説明

映像音声出力装置

【課題】安価かつ簡単な構成で、しかも何らの調整をすることなく、臨場感を向上させた映像音声出力装置を提供する。
【解決手段】開示される映像音声出力装置1は、映像を表示可能な表示部2と、表示部2の左右にそれぞれ設けられ、中高音域の音響を表示部2の前面に対して鋭角的な角度で放射して互いに合成する一対の中高音域用スピーカと、表示部2の左右にそれぞれ設けられ、中低音域の音響を表示部2の前面に対して略直角に視聴者側に放射する一対の中低音域用スピーカとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像と音声が出力可能なテレビジョン受信機やスピーカ一体型表示装置等の映像音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の映像音声出力装置には、ステレオ型ディスプレイ用スピーカを外装体の前面側に、画像用表示モジュールを後面側にそれぞれ密着して形成したものがある。上記ステレオ型ディスプレイ用スピーカは、複数チャンネルそれぞれに対応するエキサイタを分散して装備する複数の振動板を備えている。そして、上記振動板のうち、1つの振動板に装備されるエキサイタは、残りのチャンネルの音源を合成したセンターチャンネル用である(例えば、特許文献1参照。)。以下、この技術を第1の従来例と呼ぶ。
【0003】
また、従来の映像音声出力装置には、映像が表示可能なディスプレイと、このディスプレイの左右に一対設けられ、鉛直方向に設けられた回転軸を中心として音声の放射角が変更可能な、ハニカムコア構造の振動板を有する平板状のスピーカとからなるものもある(例えば、特許文献2参照。)。以下、この技術を第2の従来例と呼ぶ。
【0004】
【特許文献1】特開2007−267302号公報(請求項1,請求項2,請求項8,[0011],[0019],[0025]〜[0037]、図1〜図5)
【特許文献2】特開2007−251421号公報(請求項1,[0009],[0012]〜[0042]、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した第1の従来例では、センターチャンネル用のエキサイタ及びこのエキサイタが装備される振動板が必要であり、装置が高価になるという問題があった。一方、上記した第2の従来例では、視聴者は、スピーカから放射される音声の放射角度を視聴する内容等により、その都度所望の角度に変更する必要があり、煩わしいという問題があった。また、映像音声出力装置を構成するスピーカから放射された音声は、直接視聴者の耳に届くものの他、映像音声出力装置が設置された部屋の壁等によって反射された後に、視聴者の耳に届くものがある。したがって、上記した第2の従来例に係る映像音声出力装置で映像及び音声を視聴する場合、一般的な視聴者は、自己にとって最適な音声の放射角度を設定することは困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる映像音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明に係る映像音声出力装置は、映像を表示可能な表示部と、前記表示部の左右にそれぞれ設けられ、人の声の一部の周波数帯域を含む第1の音響を前記表示部の前面に対して鋭角的な角度で放射して互いに合成する一対の第1のスピーカと、前記表示部の左右にそれぞれ設けられ、前記人の声の一部を周波数帯域を含まない第2の音響を前記表示部の前面に対して略直角に視聴者側に放射する一対の第2のスピーカとを備えていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る映像音声出力装置1の外観構成を示す概略斜視図である。図2(a)は図1に示す映像音声出力装置1の外観構成を示す平面図、図2(b)は図1に示す映像音声出力装置1の外観構成を示す正面図である。また、図3は図2(a)のAの部分の拡大斜視図、図4は図3の透視斜視図である。さらに、図5は、図1に示す映像音声出力装置1の構成を示す透視正面図である。
【0009】
本実施の形態1に係る映像音声出力装置1は、表示部2、左チャンネルスピーカ部3及び右チャンネルスピーカ部4が筐体5内に収容されて概略構成されている。表示部2は、例えば、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、又はエレクトロルミネセンス(EL:electroluminescence)パネル、CRTディスプレイ、あるいはプロジェクタ等を有している。図1〜図5の例では、表示部2は、液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等の平面型ディスプレイを有している。
【0010】
表示部2は、筐体5の主収容部5aに収容されている。筐体5は、平面形状が略コ字状を呈している。すなわち、筐体5は、上記主収容部5aと、この主収容部5aの両端から前面側(視聴者側)に突出した突出部5b及び5cとが一体的に形成されて構成されている。突出部5b及び5cは、いずれも、主収容部5aに対向した側面が主収容部5aの前面側に張り出した張出部5ba及び5caが一体的に形成されている。筐体5の材料としては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系、ABS(アクリロニトリル・ブダジエン・スチレン)、ポリエチレンテレフタレート系などの熱可塑性樹脂に、補強用フィラーとしてガラス繊維又はフィブリル化したサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂を添加してなるものなどがある。
【0011】
左チャンネルスピーカ部3及び右チャンネルスピーカ部4は、図5の例では、それぞれ2個のスピーカユニット3a及び3b並びに4a及び4bから構成されている。図6はスピーカユニット3a及び3bの概略構成を示す透視斜視図、図7はスピーカユニット4a及び4bの概略構成を示す透視斜視図である。
【0012】
スピーカユニット3a及び3bは、中高音域用スピーカ11と、中低音域用スピーカ12と、キャビネット13とから構成されている。スピーカユニット3a及び3bは、2ウェイ方式であり、分割周波数は約1.6kHzである。したがって、可聴域が約20Hz〜約20kHzであるから、中低音域は約20Hz〜約1.6kHz、中高音域は約1.6kHz〜約20kHzとなる。このため、中高音域用スピーカ11からは1.6kHz〜約20kHzの周波数帯域の音響が放射され、中低音域用スピーカ12からは約1.6kHz〜約20kHzの音響が放射される。
【0013】
キャビネット13は、略立方体形状を呈しており、側面13aの略中央に貫通孔13aaが穿設されて中低音域用スピーカ12が取り付けられているとともに、側面13aに隣接する側面13bの略中央に貫通孔13baが穿設されて中高音域用スピーカ11が取り付けられている。すなわち、スピーカユニット3a及び3bでは、いずれも、中低音域用スピーカ12の音響放射方向と、中高音域用スピーカ11の音響放射方向とは略直交している。後述するスピーカユニット4a及び4bについても同様である。スピーカユニット3aは、側面13aを前面側(視聴者側)に向けて突出した突出部5bの上端近傍に収容されている。一方、スピーカユニット3bは、側面13aを前面側(視聴者側)に向けて突出した突出部5bの下端近傍に収容されている。
【0014】
これに対し、スピーカユニット4a及び4bは、上記中高音域用スピーカ11と、上記中低音域用スピーカ12と、キャビネット14とから構成されている。スピーカユニット4a及び4bは、上記したスピーカユニット3a及び3bと同様、2ウェイ方式である。
【0015】
キャビネット14は、略立方体形状を呈しており、側面14aの略中央に貫通孔14aaが穿設されて中低音域用スピーカ12が取り付けられているとともに、側面14aに隣接する側面14bの略中央に貫通孔14baが穿設されて中高音域用スピーカ11が取り付けられている。スピーカユニット4aは、側面14aを前面側(視聴者側)に向けて突出した突出部5cの上端近傍に収容されている。一方、スピーカユニット4bは、側面14aを前面側(視聴者側)に向けて突出した突出部5cの下端近傍に収容されている。
【0016】
次に、映像音声出力装置1がテレビジョン受信機で構成される場合の電気的構成について図8を参照して説明する。本実施の形態1に係る映像音声出力装置1は、デジタル放送の各チャンネルを受信するものである。ここで、デジタル放送としては、例えば、地上波デジタル放送、BS(放送衛星)デジタル放送、CS(通信衛星)デジタル放送がある。
【0017】
チューナ22は、アンテナ21で受信された各種の放送信号の中から、ユーザが操作部30を操作することにより選局したチャンネルの放送信号について、制御部28から供給される制御信号に基づいて、多重化されたトランスポートストリーム信号TSへのデジタル復調や誤り訂正、暗号化されたデータの復号化(適宜)等を行う。チューナ22は、トランスポートストリーム信号TSをデマルチプレクサ23に供給する。
【0018】
デマルチプレクサ23は、制御部28から供給される制御信号に基づいて、チューナ22から供給されるトランスポートストリーム信号TSについて、圧縮符号化されたデータMD及び付加情報SI(Service Information)等の分離、抽出等を行う。デマルチプレクサ23は、制御部28から供給される制御信号に基づいて、データMDをデコーダ24に供給するとともに、番組ごとの付加情報SIをEPG生成部27及び制御部28にそれぞれ供給する。
【0019】
ここで、付加情報SIには、例えば、チャンネル名、番組名、放送開始日時、放送終了日時、放送時間、番組内容、番組のジャンル、番組のサブジャンル、番組内イベント(例えば、視聴者プレゼント)、視聴者年齢制限情報、検索キーワード情報、番組登場人物の名前などの番組情報が含まれている。これらの番組情報は、各放送局が任意で付加するものであり、必須項目が規定されている訳ではない。上記した付加情報SIには、現在放送されているすべてのチャンネルのすべての番組に関する番組情報及び、これから放送される予定(現在以後に放送開始予定)のすべてのチャンネルのすべての番組に関する番組情報が含まれている。
【0020】
デコーダ24は、制御部28から供給される制御信号に基づいて、デマルチプレクサ3から供給されるデータMDを映像データVDや音声データADへデコードし、映像データVDを画像合成部25に供給するとともに、音声データADを音声出力部26に供給すること等を行う。映像合成部25は、EPG生成部27からEPGテーブルEPGTが供給されない場合には、制御部28から供給される制御信号に基づいて、デコーダ24から供給される映像データVDをそのまま合成映像データMVとして上記した表示部2に供給する。一方、EPG生成部27からEPGテーブルEPGTが供給された場合には、映像合成部25は、制御部28から供給される制御信号に基づいて、上記映像データVDと、上記EPGテーブルEPGTとを合成処理して、合成映像データMVを生成し、上記した表示部2に供給する。
【0021】
EPG生成部27は、制御部28から供給される制御信号に基づいて、デマルチプレクサ23から供給される付加情報SIをチャンネルごとに処理してEPGを構築及び更新して内部に設けられているEPG記憶領域に記憶する。また、EPG生成部27は、ユーザが操作部30を操作して表示部2を構成するディスプレイへのEPG画面の表示を指示することにより、制御部28から上記EPG画面の表示を指示する制御信号が供給された場合には、上記EPG記憶領域に記憶されたEPGに基づいて、上記ディスプレイにEPGをOSD(On Screen Display)表示形式で表示するために必要なEPGテーブルEPGTを生成して映像合成部25に供給する。
【0022】
制御部28は、中央処理装置(CPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、シーケンサ等を有し、記憶部30に記憶されているEPG表示プログラムその他のプログラム等に基づいて、EPG表示処理その他の処理を実行することにより、この映像音声出力装置1の各部を制御する。すなわち、例えば、記憶部30からEPG表示プログラムが読み出されると、制御部28に読み込まれ、制御部28の動作を制御する。制御部28は、EPG表示プログラムが起動されると、EPG表示プログラムの制御により、後述するEPG表示処理を実行するのである。EPG表示処理は、ユーザが操作部30を操作して表示部2を構成するディスプレイへのEPGの表示を指示した場合に表示部2を構成するディスプレイにEPGを表示させる処理である。
【0023】
操作部30は、リモコン、リモコン受信部及び本体操作部等からなる。リモコン及び本体操作部には、電源ボタン、チャンネルボタン、チャンネル増加ボタン、チャンネル減少ボタン、入力切換ボタン、音量増加ボタン、音量減少ボタン、EPG表示ボタン、カーソルボタン及び決定ボタン等が設けられている。リモコン受信部は、リモコンからの赤外線パルスの制御信号を受信し、電気信号の制御信号に変換して制御部28に供給する。本体操作部は、例えば、映像音声出力装置1本体の右下部に設けられている。本体操作部は、ユーザにより操作されたボタンに対応した制御信号を制御部28に供給する。
【0024】
記憶部30は、RAMやROM、あるいはフラッシュメモリ等の半導体メモリからなり、制御部28が実行するEPG表示プログラムその他のプログラムや、ユーザが操作部30を操作することにより入力したデータ等が記憶される。また、記憶部30は、制御部28がEPG表示プログラムその他のプログラムを実行する際に作業用として使用される。
【0025】
次に、音声出力部26の構成について図9を参照して説明する。音声出力部26は、音声信号処理部41と、増幅部42と、分割部43及び44と、上記したスピーカユニット3a、3b、4a及び4bとから構成されている。音声信号処理部41は、デコーダ22から供給される音声データADを復号した後、アナログの左チャンネルの音声信号S及び右チャンネルの音声信号Sに変換して出力する。
【0026】
増幅部42は、音声信号処理部41から供給される左チャンネルの音声信号S及び右チャンネルの音声信号Sをそれぞれ増幅して出力する。この場合、増幅部42は、制御部28から供給される制御信号SCに基づいて、左チャンネルの音声信号Sの増幅度と右チャンネルの音声信号Sの増幅度を異ならせる。
【0027】
分割部43は、増幅部42から供給される左チャンネルの音声信号Sを左チャンネルの中高音域の音声信号SL1と左チャンネルの中低音域の音声信号SL2とに分割し、左チャンネルの中高音域の音声信号SL1を中高音域用スピーカ11に供給するとともに、左チャンネルの中低音域の音声信号SL2を中低音域用スピーカ12に供給する。同様に、分割部44は、増幅部42から供給される右チャンネルの音声信号Sを右チャンネルの中高音域の音声信号SR1と右チャンネルの中低音域の音声信号SR2とに分割し、右チャンネルの中高音域の音声信号SR1を中高音域用スピーカ11に供給するとともに、右チャンネルの中低音域の音声信号SR2を中低音域用スピーカ12に供給する。
【0028】
次に、上記構成の映像音声出力装置1の動作について説明する。まず、ユーザが操作部30を構成するリモコンのチャンネルボタンを操作して、現在ニュース番組を放送しているチャンネルを選択したものとする。これにより、制御部28は、操作部30から供給される上記チャンネルボタンに対応した制御信号に基づいて、チューナ22その他の各部に制御信号を供給する。
【0029】
したがって、チューナ22は、選局されたチャンネルの放送信号に対応したトランスポートストリーム信号TSをデマルチプレクサ23に供給する。デマルチプレクサ23は、上記トランスポートストリーム信号TSから番組ごとのデータMD及び付加情報SI等の分離、抽出等を行い、データMDをデコーダ24に供給するとともに、付加情報SIをEPG生成部27及び制御部28にそれぞれ供給する。
【0030】
デコーダ24は、デマルチプレクサ3からのデータMDを映像データVDや音声データADへデコードし、映像データVDを画像合成部25に供給するとともに、音声データADを音声出力部26に供給する。これにより、映像合成部25は、現在EPG生成部27からEPGテーブルEPGTが供給されないので、デコーダ24からの映像データVDをそのまま合成映像データMVとして上記表示部2に供給する。したがって、表示部2のディスプレイには、当該チャンネルのニュース番組が表示される。このニュース番組では、男性のキャスター1人が画面略中央において、現在まで発生したニュースを紹介しているものとする。
【0031】
一方、音声出力部26では、音声信号処理部41は、デコーダ22からの音声データADを復号した後、アナログの左チャンネルの音声信号S及び右チャンネルの音声信号Sに変換して出力する。これにより、増幅部42は、音声信号処理部41からの左チャンネルの音声信号S及び右チャンネルの音声信号Sをそれぞれ増幅して出力する。
【0032】
今の場合、表示部2のディスプレイには、男性のキャスター1人が画面略中央において、現在まで発生したニュースを紹介しているニュース番組が表示されている。表示部2のディスプレイに上記ニュース番組が表示されていることは、デマルチプレクサ23から供給される付加情報SIに含まれている番組内容、番組のジャンル、番組のサブジャンル、あるいは、番組登場人物の名前などの番組情報等により制御部28が認識している。
【0033】
そこで、制御部28は、表示部2のディスプレイに上記男性のキャスターが表示されている画面略中央前方に、中高音域の音響の音像が定位するように、制御信号SCを増幅部42に供給する。つまり、制御部28は、左チャンネルの音声信号Sの増幅度と右チャンネルの音声信号Sの増幅度とが略等しくするように制御信号SCを出力する。これにより、増幅部42は、制御部28からの制御信号SCに基づいて、左チャンネルの音声信号Sの増幅度と右チャンネルの音声信号Sの増幅度を略等しく設定する。
【0034】
分割部43は、増幅部42からの左チャンネルの音声信号Sを左チャンネルの中高音域の音声信号SL1と左チャンネルの中低音域の音声信号SL2とに分割し、左チャンネルの中高音域の音声信号SL1を中高音域用スピーカ11に供給するとともに、左チャンネルの中低音域の音声信号SL2を中低音域用スピーカ12に供給する。同様に、分割部44は、増幅部42からの右チャンネルの音声信号Sを右チャンネルの中高音域の音声信号SR1と右チャンネルの中低音域の音声信号SR2とに分割し、右チャンネルの中高音域の音声信号SR1を中高音域用スピーカ11に供給するとともに、右チャンネルの中低音域の音声信号SR2を中低音域用スピーカ12に供給する。
【0035】
したがって、図10に矢印で示すように、スピーカユニット3a及び3bでは、中低音域用スピーカ12から中低音域の音響AL2が前方に向けて放射されるとともに、中高音域用スピーカ11から中高音域の音響AL1が表示部2の略中央に向けて放射される。同様に、図10に矢印で示すように、スピーカユニット4a及び4bでは、中低音域用スピーカ12から中低音域の音響AR2が前方に向けて放射されるとともに、中高音域用スピーカ11から中高音域の音響AR1が表示部2の前面略中央に向けて放射される。この際、張出部5ba及び5caが設けられているので、各中低音域用スピーカ12から放射された直後の中高音域の音響AL1及び中高音域の音響AR1は、視聴者側にほとんど放射されない。
【0036】
この結果、図10に矢印で示すように、中高音域の音響AL1と中高音域の音響AR1とが表示部2の前面略中央において衝突した後、略直角に曲がって、表示部2の前方、すなわち、視聴者側に伝達される。つまり、中高音域の音響は、この映像音声出力装置1の前方略中央に音像が定位する。このため、視聴者は、当該ニュース番組において、表示部2のディスプレイに表示されている上記男性のキャスターが発声する声が上記男性のキャスターの口から出ていると、違和感なく感じることができる。
【0037】
映像音声出力装置1を上記のように構成し、上記のように動作させる理由について、以下に説明する。一般に、人の声の周波数成分は80Hzから数kHz程度であると言われている。そして、アナウンサーやキャスターの場合は3kHz〜4.5kHzのホルマントを持っていると言われている。ここで、ホルマントとは、声道の伝達関数の極と零により音声波の周波数スペクトル上に生じる数個の共振の山をいう。
【0038】
このように、アナウンサーやキャスターのホルマントが3kHz〜4.5kHzであるので、スピーカユニット3a、3b、4a及び4bとして2ウェイ方式を採用し、分割周波数を約1.6kHzに設定した場合、アナウンサーやキャスターの声は、中高音域に含まれる。そこで、スピーカユニット3a、3b、4a及び4bを、中低音域用スピーカ12が前面側(視聴者側)に向くように取り付けるとともに、中高音域用スピーカ11が表示部2のディスプレイ前面略中央に向き、かつ、対向するもの同士が対向するように取り付けているのである。さらに、付加情報SIにより番組のジャンルがニュース番組であると認識した場合には、制御部28がアナウンサーやキャスターの声の音像が表示部2のディスプレイの前面略中央に定位するように制御信号SCを音声出力部26に供給しているのである。
【0039】
なお、声楽家や歌手のホルマントは2.4kHz〜3.2kHzであると言われており、アナウンサーやキャスターのホルマントよりやや低いが、中高音域に含まれることには変わりない。そこで、番組のジャンルが歌謡コンサートや歌番組などである場合には、制御部28は上記したニュース番組と同様の動作をしても良い。
【0040】
このように、本発明の実施の形態1によれば、上記した第1の従来例のようにセンターチャンネル用のエキサイタ及びこのエキサイタが装備される振動板を設けなくても、アナウンサー、キャスター、声楽家や歌手等の声を表示部2のディスプレイの前面略中央に定位させることができる。このため、簡単且つ安価な構成で、大画面を有する映像音声出力装置1において、視聴者は、キャスター等が話す声の音像定位がはっきりしない、上記声が体の横や後から回り込む等の違和感がなく、臨場感が向上する。
【0041】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、スピーカユニット3a、3b、4a及び4bでは、いずれも、中低音域用スピーカ12の音響放射方向(表示部2の前面に直交する方向)と、中高音域用スピーカ11の音響放射方向(表示部2の前面に平行な方向)とは略直交している例を示したが、これに限定されない。要するに、スピーカユニット3a及び3bをそれぞれ構成する各中高音域用スピーカ11から放射される中高音域の音響AL1と、スピーカユニット4a及び4bをそれぞれ構成する各中高音域用スピーカ11から放射される中高音域の音響AR1とが表示部2の前面前方で衝突した後、視聴者側に向かえば良い。したがって、表示部2の前面に平行な方向を0度とし、表示部2の前面に直交する方向を90度とした場合、中高音域用スピーカ11の音響放射方向は、0度から約60度の範囲で良く、さらには、−10度程度、すなわち、一旦表示部2の前面で反射させた後、表示部2の前面前方で衝突させるようにしても良い。
【0042】
つまり、中高音域用スピーカ11を各スピーカユニット3a、3b、4a及び4bを構成するキャビネット13及び14の側面に対して傾斜させて取り付ければ良い。また、キャビネット13及び14の形状も略立方体形状ではなく、中高音域用スピーカ11の音響放射方向に合わせた形状としても良い。さらには、上記した中高音域用スピーカ11の音響放射方向を変更可能とするために、中高音域用スピーカ11をキャビネット13及び14に回動自在に取り付けても良い。この場合、視聴者が自己の好みに応じて、中高音域用スピーカ11の音響放射方向を手動で又はリモコン等を操作することにより自動に変更可能に構成しても良い。
【0043】
このように、本発明の実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、センターチャンネル用のエキサイタ及びこのエキサイタが装備される振動板を設けなくても、アナウンサー、キャスター、声楽家や歌手等の声を表示部2のディスプレイの前面略中央に定位させることができる。このため、簡単且つ安価な構成で、大画面を有する映像音声出力装置1において、視聴者は、キャスター等が話す声の音像定位がはっきりしない、上記声が体の横や後から回り込む等の違和感がなく、臨場感が向上する。
【0044】
実施の形態3.
上述の各実施の形態では、キャスターや声楽家等が1人である例を示したが、これに限定されない。例えば、ニュース番組において、複数のキャスターがいて交互に話す場合や、映画又は対談や討論などの番組において、複数の登場人物又は出演者が交互に掛け合うように話す場合などには、以下に示す手法が考えられる。すなわち、制御部28は、話しているキャスターや登場人物等の画面上の位置に対応した箇所で中高音域の音響AL1と中高音域の音響AR1とが衝突した後に視聴者側に向かこととなるように、増幅部42の左チャンネルの音声信号Sの増幅度と右チャンネルの音声信号Sの増幅度とを調整するための制御信号SCを音声出力部26に供給する。このように、本発明の実施の形態3によれば、視聴者は、キャスターや登場人物があたかも画面に映っている箇所で話しているように感じることができ、臨場感が向上する。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の各実施の形態では、主収容部5a、突出部5b及び5cとが一体的に形成されて構成された筐体5に表示部2、左チャンネルスピーカ部3及び右チャンネルスピーカ部4が収容されている例を示したが、これに限定されない。例えば、表示部2、左チャンネルスピーカ部3及び右チャンネルスピーカ部4は、それぞれ別個に形成された筐体に収容されていても良い。
【0046】
また、上述の各実施の形態では、左チャンネルスピーカ部3及び右チャンネルスピーカ部4は、いずれも2ウェイ方式である例を示したが、これに限定されず、3ウェイ方式でも4ウェイ方式でも良い。いずれの場合も、人の声に対応した周波数領域の音響を放射する各スピーカから放射される音響を衝突させた後に視聴者に向かわせれば良い。
また、上述の各実施の形態では、映像音声出力装置1がテレビジョン受像機で構成されている例を示したが、これに限定されず、映像音声出力装置1は、チューナ等を備えていないスピーカ一体型表示装置で構成しても良い。
【0047】
また、上述の各実施の形態では、制御部28がデジタル放送の放送信号に含まれている付加情報SIから番組のジャンル等を認識して制御信号SCを出力する例を示したが、これに限定されず、DVDレコーダ等から供給される情報に基づいて、ソースのジャンル等を認識して制御信号SCを出力するように構成しても良い。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1に係る映像音声出力装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す映像音声出力装置の外観構成を示す平面図、(b)は図1に示す映像音声出力装置の外観構成を示す正面図である。
【図3】図2(a)のAの部分の拡大斜視図である。
【図4】図3の透視斜視図である。
【図5】図1に示す映像音声出力装置の構成を示す透視正面図である。
【図6】図1に示す映像音声出力装置を構成するスピーカユニットの概略構成を示す透視斜視図
【図7】図1に示す映像音声出力装置を構成するスピーカユニットの概略構成を示す透視斜視図である。
【図8】図1に示す映像音声出力装置がテレビジョン受信機で構成される場合の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す映像音声出力装置を構成する音声出力部の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】図1に示す映像音声出力装置の動作を示すための概念図である。
【符号の説明】
【0049】
1…映像音声出力装置、2…表示部、3…左チャンネルスピーカ部、3a,3b,4a,4b…スピーカユニット、4…右チャンネルスピーカ部、5…筐体、5a…主収容部、5b,5c…突出部、5ba,5ca…張出部、11…中高音域用スピーカ、12…中低音域用スピーカ、13,14…キャビネット、13a,13b,14a,14b…側面、13aa,13ba,14aa,14ba…貫通孔、21…アンテナ、22…チューナ、23…デマルチプレクサ(DEMUX)、24…デコーダ、25…映像合成部、26…音声出力部、27…EPG生成部、28…制御部、29…操作部、30…記憶部、41…音声信号処理部、42…増幅部、43,44…分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示可能な表示部と、
前記表示部の左右にそれぞれ設けられ、人の声の一部の周波数帯域を含む第1の音響を前記表示部の前面に対して鋭角的な角度で放射して互いに合成する一対の第1のスピーカと、
前記表示部の左右にそれぞれ設けられ、前記人の声の一部を周波数帯域を含まない第2の音響を前記表示部の前面に対して略直角に視聴者側に放射する一対の第2のスピーカと
を備えていることを特徴とする映像音声出力装置。
【請求項2】
前記表示部に表示される映像の種類に応じて、前記一対の第1のスピーカからそれぞれ放射される前記第1の音響の音量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の映像音声出力装置。
【請求項3】
前記第1のスピーカの角度が変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の映像音声出力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−290442(P2009−290442A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139495(P2008−139495)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(596125930)パイオニアデザイン株式会社 (21)
【Fターム(参考)】