説明

易開封性缶蓋

【課題】指掛かり部を持ち上げた指掛かり性を維持しつつ、重ねた場合に指掛かり部が干渉しない構造の易開封性缶蓋を提供し、もって重ねた状態での搬送性,梱包性の向上を図る。
【解決手段】外面に開口予定部2を縁取るスコア3が刻設された缶蓋本体4と、この缶蓋本体4の外面に固定されたスコア破断用のタブ5とを備え、缶蓋本体4の外面に対してタブ5の指掛かり部51をタブ本体52より高くした易開封性缶蓋において、缶蓋本体4の中心軸Oを回転中心としてタブ5を回転させた場合の指掛かり部51が描く回転軌道を想定し、この回転軌道を缶蓋本体4に投影した指掛かり部の回転軌道投影領域R上に、少なくとも指掛かり部51が収まる広さを有する外面側に凸で内面側に凹形状となるエンボス加工部7を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコア破断用のタブを備えた易開封性缶蓋に関し、特に、タブの指掛かり部を高くした易開封性缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の易開封性缶蓋としては、たとえば図2(A)に示すようなものが知られている。
すなわち、外面に開口予定部101Aを縁取るスコア101が刻設された缶蓋本体102と、この缶蓋本体102の外面に固定されたスコア破断用のタブ103とを備え、缶蓋本体102の外面に対してタブ103の指掛かり部104をタブ本体105より高くして、指掛かり部104と缶蓋本体102間の隙間gを可及的に大きくし、指掛かり性の向上を図っていた。
【0003】
一方、従来から缶蓋の搬送ラインは、搬送ガイドに沿って缶蓋を一列に重ねた状態で連続的に搬送するようになっている。このような搬送ラインで指掛かり部を高くした従来の易開封性の缶蓋を搬送する場合、図2(B)に示すように、缶蓋を重ねると下位の缶蓋の指掛かり部104が上位の缶蓋本体102に当たってしまう。
【0004】
そのため、缶蓋同士ががたつき、缶蓋間の間隔が一定にならずに密集したり広がったりしながら搬送されるクッション量が多くなり、指掛かり部104が衝突して傷ついたり、甚だしい場合は傾いた缶蓋が搬送ガイドに引っ掛かって変形するといった不具合も生じる。このような不具合を防止するためには、低速での搬送設備の安定制御が必要となり、高速生産に対応できないという問題がある。
【0005】
また、一列に重ねた状態で梱包する際に、決められた袋長さに入る蓋枚数が少なくなるので、得意先納入数量の低下、ひいては得意先での飲料缶等の生産効率低下につながるという問題があった。
なお、指掛かり部を高くした他の先行技術としては、たとえば特許文献1に記載のようなものがある。
【特許文献1】特公昭50−022957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、指掛かり性を維持しつつ、重ねた場合に指掛かり部が干渉しない構造の易開封性缶蓋を提供し、もって重ねた状態での搬送性,梱包性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、外面に開口予定部を縁取るスコアが刻設された缶蓋本体と、この缶蓋本体の外面に固定されたスコア破断用のタブとを備え、缶蓋本体の外面に対してタブの指掛かり部をタブ本体より高くした易開封性缶蓋において、缶蓋本体の中心軸を回転中心としてタブを回転させた場合の指掛かり部が描く回転軌道を想定し、この回転軌道を缶蓋本体に投影した指掛かり部の回転軌道投影領域上に、少なくとも指掛かり部が収まる広さを有する外面側に凸で内面側に凹形状となるエンボス加工部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、エンボス加工部はスコア近傍まで広げられ、メタル余りを吸収するメタル余り吸収部としても機能することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、エンボス加工部は、タブを隔てて左右のパネル領域の2箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、缶蓋本体に指掛かり部が収まる広さを有するエンボス加工部を設けたので、缶蓋を重ねた場合に、下位の缶蓋の外面に突出する指掛かり部が上位の缶蓋の内面に設けられたエンボス加工部の凹部に収まる。したがって、搬送時に缶蓋列が安定した状態で搬送され、従来のような指掛かり部による傷つきや傾きによる変形といった不具合が解消され、高速で生産することも可能となる。
また、一列に重ねた状態で梱包する際にも、決められた袋長さに入る蓋枚数は指掛かり部を高くしない缶蓋と変わらないので、生産効率を落とすことがない。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、一つのエンボス加工部で、指掛かり部の収納機能とメタル余り吸収機能の2つの機能を持たせることができ、形状を単純化することができる。
請求項3に係る発明によれば、エンボス加工部をタブに対して左右2箇所に設けているので、重ねた際に、缶蓋同士がどちらに回転しても一方の指掛かり部が他方のエンボス加工部に到達し、はまりやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋を示している。
この易開封性缶蓋1は、開口予定部2を縁取るスコア3が刻設された缶蓋本体4と、この缶蓋本体4の外面に固定されたスコア破断用のタブ5とを備え、缶蓋本体4の外面に対してタブ5の指掛かり部51が平坦なタブ本体部52より高く構成されている。
【0012】
缶蓋本体4は、円板状のパネル部41と、このパネル部41の周縁に環状溝42を介して連結され上方に立ち上がるチャックウォール部43と、チャックウォール部43上端部から半径方向外方に延びて不図示の缶本体の巻き締めフランジ部と共に巻き締められる巻き締めカール部44とを備えている。
開口予定部2はパネル部41の中央付近から周縁に向けて舌状に延びる形状で、その周縁を取り囲むスコア3によって画成されている。このスコア3はタブ5によって隠された部分が一部開いており、スコア3に沿って破断された開口予定部2とパネル部41とを連結するヒンジ部を構成する(図示せず)。
【0013】
タブ5はてこ作用によってスコア3を破断させる剛性を有する略楕円形状に成形した板材で、リベット部45に固定される固定部53と、開口予定部2内に延びて開口予定部2を押圧する押圧作用部として機能するタブ先端部54と、固定部53に対して開口予定部2と反対側に延びる摘み部55とから構成されている。摘み部55は楕円形状の指掛け孔56を有し、指掛け孔56の左右に位置する側板部57,57の後端部を連結する端板部が指掛かり部51となっている。
すなわち、タブ先端部54,固定部53および摘み部55の側板部57までが上面が同一高さの平坦なタブ本体部52を構成するもので、指掛かり部51がタブ本体部52に対して所定高さ高くなっている。
【0014】
また、図示例では、指掛かり部51はタブ5の中心線Nに対して直交する方向に延びる直線状で、その両端が円弧状に曲がって左右側板部57,57につながっており、直線状の指掛かり部51の後端は円弧状のパネル部41の周縁より所定寸法中心側に位置し、タブ5の指掛かり部51の後方に位置するパネル部41の周縁部には、所定深さの段凹部6が設けられ、指掛かり部51を高くした構成と相まってより指が掛かりやすい構造となっている。段凹部6の深さは周縁の環状溝42よりも若干浅い。
【0015】
そして、缶蓋本体4の中心軸Oを回転中心としてタブ5を回転させた場合の指掛かり部51が描く回転軌道を想定し、この回転軌道を缶蓋本体4に投影した指掛かり部51の回転軌道投影領域R上に、少なくとも指掛かり部51が収まる広さを有する外面側に凸で内面側に凹形状となるエンボス加工部7が設けられている。図示例では、回転軌道投影領域Rの外径線R1は指掛かり部51の円弧状の角部を通る円で、パネル41の半径の三分の二程度の半径となっている。また、内径線R2は、指掛かり部51の内側縁に接する円で、パネル部41の半径の略半分程度の半径で、この外径線R1と内径線R2の間の環状の領域が指掛かり部の回転軌道投影領域Rである。
【0016】
図示例では、タブ5と開口予定部2を避けて、タブ5と開口予定部2の左右に位置するパネル領域に、エンボス加工部7が左右対称的に設けられている。一方のエンボス加工部7について説明すると、パネル部41の中心Oを通りタブ5の中心線Nに対して直交する直交線Mに対して対称的に開いた略扇形状で、回転軌道投影領域Rの外径線R1より大径でパネル部41の周縁より若干小径の大円弧部73と、開口予定部2のスコアの湾曲部に沿って延びる第1小円弧部74と、タブ5の側縁に沿って延びる第2小円弧部75とによって囲まれており、第1小円弧部74と大円弧部73の連結部、第2小円弧部75と大円弧部73との連結部、さらに第1小円弧部74と第2小円弧部75の中央の連結部はR形状となっている。このように、エンボス加工部7の第1小円弧部74はスコア3近傍まで広げられ、スコア3周りのメタル余りを吸収するメタル余り吸収部としても機能する。
【0017】
次に、本実施の形態の易開封性缶蓋の作用について説明する。
開口する際には、タブ5の指掛かり部51の外側縁に指を掛け、上方に持ち上げる。そのままタブ5を起こして開口操作してもよいし、持ち上げた後に指掛け孔56に指を入れて開口操作してもよい。指掛かり部51を上方に位置させて、さらに段凹部6を設けているので、指掛かり性がよい。
【0018】
一方、缶蓋本体4に指掛かり部51が収まる広さを有するエンボス加工部7が設けられているので、缶蓋を重ねた場合に、図1(B)に示すように、下位の缶蓋のチャックウォール部43内周に上位の缶蓋のチャックウォール部43の外周が嵌合して芯出しされる。なお、図1(B)の上位の缶蓋については、タブは省略している。搬送時において缶蓋同士が相対回転し、下位の缶蓋の外面に突出する指掛かり部51が上位の缶蓋の内面に設けられたエンボス加工部7の凹部71に収まる。指掛かり部51が凹部71に収まった後は、缶蓋同士のがたつきは規制され、缶蓋列が安定した状態で搬送されるので、従来のような指掛かり部51による傷つきや傾きによる変形といった不具合が解消され、高速で生産することも可能となる。特に、この実施の形態では、エンボス加工部7が左右2箇所にあるので、左右いずれの方向に回転しても、下位のタブの指掛かり部51がはまりやすい。
【0019】
また、一列に重ねた状態で梱包する際にも、決められた袋長さに入る蓋枚数は指掛かり部を高くしていない缶蓋と変わらないので、生産効率を落とすことがない。
なお、本実施の形態では、エンボス加工部7をタブおよび開口予定部の左右のパネル領域のほぼ全面にわたって形成しているので、この広いエンボス加工部7を印刷面として種々の装飾,情報を表示することができる。
もっとも、エンボス加工部7は指掛かり部51が収まる広さがあればよく、メタル余り吸収部とは別々に形成してもよい。また、左右のパネル領域のうち一方のパネル領域のみに設けるようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、部分開口用の缶蓋について説明したが、全面開口用の缶蓋についても適用可能であるし、開口時にタブが缶蓋に残存するステイオン方式の缶蓋に限らず、タブを除去するような方式の缶蓋についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る易開封性缶蓋を示すもので、同図(A)は平面図、同図(B)は指掛かり部と重ねられた上位の缶蓋のエンボス加工部の凹部との関係を示す断面図である。
【図2】図2は従来の易開封性缶蓋を示すもので、同図(A)は平面図、同図(B)は指掛かり部と重ねられた上位の缶蓋との関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 易開封性缶蓋
2 開口予定部
3 スコア
4 缶蓋本体
41 パネル部、42 環状溝、
43 チャックウォール部、44 巻き締めカール部、45 リベット部
5 タブ
51 指掛かり部、52 タブ本体部、53 固定部
54 タブ先端部、55 摘み部、56 指掛け孔、57 側板部
6 段凹部
7 エンボス加工部
71 エンボス凹部、72 エンボス凸部
73 大円弧部、74 第1小円弧部、75 第2小円弧部
N 中心線
R 回転軌道投影領域
R1 外径線
R1 内径線
M 直交線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に開口予定部を縁取るスコアが刻設された缶蓋本体と、該缶蓋本体の外面に固定されたスコア破断用のタブとを備え、缶蓋本体の外面に対してタブの指掛かり部をタブ本体より高くした易開封性缶蓋において、
缶蓋本体の中心軸を回転中心としてタブを回転させた場合の指掛かり部が描く回転軌道を想定し、この回転軌道を缶蓋本体に投影した指掛かり部の回転軌道投影領域上に、少なくとも指掛かり部が収まる広さを有する外面側に凸で内面側に凹形状となるエンボス加工部を設けたことを特徴とする易開封性缶蓋。
【請求項2】
エンボス加工部はスコア近傍まで広げられ、メタル余りを吸収するメタル余り吸収部としても機能することを特徴とする請求項1に記載の易開封性缶蓋。
【請求項3】
エンボス加工部は、タブを隔てて左右のパネル領域の2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の易開封性缶蓋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−213357(P2006−213357A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28260(P2005−28260)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】