説明

易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体

【課題】めっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適した易接着性ポリオレフィン架橋発泡体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂80〜98重量%およびアクリル樹脂2〜20重量%からなる樹脂組成物を樹脂マトリックス成分とし、脂肪酸金属塩を樹脂組成物の0.01〜1重量部含有する架橋樹脂発泡体であり、ゲル分率が10〜65%、見かけ密度が20〜300kg/m、かつ少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m以上である易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適した易接着性ポリオレフィン架橋発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、電子機器が広く一般家庭でも利用されているが、販路や用途の拡大に伴いこれらの電子機器から漏れる電磁波が他の電子機器に誤動作を起こさせたり、通信機器に電波障害を起こさせたりするという問題があった。
【0003】
この対策には、電磁波シールド材や電磁波吸収体が使用されているが、最近の電子機器の小型化、薄型化、機器種類の増加によって、電磁波防止性能だけではなく、安価で、装填作業が容易で、かつ様々な形状に成型可能なシールド材が要求されている。
【0004】
従来から実用化され使用に供されているシールド材としては、ウレタンフォームに無電解めっきしたもの(例えば、特許文献1参照)があるが、このシールド材は、オレフィンフォームと比較して高価であり、しかも0.1〜2.0mmのシート状のフォームを得にくいという問題があった。
【0005】
また、合成樹脂多孔体シートの両面に繊維状織物を積層し、その全体に無電解めっきしたもの(例えば、特許文献2参照)も実用されているが、このシールド材は、加工に多大な手間を要するため、コストアップになるという問題があった。
【0006】
更に、合成樹脂に導電性塗料を塗布したもの(例えば、特許文献3参照)は、実用に際して塗布した導電材料が表面から剥がれ、シールド性能が低下し易いという問題があった。
【特許文献1】特開平11−214886号公報
【特許文献2】特許平11−220283号公報
【特許文献3】特許平10−183358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、厚さが0.1〜2.0mmと薄く、しかも長尺であってもめっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適した易接着性ポリオレフィン架橋発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、ポリオレフィン樹脂80〜98重量%およびアクリル樹脂2〜20重量%からなる樹脂組成物を樹脂マトリックス成分とし、脂肪酸金属塩を樹脂組成物100重量部に対し0.01〜1重量部含有する架橋樹脂発泡体であり、ゲル分率が10〜65%、見かけ密度が20〜300kg/m、かつ少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とする易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下に説明するとおり、長尺ロール製品で保管しても層間接着が無く、めっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適した易接着性ポリオレフィン架橋発泡体を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明の樹脂マトリックス成分は、ポリオレフィン樹脂80〜98重量%およびアクリル樹脂2〜20重量%からなる樹脂組成物である。
【0013】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリ−1−ブテン、1,2−ポリブタジエン及びその水素添加物、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、およびエチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体等が挙げられる。
【0014】
これらのポリオレフィン樹脂の重合方法は特に制限はなく、高圧法、スラリー法、溶液法および気相法等の何れでも良く、重合触媒についても、チーグラー触媒やメタロセン触媒等、特に制限されるものではない。これらのポリオレフィン系樹脂は、目的とする樹脂組成物および発泡体の特性に応じて、必要であれば2種類以上用いても良いし、機能を付与する目的で、カルボン酸等で変性されたものであっても良い。
【0015】
本発明で使用されるアクリル樹脂としては、エチレン−アルキルアクリレート共重合体が好適である。ここでいうエチレン−アルキルアクリレート共重合体とは、エチレンとアルキルアクリレートとの共重合体である。これらは交互共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。アルキルアクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートのような炭素数1〜4のアルキルのアクリレートを挙げることができる。
【0016】
このエチレン−アルキルアクリレート共重合体中のアルキルアクリレートの含有量は、2〜30重量%、好ましくは4〜20重量%であることが必要である。アルキルアクリレートの含有量が2重量%未満であると、無電解めっきの金属が剥がれてしまう。一方、30重量%を超えると、柔軟なために架橋発泡体長尺シートをロール状に巻き取ったあと、経時で密着してしまい、シート状に取り出せなくなってしまう。好ましいエチレン−アルキルアクリレート共重合体は、エチレン−エチルアクリレート(EEA)共重合体である。
【0017】
こうした特性を備えたエチレン−アルキルアクリレート共重合体は、通常、高圧ラジカル重合法で製造される。また、市販のエチレン−アルキルアクリレート共重合体も使用できる。例えば、日本ユニカー社からNUC−6170の商品名で入手可能なエチレン−エチルアクリレート共重合体などがある。
【0018】
本発明に添加される脂肪酸金属塩としては特に限定されるものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが例示できる。発泡体の表面平滑性を損なわず、発泡体ロール製品の層間接着を防止するには、ステアリン酸マグネシウムを使用するのが経済性の観点からも好ましい。これら脂肪酸金属塩の添加量は樹脂組成物100重量部に対して0.01〜1重量部含有する事が好ましい。0.01重量部よりも少ないと発泡体ロール製品の層間接着が起こり、シート状発泡体として加工できない。また、1重量部よりも多いとめっき特性が悪化するので好ましくない。これら化合物の添加方法は特に限定されるものではないが、あらかじめ樹脂との溶融混錬(コンパウンド)したものを原材料に添加する方法が作業性から好ましい。
【0019】
本発明において、上記樹脂組成物からなる樹脂マトリックス成分を架橋する方法は特に限定されず、例えば、電離性放射線を所定線量照射する方法、過酸化物による架橋、シラン架橋などを挙げることができる。この中でも架橋の均一性、生産安定性を考慮し電離性放射線照射が好ましい。
【0020】
電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができる。電離性放射線の照射線量は、目的とする架橋度等によって異なるが、通常1〜500kGy、好ましくは5〜300kGyである。照射線量が少なすぎると得られる発泡体の耐熱性が不十分となり、多すぎると得られる発泡体の成形加工性が低下する。
【0021】
また、樹脂組成物のみでは架橋構造を導入することが困難な場合には、架橋助剤を用いて上記方法と併用することで架橋構造を導入することができる。架橋助剤としては特に制限はないが、多官能モノマーを使用するのが好ましい。多官能モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼンなどを使用することができる。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。これらの多官能モノマーは、樹脂マトリックス成分100重量部に対して好ましくは0.5〜10重量部添加される。
【0022】
本発明において、樹脂組成物を発泡する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましくは熱分解型発泡剤を樹脂組成物に添加する方法が用いられ、特に好ましくは有機系熱分解型発泡剤が用いられる。
【0023】
有機系熱分解型発泡剤としては、具体的には、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。有機系熱分解型発泡剤は、樹脂マトリックス成分100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは1〜25重量部の割合で添加される。有機系熱分解型発泡剤の添加量は、少なすぎると樹脂組成物の発泡性が低下し、多すぎると得られる発泡体の強度、並びに耐熱性が低下する傾向がある。
【0024】
熱分解型発泡剤を用いた場合の発泡は、架橋した樹脂組成物を該発泡剤の熱分解温度以上に加熱することで通常行われる。
【0025】
本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体の発泡倍率は3〜50倍であることが好ましい。発泡倍率が3倍を下回ると成型品の柔軟性が低下傾向となり、発泡倍率が50倍を上回ると耐熱性の低下や高温での成形加工性の低下を招くことがある。
【0026】
そして、本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体のゲル分率は、耐熱性と高温での成形加工性を維持するために10〜65%、特に15〜40%であることが必要である。ゲル分率が10%未満であると発泡体の耐熱性が低下傾向となり、65%を超えると発泡体の伸びが低下し、成形加工性が低下傾向となる。
【0027】
なお、本発明でいうゲル分率とは、以下の方法にて算出した値のことである。すなわち、ポリオレフィン系樹脂発泡体を約50mg精密に秤量し、120℃のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出した値である。
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量したポリオレフィン樹脂発泡体の重量(mg)}×100
また、本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体においては、見かけ密度が20〜300kg/m、特に40〜250kg/mであることが必要である。見かけ密度が20kg/m未満であると、発泡体の強度が不足し、加工時の折れ曲がりなどの加工不具合が生じ、300kg/mを超えると弾力性がなく、導電性シールド材の密閉性能が劣ってしまう。なお、見かけ密度は次の式で算出する。
【0028】
見かけ密度(kg/m)=〔10×10cmの板状サンプルの重量(g)〕/体積
さらに、本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体は、少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m以上、とくに48mN/m以上であることが必要である。少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m未満であると、無電解メッキの接着力が弱く、簡単にメッキ層が剥離してしまうため好ましくない。なお、ぬれ指数は、純正化学製のぬれ張力試験液を使いJISK6768に準拠し、評価する。
【0029】
本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体においては、本発明の目的が損なわれない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、熱安定剤、顔料などを添加してもよい。
【0030】
また、易接着性ポリオレフィン架橋発泡体の厚さの調整方法は、特に限定はなく、加熱発泡時に0.1〜2.0mmの所定の厚みに成型する方法、得られたフォームの厚みをロールあるいはオーブン中で加熱したあと、長手方向、あるいは幅方向に拡幅して成型品を得る方法、発泡体を厚み方向にスライスする方法及びそれを加熱延伸する方法、搬送ロール中で圧縮処理を行う方法などが用いられる。特に、得られたフォームを長手方向あるいは/または幅方向に拡幅する方法で得られた架橋発泡体は厚みムラが小さくなり、その結果、シールド部品のバラツキが小さくなることから好ましい。
【0031】
なお、厚さが0.1mmよりも薄いとフォームの弾力性がなく、導電性シールド材の密閉性能が劣り、また、2.0mmを超えるものは圧縮無しでは導電性シールド材としての導電性を保持できず使用できない。
【0032】
次に、本発明の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体の好ましい製造方法について説明する。
【0033】
まず、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、架橋助剤、熱分解型発泡剤、脂肪酸金属塩よりなる組成物の所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。次いで、得られたシートに電離性放射線を所定線量照射してオレフィン系樹脂を架橋させる。電離性放射線としては、電子線、X線、β線、γ線等が使用される。照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。また、電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。次いで、この架橋シートを例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバス、ソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上、且つ樹脂の融点以上の温度、例えば190〜290℃に加熱して発泡させる。さらに、得られた発泡体をシート表面温度が130〜170℃まで加熱後、ロール間速度差をつけることで長手方向に1.1〜2.5倍もしくは幅方向に1.1〜2.5倍まで拡幅し、その後、コロナ放電処理を行い、ロール状に巻き取ることで、上記の特性を備えた易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体を低価格で効率的に製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0035】
なお、実施例に用いた評価は以下の方法で行った。
[厚み]
JIS K 6767に準拠して測定を行った。
[表面濡れ指数]
JIS K 6768の濡れ試験方法に準拠して測定された値。
[テープ加工特性]
テープ耐熱性は100℃、60分の加熱後、測定前の距離の収縮率が50%以下のものを○、50%を超えるものを×とした。
【0036】
テープ成型加工性は1000mm幅の長尺シートから、10mm幅スリット製品を得る場合にシワが混入しない製品を○、シワが混入した製品を×とした。
【0037】
テープ弾力性は、25%圧縮硬さ(JIS6767準拠)が150kPa以下の場合は○、150kPaより大きい場合を×とした。
[発泡体の接着特性]
得られた発泡体を10cm×10cmに切り出し10層積み重ねる。これに10kgの同底面積の錘を平行にのせ、30日簡、23℃の環境下においた。錘を外した後、1時間放置し、発泡体層間の接着有無を評価した。評価は真っ直ぐ上方へ発泡体を1枚ずつ持ち上げた時、1枚毎に付着なく剥がれるものを○、他の層の発泡体とともに持ち上がったものを×とした。
[めっき処理]
架橋樹脂発泡体成形品を苛性ソーダ(20g/L)溶液中で40℃、5分間親水化処理を行った。
【0038】
水洗後、塩酸水溶液(10%)で中和処理を行った後、塩化すず(2g/L)、塩化パラジウム(0.2g/L)、および塩酸(100ml/L)を含む触媒液中で、室温により2分間浸漬し、触媒処理を行った。さらに水洗後、硫酸水溶液(5%)中で活性化処理した架橋樹脂発泡体成形品を下記の無電解銅めっき浴(めっき浴1)に45℃、5分間浸漬し、無電解銅めっき処理を行った。
めっき浴1:
硫酸銅5水和物10g/L
ホルムアルデヒド(37%)10g/L
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)40g/L
酒石酸カリウムナトリウム5g/L
苛性ソーダ 12g/L
続いて、塩化パラジウム(0.2g/L)および塩酸(100ml/L)を含む触媒液中で2分間浸漬し、触媒処理を行った後、下記の無電解ニッケルめっき浴(めっき浴2)中に60℃、3分間浸漬し、無電解ニッケルめっき処理を行い、金属めっき発泡樹脂を得た。
めっき浴2:
硫酸ニッケル6水和物 20g/L
次亜リン酸ナトリウム1水和物30g/L
酢酸ナトリウム5g/L
クエン酸3ナトリウム30g/L
pH 4.8
得られた金属めっき発泡体を、十分乾燥させたあと、めっき済み発泡体を折り曲げ、めっきが剥がれないものを○、めっきが剥がれるものを×と評価した。
【0039】
[実施例1]
ポリオレフィン樹脂として、プロピレンにエチレンを5.2重量%ランダム共重合したMIが2.2g/10分、密度が0.901kg/mのポリプロピレン樹脂65kg、MIが9.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン10kg、アクリル樹脂としてエチレン−エチルアクリレート共重合体(20%エチルアクリレート含量)を25kg、脂肪酸金属塩として20%ステアリン酸マグネシウムを含有するポリエチレン混練物2.5kg、安定剤として”イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、”イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド7.4kg、ジビニルベンゼン3.0kgを準備し、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、発泡剤、安定剤をヘンシェルミキサーに投入し、200〜400rpmの低速回転で約3分混合し、ついで 800〜1000rpmの高速回転とし、3分間混合して発泡用樹脂組成物とした。
【0040】
この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には190℃に加熱したベント付き押出し機に供給、Tダイから押し出し、厚みが0.6mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0041】
このシートに148kGyの電子線を照射し、架橋した後、240℃に加熱した溶融アルカリ金属塩浴上で両面交互に3分間加熱し、発泡剤を分解して発泡体を得た。
【0042】
さらに得られた発泡体を十分に水洗した後、60℃で1時間加熱乾燥させ、架橋樹脂発泡体を得た。このようにして得られた架橋樹脂発泡体は、厚み1.2mm、ゲル分率は35%、密度80kg/mであった。
【0043】
この発泡体を、加熱延伸し、コロナ放電処理を行ったところ、厚み0.8mm、密度100kg/m濡れ指数48mN/mであった。評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
MIが6.5g/10分、密度が0.933kg/m3のポリエチレン75kg、エチレン−エチルアクリレート共重合体(20%エチルアクリレート含量)を25kg、脂肪酸金属塩として20%ステアリン酸マグネシウムを含有するポリエチレン混練物2.5kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.4kg、安定剤として”イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、”イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kgを実施例1と同様の方法で混練した。
【0045】
この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には150℃に加熱したベント付き押出し機に供給、Tダイから押し出し、厚みが0.6mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0046】
このシートに85kGyの電子線を照射し、架橋した後、240℃に加熱した溶融アルカリ金属塩浴上で両面交互に3分間加熱し、発泡剤を分解し発泡体を得た。
【0047】
このようにして得られた架橋樹脂発泡体は、厚み1.1mm、ゲル分率は23%、密度130kg/mであった。この発泡体を厚み方向に2分割スライス加工し、さらに加熱延伸後、コロナ放電処理を行った所、厚みムラが良好で、濡れ指数52mN/mであった。評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1,2,3]
樹脂組成物の組成を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0049】
[比較例4]
電離性放射線量を0.8kGyと変更した以外は、実施例1と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例5]
電離性放射線量を520kGyと変更した以外は、実施例1と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0051】
[比較例6]
有機系発泡剤添加量を0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例7]
有機系発泡剤添加量を53重量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜2の発泡体は、表面濡れ指数が高く、厚みムラが良好で、発泡体層間での接着が無い、めっき特性に優れたシート状の発泡体を得た。一方、脂肪酸金属塩を含まない場合(比較例1)は、ロール状の長尺シートに巻き取った後、樹脂同士が接着を起こしてしまい、めっき加工ができなかった。アクリル樹脂を含まない場合(比較例2)、アクリル樹脂が少ない場合(比較例3)は濡れ指数が悪かった。また、照射エネルギーが少なかった場合(比較例4)、耐熱性が不足し、ロール状の長尺シートに巻き取った後、樹脂同士が接着を起こしてしまい、めっき加工ができなかった。また、逆に照射線量が高い場合(比較例5)あるいは発泡剤量を少なくして発泡倍率を低くした場合(比較例6)は、フォームの柔軟性が低くなり、弾力性が乏しく、硬いために成型加工できない製品だった。また、発泡剤量を多くして発泡倍率を高くしすぎた場合(比較例7)は、一度変形させた後の形状回復性能が乏しく、加工時の生産性が乏しかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の易接着性ポリオレフィン架橋発泡体は、厚さが0.1〜2.0mmと薄く、しかも長尺であってもめっき性に優れ、機械的特性および外観が良好であるため、電子機器における電磁波シールド材料用途に好ましく使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂80〜98重量%およびアクリル樹脂2〜20重量%からなる樹脂組成物を樹脂マトリックス成分とし、脂肪酸金属塩を樹脂組成物100重量部に対し0.01〜1重量部含有する架橋樹脂発泡体であり、
ゲル分率が10〜65%、見かけ密度が20〜300kg/m、かつ少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とする、易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体。
【請求項2】
前記アクリル樹脂がエチレン−アルキルアクリレート共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体。
【請求項3】
電離性放射線の照射により架橋されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体。
【請求項4】
厚さが0.1〜2.0mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の易接着性ポリオレフィン架橋樹脂発泡体。

【公開番号】特開2009−79112(P2009−79112A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248762(P2007−248762)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】