説明

映像投影装置、映像投影システムおよび投影画面位置補正方法

【課題】コンバーターレンズ2を大型化することなく、コンバーターレンズ2の使用の有無による投影画面位置の変動を補正する。
【解決手段】映像投影装置1は、補正機構13を備えている。補正機構13は、投影レンズ12とスクリーンSCとの間の光路に対するコンバーターレンズ2の挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示素子11の表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって補正する。この補正は、予め設定された、コンバーターレンズ2の挿入状態に対応する第1の位置A1または退避状態に対応する第2の位置A2に投影レンズ12を移動させることにより行うことができる。投影レンズ12の移動は、例えばユーザによる指示部14からの指示に基づいて、移動機構15によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子の表示映像を投影レンズを介して被投影面に投影する映像投影装置と、その映像投影装置を備えた映像投影システムと、投影画面位置補正方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シネスコ画面などの様々なフォーマットの映像鑑賞に対応するため、適時、投影レンズの前にコンバーターレンズを挿入または退避させて、表示素子の表示映像を被投影面であるスクリーンに投影することが多くなってきている(例えば特許文献1参照)。このような投影形態では、投影レンズの光軸と表示素子の表示面の中心とを一致させ、装置の設置性を制限するか、台形歪みを許容して斜め投影を行うのがこれまで一般的であった。
【0003】
しかし、最近のホームシアター用プロジェクタでは、各家庭の部屋の状況や様々な設置状態に対応できるように、投影レンズを上下、左右に移動させて投影位置を調整できるようになっている。この結果、投影レンズの光軸が表示素子の表示面の中心からシフトした状態で映像を投影する状況が増えてきている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−72887号公報
【特許文献2】特開平5−134213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図8(a)に示すように、投影レンズ101の光軸AXと表示素子102の表示面102aの中心Pとがずれた状態で映像をスクリーンSCに投影する構成では、投影レンズ101の前方にコンバーターレンズ103がない状態で投影画面中心QがスクリーンSCの中心Sに一致していても、図8(b)に示すように、コンバーターレンズ103を挿入して映像を投影したときに、投影画面中心QがスクリーンSCの中心Sからシフトしてしまい、設置されたスクリーンSCから投影画像がずれてしまう。コンバーターレンズ103の挿入状態と退避状態とで、投影画面中心Qがシフトする(投影画像がずれる)ということは、コンバーターレンズ103の有無によって映像を注視する方向が若干ずれることになり、映像を鑑賞する上でユーザにとって煩わしいものとなるので、そのようなシフトは極力抑えることが望ましい。
【0006】
なお、特許文献2では、投影レンズの光軸に対してコンバーターレンズを斜めに配置する構成となっている。この構成では、コンバーターレンズの傾斜角度を調整することによって、投影画面位置のずれを抑えることが可能と思われる。しかし、その方法では、コンバーターレンズの複雑な角度調整機構が別途必要になるばかりでなく、コンバーターレンズの角度調整を行うべく、投影レンズの前方に十分なスペースを確保しなければならない。その結果、コンバーターレンズと投影レンズとが離れて配置されるため、コンバーターレンズが大型化する。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コンバーターレンズを大型化することなく、コンバーターレンズの使用の有無による投影画面位置の変動を簡単に補正することができる映像投影装置と、その映像投影装置を備えた映像投影システムと、投影画面位置補正方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像投影装置は、表示素子と、前記表示素子の表示映像を被投影面に投影する投影レンズとを備え、前記投影レンズの光軸が前記表示素子の表示面の中心とずれて位置する映像投影装置であって、前記投影レンズと前記被投影面との間の光路に対するコンバーターレンズの挿入、退避による投影画面位置の移動を、前記表示面に対する前記投影レンズの平行移動によって補正する補正手段を備え、前記投影レンズを停止させる位置として、前記コンバーターレンズの挿入状態に対応する第1の位置と、退避状態に対応する第2の位置とが予め設定されており、前記補正手段は、前記第1の位置または前記第2の位置に前記投影レンズを移動させることを特徴としている。
【0009】
本発明の映像投影装置において、前記コンバーターレンズの挿入時に前記投影レンズを第1の位置に停止させて映像を投影したときの投影画面中心と、前記コンバーターレンズの退避時に前記投影レンズを第2の位置に停止させて映像を投影したときの投影画面中心とが一致するように、前記第1の位置および前記第2の位置がそれぞれ設定されていることが望ましい。
【0010】
本発明の映像投影装置において、前記補正手段は、前記投影レンズの移動を指示するための指示手段と、前記表示面に対して前記投影レンズを平行移動させる移動手段とを備え、前記移動手段は、前記指示手段からの指示に基づいて、前記投影レンズを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させる構成であってもよい。
【0011】
本発明の映像投影装置において、前記補正手段は、前記第1の位置を設定するための第1の位置設定部材と、前記第2の位置を設定するための第2の位置設定部材とをさらに備えている構成であってもよい。
【0012】
本発明の映像投影装置において、前記補正手段は、前記コンバーターレンズの挿入、退避に応じて前記投影レンズを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させる構成であってもよい。
【0013】
本発明の映像投影装置において、前記補正手段は、前記コンバーターレンズが前記光路に対して挿入状態か退避状態かを検知するコンバーター検知手段と、前記表示面に対して前記投影レンズを平行移動させる移動手段と、前記移動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記コンバーター検知手段での検知結果に基づいて前記移動手段を制御し、前記コンバーターレンズの挿入状態では前記第1の位置に、前記コンバーターレンズの退避状態では前記第2の位置に、前記投影レンズを移動させる構成であってもよい。
【0014】
本発明の映像投影装置において、前記補正手段は、前記投影レンズが第1の基準位置に到達したことを検知する第1の検知手段と、前記投影レンズが第2の基準位置に到達したことを検知する第2の検知手段と、前記第1の位置と前記第1の基準位置との差に対応する第1の移動量を計数し、記憶するとともに、前記第2の位置と前記第2の基準位置との差に対応する第2の移動量を計数し、記憶する計数記憶手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記コンバーターレンズの挿入状態において前記投影レンズが前記第1の基準位置に到達したときに、前記第1の移動量に対応する距離だけ前記投影レンズを同方向または逆方向にさらに移動させて前記第1の位置に位置させる一方、前記コンバーターレンズの退避状態において前記投影レンズが前記第2の基準位置に到達したときに、前記第2の移動量に対応する距離だけ前記投影レンズを同方向または逆方向にさらに移動させて前記第2の位置に位置させる構成であってもよい。
【0015】
本発明の映像投影システムは、上述した本発明の映像投影装置と、コンバーターレンズと、前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備えていることを特徴としている。
【0016】
本発明の映像投影システムは、上述した本発明の映像投影装置と、コンバーターレンズと、前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備え、前記コンバーター駆動手段は、前記コンバーターレンズの挿入または退避を指示するコンバーター指示手段と、前記指示に基づいて、前記コンバーターレンズを移動させるコンバーター移動手段とを備えていることを特徴としている。
【0017】
本発明の映像投影システムは、上述した本発明の映像投影装置と、コンバーターレンズと、前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備え、前記コンバーター駆動手段は、前記コンバーターレンズの挿入または退避を指示するコンバーター指示手段と、前記コンバーターレンズを移動させるコンバーター移動手段とを備え、前記映像投影装置の制御手段は、前記コンバーター指示手段からの指示に基づいて前記コンバーター移動手段を制御し、前記コンバーターレンズを移動させることを特徴としている。
【0018】
本発明の投影画面位置補正方法は、投影レンズの光軸が表示素子の表示面の中心とずれて位置する映像投影装置における投影画面位置補正方法であって、前記投影レンズと被投影面との間の光路に対するコンバーターレンズの挿入、退避による投影画面位置の移動を、前記表示面に対する前記投影レンズの平行移動によって補正する補正工程を有し、前記補正工程では、前記投影レンズを停止させる位置として予め設定された、前記コンバーターレンズの挿入状態に対応する第1の位置または退避状態に対応する第2の位置に前記投影レンズを移動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンバーターレンズの挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示素子の表示面に対する投影レンズの平行移動によって補正する。この補正は、予め設定された、コンバーターレンズの挿入状態に対応する第1の位置、または退避状態に対応する第2の位置に、投影レンズを移動させることによって行うことができる。なお、投影レンズの移動は、例えばユーザからの指示に基づいて行ってもよいし、コンバーターレンズの挿入、退避を検知する手段からの出力に基づいて行ってもよい。このような補正により、コンバーターレンズの挿入状態と退避状態とで投影画面位置が変動するのを抑えることができ、コンバーターレンズの有無で映像を注視する方向が変動するのを抑えることができる。その結果、コンバーターレンズの使用の有無に関係なく、最適な条件で映像を鑑賞することが可能となる。
【0020】
また、本発明の映像投影装置が、例えば、コンバーターレンズを使用していない状態でも投影画面位置を調整すべく、投影レンズをシフトさせる手段を有していれば、その手段を利用して上記の補正を行うことができる。つまり、新たな構成(例えば角度調整機構)を付加することなく、既存の構成を有効利用して投影画面位置を簡単に補正することができる。また、角度調整機構が不要なので、コンバーターレンズの大型化も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1(a)(b)は、本実施形態の映像投影システムの概略の構成を示す説明図であって、図1(a)はコンバーターレンズ2の退避状態におけるものを、図1(b)はコンバーターレンズ2の挿入状態におけるものをそれぞれ示している。なお、図面上での上下方向は、例えば垂直方向に対応している。本実施形態の映像投影システムは、映像投影装置1と、コンバーターレンズ2と、コンバーター駆動機構3とを備えている。
【0022】
映像投影装置1は、表示素子11と、投影レンズ12と、後述する補正機構13とを備えている。表示素子11は、映像を表示するものであり、例えば液晶表示素子やDMD(Digital Micromirror Device;米国テキサスインスツルメント社製)などの光変調素子で構成されている。投影レンズ12は、表示素子11の表示映像を被投影面であるスクリーンSCに投影するための光学系である。なお、被投影面は、壁であってもよい。
【0023】
ここで、図2は、表示素子11および投影レンズ12を拡大して示す説明図である。映像投影装置1では、投影レンズ12の光軸AXは、表示素子11の表示面11aの中心PおよびスクリーンSCの中心S(図1(a)(b)参照)とずれて位置している。また、映像投影装置1は、表示素子11の表示面11aがスクリーンSCと平行となるように設置されている。
【0024】
このような構成によれば、表示素子11の表示映像は、投影レンズ12を介してスクリーンSCに対して斜めに投影されるが、投影レンズ12の光軸AXと表示面11aの中心Pとがずれた位置関係にあるので、これらが一致した位置関係の場合に比べて、投影画面の台形歪みは抑えられ、良好な(長方形に近い)投影画面を得ることができる。
【0025】
なお、表示面11aの中心Pとは、ここでは、表示面11において実際に映像が表示される領域の中心を指すものとする。したがって、光軸AXと中心Pとがずれた位置関係は、投影レンズ12と表示素子11とを光軸AXに対して垂直方向に相対的にずらし、表示面11aの全体に映像を表示させることによっても実現することができるし、投影レンズ12と表示素子11とを相対的にずらさずに、表示面11aの一部(例えば上半分や下半分)に映像を表示させることによっても実現することができる。
【0026】
図1(a)(b)に示すコンバーターレンズ2は、投影時の画角を切り替えるためのレンズ系であり、投影レンズ12の前方(拡大側、スクリーンSC側)に着脱可能に配置される。このコンバーターレンズ2は、ワイドコンバーターレンズ、テレコンバーターレンズ、アナモフィックコンバーターレンズのいずれで構成されてもよい。
【0027】
コンバーター駆動機構3は、投影レンズ12とスクリーンSCとの間の光路に対して、コンバーターレンズ2を挿入または退避させるコンバーター駆動手段であり、コンバーター指示部31と、コンバーター移動機構32と、位置設定部材33とを有している。
【0028】
コンバーター指示部31は、コンバーターレンズ2の挿入または退避を指示するためのコンバーター指示手段であり、例えば駆動スイッチで構成されている。コンバーター移動機構32は、コンバーター指示部31からの指示に基づいて、コンバーターレンズ2を移動させるコンバーター移動手段であり、例えばコンバーターレンズ2を電動で移動させるモータ32aと、コンバーターレンズ2の移動を案内するレール32bとを有している。レール32bは、表示素子11の表示面11aに対して平行に配置されており、コンバーターレンズ2を表示面11aに対して平行に移動させることが可能なっている。
【0029】
位置設定部材33は、コンバーターレンズ2の停止位置を設定するための部材であり、第1の位置設定部材33aと、第2の位置設定部材33bとで構成されている。第1の位置設定部材33aは、コンバーターレンズ2の挿入時にそれを適切な位置で停止させるための部材である。一方、第2の位置設定部材33bは、コンバーターレンズ2の退避時にそれを適切な位置で停止させるための部材である。
【0030】
第1の位置設定部材33aおよび第2の位置設定部材33bは、例えばねじ機構によってレール32b上の位置を移動可能に保持されるストッパーでそれぞれ構成されている。したがって、第1の位置設定部材33aおよび第2の位置設定部材33bにより、コンバーターレンズ2の挿入時および退避時の位置を所望の位置に予め設定したり、それらの位置を調整することが可能となっている。
【0031】
次に、映像投影装置1の補正機構13について説明する。補正機構13は、投影レンズ12とスクリーンSCとの間の光路に対するコンバーターレンズ2の挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって補正する補正手段であり、指示部14と、移動機構15と、位置設定部材16とを有している。
【0032】
指示部14は、投影レンズ12の移動を指示するための指示手段であり、例えば駆動スイッチで構成されている。移動機構15は、指示部14からの指示に基づき、表示素子11の表示面11aに対して投影レンズ12を平行移動させる移動手段であり、例えば投影レンズ12を電動で移動させるモータ15aと、投影レンズ12の移動を案内するレール15bとを有している。レール15bは、表示素子11の表示面11aに対して平行に配置されている。したがって、レール15bに沿って投影レンズ12が移動することにより、投影レンズ12は表示面11aに対して平行に移動する。
【0033】
位置設定部材16は、投影レンズ12の停止位置を設定するための部材であり、第1の位置設定部材16aと、第2の位置設定部材16bとで構成されている。第1の位置設定部材16aは、投影レンズ12の停止位置として、コンバーターレンズ2の挿入状態に対応する第1の位置A1を設定するための部材である。一方、第2の位置設定部材16bは、投影レンズ12の停止位置として、コンバーターレンズ2の退避状態に対応する第2の位置A2を設定するための部材である。
【0034】
第1の位置設定部材16aおよび第2の位置設定部材16bは、例えばねじ機構によってレール15b上の位置を移動可能に保持されるストッパーでそれぞれ構成されている。したがって、第1の位置設定部材16aおよび第2の位置設定部材16bにより、第1の位置A1および第2の位置A2を所望の位置に予め設定したり、それらの位置を調整することが可能となっている。このような第1の位置A1および第2の位置A2の設定により、投影レンズ12は、第1の位置A1と第2の位置A2との間で移動することとなる。
【0035】
本実施形態では、図1(b)に示すコンバーターレンズ2の挿入時に、投影レンズ12を第1の位置A1に停止させて映像を投影したときの投影画面中心Q1と、図1(a)に示すコンバーターレンズ2の退避時に、投影レンズ12を第2の位置A2に停止させて映像を投影したときの投影画面中心Q2とが一致するように、上記の第1の位置A1および第2の位置A2が予め設定されている。具体的な手法は、以下の通りである。
【0036】
つまり、コンバーターレンズ2の退避状態で映像を投影したときの投影画面中心Q2がスクリーンSCの中心Sと一致するように投影レンズ12を移動させ、該一致する位置で停止した投影レンズ12と当接する位置で第2の位置設定部材16bを固定し、第2の位置A2を設定する。次に、コンバーターレンズ2の挿入状態で映像を投影したときの投影画面中心Q1がスクリーンSCの中心Sと一致するように投影レンズ12を移動させ、該一致する位置で停止した投影レンズ12と当接する位置で第1の位置設定部材16aを固定し、第1の位置A1を設定する。このようにすることで、第1の位置A1および第2の位置A2を予め設定することが可能である。
【0037】
次に、本実施形態の映像投影システムの動作について、図1(a)(b)および図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
コンバーターレンズ2を図1(a)の退避状態から図1(b)の挿入状態にして投影を行う場合、ユーザは、まず、コンバーター指示部31により、コンバーターレンズ2の光路中への挿入を指示する(S11)。すると、コンバーター移動機構32のモータ32aが作動し、コンバーターレンズ2がレール32bに沿って移動する。そして、コンバーターレンズ2は、第1の位置設定部材33aに当接したところで停止し、コンバーターレンズ2の光路中への挿入が完了する(S12)。
【0039】
続いて、ユーザは、指示部14により、コンバーターレンズ2の挿入状態に応じた位置への投影レンズ12の移動を指示する(S13)。すると、移動機構15のモータ15aが作動し、投影レンズ12がレール15bに沿って表示面11aに平行に移動し、第1の位置設定部材16aに当接したところで、すなわち、第1の位置A1で投影レンズ12が停止する(S14)。
【0040】
一方、コンバーターレンズ2を図1(b)の挿入状態から図1(a)の退避状態にして投影を行う場合、ユーザは、まず、コンバーター指示部31により、コンバーターレンズ2の光路中からの退避を指示する(S11)。すると、コンバーター移動機構32のモータ32aが作動し、コンバーターレンズ2がレール32bに沿って移動する。そして、コンバーターレンズ2は、第2の位置設定部材33bに当接したところで停止し、コンバーターレンズ2の光路中からの退避が完了する(S12)。
【0041】
続いて、ユーザは、指示部14により、コンバーターレンズ2の退避状態に応じた位置への投影レンズ12の移動を指示する(S13)。すると、移動機構15のモータ15aが作動し、投影レンズ12がレール15bに沿って表示面11aに平行に移動し、第2の位置設定部材16bに当接したところで、すなわち、第2の位置A2で投影レンズ12が停止する(S14)。
【0042】
以上のように、本実施形態の映像投影装置1は、補正機構13が、コンバーターレンズ2の挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示素子11の表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって補正する構成である。具体的には、投影レンズ12を停止させる位置として、コンバーターレンズ2の挿入状態に対応する第1の位置A1と、退避状態に対応する第2の位置A2とが予め設定されており、補正機構13は第1の位置A1または第2の位置A2に投影レンズ12を移動させることにより、上記投影画面位置を補正する。また、本実施形態の投影画面位置補正方法は、コンバーターレンズ2の挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって補正する補正工程(図3のS14に対応)を有しており、その補正工程では、投影レンズ12を停止させる位置として予め設定された第1の位置A1または第2の位置A2に投影レンズ12を移動させる。
【0043】
このように予め設定された第1の位置A1または第2の位置A2に投影レンズ12を移動させることにより、コンバーターレンズ2の挿入状態と退避状態とで投影画面位置が変動するのを抑えることができる。これにより、コンバーターレンズ2の有無で映像を注視する方向が変動するのを抑えることができ、コンバーターレンズ2の有無に関係なく、歪みの少ない映像を最適な条件で鑑賞することができるとともに、映像投影装置1の設置自由度を増大させることができる。
【0044】
特に、本実施形態では、投影画面中心Q1・Q2が一致するように、第1の位置A1および第2の位置A2がそれぞれ設定されているので、コンバーターレンズ2の有無による投影画面中心Q1・Q2のシフトが全くなく、コンバーターレンズ2の挿入状態でも退避状態でも、同じ鑑賞位置で映像を鑑賞することが可能となる。
【0045】
また、補正機構13は、上述した指示部14と移動機構15とを備えており、ユーザによる指示部14からの指示に基づいて、移動機構15は投影レンズ12を第1の位置A1または第2の位置A2に移動させる。したがって、コンバーターレンズ2の挿入、退避によって変動する投影画面位置の調整(投影レンズ12の移動)を、ユーザの自由意思に基づいて行うことが可能となる。また、移動機構15のレール15bにより、投影レンズ12の移動を安定して行うことができ、投影画面位置の補正を安定して行うことができる。
【0046】
また、補正機構13の指示部14および移動機構15は、コンバーターレンズ2が装着されていない場合でも、投影画面位置を調整するために投影レンズ12をシフトさせる手段として、元から設けられている。したがって、投影画面位置の補正を、表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって行う構成とすることにより、そのような投影レンズ12のシフト手段を利用して上記の補正機構13を構成することが可能となる。よって、新たな構成(例えばコンバーターレンズの角度調整機構)を付加することなく、既存の構成を有効利用して投影画面位置を簡単に補正することができ、調整軸の数も減らせる(構成が複雑化するのを回避できる)。また、角度調整機構が不要なので、コンバーターレンズ2の大型化を回避することもできる。
【0047】
また、本実施形態の映像投影システムは、本実施形態の映像投影装置1と、コンバーターレンズ2と、コンバーター駆動機構3とを有して構成されているので、コンバーターレンズ2の挿入状態でも退避状態でも最適な条件で映像を鑑賞できる、映像投影システムを実現することができる。また、本実施形態の映像投影装置1によれば、上記したように設置の自由度も増大するので、システムとしての利便性も良くなる。
【0048】
また、コンバーター駆動機構3は、上述したコンバーター指示部31と、コンバーター移動機構32とを有して構成されている。このシステムの構成では、コンバーターレンズ2および投影レンズ12の移動は、それぞれ別々の指示部(コンバーター指示部31、指示部14)からの指示に基づいて行われる。しかし、このような構成であっても、ユーザ指示により投影レンズ12を所定の位置に移動させて、コンバーターレンズ2の挿入状態でも退避状態でも、最適な条件で映像を鑑賞することができる。
【0049】
また、コンバーター移動機構32は、モータ32aとレール32bとを有して構成されており、これらによってコンバーターレンズ2を平行移動させるので、コンバーターレンズ2の光路中への挿入、退避の利便性が良くなる。
【0050】
ところで、コンバーターレンズ2が挿入された状態では、投影レンズ12に対してコンバーターレンズ2を移動させても、投影位置はほとんど変わらない。そこで、コンバーターレンズ2の挿入後に投影レンズ12の位置(第1の位置A1)を決めた後、投影レンズ12の光軸とコンバーターレンズ2の光軸とが一致するようにコンバーターレンズ2を移動させ、その位置を、コンバーターレンズ2の挿入時のコンバーター位置として、第1の位置設定部材33aにより再設定してもよい。投影レンズ12の光軸とコンバーターレンズ2の光軸とを一致させることにより、コンバーターレンズ2による収差の影響を減らすことができる。つまり、投影レンズ12の光軸とコンバーターレンズ2の光軸とがずれていても、大きな収差劣化は生じないが、両光軸を一致させることにより、わずかな劣化を抑えることはできる。
【0051】
なお、本実施形態では、駆動スイッチが、コンバーターレンズ2の駆動スイッチ(コンバーター指示部31)と、投影レンズ12の駆動スイッチ(指示部14)とで別々に構成されているが、これらを共通化(一体化)することも勿論可能である。
【0052】
なお、本実施形態では、位置設定部材16・33をストッパーで構成した例について説明したが、フォトインタラプタなどの光センサで構成することも勿論可能である。
【0053】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成については同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0054】
図4(a)(b)は、本実施形態の映像投影システムの概略の構成を示す説明図であって、図4(a)はコンバーターレンズ2の退避状態におけるものを、図4(b)はコンバーターレンズ2の挿入状態におけるものをそれぞれ示している。なお、図面上での上下方向は、例えば垂直方向に対応している。本実施形態の映像投影システムは、映像投影装置1’と、コンバーターレンズ2と、コンバーター駆動機構3’とを備えている。
【0055】
コンバーター駆動機構3’は、投影レンズ12とスクリーンSCとの間の光路に対して、コンバーターレンズ2を挿入または退避させるコンバーター駆動手段であり、実施の形態1と同様のコンバーター移動機構32(モータ32a、レール32b)で構成されている。ただし、コンバーター移動機構32(特にモータ32a)は、映像投影装置1’の後述する制御部24の制御によって駆動される。
【0056】
映像投影装置1’は、補正機構13を補正機構13’に置き換えた以外は、実施の形態1の映像投影装置1と同様の構成である。補正機構13’は、コンバーターレンズ2の挿入、退避に応じて投影レンズ12を第1の位置A1または第2の位置A2に移動させる補正手段であり、実施の形態1の移動機構15(モータ15a、レール15b)に加えて、指示部21と、コンバーター検知部22と、位置検知部23と、制御部24と、計数部25と、記憶部26とを有して構成されている。移動機構15のモータ15aは、本実施形態では例えばパルスモータで構成されている。
【0057】
指示部21は、コンバーターレンズ2の光路中への挿入または退避を指示するコンバーター指示手段であり、本実施形態では、そのような指示を行うためのリモコンスイッチ21aと、リモコンスイッチ21aからの信号を受信(受光)するリモコン受信部21bとで構成されている。リモコン受信部21bにて受信した信号は、制御部24に送られる。なお、指示部21は、例えば駆動スイッチのような手動スイッチで構成されてもよい。また、指示部21は、第1の位置A1および第2の位置A2の初期設定を行う際に投影レンズ12の移動を指示する指示部としても機能している。
【0058】
コンバーター検知部22は、コンバーターレンズ2が光路に対して挿入状態か退避状態かを検知するコンバーター検知手段であり、第1の検知部22aと、第2の検知部22bとで構成されている。第1の検知部22aおよび第2の検知部22bは、例えばフォトインタラプタのような光センサでそれぞれ構成されており、コンバーターレンズ2が光路中に挿入状態となる位置、および退避状態となる位置をそれぞれ検知する。第1の検知部22aおよび第2の検知部22bからの検知信号は、それぞれ制御部24に送られる。なお、本実施形態では、コンバーター検知部22は、コンバーターレンズ2が移動するレール32b上に設けられているが、レール32bから離間した位置に設けられてコンバーターレンズ2の位置を検知するようにしてもよい。
【0059】
位置検知部23は、投影レンズ12が所定の位置に到達したことを検知する位置検知手段であり、第1の位置検知部23aと、第2の位置検知部23bとで構成されている。第1の位置検知部23aおよび第2の位置検知部23bは、例えばフォトインタラプタのような光センサでそれぞれ構成されており、投影レンズ12がレール15b上の第1の基準位置B1および第2の基準位置B2(例えば図5参照)に到達したことをそれぞれ検知する第1の検知手段および第2の検知手段をそれぞれ構成している。第1の位置検知部23aおよび第2の位置検知部23bからの検知信号は、それぞれ制御部24に送られる。
【0060】
計数部25は、第1の位置A1と第1の基準位置B1との差に対応する移動量を、第1の移動量C1として計数するとともに、第2の位置A2と第2の基準位置B2との差に対応する移動量を、第2の移動量C2として計数する。なお、第1の移動量C1および第2の移動量C2としては、ここでは、移動機構15のモータ15aのパルス数を想定している。記憶部26は、第1の移動量C1および第2の移動量C2を記憶するメモリで構成されている。以上のことから、計数部25と記憶部26とで、第1の移動量C1および第2の移動量C2を計数して記憶する計数記憶手段が構成されていると言える。
【0061】
本実施形態においても、実施の形態1と同様に、図4(b)に示すコンバーターレンズ2の挿入時に、投影レンズ12を第1の位置A1に停止させて映像を投影したときの投影画面中心Q1と、図4(a)に示すコンバーターレンズ2の退避時に、投影レンズ12を第2の位置A2に停止させて映像を投影したときの投影画面中心Q2とが一致するように、第1の位置A1および第2の位置A2が予め設定されているが、これらの設定は以下の手法による。
【0062】
つまり、コンバーターレンズ2の退避状態で映像を投影したときの投影画面中心Q2がスクリーンSCの中心Sと一致するように投影レンズ12を移動させる。そして、該一致する位置で停止させた投影レンズ12のその停止位置から第2の基準位置B2までのモータ15aのパルス数を第2の移動量C2として計数する。したがって、逆算により、第2の基準位置B2から第2の移動量C2に相当する距離だけ離れた、投影レンズ12の最初の停止位置を、第2の位置A2として設定することができる。
【0063】
次に、コンバーターレンズ2の挿入状態で映像を投影したときの投影画面中心Q1がスクリーンSCの中心Sと一致するように投影レンズ12を移動させる。そして、該一致する位置で停止させた投影レンズ12のその停止位置から第1の基準位置B1までのモータ15aのパルス数を第1の移動量C1として計数する。したがって、逆算により、第1の基準位置B1から第1の移動量C1に相当する距離だけ離れた、投影レンズ12の最初の停止位置を、第1の位置A1として設定することができる。なお、上記した投影レンズ12の各移動は、指示部21からの指示に基づいて制御部24がモータ15aを駆動することで行われる。
【0064】
このように、第1の基準位置B1および第2の基準位置B2と、第1の移動量C1および第2の移動量C2という概念を導入することにより、投影レンズ12とは非接触で(投影レンズ12と接触するストッパー等の部材を用いなくても)、第1の位置A1および第2の位置A2を予め設定することができる。
【0065】
制御部24は、上述した第1の位置A1および第2の位置A2の初期設定では、指示部21からの指示に基づいて移動機構15を制御し、初期設定以外では、コンバーター検知部22での検知結果に基づいて移動機構15を制御する制御手段である。このような制御により、コンバーターレンズ2の挿入状態では第1の位置A1に、コンバーターレンズ2の退避状態では第2の位置A2に、投影レンズ12を移動させることができる。具体的な手法は、以下の通りである。
【0066】
図5は、投影レンズ12の位置と移動量との関係を模式的に示す説明図である。なお、図5では、第1の位置A1および第2の位置A2が、第1の基準位置B1および第2の基準位置B2よりも内側(光軸側)に予め設定されている場合を示している。コンバーターレンズ2の挿入状態では、制御部24は、コンバーターレンズ2の退避状態での停止位置(第2の位置A2)から第1の基準位置B1に投影レンズ12が到達したときに、第1の移動量C1に対応する距離だけ投影レンズ12を逆方向にさらに移動させて第1の位置A1に位置させる。一方、コンバーターレンズ2の退避状態では、制御部24は、上記第1の位置A1から第2の基準位置B2に投影レンズ12が到達したときに、第2の移動量C2に対応する距離だけ投影レンズ12を逆方向にさらに移動させて第2の位置A2に位置させる。
【0067】
一方、図6も、投影レンズ12の位置と移動量との関係を模式的に示す説明図であるが、第1の位置A1および第2の位置A2が、第1の基準位置B1および第2の基準位置B2よりも外側(光軸とは反対側)に設定されている点で、図5と異なっている。このような設定においては、コンバーターレンズ2の挿入状態では、制御部24は、コンバーターレンズ2の退避状態での停止位置(第2の位置A2)から第1の基準位置B1に投影レンズ12が到達したときに、第1の移動量C1に対応する距離だけ投影レンズ12を同方向にさらに移動させて第1の位置A1に位置させる。一方、コンバーターレンズ2の退避状態では、制御部24は、上記第1の位置A1から第2の基準位置B2に投影レンズ12が到達したときに、第2の移動量C2に対応する距離だけ投影レンズ12を同方向にさらに移動させて第2の位置A2に位置させる。
【0068】
このような制御部24の制御により、投影レンズ12を精度良く所定の位置(第1の位置A1および第2の位置A2)に移動させることができる。
【0069】
次に、本実施形態の映像投影システムの動作について、図4(a)(b)および図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0070】
コンバーターレンズ2を図4(a)の退避状態から図4(b)の挿入状態にして投影を行う場合、ユーザは、まず、指示部21のリモコンスイッチ21aを押して、コンバーターレンズ2の光路中への挿入を指示する信号をリモコン受信部21bに送る(S21)。リモコン受信部21bにて受信された信号は制御部24に送られ、この信号に基づき、制御部24はモータ32aを駆動してコンバーターレンズ2の移動(挿入)を開始させる(S22)。そして、コンバーター検知部22の第1の検知部22aがコンバーターレンズ2を検知すると、コンバーターレンズ2が装着位置に到達したとして、その検知信号が制御部24に送られ、制御部24はその検知信号に基づいてモータ32aの駆動を停止させ、コンバーターレンズ2を停止させる(S23)。
【0071】
このようにしてコンバーターレンズ2の光路中への挿入が完了すると(S24でYes)、制御部24は、移動機構15のモータ15aを駆動して、投影レンズ12を第1の基準位置B1まで移動させる(S25)。投影レンズ12が第1の基準位置B1に到達したことを第1の位置検知部23aが検知すると、その検知信号が制御部24に送られ、制御部24は記憶部26に記憶された第1の移動量C1だけ(所定パルス数分だけ)モータ15aを反転または順転駆動し、第1の移動量C1に対応する距離だけ投影レンズ12をさらに移動させる。これにより、投影レンズ12は第1の位置A1で停止し、コンバーターレンズ2の装着時のセッティングが完了する(S26)。
【0072】
一方、コンバーターレンズ2を図4(b)の挿入状態から図4(a)の退避状態にして投影を行う場合、ユーザは、まず、指示部21のリモコンスイッチ21aを押して、コンバーターレンズ2の光路中からの退避を指示する信号をリモコン受信部21bに送る(S21)。リモコン受信部21bにて受信された信号は制御部24に送られ、この信号に基づき、制御部24はモータ32aを駆動してコンバーターレンズ2の移動(退避)を開始させる(S22)。そして、コンバーター検知部22の第2の検知部22bがコンバーターレンズ2を検知すると、コンバーターレンズ2が退避位置に到達したとして、その検知信号が制御部24に送られ、制御部24はその検知信号に基づいてモータ32aの駆動を停止させ、コンバーターレンズ2を停止させる(S23)。
【0073】
このようにしてコンバーターレンズ2の光路中からの退避が完了すると(S24でNo)、制御部24は、移動機構15のモータ15aを駆動して、投影レンズ12を第2の基準位置B2まで移動させる(S27)。投影レンズ12が第2の基準位置B2に到達したことを第2の位置検知部23bが検知すると、その検知信号が制御部24に送られ、制御部24は記憶部26に記憶された第2の移動量C2だけ(所定パルス数分だけ)モータ15aを反転または順転駆動し、第2の移動量C2に対応する距離だけ投影レンズ12をさらに移動させる。これにより、投影レンズ12は第2の位置A2で停止し、コンバーターレンズ2の退避時のセッティングが完了する(S28)。なお、上述したS24〜S28の工程は、コンバーターレンズ2の挿入、退避による投影画面位置の移動を、表示面11aに対する投影レンズ12の平行移動によって補正する補正工程に対応している。
【0074】
以上のように、本実施形態においても、上記補正工程において、予め設定された第1の位置A1または第2の位置A2に投影レンズ12を移動させることにより、コンバーターレンズ2の挿入状態と退避状態とで投影画面位置が変動するのを抑えることができる。特に、本実施形態では、投影レンズ12の上記移動により、コンバーターレンズ2の挿入状態での投影画面中心Q1と退避状態での投影画面中心Q2とを一致させることができる。その結果、コンバーターレンズ2の使用の有無に関係なく、最適な条件で(例えば同じ鑑賞位置で)映像を鑑賞することができるなど、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態の補正機構13’は、コンバーターレンズ2の挿入、退避に応じて、投影レンズ12を第1の位置A1または第2の位置A2に移動させる構成である。具体的には、補正機構13’は、上述したコンバーター検知部22と、移動機構15と、制御部24とを備えている。そして、制御部24が、コンバーター検知部22での検知結果に基づいて移動機構15を制御し、コンバーターレンズ2の挿入状態では第1の位置A1に、コンバーターレンズ2の退避状態では第2の位置A2に、投影レンズ12を移動させる。このような構成により、コンバーターレンズ2の挿入、退避によって変動する投影画面位置の調整(投影レンズ12の移動)を、自動制御で行うことができる。
【0076】
また、本実施形態の映像投影システムは、上述した映像投影装置1’と、コンバーターレンズ2と、コンバーター駆動機構3’とを備え、コンバーター駆動機構3’は、指示部21と、コンバーター移動機構32とを備えている。そして、映像投影装置1’の制御部24は、指示部21からの指示に基づいてコンバーター移動機構32を制御し、コンバーターレンズ2を移動させる。このような制御により、コンバーターレンズ2の挿入または退避の指示があると、コンバーターレンズ2を挿入または退避させるのと同時に、投影レンズ12を所定の位置に自動で移動させることができる。したがって、コンバーターレンズ2の挿入状態でも退避状態でも、最適な条件で映像を鑑賞できるシステムを実現できるとともに、投影画面位置を補正するにあたって自動制御のシステムを実現することができる。また、天井など鑑賞位置から離れたところに映像投影装置1’を設置しても、煩わしさを感じることなくコンバーターレンズ2の切り替えを行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態では、位置検知部23(第1の位置検知部23a、第2の位置検知部23b)を2つのフォトインタラプタで構成し、コンバーターレンズ2の挿入時と退避時とで、別々の基準位置(第1の基準位置B1、第2の基準位置B2)をもとにして投影レンズ12を移動させるようにしているが、位置検知部23を1つのフォトインタラプタのみで構成し、コンバーターレンズ2の挿入時と退避時とで、共通の(1つの)基準位置をもとにして投影レンズ12を移動させる構成としてもよい。
【0078】
なお、本実施形態では、コンバーター検知部22や位置検知部23をフォトインタラプタで構成しているが、接点スイッチで構成してもよい。また、本実施形態では、移動機構15のモータ15aをパルスモータで構成しているが、DCモータで構成してもよい。この場合、DCモータにエンコーダを設け、エンコーダのパルス数を第1の移動量C1および第2の移動量C2として記憶部26に記憶させるようにしてもよい。また、フォトインタラプタや接点スイッチをレール15b上に調整可能に取り付け、第1の位置A1および第2の位置A2に対応する位置で固定保持してもよい。
【0079】
なお、以上の各実施の形態では、投影レンズ12を垂直方向にのみ移動する機構とし、投影画面位置の調整(補正)を垂直方向においてのみ行う構成としているが、投影レンズ12を垂直方向および水平方向の2方向に移動できる機構とし、投影画面位置の調整を垂直方向および水平方向の2方向において行う構成としてもよい。後者の場合は、映像投影装置1の設置の自由度をさらに向上させることができる。
【0080】
なお、以上の各実施の形態では、投影画面位置を補正するにあたり、投影画面中心Q1・Q2を完全に一致させた例について説明したが、映像の鑑賞に支障をきたさない程度に投影画面中心Q1・Q2のずれを補正してもよい(完全一致でなくてもよい)。また、垂直方向および水平方向のうちの一方向についてのみ、投影画面中心Q1・Q2を完全に一致させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、投影レンズの前方にコンバーターレンズを挿入または退避させて映像を投影することが可能な映像投影システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(a)および(b)は、本発明の実施の一形態に係る映像投影システムの概略の構成を示すものであって、(a)はコンバーターレンズの退避状態における説明図であり、(b)はコンバーターレンズの挿入状態における説明図である。
【図2】上記映像投影システムの映像投影装置が有する表示素子および投影レンズを拡大して示す説明図である。
【図3】上記映像投影システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】(a)および(b)は、本発明の他の実施の形態に係る映像投影システムの概略の構成を示すものであって、(a)はコンバーターレンズの退避状態における説明図であり、(b)はコンバーターレンズの挿入状態における説明図である。
【図5】投影レンズの位置と移動量との関係の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】投影レンズの位置と移動量との関係の他の例を模式的に示す説明図である。
【図7】上記映像投影システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】(a)および(b)は、従来の映像投影システムの概略の構成を示すものであって、(a)はコンバーターレンズの退避状態における説明図であり、(b)はコンバーターレンズの挿入状態における説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 映像投影装置
1’ 映像投影装置
2 コンバーターレンズ
3 コンバーター駆動機構(コンバーター駆動手段)
3’ コンバーター駆動機構(コンバーター駆動手段)
11 表示素子
11a 表示面
12 投影レンズ
13 補正機構(補正手段)
13’ 補正機構(補正手段)
14 指示部(指示手段)
15 移動機構(移動手段)
16a 第1の位置設定部材(第1の位置設定手段)
16b 第2の位置設定部材(第2の位置設定手段)
21 指示部(コンバーター指示手段)
22 コンバーター検知部(コンバーター検知手段)
23a 第1の位置検知部(第1の検知手段)
23b 第2の位置検知部(第2の検知手段)
24 制御部(制御手段)
25 計数部(計数記憶手段)
26 記憶部(計数記憶手段)
31 コンバーター指示部(コンバーター指示手段)
32 コンバーター移動機構(コンバーター移動手段)
AX 光軸
1 第1の位置
2 第2の位置
1 第1の基準位置
2 第2の基準位置
1 第1の移動量
2 第2の移動量
P 中心
1 投影画面中心
2 投影画面中心
S 中心
SC スクリーン(被投影面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、
前記表示素子の表示映像を被投影面に投影する投影レンズとを備え、前記投影レンズの光軸が前記表示素子の表示面の中心とずれて位置する映像投影装置であって、
前記投影レンズと前記被投影面との間の光路に対するコンバーターレンズの挿入、退避による投影画面位置の移動を、前記表示面に対する前記投影レンズの平行移動によって補正する補正手段を備え、
前記投影レンズを停止させる位置として、前記コンバーターレンズの挿入状態に対応する第1の位置と、退避状態に対応する第2の位置とが予め設定されており、
前記補正手段は、前記第1の位置または前記第2の位置に前記投影レンズを移動させることを特徴とする映像投影装置。
【請求項2】
前記コンバーターレンズの挿入時に前記投影レンズを第1の位置に停止させて映像を投影したときの投影画面中心と、前記コンバーターレンズの退避時に前記投影レンズを第2の位置に停止させて映像を投影したときの投影画面中心とが一致するように、前記第1の位置および前記第2の位置がそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1に記載の映像投影装置。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記投影レンズの移動を指示するための指示手段と、
前記表示面に対して前記投影レンズを平行移動させる移動手段とを備え、
前記移動手段は、前記指示手段からの指示に基づいて、前記投影レンズを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の映像投影装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記第1の位置を設定するための第1の位置設定部材と、
前記第2の位置を設定するための第2の位置設定部材とをさらに備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の映像投影装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記コンバーターレンズの挿入、退避に応じて前記投影レンズを前記第1の位置または前記第2の位置に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の映像投影装置。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記コンバーターレンズが前記光路に対して挿入状態か退避状態かを検知するコンバーター検知手段と、
前記表示面に対して前記投影レンズを平行移動させる移動手段と、
前記移動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記コンバーター検知手段での検知結果に基づいて前記移動手段を制御し、前記コンバーターレンズの挿入状態では前記第1の位置に、前記コンバーターレンズの退避状態では前記第2の位置に、前記投影レンズを移動させることを特徴とする請求項5に記載の映像投影装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記投影レンズが第1の基準位置に到達したことを検知する第1の検知手段と、
前記投影レンズが第2の基準位置に到達したことを検知する第2の検知手段と、
前記第1の位置と前記第1の基準位置との差に対応する第1の移動量を計数し、記憶するとともに、前記第2の位置と前記第2の基準位置との差に対応する第2の移動量を計数し、記憶する計数記憶手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記コンバーターレンズの挿入状態において前記投影レンズが前記第1の基準位置に到達したときに、前記第1の移動量に対応する距離だけ前記投影レンズを同方向または逆方向にさらに移動させて前記第1の位置に位置させる一方、前記コンバーターレンズの退避状態において前記投影レンズが前記第2の基準位置に到達したときに、前記第2の移動量に対応する距離だけ前記投影レンズを同方向または逆方向にさらに移動させて前記第2の位置に位置させることを特徴とする請求項6に記載の映像投影装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の映像投影装置と、
コンバーターレンズと、
前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備えていることを特徴とする映像投影システム。
【請求項9】
請求項3または4に記載の映像投影装置と、
コンバーターレンズと、
前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備え、
前記コンバーター駆動手段は、
前記コンバーターレンズの挿入または退避を指示するコンバーター指示手段と、
前記指示に基づいて、前記コンバーターレンズを移動させるコンバーター移動手段とを備えていることを特徴とする映像投影システム。
【請求項10】
請求項5から7のいずれかに記載の映像投影装置と、
コンバーターレンズと、
前記映像投影装置の投影レンズと被投影面との間の光路に対して前記コンバーターレンズを挿入または退避させるコンバーター駆動手段とを備え、
前記コンバーター駆動手段は、
前記コンバーターレンズの挿入または退避を指示するコンバーター指示手段と、
前記コンバーターレンズを移動させるコンバーター移動手段とを備え、
前記映像投影装置の制御手段は、前記コンバーター指示手段からの指示に基づいて前記コンバーター移動手段を制御し、前記コンバーターレンズを移動させることを特徴とする映像投影システム。
【請求項11】
投影レンズの光軸が表示素子の表示面の中心とずれて位置する映像投影装置における投影画面位置補正方法であって、
前記投影レンズと被投影面との間の光路に対するコンバーターレンズの挿入、退避による投影画面位置の移動を、前記表示面に対する前記投影レンズの平行移動によって補正する補正工程を有し、
前記補正工程では、前記投影レンズを停止させる位置として予め設定された、前記コンバーターレンズの挿入状態に対応する第1の位置または退避状態に対応する第2の位置に前記投影レンズを移動させることを特徴とする投影画面位置補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282075(P2009−282075A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131084(P2008−131084)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】