説明

映像信号調整装置

【課題】 複数の映像出力信号の実際の色調や輝度が同一となるように、映像信号を調整する映像信号調整装置を提供する。
【解決手段】 映像信号発生器5a〜5nは入力されるデジタル映像データに基づいて、アナログ映像信号を発生し、色調整部12a〜12nにより前記映像信号に対して、それぞれ色調整を行う。計測器7a〜7は、色調整手段12a〜12nにより調整された映像信号における輝度信号振幅などを計測する。比較器3は計測器7a〜7による複数の映像信号の計測結果を互いに比較する。調整制御部2は比較器2の比較結果に基づいて、各色調整部12a〜12nにより調整された映像信号が互いに同一となるように、前記色調整部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像出力信号の色調整を行う映像信号調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製品発表会場で複数のモニタテレビを使用して新製品の説明を行う場合等、複数のモニタテレビを使用して多数の視聴者に映像を提供することがある。このような場合、各モニタテレビの色調及び輝度等の映像調整が同一に設定されていても、各モニタテレビに表示される映像の色調や輝度が異なることがある。色調や輝度が異なると視聴者に違和感を与えるので、色調や輝度が同様になるように各モニタテレビに供給される各映像信号に対して映像調整が行われる。このときの調整は、各モニタテレビを用いて行っても良いが、モニタテレビに映像を送る側の映像信号出力装置で行っても良い。一般にこのような映像信号出力装置では、各モニタテレビに供給される映像信号毎に、映像調整回路が設けられている。下記特許文献1では、複数の映像信号について個別に且つ容易に映像調整を行う装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−264604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
全く同一構成の映像調整回路を各映像信号について設けた映像信号出力装置を製作し、映像調整回路の設定値を同様に設定した場合でも、複数のモニタテレビに表示される映像には、色調や輝度に差が生じる。これは、映像調整回路を構成する素子の特性のばらつき等により、実際の色調や輝度が映像調整回路の設定値を全く同様に設定した場合でも、複数の映像信号において異なるからである。
【0004】
表示される映像の色調や輝度を同一にするためには、複数の映像信号について映像調整回路を個別に調整する必要がある。例えば1つの映像調整回路により調整された映像信号の色調や輝度に、他の映像調整回路により調整された映像信号の色調や輝度を合わせる必要がある。従来はこのような場合、オペレータが各映像信号の振幅や位相を測定器を用いて測定し、複数の映像調整回路の設定値を調整していた。このような調整作業は煩雑で時間の掛かる作業であった。
【0005】
本発明は、複数の映像出力信号の実際の色調や輝度が同一となるように、映像信号を調整する映像信号調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の1実施例による映像信号調整装置は、入力されるデジタル映像データに基づいて、アナログ映像信号を発生する複数の映像信号発生手段と、前記複数の映像信号発生手段により発生された映像信号に対して、それぞれ色調整を行う複数の色調整手段と、前記複数の色調整手段により調整された複数の映像信号を計測する計測手段と、前記計測手段による複数の映像信号の計測結果を比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果に基づいて、各色調整手段により調整された映像信号が互いに同一となるように、前記色調整手段を制御する調整制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、複数の映像出力信号の実際の色調や輝度が同一となるように、映像信号を自動調整する映像信号調整装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明による映像信号調整装置20の一実施例を示すブロック図である。本装置は複数のアナログ映像信号出力を持つ装置に実装される。
【0010】
調整制御部2は、操作部11を介して入力されるオペレータの指示に応じて、本装置各部に制御信号を提供する。基準信号発生器1は、映像出力信号の調整に使用される様々なデジタルの基準映像信号(テストパターン信号)TPSを、調整制御部2からのパターン選択信号PSに応じて発生する。切替器4a〜4nは、入力端子9a〜9nからそれぞれ入力されるデジタル映像データVIa〜VInまたはテストパターン信号TPSを調整制御部2からの切替信号SC1に応じて選択することにより、入力信号を切替える。
【0011】
映像信号発生器5a〜5nは、切替器4a〜4nによりそれぞれ選択されたデジタル信号を基にアナログ信号を発生する。映像信号発生器5a〜5nは、NTSCエンコーダ及びデジタルアナログ変換器(共に図示されず)、及び位相調整部を含む色調整回路12等からそれぞれ構成される。色調整回路12等の特性は、各映像信号発生器5a〜5nに設けられたレジスタ(図示されず)の値を、調整制御部2からのレジスタ設定信号VRa〜VRnにより変更することで変更可能である。
【0012】
アンプ・フィルタ6a〜6nは、映像信号発生器5a〜5nから供給される映像信号をそれぞれ増幅及びノイズ除去し、出力映像信号VOa〜VOnを提供する。アンプ・フィルタ6a〜6nのゲインは、調整制御部2からのゲイン制御信号VGa〜VGnによりそれぞれ変更可能である。出力映像信号VOa〜VOnは切替器8a〜8nを介して、本装置に接続されたモニタテレビ21a〜21nに供給され、映像が表示される。
【0013】
次に、本発明に係る映像信号調整装置の動作を説明する。ここでは、映像出力信号VOa〜VOnを、同様の輝度・色合い(色調)に調整する場合について説明する。
【0014】
(a)操作部11から映像出力信号VOa〜VOnの輝度・色合いを均一に揃える指示を受けると、調整制御部2は、先ず切換器8a〜8nを、通常映像信号(映像出力信号VOa〜VOn)側から接地側に切換え、調整中の映像信号が外部に出力されないようにする。
【0015】
(b)調整制御部2は、切換器4a〜4nを、通常映像信号入力(VIa〜VIn)側から、調整用の基準映像信号TPS側に切り替える。
【0016】
(c)次に調整制御部2はパターン選択信号PSを発生し、基準信号発生器1からは調整に使用する基準となる映像データが出力される。この基準映像データは、単色データやカラーバーなど調整の用に適したデータである。また、この基準映像データは、後段の映像信号発生器の仕様に合致したフォーマットのデータであって、例えばITU−R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector)のBT.656に準拠したデータである。
【0017】
(d)映像信号発生器5a〜5nは、各レジスタの既定設定値(デフォルト値)を用いて、デジタルの基準映像データからアナログの映像信号を発生する。
【0018】
(e)アンプ・フィルタ6a〜6nは、映像信号発生器5a〜5nから出力された映像信号を、それぞれの既定ゲイン値(デフォルト値)に従って増幅する。
【0019】
(f)映像出力信号VOa〜VOnは、それぞれ計測器7a〜7nにより波形計測され、その測定結果MVa〜MVnは比較器3に供給される。
【0020】
この波形計測は、例えば映像信号がコンポジットビデオ信号であれば、クランプ処理、ピークホールド処理を施した後、波形振幅を計測すれば、輝度に関する調整情報を得ることが出来る。コンポジットビデオ信号の色信号部分の振幅と信号位相を測定すれば、彩度(色の濃さ)と色相(色の違い)に関する調整情報も得ることが出来る。
【0021】
図2は1つの基準映像信号TPSに対応するコンポジットビデオ信号波形の一例を示す。輝度信号は黒レベルLbを基準としており、直流電圧値が情報を表している。従ってクランプ処理においては、この黒レベルLbをクランプすなわち固定(図2では1Vに固定)し、このレベルを基準に信号振幅測定を行う。
【0022】
計測器7a〜7nは、輝度信号をピークホールドして輝度信号の振幅を複数の映像出力信号VOa〜VOnについて測定する。色調整については、色信号部の例えば段差が生じている部分の位相を映像出力信号VOa〜VOnについて測定する。
【0023】
映像信号がコンポーネントビデオ信号であれば、RGB、輝度、色差などの信号振幅を測定することで、輝度、色合いに関する調整情報を得ることが出来る。
【0024】
図3は1つの基準映像信号TPSに対応するコンポーネントビデオ信号波形の一例を示す。
【0025】
計測器7a〜7nは黒レベルをクランプし、図3(a)の輝度信号Yの振幅を映像出力信号VOa〜VOnについて測定する。色調整については、図3(b)の色差信号Pb及び図3(c)の色差信号Prの振幅をそれぞれ測定する。尚、コンポーネントビデオ信号の場合、入力側切替器、映像信号発生器、アンプ・フィルタ、計測器及び出力側切替器は、輝度信号Y、色差信号Pb、色差信号Prそれぞれについて設けられる。
【0026】
(g)計測器7a〜7nの測定結果MVa〜MVnは、比較器3にて互いに比較される。比較器3は例えば、映像出力信号VOaの計測結果MVaを基準として、計測結果MVaと他の映像出力信号の計測結果との差をそれぞれ検出し、検出結果を調整制御部2に出力する。尚、基準となる計測結果は何れの計測結果でもよく、操作部11からの指示入力に応じて設定可能である。
【0027】
映像信号がコンポジットビデオ信号の場合、比較器3は輝度信号の振幅値を映像出力信号VOa〜VOnについて比較し、振幅差信号を調整制御部2に出力する。更に比較器3は映像出力信号VOa〜VOnにおける色信号の位相を比較し、位相差信号を調整制御部2に出力する。
【0028】
映像信号がコンポーネントビデオ信号の場合、比較器3は複数の輝度信号Yにおける振幅差を検出し、振幅差信号を調整制御部2に出力する。同様に比較器3は複数の色差信号Pbにおける振幅差及び複数の色差信号Prにおける振幅差を検出し、それら振幅差信号を調整制御部2に出力する。
【0029】
(h)調整制御部2は、比較器3の比較結果を基に、複数の映像信号VOa〜VOnの波形が同一となるように、映像信号発生器5a〜5nの内部レジスタの値及びアンプ・フィルタ6a〜6nのゲインを調節する。
【0030】
映像信号がコンポジットビデオ信号の場合、調整制御部2は比較器3から提供される色信号の位相差がなくなるように、映像信号発生器5a〜5nの内部レジスタの値を調整する。また調整制御部2は比較器3から提供される輝度信号の振幅差がなくなるように、アンプ・フィルタ6a〜6nのゲインを調節する。
【0031】
映像信号がコンポーネントビデオ信号の場合、調整制御部2は比較器3から提供される輝度信号Yの振幅差、色差信号Pbの振幅差及び色差信号Prの振幅差が、それぞれなくなるように、アンプ・フィルタ6a〜6nのゲインを調節する。
【0032】
以上のようにして、輝度や色合いの映像調整が自動的に行われる。本実施例では、このような自動映像調整を行う際に、上記項目(d)、(e)のように、映像信号発生器5a〜5n及びアンプ・フィルタ6a〜6nの設定値としてデフォルト値が用いられた。しかし、オペレータが例えばモニタテレビ21aに表示される画像の輝度・色合いが所望の輝度・色合いとなるように、映像出力信号VOa(映像信号発生器5a及びアンプ・フィルタ6aの設定値)を調整し、その後、調整された映像出力信号VOaと他の映像出力信号が同一となるように、他の映像信号発生器5及びアンプ・フィルタ6の設定値を自動映像調整にて調節しても良い。
【0033】
(i)調整完了後、調整制御部2は基準信号発生器1からの基準映像信号TPSの出力を停止し、切換器4a〜4nを通常映像信号側(VIa〜VIn側)に戻し、切換器8a〜8nを通常映像信号側(映像出力信号VOa〜VOn側)に戻す。これにより映像出力信号調整装置20は通常使用状態となる。
【0034】
以上説明したように本実施例によれば、一度の操作で容易に複数の映像出力信号を同時、且つ同一に自動調整できる。また、一つの映像出力信号を、所望の輝度・色合いに調整するだけで、他の映像出力信号も同様な輝度・色合いに自動的に調整することが出来る。
【0035】
次に本発明の第2実施例を説明する。
【0036】
図4は本発明の第2実施例に係る映像信号調整装置20の構成を示すブロック図である。第2実施例では、図1の映像出力信号VOa〜VOnに対してそれぞれ設けられていた計測器7a〜7nの代わりに計測器13が設けられる。計測器13は映像出力信号VOa〜VOnの波形を順次、時分割で測定し、その測定結果はホールド回路14により保持され、比較器3により比較される。このように、第2実施例は第1実施例より簡単な回路構成であるが、第1実施例と同様な機能を実現している。
【0037】
次に本発明の第3実施例を説明する。
【0038】
図5は本発明の第3実施例に係る映像信号調整装置20の構成を示すブロック図である。映像信号発生器5a〜5nに、同一の映像データ(図5では映像データVIa)が与えられるよう、切換器14a〜14nが構成される。この映像信号調整装置20には、基準信号発生器1は設けられていない。
【0039】
調整制御部2は切替信号SC3により、切替器15aをON、切替器15b〜15nを切替器14aからの信号側に切替える。この結果、映像信号発生器5a〜5bは、同一で任意の動画像信号あるいは静止画像信号を同時に発生する。切替器15b〜15nをこのように構成することで、基準信号発生器1が不要となっている。
【0040】
尚、本発明の応用例としては、複数のモニタテレビを使用して多数の視聴者に映像を提供する場合の映像信号出力装置の他に、テレビ受信機に使用される映像信号発生器及びアンプ・フィルタのデフォルト値の設定がある。本発明による映像信号調整装置に、複数の出荷用映像信号発生器及びアンプ・フィルタを搭載し、映像出力信号の実際の輝度や色合い等を同一に調整し、そのときの映像信号発生器における色調整回路のレジスタ値、及びアンプ・フィルタのゲインをデフォルト値として用いる。このデフォルト値を設定した状態で、映像信号発生器及びアンプ・フィルタをテレビ受信機に組み込む。このようにして、映像信号発生器及びアンプ・フィルタに関するデフォルト値を容易に決定することができ、均一な特性を有する映像信号発生器及びアンプ・フィルタをテレビ受信機に組み込むことができる。
【0041】
以上の説明はこの発明の実施の形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施例における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による映像信号調整装置20の一実施例を示すブロック図である。
【図2】1つの基準映像信号TPSに対応するコンポジットビデオ信号波形の一例を示す。
【図3】1つの基準映像信号TPSに対応するコンポーネントビデオ信号波形の一例を示す。
【図4】本発明の第2実施例に係る映像信号調整装置20の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る映像信号調整装置20の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1…基準信号発生器、2…調整制御部、3…比較器、4a〜4n、8a〜8n…切替器、11…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるデジタル映像データに基づいて、アナログ映像信号を発生する複数の映像信号発生手段と、
前記複数の映像信号発生手段により発生された映像信号に対して、それぞれ色調整を行う複数の色調整手段と、
前記複数の色調整手段により調整された複数の映像信号を計測する計測手段と、
前記計測手段による複数の映像信号の計測結果を比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、各色調整手段により調整された映像信号が互いに同一となるように、前記色調整手段を制御する調整制御手段と、
を具備することを特徴とする映像信号調整装置。
【請求項2】
映像信号の調整に用いられる基準映像データを発生する基準映像データ発生部と、
外部から入力される映像データと、前記基準映像データ発生部により発生された映像データの一方を選択し、前記映像信号発生手段に提供する映像データ選択部を具備することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。
【請求項3】
各映像信号発生手段により発生された映像信号の輝度を調整する複数の輝度調整部を更に具備し、
前記計測手段は、各輝度調整部により調整された映像信号の輝度成分の振幅を計測し、前記調整制御手段は、各輝度調整部により調整された映像信号の輝度成分の振幅が互いに同一となるように、前記輝度調整部を調整することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。
【請求項4】
前記映像信号はコンポジットビデオ信号であって、
各色調整手段は、前記コンポジットビデオ信号における色信号の位相を調整する位相調整部を具備し、
前記計測手段は、各位相調整部により調整された色信号の位相を計測し、前記比較手段は前記計測手段により計測された各位相間の位相差を検出し、前記調整制御手段は前記比較手段により検出された位相差がなくなるように、前記位相調整部を調整することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。
【請求項5】
前記映像信号はコンポーネントビデオ信号であって、
複数のコンポーネントビデオ信号の色差信号の振幅をそれぞれ調整する複数の振幅調整部を具備し、
前記計測手段は、前記振幅調整部により調整された色差信号の振幅を計測し、前記比較手段は前記計測手段により計測された各振幅の振幅差を検出し、前記調整制御手段は前記振幅差がなくなるように、前記振幅調整部を調整することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記複数の映像信号を時分割で計測する手段を具備することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。
【請求項7】
外部から入力される1つの映像データを前記複数の映像信号発生手段に提供する映像データ提供部を具備することを特徴とする請求項1記載の映像信号調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−13728(P2007−13728A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193061(P2005−193061)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】