説明

映像提示装置

【課題】運動視差を利用して立体感を表現する際に、複数人が同時に鑑賞する。
【解決手段】映像を表示する表示部140と、各鑑賞者の視点に応じた映像を表示部140に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示するよう制御し、表示部140に所定の鑑賞者の位置に応じた立体映像を表示している期間にその所定の鑑賞者が前記立体映像を鑑賞できるようにさせる同期制御部と、同期制御部126によりその所定の鑑賞者に対し立体映像を鑑賞させる制御信号を、該制御信号に基づいて自装置を装着している鑑賞者に対し立体映像を鑑賞させる光透過制御装置に送信する通信部150と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)映画などの普及により、いわゆる両眼視差(左右の目に視差のある異なる映像を提示することによってユーザに立体感を知覚させること)による立体映像表現が盛んに行われている。特に、映画館など多人数で同じ立体映像を見る場合には、立体映像を専用の立体視眼鏡を利用して見ることが行われている。
【0003】
このような立体視眼鏡を利用した手法は、多人数が大画面で同時に、同じコンテンツを鑑賞する用途には適している。しかし、鑑賞者の位置からディスプレイの位置に向かう方向に奥行きがある映像の場合、鑑賞者がその位置から別の位置に移動した際には、本来見えないはずの奥行きが見えることにより鑑賞者が違和感を抱くという問題がある。この問題は、特に通常の大きさのディスプレイで顕著にみられる。
【0004】
これを解決する手段として、鑑賞位置に応じて立体表現される映像の向きが変わる手法が提案されている。具体的には、レンチキュラレンズ(非特許文献1)やパララックスバリア(非特許文献2)などを利用した多視点裸眼立体視手法が発明されている。
【0005】
しかし,このような手法を用いた場合では、提供する視点数が増加するほど映像の解像度が低下する問題や、鑑賞可能エリアが狭いという問題がある。一方、非特許文献3によると、通常のディスプレイを鑑賞する距離においては両眼視差の他に運動視差が立体感に影響を与えていることが知られている。
【0006】
このような特性を利用して、両眼視差ではなく運動視差を利用して立体感を表現する手法として非特許文献4の手法が提案されている。非特許文献4では、運動視差を利用することで、鑑賞範囲が大きく広がり、なおかつ両眼視差で生じる長時間の鑑賞による疲労感を与えにくいという利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】http://www.nissho-ele.co.jp/product/philips/
【非特許文献2】http://www.aec.co.jp/mm/products/tridelity.htm
【非特許文献3】Cutting, J. and Vishton, P., “Perceiving Layout and Knowing Distances,” Perception of Space and Motion, W. Epstein and S. Rogers, eds., Academic Press (1995), 69-117.
【非特許文献4】Zhang, C., Yin, Z., and Florencio, D., “Improving depth perception with motion parallax and its application in teleconferencing,” MMSP 2009, (2009), 1-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
運動視差を利用して立体感を表現する非特許文献4の手法では、ユーザの鑑賞位置を検出し、その検出位置に合わせた映像を提示するため、複数人での同時鑑賞ができないという問題がある.
【0009】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、運動視差を利用して立体感を表現する際に、複数人での同時鑑賞を可能とする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、映像を表示する表示部と、各鑑賞者の視点に応じた映像を前記表示部に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示するよう制御し、前記表示部に所定の鑑賞者の位置に応じた立体映像を表示している期間に前記所定の鑑賞者が前記立体映像を鑑賞できるようにさせる同期制御部と、前記同期制御部により前記所定の鑑賞者に対し前記立体映像を鑑賞させる制御信号を、該制御信号に基づいて自装置を装着している鑑賞者に対し前記立体映像を鑑賞させる光透過制御装置に送信する通信部と、を備えることを特徴とする映像提示装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運動視差を利用して立体感を表現する際に、複数人が同時に鑑賞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における映像提示システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態における映像提示装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本実施形態における制御部の論理的な構成を示す概略ブロック図である。
【図4】各鑑賞者位置算出部の処理の一例について説明するための図である。
【図5】本実施形態におけるシャッタ装置の斜視図である。
【図6】本実施形態におけるシャッタ装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【図7】本実施形態における映像提示システムのシーケンス図の一例である。
【図8】本実施形態における映像提示装置の制御部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における映像提示システム1の概略構成図である。映像提示システム1は、映像提示装置100と、シャッタ装置200_1、200_2、…、200_NまでのN個のシャッタ装置200_i(iは1からNまでの整数)とを有する。
【0014】
まず、本実施形態の映像提示装置100の概要について説明する。本実施形態の映像提示装置100は、複数人が同時に鑑賞可能な立体映像を提供する。本実施形態の映像提示装置100は、従来の両眼視差による立体映像ではなく、鑑賞者の視点位置に応じて、自装置が備える表示部140に表示される画像の奥行き方向の見え方が変更される運動視差映像を生成し、生成した運動視差映像を表示部140に表示する。これにより、映像提示装置100は表示部140に表示された物体の奥行きを表現することができる。
【0015】
具体的には、映像提示装置100は、1人または複数の鑑賞者を検出し、検出した鑑賞者に応じた運動視差映像を、検出した鑑賞者の人数分生成する。映像提示装置100は、生成したそれぞれの運動視差映像を表示部140に所定の順番で時系列に切り替えながら表示する。
【0016】
映像提示装置100は、i番目の鑑賞者の視界を制御する制御信号S_i(iは1からNまでの整数)をシャッタ装置200_iへ無線で送信する。例えば、映像提示装置100は、1番目の制御信号S_1をシャッタ装置200_1へ無線で送信する。
【0017】
シャッタ装置200_iは、映像提示装置100から送信された制御信号S_iを受信し、受信した制御信号S_iに基づいて、自装置が備える液晶シャッタの光の透過率を時系列で変更する。
これにより、シャッタ装置200_iの液晶シャッタ越しに映像提示装置100が提示する映像を鑑賞した鑑賞者は、当該鑑賞者向けに生成された映像のみを選択的に閲覧することができる。
【0018】
これにより、映像提示システム1は、複数人での同時鑑賞を可能にすることができる。なお、従来の両眼視差を用いた立体映像表示システムにおける、シャッタ装置は、時分割に映像を切り替える際に、液晶シャッタの開閉を右目用液晶シャッタと左目用液晶シャッタとで交互に行った。それに対し、本発明におけるシャッタ装置200_iは、シャッタ装置200_i毎に順番に行う。
【0019】
図2は、本実施形態における映像提示装置100のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。映像提示装置100は、撮像部110と、制御部120と、立体映像記憶部130と、表示部140と、通信部150とを備える。
撮像部110は、予め決められた所定の鑑賞エリアを撮像し、撮像により得られた画像データを制御部120に出力する。
【0020】
立体映像記憶部130には、あらゆる視点から見た立体映像に変換可能な立体映像のデータが記憶されている。ここで、立体映像のデータは、例えばDirectX(登録商標)やOpenGL(登録商標)などに代表されるコンピュータグラフィックス用の3Dモデルデータである。
【0021】
具体的には、例えば、立体映像記憶部130には、奥行き情報をもつ人物画像のデータである人物レイヤのデータと、奥行き情報をもつ背景画像のデータである背景レイヤのデータとが記憶されている。ここで、背景レイヤの奥行き情報は、例えば、予め背景がカメラによって撮像された際に、カメラのAF機能実行時に算出された値である。また、人物レイヤの奥行き情報は、例えば、鑑賞者の視点位置である。
【0022】
なお、立体映像のデータは、文献(木全 英明, "多視点映像符号化MVCの国際標準化動向", 映像情報メディア学会誌, Vol. 61 (2007) , No. 4 pp.426-430)に挙げるような多視点の映像データでもよい。
【0023】
制御部120は、撮像部110から供給された画像データから、鑑賞エリアに存在する全ての鑑賞者(ここで、鑑賞者をN人とする)を検出し、検出した鑑賞者の位置を鑑賞者毎に算出する。
制御部120は、立体映像記憶部130から立体映像のデータを読み出し、読み出した立体映像のデータと算出した鑑賞者毎の鑑賞者の位置とに基づいて、鑑賞者毎の立体映像を生成する。
【0024】
制御部120は、鑑賞者の位置に応じた映像を表示部140に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示させる。また、制御部120は、表示部140に所定の位置の鑑賞者向けの立体映像を表示している期間にその鑑賞者がこの映像を鑑賞できるようにさせるN個の制御信号S_i(iは1からNまでの整数)を生成する。制御部120は、生成したN個の制御信号S_iを通信部150に供給する。
【0025】
表示部140は、制御部120による制御により、映像を表示する。これにより、表示部140は、鑑賞者の位置毎に、当該鑑賞者の視点に応じた立体映像を表示することができる。
【0026】
通信部150は、無線(例えば、赤外線)によりN個のシャッタ装置200_iのそれぞれと通信可能に構成されている。通信部150は、制御部120から供給された各制御信号S_iを変調し、変調後の制御信号S_iをそれぞれ対応するシャッタ装置200_iに無線で送信する。
【0027】
図3は、本実施形態における制御部120の論理的な構成を示す概略ブロック図である。制御部120は、鑑賞者検知部122と、位置検出部123と、映像生成部124と、同期制御部126とを備える。
【0028】
鑑賞者検知部122は、撮像部110から供給された画像から、所定の鑑賞エリアに存在する全ての鑑賞者の画像領域(以下、「鑑賞者オブジェクト」と称する。)を検出する。具体的には、例えば、鑑賞者検知部122は、文献(http://www.seeingmachines.com/product/faceapi/)に記載の画像処理を用いて、鑑賞者の顔の画像領域を検出する。
【0029】
なお、鑑賞者検知部122は、文献(http://www.naturalpoint.com/optitrack/products/)に記載の技術を用いて、鑑賞者が有する所定のマーカを検出することにより、所定の鑑賞エリアに存在する全ての鑑賞者オブジェクトを検出してもよい。
【0030】
鑑賞者検知部122は、検知した鑑賞者オブジェクトそれぞれに対して鑑賞者オブジェクトを識別する鑑賞者識別情報Vidを割り振る。具体的には、例えば、N個の鑑賞者オブジェクトが検出されたとすると、鑑賞者検知部122は、検知した鑑賞者オブジェクトそれぞれに対して鑑賞者識別情報Vidとして、1からNまでの整数を割り振る。
【0031】
鑑賞者検知部122は、検出したN個の鑑賞者オブジェクトを示す情報R_i(iは1からNまでの整数)を鑑賞者識別情報Vidと関連付けて位置検出部123に出力する。ここで、鑑賞者オブジェクトを示す情報とは、例えば、画像領域の外縁の座標群を示す情報である。
【0032】
位置検出部123は、鑑賞者検知部122から供給されたN個の鑑賞者オブジェクトを示す情報R_iに基づいて、画像内における各鑑賞者オブジェクトの位置を算出する。ここで、位置検出部123は、鑑賞者位置算出部123_1、123_2、…、123_NのN個の鑑賞者位置算出部123_i(iは1からNまでの整数)を備える。
【0033】
各鑑賞者位置算出部123_iは、鑑賞者識別情報Vidに関連付けられた鑑賞者オブジェクトを示す情報R_iに基づいて、各鑑賞者の位置を算出する。具体的には、例えば、鑑賞者検知部122は、ディスプレイ座標系において、検出した鑑賞者の顔の画像領域の重心を当該画像内における鑑賞者の位置として算出する。ここで、ディスプレイ座標系とは、画像の左上を原点とする座標系である。
【0034】
図4は、各鑑賞者位置算出部123_iの処理の一例について説明するための図である。同図において、ディスプレイ座標系であるpq座標系において、撮像部110により撮像された画像F40の模式図が示されている。同図の画像F40において、鑑賞者検知部122により検出された鑑賞者v41の顔に相当する画像領域f41と、鑑賞者v42の顔に相当する画像領域f42と、鑑賞者v43の顔に相当する画像領域f43とが示されている。また、画像領域f41の重心c41と、画像領域f42の重心c42と、画像領域f43の重心c43とが示されている。
【0035】
鑑賞者検知部122により三つの鑑賞者オブジェクトが検出された場合(すなわちNが3の場合)、鑑賞者位置算出部123_1は、例えば、図4に示された鑑賞者v41の顔に相当する画像領域f41の重心c41の座標を算出する。また、鑑賞者位置算出部123_2は図4に示された鑑賞者v42の顔に相当する画像領域f42の重心c42の座標を算出する。また、鑑賞者位置算出部123_3は、図4に示された鑑賞者v43の顔に相当する画像領域f43の重心c43の座標を算出する。
【0036】
図3に戻って、鑑賞者検知部122は、算出した各鑑賞者の位置を示す位置情報P_iを鑑賞者識別情報Vidと関連付けて、映像生成部124に出力する。
続いて、映像生成部124の処理の概要について説明する。映像生成部124は、位置算出部123から供給された位置情報P_i毎に、各鑑賞者の視点から見えるべき立体映像である運動視差映像のデータTD_i(iは1からNまでの整数)に立体映像のデータを変換する。
【0037】
続いて、映像生成部124の処理の詳細について説明する。映像生成部124は、鑑賞者用映像生成部124_1、124_2、…、124_NまでのN個の鑑賞者用映像生成部124_iを備える。映像生成部124は、立体映像記憶部130から立体映像の人物レイヤのデータと背景レイヤのデータを読み出す。映像生成部124は、読み出した立体映像のデータがコンピュータグラフィック用の3Dモデルデータである場合、その立体映像のデータに対してDirectX(登録商標)やOpenGL(登録商標)などを用いてCGレンダリングを行う。
【0038】
各鑑賞者用映像生成部124_iは、CGレンダリング後の立体映像のデータを、位置情報P_iに基づいて、当該鑑賞者の視点から見えるべき立体映像である運動視差映像のデータTD_iに変換する。
具体的には、例えば、各鑑賞者用映像生成部124_iは、表示部140をディスプレイ面として、立体映像記憶部130から読み出した人物レイヤのデータと背景レイヤのデータとを位置情報P_iに応じて、ディスプレイ面に非対称な透視投影変換を行うことで、当該鑑賞者の視点から見えるべき立体映像である運動視差映像のデータTD_iを生成する。
【0039】
映像生成部124_iは、生成した各運動視差映像のデータTD_iを同期制御部126に出力する。
なお、映像生成部124は、位置算出部123から供給された位置情報P_iに基づいて、多視点映像符号化技術などを用いて映像合成を行うことにより、各々の鑑賞者の視点から見えるべき映像を生成してもよい。
【0040】
同期制御部126は、映像生成部124から供給された各運動視差映像を表示部140に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示させる。具体的には、同期制御部126は、生成した各鑑賞者の視点から見えるべき立体映像のデータTD_iを1フレーム毎に順に、表示部140に表示させる。
【0041】
同期制御部126は、あるフレームの立体映像のデータTD_1、TD_2、…、TD_Nを順に表示部140に表示させると、次のフレームの立体映像のデータTD_1、TD_2、…、TD_Nを順に表示部140に表示させる。映像生成部124は、上記処理を立体映像のデータTD_iがなくなるまで繰り返す。
【0042】
各鑑賞用同期制御部126_iは、表示部140に所定の鑑賞者の視点から見えるべき立体映像を表示している期間にその鑑賞者がこの立体映像を鑑賞できるようにする。具体的には、各鑑賞用同期制御部126_iは、その鑑賞者がこの立体映像を鑑賞できるようにさせる制御信号S_iを生成する。そして、各鑑賞用同期制御部126_iは、生成した制御信号S_iを通信部150に出力する。
【0043】
表示部140は、同期制御部126から供給された各運動視差映像を供給されたデータの順番に従って表示する。なお、各々の映像の表示時間の最短時間は使用するディスプレイの1秒間に画面を書き換える回数である垂直スキャンレートに依存する。すなわち、表示部140は、垂直スキャンレートが高いほど、当該最短時間を短くすることができる。
【0044】
図5は、本実施形態におけるシャッタ装置200_iの斜視図である。シャッタ装置200_iは、液晶シャッタ230を有する。シャッタ装置200_iは、眼鏡型のシャッタ装置であり、鑑賞者はシャッタ装置200_iを掛けることができる。これにより、鑑賞者は液晶シャッタ230越しに映像提示装置100が提示する映像を鑑賞する。
【0045】
図6は、本実施形態におけるシャッタ装置200_iのハードウェア構成を示す概略ブロック図である。シャッタ装置200_iは、受信部210と、制御部220と、液晶シャッタ230とを備える。
受信部210は、映像提示装置100から送信された変調後の制御信号S_iを受信し、変調後の制御信号S_iを復調する。受信部210は、復調により得られた制御信号S_iを制御部220に出力する。
【0046】
制御部220は、制御信号S_iに基づいて、液晶シャッタ230の液晶の光の透過率を変更させ、液晶シャッタ230が光を通過させる状態と光を通過させない状態とを切り替える。これにより、制御部220は、自装置を掛けた鑑賞者の視点から見えるべき立体映像である運動視差映像由来の光だけを透過させることができるので、各鑑賞者は、自分の視点から見えるべき立体映像のみを見ることができる。
【0047】
液晶シャッタ230は液晶を備え、制御部220の制御により、液晶の光の透過率を変更する。ここで、液晶が光を通過させる状態はシャッタが開いた状態であり、液晶が光を通過させない状態はシャッタが閉じた状態である。
【0048】
続いて、本実施形態における映像提示システムの処理全体を図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における映像提示システムのシーケンス図の一例である。また、映像提示装置100もシャッタ装置200_iもラスタースキャンで、画面の向かって左端から画面の向かって右端に掛けて上から順にスキャンされることを前提とする。
【0049】
図7Aは、映像提示装置100の走査タイミングの一例が示された図である。同図において、シャッタ装置200_1用の画像と、シャッタ装置200_2用の画像と、…、シャッタ装置200_N用の画像とが順番に1フレームずつ表示されることが示されている。ここで、縦軸は画面内の垂直位置であり、横軸は時刻である。各平行四辺形内の各点は、その平行四辺形に示されたシャッタ装置200_i用の画像内の当該垂直位置における1行分の画像が、当該時刻において表示されることを示している。
【0050】
図7Bは、制御信号S_1とシャッタ装置200_1のシャッタの開閉を表す模式図OC_1である。同図において、図7Aに示されるように映像提示装置100が画像を表示する場合において、シャッタ装置200_1の液晶シャッタ230の開閉を制御する制御信号S_1の電圧波形V_S_1が示されている。
【0051】
また、模式図OC_1において、黒い領域は液晶シャッタ230のシャッタが閉じており、白い領域は液晶シャッタ230のシャッタが開いていることを示している。ここで、縦軸は画面内の垂直位置であり、横軸は時刻である。
同図において、制御信号S_1の電圧がローからハイに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが開いた状態になることが示されている。また、制御信号S_1の電圧がハイからローに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが閉じた状態になることが示されている。
【0052】
これにより、シャッタ装置200_1は、映像提示装置100がシャッタ装置200_1用の画像を表示している期間だけ、液晶シャッタ230を開くようにすることができる。
【0053】
同様に、図7Cは、制御信号S_2とシャッタ装置200_2のシャッタの開閉を表す模式図OC_2とを示した図である。同図において、図7Aに示されるように映像提示装置100が画像を表示する場合において、シャッタ装置200_2の液晶シャッタ230の開閉を制御する制御信号S_2の電圧波形V_S_2が示されている。
【0054】
また、模式図OC_2において、黒い領域は液晶シャッタ230のシャッタが閉じており、白い領域は液晶シャッタのシャッタが開いていることを示している。ここで、縦軸は画面内の垂直位置であり、横軸は時刻である。
同図において、制御信号S_2の電圧がローからハイに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが開いた状態になることが示されている。また、制御信号S_2の電圧がハイからローに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが閉じた状態になることが示されている。
【0055】
これにより、シャッタ装置200_2は、映像提示装置100がシャッタ装置200_2用の画像を表示している期間だけ、液晶シャッタ230を開くようにすることができる。
【0056】
同様に、図7Dは、制御信号S_Nとシャッタ装置200_Nのシャッタの開閉を表す模式図OC_Nとを示した図である。同図において、図7Aに示されるように映像提示装置100が画像を表示する場合において、シャッタ装置200_Nの液晶シャッタ230の開閉を制御する制御信号S_Nの電圧波形V_S_Nが示されている。
【0057】
また、模式図OC_Nにおいて、黒い領域は液晶シャッタ230のシャッタが閉じており、白い領域は液晶シャッタ230のシャッタが開いていることを示している。ここで、縦軸は画面内の垂直位置であり、横軸は時刻である。
同図において、制御信号S_Nの電圧がローからハイに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが開いた状態になることが示されている。また、制御信号S_Nの電圧がハイからローに切り替わると、上から順に液晶シャッタ230のシャッタが閉じた状態になることが示されている。
【0058】
これにより、シャッタ装置200_Nは、映像提示装置100がシャッタ装置200_N用の画像を表示している期間だけ、液晶シャッタ230を開くようにすることができる。
【0059】
図8は、本実施形態における映像提示装置100の制御部120の処理の流れを示すフローチャートである。まず、鑑賞者検知部122は、撮像部110により撮像された画像から鑑賞者オブジェクトを抽出する(ステップS101)。次に、鑑賞者検知部122は、抽出した各鑑賞者オブジェクトに対して、鑑賞者識別情報Vidを付与する(ステップS102)。
【0060】
次に、位置算出部123は、各鑑賞者オブジェクトの位置を算出する(ステップS103)。次に、映像生成部124は、立体映像記憶部130に記憶されている立体映像のデータを読み出す(ステップS104)。次に、映像生成部124は、立体映像のデータと鑑賞者オブジェクトの位置とに基づいて、各鑑賞者の視点から見えるべき運動視差映像を生成する(ステップS105)。
【0061】
次に、同期制御部126は、各鑑賞者の視点から見えるべき運動視差映像を表示する時刻に合わせて、各制御信号S_iを生成する(ステップS106)。同期制御部126は、通信部150を介して生成した各制御信号S_iをそれぞれシャッタ装置200_iに送信するよう制御する。次に、同期制御部126は、生成した各鑑賞者の視点から見えるべき運動視差映像を表示部140に1フレームずつ順に表示させる(ステップS108)。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0062】
以上、本実施形態の映像提示装置100は、1人または複数の鑑賞者を検出し、検出した鑑賞者に応じた運動視差映像を、検出した鑑賞者の人数分生成する。映像提示装置100は、各鑑賞者の視点に応じた運動視差映像を表示部140に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示するよう制御する。
【0063】
また、映像提示装置100は、表示部140に所定の鑑賞者の視点に応じた運動視差映像を表示している期間にその鑑賞者がこの立体映像を鑑賞できるようにする。具体的には、映像提示装置100は、シャッタ装置のシャッタの開閉を制御する制御信号S_iをシャッタ装置200_iに無線で送信する。シャッタ装置200_iは、映像提示装置100から供給された制御信号S_iに基づいて、液晶シャッタ230を開閉する。
【0064】
これにより、本実施形態の映像提示装置100は、複数の鑑賞者にそれぞれ異なる運動視差映像を提示することができるので、運動視差による立体映像表現において、従来困難であった複数人での同時映像鑑賞を可能とすることができる。
また、本実施形態の映像提示装置100が提示する運動視差映像は、両眼立体視による立体映像と比較して、鑑賞者の疲労感が少ないという利点を有する。また、本実施形態の映像提示装置100は、視聴可能エリアの広い立体映像を提示することができる。
【0065】
また、両眼視差を利用して裸眼で立体視を実現する従来の方法(多視点裸眼立体視手法)においては、提供する視点数が増加するほど映像の解像度が低下するため、高解像度の映像の鑑賞ができないという問題があった。
本実施形態の映像提示装置100は、生成した各検出位置の運動視差映像をディスプレイに時系列に順番に切り替えながら表示を行うので、視点数が増加しても映像の解像度が低下することがない。その結果、本実施形態の映像提示装置100は、視点数が増加しても高解像度の映像を提示することができる。
【0066】
なお、本実施形態におけるシャッタ装置200_iは、液晶シャッタを用いて説明したがこれに限らず、機械式シャッタでもよく、映像提示装置100に表示される映像由来の光が鑑賞者の眼に入射するのを、映像提示装置100から供給された制御信号S_iに応じて遮断または透過させることができる光透過制御装置であればよい。この場合、制御信号S_iは、鑑賞者の視界を制御する制御信号である。
【0067】
また、映像提示装置100は、検出した鑑賞者の人数分、運動視差映像を生成したがこれに限らず、映像提示装置100は、検出した鑑賞者の人数のうちの一部の鑑賞者の人数分運動視差映像を生成してもよい。その場合、映像提示装置100は、所定の位置範囲にいる複数の鑑賞者に対して、同じ運動視差映像を提示してもよい。
【0068】
また、本実施形態の映像提示装置100の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、映像提示装置100に係る上述した種々の処理を行ってもよい。
【0069】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0070】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 映像提示システム
100 映像提示装置
110 撮像部
122 鑑賞者検知部
123 位置算出部
123_1、123_2、…、123_N 鑑賞者位置算出部
124 映像生成部
124_1、124_2、…、124_N 鑑賞者用映像生成部
126 同期制御部
126_1、126_2、…、126_N 鑑賞者用同期制御部
130 立体映像記憶部
140 表示部
150 通信部
200_1、200_2、…、200_N シャッタ装置
210 受信部
220 制御部
230 液晶シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する表示部と、
各鑑賞者の視点に応じた映像を前記表示部に所定の表示順で時系列に切り替えながら表示するよう制御し、前記表示部に所定の鑑賞者の位置に応じた立体映像を表示している期間に前記所定の鑑賞者が前記立体映像を鑑賞できるようにさせる同期制御部と、
前記同期制御部により前記所定の鑑賞者に対し前記立体映像を鑑賞させる制御信号を、該制御信号に基づいて自装置を装着している鑑賞者に対し前記立体映像を鑑賞させる光透過制御装置に送信する通信部と、
を備えることを特徴とする映像提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−244433(P2012−244433A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112806(P2011−112806)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】