説明

映像配信用伝送機器

【課題】 簡易な回路により視聴制限を行えるようにする。
【解決手段】 配信信号から抽出された自局宛の制御信号が、BS/CS−IFの周波数帯のTV信号の視聴をオフする制御信号の場合には、トランジスタTR1がオフして発振回路OSCが発振する。この発振信号によりTR2が周期的にオン/オフされて、PIN1〜PIN4が周期的に導通/非道通を繰り返す。これにより、BS/CS−IFの周波数帯のTV信号は周期的にレベル変動されてRF OUTから出力されるため、BS/CS−IFの周波数帯のTV信号の視聴をすることができなくなる。制御信号が、BS/CS−IFの周波数帯のTV信号の視聴をオンする制御信号の場合には、トランジスタTR1がオンして発振回路OSCは停止、TR2はオンし、PIN1〜PIN4は導通する。これにより、BS/CS−IFの周波数帯のTV信号の視聴をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視聴制限の制御を行うことができる映像配信用伝送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
CATVにおいては、従来、映像、音声の制限は、加入者宅に設置される映像配信用伝送機器を利用して行っている。この映像配信用伝送機器では、CATVセンターから送信されて来たTV信号の内のTV信号出力そのものを視聴制限に対応してON/OFFし、映像配信用伝送機器に接続されているTV受信機に視聴制限されたTV信号を伝えないようにすることが行われている。この仕組みはCATVのセンターにFSK(Frequency Shift Keying)送信機を設置して、それぞれ個別の識別情報を持った映像配信用伝送機器毎に向けた制御信号を、放送帯域の少し下の周波数とされる70〜76MHzで、他のTV放送信号と混合し送信する。映像配信用伝送機器は、センターから送信されて来たTV信号に混合されている制御信号から、自局の識別情報が付加されている制御信号を抽出して、その制御信号に応じてTV信号出力をON/OFFさせる制御を行う。これにより、視聴制限された加入者の視聴制限制御を行うことができる。
【0003】
このような視聴制限を行うことができる従来の映像配信用伝送機器の回路構成の一例を図5に示す。
図5に示す映像配信用伝送機器100において、CATVセンターから配信される配信信号はTV信号に視聴制限用の制御信号が混合されており、光ファイバ110を介して各加入者宅へ光信号として配信される。加入者宅に引き込まれた光ファイバ110を伝播してきた光信号は映像配信用伝送機器100に入力され、フォトダイオード(PD)111により電気信号に変換される。変換された電気信号とされた配信信号は、増幅器(AMP)113により増幅されて自動利得制御部(AGC)114において所定レベルになるようレベル制御される。この場合、PD111から出力される配信信号のレベルがAGC回路112により検出され、AGC回路112は検出した配信信号のレベルに応じたレベル制御信号をAGC114に送る。AGC114は、レベル制御信号に応じてAMP113からの配信信号のレベルを制御する。AGC114により所定レベルとされたTV信号は、分岐器115を介してハイパスフィルタ(HPF)116とローパスフィルタ(LPF)122に供給されると共に、分岐器115により分岐された配信信号の一部がFSK信号受信部129に入力される。
【0004】
HPF116ではBS/CS−IFの周波数帯のTV信号が抽出され、抽出されたBS/CS−IF系のTV信号は、利得制御部(GC)117において所定レベルとなるようレベル制御されて、3段のAMP118,AMP119,AMP120で増幅される。AMP120からの増幅されたBS/CS−IF系のTV信号は、HPF121において不要波成分が除去されて出力される。また、LPF122ではV/UHFの周波数帯のTV信号が抽出され、抽出されたV/UHF系のTV信号は、利得制御部(GC)123において所定レベルとなるようレベル制御されて、3段のAMP124,AMP125,AMP126で増幅される。AMP126からの増幅されたV/UHF系のTV信号は、LPF127において不要波成分が除去されて出力される。
HPF121から出力されるBS/CS−IF系のTV信号と、LPF127から出力されるV/UHF系のTV信号とは混合されて出力端子OUT128から出力される。出力端子OUT128にはTV受像機が接続される。
【0005】
分岐器115からの分岐出力が入力されるFSK信号受信部129では、TV信号に混合されたTV信号の帯域より低い帯域の視聴制限用の制御信号のみを受信して、その制御信号を復調する。復調された制御信号は解析部CPU130に供給され、解析部CPU130において自局の識別情報が付加された自局宛の制御信号が抽出されて、抽出された制御信号が制御部131に供給される。自局宛の制御信号がBS/CS−IF系のTV信号の視聴をOFFする制御信号の場合は、制御部131は、GC117に減衰量を大きくする制御信号を送る。これにより、BS/CS−IF系のTV信号がGC117により減衰されてHPF120からは出力されないようになる。また、自局宛の制御信号がV/UHF系のTV信号の視聴をOFFする制御信号の場合は、制御部131は、GC123に減衰量を大きくする制御信号を送る。これにより、V/UHF系のTV信号はGC123により減衰されてLPF127からは出力されないようになる。さらに、自局宛の制御信号がBS/CS−IF系やV/UHF系のTV信号の視聴をONする制御信号の場合は、GC117やGC123に減衰量を大きくする制御信号は送られず、BS/CS−IF系やV/UHF系のTV信号は減衰されることなく通常通りに出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−92499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の視聴制限を行える映像配信用伝送機器100では、フィルタで抜き出せる帯域(V/UHF帯あるいはBS/CS−IF帯)のTV信号を切断させるかパスさせるかの制御と、全帯域を通過させる制御を行うことができる。この場合、TV信号を切断するといっても完全に遮断することはコストパフォーマンスから考えて現実的ではなく、60dB程度の減衰量をTV信号に与え、これによりTV信号を切断することで妥協せざるを得ない。しかし、BS/CS−IF帯のように周波数が高くなり、特に2600MHzの周波数になると映像配信用伝送機器100の回路における浮遊容量の影響や、回路等から空間に信号が放射される影響で遮断するTV信号に十分な減衰量を与えることが困難になっている。このように、十分な減衰量を遮断するTV信号に与えられない場合は、映像配信用伝送機器100の後にブースタを設けてブースタにより増幅されたTV信号をTV受信機に入力することにより、映像配信用伝送機器100で遮断制御されたTV信号であっても視聴可能になる恐れがあるという問題点があった。
また、映像配信用伝送機器100のGC117,GC123ではTV信号を減衰させるためにPINダイオードを用いている。すなわち、視聴をOFFする制御信号によりPINダイオードによりTV信号を減衰させている。しかしながら、PINダイオードでは減衰量が十分に得られないため、AMP118〜AMP120やAMP124〜AMP126の電源を断して動作を止めたり、TV信号の伝達経路に開閉されるリレー接点を挿入したりする減衰手段を併用することにより、減衰量を稼ぐ必要があった。さらに、帯域別に減衰量を制御する場合は帯域ごとに減衰させる回路が必要になり、回路が複雑になってしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、簡易な回路により視聴制限することのできる映像配信用伝送機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像配信用伝送機器は、入力された配信信号を一部分岐する分岐手段と、該分岐手段で分岐された配信信号から、自局宛の制御信号を抽出して、抽出した制御信号が所定の周波数帯域の視聴をオフする制御信号の場合に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す第1レベル制御信号を出力し、抽出した制御信号が視聴をオンする制御信号の場合に一定レベルとされる第2レベル制御信号を出力する制御手段と、前記分岐手段を介した前記配信信号から前記所定の周波数帯域の視聴信号を抽出する抽出手段と、該抽出手段で抽出された前記所定の周波数帯域の視聴信号のレベルを、前記制御手段からのレベル制御信号により調整可能なレベル調整手段とを備え、前記レベル調整手段は、前記第1レベル制御信号を受けた際に前記所定の周波数帯域の視聴信号を前記第1レベル制御信号に応じて周期的にレベル変動させて出力し、前記第2レベル制御信号を受けた際に前記所定の周波数帯域の視聴信号を前記第2レベル制御信号に応じたレベルとして出力することを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視聴をオフする制御信号の場合に視聴信号のレベルを第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す第1レベル制御信号により周期的にレベル変動させて出力することで、TV受像機において視聴することができないようになる。これは、TV受像機にはレベル変動を吸収するためのAGC回路が内蔵されており、このAGC回路はゆっくりとしたレベル変動に追従する時定数とされていることから、第1レベル制御信号に応じて周期的にレベル変動された視聴信号のレベル変動に追従することができないからである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかる映像配信用伝送機器の構成を示すブロック回路図である。
【図2】本発明にかかる映像配信用伝送機器の制御部およびレベル調整部の構成を示す回路図である。
【図3】本発明にかかる映像配信用伝送機器の制御部およびレベル調整部の制御動作を示す図表である。
【図4】本発明にかかる映像配信用伝送機器のレベル制御の減衰量の周波数特性を示す図である。
【図5】従来の映像配信用伝送機器の構成を示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例にかかる映像配信用伝送機器1の構成を示すブロック回路図を図1に示す。
図1に示す本発明にかかる映像配信用伝送機器1において、CATVセンターから配信される配信信号はTV信号に視聴制限用の制御信号が混合されており、光ファイバ10を介して各加入者宅へ光信号として配信される。加入者宅に引き込まれた光ファイバ10を伝播してきた光信号は映像配信用伝送機器1に入力され、フォトダイオード(PD)11により電気信号に変換される。PD11により変換された電気信号とされた配信信号は、増幅器(AMP)13により増幅されて自動利得制御部(AGC)14において所定レベルになるようレベル制御される。この場合、PD11から出力される配信信号のレベルがAGC回路12により検出され、AGC回路12は検出した配信信号のレベルに応じたレベル制御信号をAGC14に送る。AGC14は、レベル制御信号に応じてAMP13からの配信信号のレベルを制御する。AGC14により所定レベルとされたTV信号は、分岐器15を介してハイパスフィルタ(HPF)19とローパスフィルタ(LPF)22に供給されると共に、分岐器15により分岐された配信信号の一部がFSK信号受信部16に入力される。
【0012】
HPF19ではBS/CS−IFの周波数帯のTV信号が抽出され、抽出されたBS/CS−IF系のTV信号は、レベル調整部20においてレベル制御されて、HPF21で不要波成分が除去されて出力される。また、LPF22ではV/UHFの周波数帯のTV信号が抽出され、抽出されたV/UHF系のTV信号は、レベル調整部23においてレベル制御されて、LPF127で不要波成分が除去されて出力される。HPF21から出力されるBS/CS−IF系のTV信号と、LPF24から出力されるV/UHF系のTV信号とは混合されて3段縦続された増幅器であるAMP25,AMP26,AMP27で増幅される。AMP27からの増幅されたBS/CS−IF系とV/UHF系とが混合されたTV信号は、出力端子(OUT)28から出力される。OUT28にはTV受像機が接続される。
なお、HPF19,レベル調整部20,HPF21によりBS/CS−IF系のTV信号のレベルを制御する第1レベル調整系が構成され、LPF22,レベル調整部23,LPF24によりV/UHF系のTV信号のレベルを制御する第2レベル調整系が構成されている。
【0013】
分岐器15からの分岐出力が入力されるFSK信号受信部16では、TV信号に混合されたTV信号の帯域より低い帯域の視聴制限用の制御信号のみを受信して、その制御信号を復調する。復調された制御信号は解析部CPU17に供給され、解析部CPU17において自局の識別情報が付加された自局宛の制御信号が抽出されて、抽出された制御信号が制御部18に供給される。自局宛の制御信号がBS/CS−IF系のTV信号の視聴をOFFする制御信号の場合は、制御部18は、レベル調整部20に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す矩形波とされた第1レベル制御信号を送る。これにより、レベル調整部20においてBS/CS−IF系のTV信号が第1レベル制御信号(矩形波)により振幅変調されて、第1レベル制御信号の周期で周期的にレベル変動されて出力されるようになる。また、自局宛の制御信号がBS/CS−IF系のTV信号の視聴をONする制御信号の場合は、制御部18は、レベル調整部20に所定の一定レベルとされた第2レベル制御信号を送る。これにより、レベル調整部20においてBS/CS−IF系のTV信号が第2レベル制御信号のレベルに応じてレベル制御されて出力されるようになる。
【0014】
さらに、自局宛の制御信号がV/UHF系のTV信号のTV信号の視聴をOFFする制御信号の場合は、制御部18は、レベル調整部23に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す矩形波とされた第1レベル制御信号を送る。これにより、レベル調整部23においてV/UHF系のTV信号が第1レベル制御信号(矩形波)により振幅変調されて、第1レベル制御信号の周期で周期的にレベル変動されて出力されるようになる。また、自局宛の制御信号がV/UHF系のTV信号の視聴をONする制御信号の場合は、制御部18は、レベル調整部20に所定の一定レベルとされた第2レベル制御信号を送る。これにより、レベル調整部20においてV/UHF系のTV信号が第2レベル制御信号のレベルに応じてレベル制御されて出力されるようになる。
【0015】
OUT28に接続されるTV受像機には、AGC回路が内蔵されている。これはTV受像機が設置された地域の電界により受信レベルが様々だったり、空間伝送路上にある反射物の影響、例えば飛行機によるフラッタ障害や海の干満差によるもの、季節性のフェージングなどに起因する障害などからくるレベル変動を吸収させる必要があるためである。これらのレベル変動は時定数が数十Hzより長く、TV受信機もこの時定数に追従するようになっている。しかし、この時定数に比べて短い周期でレベルの変化があった場合はTV受信機がレベル変動に追従できなくなり画像に乱れが生じ視聴に耐えない画像となることの知見を得た。特に、デジタル放送ではエラーとなり画像再生することができない。この際のレベル変化の周波数は数百Hz以上でレベル変動差は10〜20dB程度で画像が乱れることが確かめられた。本発明にかかる映像配信用伝送機器1では、この現象を利用して映像配信用伝送機器1からの出力を数百Hz以上の周波数でレベル変動させることにより、TV視聴を出来なくさせるようにしている。すなわち、第1レベル制御信号とされる発振信号の発振周波数は数百Hz以上とされ、好適には1kHz〜2kHz程度とされる。
さらに、FSK信号受信部16がFSK制御信号を受信できないときは、制御部18はAMP25〜AMP27の電源をオフする制御を行うことにより、消費電力を低減させるようにしても良い。
【0016】
次に、解析部CPU17はBS/CS−IF系のTV信号の視聴を制御する制御信号(BS/CS−IF)と、V/UHF系のTV信号のTV信号の視聴を制御する制御信号(V/UHF)との2つの制御信号を制御部18に出力する。制御部18は、制御信号(BS/CS−IF)が入力されてBS/CS−IF系のレベル調整部20のレベル制御を行う第1制御部18−1と、制御信号(V/UHF)が入力されてV/UHF系のレベル調整部23のレベル制御を行う第2制御部18−2との2系統を備えている。第1制御部18−1と第2制御部18−2との回路構成は同一とされている。また、レベル調整部20とレベル調整部23とは同一の回路構成とされている。そこで、図2に第1制御部18−1とレベル調整部20の回路図を図2に示す。また、レベル調整部20の制御動作を図3の図表に示す。
【0017】
図2に示す第1制御部18−1およびレベル調整部20の回路を図3に示す図表を参照しながら説明する。第1制御部18−1において、解析部CPU17により検出された自局の制御信号の内の制御信号(BS/CS−IF)は抵抗R2を介してスイッチング用のトランジスタTR1のベースに入力される。この制御信号(BS/CS−IF)のレベルに応じてトランジスタTR1がオン/オフされる。トランジスタTR1のエミッタはアースされ、コレクタは発振回路部OSCを構成しているインバータINVの入力に接続されている。これにより、トランジスタTR1のオン/オフに応じて発振回路部OSCの入力側がオープンあるいはアースされ、発振回路OSCが発振するか停止されるかが制御される。この発振回路部OSCは、インバータINVと、インバータINVの入力と出力間に接続された負帰還抵抗R3と、インバータINVの入力とアース間に接続されたコンデンサC4とにより構成され、抵抗R3とコンデンサC4との時定数により発振周波数が決定される。発振回路OSCの出力は抵抗R4を介してスイッチング用のトランジスタTR2のベースに入力される。トランジスタTR2のエミッタはアースされ、コレクタはレベル調整部20への出力とされ、コレクタとアース間にはバイパスコンデンサC5が接続されコレクタのインピーダンスが高周波的に小さくされている。なお、発振回路OSCの出力のレベルに応じてトランジスタTR2がオン/オフされる。
【0018】
レベル調整部20は、HPF19からのBS/CS−IF系のTV信号が、入力端子(RF IN)に入力される。また、電源Vccが供給される端子と制御電圧Vsが供給される端子を備えている。入力端子に入力されたBS/CS−IF系のTV信号は、直列接続されたコンデンサC1およびコンデンサC2を介して直列接続された2本の第1PINダイオード(PIN1)および第2PINダイオード(PIN2)に入力されると共に、コンデンサC1を介して直列接続された2本の第3PINダイオード(PIN3)および第4PINダイオード(PIN4)に入力される。コンデンサC1とコンデンサC2との接続点に抵抗R1を介して例えば約12Vの電源Vccが供給され、コンデンサC2とPIN1のアノードとの接続点にチョークコイルCH1を介して制御電圧Vsが供給されている。制御電圧Vsは可変することができ、例えば約2V〜12Vの間で可変することができる。PIN3のカソードとPIN4のアノードとの接続点とアース間にコンデンサC6が接続され、当該接続点のインピーダンスが高周波的に小さくされている。また、PIN2のカソードとPIN4のカソードとが接続されて、その出力はコンデンサC3を介して出力端子(RF OUT)に出力されている。出力端子(RF OUT)からの出力は、AMP25に入力される。PIN2のカソードとPIN4のカソードとの接続点は抵抗R5を介して第1制御部18−1の出力であるトランジスタTR2のコレクタに接続されている。
【0019】
第1制御部18−1に入力された制御信号(BS/CS−IF)がハイレベル(High)の時は、BS/CS−IF系のTV信号の視聴をONする制御信号とされており、トランジスタTR1がオンして発振回路部OSCの入力側がアースされる。これにより、発振回路OSCの発振は停止され、発振回路OSCの出力はハイレベル(High)となる。この発振回路部OSCの出力は抵抗R4を介してトランジスタTR2のベースに入力され、トランジスタTR2はオンする。これにより、PIN2のカソードとPIN4のカソードとが抵抗R5およびトランジスタTR2のコレクタ−エミッタを介してアースされる。従って、電源Vccから抵抗R1を介してPIN3とPIN4とに電流が供給されて導通し、PIN3とPIN4のインピーダンスが低くなる。また、制御電圧VsからチョークコイルCH1を介してPIN1およびPIN2に電流が供給されて導通し、PIN1とPIN2のインピーダンスが低くなる。この結果、入力端子(RF IN)に入力されたBS/CS−IF系のTV信号はインピーダンスが低くなったPIN1〜PIN4を通過して出力端子(RF OUT)から出力されるようになる。ただし、制御電圧Vsが可変されるとPIN1およびPIN2のインピーダンスが変化することから、制御電圧Vsの大きさに応じて出力端子(RF OUT)から出力されるBS/CS−IF系のTV信号の出力レベルを制御することができる。すなわち、制御電圧Vsを最大(例えば、約12V)にすると出力端子(RF OUT)から出力されるBS/CS−IF系のTV信号の出力レベルは最大となり、制御電圧Vsを最小(例えば、約2V)にすると出力端子(RF OUT)から出力されるBS/CS−IF系のTV信号の出力レベルは最小となる。
【0020】
また、第1制御部18−1に入力された制御信号(BS/CS−IF)がローレベル(Low)の時は、BS/CS−IF系のTV信号の視聴をOFFする制御信号とされており、トランジスタTR1がオフして発振回路部OSCの入力側はオープン状態となる。これにより、発振回路OSCが発振し、発振回路OSCからはハイレベルとローレベルとが周期的に繰り返される所定周波数の矩形波が出力される。この発振回路部OSCの発振出力は抵抗R4を介してトランジスタTR2のベースに入力され、トランジスタTR2は周期的にオン/オフを繰り返す。トランジスタTR2がオフしている期間は、PIN2のカソードとPIN4のカソードとが直流的にオープン状態となって電流が流れなくなり、PIN3とPIN4とが非導通になってインピーダンスが高くなると共に、PIN1とPIN2も非導通になってインピーダンスが高くなる。すると、入力端子(RF IN)に入力されたBS/CS−IF系のTV信号はインピーダンスが高くなったPIN1〜PIN4により大きく減衰を受けて出力端子(RF OUT)から出力されるようになる。また、トランジスタTR2がオンしている期間は、上述したようにPIN2のカソードとPIN4のカソードとがトランジスタTR2を介してアースされ、PIN3とPIN4とが導通してインピーダンスが低くなると共に、PIN1とPIN2も導通してインピーダンスが低くなる。この結果、入力端子(RF IN)に入力されたBS/CS−IF系のTV信号はインピーダンスが低くなったPIN1〜PIN4を減衰することなく通過して出力端子(RF OUT)から出力されるようになる。
【0021】
この場合、トランジスタTR2は周期的にオン/オフを繰り返すことから、PIN1〜PIN4は周期的に導通/非導通を繰り返すようになる。これにより、入力端子(RF IN)に入力されたBS/CS−IF系のTV信号はPIN1〜PIN4が導通したときは減衰を受けることなく出力端子(RF OUT)から出力されるが、PIN1〜PIN4が非導通の時は大きく減衰を受けて出力端子(RF OUT)から出力される。すなわち、入力端子(RF IN)に入力されたBS/CS−IF系のTV信号は発振回路部OSCの発振出力に応じて周期的に出力レベルが変動されて出力端子(RF OUT)から出力されるようになる。この場合、制御電圧Vsが可変されるとPIN1およびPIN2のインピーダンスが変化することから、制御電圧Vsの大きさに応じて出力端子(RF OUT)から出力されるBS/CS−IF系のTV信号のレベル変動差が決まるようになる。
なお、制御信号(V/UHF)が入力されてV/UHF系のレベル調整部23のレベル制御を行う第2制御部18−2とレベル調整部23との回路図は、図2に示す回路図と同様とされ、図3に示す動作と同様の動作を行うようになる。また、発振回路部OSCの発振周波数は数百Hz以上とされ、好適には1kHzないし2kHzとされる。
【0022】
図2に示す回路図とされた第1制御部18−1とレベル調整部20における減衰量の周波数特性を図4に示す。
図4において、2点鎖線で示す減衰量の周波数特性は、制御電圧Vsを可変して最大電圧(例えば、約12V)とした際の特性であり、1点鎖線で示す減衰量の周波数特性は、制御電圧Vsを可変して最小電圧(例えば、約2V)とした際の特性であり、制御電圧Vsを可変することにより、一点鎖線と二点鎖線との間の任意の減衰量に設定することができる。また、実線で示す減衰量の周波数特性は、トランジスタTR2がオフしてPIN2およびPIN4のカソードがオープンされた状態の減衰量の周波数特性である。図4を参照すると、制御電圧Vsを最大電圧(例えば、約12V)とした場合は、約90MHzないし約2600MHzの周波数帯においてほぼ0dBの減衰量とされ、高域になると若干減衰するようになる。また、制御電圧Vsを最小電圧(例えば、約2V)とした場合は、約90MHzにおいて約10dBの減衰量とされ、周波数が高くなるにつれて減衰量が緩やかに増加していき約2600MHzにおいて約12dBの減衰量となっている。さらに、トランジスタTR2がオフしてPIN2およびPIN4のカソードがオープン状態の場合は、約90MHzにおいて約33dBの減衰量とされ、周波数が高くなるにつれて減衰量が次第に減少していき約2600MHzにおいて約19dBの減衰量となっている。
【0023】
なお、制御信号(V/UHF)が入力されてV/UHF系のレベル調整部23のレベル制御を行う第2制御部18−2とレベル調整部23の減衰量の周波数特性においても、図4に示す減衰量の周波数特性と同様になる。
このように、発振している発振回路OSCの発振出力により制御されるレベル調整部20(23)では、制御電圧Vsを最大電圧(例えば、約12V)とした場合にTV信号に与えることができるレベル変動差は、一点鎖線で示す最小の減衰量とオープン状態の減衰量との差となり、少なくとも約18dB以上となる。また、制御電圧Vsを最小電圧(例えば、約2V)とした場合には、TV信号に与えられるレベル変動差は、上記と同様とされ少なくとも約8dB以上となる。これにより、発振している発振回路OSCの発振出力により制御されるレベル調整部20(23)を経由したTV信号を視聴しても画像が乱れたり、画像再生ができなくなって視聴することができないようになる。すなわち、本発明にかかる映像配信用伝送機器においては、アナログ放送であってもデジタル放送であっても視聴制限を行うことができる。
さらに、制御電圧Vsを可変することにより、一点鎖線と二点鎖線との間とされる約0dBから約10dBの間の任意の減衰量に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明した本発明にかかる映像配信用伝送機器においては、従来のON/OFF制御による視聴制限では、60dB以上のアイソレーションが必要であったが、10〜20dB程度のレベル変動をTV信号に与えることにより視聴制限が可能になり、回路が簡便かつ廉価になる。また、視聴をONする場合(発振回路OSCは発振停止)は、レベル調整部20(23)において制御電圧Vsを可変することにより出力レベルを調整することができる。このように、本発明にかかる映像配信用伝送機器においては、出力レベルを調整するレベル調整部20(23)を視聴制限用の回路としても兼用している。
また、本発明にかかる映像配信用伝送機器においては、従来のON/OFF制御方式の欠点であった受信者が増幅器を用いても視聴可能になることが無い。
さらに、利得変動させる周期を遅くさせたり複数周期を組み合わせたりすると映像や音声にノイズが入るが内容は判別できる程度とすることができるようになる。これを利用し視聴者に対してアピール効果を持たせ購買意欲を誘うこともできる。
さらにまた、FSK信号受信部16がFSK制御信号を受信できないときは、制御部18はAMP25〜AMP27の電源をオフする制御を行うことにより、確実に視聴制限を行えると共に、消費電力を低減させることができる。
上記の説明では、発振回路OSCはインバータにより構成したが、これに限ることはなくOPアンプを用いた発振回路や、トランジスタ等の能動素子を用いた発振回路としても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 映像配信用伝送機器、10 光ファイバ、11 フォトダイオード、12 AGC回路、13 AMP、14 AGC、15 分岐器、16 FSK信号受信部、17 解析部CPU、18 制御部、18−1 第1制御部、19 HPF、20 レベル調整部、21 HPF、22 LPF、23 レベル調整部、24 LPF、25〜27 AMP、28 出力端子、100 映像配信用伝送機器、110 光ファイバ、111 フォトダイオード、112 AGC回路、113 AMP、114 AGC、115 分岐器、116 HPF、117 GC、118〜120 AMP、121 HPF、122 LPF、123 GC、124〜126 AMP、127 LPF、129 FSK信号受信部、130 解析部CPU、131 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された配信信号を一部分岐する分岐手段と、
該分岐手段で分岐された配信信号から、自局宛の制御信号を抽出して、抽出した制御信号が所定の周波数帯域の視聴をオフする制御信号の場合に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す第1レベル制御信号を出力し、抽出した制御信号が視聴をオンする制御信号の場合に一定レベルとされる第2レベル制御信号を出力する制御手段と、
前記分岐手段を介した前記配信信号から前記所定の周波数帯域の視聴信号を抽出する抽出手段と、
該抽出手段で抽出された前記所定の周波数帯域の視聴信号のレベルを、前記制御手段からのレベル制御信号により調整可能なレベル調整手段とを備え、
前記レベル調整手段は、前記第1レベル制御信号を受けた際に前記所定の周波数帯域の視聴信号を前記第1レベル制御信号に応じて周期的にレベル変動させて出力し、前記第2レベル制御信号を受けた際に前記所定の周波数帯域の視聴信号を前記第2レベル制御信号に応じたレベルとして出力することを特徴とする映像配信用伝送機器。
【請求項2】
入力された配信信号を一部分岐する分岐手段と、
該分岐手段で分岐された配信信号から、自局宛の制御信号を抽出して、抽出した制御信号に対応するレベル制御信号を出力する制御手段と、
前記分岐手段を介した前記配信信号から第1周波数帯域の視聴信号を抽出する第1抽出手段と、該第1周波数帯域の視聴信号のレベルを、前記制御手段からの前記レベル制御信号により調整可能な第1レベル調整手段とからなる第1レベル調整系と、
前記分岐手段を介した前記配信信号から第2周波数帯域の視聴信号を抽出する第2抽出手段と、該第2周波数帯域の視聴信号のレベルを、前記制御手段からの前記レベル制御信号により調整可能な第2レベル調整手段とからなる第2レベル調整系と、
前記第1レベル調整系からの出力と、前記第2レベル調整系からの出力とを混合して出力する出力手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1周波数帯域の視聴をオフする制御信号の場合に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す第1レベル制御信号を前記第1レベル調整手段に印加して、前記第1周波数帯域の前記視聴信号を前記第1レベル制御信号に応じて周期的にレベル変動させて出力し、制御信号が前記第1周波数帯域の視聴をオンする制御信号の場合に一定レベルとされる第2レベル制御信号を前記第1レベル調整手段に印加して、前記第1周波数帯域の前記視聴信号を前記第2レベル制御信号に応じたレベルとして出力し、
前記制御手段は、前記第2周波数帯域の視聴をオフする制御信号の場合に第1のレベルと第2のレベルを周期的に繰り返す第1レベル制御信号を前記第2レベル調整手段に印加して、前記第2周波数帯域の前記視聴信号を前記第1レベル制御信号に応じて周期的にレベル変動させて出力し、制御信号が前記第2周波数帯域の視聴をオンする制御信号の場合に一定レベルとされる第2レベル制御信号を前記第2レベル調整手段に印加して、前記第2周波数帯域の前記視聴信号を前記第2レベル制御信号に応じたレベルとして出力することを特徴とする映像配信用伝送機器。
【請求項3】
前記第1レベル信号は、所定の周波数で発振する発振回路からの矩形波とされていることを特徴とする請求項1または2記載の映像配信用伝送機器。
【請求項4】
前記レベル調整手段からの出力を増幅して出力する増幅手段が設けられており、前記制御手段が前記制御信号を受信できないときは、前記制御手段が前記増幅手段の電源を断とすることを特徴とする請求項1記載の映像配信用伝送機器。
【請求項5】
前記出力手段には、出力を増幅して出力する増幅手段が設けられており、前記制御手段が前記制御信号を受信できないときは、前記制御手段が前記増幅手段の電源を断とすることを特徴とする請求項2記載の映像配信用伝送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−49762(P2012−49762A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189165(P2010−189165)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】