中間位置(例えば90度付近)と比べてクランク機構43の長さの変化の割合が小さいことが分かる。すなわち、駆動バー27は、フロア展開位置付近と乗降位置付近では、中間位置よりも移動速度が小さい。
【0058】
したがって、展開位置から乗降位置まで可動フロア11が下降するときには、展開位置では駆動バー27はゆっくり展開方向へ移動し始め、中間位置で駆動バー27の変位速度(移動速度)が最大となり、乗降位置付近で駆動バー27の変位速度は再びゆっくりとなって停止する。これに伴い、可動フロア11も展開位置では初速度0からゆっくり下降し始め、中間位置で移動速度が最大となり、乗降位置付近で再びゆっくりと下降してほとんど下降速度が0となって停止する。
また、乗降位置から展開位置へ上昇するときも、乗降位置と展開位置ではゆっくりと移動し、中間位置では移動速度が最大となる。
【0059】
このように本例では、可動フロア11がスロースタート,スローストップするように構成されている。したがって、乗降位置まで下降してきた可動フロア11が他の部材と当接する際に発声する衝突音の大きさを極めて低減することができる。また、これに加えて、本例では、緩衝材30が配設されているので、これによっても乗降位置における衝突音の発生を防止することができる。本例では、停止時に可動フロア11の移動速度が低速化されるものの、クランクアーム44が連結リンク45および駆動バー27等を引き込む力は大きく維持されるので緩衝材30を弾性変形させることにより確実に衝突音の発生を防止することができる。また、このように緩衝材30を弾性変形させた状態では、可動フロア11のガタつきを抑えて、足場を安定させることが可能となる。
そして、本例では、可動フロア11のスロースタート,スローストップを駆動モータ41の回転速度の制御によって行うのではなく、等速回動する出力軸42aに連結されたクランク機構43によって実現している。これにより、簡易な構成によって衝突音の発生を防止することが可能である。
【0060】
本発明の実施形態は、以下のように改変することができる。なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
上記実施形態では、3組の駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bによってリンクガイド26および可動フロア11が昇降するように構成されていたが、これに限らず、複数組によって構成することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動リンク23A,24A,25Aの端部がスライドバー22に連結され、従動リンク23B,24B,25Bの端部がリンクガイド21に連結された構成であったが、これに限らず、従動リンク23B,24B,25Bの端部がスライドバー22に連結され、駆動リンク23A,24A,25Aの端部がリンクガイド21に連結された構成であってもよい。この場合でも、乗降位置,フロア展開位置において、クランク機構43と駆動バー27を直線状とすることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、駆動バー27およびスライドバー22の移動軌跡の延長線上に出力軸42aが配置されていたが、これに限らず、出力軸42aを移動軌跡の延長線上からずらした位置に配設してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、駆動リンク23A,24A,25Aの長さを異なるように設定し、上昇と共に可動フロア11が傾斜していくように構成していたが、これに限らず、水平状態を維持して上昇していくように構成してもよい。例えば、駆動リンクと従動リンクを同じ作動長さとして、これらによっていわゆるXアームを構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、クランク機構43が駆動バー27を介してスライドバー22に連結されていたが、これに限らず、駆動バー27を設けずにクランク機構43とスライドバー22を回動可能に直結する構成であってもよい。この場合、駆動リンクと従動リンクの作用点が一直線上に並ぶ手前の位置を乗降位置とするとよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明の一実施形態に係る車両用フロアリフト装置Sがワンボックスカーや、いわゆるミニバン等に好適に搭載されるよう説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バス,トラック,福祉車両,キャブオーバー車等に搭載してもよい。また、車両用フロアリフト装置Sの搭載位置も、後部座席用に限られるものではなく、段差のあるステップ部に対して搭載されるものであれば、運転席や助手席等であっても良い。また、非常降車口等に配設されても良い。また、ドアの開閉形式もスライド式に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用フロアリフト装置の車載状態の説明図である。
【図2】図1に示す車両用フロアリフト装置の構成図である。
【図3】可動フロアリフタの斜視図である。
【図4】可動フロアリフタの作動機構の斜視図である。
【図5】可動フロアリフタの断面図である。
【図6】可動フロアリフタの緩衝材の作動説明図である。
【図7】駆動バーとスライドバーの連結部位の説明図である。
【図8】可動フロアリフタの動作説明図である。
【図9】駆動バーとリンクガイドの部分拡大図である。
【図10】可動フロアリフタの動作説明図である。
【図11】クランク機構の動作説明図である。
【図12】クランク機構の回動角度と先端位置の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1‥車両、2‥車両フロア、3‥乗降口、4‥乗降用ステップ、5‥凹部空間、
6‥ドア、10‥可動フロアリフタ、11‥可動フロア、13‥ステップカバー、
20‥昇降手段、21‥リンクガイド、21a‥レール、22‥スライドバー、
22A‥リンク取付部、22a‥固定ピン、23A,24A,25A‥駆動リンク、
23B,24B,25B‥従動リンク、26‥リンクガイド、26d‥傾斜片、
27b‥傾斜片、27‥駆動バー、28‥連結ロッド、29‥ローラ、
30‥緩衝材、40‥駆動手段、41‥駆動モータ、42‥減速機構、
42a‥出力軸、43‥クランク機構、44‥クランクアーム、45‥連結リンク、
50‥中央制御部、52‥電源供給部、60‥ドア開閉検出部、
S‥車両用フロアリフト装置
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降装置に係り、特にフロアの段部において可動フロアを上下移動させてフロア間高低差を緩和する昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワンボックスカー等の車両においては、車両フロアが比較的高く設定されているため、乗降口側には一段低くなるように乗降用ステップが設けられている。
しかし、車両フロアに乗降用ステップを設けると、その分だけ車両フロアの有効面積が小さくなってしまう。また、乗降用ステップの側部や後部に設置された座席に乗員が着座したとき、足元に形成された乗降用ステップによる凹部空間によって、乗員が不自然な着座姿勢を強いられたり、あるいは凹部空間へ荷物が落下してしまったりするという不都合があった。そこで、これらの事情に鑑み、種々の車両用フロアリフト装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の昇降装置では、乗降用ステップにリンク機構を介して可動フロアが配設されており、このリンク機構がスライドドアの開閉動作に連動して駆動されることによって、スライドドアの閉時には可動フロアが乗降用ステップの底面近傍から車両フロアと同一面まで上昇し、スライドドアの開時には可動フロアが車両フロア付近から乗降用ステップの底面近傍まで下降するように構成されている。このように、特許文献1に記載の昇降装置では、スライドドアの閉時には乗降用ステップの上部空間を塞いで車両フロアの面積を拡大できるようになっている。
【0004】
詳しくは、特許文献1に記載の昇降装置のリンク機構では、一端が乗降ステップ側に回動可能に固定された従動リンクと、この従動リンクの他端に回動可能に一端が連結され他端がスライドドアに連結される軸に取付けられた駆動リンクとを備えており、上記従動リンクと駆動リンクの連結部には、可動フロアの裏面側で転動するローラが配設されている。この構成により、スライドドアに連動して軸が水平移動すると、駆動リンクの他端が水平方向に移動し、この移動によって従動リンクと駆動リンクとが屈曲する。この屈曲によってローラは可動フロアの裏面側で転動しながら、可動フロアを上下方向に移動させることができる。
【0005】
また、観覧席用の可動フロアを昇降させる昇降装置として、可動フロアを駆動リンクと従動リンクを中間位置で回動可能に連結した、いわゆるXリンク機構で上下移動させるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の昇降装置では、駆動リンクの一端は可動フロアに回動可能に連結され、他端は水平方向に形成された長孔によって摺動規制されている。
特許文献2に記載の昇降装置の駆動手段は、正逆回動可能な駆動軸と、この駆動軸に一端が固定された回動アームと、この回動アームの他端に回動可能に連結された昇降動作用リンクを備えている。この昇降動作用リンクは、駆動リンクの他端に回動可能に連結されている。
【0006】
このような構成により、駆動軸が正逆回転すると、回転方向に応じて昇降動作用リンクが駆動リンクの他端を長孔に沿って進退動させる。これにより、Xリンクが屈曲して可動フロアを上下移動させるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−207673号公報(第2−3頁、図1、図3)
【特許文献2】特開平10−196143号公報(第3−4頁、図3−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の昇降装置では、リンク機構の構成上、スライドドアを開けていくと、可動フロアは、上側(上部位置付近)では下降速度が小さく、下側(下部位置付近)では下降速度が大きくなる。したがって、可動フロアは停止時に乗降ステップと勢いよく衝突して騒音を発生させてしまうおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2に記載の昇降装置の駆動手段は、回転アームが上方へ向いた位置にあるときに可動フロアを下部位置に保持し、回転アームが上方を向いた位置から約90度回動して水平方向を向いたときに可動フロアを上部位置に保持するように構成されている。駆動軸が等速度で回動すると、可動フロアは、上部位置付近では下降速度が小さく、下部位置付近では下降速度が大きくなる。したがって、特許文献2に記載の昇降装置においても、可動フロアは停止時に下部構成部材と勢いよく衝突して騒音を発生させてしまうおそれがあった。
また、このような騒音の発生を防止するために、特許文献2の構成において駆動軸の回転速度を制御して、可動フロアがいわゆるスローストップするように構成した場合には、その制御が複雑となってコスト高になってしまう。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動フロアが停止するときの上部位置付近または下部位置付近における移動速度を、その途中での移動速度よりも低速化して停止時の騒音の発生を低減することが可能な昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明によれば、可動フロアと、該可動フロアを上部位置と下部位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段を駆動する駆動手段と、を備えた昇降装置であって、前記昇降手段は、前記駆動手段に連結され該駆動手段によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に連結され該駆動力伝達部が変位することによって前記可動フロアを上下方向に移動させる昇降部と、を備え、前記駆動手段は、駆動力を発生する駆動部と、該駆動部による駆動力を前記駆動力伝達部に伝達する連結機構と、を備え、該連結機構は、前記上部位置付近および前記下部位置付近の前記可動フロアの移動速度を、前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、前記駆動力伝達部の変位速度が前記可動フロアの位置に応じて異なるように前記駆動力を前記駆動力伝達部へ伝達することにより解決される。
【0012】
このように、本発明の昇降装置では、昇降手段が駆動手段によって駆動されることにより可動フロアを上下動させる。そして、駆動手段を構成する連結機構は、可動フロアの位置によって駆動部からの駆動力を異なるように伝達するよう構成されている。すなわち、上部位置付近および下部位置付近では中間位置よりも可動フロアの移動速度を低速化するために、連結機構は昇降手段の駆動力伝達部の変位速度を異ならせるように構成されている。これにより、本発明の昇降装置では、機構的に可動フロアをスロースタート,スローストップさせることが可能となり、停止時に衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【0013】
また、前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置付近および前記下部位置付近にあるときには、前記可動フロアが前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近にあるときよりも、前記駆動力伝達部の変位速度を小さくするように構成することができる。
【0014】
また、前記連結機構は、前記駆動部の出力軸に一端が固定され該出力軸と共に回動するクランクアームと、該クランクアームの他端に回動可能に一端が連結されると共に他端が前記駆動力伝達部に回動可能に連結された連結リンクと、を備え、前記連結機構は、前記駆動部の出力軸が回動することによって、前記駆動力伝達部を進退動させるように構成することができる。
このように構成すると、出力軸の回動によってクランクアームが回動し、これによって連結リンクに連結された駆動力伝達部を進退動させることができる。そして、出力軸が等速回転しても、回動角度によって連結リンクの他端に連結された駆動力伝達部の進退動方向への変位速度を異ならせることができる。これにより、可動フロアの上下方向の移動速度を異ならせることが可能となる。
【0015】
また、前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置および前記下部位置にあるときに、前記クランクアームと前記連結アームが前記駆動力伝達部の進退動方向において略直線状に並ぶように配設されると好適である。このように構成すると、上部位置および下部位置において可動フロアに下向き荷重が掛かり、この荷重が昇降手段を介して駆動手段に伝達されても、出力軸を回動させる回動力とはならない。したがって、下向き荷重によって可動フロアが不用意に沈み込んでしまうことを防止することができる。
【0016】
また、前記駆動部は、前記可動フロアの前記上部位置と前記下部位置の間の1往復動作に対応して、前記出力軸を1回転させると好適である。このように構成すると、出力軸を一方向のみに回転させればよいので、駆動部の構成を簡単にすることができる。
【0017】
また、少なくとも前記可動フロアまたは前記昇降手段には緩衝材が配設され、前記可動フロアが下部位置に到達するときに前記可動フロアと前記昇降手段の当接部位同士または該昇降手段間の当接部位同士が前記緩衝材を介して互いに当接するように構成すると好適である。このように構成すると、下部位置において衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の昇降装置では、駆動手段から昇降手段への駆動力の伝達速度を可動フロアの位置に応じて異ならせ、可動フロアが上部位置付近と下部位置付近では中間位置よりも低速で移動するように構成されたので、可動フロアの停止時に衝突音が発生してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜図12は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は車両用フロアリフト装置の車載状態の説明図、図2は図1に示す車両用フロアリフト装置の構成図、図3は可動フロアリフタの斜視図、図4は可動フロアリフタの作動機構の斜視図、図5は可動フロアリフタの断面図、図6は可動フロアリフタの緩衝材の作動説明図、図7は駆動バーとスライドバーの連結部位の説明図、図8は可動フロアリフタの動作説明図、図9は駆動バーとリンクガイドの部分拡大図、図10は可動フロアリフタの動作説明図、図11はクランク機構の動作説明図、図12はクランク機構の回動角度と先端位置の関係を表すグラフである。
【0020】
以下に本発明の昇降装置を車両用フロアリフト装置に適用した一実施形態について説明する。本例の車両用フロアリフト装置Sは、例えば、ワンボックスカーや、いわゆるミニバン等に好適に搭載されるものである。図1に示すように、車両1には、車両フロア2の乗降口3に一段下がったステップ面である乗降用ステップ4を形成する凹部空間5が設けられている。そして、この乗降口3はスライド式のドア6によって開閉される。
本例の車両用フロアリフト装置Sは、この乗降用ステップ4上の凹部空間5内で可動フロア11をドア6の開閉動作に連動して昇降させるものである。可動フロア11は、乗降用ステップ4近傍の下部位置である乗降位置と、車両フロア2近傍で車両フロア2と略面一な上部位置であるフロア展開位置との間で昇降可能である。
本例の可動フロア11は、ドア開時には乗降し易くするために乗降位置まで降下し、ドア閉時には車両フロア2の有効面積を拡張するためにフロア展開位置まで上昇する。なお、図1では理解の容易のため、ドア6は開いているが可動フロア11をフロア展開位置まで上昇させた状態を示している。
【0021】
本例では、車両フロア2が地表面に対して車両進行方向に所定角度(本例では約5度)だけ前傾している。しかしながら、乗降用ステップ4は地表面と平行になるように略水平に形成されている。したがって、乗降用ステップ4と車両フロア2とは平行に構成されていない。
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、可動フロア11が乗降位置では乗降用ステップ4および地表面と略平行となり、フロア展開位置では傾斜した車両フロア2と略面一となるように昇降される。つまり、本例では可動フロア11は、水平に保持される乗降位置から傾斜状態に保持されるフロア展開位置に向けて徐々に前傾するように姿勢を変えながら上昇するように構成されている。
【0022】
車両用フロアリフト装置Sの概略構成を図2に示す。図2に示すように、本例の車両用フロアリフト装置Sは、駆動モータ41によって可動フロア11を昇降させる可動フロアリフタ10と、駆動モータ41の作動を制御する中央制御部50と、中央制御部50からの制御信号に基づいて駆動モータ41に電源を供給する電源供給部52と、ドア6の開閉状態を検出して検出信号を中央制御部50へ出力するドア開閉検出部60を主要構成要素としている。
【0023】
可動フロアリフタ10は、図3に示すように、車両1に対して着脱自在なワンユニット化された装置として構成されており、樹脂材料等により形成された板状部材である可動フロア11と、乗降口3の凹部空間5に配設可能に形成されたステップカバー13と、可動フロア11を昇降動作させる昇降手段20と、昇降手段20を駆動する駆動手段40を主要構成要素としている。なお、図3(A)は可動フロア11が乗降位置にある状態を示しており、図3(B)は可動フロア11がフロア展開位置にある状態を示している。
【0024】
本例のステップカバー13は、凹部空間5に嵌め込んで装着可能なように樹脂材料により一体に形成されたものであり、凹部空間5に沿う車両フロア2の一部を覆うように形成された上面部13aと、乗降用ステップ4を囲む車両の側壁を覆うための背面部13cと、乗降用ステップ4の車両前後側の側面をそれぞれ覆う側面部13b,13dと、乗降用ステップ4上を覆う底面部13eから構成されている。側面部13b,背面部13c,側面部13dは、上面部13aの縁部から下方へ延出するように一体に形成されている。また、底面部13eは、側面部13b,背面部13c,側面部13dと連繋されて一体に形成されている。可動フロア11は、底面部13e上を昇降動作する。
【0025】
図4に昇降手段20および駆動手段40の斜視図を示す。
駆動手段40は、駆動モータ41と、駆動モータ41と一体に連結された減速機構42と、垂直方向に突出する減速機構42の出力軸42aに連結されたクランク機構43とを有している。クランク機構43は、出力軸42aに一端が固設されたクランクアーム44と、クランクアーム44の他端に回動可能に一端が連結された連結リンク45からなる。連結リンク45の他端は昇降手段20に回動可能に連結されている。本例の駆動モータ41,減速機構42は、本発明の駆動力を発生する駆動部に相当し、クランク機構43は駆動力を昇降手段20へ伝達する連結機構に相当する。
【0026】
本例の駆動手段40では、中央制御部50からの制御信号に応じて駆動モータ41が一方向へ回転するように構成されている。すなわち、可動フロア11が乗降位置にある状態から、駆動モータ41が所定方向へ所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11がフロア展開位置まで移動する。また、可動フロア11がフロア展開位置にある状態から、駆動モータ41が同方向へ所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11が乗降位置まで移動する。
このような可動フロア11の1往復動作(展開動作および格納動作)において、出力軸42aに基端部が固定されたクランクアーム44は、それぞれ略180度回動し、1回転してもとの位置へ戻るように構成されている。
【0027】
可動フロア11が乗降位置にあるときには、クランクアーム44の先端は昇降手段20と反対方向を向いており、クランクアーム44は連結リンク45と上下に重なって直線状に並んで、連結リンク45を最も駆動モータ41側へ引き込んでいる。詳しくは、連結リンク45には後述するように駆動バー27が回動可能に連結されており、乗降位置では、駆動バー27の摺動方向に、駆動バー27と連結リンク45の回動連結点,出力軸42a,連結リンク45とクランクアーム44の回動連結点がこの順に直線状に並ぶように構成されている。
なお、駆動バー27はクランク機構43に駆動されることによって進退動するように構成されているが、この進退動方向の延長線上に出力軸42aが配設されている。そして、クランクアーム44が回転することによって、連結リンク45を介して駆動バー27(およびスライドバー22)は往復動可能となっている。
【0028】
一方、可動フロア11がフロア展開位置にあるときには、クランクアーム44の先端は昇降手段20側へ向いており、クランクアーム44は連結リンク45と直線状に並んで、連結リンク45を最も昇降手段20側へ押し出している(図4参照)。詳しくは、フロア展開位置では、駆動バー27の摺動方向に、駆動バー27と連結リンク45の回動連結点,連結リンク45とクランクアーム44の回動連結点,出力軸42aがこの順に直線状に並ぶように構成されている。
【0029】
このように本例では、乗降位置およびフロア展開位置において、クランク機構43が直線状に並ぶように構成されているので、可動フロア11に下向きの荷重が掛かっても、昇降手段20およびクランク機構43を介して出力軸42aには、これを回動させるトルクは掛からない。したがって、不用意に可動フロア11が下方へ移動してしまうことを防止することができる。
なお、本例では、出力軸42aを同方向へ一回転させることによって可動フロア11を乗降位置とフロア展開位置との間で1往復動作させるように構成しているので、駆動モータ41の回転方向を切り替える必要がなく構成を簡単にすることができる。しかし、これに限らず、展開動作と格納動作で駆動モータ41の回転方向を反転させて、それぞれの動作においてクランクアーム44を略180度反対方向へ回動させるように構成してもよい。
【0030】
昇降手段20は、ステップカバー13の底面部13eに固定される長尺な部材である下部のリンクガイド21と、リンクガイド21に形成されたガイド溝内を長手方向に沿って案内される長尺なスライドバー22と、スライドバー22に一端が回動可能に取付けられた駆動リンク23A,24A,25Aと、駆動リンク23A,24A,25Aの中間部位に一端が回動可能に連結され他端がリンクガイド21に回動可能に連結された従動リンク23B,24B,25Bと、駆動リンク23A,24A,25Aの他端が回動可能に連結された上部のリンクガイド26(図5,図8参照)と、スライドバー22と連動してリンクガイド21の長手方向に沿って移動するように連結された駆動バー27を主要構成要素としている。
【0031】
駆動リンク23A,24A,25Aと、これらにそれぞれ連結された従動リンク23B,24B,25Bは、本発明の昇降部に相当する。
また、スライドバー22およびこれと連動する駆動バー27は、本発明の駆動力伝達部に相当する。
【0032】
駆動リンク23A,24A,25Aは、駆動手段40に近い側からこの順に略等間隔にスライドバー22に取付けられている。スライドバー22には、側端から上側へ延出するように一対のリンク取付部22Aが長手方向の3箇所に略等間隔に離間して形成されている。各駆動リンクは、スライドバー22を挟んで平行に配設された一対の同じ作動長さのリンク部材と、これらの上下端部をそれぞれ連結する連結ロッド28で構成されている。一対のリンク部材は、これらの下端部を連結する連結ロッド28がスライドバー22のリンク取付部22Aに回動可能に取付けられ、上端部を連結する連結ロッド28がリンクガイド26に回動可能に連結されている。
【0033】
また、図5に示すように、一対のリンク部材の下端部を連結する連結ロッド28の両端部にはローラ29が配設され、このローラ29がリンクガイド21の側部に形成された凹状のレール21a内を案内されるように構成されている。
これら駆動リンク23A,24A,25Aを構成するリンク部材はそれぞれ長さが異なり、駆動リンク23A,24A,25Aの順に長くなるように設定されている。本例では、駆動リンク23Aと駆動リンク24Aのリンク部材の作動長さの差と、駆動リンク24Aと駆動リンク25Aのリンク部材の作動長さの差は、略同じ長さに設定されている。
【0034】
一方、従動リンク23B,24B,25Bは、駆動手段40に近い側からこの順に略等間隔にリンクガイド21に取付けられている。リンクガイド21には、側端から上側へ延出するように一対のリンク取付部が長手方向の3箇所に離間して略等間隔に形成されている。これら従動リンク23B,24B,25Bは、スライドバー22を挟んで平行に配設された一対の同じ作動長さのリンク部材から構成されている。従動リンク23B,24B,25Bを構成するリンク部材は同一の作動長さを有しており、本例では駆動リンク23Aよりも短く設定されている。これらリンク部材は、リンク取付部に回動可能に取付けられている。なお、作動長さとはリンク部材の連結点である支点間の長さを意味する。
【0035】
また、本例では、レール21aの上面に、ゴム等の弾性材料からなる緩衝材30が配設されている。この緩衝材30は、図6に示すように、可動フロア11が乗降位置に到達するときにリンクガイド26の下面と当接して弾性変形する。このように、本例では、乗降位置において、リンクガイド21とリンクガイド26とを緩衝材30を介して弾性的に当接させることにより、衝突音の発生を防止している。
なお、本例では、緩衝材30をリンクガイド21に配設したが、これに限らず、可動フロア11と昇降手段20との当接部位、または、昇降手段20間の当接部位において、これら当接部位の少なくともいずれか一方に緩衝材30を配設すればよい。
【0036】
リンクガイド21は、長手方向(車両前後方向)にスライドバー22を摺動可能に保持する。また、リンクガイド21は、駆動手段40側に延出しており、この延出部に駆動手段40が取付けられている。そして、駆動手段40と一体に組み付けられた状態で、ステップカバー13の底面部13eに取付けられている。
駆動バー27の駆動手段40側の端部は、駆動手段40の連結リンク45に回動可能に連結されている。駆動バー27は、駆動モータ41が作動してクランクアーム44が回動すると、クランクアーム44に連結された連結リンク45に駆動されて、リンクガイド21の長手方向に沿ってスライドバー22上で所定の変位量だけ往復動作する。
【0037】
図7に示すように、本例では、駆動バー27には長手方向に沿って長孔27aが穿設されており、スライドバー22には上面側に突出するように固定ピン22aが固設されている。この固定ピン22aは、駆動バー27の長孔27aに挿通され、遊嵌した状態となっている。
図7(A)は、固定ピン22aが長孔27aの右端部に位置している状態を示しており、この状態で駆動モータ41が正回転し始めると、駆動バー27が長孔27aの長さ分だけ右方向に移動したときに長孔27aの左端部が固定ピン22aに当接する。そして、さらに駆動バー27が長手方向右側(展開方向)に移動すると、長孔27aと固定ピン22aとの当接によってスライドバー22が右方向に押し出される。これにより、スライドバー22は駆動バー27よりも時間的に遅れて右方向へ移動を始める。
【0038】
一方、図7(B)の状態から駆動モータ41が逆回転すると、駆動バー27が長孔27aの長さ分だけ左方向へ移動した後、スライドバー22は駆動バー27と共に左側(格納方向)へ移動し始める。このように、スライドバー22と駆動バー27は連動して長手方向に移動可能に連結されているが、スライドバー22は、駆動バー27よりも時間的にわずかに遅れて同方向へ移動するように構成されている。
なお、本例では、駆動バー27に長孔27aを形成したが、これに限らず、スライドバー22に長孔を形成し、駆動バー27に固定ピンを配設する構成でもよい。
【0039】
図8に示すように、リンクガイド26の上面には可動フロア11が取付けられており、リンクガイド26は可動フロア11を支持している。また、リンクガイド26の側面には、長手方向に沿う長孔26a,26cが形成されている。駆動リンク23A,25Aの連結ロッドは、この長孔26a,26cにそれぞれ挿通され、長孔26a,26c内を長手方向に沿ってスライド移動可能であると共に、回動可能となっている。一方、駆動リンク24Aの連結ロッドは、リンクガイド26に形成された支持孔(不図示)に挿通されているので長手方向には移動できないが、この支持孔内で回動可能となっている。
【0040】
本例では、駆動リンク23A,24A,25Aの端部が、リンクガイド26の長手方向に離間する複数の支持部位に連結され、駆動リンク23A,24A,25Aは、この支持部位を介して可動フロア11を支持している。
なお、本例では駆動リンク23A,25Aの連結ロッドを取付けるために長孔26a,26cが設けられているが、これに限らず、駆動リンク23A,24A,25Aのうち少なくとも2の連結ロッドに対して取付用の長孔が形成されていればよい。
【0041】
図9に示すように、リンクガイド26の下面には、一部を上側に折り曲げた傾斜片26dが形成されている。この傾斜片26dは、プレス加工によってリンクガイド26の下面に長手方向に沿ってコ字型の切り込みを入れて、その部位を上側に折り曲げたものである。傾斜片26dは、基部側がリンクガイド26の下面に対して所定の傾斜角をなすように折り曲げられて傾斜面(スロープ面)が形成され、さらに端部側がリンクガイド26の下面と平行になるように折り曲げられて平行面が形成されている。これにより、傾斜片26dの下側部分には開口26eが形成されている。
なお、リンクガイド26の下面と可動フロア11との間には、所定の間隙が設けられており、傾斜片26dはこの間隙内に突出するように形成されている。
【0042】
また、駆動バー27にも同様の傾斜片27b,開口27cが形成されている。ただし、開口26e内に入り込むことができるように、傾斜片27bは傾斜片26dよりも幅狭に形成されている。傾斜片26d,傾斜片27bはスロープ機構を構成する。
可動フロア11が乗降位置にあるときには、駆動バー27は最も駆動手段40寄りに保持されており、図9はこの状態を示している。この状態では、傾斜片27bはリンクガイド26の開口26e内に入り込んだ状態となっている。すなわち、傾斜片27bの上端部は、リンクガイド26の下面よりも上側に位置している。
この状態から、駆動バー27が駆動手段40から離れる方向(展開方向)に移動すると、傾斜片27bの傾斜面(スロープ面)がリンクガイド26の傾斜片26dの傾斜面と当接し、傾斜片27bはリンクガイド26を僅かに上側に持ち上げようとする。そして、このリンクガイド26を持ち上げようとする力により、リンク部材等の連結の遊び分だけリンクガイド26は上側に持ち上げられる。
【0043】
このとき、スライドバー22の固定ピン22aは、まだ駆動バー27に形成された長孔27aの駆動手段40側の端部と当接しておらず、スライドバー22は静止したままである。
乗降位置では駆動リンク23A,24A,25Aと、従動リンク23B,24B,25Bの作用点および支点はそれぞれ一直線上に並んだ状態であるが、リンクガイド26がわずかに上側に持ち上げられることにより、作用点および支点が直線上からずれる。すなわち、乗降位置では、駆動リンク23A,24A,25Aの両端部の作用点(連結点)と、従動リンク23B,24B,25Bの両端部の作用点(連結点)と、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの支点(連結点)が、それぞれ一直線上に並んでいるが、リンクガイド26の上側への移動により、駆動リンク23A,24A,25Aのリンクガイド26との連結点、および従動リンク23B,24B,25Bの駆動リンク23A,24A,25Aとの連結点が他の連結点よりも上側へずれる。
【0044】
これにより、この後、駆動バー27と連動してスライドバー22が駆動手段40から離れる方向(展開方向)へ移動することによって駆動リンク23A,24A,25Aのスライドバー22との連結点が、駆動手段40から離れる方向に移動しようとしたときに、突っ張ってしまうことなく駆動リンク23A,24A,25Aと従動リンク23B,24B,25Bは、一直線上に展開した状態から、リンクガイド26を上側へ持ち上げるように屈曲することが可能となる。
【0045】
中央制御部50は、例えば、各種演算を行うためのCPUと、このCPUを動作させるためのプログラムが格納されたROMと、CPUによって処理された情報を一時的に保存するRAM等を備えた電気回路で構成されている。この中央制御部50は、ドア開閉検出部60からの検出信号を検出することにより、電源供給部52に電源供給指令信号(制御信号)を出力することができるように構成されている。なお、中央制御部50は、車両1に備えられた不図示の中央制御装置に一体に組み込まれていても良いし、ステップカバー13に取付けられていてもよい。
電源供給部52は、車両1に備えられたバッテリを含む電源装置によって構成されており、中央制御部50からの電源供給指令信号に応じて、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定の電圧を印加することができるように構成されている。
【0046】
ドア開閉検出部60は、車両1に備えられたドア6の開閉を検出するものであり、ドア6が閉じた状態にあるときには、ドア閉信号を中央制御部50へ出力し、ドア6が開いたときには、ドア開信号を中央制御部50へ出力するように構成されている。ドア開閉検出部60は、カーテシスイッチとしてもよいし、専用のスイッチとしてもよい。また、ドア開閉検出部60は、ドア6が完全に閉まった状態でドア閉信号を出力し、ドア6が完全に閉まった状態から僅かに開方向に移動したときにドア開信号を出力するようにしてもよいし、ドア6が完全に開いた状態でドア開信号を出力し、ドア6が完全に開いた状態から僅かに閉方向に移動したときにドア閉信号を出力するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記各構成からなる車両用フロアリフト装置Sの動作について説明する。
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、可動フロア11が、車両1に設けられたドア6の開閉動作に連動するように作動する。すなわち、ドア6が開いている状態では、図8(A)に示すように乗降の容易のため、可動フロア11を乗降位置まで降下させこの位置に保持する。そして、ドア6が閉動作に連動して、図8(B)に示すように車両フロア2の有効面積を拡張するため、可動フロア11をフロア展開位置まで上昇させこの位置に保持する。そしてドア6が開けられると、再び図8(A)に示す状態に変位する。
なお、ドア6が閉められて所定時間後に可動フロア11がフロア展開位置まで上昇し、またドア6が開けられて所定時間後に可動フロア11が乗降位置まで下降するような構成であっても良い。さらに、可動フロア11が昇降する際に、不図示の表示器で報知したりスピーカから警告音を発したりするような構成であっても良い。
【0048】
本例の車両用フロアリフト装置Sでは、ドア6が開けられた状態から閉められた状態となると、ドア開閉検出部60からドア閉信号が中央制御部50に出力され、中央制御部50はドア6が閉められたと判定する。
中央制御部50は、ドア閉状態と判定すると、電源供給部52に所定の電源供給指令信号を出力する。電源供給部52は電源供給指令信号を検出すると、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定極性からなる電圧を印加する。これにより、駆動モータ41が正方向に回転し、クランク機構43を介して駆動バー27を展開方向へ移動させる。
【0049】
上述のように、この駆動バー27の展開方向への移動によってスロープ機構を構成する傾斜片27bがリンクガイド26および可動フロア11をわずかに持ち上げ、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの直線状態が解除される。これに引き続いて駆動バー27によってスライドバー22が展開方向へ移動を始めると、駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bが連結点を中心として屈曲するように作動する。
スライドバー22が展開方向へ移動すると、駆動リンク23A,24A,25Aとスライドバー22との連結点が同じ距離(駆動量)だけ展開方向(右方向)へ移動し、これにより駆動リンク23A,24A,25Aと連結された従動リンク23B,24B,25Bが時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク23A,24A,25Aが起立状態へと変位していく。
【0050】
このとき、同じように起立状態に変位していっても、駆動リンク23A,24A,25Aの作動長さの相違によって先端部の上昇速度が異なるため、先端部に連結されたリンクガイド26が水平状態から徐々に傾斜していく。すなわち、本例では駆動リンク25Aの方が駆動リンク23Aよりも長いので、上下方向のストローク差が生じ、リンクガイド26および可動フロア11は車両前後方向に前傾していく。なお、駆動リンク23A,24A,25Aの作動長さの相違により、起立していくうちに駆動リンク23A,24A,25Aの先端部分間の距離が近くなっていく。このため、駆動リンク23A,25Aの先端連結部部分は、長孔26a,26c内をスライドしていく。
【0051】
そして、中央制御部50は、駆動モータ41が所定回転数だけ回転したことを検出すると、電源供給指令信号の出力を停止して駆動モータ41を停止させる。駆動モータ41が所定回転数だけ回転することによって、可動フロア11はフロア展開位置まで上昇する。このとき、可動フロア11は車両フロア2と略同一角度だけ前傾した姿勢となる。このフロア展開位置では、可動フロア11は車両フロア2と連続する略同一面を形成し、有効面積を拡張する。また、このとき上述のようにクランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となる。
なお、可動フロア11がフロア展開位置に到達したことを位置検出センサで検出して、駆動モータ41の作動を停止させるようにしてもよい。
【0052】
また、ドア6が閉められた状態から開けられた状態となると、ドア開閉検出部60からドア開信号が中央制御部50に出力され、中央制御部50はドア6が開けられたと判定する。
中央制御部50は、ドア開状態と判定すると、電源供給部52に所定の電源供給指令信号を出力して、可動フロアリフタ10の駆動モータ41に所定極性からなる電圧を印加させる。これにより、駆動モータ41が展開方向と同方向へ回転し、クランク機構43を介して駆動バー27を格納方向(左方向)へ移動させる。
【0053】
駆動バー27の格納方向への移動により、駆動リンク23A,24A,25Aとスライドバー22との連結点が格納方向へ移動し、これにより駆動リンク23A,24A,25Aと連結された従動リンク23B,24B,25Bが反時計方向へ回動する。これに伴って、駆動リンク23A,24A,25Aが従動リンク23B,24B,25Bと直線状になるように変位していく。このとき、リンクガイド26および可動フロア11は徐々に水平状態に戻っていく。
【0054】
そして、本例では、中央制御部50は、駆動モータ41が所定回転数だけ回転したことを検出すると、電源供給指令信号の出力を停止して駆動モータ41を停止させる。駆動モータ41が所定回転数だけ回転することによって、リンクガイド26および可動フロア11は完全に水平状態となった乗降位置まで降下した状態となる。また、このとき上述のようにクランクアーム44と連結リンク45とが上下に重なると共に、これらと駆動バー27とが直線状に並んだ状態となる。
なお、可動フロア11が乗降位置に到達したことを位置検出センサで検出して、駆動モータ41の作動を停止させるようにしてもよい。
【0055】
上述のように、乗降位置では駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bの作用点(連結点)はそれぞれ一直線上に並ぶ。このように一直線上に並ぶことにより、本例の可動フロアリフタ10では、乗降位置において可動フロア11下部の厚さを薄くして、可動フロア11上面の地上高さを低く抑えている。
すなわち、本例の可動フロアリフタ10には、作用点の直線上の並列状態を解除するためのスロープ機構が設けられており、乗降位置から可動フロア11を上昇動作させるときに、駆動バー27に設けた傾斜片27bによって可動フロア11を支持しているリンクガイド26をわずかに持ち上げることによって、一直線上に並んだ駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bをわずかに屈曲させた状態にすることができる。これにより、直線上に並んだ作用点をずらして、この後のスライドバー22の展開方向への移動によって駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bを突っ張らせずに屈曲させていくことができる。
【0056】
図10は、可動フロア11がフロア展開位置から乗降位置まで下降していく状態を示している。また、図11は、このときのクランク機構43の回動状態を表している。
図11(A)は、フロア展開位置でのクランク機構43の状態を示しており、このとき出力軸42a,クランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となっている。
図11(B),(C),(D)は、それぞれクランクアーム44が出力軸42aを中心に40度,90度,140度回動した状態を示している。
図11(E)は、クランクアーム44が出力軸42aを中心に180度回動して、乗降位置に到達したときのクランク機構43の状態を示している。このとき、出力軸42a,クランクアーム44,連結リンク45,駆動バー27は直線状に並んだ状態となっている。
【0057】
図10(A)〜(E)は、それぞれ図11(A)〜(E)のクランク機構43の回動状態に対応している。
図11から分かるように、駆動バー27は一端が出力軸42aに固定されたクランクアーム44と連結リンク45とを回動可能に連結したクランク機構43によって駆動され進退動する。そして、クランクアーム44によって移動する連結リンク45の先端部の移動速度は、回動角度が0度付近,180度付近でもっとも小さく、90度付近でもっとも大きくなることが分かる。
図12は、クランクアーム44が回動したときの、出力軸42aに対する連結リンク45と駆動バー27との連結部までの距離(クランク機構43の長さ)の変化をグラフで表示したものである。図12から、フロア展開位置付近(0度付近)と乗降位置付近(180度付近)では、これらの中間位置(例えば90度付近)と比べてクランク機構43の長さの変化の割合が小さいことが分かる。すなわち、駆動バー27は、フロア展開位置付近と乗降位置付近では、中間位置よりも移動速度が小さい。
【0058】
したがって、展開位置から乗降位置まで可動フロア11が下降するときには、展開位置では駆動バー27はゆっくり展開方向へ移動し始め、中間位置で駆動バー27の変位速度(移動速度)が最大となり、乗降位置付近で駆動バー27の変位速度は再びゆっくりとなって停止する。これに伴い、可動フロア11も展開位置では初速度0からゆっくり下降し始め、中間位置で移動速度が最大となり、乗降位置付近で再びゆっくりと下降してほとんど下降速度が0となって停止する。
また、乗降位置から展開位置へ上昇するときも、乗降位置と展開位置ではゆっくりと移動し、中間位置では移動速度が最大となる。
【0059】
このように本例では、可動フロア11がスロースタート,スローストップするように構成されている。したがって、乗降位置まで下降してきた可動フロア11が他の部材と当接する際に発声する衝突音の大きさを極めて低減することができる。また、これに加えて、本例では、緩衝材30が配設されているので、これによっても乗降位置における衝突音の発生を防止することができる。本例では、停止時に可動フロア11の移動速度が低速化されるものの、クランクアーム44が連結リンク45および駆動バー27等を引き込む力は大きく維持されるので緩衝材30を弾性変形させることにより確実に衝突音の発生を防止することができる。また、このように緩衝材30を弾性変形させた状態では、可動フロア11のガタつきを抑えて、足場を安定させることが可能となる。
そして、本例では、可動フロア11のスロースタート,スローストップを駆動モータ41の回転速度の制御によって行うのではなく、等速回動する出力軸42aに連結されたクランク機構43によって実現している。これにより、簡易な構成によって衝突音の発生を防止することが可能である。
【0060】
本発明の実施形態は、以下のように改変することができる。なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
上記実施形態では、3組の駆動リンク23A,24A,25Aおよび従動リンク23B,24B,25Bによってリンクガイド26および可動フロア11が昇降するように構成されていたが、これに限らず、複数組によって構成することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動リンク23A,24A,25Aの端部がスライドバー22に連結され、従動リンク23B,24B,25Bの端部がリンクガイド21に連結された構成であったが、これに限らず、従動リンク23B,24B,25Bの端部がスライドバー22に連結され、駆動リンク23A,24A,25Aの端部がリンクガイド21に連結された構成であってもよい。この場合でも、乗降位置,フロア展開位置において、クランク機構43と駆動バー27を直線状とすることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、駆動バー27およびスライドバー22の移動軌跡の延長線上に出力軸42aが配置されていたが、これに限らず、出力軸42aを移動軌跡の延長線上からずらした位置に配設してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、駆動リンク23A,24A,25Aの長さを異なるように設定し、上昇と共に可動フロア11が傾斜していくように構成していたが、これに限らず、水平状態を維持して上昇していくように構成してもよい。例えば、駆動リンクと従動リンクを同じ作動長さとして、これらによっていわゆるXアームを構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、クランク機構43が駆動バー27を介してスライドバー22に連結されていたが、これに限らず、駆動バー27を設けずにクランク機構43とスライドバー22を回動可能に直結する構成であってもよい。この場合、駆動リンクと従動リンクの作用点が一直線上に並ぶ手前の位置を乗降位置とするとよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明の一実施形態に係る車両用フロアリフト装置Sがワンボックスカーや、いわゆるミニバン等に好適に搭載されるよう説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バス,トラック,福祉車両,キャブオーバー車等に搭載してもよい。また、車両用フロアリフト装置Sの搭載位置も、後部座席用に限られるものではなく、段差のあるステップ部に対して搭載されるものであれば、運転席や助手席等であっても良い。また、非常降車口等に配設されても良い。また、ドアの開閉形式もスライド式に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用フロアリフト装置の車載状態の説明図である。
【図2】図1に示す車両用フロアリフト装置の構成図である。
【図3】可動フロアリフタの斜視図である。
【図4】可動フロアリフタの作動機構の斜視図である。
【図5】可動フロアリフタの断面図である。
【図6】可動フロアリフタの緩衝材の作動説明図である。
【図7】駆動バーとスライドバーの連結部位の説明図である。
【図8】可動フロアリフタの動作説明図である。
【図9】駆動バーとリンクガイドの部分拡大図である。
【図10】可動フロアリフタの動作説明図である。
【図11】クランク機構の動作説明図である。
【図12】クランク機構の回動角度と先端位置の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1‥車両、2‥車両フロア、3‥乗降口、4‥乗降用ステップ、5‥凹部空間、
6‥ドア、10‥可動フロアリフタ、11‥可動フロア、13‥ステップカバー、
20‥昇降手段、21‥リンクガイド、21a‥レール、22‥スライドバー、
22A‥リンク取付部、22a‥固定ピン、23A,24A,25A‥駆動リンク、
23B,24B,25B‥従動リンク、26‥リンクガイド、26d‥傾斜片、
27b‥傾斜片、27‥駆動バー、28‥連結ロッド、29‥ローラ、
30‥緩衝材、40‥駆動手段、41‥駆動モータ、42‥減速機構、
42a‥出力軸、43‥クランク機構、44‥クランクアーム、45‥連結リンク、
50‥中央制御部、52‥電源供給部、60‥ドア開閉検出部、
S‥車両用フロアリフト装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動フロアと、該可動フロアを上部位置と下部位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段を駆動する駆動手段と、を備えた昇降装置であって、
前記昇降手段は、前記駆動手段に連結され該駆動手段によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に連結され該駆動力伝達部が変位することによって前記可動フロアを上下方向に移動させる昇降部と、を備え、
前記駆動手段は、駆動力を発生する駆動部と、該駆動部による駆動力を前記駆動力伝達部に伝達する連結機構と、を備え、
該連結機構は、前記上部位置付近および前記下部位置付近の前記可動フロアの移動速度を、前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、前記駆動力伝達部の変位速度が前記可動フロアの位置に応じて異なるように前記駆動力を前記駆動力伝達部へ伝達することを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置付近および前記下部位置付近にあるときには、前記可動フロアが前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近にあるときよりも、前記駆動力伝達部の変位速度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記連結機構は、前記駆動部の出力軸に一端が固定され該出力軸と共に回動するクランクアームと、該クランクアームの他端に回動可能に一端が連結されると共に他端が前記駆動力伝達部に回動可能に連結された連結リンクと、を備え、
前記連結機構は、前記駆動部の出力軸が回動することによって、前記駆動力伝達部を進退動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置および前記下部位置にあるときに、前記クランクアームと前記連結アームが前記駆動力伝達部の進退動方向において略直線状に並ぶように配設されたことを特徴とする請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記可動フロアの前記上部位置と前記下部位置の間の1往復動作に対応して、前記出力軸を1回転させることを特徴とする請求項3又は4に記載の昇降装置。
【請求項6】
少なくとも前記可動フロアまたは前記昇降手段には緩衝材が配設され、前記可動フロアが下部位置に到達するときに前記可動フロアと前記昇降手段の当接部位同士または該昇降手段間の当接部位同士が前記緩衝材を介して互いに当接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項1】
可動フロアと、該可動フロアを上部位置と下部位置との間で昇降させる昇降手段と、該昇降手段を駆動する駆動手段と、を備えた昇降装置であって、
前記昇降手段は、前記駆動手段に連結され該駆動手段によって所定の変位量だけ変位する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に連結され該駆動力伝達部が変位することによって前記可動フロアを上下方向に移動させる昇降部と、を備え、
前記駆動手段は、駆動力を発生する駆動部と、該駆動部による駆動力を前記駆動力伝達部に伝達する連結機構と、を備え、
該連結機構は、前記上部位置付近および前記下部位置付近の前記可動フロアの移動速度を、前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近における移動速度よりも低速にさせるように、前記駆動力伝達部の変位速度が前記可動フロアの位置に応じて異なるように前記駆動力を前記駆動力伝達部へ伝達することを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置付近および前記下部位置付近にあるときには、前記可動フロアが前記上部位置と前記下部位置の中間位置付近にあるときよりも、前記駆動力伝達部の変位速度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記連結機構は、前記駆動部の出力軸に一端が固定され該出力軸と共に回動するクランクアームと、該クランクアームの他端に回動可能に一端が連結されると共に他端が前記駆動力伝達部に回動可能に連結された連結リンクと、を備え、
前記連結機構は、前記駆動部の出力軸が回動することによって、前記駆動力伝達部を進退動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記連結機構は、前記可動フロアが前記上部位置および前記下部位置にあるときに、前記クランクアームと前記連結アームが前記駆動力伝達部の進退動方向において略直線状に並ぶように配設されたことを特徴とする請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記可動フロアの前記上部位置と前記下部位置の間の1往復動作に対応して、前記出力軸を1回転させることを特徴とする請求項3又は4に記載の昇降装置。
【請求項6】
少なくとも前記可動フロアまたは前記昇降手段には緩衝材が配設され、前記可動フロアが下部位置に到達するときに前記可動フロアと前記昇降手段の当接部位同士または該昇降手段間の当接部位同士が前記緩衝材を介して互いに当接することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−15611(P2007−15611A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200612(P2005−200612)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】
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