説明

映像記録装置及びつなぎ撮り方法

【課題】 つなぎ撮りを行ったときにつなぎ撮りの応答性が悪かったり、つなぎ撮りの際に画質に悪影響を及ぼすおそれがない映像記録装置を提供する。
【解決手段】 記録を再開させるために、再びRECスイッチがオンにされると、磁気テープ1は走行を再開し、キャプスタンサーボは再生モードで磁気テープを定速走行させた後、位相制御回路6で再生したコントロール信号を基準信号13と比較して位相制御をかけ、C点で位相制御がロックされたら、次の映像信号の切り替わり点、通常は奇数フィールドの冒頭部分を検出してR点で映像信号が切り替わるとすると、R点でキャプスタンサーボを記録モードに切り替え、映像信号、コントロール信号の記録を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープを用いた映像記録を中断、再開することによってつなぎ撮りを行う映像記録装置及びつなぎ撮り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラで撮像した映像を磁気テープに記録するカメラ一体型VTR(Video Tape Recorder)が広く 用いられている。カメラ一体型VTRで映像を記録する場合、カットごとに記録を中断、再開することによりつなぎ撮りを行って、順次記録を行っていく。
【0003】
図3は一般的なVTRのサーボ制御回路のブロック図である。記録(REC)モードでは、キャプスタンモータ2で磁気テープ1を走行させながら映像信号を映像ヘッド14で磁気テープ1の映像トラックに記録するとともに、トラッキング制御用信号であるコントロール信号をコントロールヘッド10で磁気テープ1に記録する。コントロール信号を記録する場合は、映像信号の垂直同期信号から作成した基準信号13(NTSCでは30Hz)を記録回路9、スイッチ11のREC端子を経由して磁気テープ1のコントロールトラックに記録する。キャプスタンモータ2は、その回転数を検出するFG検出器3からのパルスを用いて速度制御回路4、駆動回路5により所定の速度で回転するよう速度制御される。さらに、FG検出器3からのパルス(以下、FGパルスと称す。)を所定の分周比を持った分周回路7で分周して30Hzのパルスを作成し、スイッチ12のREC端子を経由して位相制御回路6に出力する。位相制御回路6では、分周回路7からのパルスと基準信号13との位相を検出し、速度制御回路4ではこの位相差とFGパルスをミックスしてキャプスタンモータ2を位相制御する。
【0004】
再生(PB)モードでは、スイッチ11、12をPB端子側に切り替え、磁気テープ1からコントロールヘッド10を経由して再生されたコントロール信号がスイッチ11のPB端子、増幅回路8、スイッチ12のPB端子を介して位相制御回路6に印加され、基準信号13との位相が比較される。そのほかの速度制御、位相制御動作は、記録モードのときと同じである。
【0005】
以下に、第1の従来例としてVTRのつなぎ撮りにおけるサーボ制御方法を図4を用いて説明する。記録モードでは、映像信号は磁気テープ1の斜めの映像トラックに、コントロール信号は磁気テープ1の側端のコントロールトラックに書き込まれる。記録モード中に記録を中断させるためにRECスイッチをオフ(OFF)にすると、映像トラックc及びコントロール信号aを書き込んでD点で記録を停止する。そして、再開時につなぎ撮り点での映像信号、コントロール信号の連続性を保つためにA−D点間で位相制御が確実にロックするよう、D点から所定量巻き戻して(プリロールして)、A点で待機する。
【0006】
記録を再開させるために、再びRECスイッチがオン(ON)にされると、磁気テープ1は走行を再開する。このときはスイッチ11、12はまだPB側になっていて、キャプスタンサーボは再生モードであり、キャプスタンモータ2はB点までに所定のスピードにまで立ち上がり、磁気テープ1を定速走行させる。さらに、位相制御回路6で、再生したコントロール信号を基準信号13と比較して位相制御をかけてC点で位相制御がロックする。D点以降は、キャプスタンサーボは記録モードに切り替わり、スイッチ11、12はREC(記録)側に切り替わり、映像信号、コントロール信号が記録される。
【0007】
また、つなぎ撮りの時間を短縮した映像記録装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。以下に、第2の従来例として、特許文献1のVTRのつなぎ撮りにおけるサーボ制御方法を図5を用いて説明する。図5は特許文献1で提案されている磁気記録再生装置のつなぎ撮りの動作を説明する模式図である。図5に示すように、記録モードで、映像、音声、コントロール信号が磁気テープ上のG点までの部分に記録される。G点でRECスイッチをオフにすると、映像信号は、映像トラックj(コントロール信号eの位置)に書いて記録を停止する。音声記録も同様に停止する。しかし、磁気テープ1は走行を続け、コントロール信号eに続いてコントロール信号f、g、hを記録してI点で記録を停止する。その後、I点からE点までプリロールして待機する。
【0008】
再度、RECスイッチがオンにされると、キャプスタンサーボは再生モードとなり、F点まで速度制御ループがロックし、磁気テープ1は定速走行する。そして、G点で映像信号、音声信号の記録を再開する。一方、位相制御は、再生されたコントロール信号e、f、g、hと基準信号とを比較しながら、G点以降も再生モードで制御され、H点で位相ロックし、I点以降は記録モードに変わり、コントロール信号iが記録される。
【特許文献1】特開平6―349160号公報(段落0015、0016、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ENG(Electric News Gathering)と呼ばれるニュース取材の場面などでは、事件や事故が発生すると、かけつけたカメラマンは即座に記録を開始したい。そこでカメラマンが記録開始ボタンを押してから実際に記録が始まるまでの時間、すなわちつなぎ撮りの応答性が問題になる。しかしながら、第1の従来例におけるサーボ制御方法は、つなぎ撮り点での映像信号、コントロール信号の連続性を保つため、A−D点間で位相制御が確実にロックするようプリロール時間を決めているので、ロック時間に対し十分な余裕を持たせてプリロール時間を決める必要がある。したがって、環境の変化やバラツキの最悪の状態に合わせてプリロール時間を設定しており、大半の場合ではロック時間に対してプリロール時間が長すぎ、記録再開タイミングが遅いという課題があった。
【0010】
また、第2の従来例におけるサーボ制御方法では、G点からI点までは、再開後の映像トラックk、l、mのピッチは、中断前の映像トラックj以前のピッチと異なり、映像トラックn以降は、位相制御がロック状態になるため、正規のピッチに戻る。そのため、再生時、G点でトラッキングずれが生じ、つなぎ撮りにおいて部分的に映像トラックの出力が減少し、画質に悪影響を及ぼすという課題があった。このように従来の映像記録装置は、つなぎ撮りを行ったときにつなぎ撮りの応答性が悪かったり、つなぎ撮りの際に画質に悪影響を及ぼすおそれがあるという課題があった。
【0011】
本発明は上記従来例の問題点に鑑み、つなぎ撮りの応答性がよく、画質に悪影響を及ぼすおそれのない映像記録装置及びつなぎ撮り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために、
磁気テープ(1)を走行させるテープ走行手段(2)と、
複数のフィールド構成による入力映像信号を前記磁気テープ(1)に記録する映像信号記録手段(14)と、
前記入力映像信号を基に生成されたトラッキング制御用の制御信号を前記磁気テープ(1)に記録する制御信号記録手段(10)と、
前記制御信号記録手段(10)により前記磁気テープ(1)に記録された制御信号を再生して再生制御信号を取得する制御信号再生手段(10)と、
前記磁気テープ(1)の走行速度を検出するテープ走行速度検出手段(3)と、
前記テープ走行速度検出手段(3)の検出信号を基に前記テープ走行手段(2)を駆動して前記磁気テープ(1)の走行速度を制御するテープ走行速度制御手段(4)と、
前記テープ走行速度制御手段(4)が前記磁気テープの走行速度を一定速度に制御した後、前記制御信号再生手段(10)により取得された再生制御信号の位相と前記入力映像信号の位相との差を基に前記テープ走行手段(2)を駆動して前記磁気テープ(1)の走行位相を制御する位相制御手段(6)とを備えた映像記録装置において、
前記磁気テープ(1)を走行させながら前記入力映像信号及び前記制御信号をそれぞれ記録している記録状態から記録の停止状態に移行したとき、前記磁気テープ(1)を停止させた後に逆方向に所定量だけ巻き戻して停止させるとともに、前記停止状態から再び記録状態に移行するときは、前記磁気テープ(1)の走行を再開して前記位相制御手段(6)による磁気テープの走行位相がロックされた直後の前記入力映像信号の前記フィールドの切り替わり時点で前記入力映像信号の記録を再開するつなぎ撮り手段(図1に示す制御)を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は上記目的を達成するために、
磁気テープを走行させて、複数のフィールド構成による入力映像信号を前記磁気テープに記録するとともに、前記入力映像信号を基に生成されたトラッキング制御用の制御信号を前記磁気テープに記録する映像記録装置におけるつなぎ撮り方法において、
前記磁気テープを走行させながら前記入力映像信号及び前記制御信号をそれぞれ記録している記録状態から記録の停止状態に移行したとき、前記磁気テープを停止させた後に逆方向に所定量だけ巻き戻して停止させるテープ巻き戻しステップ(図1のD−A間)と、
前記停止状態から再び記録状態に移行するときは、前記磁気テープの走行を再開して前記磁気テープの走行速度を一定速度に制御した後、再生制御信号の位相と前記入力映像信号の位相との差を基に前記磁気テープの走行位相を制御する位相制御ステップ(図2のステップS01〜S04)と、
前記磁気テープの走行制御の位相がロックされたことを判別する位相ロック判別ステップ(図2のステップS05)と、
前記位相ロック判別ステップで位相がロックされたことを判別した直後の前記入力映像信号の前記フィールドの切り替わり時点を判別する切り替わり時点判別ステップ(図2のステップS06)と、
前記切り替わり時点判別ステップで切り替わり時点を判別したときに前記入力映像信号の記録を再開する記録再開ステップ(図2のステップS07)とを有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、つなぎ撮りの際に、記録再開時にテープ走行手段でテープを走行させて速度制御を行った後に位相制御し、位相制御が完了すると映像信号の切り替え時点で映像記録を再開するので、つなぎ撮りの応答性がよく、画質に悪影響を及ぼすおそれのない映像記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態の映像記録装置のつなぎ撮りの動作を説明する模式図、図2は映像記録装置のつなぎ撮りのフローチャートである。なお、本実施の形態における映像記録装置としての一例であるVTRのサーボ制御回路のブロック図として前述した図3を用いて説明する。
【0016】
図1、図2に示す処理は図3に示す映像記録装置により行われる。記録モードでは、映像信号はヘリカルスキャンにより磁気テープ1の斜めの映像トラックに、コントロール信号は磁気テープ1の側端のコントロールトラックに書き込まれる。記録モード中に記録を停止させるためにRECスイッチがオフにされると、映像トラックc及びコントロール信号aが書き込まれた後D点で記録が停止する。そして、D点から所定量巻き戻して(プリロールして)、A点で待機する。ここで、B点は速度制御ロックが完了する時点、C点は位相制御ロックが完了する時点である。
【0017】
記録を再開させるために再びRECスイッチがオンにされると、磁気テープ1はA点から走行を再開する(ステップS01)。このときはスイッチ11、12はまだPB側になっていて、キャプスタンサーボは再生モードであり、キャプスタンモータ2はB点で所定のスピードにまで立ち上がるので(ステップS02)、その後は磁気テープ1を定速走行させ(ステップS03)、次いで位相制御回路6で再生したコントロール信号を基準信号13と比較して位相制御をかける(ステップS04)。
【0018】
C点で位相制御がロックされたら(ステップS05 YES)、次の映像信号の切り替わり点、例えば奇数フィールドの冒頭部分を検出する(ステップS06)。R点で映像信号が切り替わるのを検出すると(ステップS06 YES)、R点でキャプスタンサーボを記録モードに切り替え、スイッチ11、12をREC(記録)側に切り替え、映像信号、コントロール信号の記録を再開する(ステップS07)。これにより、前回の記録時の映像トラックcより前の映像トラックrから上書きを開始し、コントロールトラックは前回の記録時のコントロール信号aより前のs点から上書きを開始する。これにより、キャプスタンサーボがロックされた後に最短で記録を開始することができるので、つなぎ撮りを行ったときにつなぎ撮りの応答性がよい。また記録を再開する時点では必ずキャプスタンサーボがロックされているので、つなぎ撮りの際に画質に悪影響を及ぼすおそれがない。
【0019】
ここで、R点からD点の間では、つなぎ撮りの直前に記録された映像信号が上書きされ、消されてしまうが、ENGなどで記録を行う際は後からの編集作業を考慮して長めに記録を行っておくことが通常であるので、上書きされてもさほど問題は生じることはない。また環境の変化、バラツキなどによりサーボロックの時間が長くかかる場合は、位相がロックされるC点が後ろにずれることとなるが、最もずれても第1の従来例と同じになるだけでありそれ以上に悪化することはない。
【0020】
このように実施の形態の映像記録装置は、つなぎ撮りの際に、記録再開時にテープ走行手段でテープを走行させて速度制御を行った後に位相制御し、位相制御が完了すると映像信号の切り替え時点で映像の記録を再開するので、つなぎ撮りを行ったときにつなぎ撮りの応答性が悪かったり、つなぎ撮りの際に画質に悪影響を及ぼすおそれがない映像記録装置を提供することができる。なお、本実施の形態ではコントロール信号をテープ側端に打ち込む例を示したが、これにこだわることなく、DVC規格のデジタルVTRなどコントロール信号を用いないものにも適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態である映像記録装置のつなぎ撮りの動作を説明する模式図である。
【図2】本発明の実施の形態である映像記録装置のつなぎ撮りのフローチャートである。
【図3】従来の映像記録装置のサーボ制御回路などのブロック構成図である。
【図4】第1の従来例におけるつなぎ撮りの動作を説明する模式図である。
【図5】第2の従来例におけるつなぎ撮りの動作を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1 磁気テープ
2 キャプスタンモータ
3 FG検出器
4 速度制御回路
5 駆動回路
6 位相制御回路
7 分周回路
8 増幅回路
9 記録回路
10 コントロールヘッド
11、12 スイッチ
13 基準信号
14 映像ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープを走行させるテープ走行手段と、
複数のフィールド構成による入力映像信号を前記磁気テープに記録する映像信号記録手段と、
前記入力映像信号を基に生成されたトラッキング制御用の制御信号を前記磁気テープに記録する制御信号記録手段と、
前記制御信号記録手段により前記磁気テープに記録された制御信号を再生して再生制御信号を取得する制御信号再生手段と、
前記磁気テープの走行速度を検出するテープ走行速度検出手段と、
前記テープ走行速度検出手段の検出信号を基に前記テープ走行手段を駆動して前記磁気テープの走行速度を制御するテープ走行速度制御手段と、
前記テープ走行速度制御手段が前記磁気テープの走行速度を一定速度に制御した後、前記制御信号再生手段により取得された再生制御信号の位相と前記入力映像信号の位相との差を基に前記テープ走行手段を駆動して前記磁気テープの走行位相を制御する位相制御手段とを備えた映像記録装置において、
前記磁気テープを走行させながら前記入力映像信号及び前記制御信号をそれぞれ記録している記録状態から記録の停止状態に移行したとき、前記磁気テープを停止させた後に逆方向に所定量だけ巻き戻して停止させるとともに、前記停止状態から再び記録状態に移行するときは、前記磁気テープの走行を再開して前記位相制御手段による磁気テープの走行位相がロックされた直後の前記入力映像信号の前記フィールドの切り替わり時点で前記入力映像信号の記録を再開するつなぎ撮り手段を、
備えたことを特徴とする映像記録装置。
【請求項2】
磁気テープを走行させて、複数のフィールド構成による入力映像信号を前記磁気テープに記録するとともに、前記入力映像信号を基に生成されたトラッキング制御用の制御信号を前記磁気テープに記録する映像記録装置におけるつなぎ撮り方法において、
前記磁気テープを走行させながら前記入力映像信号及び前記制御信号をそれぞれ記録している記録状態から記録の停止状態に移行したとき、前記磁気テープを停止させた後に逆方向に所定量だけ巻き戻して停止させるテープ巻き戻しステップと、
前記停止状態から再び記録状態に移行するときは、前記磁気テープの走行を再開して前記磁気テープの走行速度を一定速度に制御した後、再生制御信号の位相と前記入力映像信号の位相との差を基に前記磁気テープの走行位相を制御する位相制御ステップと、
前記磁気テープの走行制御の位相がロックされたことを判別する位相ロック判別ステップと、
前記位相ロック判別ステップで位相がロックされたことを判別した直後の前記入力映像信号の前記フィールドの切り替わり時点を判別する切り替わり時点判別ステップと、
前記切り替わり時点判別ステップで切り替わり時点を判別したときに前記入力映像信号の記録を再開する記録再開ステップとを、
有したことを特徴とするつなぎ撮り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−309827(P2006−309827A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128501(P2005−128501)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】