説明

時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法

【課題】消費される電力の最大値を抑えつつ、GPS衛星等の位置情報衛星から時刻情報を取得することができる時刻修正装置等を提供すること。
【解決手段】GPS時刻修正装置付腕時計10は、位置情報衛星であるGPS衛星15から送信される衛星信号を受信する受信部等と、受信部で受信した衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、自己時刻情報を有する計時部と、衛星時刻情報に基づいて自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、受信部と衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばGPS衛星等の位置情報衛星からの信号に基づいて時刻修正を行う時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己位置を測位するためのシステムであるGPS(Global Positioning System)システムでは、地球を周回する軌道を有するGPS衛星が用いられており、このGPS衛星には、原子時計が備えられている。このため、GPS衛星は、極めて正確な時刻情報(GPS時刻)を有している。
そして、GPS衛星からの信号を受信する受信機側が、GPS衛星の時刻情報を得るには、GPS衛星からの信号のうち、TOW(Time of Week、GPS時刻、週の初めから一週間毎に示される秒単位の情報)信号を受信する必要がある(例えば、特許文献1)。
そして、この時刻情報を受信するには、地球を周回しているGPS衛星を捕捉し、さらに、この捕捉した信号を受信し、相関等を取り、その後演算して時刻データを取得する必要がある。
具体的には、アンテナでGPS信号を受信し、その信号をRF(Radeio Frequency)で中間周波数等に変換し、その後、ベースバンド部で相関等をとりGPS信号を抽出し、さらに、抽出されたGPS信号を演算部が演算して時刻情報を取り出すこととなる。
【特許文献1】特開平10−10251号公報(要約等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、GPS衛星を受信してから実際に時刻情報を取得するには、アンテナ部、RF部、ベースバンド部、そして、演算部等を同時に動作させる必要があり、受信機側の消費電力のピークが高くなり、例えば、数十mA程度となる。
このようなピーク電力を確保するには、電池サイズを大きくする必要が生じるが、時計等の計時装置は、小型化が要請されるため、電池サイズを大きくすることができず、結果として、時計等の機器のシステムダウン等が生じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、消費される電力の最大値を抑えつつ、GPS衛星等の位置情報衛星から時刻情報を取得することができる時刻修正装置、時刻修正装置付き計時装置及び時刻修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、本発明によれば、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、自己時刻情報を有する計時部と、前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置により達成される。
【0006】
前記構成によれば、受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっているので、計時装置の最大電力値(ピーク電力値)の上昇を抑えることができる。
また、受信部が動作しているときに受信した衛星信号に基づいて、衛星信号演算部が演算動作することで、衛星時刻情報を取得することができる。さらに、この衛星時刻情報に基づいて自己時刻情報を修正することができる構成となっている。
このように、本発明の構成では、消費される電力の最大値を抑えつつ、GPS衛星等の位置情報衛星から時刻情報を取得することができる。
【0007】
好ましくは、前記受信部が受信した前記衛星信号を格納する衛星信号格納部を有することを特徴とする時刻修正装置である。
【0008】
前記構成によれば、受信部が受信した衛星信号を格納する衛星信号格納部を有するので、衛星信号演算部は、受信部が受信した衛星信号を非動作状態の受信部ではなく、動作状態の衛星信号格納部から取得することができる。
【0009】
好ましくは、前記受信部の動作関連時間である受信部計時情報及び/又は前記衛星信号演算部の動作関連時間である衛星信号演算計時情報を取得するカウンタ部を有し、前記時刻情報修正部は、前記受信部計時情報及び/又は前記衛星信号演算計時情報に基づいて演算される修正タイミング情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0010】
前記構成によれば、時刻情報修正部は、受信部計時情報及び/又は衛星信号演算計時情報に基づいて演算される修正タイミング情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する構成となっている。
通常、修正タイミング情報を得るためには例えば、時刻修正装置が実際に衛星信号を受信し、受信した衛星信号に従う必要がある。
しかし、本発明では、衛星信号演算部が動作等する間は、受信部が衛星信号を受信していないため、受信信号から直接、修正タイミング情報を得ることができない。
そこで、本発明では、衛星信号演算部が動作等している時間はカウンタ部で計測等し、この計測時間等を考慮して修正タイミング情報を定めるため、受信部が衛星信号を受信し続ける場合と同様の精度で修正タイミング情報を演算することができる。
【0011】
好ましくは、前記衛星信号には、前記位置情報衛星の衛星信号の到達に要する時間である伝搬遅延時間情報を含むことを特徴とする時刻修正装置である。
【0012】
前記構成によれば、衛星信号には、位置情報衛星の衛星信号の到達に要する時間である伝搬遅延時間情報を含むこととなっている。
このため、この伝搬遅延時間情報を考慮した極めて正確な修正タイミング情報とすることができる。
【0013】
好ましくは、前記受信部計時情報には、前記受信部が前記位置情報衛星を捕捉した後に前記位置情報衛星の衛星信号を受信する時間である衛星信号受信時間情報が含まれ、前記衛星信号受信時間情報は、前記衛星時刻情報及び前記修正タイミング情報を取得するための必要最小限の時間情報となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0014】
前記構成によれば、衛星信号受信時間情報は、衛星時刻情報及び修正タイミング情報を取得するための必要最小限の時間情報となっているので、極めて短時間の受信部の動作で、効率よく衛星時刻情報及び修正タイミング情報を演算等することができる。
【0015】
好ましくは、前記カウンタ部は、高精度発振器に基づき動作する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0016】
前記構成によれば、カウンタ部は高精度発振器にもとづき動作する構成となっているので、精度の高い修正タイミング情報等を得ることができる。
【0017】
好ましくは、前記衛星信号には、サブフレーム番号情報が含まれ、前記サブフレーム番号情報からGPS時刻の週番号情報及び/又はUTC(universal time coordinate、世界協定時)パラメータ情報を含む目標サブフレーム番号情報を取得するサブフレーム番号取得部を有し、前記目標サブフレーム番号情報に基づき、前記衛星信号の前記目標サブフレームを受信する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置である。
【0018】
前記構成によれば、サブフレーム番号情報からGPS時刻の週番号情報及び/又はUTCパラメータ情報を含む目標サブフレーム番号情報を取得するサブフレーム番号取得部を有し、目標サブフレーム番号情報に基づき、衛星信号の目標サブフレームを受信する構成となっている。
このため、例えば、1回の衛星信号の受信で、GPS時刻の週番号情報等を取得できないときでも、目標サブフレーム番号情報に基づき的確にGPS時刻の週番号情報等を格納するサブフレームを受信でき、その結果、GPS時刻の週番号情報等を取得することができる。
【0019】
好ましくは、前記衛星信号には、前記位置情報衛星の衛星番号情報、ドップラ周波数情報及びC/Aコード位相情報が含まれ、受信した前記位置情報衛星の衛星番号情報、ドップラ周波数情報及びC/Aコード位相情報を格納する捕捉衛星情報格納部を有することを特徴とする時刻修正装置である。
【0020】
前記構成によれば、受信した位置情報衛星の衛星番号情報、ドップラ周波数情報及びC/Aコード位相情報を格納する捕捉衛星情報格納部を有するので、この衛星番号情報等を用いることで、以降の位置情報衛星の捕捉が容易となる。
【0021】
好ましくは、前記衛星信号受信時間情報が、C/Aコード長乃至メッセージ1bit長であり、受信した前記位置情報衛星情報を捕捉可能衛星格納部に格納することを特徴とする時刻修正装置である。
【0022】
前記構成によれば、衛星信号受信時間情報が、C/Aコード長乃至メッセージ1bit長であり、受信した位置情報衛星情報を捕捉可能衛星格納部に格納する。
このため、極めて僅かな時間(1msec(C/Aコード長)、20msec(メッセージ1bit長))衛星信号を受信するだけで、当該時刻等において捕捉可能な位置情報衛星の情報を提供することができる。
【0023】
好ましくは、同一の前記位置情報衛星から前記衛星信号を複数回受信する構成となっており、前記複数回受信で取得した複数個の前記衛星時刻情報の整合性を判断する整合性判断部を有することを特徴とする時刻修正装置である。
【0024】
前記構成によれば、同一の前記位置情報衛星から衛星信号を複数回受信する構成となっており、複数回受信で取得した複数個の衛星時刻情報の整合性を判断する整合性判断部を有する。このため、より精度の高い時刻情報を取得することができる。
【0025】
好ましくは、複数の前記位置情報衛星から前記衛星信号を受信する構成となっており、前記複数の前記位置情報衛星から取得した複数個の前記時刻情報の整合性を判断する異衛星整合性判断部を有することを特徴とする時刻修正装置である。
【0026】
前記構成によれば、複数の位置情報衛星から衛星信号を受信する構成となっており、複数の位置情報衛星から取得した複数個の時刻情報の整合性を判断する異衛星整合性判断部を有する。このため、より精度の高い時刻情報を取得することができる。
【0027】
前記課題は、本発明によれば、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、自己時刻情報を有する計時部と、前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置付き計時装置により達成される。
【0028】
前記課題は本発明によれば、位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、自己時刻情報を有する計時部と、前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有する時刻修正方法であって、前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっており、前記受信部が受信した前記衛星信号に基づいて、その後、前記衛星信号演算部が演算する構成となっていることを特徴とする時刻修正方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0030】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付腕時計10(以下「GPS付き腕時計」という)を示す概略図であり、図2は、図1のGPS付き腕時計10の内部の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
図1に示すように、GPS付き腕時計10は、その表面に文字板12、長針、短針等の針13等が配置されると共に、各種メッセージが表示されるLED等からなるディスプレイ27が形成されている。なお、ディスプレイ27は、LEDの他、LCD、アナログ表示等でも構わない。
【0031】
また、図1に示すように、GPS付き腕時計10は、アンテナ11を有しており、このアンテナ11は、地球の上空を所定の軌道で周回しているGPS衛星15からの信号を受信する構成となっている。なお、GPS衛星15は、地球を周回する位置情報衛星の一例となっている。
【0032】
また、図2に示すように、GPS付き腕時計10は、その内部に時計機構、GPS機構を備え、コンピュータとしての機能も発揮する構成となっている。
つまり、本実施の形態における時計機構は、いわゆる電子時計となっている。
以下、図2に示す各構成について説明する。
図2に示すように、GPS付き腕時計10は、バス16を備え、バス16には、MPU(Micro Processing Unit)17、汎用RAM(Random Access Memory)18、ROM(Read Only Memory)19等が接続されている。
【0033】
また、バス16には、衛星信号を受信するGPS機構も接続されている。すなわち、アンテナ11や受信した信号を中間周波数(I/F)等とするRF部20、さらに、RF部20から取得した信号を復調処理するベースバンド(BB)部21とBB部21で復調処理された信号を格納するBB用RAM22が接続されている。
すなわち、図1のGPS衛星15a等から受信した信号は、アンテナ11からRF部20を介してBB部21でGPS信号として取り出され、BB用RAM22に格納される構成となっている。
このように、RF部20及びBB部21等は、衛星信号を受信する受信部の一例となっており、BB用RAM22は、衛星信号格納部の一例となっている。
また、BB用RAM22に格納されたGPS信号はMPU17で演算され、後述するGPS衛星のメッセージデータ、例えば、GPS時刻情報(Zカウント)として取り出されることになる。GPS衛星15から受信する信号についての詳細は、後述する。
このように、MPU17等はZカウント等の衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部の一例となっている。
【0034】
また、バス16には、時計機構も接続されている。すなわち、IC(半導体集積回路)等からなるリアルタイムクロック(RTC)23や水晶(Xtal)発振回路25等である。また、バス16には、水晶発振回路25の他に、高精度発振器である例えば、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)24等も接続されている。
このように、本実施の形態では、2種類の発振回路が接続されている。これは、電力消費が大きいが精度の高いTCXO24と、電力消費は小さいが精度が低い通常の水晶発振回路25をその用途に合わせて使い分けるためである。その詳細は後述する。
【0035】
また、バス16には、電池等からなる電源部を制御するための電源制御回路26、図1に示すディスプレイ27、そして、カウンタ部である例えば、タイマー29等が接続されている。
このタイマー29は、TXCO24に基づいて時間をカウントするため、高精度に時間を計測することができる構成となっている。
このように、バス16は、すべてのデバイスを接続する機能を有し、アドレスやデータパスを有する内部バスである。汎用RAM18等は、所定のプログラムの処理を行う他、バス16に接続されたROM19等を制御している。ROM19は、各種プログラムや各種情報等を格納している。
【0036】
なお、RTC23は、自己時刻情報を有する計時部の一例となっており、RF部20等は、位置情報衛星(GPS衛星15)から送信される衛星信号を受信する受信部の一例となっている。
【0037】
図3は、GPS付き腕時計10の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
図3に示すように、GPS付き腕時計10は、制御部28を有し、制御部28は、図3に示す各種プログラム格納部30内の各種プログラム、各種データ格納部40内の各種データを処理する構成となっている。
また、図3には、各種プログラム格納部30と各種データ格納部40とを分けて示してあるが、実際に、このようにデータが分けて格納されているわけではなく、説明上の便宜のために分けて記載したものである。
【0038】
図4は、図3の各種プログラム格納部30内のデータを示す概略図であり、図5は、図3の各種データ格納部40内のデータを示す概略図である。
図6及び図7は、本実施の形態にかかるGPS付き腕時計10の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【0039】
以下、図6及び図7のフローチャートにしたがって本実施の形態に係るGPS付き腕時計10の動作等を説明しつつ、その関連で図4及び図5の各種プログラムや各種データを説明する。
本実施の形態では、図1のGPS付き腕時計10が例えば、1日1回、すなわち、24時間に1回時刻修正を自動的に実行する場合を例に説明する。
GPS付き腕時計10がRTC23の時刻修正を行う場合は、先ず、図6のST1に示すように、図2のRF部20、BB部21及びBB部用RAM22が動作し、GPS衛星15の衛星信号のサーチを開始する。すなわち、このときは図2のMPU17は、衛星信号を演算等しない構成となっている。
この点、従来は、RF部20、BB部21及びBB部用RAM22と同時にMPU17も動作させる構成となっていた。これは、アンテナ11を介してRF部20等が受信した衛星信号を、連続して演算処理し、衛星信号からZカウント等を取得する構成となっていたためである。
しかし、本実施の形態では、RF部20等がGPS衛星15の衛星信号をサーチし、捕捉して受信する間は、MPU17が演算等を行わない構成とすることで、同時に両者が動作することにより、電力消費の最大値(ピーク値)が大きくなることを回避でできる構成となっている。
【0040】
ところで、ST1の動作は、具体的には、図4のRF部、BB部及びBB用RAM動作プログラム31が動作することで実行される。つまり、同プログラム31は、図5のRF部、BB部及びBB部用RAM動作開始データ41、例えば、24時間に1回等のデータを参照して、当該時間になったときに、衛星信号のサーチを実行する。
また、このGPS衛星の衛星信号のサーチを実行すると共に、TCXO24を用いてタイマー29が動作を開始し、高精度に経過時間を計測する。具体的には、図4のタイマー制御プログラム32が動作し、衛星信号のサーチを開始した時刻を図5のサーチ開始時刻データ42に格納すると共にタイマー29が時間を計測し続ける。
このサーチ開始時刻データ42は、例えば「0」秒となる。
【0041】
次に、ST2へ進む。ST2では、GPS衛星15の衛星信号を捕捉したか否かが判断され、GPS衛星15の衛星信号が捕捉されると、ST3へ進む。
ST3では、RF部20等が衛星信号の受信が開始される。また、同時にこの衛星信号の受信開始時刻が記憶される。
具体的には、図4の受信開始判断プログラム33が動作し、RF部20等が衛星信号の受信を開始したか否か判断し、受信を開始した時刻に対応するタイマー29の計測時刻を図5の受信開始時刻データ43に記憶する。
つまり、この受信開始時刻データ43は、サーチ開始時刻データ42である「0」との差分であり、例えば、サーチに1秒を要するときは、「1」秒となる。
【0042】
次に、ST4乃至ST7で、本実施の形態のGPS付き腕時計10が、GPS衛星15の衛星信号を受信する工程が実行される。
ST4では、GPS衛星15からの衛星信号を図2のアンテナ11が受信し、その後、この衛星信号はRF部20に入力される。RF部20では、入力された衛星信号を中間周波数(IF)とし、アナログ信号をデジタル信号に変換等した後、このデジタル信号をBB(ベースバンド)部21へ出力する。
その後、ST5に進む、ST5では、BB部21が、入力されたデジタル信号のキャリアを除去し、C/Aコードの相関、位相同期等の処理を行う。このようにしてBB部21ではGPS衛星15の衛星信号を復調する。
【0043】
次に、ST6で、BB部21で復調された衛星信号が図2のBB用RAM22に格納される。具体的には、図5に示すように、BB用RAM22にBB信号データ44として格納される。
このように、受信し復調された衛星信号は、BB用RAM22に格納されるので、後述のように、RF部20やBB部21の動作を停止させても、その後の演算等の動作を妨げることがない。
【0044】
次に、ST7で、GPS衛星15の衛星信号の受信が所定時間、例えば1サブフレーム分程度(6秒乃至6秒+α程度、例えば6.6秒)経過したか否かを判断する。
本実施の形態では、GPS衛星15の衛星信号からGPS時刻時刻(Zカウント)を取得することが目的であるため、以下、GPS衛星15から送信される衛星信号について説明する。
図8は、衛星信号を示す概略説明図である。
GPS衛星15からは、図8(a)に示すように、1フレーム(30秒)単位で信号が送信されて来る。この1フレームは、5個のサブフレーム(1サブフレームは6秒)を有している。各サブフレームは、10ワード(1ワードは0.6秒)を有している。
また、各サブフレームの先頭のワードは、TLM(Telemetry word)データが格納されたTLMワードとなっており、このTLMワード内には、図8(b)に示すように、その先頭にプリアンブルデータが格納されている。
また、TLMに続くワードは、HOW(hand over word)データが格納されたHOWワードとなり、その先頭には、TOW(Time of week)というGPS衛星のGPS時刻情報(Zカウント)が格納されている。
このZカウントは、次に続く、サブフレームのTLMの開始部分の時刻が格納されている。
GPS時刻は毎週日曜日の0時から経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。
【0045】
このように、サブフレームの二つ目のワードである、HOWワードを参照すれば、GPS時刻情報であるZカウントを取得することができる。しかし、GPS衛星15から送信される衛星信号をGPS付き腕時計10が受信する場合、サブフレームのどの部分から受信を開始するか特定できないため、図8(b)のTOW(Zカウント)の直後から受信し始める場合を考慮し、本実施の形態では、受信時間を1サブフレーム分、すなわち6秒を基本としている。
また、衛星信号の受信が図8(b)のTOW(Zカウント)の途中から開始された場合を考慮し、受信時間を1サブフレーム+α、例えば、6.6秒等とするのが好ましい。
【0046】
このように、ST7で、1サブフレーム分程度の受信時間が経過するまで、GPS付き腕時計10が衛星信号を受信すれば、必ず、図8のTOW(Zカウント)のデータを取得できることになる。
そして、このように受信されたZカウントは、ST6でBB用RAM22に格納されることになる。
【0047】
ST7で、1サブフレーム分程度の受信時間が経過したか否かは、図4の受信終了可否判断プログラム34が、図5の受信時間データ(例えば、6秒又は6.6秒)45を参照して判断する。つまり、受信時間データである例えば、6秒又は6.6秒が1サブフレーム分程度の受信時間の一例である。
この6.6秒は、図2のタイマー29に基づいて判断する。つまり、図6のST3でタイマー29は受信開始時刻を計時し、そのデータ、例えば10秒を記憶している。
タイマー29は、その後も計時し続けるため、タイマー29の計時データが16.6秒となったタイミングで受信を終了する。具体的には、図4の受信終了判断プログラム35が判断する。
この受信終了判断プログラム35が、受信終了と判断すると、図4のRF部、BB部及びBB用RAM動作プログラム31が動作し、ST8に示すように、RF部及びBB部の動作を止める。
【0048】
次に、ST9へ進む。ST1乃至ST8では、RF部20等が受信した衛星信号からZカウント等を得るための演算は、敢えて行われない構成となっており、このST9から、演算が図2のMPU17等で行われる。
このように、本実施の形態では、RF部20等がGPS衛星15の衛星信号を受信している間は、RF部20、BB部21等に図の電源制御回路26等を介して電力が供給されるが、MPU17には、衛星信号を演算するための電力が供給されることがない。
一方で、ST9からMPU17が衛星信号の演算動作を開始すると、その電力がMPU17に供給されることになるが、その間は、RF部20等が衛星信号の受信を停止しているため、RF部20等の電力消費は、停止又は著しく低減される。
【0049】
したがって、RF部20等の衛星信号の受信動作と、MPU17等による演算動作が同時に実行されることがないので、GPS付き腕時計10の最大電力値(ピーク電力値)の上昇を抑えることができる構成となっている。
【0050】
次に、図5のBB信号データ44を演算し、Zカウントを求め、そのZカウントに基づいてGPS付き腕時計10の時刻修正を行う工程をST8乃至ST12で説明する。
先ず、ST8で、RF部及びBB部の動作が止まると、そのタイミングで図2のBB用RAM22に格納された図5のBB信号データ44を演算する動作がMPU17等で実行される(ST9)。具体的には、図4の信号演算動作プログラム36が動作する。
そして、ST10に進む。ST10では、信号演算動作プログラム36の演算が終了すると、演算結果が図5の信号演算結果データ46に格納されると共に、信号演算終了時のタイマー29の時刻を図5の信号演算終了時刻データ47として登録する。
例えば、演算時間が3秒かかったとしたら、タイマー29の計時データは19.9秒となる。
【0051】
このような演算結果について、図9の衛星信号及び受信信号の概略説明図を用いて説明する。
図9において、上段は、GPS衛星15から送信される衛星信号を示し、下段はGPS付き腕時計10で受信し、演算された受信信号を示す。
先ず、衛星信号と受信信号とは、図9に示すように、伝搬時間β分ずれて受信される。つまり、伝搬時間βは、衛星信号が、GPS衛星15からGPS付き腕時計10に到達するまでの時間を示す。つまり、伝搬時間βは、伝搬遅延時間情報の一例となっている。
この伝搬時間βは図6のST5で、C/Aコードの位相を把握し、ST9の演算をすることでGPS付き腕時計10が取得することができる。
また、図9のGPS信号の矢印a1乃至a4は、図8(a)の各サブフレームの開始部分を示すが、この開始部分のタイミングデータも、衛星信号のC/Aコードと相関を取り、その後、演算することで、GPS付き腕時計10が取得することができる。
一方、下段の受信信号の矢印b1乃至b4は、GPS信号のa1乃至a4に対応するサブフレームの開始部分を示す。矢印b1乃至b4は、それぞれ伝搬時間β分だけ遅れて受信されていることがわかる。
【0052】
さらに、図9のZカウントZ1乃至Z4は、図8(b)のTOWであり、この時刻データは次のサブフレームの開始時刻を示す。例えば、図9のZ1は(00:00:00秒)を示しているので、この時刻(00:00:00秒)は図9のa2で示すサブフレームの開始部分の時刻を示すことになる。
上述のように、サブフレームは全体で6秒の長さであるため、a2乃至a4のZカウントは、それぞれ、6秒ずつずれた時刻となっている。
このサブフレームのZカウントの時刻は、演算することでGPS付き腕時計10は取得することができる。
【0053】
すなわち、GPS付き腕時計10は、GPS衛星15からの衛星信号を受信し、演算することで、図9に示す、伝搬時間β、サブフレームの開始タイミングデータa2等(受信側はb2等)、受信したサブフレームの次のサブフレームの開始部分の時刻データ(Zカウント)を取得できることになる。
この前提で、図6のフローチャートのように受信すると以下のようになる。
つまり、図9のサーチ開始と示す部分でGPS付き腕時計10がGPS衛星15の衛星信号のサーチを開始したとする。つまり、図6のST1である。
このときタイマー29が計時を開始する、つまり、サーチ開始は「0」秒である。これは図5のサーチ開始時刻データ42に記憶されている。
【0054】
その後、ST2でGPS衛星15を捕捉し、ST3で衛星信号の受信を開始する。このサーチが上述のように、例えば1秒間であるとすると、図9の受信開始時間は、タイマー29では「1秒」(図5の受信開始時刻データ43)である。
また、ST8の衛星信号の受信終了(RF部20等の動作停止)は、受信開始から例えば、6.6秒後であるから、タイマー29上では「7.6秒」となる。
また、ST9の演算動作は、上述のように、例えば3秒間とすると演算終了時のタイマー29上の時刻は「10.6秒」となる(信号演算終了時刻データ47)。
【0055】
さらに、上述のように、GPS付き腕時計10は、図9で受信したサブフレームの開始部分のタイミングデータを演算等で取得できるので、このタイミングが図9のタイマー29の受信開始時刻から何秒後に相当するかを演算で求めるができる。
この時間を例えば2秒とすると、図9の受信信号において、矢印b2で示すサブフレームの開始部分は、タイマー29上の時刻で「3秒」となる。
【0056】
すなわち、図9で示すように、受信信号から取得したZカウント(Z2)の時刻は、矢印b3、すなわち、タイマー29上では「9秒」の時刻に相当することとなる。
さらに、このタイマー29上の「9秒」には、伝搬時間βが含まれているため、9秒から伝搬時間βを減じたタイマー29上の時刻がZカウント(Z2)の時刻に相当することとなる。
すると、このZカウント(Z2)の時刻データに「6秒」足した時刻は、タイマー29上における矢印b4の時刻(15秒)から伝搬時間βを減じた時刻となる(図9のa4に相当)。
【0057】
したがって、ST11では、図4の時刻修正データ演算プログラム37が動作し、上述の衛星信号を演算したデータと、タイマー29で計時したデータに基づいて、演算終了後に計算上、到来するGPS信号のサブフレームの開始部分(a4)を求め、図5の時刻修正用データ48として格納する。
このデータは、例えば、タイマー29における「15秒−伝搬時間β」のタイミングで、Zカウント(Z2)の時刻「00:00:06」+「6秒」、つまり「00:00:12」で時刻修正をすることとなる。
このように、GPS付き腕時計10が受信したZカウントに、演算終了までに経過したサブフレームの数に6秒を乗じた値を加え、伝搬時間βを減じることで、時刻修正のタイミングを精度良く取得することができる。
【0058】
次に、図7のST12に示すように、図4の時刻修正プログラム38が動作して、図5の時刻修正用データ48に基づいて図2のRTC23を修正することで、精度良く時刻修正をすることができることになる。
また、この時刻修正が終了したときに、図2のタイマー29の動作は終了し、その後は、通常の水晶発振回路25だけが動作しつづけることになる。
このように、時刻精度が求められる場合は図2のTCXO24を使い、その他は通常の水晶発振回路25を使用することで、比較的電力を多く消費するTCXO24を使用時間を短くすることができ、GPS付き腕時計10全体として電力消費を抑えることができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、GPS衛星15の衛星信号の受信と演算を分けて実行するため、ピーク電力を小さくすることができると共に、受信を停止した後に、時間をかけて演算をしても、精度良く時刻修正を行うことができる。また、タイマー29は高精度なTCXO24を用いているので、時刻精度はさらに向上するが、そのTCXO24は、必要な場合にのみ用いて、必要でない場合は、通常の水晶発振回路25を用いるので、消費電力を小さくすることもできる。
【0060】
また、本実施の形態では、タイマー29を用いてサーチ開始時刻データ42、受信開始時刻データ43、信号演算終了時刻データ47を使用したが、これに限らず、サーチ開始時刻データ42、受信開始時刻データ43、信号演算終了時刻データ47のいずれか一つのデータのみを計測し、その他を演算で求める構成とすることもできる。
【0061】
また、本発明は、図9に示すように、演算終了までの時間の長短に拘わらず、精度良くRTC23の時刻修正を行うことができるので、図6のST9の演算を行うMPU17の能力を低くしても構わない。
この場合は、MPUの消費電力を少なくすることができ、より電力消費が少ないGPS付き腕時計となる。
【0062】
ところで、図4の時刻修正プログラム38が、時刻情報修正部の一例である。また、アンテナ11、RF部20及びBB部21が、受信部の一例であり、MPU17及び図4の信号演算動作プログラム36等が、衛星信号演算部の一例であり、これらは択一的に動作する構成となっている。
受信時間データ45が、受信部計時情報及び衛星信号受信時間情報の一例であり、受信時間データ45の例である6秒又は6.6秒が、衛星時刻情報及び修正タイミング情報を取得するための必要最小限の時間情報の一例となっている。
また、信号演算終了時刻データ47が、衛星信号演算計時情報の一例であり、タイマー29が、カウンタ部の一例となっている。
そして、時刻修正用データ48が、修正タイミング情報の一例となっている。
【0063】
(第2の実施の形態)
図10及び図11は、本発明の第2の実施の形態にかかるGPS付き腕時計100(図1参照)の主な構成を示す概略ブロックであり、図12及び図13は、本実施の形態にかかるGPS付き腕時計100の概略フローチャートである。
本実施の形態にかかるGPS付き腕時計100の構成等は、上述の第1の実施の形態に係るGPS付き腕時計10の構成等と多くが共通しているため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0064】
本実施の形態は、第1の実施の形態と異なり、GPS衛星15の衛星信号から「週番号データ」及び「UTCパラメータデータ」を取得することである。
上述のように、衛星信号から取得される「Zカウント」のデータは、毎週日曜日の0時から経過時間が秒で表示され、翌週の日曜日の0時に0に戻るようになっている。
したがって、週単位を超える時刻情報、つまり、当該Zカウントで示される時刻の年月日を特定する必要があるときは、Zカウント以外の情報が必要となる。
それが、週番号データである。週番号データは、例えば、1980年1月6日に始まる週の番号を「0」とした連番が付されており、この週番号のデータは、図8(a)で示すサブフレームのうち「サブフレーム1」に含まれている。
したがって、GPS付き腕時計100が、年月日のデータを含めてRTC23の時刻を修正する場合は、上述の第1の実施の形態で取得した「Zカウント」以外に、この「週番号データ」を取得する必要がある。
【0065】
また、上述の週番号で示す年月日は、アメリカ海軍天文台(USNO)が管理している原子時計に同期しているため、UTC(協定世界時)とは若干、ずれが生じている。このずれの補正値が「UTCパラメータデータ」となり、このデータは、「サブフレーム4のページ18」に格納されている。
したがって、本実施の形態のGPS付き腕時計が、正確に年月日及び時刻を把握するには、このUTCパラメータデータ(UTCオフセットデータ)を取得し、補正する必要がある。
なお、UTCは、協定世界時であるため、日本時間に補正するには9時間進めることで、日本標準時を得ることができる。
【0066】
このように、時刻修正に際し、年月日やUTCとの補正値を取得する例が本実施の形態である。そこで、図12を用いて年月日を把握するための週番号のデータを取得する工程を具体的に説明し、次いで、図13を用いてUTCとの補正値を取得するための工程を具体的に説明する。
図12に示すように、本実施の形態では、上述の第1の実施の形態と同様に、GPS衛星15の衛星信号を演算するが、その際、受信した衛星信号からサブフレームの番号(ID)を取得する(ST9等)。
そして、ST22で、受信したサブフレーム番号(ID)が「1」であるか否かを判断する。具体的には、図10のサブフレームID判断プログラム131が動作して、判断する。この判断で、サブフレーム番号(ID)が「1」であると判断されると、ST23へ進み、週番号をデコードする。
【0067】
次に、ST24へ進み、週番号を取得できたか否かを判断する。ST22で、受信したサブフレームが1でない場合及びST24で、週番号を取得できない場合は、ST25へ進む。
ST25では、演算結果が上述の第1の実施の形態と同様に、図11の信号演算結果データ46として登録される。つまり、この演算結果には、上述の第1の実施の形態と同様に、図9に示す、伝搬時間β、サブフレームの開始タイミングデータa2等(受信側はb2等)、受信したサブフレームの次のサブフレームの開始部分の時刻データ(Zカウント)が含まれる。
また、本実施の形態では、これに加えて、受信したサブフレーム番号(ID)が図11のサブフレームIDデータ141として登録される。
さらに、衛星信号の演算が終了した演算終了時のタイマー29の時刻が信号演算結果データ47として登録される。
【0068】
次に、ST26で、目標サブフレームタイミング演算プログラム132が動作し、目標サブフレームタイミングに対応するタイマー29の時刻を演算する。
例えば、目標サブフレームが、サブフレーム1で、受信したサブフレームがサブフレーム3の場合、図9の矢印a1等で示されるサブフレームの開始部分のうち、サブフレーム1の開始部分を演算する。受信したサブフレームが「3」の場合、受信したZカウントはサブフレーム2の開始部分の時間であるから、この時間に18秒を付加した時間を基準に伝搬時間βで補正すれば、タイマー29上におけるサブフレーム1の開始部分が明らかになる。
したがって、タイマー29に基づきサブフレーム1の開始部分のタイミングで衛星信号を受信すれば、サブフレーム1の信号を受信でき、週番号データを取得することできる。
【0069】
このため、ST27及びST28では、時刻修正データ演算プログラム37が、Zカウントだけでなく、週番号に基づいてRTC23を修正することができることになり、年月日を正確に補正できる。
【0070】
MPU17及び信号演算動作プログラム36等がサブフレーム番号取得部の一例である。また、本実施の形態では、ST26に示すように、目標サブフレーム番号情報に基づき衛星番号の目標サブフレームを受信する構成となっている。
【0071】
次に、UTCとの補正値であるUTCオフセットデータ(UTCパラメータデータ)を取得するための工程を図13を用いて説明する。
すなわち、時刻修正をするためには、上述の週番号以外にUTCオフセットデータが必要であり、このデータは、図11のUTCオフセットデータ142に格納されている。
そして、このUTCオフセットデータ142は、定期的に、例えば年に数回程度、更新する必要があり、更新時期が設定されている。この更新を実行するのが図13のフローチャートである。
先ず、図13のST210で、UTCオフセット取得時期か否かを判断する。具体的には、図10のUTCオフセット取得時期判断プログラム133が判断する。
そして、UTCオフセット取得時期であると判断された場合は、ST210で受信タイミングの演算を行う。
具体的には、図10の目標サブフレーム取得プログラム132が働き、当該受信したサブフレームと、目標サブフレームである、フレーム4のページ18との差分時間を、図12のST26のように計算して求める。
【0072】
次いで、ST212で受信タイミングか否かを判断して、受信タイミングの場合は、衛星信号を受信し、ST213でUTCオフセットデータを取得できたときは、ST214で、図11のUTCオフセットデータ142を更新する。
【0073】
このように定期的にUTCオフセットデータ142を更新することで、GPS付き腕時計100の時刻修正に際し、UTCとのずれをより精度良く補正することができる。
【0074】
(第3の実施の形態)
図14及び図15は、本発明の第3の実施の形態にかかるGPS付き腕時計200(図1参照)の主な構成を示す概略ブロックであり、図16は、本実施の形態にかかるGPS付き腕時計200の概略フローチャートである。
本実施の形態にかかるGPS付き腕時計200の構成等は、上述の第1の実施の形態に係るGPS付き腕時計10の構成等と多くが共通しているため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0075】
本実施の形態では、GPS付き腕時計200が、一度、受信し相関を取ったGPS衛星15のデータを記憶しておき、次回、GPS衛星15を捕捉する際の参考データとするものである。
具体的には、受信したGPS衛星15のドップラ周波数、C/Aコード位相、信号強度等に基づき衛星データを作成する。
つまり、ドップラ周波数の偏差を計測し、その値が「0」に近いほど、衛星は天頂に位置し、受信し易いことになる。そこで、GPS付き腕時計200が当該GPS衛星15の衛星信号を受信した時刻データと共に、このドップラ周波数の偏差データを関連付けて登録することで、時刻によって受信し易いGPS衛星15を知ることが出来る。
このような、衛星データは図15の衛星データ241に登録される。具体的には、衛星データ241は、図2の汎用RAM18に記録されることになる。
【0076】
また、C/Aコードの位相からGPS衛星15の衛星番号が分かるため、上記のドップラ周波数の偏差のデータと、衛星番号とを関連つけることで、受信し易いGPS衛星15の衛星番号を特定することができる。
【0077】
また、信号強度のデータも上記ドップラ周波数の偏差のデータ及び衛星番号等と関連付けることで、より信頼性が高く、受信し易いGPS衛星15を選別することができることになる。
つまり、図15の衛星データ241には、時刻/衛星番号/ドップラ周波数の偏差/信号強度が相互に関連付けられたデータが登録されている。この衛星データ241が捕捉衛星情報の一例となっている。
【0078】
このような衛星データ241の収集及び利用方法を図16のフローチャートを用いて説明する。先ず、衛星データ241の収集は、ST33で行われる。
具体的には、図14の衛星データ記録プログラム231が動作して、上述のように衛星データ241が記録される。
そして、ST31及びST32で、衛星データ241は、利用される。すなわち、ST31では、衛星データ存否判断プログラム232が動作し、衛星データ241に利用可能な衛星データ241が存在するか否かを判断する。
ST31で、利用可能な衛星データ241が存在した場合は、ST32で、その衛星データ241を利用して衛星を速やかに捕捉する。
つまり、衛星データ241には、当該時刻において、最も天頂に近く、信号強度の強い衛星番号が記録されているので、このデータを利用してGPS衛星15をサーチすることで、迅速にGPS衛星を捕捉できるので、消費電力を低く抑えることができる。
【0079】
(第4の実施の形態)
図17は、本発明の第4の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
本実施の形態にかかるGPS付き腕時計の構成等は、上述の第3の実施の形態に係るGPS付き腕時計200の構成等と多くが共通しているため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0080】
本実施の形態のGPS付き腕時計では、図16の第3の実施の形態のフローチャートに付加する形態として、図17に示すように、GPS衛星15の衛星データ241のみを取得するフローチャートが付加されている。すなわち、この図17のフローチャートでは、衛星信号からZカウントを取得することはなく、あくまで、衛星データ241のみを定期的に取得することを目的としている。
このため、GPS衛星15の衛星信号の受信時間は、C/Aコード長(1msec)乃至メッセージ1bit長(20msec)となっている。
【0081】
具体的には、図17のST42では、例えば、上記メッセージ1bit長である、20msecの間のみGPS衛星15の衛星信号を受信する構成となっている。
このように、図17の工程では、上記Zカウントを取得するものではなく、将来の衛星サーチを迅速に行うために、第3の実施の形態の衛星データ241を取得するためだけを目的とするので、速やか且つ効果的に衛星データ241を取得することができる構成となっている。
【0082】
(第5の実施の形態)
図18は、本発明の第5の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
本実施の形態にかかるGPS付き腕時計の構成等は、上述の各実施の形態に係るGPS付き腕時計10等の構成等と多くが共通しているため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0083】
本実施の形態では、上述の各実施の形態と異なり、一度、GPS衛星15から衛星信号を受信し、Zカウント(時刻情報)を取得した後、このZカウントの精度を確認するため、もう一度、同一のGPS衛星15が衛星信号を受信し、Zカウントを取得する。
そして、これら2個のZカウントの値を比較することでその整合性を判断し、整合性がある場合にRTC23の時刻修正を行うものである。
【0084】
具体的には、図18のST51で、前回衛星データがあるか否かを判断し、前回衛星データがない場合は、ST52で、今回相関の取れた同一のGPS衛星15を再度、捕捉し、衛星信号を得て、Zカウントを取得する。
そして、ST53で、図示しない整合性判断プログラムが動作し、整合性を判断する。
したがって、最初の受信で得たZカウントがノイズ等で誤った信号に基づいて演算された場合、その誤りを速やかに把握することができるので、時刻修正精度が極めて向上することとなる。
なお、上記整合性判断プログラムが整合性判断部の一例となっている。
【0085】
(第6の実施の形態)
図19は、本発明の第6の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
本実施の形態にかかるGPS付き腕時計の構成等は、上述の第5の実施の形態に係るGPS付き腕時計の構成等と多くが共通しているため、共通の構成は同一符号等として説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0086】
本実施の形態では、上述の第5の実施の形態と異なり、複数の異なるGPS衛星15から衛星信号を受信し、複数のZカウント(時刻情報)を取得した後、これらZカウントの精度を確認するため、これら複数のZカウントの値を比較することでその整合性を判断し、整合性がある場合にRTC23の時刻修正を行うものである。
【0087】
具体的には、図19のST61で、異なる複数のGPS衛星15の衛星信号がBB用RAM22に格納されているか否かを判断し、格納されている場合はST62で、これらのZカウントに整合性が取れているか否かが判断される。
すなわち、図示しない異衛星データ整合判断プログラムが動作して、それらに整合性を判断する。
そして、整合性があるときは、RTC23の時刻修正を実行する。このように、本実施の形態では、異なったGPS衛星15から取得したZカウントの整合性を判断するので、さらに精度の高いZカウントで時刻修正をすることができる。
この異衛星データ整合性判断プログラムが、異衛星整合性判断部の一例となっている。
【0088】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。なお、上述の実施の形態では、位置情報衛星として、地球を周回するGPS衛星を例に説明しているが、本発明の位置情報衛星は、これに限らず、静止衛星や準天頂衛星等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る時刻修正装置付き計時装置である例えば、GPS時刻修正装置付き腕時計を示す概略図である。
【図2】図1のGPS付き腕時計の内部の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
【図3】GPS付き腕時計の主なソフトウエア構成等を示す概略図である。
【図4】図3の各種プログラム格納部内のデータを示す概略図である。
【図5】図3の各種データ格納部内のデータを示す概略図である。
【図6】第1の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図7】第1の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な動作等を示す他の概略フローチャートである。
【図8】衛星信号を示す概略説明図である。
【図9】衛星信号及び受信信号の概略説明図である。
【図10】第2の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な構成を示す概略ブロックである。
【図11】第2の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な構成を示す他の概略ブロックである。
【図12】第2の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の概略フローチャートである。
【図13】第2の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の他の概略フローチャートである。
【図14】第3の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な構成を示す概略ブロックである。
【図15】第3の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の主な構成を示す他の概略ブロックである。
【図16】第3の実施の形態にかかるGPS付き腕時計の概略フローチャートである。
【図17】第4の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
【図18】第5の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
【図19】第6の実施の形態にかかるGPS付き腕時計を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
10・・・GPS時刻修正装置付き腕時計、15・・・GPS衛星、17・・・MPU,18・・・汎用RAM、20・・・RF部、21・・・BB部、22・・・BB用RAM、23・・・RTC、24・・・TCXO、25・・・水晶発振回路、26・・・電源回路、29・・・タイマー、30・・・各種プログラム格納部、40・・・各種データ格納部、31・・・BB用RAM動作プログラム、32・・・タイマー制御プログラム、33・・・受信開始判断プログラム、34・・・受信終了可否判断プログラム、35・・・受信終了判断プログラム、36・・・信号演算動作プログラム、37・・・時刻修正データ演算プログラム、38・・・時刻修正プログラム、41・・・RF部、BB部及びBB部用RAM動作開始データ、42・・・サーチ開始時刻データ、43・・・受信開始時刻データ、44・・・BB信号データ、45・・・受信時間データ、46・・・信号演算結果データ、47・・・信号演算終了時刻データ、48・・・時刻修正用データ、131・・・サブフレームID判断プログラム、132・・・目標サブフレームタイミング演算プログラム、141・・・サブフレームIDデータ、231・・・衛星データ記録プログラム、232・・・衛星データ存否判断プログラム、241・・・衛星データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、
自己時刻情報を有する計時部と、
前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、
前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置。
【請求項2】
前記受信部が受信した前記衛星信号を格納する衛星信号格納部を有することを特徴とする請求項1に記載の時刻修正装置。
【請求項3】
前記受信部の動作関連時間である受信部計時情報及び/又は前記衛星信号演算部の動作関連時間である衛星信号演算計時情報を取得するカウンタ部を有し、
前記時刻情報修正部は、前記受信部計時情報及び/又は前記衛星信号演算計時情報に基づいて演算される修正タイミング情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の時刻修正装置。
【請求項4】
前記衛星信号には、前記位置情報衛星の衛星信号の到達に要する時間である伝搬遅延時間情報を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項5】
前記受信部計時情報には、前記受信部が前記位置情報衛星を捕捉した後に前記位置情報衛星の衛星信号を受信する時間である衛星信号受信時間情報が含まれ、
前記衛星信号受信時間情報は、前記衛星時刻情報及び前記修正タイミング情報を取得するための必要最小限の時間情報となっていることを特徴とする請求項3及び請求項4のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項6】
前記カウンタ部は、高精度発振器に基づき動作する構成となっていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項7】
前記衛星信号には、サブフレーム番号情報が含まれ、
前記サブフレーム番号情報からGPS時刻の週番号情報及び/又はUTC(universal time coordinate、世界協定時)パラメータ情報を含む目標サブフレーム番号情報を取得するサブフレーム番号取得部を有し、
前記目標サブフレーム番号情報に基づき、前記衛星信号の前記目標サブフレームを受信する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項8】
前記衛星信号には、前記位置情報衛星の衛星番号情報、ドップラ周波数情報及びC/Aコード位相情報が含まれ、
受信した前記位置情報衛星の衛星番号情報、ドップラ周波数情報及びC/Aコード位相情報を格納する捕捉衛星情報格納部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項9】
前記衛星信号受信時間情報が、C/Aコード長乃至メッセージ1bit長であり、
受信した前記位置情報衛星情報を捕捉可能衛星格納部に格納することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項10】
同一の前記位置情報衛星から前記衛星信号を複数回受信する構成となっており、
前記複数回受信で取得した複数個の前記衛星時刻情報の整合性を判断する整合性判断部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項11】
複数の前記位置情報衛星から前記衛星信号を受信する構成となっており、
前記複数の前記位置情報衛星から取得した複数個の前記時刻情報の整合性を判断する異衛星整合性判断部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の時刻修正装置。
【請求項12】
位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、
自己時刻情報を有する計時部と、
前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有し、
前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっていることを特徴とする時刻修正装置付き計時装置。
【請求項13】
位置情報衛星から送信される衛星信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記衛星信号を演算して、少なくとも、衛星時刻情報を取得する衛星信号演算部と、
自己時刻情報を有する計時部と、
前記衛星時刻情報に基づいて前記自己時刻情報を修正する時刻情報修正部と、を有する時刻修正方法であって、
前記受信部と前記衛星信号演算部とが択一的に動作する構成となっており、
前記受信部が受信した前記衛星信号に基づいて、その後、前記衛星信号演算部が演算する構成となっていることを特徴とする時刻修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−14670(P2009−14670A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179928(P2007−179928)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】