説明

昼夜を問わずに利用可能な頑健性の高い歩行者検出法

【課題】対向車のヘッドライトや直射日光などの高輝度光源の影響による画像劣化を防ぎ、歩行者等の対象物の認識率を高める。
【解決手段】カメラの前方に、光波長選択的帯域通過方式の通過体を設置し、画像劣化を防ぎ歩行者等の対象物の認識率を高め、撮影した画像の消失点から対象物の位置を計算したマルチスリット法の採用し、歩行者であれば頭部、胴体部、脚部の特徴が、交通情報であれば信号、交通標識、看板等の特徴があるかどうかを判定することにより対象物の認識率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ前方に光波長選択的帯域通過フィルターを置き、高輝度光源の影響による画像劣化を防ぎ、歩行者等の対象物の認識率を高めることと、マルチスリット法により検知精度を高めたことを特徴とする画像認識装置。
【背景技術】
【0002】
既存の歩行者検出装置としては、日本の自動車メーカの開発したものが知られている。可視光カメラで普通に撮影したのでは、ヘッドライトなどの強烈な光源の影響を除去することは難しく、現状では遠赤外線カメラを利用したシステムが主流である。
【0003】
人体の温度はほぼ一定であるので、遠赤外線画像は歩行者検知の点では光雑音の少ない画像が得られることから世界中のほとんどの自動車メーカーが採用してきた。ただし、これは夜間の歩行者検出が中心となるのは、検出に遠赤外線すなわち熱を用いていることによる制限である。
【0004】
また、その映像はドライバにとって違和感があり、遠赤外線カメラ自体も高価であることから、一部の高級車にしか搭載されておらず、広く普及するには至っていない。
【0005】
コスト以上に問題なのは熱雑音の問題にある。例えば、冬にはたくさん着込むので頭部以外は露出が少なく、また夏には昼間の太陽で路面が熱せられて夜まで熱気が残るので歩行者の検知が難しくなる。
【0006】
最近では近赤外線やレーダ電波の照射の利用も検討が進んでいるが、対向車が同じ装置を積んでいたときは、高輝度光源を照射されたことと同様な悪影響が出る。
【0007】
画像認識装置として、可視光カメラを用いた場合、熱雑音、コストの問題は解決するが、高輝度光源の影響による画像劣化が発生し、これらの悪影響を取除かない限り、その実用化は難しいと思われる。
【0008】
この悪影響を取除く方法として、機械式と電子式があり、電子式には高輝度光源位置の選択的遮光方式と光波長選択的帯域通過方式が考えられ、高輝度光源位置の選択的遮光方式は出願済みであり、光波長選択的帯域通過方式が本発明の骨子である。
【0009】
通常、発光管の中で放電を行うことで原理とする水銀灯、蛍光灯、ナトリウムランプ等は原子の発光スペクトルに起因する通常輝線スペクトルを持っている。ここで輝線スペクトルのみ選択的に通過させることにより、すなわち街灯の光量がヘッドライトの光量に比べて大きくなる光波長帯域(輝線スペクトルの部分)を利用することで、相対的にヘッドライトの影響を少なくでき、高輝度光源による画像劣化を防止可能であり、認識対象は検知可能となる。ここで、輝線スペクトルのみ選択的に通過する装置としては、分光分析などに使用する液晶フィルタで、チューナブルフィルタなどの名称で市販実用化されている製品があり、このフィルタの概念を本認識装置用に改造し使用するものである。
図1は光波長選択的帯域通過方式の概念を示す説明図である。
【0010】
検知精度を高める為、撮影した画像の消失点から、対象物の位置を計算し、各スリットに歩行者であれば頭部、胴体部、脚部の特徴が、交通情報であれば信号、交通標識、看板等の特徴があるかどうかを判定するマルチスリット法を取り入れるものとする。
図2はマルチスリット法の概念を示す説明図である。
【特許文献1】特開2007−26400公報
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、高輝度光源の影響による画像劣化と検知精度を高める点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光波長選択的帯域通過方式により高輝度光源の影響による画像劣化を防ぎ、マルチスリット法により検知精度を高めることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の認識装置は、光波長選択的帯域通過方式により高輝度光源の影響による画像劣化を防ぎ、マルチスリット法により検知精度を高めることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
高輝度光源に遭遇したとき、光波長選択的帯域通過フィルターにより画像劣化を防ぎ、マルチスリット法により検知精度を高めることを実現した。
【実施例1】
【0015】
図1の実施例は、光波長選択的帯域通過方式の実験例を示す説明図である。高輝度光源の前に豚の模型を置き、フィルター無しで撮影すると、1の如く画像劣化のため物体を識別することは不可能である。次に、光波長選択的帯域通過フィルターを前置すると2の如く豚の形が識別できるようになる。
【0016】
3はチューナブルフィルタで、りんごの表面色を分光分析している例である。カメラの前に、フィルタが前置されているのがわかる。この装置は基本原理は同一であるが、100V電源、パソコンが必要であり、天体観測によく使用される冷却CCDカメラの使用を前提としている。冷却CCDを使用することは、長くは「分」から「時間」の長時間露光を想定している。
【0017】
本発明の装置は、車載での高速処理を行うものであり、選択的遮光方式と同様に仕様に見合ったフィルターの選定と、画像処理装置に内蔵された制御装置を持つ。
【実施例2】
【0018】
図2の実施例は、撮影した画像の消失点から、対象物の位置を計算し、各スリットに歩行者であれば頭部、胴体部、脚部の特徴が、交通情報であれば信号、交通標識、看板等の特徴があるかどうかを判定することにより、検知精度を高める。
【産業上の利用可能性】
【0019】
道路上での歩行者や交通情報の認識は、各法規への整合は必要とするものの、海上での利用、さらには航空での利用にも拡大されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光波長選択的帯域通過方式の概念を示す説明図である。(実施例1)
【図2】マルチスリット法の概念を示す説明図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0021】
1 通過体無し
2 通過体あり
3 分光分析での実施例
4 マルチスリット法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昼夜を問わず、カメラ前方に光波長選択的帯域通過フィルターを置き、対向車のヘッドライトや直射日光などの高輝度光源の影響による画像劣化を防ぎ、歩行者等の対象物の認識率を高めた、画像認識装置。
【請求項2】
撮影した画像の消失点から、対象物の位置を計算し、この位置をスリットとするが、各スリットに歩行者であれば頭部、胴体部、脚部の特徴が、交通情報であれば信号、交通標識、看板等の特徴があるかどうかを判定すること、これをマルチスリット法と呼ぶ。このマルチスリット法を取り入れることにより、検知精度を高めた、画像認識装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−191905(P2010−191905A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38332(P2009−38332)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(500293744)朝日エンジニアリング株式会社 (9)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】