時計部品およびその製造方法と、時計部品の美的処理方法
【課題】本発明の目的は、全く新しい模様自体が織り成す立体感や存在感、すなわち、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさを有する時計部品を得ること、およびそのような時計部品を得るための製造方法、および美的処理の方法を得ることである。
【解決手段】本発明の美的処理を施した時計部品は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有することを特徴とする。
【解決手段】本発明の美的処理を施した時計部品は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な美的処理が施された時計部品およびその製造方法と、時計部品の美的処理方法に関する。詳しくは、模様自体が織り成す立体感と存在感、そして高級感を併せ持つ新規な時計部品およびそのような時計部品を得るための製造方法と、時計部品の美的処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズなどの時計部品には、装飾効果を高めるために、立体的な浮き上がり模様が施されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
このような模様を形成する方法の一つとして、非常に硬いワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を用いて、母材そのものに深い目付け(溝)を施し、光の反射を利用して、表面に明るさのコントラストをつけて浮かび上がらせる方法が提案されている。特許文献2では、このような形成方法を用いて、文字板表面に設けた模様を立体的に浮き上がらせて見せる時計用文字板についての記載がある。また、特許文献3では、鏡面加工の一部または全部に所定形状の方向性の異なる節目模様を形成することで、反射光による視覚効果をより得た金属製装飾品に関する記載がある。
【0004】
しかしながら、従前の方法では、光のコントラストを利用して、目付け(非常に深い溝)によって得られたデザインそのものを浮かび上がらせようとする方法であるため、立体的な変化に留まり、デザイン性に限界がある。また、表面に非常に深い溝を施しているため、光のコントラストも至極単調になり、キラツキ感を得るのみで、高級感までは得られない。さらに、従前の方法は、平面的な基材に対しての加工であり、曲面を有する基材に対しては、加工そのものが困難であり、また、目付けや研磨処理は、同一方向にしか施せないため、得られる模様にも限度がある。
【0005】
したがって、このような表面仕上げを用いて模様を立体的に視認させようとしても、模様自体が織り成す立体感や存在感、見る角度によって全く違う表情を醸し出すような美しい高級感を有する時計部品を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−132751号公報
【特許文献2】特開平10−142355号公報
【特許文献3】特開平06−304857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感、すなわち、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを有する時計部品を得ること、そのような時計部品を得るための製造方法、および美的処理の方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有する美的処理が施された時計部品が、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、本発明では、前記模様部が、前記装飾品用母材の表面から見て、少なくとも2個以上重なっている部分を有することが好ましい。
【0010】
前記模様付け加工の研磨手段が、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、毛、羽毛、繊維、木材、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂から選ばれる1種以上の材料であるか、または該材料を含んで構成されることも好ましい。
【0011】
前記模様付け加工が、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を行うことを含むことも好ましい。
【0012】
前記装飾品用母材の模様付け加工前の表面粗さが、0.001μm以上0.05μm以下であることが好ましい。
【0013】
前記模様部の少なくとも1個が、縦0.20mm以上、横2.0mm以上および該母材の表面から深さ0.001μm以上0.10μm未満であることが好ましい。
【0014】
前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることが好ましい。
【0015】
前記被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、プラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、クリアー塗装からなる被膜またはアルマイト被膜から選ばれる1種以上であることも好ましい。
【0016】
本発明の美的処理が施された時計部品の製造方法は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(1)を設け、次いで、該模様部(1)と同一または異なる位置に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(2)を設ける工程を含むことを特徴とする。
【0017】
模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことも好ましい。
【0018】
本発明の時計部品の美的処理方法は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の時計部品は、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有する。さらに、時計部品に施される模様部を幾重にも重ねることで、時計部品は、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を得ることができる。
【0020】
また、模様部の表面に所望の被膜を施すことで、本発明の時計部品は、模様部をより際立たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の模様部を施す方法の模式図である。
【図2】図2は、実施例11で得られた黒色を呈する腕時計用の部品の写真である。
【図3】図3は、実施例12で得られたステンレス鋼を呈する腕時計用の部品の写真である。
【図4】図4は、本発明の美的処理が施された時計部品を、実際に腕時計に付けたときの写真である。
【図5】図5は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図6】図6は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図7】図7は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図8】図8は、様々な被膜で被覆された時計部品である。
【図9】図9は、ステンレス鋼(SUS316L)に鏡面仕上げを施した、公知の時計部品である。
【図10】図10は、ステンレス鋼(SUS316L)にヘアーライン模様(目付けの深さ:およそ0.4μm)を施した、公知の時計部品である。
【図11】図11は、ステンレス鋼(SUS316L)にホーニング加工を施した、公知の時計部品である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る美的処理が施された時計部品、その製造方法および美的処理方法について具体的に説明する。
【0023】
<時計部品、その製造方法および時計部品の美的処理方法>
(装飾品用母材)
本発明に係る装飾品用母材は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra:粗さ曲線の算術平均粗さ)が、0μm以上0.10μm未満、好ましくは0.001μm以上0.10μm未満、より好ましくは0.01以上0.05μm以下、最も好ましくは0.01以上0.03μm以下であれば、特に限定されない。また、装飾品用母材の表面は、鏡面に近い方がより好ましい。なお、本発明において、装飾品用母材の表面粗さ(Ra)、後述する母材表面からの深さ(Rz)は、たとえば、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定できる。
【0024】
本願発明において、装飾品母材の表面粗さが、上記範囲を満たすことで、後述の微細な模様付け加工を施すことができる。特に、表面粗さが、0.10μm以上の装飾品用母材に、本発明に係る模様付け加工を施しても、母材の表面粗さの方が視認され、また、光のコントラストによる強いキラツキ感のために、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を得ることはできない。
【0025】
また、本発明において、母材の材質に制限なく加工でき、装飾品母材の表面硬度は、特に限定されないが、好ましくは、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定して得られたビッカース硬度であれば70〜2000、JIS K 6253に準拠して測定して得られたショアーA硬度であれば30〜150、JIS K 5600−5−4に準拠して測定して得られた鉛筆硬度であればHB〜6Hである。材質の硬度が、上記範囲にあると、後述の微細な模様付け加工を施しやすくなるので好ましい。なお、それぞれの硬度は、材質に応じて、測定される。
【0026】
また、装飾品用母材としては、材質に制限はないが、金属、金属合金、セラミックス、樹脂、ガラス、サファイヤなどの装飾品などから形成されることが好ましい。また、これらの材料は1種で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
このような母材を用いて、上記所望の表面粗さを施す方法としては、たとえば、種々公知の機械方法が採用できる。たとえば、鏡面研磨であれば、布、フェルト、皮などにバフ研磨剤を塗布したバフを用いて、装飾品用母材の表面を研磨することで得られる。また、バフや砥石の種類や、使用する研磨剤の材質や粒度を変えて、粗い面から鏡面へと仕上げていくことが好ましい。使用する研磨剤は、粗い面から鏡面になるにしたがい、粒度が細かいものを使用することが好ましい。なお、研磨剤としては、後述の砥粒を用いることができる。
【0028】
金属や、合金としては、具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトなどが挙げられる。これらの金属や、合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
中でも、量産が可能で、本発明に係る微細な模様付け加工が施しやすいことから、チタン、チタン合金、ステンレス鋼が好ましい。
【0030】
また、金属や、合金からなる装飾品用母材には、後述の微細な模様付け加工を施した表面以外の表面に、必要に応じて各種手段により、鏡面、梨地、ヘアーライン模様、ホーニング模様、型打ち模様及びエッチング模様の中から選ばれる少なくとも1つの表面仕上げが施されていてもよい。このような模様と、本発明に係る美的処理を施した模様とを組み合わせることで、時計部品は、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を得ることができる。このような表面仕上げとしては、たとえば、ヘアーライン模様であれば公知の機械加工、具体的には、ワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を使用して微細な溝を作ることにより模様付けを行うことができる。その他の方法も、従来公知の機械加工によりなされる。
【0031】
セラミックスとしては、具体的には、ジルコニアセラミックスなどが挙げられる。このジルコニアセラミックスは、その組成が酸化イットリウム(Y2O2)または他の安定化剤(たとえば酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO))を3〜7重量%含む安定化ジルコニアで、白色色調を呈している。より具体的に説明すると、このジルコニアセラミックスは、ジルコニアおよびバインダーを主成分とし、酸化イットリウム等の安定化剤を3〜7重量%含んだ安定化ジルコニア粉末100重量部に対して、バインダーを20〜25重量部含んでおり、焼成後に白色色調を呈する。バインダーとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアセテート、ブチルメタクリレート、ポリアセタール、ワックスおよびステアリン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種を混合したものがよい。
【0032】
また、本発明に係る装飾品用母材、たとえば時計ケース用母材は、ジルコニアおよびバインダーを主成分とする素材を用いて射出成形により時計ケースの形状を有する成形体を作った後、この成形体を機械加工により粗加工、さらに、この粗加工した成形体を脱脂および焼成して時計ケースの粗基材を作り、次いで、この粗基材を研削および研磨等の機械加工することにより製造される。また、本発明においては、射出成形と同時に、母体に美的処理を施すこともできる。具体的には、金型に、本発明に係る特定の砥粒を含む研磨手段を施し、射出成形と共に微細な模様付け加工を施すことで、所望の模様部を転写することができる。電気鋳造を行う場合であれば、母型に特定の砥粒を含む研磨手段を施し、微細な模様付け加工を施すことで、模様部を施すことも可能である。
【0033】
また、装飾品用母材としては、前述の表面硬度および表面粗さを有する限り、後述する、黒色を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、白色(銀色)を有するプラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、アクリル樹脂などのクリアー塗装からなる被膜または様々なカラーを有するアルマイト被膜を被覆していてもよい。被覆する被膜に制限はなく、このような母材に、本発明に係る研磨手段で微細な模様付け加工を施すことで模様部を設けることにより、模様自体が織り成す立体感や存在感に、様々なカラーを付与することができるため、さらなる高級感を有する幻想的な時計部品を得ることができる。なお、これらの被膜は、装飾品用母材に対して、乾式メッキ法により、1層または2層以上、被膜することができる。なお、乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。また、被膜の厚みは、得られる時計部品のデザインによっても異なり、特に限定されないが、通常0.001〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲である。また、被膜と母材との密着性を付与するための被膜については、後述のチタン被膜やシリコン被膜を用いることができる。
【0034】
本発明においては、予め装飾品用母材表面を従来公知の有機溶剤等で洗浄・脱脂しておくことが好ましい。
【0035】
(模様部)
本発明に係る模様部は、本発明に係る装飾品用母材に、JIS R 6001に記載されている、粒度80〜3000、好ましくは100〜2000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られる。
【0036】
砥粒の粒度は、80未満であると、母材表面から深さ0.10μm以上を研磨してしまうおそれがあり、3000を超えると、装飾品用母材に所望の模様付けを施すことができないおそれがある。また、本発明において、粒度は、母材の硬度、模様部のラインの幅やサイズなどを考慮して、適宜選択される。粒度は、母材に対しては特に限定されないが、硬い母材の場合は砥粒が大きいもの、柔らかい母材の場合は砥粒が小さいものを使用することが好ましい。
【0037】
本発明では、砥粒の粒度が上記範囲を満たす限り、種々公知の砥粒を用いることができ、たとえば、砥粒の種類として、アルミナ系や炭化ケイ素系などが挙げられる。アルミナ系としては、A(アランダム)、WA(ホワイトアランダム)、PA(ピンクアランダム)、HA(解体型アルミナ)、AE(人造エメリー)、AZ(アルミナジルコニア)などが挙げられる。炭化ケイ素系としては、C(カーボランダム)、GC(グリーンカーボランダム)などが挙げられる。また、ダイヤモンドやCBNなどの超砥粒を用いることができる。
【0038】
また、本発明では、得られるデザインに応じて、粒度の異なる砥粒を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、砥粒には、本発明の目的を損なわない範囲で、種々公知の研磨液や結合剤などが含まれていてもよい。
【0040】
本発明に係る研磨手段は、特に限定されないが、母材より柔らかい手段を選択することが好ましい。たとえば、JIS K 6253に準拠して測定して得られた硬度であれば60以上100以下、好ましくは60以上90以下、より好ましくは60以上70以下、JIS K 5600−5−4に準拠して測定して得られた鉛筆硬度であればHB〜6Hなどである。研磨手段の硬度が、上記範囲にあると、後述の微細な模様付け加工を施しやすくなるので好ましい。また、研磨手段は、所望する模様部が、母材表面からみて、面積が大きいものであれば、より硬度が低いものを、面積が小さいものであれば、より硬度が高いものを使用することが好ましい。なお、研磨手段の上記硬度が、60未満であると、装飾品用母材に所望の模様付けを施すことができないおそれがあり、100を超えると、母材表面から深さ0.10μm以上研磨してしまうおそれがある。また、それぞれの硬度は、研磨手段の材質に応じて、測定される。
【0041】
研磨手段としては、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、豚、羊や山羊などの毛、人の毛髪、鳥の羽毛、綿や麻など植物由来の繊維、ポリエステルなどの合成繊維、木材、天然ゴム、シリコーンゴムやオレフィン系エラストマーなどの合成ゴム、アクリル樹脂、ポリエステルやポリウレタンなどの合成樹脂など、材料そのものを用いて、これらの材料を含む道具、冶具、器具、装置などを用いることが挙げられる。すなわち、本発明では、羽毛やシリコーンゴムなど材料(素材)そのものも微細な模様付け加工の研磨手段として用いることができる。また、これらの材料を混合した、刷毛や筆なども用いることができる。なお、これらの研磨手段は、適宜デザインに応じて、組み合わせて用いることができる。なお、研磨手段としては、砥石、バフ、シリコーンゴムや刷毛などが好ましい。
【0042】
本発明に係る微細な模様付け加工とは、特定の砥粒を含む研磨手段を用いて、母材表面に、母材表面から特定の深さを有する模様部を施すことを言う。なお、本発明において、模様とは、文字や、数字なども含む。
【0043】
本発明に係る模様付け加工では、従前の目付けや研磨方法と異なり、得られる模様部の深さ、幅、方向などが一様でなく、所望に応じて、様々な模様部を施すことが可能である。さらに、模様部は、微細な模様付け加工により、平面的な母材だけでなく、曲面を有する母材に対しても、母材の形状に関係なく、施すことが可能である。このように模様部を柔軟に、幾重にも重ねて施すことができるため、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を有する時計部品を得ることができる。
【0044】
また、模様付け加工としては、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を含むことが好ましい。なお、これらの操作は、適宜デザインに応じて、母材に対して、研磨手段に対して、または両方に対して、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。このような操作を含むことで、時計部品は、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさを有するだけでなく、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ極めて美しい外観(デザイン性)を得ることができる。また、模様付け加工は、ロボットなどの機械を用いても行える。
【0045】
また、このような模様付け加工を施して得られる模様部は、JIS B 0601−2000に準拠して得られた母材の表面から深さ(Rz:最大高さ)0.001μm以上0.10μm未満、好ましくは0.01以上0.09μm以下、より好ましくは0.04以上0.08μm以下にある。
【0046】
模様部が、装飾品用母材の表面から深さ0.001μm未満では、模様として視認できず、また、0.10μm以上では、光のコントラストが強く視認されるため、模様自体が織り成す立体感や存在感、高級感を得ることができない。また、母材の表面から深さが0.04〜0.08μmであれば、より模様部が織り成す立体感を有する外観を得ることができる。
【0047】
また、本発明において、前記表面粗さを有する装飾品用母材に対して、模様部における装飾品用母材の表面から深さは、上記範囲内であれば、模様自体が織り成す立体感や存在感を得ることができるが、好ましくは、表面粗さ0.01〜0.05μm、より好ましくは0.01〜0.03μmを有する母材を用いて、母材の表面から深さが、好ましくは0.01〜0.09μm、より好ましくは0.04〜0.08μmの模様部を施すと、より模様部の織り成す立体感を強調することができる。
【0048】
模様部は、装飾品用母材の表面上の同一または異なる位置に、1個以上有することが好ましく、少なくとも2個以上有することがより好ましい。模様部の個数は、本発明の目的を損なわない限り、デザインに応じて、特に限定されない。また、模様部は、母材の表面からの深さが上記範囲を満たす限り、母材表面からみて、同一箇所に施されていてもよいし、異なる位置に施されていてもよく、また、同一箇所および異なる位置に施されていてもよく、施す位置に限定されない。また、模様部は、模様部(1)を施した後に、装飾品用母材の表面から見て、重なっている部分を有するように模様部(2)を施すと、得られる時計部品は、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有するため、好ましい。また、模様部を施すときに、母材表面に対して、研磨手段の角度を変化させる(他方向から施す)と、光の反射方向および反射率が多岐にわたり、より幻想的な時計部品を得ることができる。さらに、母材表面において、模様部が幾重にも重なっている部分を有すると、得られる時計部品は、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさ、華やかさ、艶やかさ、深み、趣、質感などを得ることができるので、より好ましい。なお、重なりとは、本発明の目的を損なわない限り、たとえば、模様部(1)が施された箇所に、次いで、模様部(2)を模様部(1)よりも深く、または浅く、あるいは同一の深さに施す、すなわち、空間的に重なりを有するように施すことも含む。また、本発明に係る微細な模様付け加工により、模様部を、同時に、同一および/または異なる位置に施す場合も、本発明に含まれる。すなわち、本発明に係る微細な模様付け加工により、模様部を少なくとも2個以上施す場合、本発明の目的を損なわない限り、それらの模様部を同時に施しても構わない。
【0049】
また、模様部の表面上の大きさは、母材の表面からの深さが上記範囲を満たす限り、特に限定されないが、少なくとも1個は、縦0.20mm以上、好ましくは縦0.30mm以上、より好ましくは縦1.0mm以上、横2.0mm以上、好ましくは横3.0mm以上、より好ましくは横4.0mm以上である。このような模様部を母材の表面に施すと、得られる時計部品は、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有するため、好ましい。なお、本発明において、模様部の大きさは、母材の表面から見て、模様部の一番長い部分を模様部の縦の寸法として測り、その縦軸に対して、直交し、かつ、一番長い部分を、横の寸法として測ったときの値である。また、模様部(1)と模様部(2)との間隔は、母材の表面から見て、模様部における縦と横の直交する点をO点としたとき、模様部(1)のO点から模様部(2)のO点までの長さとして測定することができる。
【0050】
また、本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、装飾品用母材の表面からみて、模様部と同一または異なる位置に、装飾品用母材の表面から深さ0.001μm未満または、0.10μm以上の模様が施されていてもよい。
【0051】
(時計部品の美的処理方法)
本発明では、本発明の時計部品の美的処理方法を用いることで、時計部品に、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感、すなわち、見る角度によって反射(率)が異なることに起因して、全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを付与することができる。
【0052】
(被膜)
母材に模様付け処理を施して得られた模様部は、非常に微細で、繊細であるため、多少の衝撃でも、デザイン的価値を喪失するおそれがある。そのため、本発明の美的処理が施された時計部品では、前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることが好ましい。また、時計部品の製造方法では、模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことが好ましい。
【0053】
装飾品用母材の表面に被覆できる被膜としては、種々公知の被膜を用いることができるが、たとえば、図8に示すように、黒色を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、白色(銀色)を有するプラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、アクリル樹脂などのクリアー塗装からなる被膜または様々なカラーを有するアルマイト被膜が、模様自体が織り成す立体感や存在感に、様々なカラーを付与することができるため、好ましい。このような被膜は、1種単独で、または2種以上組み合わせて、デザインに応じて適宜用いることができる。また、被膜はこのように様々な色調を有するため、得られる時計部品は、様々なカラーを付与することができるため、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感に、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な外観を有する。被膜としては、特にDLCからなる被膜、プラチナからなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金からなる被膜または金合金からなる被膜が好ましく、まるで宇宙から飛来する隕石をイメージするかのような、極めてロマンあふれる時計部品を得ることができる点でDLCからなる被膜が、また、まるで結晶の群生をイメージするかのような、極めて神秘的な輝きを有する時計部品を得ることができる点で、プラチナからなる被膜またはプラチナ合金からなる被膜がより好ましい。
【0054】
本発明において、被膜の厚みは、得られる時計部品のデザインによっても異なり、特に限定されないが、通常0.001〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲である。この範囲であれば、模様部を視認できる。
【0055】
黒色を呈するダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は、美的処理が施された装飾品用母材とダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、密着性の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された、シリコン被膜もしくはシリコンカーバイド被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用母材の表面に、チタン被膜、シリコン(シリコンカーバイド)被膜およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.8μmであり、シリコン被膜層の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.8μmであり、DLC被膜の厚みは、通常0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmである。
【0056】
また、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜は、装飾品用母材とプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜との間に、密着性および色調の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用母材の表面に、チタン被膜、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜、およびプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.02〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmであり、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜の厚みは、通常0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmであり、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜の厚みは、通常0.005〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.1μmである。なお、プラチナ合金としては、特に白色を有するプラチナ−パラジウム(Pt−Pd)合金が挙げられるが、その他の色を呈するプラチナ−金(Pt−Au)合金などでもよい。
【0057】
また、乾式メッキ法により、装飾品用母材の表面に、金色色調を呈する、金(Au)からなる被膜または金合金からなる被膜を被覆することも好ましい。金合金としては、金と全率固溶する元素を選択することが望ましく、得られた金合金は、薄膜にしても緻密な膜となるため、耐食性に優れ、変色などを起しにくく、信頼性が高い。このような金合金としては、金-ニッケル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合金、または金-ロジウム(Au-Rh)合金が挙げられる。これらの金合金は、時計部品に対して、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。なお、これらの金合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
なお、乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0059】
クリアー塗装からなる被膜は、通常、母材に対して、スプレー塗装をすることで得ることができる。クリアー塗料は、特に限定されないが、主樹脂の成分としてはアクリル系樹脂、副主樹脂の成分としてはポリエステル系樹脂、硬化材としてイソシアネート樹脂、溶剤としては低沸点の炭化水素系溶剤などからなるものが好ましい。また、クリアー塗装を施すにあたり、公知のベース塗装を施すことが好ましい。
【0060】
様々なカラーを有するアルマイト被膜は、種々公知の手法により、母材に被覆される。アルマイト被膜としては、白アルマイト被膜、着色(カラー)アルマイト被膜、硬質アルマイト被膜、テフロン硬質アルマイト被膜などが挙げられる。
【0061】
(機械加工)
前述のようにして被膜を塗布して得られた時計部品は、さらに、機械加工により粗加工、この粗加工した成形体を脱脂および焼成して所望の粗基材を作り、次いで、この粗基材を研削、バフ研磨等の公知の機械加工を施し、外観をより美しくすることが好ましい。
【0062】
<美的処理が施された時計部品>
本発明の美的処理が施された時計部品は、従来にない、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感及び高級感、すなわち、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを有する。
【0063】
このような本発明の時計部品は、時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズ、などに好適に用いることができる。
【0064】
また、本発明を応用することで、万年筆やボールペンなどの筆記具、ピアス、イヤリング、指輪、メガネフレーム、ペンダント、ブローチ、ネックレス、ブレスレットなどの装飾品にも本発明に係る美的処理を施すことができる。
【実施例】
【0065】
本発明を以下の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって何等制限されるものではない。評価法、時計部品の製造法を下記に示す。
【0066】
(評価)
(1)装飾品用母材の表面粗さ
装飾品用母材の表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601(2001)に準拠して、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定を行った。
【0067】
(2)模様部の表面深さ
母材表面からの模様部の深さ(Rz)は、JIS B 0601(2001)に準拠して、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定を行った。
【0068】
(3)模様部の寸法(縦×横)、および模様部同士の間隔
得られた模様部において、母材表面上の一番長い部分を、模様部の縦の寸法として測り、その縦軸に対して、直交し、かつ、一番長い部分を、横の寸法として測った。なお、模様部における縦と横の直交する点をO点とした。
【0069】
また、模様部と模様部との間隔は、O点からO点までの長さとした。
【0070】
(4)模様部の観察
(4−1)観察方法(1)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0071】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、下記の基準にて評価した。
【0072】
◎:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、もっともよい状態である。
○:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、よい状態である。
△:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、ややよい状態である。
×:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有さず、手触り感が、悪い状態である。
【0073】
(4−2)観察方法(2)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.005μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0074】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、上記の基準にて評価した。
【0075】
(4−3)観察方法(3)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.09μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0076】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、上記の基準にて評価した。
【0077】
〔実施例1〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0078】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度1000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材の表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を、3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0079】
〔実施例2および3〕
実施例2として、母材表面からの深さが0.005、0.01および0.02μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
【0080】
実施例3として、母材表面からの深さが0.06、0.07および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
【0081】
得られたそれぞれの模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例4〕
母材表面からの深さが0.02を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部、母材表面からの深さが0.05を有する、縦2.0mm、横20.0mmの微細な模様部および母材表面からの深さが0.09を有する、縦5.0mm、横10.0mmの微細な模様部を、母材平面に対して、重なりを有するように模様付け加工を行った以外は、実施例1と同様にして、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0083】
〔実施例5〕
砥石を手によりスライドさせた以外は、実施例1と同様にして、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例6〕
ステンレス鋼(SUS316L)を、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0085】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度500の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの所望の深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0086】
〔比較例1〕
母材表面からの深さが0.1μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0087】
〔比較例2〕
粒度4000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石を用いた以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
得られた模様部は、非常に見えにくかった。
【0088】
〔比較例3〕
粒度70の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石を用いた以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
得られた模様部は深すぎであったため、キラツキ感のみであった。
【0089】
【表1】
【0090】
〔実施例7〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.005μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0091】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度2000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0092】
〔実施例8〕
母材表面からの深さが0.001、0.05および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例4と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0093】
〔比較例4〕
母材表面からの所望の深さが0.1μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例4と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
〔実施例9〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.09μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0096】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度80の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0097】
〔実施例10〕
母材表面からの深さを0.001、0.05および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例6と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0098】
〔比較例5〕
母材表面からの所望の深さを0.5μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例6と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
〔実施例11〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0101】
続いて、該母材の表面上の同じ位置および異なる位置に、粒度100〜1000の様々な砥粒を含む研磨手段で、母材表面からの深さ0.001以上0.10μm未満を有する、様々な微細な模様付け加工を施し、様々な模様部を有する時計部品を得た。なお、模様付け加工は、母材に対して研削手段を回転、スライド、振動および手技を用いて行った。
【0102】
続いて、該時計部品を有機溶剤で洗浄・脱脂し、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
【0103】
<成膜条件>
ターゲット:チタン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.02Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
次いで、このチタンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmのシリコンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
【0104】
<成膜条件>
ターゲット:シリコン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.05Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
次いで、このシリコンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmの黒色のダイヤモンドライクカーボン(DLC)メッキ被膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により下記の成膜条件で形成した。
【0105】
<成膜条件>
ガス:ベンゼン
成膜圧力:0.2Pa
フィラメント電流:20A
アノード電流:2.0A
カソード電圧(加速電圧):−1.0〜−5.0kV
【0106】
このようにして、黒色を呈する腕時計用の部品を得た。得られた部品について、図2に示した。
図2に示すように、得られた時計部品は、まるで宇宙から飛来する隕石をイメージするかのような、極めてロマンあふれる外観を有した。
【0107】
〔実施例12〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0108】
続いて、該母材の表面上の同じ位置および異なる位置に、粒度100〜1000の様々な砥粒を含む研磨手段で、母材表面からの深さ0.001以上0.10μm未満を有する、様々な微細な模様付け加工を施し、様々な模様部を有する時計部品を得た。なお、模様付け加工は、母材に対して研削手段を回転、スライド、振動および手技を用いて行った。
【0109】
続いて、該時計部品をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
次いで、これらの基材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0110】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0111】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0112】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0113】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0114】
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0115】
このようにして、ステンレス鋼色を呈する腕時計用の部品を得た。得られた部品について、図3に示した。
図3に示すように、得られた時計部品は、まるで結晶の群生をイメージするかのような、極めて神秘的な輝きを有した。
【符号の説明】
【0116】
1 模様部(1)
2 模様部(2)
3 装飾品用母材
4 研磨手段
5 砥粒
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な美的処理が施された時計部品およびその製造方法と、時計部品の美的処理方法に関する。詳しくは、模様自体が織り成す立体感と存在感、そして高級感を併せ持つ新規な時計部品およびそのような時計部品を得るための製造方法と、時計部品の美的処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズなどの時計部品には、装飾効果を高めるために、立体的な浮き上がり模様が施されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
このような模様を形成する方法の一つとして、非常に硬いワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を用いて、母材そのものに深い目付け(溝)を施し、光の反射を利用して、表面に明るさのコントラストをつけて浮かび上がらせる方法が提案されている。特許文献2では、このような形成方法を用いて、文字板表面に設けた模様を立体的に浮き上がらせて見せる時計用文字板についての記載がある。また、特許文献3では、鏡面加工の一部または全部に所定形状の方向性の異なる節目模様を形成することで、反射光による視覚効果をより得た金属製装飾品に関する記載がある。
【0004】
しかしながら、従前の方法では、光のコントラストを利用して、目付け(非常に深い溝)によって得られたデザインそのものを浮かび上がらせようとする方法であるため、立体的な変化に留まり、デザイン性に限界がある。また、表面に非常に深い溝を施しているため、光のコントラストも至極単調になり、キラツキ感を得るのみで、高級感までは得られない。さらに、従前の方法は、平面的な基材に対しての加工であり、曲面を有する基材に対しては、加工そのものが困難であり、また、目付けや研磨処理は、同一方向にしか施せないため、得られる模様にも限度がある。
【0005】
したがって、このような表面仕上げを用いて模様を立体的に視認させようとしても、模様自体が織り成す立体感や存在感、見る角度によって全く違う表情を醸し出すような美しい高級感を有する時計部品を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−132751号公報
【特許文献2】特開平10−142355号公報
【特許文献3】特開平06−304857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感、すなわち、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを有する時計部品を得ること、そのような時計部品を得るための製造方法、および美的処理の方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有する美的処理が施された時計部品が、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、本発明では、前記模様部が、前記装飾品用母材の表面から見て、少なくとも2個以上重なっている部分を有することが好ましい。
【0010】
前記模様付け加工の研磨手段が、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、毛、羽毛、繊維、木材、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂から選ばれる1種以上の材料であるか、または該材料を含んで構成されることも好ましい。
【0011】
前記模様付け加工が、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を行うことを含むことも好ましい。
【0012】
前記装飾品用母材の模様付け加工前の表面粗さが、0.001μm以上0.05μm以下であることが好ましい。
【0013】
前記模様部の少なくとも1個が、縦0.20mm以上、横2.0mm以上および該母材の表面から深さ0.001μm以上0.10μm未満であることが好ましい。
【0014】
前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることが好ましい。
【0015】
前記被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、プラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、クリアー塗装からなる被膜またはアルマイト被膜から選ばれる1種以上であることも好ましい。
【0016】
本発明の美的処理が施された時計部品の製造方法は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(1)を設け、次いで、該模様部(1)と同一または異なる位置に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(2)を設ける工程を含むことを特徴とする。
【0017】
模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことも好ましい。
【0018】
本発明の時計部品の美的処理方法は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の時計部品は、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有する。さらに、時計部品に施される模様部を幾重にも重ねることで、時計部品は、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を得ることができる。
【0020】
また、模様部の表面に所望の被膜を施すことで、本発明の時計部品は、模様部をより際立たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の模様部を施す方法の模式図である。
【図2】図2は、実施例11で得られた黒色を呈する腕時計用の部品の写真である。
【図3】図3は、実施例12で得られたステンレス鋼を呈する腕時計用の部品の写真である。
【図4】図4は、本発明の美的処理が施された時計部品を、実際に腕時計に付けたときの写真である。
【図5】図5は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図6】図6は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図7】図7は、図4と同様の腕時計であり、撮影角度を変えたときの写真である。
【図8】図8は、様々な被膜で被覆された時計部品である。
【図9】図9は、ステンレス鋼(SUS316L)に鏡面仕上げを施した、公知の時計部品である。
【図10】図10は、ステンレス鋼(SUS316L)にヘアーライン模様(目付けの深さ:およそ0.4μm)を施した、公知の時計部品である。
【図11】図11は、ステンレス鋼(SUS316L)にホーニング加工を施した、公知の時計部品である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る美的処理が施された時計部品、その製造方法および美的処理方法について具体的に説明する。
【0023】
<時計部品、その製造方法および時計部品の美的処理方法>
(装飾品用母材)
本発明に係る装飾品用母材は、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra:粗さ曲線の算術平均粗さ)が、0μm以上0.10μm未満、好ましくは0.001μm以上0.10μm未満、より好ましくは0.01以上0.05μm以下、最も好ましくは0.01以上0.03μm以下であれば、特に限定されない。また、装飾品用母材の表面は、鏡面に近い方がより好ましい。なお、本発明において、装飾品用母材の表面粗さ(Ra)、後述する母材表面からの深さ(Rz)は、たとえば、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定できる。
【0024】
本願発明において、装飾品母材の表面粗さが、上記範囲を満たすことで、後述の微細な模様付け加工を施すことができる。特に、表面粗さが、0.10μm以上の装飾品用母材に、本発明に係る模様付け加工を施しても、母材の表面粗さの方が視認され、また、光のコントラストによる強いキラツキ感のために、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を得ることはできない。
【0025】
また、本発明において、母材の材質に制限なく加工でき、装飾品母材の表面硬度は、特に限定されないが、好ましくは、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定して得られたビッカース硬度であれば70〜2000、JIS K 6253に準拠して測定して得られたショアーA硬度であれば30〜150、JIS K 5600−5−4に準拠して測定して得られた鉛筆硬度であればHB〜6Hである。材質の硬度が、上記範囲にあると、後述の微細な模様付け加工を施しやすくなるので好ましい。なお、それぞれの硬度は、材質に応じて、測定される。
【0026】
また、装飾品用母材としては、材質に制限はないが、金属、金属合金、セラミックス、樹脂、ガラス、サファイヤなどの装飾品などから形成されることが好ましい。また、これらの材料は1種で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
このような母材を用いて、上記所望の表面粗さを施す方法としては、たとえば、種々公知の機械方法が採用できる。たとえば、鏡面研磨であれば、布、フェルト、皮などにバフ研磨剤を塗布したバフを用いて、装飾品用母材の表面を研磨することで得られる。また、バフや砥石の種類や、使用する研磨剤の材質や粒度を変えて、粗い面から鏡面へと仕上げていくことが好ましい。使用する研磨剤は、粗い面から鏡面になるにしたがい、粒度が細かいものを使用することが好ましい。なお、研磨剤としては、後述の砥粒を用いることができる。
【0028】
金属や、合金としては、具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトなどが挙げられる。これらの金属や、合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
中でも、量産が可能で、本発明に係る微細な模様付け加工が施しやすいことから、チタン、チタン合金、ステンレス鋼が好ましい。
【0030】
また、金属や、合金からなる装飾品用母材には、後述の微細な模様付け加工を施した表面以外の表面に、必要に応じて各種手段により、鏡面、梨地、ヘアーライン模様、ホーニング模様、型打ち模様及びエッチング模様の中から選ばれる少なくとも1つの表面仕上げが施されていてもよい。このような模様と、本発明に係る美的処理を施した模様とを組み合わせることで、時計部品は、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を得ることができる。このような表面仕上げとしては、たとえば、ヘアーライン模様であれば公知の機械加工、具体的には、ワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を使用して微細な溝を作ることにより模様付けを行うことができる。その他の方法も、従来公知の機械加工によりなされる。
【0031】
セラミックスとしては、具体的には、ジルコニアセラミックスなどが挙げられる。このジルコニアセラミックスは、その組成が酸化イットリウム(Y2O2)または他の安定化剤(たとえば酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO))を3〜7重量%含む安定化ジルコニアで、白色色調を呈している。より具体的に説明すると、このジルコニアセラミックスは、ジルコニアおよびバインダーを主成分とし、酸化イットリウム等の安定化剤を3〜7重量%含んだ安定化ジルコニア粉末100重量部に対して、バインダーを20〜25重量部含んでおり、焼成後に白色色調を呈する。バインダーとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアセテート、ブチルメタクリレート、ポリアセタール、ワックスおよびステアリン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種を混合したものがよい。
【0032】
また、本発明に係る装飾品用母材、たとえば時計ケース用母材は、ジルコニアおよびバインダーを主成分とする素材を用いて射出成形により時計ケースの形状を有する成形体を作った後、この成形体を機械加工により粗加工、さらに、この粗加工した成形体を脱脂および焼成して時計ケースの粗基材を作り、次いで、この粗基材を研削および研磨等の機械加工することにより製造される。また、本発明においては、射出成形と同時に、母体に美的処理を施すこともできる。具体的には、金型に、本発明に係る特定の砥粒を含む研磨手段を施し、射出成形と共に微細な模様付け加工を施すことで、所望の模様部を転写することができる。電気鋳造を行う場合であれば、母型に特定の砥粒を含む研磨手段を施し、微細な模様付け加工を施すことで、模様部を施すことも可能である。
【0033】
また、装飾品用母材としては、前述の表面硬度および表面粗さを有する限り、後述する、黒色を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、白色(銀色)を有するプラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、アクリル樹脂などのクリアー塗装からなる被膜または様々なカラーを有するアルマイト被膜を被覆していてもよい。被覆する被膜に制限はなく、このような母材に、本発明に係る研磨手段で微細な模様付け加工を施すことで模様部を設けることにより、模様自体が織り成す立体感や存在感に、様々なカラーを付与することができるため、さらなる高級感を有する幻想的な時計部品を得ることができる。なお、これらの被膜は、装飾品用母材に対して、乾式メッキ法により、1層または2層以上、被膜することができる。なお、乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。また、被膜の厚みは、得られる時計部品のデザインによっても異なり、特に限定されないが、通常0.001〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲である。また、被膜と母材との密着性を付与するための被膜については、後述のチタン被膜やシリコン被膜を用いることができる。
【0034】
本発明においては、予め装飾品用母材表面を従来公知の有機溶剤等で洗浄・脱脂しておくことが好ましい。
【0035】
(模様部)
本発明に係る模様部は、本発明に係る装飾品用母材に、JIS R 6001に記載されている、粒度80〜3000、好ましくは100〜2000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られる。
【0036】
砥粒の粒度は、80未満であると、母材表面から深さ0.10μm以上を研磨してしまうおそれがあり、3000を超えると、装飾品用母材に所望の模様付けを施すことができないおそれがある。また、本発明において、粒度は、母材の硬度、模様部のラインの幅やサイズなどを考慮して、適宜選択される。粒度は、母材に対しては特に限定されないが、硬い母材の場合は砥粒が大きいもの、柔らかい母材の場合は砥粒が小さいものを使用することが好ましい。
【0037】
本発明では、砥粒の粒度が上記範囲を満たす限り、種々公知の砥粒を用いることができ、たとえば、砥粒の種類として、アルミナ系や炭化ケイ素系などが挙げられる。アルミナ系としては、A(アランダム)、WA(ホワイトアランダム)、PA(ピンクアランダム)、HA(解体型アルミナ)、AE(人造エメリー)、AZ(アルミナジルコニア)などが挙げられる。炭化ケイ素系としては、C(カーボランダム)、GC(グリーンカーボランダム)などが挙げられる。また、ダイヤモンドやCBNなどの超砥粒を用いることができる。
【0038】
また、本発明では、得られるデザインに応じて、粒度の異なる砥粒を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、砥粒には、本発明の目的を損なわない範囲で、種々公知の研磨液や結合剤などが含まれていてもよい。
【0040】
本発明に係る研磨手段は、特に限定されないが、母材より柔らかい手段を選択することが好ましい。たとえば、JIS K 6253に準拠して測定して得られた硬度であれば60以上100以下、好ましくは60以上90以下、より好ましくは60以上70以下、JIS K 5600−5−4に準拠して測定して得られた鉛筆硬度であればHB〜6Hなどである。研磨手段の硬度が、上記範囲にあると、後述の微細な模様付け加工を施しやすくなるので好ましい。また、研磨手段は、所望する模様部が、母材表面からみて、面積が大きいものであれば、より硬度が低いものを、面積が小さいものであれば、より硬度が高いものを使用することが好ましい。なお、研磨手段の上記硬度が、60未満であると、装飾品用母材に所望の模様付けを施すことができないおそれがあり、100を超えると、母材表面から深さ0.10μm以上研磨してしまうおそれがある。また、それぞれの硬度は、研磨手段の材質に応じて、測定される。
【0041】
研磨手段としては、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、豚、羊や山羊などの毛、人の毛髪、鳥の羽毛、綿や麻など植物由来の繊維、ポリエステルなどの合成繊維、木材、天然ゴム、シリコーンゴムやオレフィン系エラストマーなどの合成ゴム、アクリル樹脂、ポリエステルやポリウレタンなどの合成樹脂など、材料そのものを用いて、これらの材料を含む道具、冶具、器具、装置などを用いることが挙げられる。すなわち、本発明では、羽毛やシリコーンゴムなど材料(素材)そのものも微細な模様付け加工の研磨手段として用いることができる。また、これらの材料を混合した、刷毛や筆なども用いることができる。なお、これらの研磨手段は、適宜デザインに応じて、組み合わせて用いることができる。なお、研磨手段としては、砥石、バフ、シリコーンゴムや刷毛などが好ましい。
【0042】
本発明に係る微細な模様付け加工とは、特定の砥粒を含む研磨手段を用いて、母材表面に、母材表面から特定の深さを有する模様部を施すことを言う。なお、本発明において、模様とは、文字や、数字なども含む。
【0043】
本発明に係る模様付け加工では、従前の目付けや研磨方法と異なり、得られる模様部の深さ、幅、方向などが一様でなく、所望に応じて、様々な模様部を施すことが可能である。さらに、模様部は、微細な模様付け加工により、平面的な母材だけでなく、曲面を有する母材に対しても、母材の形状に関係なく、施すことが可能である。このように模様部を柔軟に、幾重にも重ねて施すことができるため、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ外観(デザイン性)を有する時計部品を得ることができる。
【0044】
また、模様付け加工としては、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を含むことが好ましい。なお、これらの操作は、適宜デザインに応じて、母材に対して、研磨手段に対して、または両方に対して、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。このような操作を含むことで、時計部品は、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさを有するだけでなく、さらなる、華やかさ、艶やかさ、やわらかさや硬さ、深み、趣、質感など、様々な表現を併せ持つ極めて美しい外観(デザイン性)を得ることができる。また、模様付け加工は、ロボットなどの機械を用いても行える。
【0045】
また、このような模様付け加工を施して得られる模様部は、JIS B 0601−2000に準拠して得られた母材の表面から深さ(Rz:最大高さ)0.001μm以上0.10μm未満、好ましくは0.01以上0.09μm以下、より好ましくは0.04以上0.08μm以下にある。
【0046】
模様部が、装飾品用母材の表面から深さ0.001μm未満では、模様として視認できず、また、0.10μm以上では、光のコントラストが強く視認されるため、模様自体が織り成す立体感や存在感、高級感を得ることができない。また、母材の表面から深さが0.04〜0.08μmであれば、より模様部が織り成す立体感を有する外観を得ることができる。
【0047】
また、本発明において、前記表面粗さを有する装飾品用母材に対して、模様部における装飾品用母材の表面から深さは、上記範囲内であれば、模様自体が織り成す立体感や存在感を得ることができるが、好ましくは、表面粗さ0.01〜0.05μm、より好ましくは0.01〜0.03μmを有する母材を用いて、母材の表面から深さが、好ましくは0.01〜0.09μm、より好ましくは0.04〜0.08μmの模様部を施すと、より模様部の織り成す立体感を強調することができる。
【0048】
模様部は、装飾品用母材の表面上の同一または異なる位置に、1個以上有することが好ましく、少なくとも2個以上有することがより好ましい。模様部の個数は、本発明の目的を損なわない限り、デザインに応じて、特に限定されない。また、模様部は、母材の表面からの深さが上記範囲を満たす限り、母材表面からみて、同一箇所に施されていてもよいし、異なる位置に施されていてもよく、また、同一箇所および異なる位置に施されていてもよく、施す位置に限定されない。また、模様部は、模様部(1)を施した後に、装飾品用母材の表面から見て、重なっている部分を有するように模様部(2)を施すと、得られる時計部品は、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有するため、好ましい。また、模様部を施すときに、母材表面に対して、研磨手段の角度を変化させる(他方向から施す)と、光の反射方向および反射率が多岐にわたり、より幻想的な時計部品を得ることができる。さらに、母材表面において、模様部が幾重にも重なっている部分を有すると、得られる時計部品は、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的な美しさ、華やかさ、艶やかさ、深み、趣、質感などを得ることができるので、より好ましい。なお、重なりとは、本発明の目的を損なわない限り、たとえば、模様部(1)が施された箇所に、次いで、模様部(2)を模様部(1)よりも深く、または浅く、あるいは同一の深さに施す、すなわち、空間的に重なりを有するように施すことも含む。また、本発明に係る微細な模様付け加工により、模様部を、同時に、同一および/または異なる位置に施す場合も、本発明に含まれる。すなわち、本発明に係る微細な模様付け加工により、模様部を少なくとも2個以上施す場合、本発明の目的を損なわない限り、それらの模様部を同時に施しても構わない。
【0049】
また、模様部の表面上の大きさは、母材の表面からの深さが上記範囲を満たす限り、特に限定されないが、少なくとも1個は、縦0.20mm以上、好ましくは縦0.30mm以上、より好ましくは縦1.0mm以上、横2.0mm以上、好ましくは横3.0mm以上、より好ましくは横4.0mm以上である。このような模様部を母材の表面に施すと、得られる時計部品は、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感を有するため、好ましい。なお、本発明において、模様部の大きさは、母材の表面から見て、模様部の一番長い部分を模様部の縦の寸法として測り、その縦軸に対して、直交し、かつ、一番長い部分を、横の寸法として測ったときの値である。また、模様部(1)と模様部(2)との間隔は、母材の表面から見て、模様部における縦と横の直交する点をO点としたとき、模様部(1)のO点から模様部(2)のO点までの長さとして測定することができる。
【0050】
また、本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、装飾品用母材の表面からみて、模様部と同一または異なる位置に、装飾品用母材の表面から深さ0.001μm未満または、0.10μm以上の模様が施されていてもよい。
【0051】
(時計部品の美的処理方法)
本発明では、本発明の時計部品の美的処理方法を用いることで、時計部品に、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感、すなわち、見る角度によって反射(率)が異なることに起因して、全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを付与することができる。
【0052】
(被膜)
母材に模様付け処理を施して得られた模様部は、非常に微細で、繊細であるため、多少の衝撃でも、デザイン的価値を喪失するおそれがある。そのため、本発明の美的処理が施された時計部品では、前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることが好ましい。また、時計部品の製造方法では、模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことが好ましい。
【0053】
装飾品用母材の表面に被覆できる被膜としては、種々公知の被膜を用いることができるが、たとえば、図8に示すように、黒色を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、白色(銀色)を有するプラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、アクリル樹脂などのクリアー塗装からなる被膜または様々なカラーを有するアルマイト被膜が、模様自体が織り成す立体感や存在感に、様々なカラーを付与することができるため、好ましい。このような被膜は、1種単独で、または2種以上組み合わせて、デザインに応じて適宜用いることができる。また、被膜はこのように様々な色調を有するため、得られる時計部品は、様々なカラーを付与することができるため、模様自体が織り成す立体感、存在感および高級感に、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な外観を有する。被膜としては、特にDLCからなる被膜、プラチナからなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金からなる被膜または金合金からなる被膜が好ましく、まるで宇宙から飛来する隕石をイメージするかのような、極めてロマンあふれる時計部品を得ることができる点でDLCからなる被膜が、また、まるで結晶の群生をイメージするかのような、極めて神秘的な輝きを有する時計部品を得ることができる点で、プラチナからなる被膜またはプラチナ合金からなる被膜がより好ましい。
【0054】
本発明において、被膜の厚みは、得られる時計部品のデザインによっても異なり、特に限定されないが、通常0.001〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲である。この範囲であれば、模様部を視認できる。
【0055】
黒色を呈するダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は、美的処理が施された装飾品用母材とダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、密着性の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された、シリコン被膜もしくはシリコンカーバイド被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用母材の表面に、チタン被膜、シリコン(シリコンカーバイド)被膜およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.8μmであり、シリコン被膜層の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.8μmであり、DLC被膜の厚みは、通常0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmである。
【0056】
また、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜は、装飾品用母材とプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜との間に、密着性および色調の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用母材の表面に、チタン被膜、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜、およびプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.02〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmであり、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜の厚みは、通常0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmであり、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜の厚みは、通常0.005〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.1μmである。なお、プラチナ合金としては、特に白色を有するプラチナ−パラジウム(Pt−Pd)合金が挙げられるが、その他の色を呈するプラチナ−金(Pt−Au)合金などでもよい。
【0057】
また、乾式メッキ法により、装飾品用母材の表面に、金色色調を呈する、金(Au)からなる被膜または金合金からなる被膜を被覆することも好ましい。金合金としては、金と全率固溶する元素を選択することが望ましく、得られた金合金は、薄膜にしても緻密な膜となるため、耐食性に優れ、変色などを起しにくく、信頼性が高い。このような金合金としては、金-ニッケル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合金、または金-ロジウム(Au-Rh)合金が挙げられる。これらの金合金は、時計部品に対して、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。なお、これらの金合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
なお、乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0059】
クリアー塗装からなる被膜は、通常、母材に対して、スプレー塗装をすることで得ることができる。クリアー塗料は、特に限定されないが、主樹脂の成分としてはアクリル系樹脂、副主樹脂の成分としてはポリエステル系樹脂、硬化材としてイソシアネート樹脂、溶剤としては低沸点の炭化水素系溶剤などからなるものが好ましい。また、クリアー塗装を施すにあたり、公知のベース塗装を施すことが好ましい。
【0060】
様々なカラーを有するアルマイト被膜は、種々公知の手法により、母材に被覆される。アルマイト被膜としては、白アルマイト被膜、着色(カラー)アルマイト被膜、硬質アルマイト被膜、テフロン硬質アルマイト被膜などが挙げられる。
【0061】
(機械加工)
前述のようにして被膜を塗布して得られた時計部品は、さらに、機械加工により粗加工、この粗加工した成形体を脱脂および焼成して所望の粗基材を作り、次いで、この粗基材を研削、バフ研磨等の公知の機械加工を施し、外観をより美しくすることが好ましい。
【0062】
<美的処理が施された時計部品>
本発明の美的処理が施された時計部品は、従来にない、全く新しい模様自体が織り成す立体感、存在感及び高級感、すなわち、見る角度によって全く違う表情を醸し出し、見るものを凌駕するような神秘的、幻想的な美しさを有する。
【0063】
このような本発明の時計部品は、時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズ、などに好適に用いることができる。
【0064】
また、本発明を応用することで、万年筆やボールペンなどの筆記具、ピアス、イヤリング、指輪、メガネフレーム、ペンダント、ブローチ、ネックレス、ブレスレットなどの装飾品にも本発明に係る美的処理を施すことができる。
【実施例】
【0065】
本発明を以下の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって何等制限されるものではない。評価法、時計部品の製造法を下記に示す。
【0066】
(評価)
(1)装飾品用母材の表面粗さ
装飾品用母材の表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601(2001)に準拠して、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定を行った。
【0067】
(2)模様部の表面深さ
母材表面からの模様部の深さ(Rz)は、JIS B 0601(2001)に準拠して、(株)小坂研究所製サーフコーダSE−D30Hを用いて測定を行った。
【0068】
(3)模様部の寸法(縦×横)、および模様部同士の間隔
得られた模様部において、母材表面上の一番長い部分を、模様部の縦の寸法として測り、その縦軸に対して、直交し、かつ、一番長い部分を、横の寸法として測った。なお、模様部における縦と横の直交する点をO点とした。
【0069】
また、模様部と模様部との間隔は、O点からO点までの長さとした。
【0070】
(4)模様部の観察
(4−1)観察方法(1)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0071】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、下記の基準にて評価した。
【0072】
◎:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、もっともよい状態である。
○:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、よい状態である。
△:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有し、手触り感が、ややよい状態である。
×:基準の母材に対し、立体感、存在感、高級感を有さず、手触り感が、悪い状態である。
【0073】
(4−2)観察方法(2)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.005μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0074】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、上記の基準にて評価した。
【0075】
(4−3)観察方法(3)
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.09μmの基準となる腕時計ケース用装飾品母材を得た。
【0076】
この基準となる母材と得られた時計部品とを、双眼鏡(倍率:3倍)を用いて、5人の判定人によって目視により比較し、上記の基準にて評価した。
【0077】
〔実施例1〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0078】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度1000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材の表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を、3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0079】
〔実施例2および3〕
実施例2として、母材表面からの深さが0.005、0.01および0.02μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
【0080】
実施例3として、母材表面からの深さが0.06、0.07および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
【0081】
得られたそれぞれの模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例4〕
母材表面からの深さが0.02を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部、母材表面からの深さが0.05を有する、縦2.0mm、横20.0mmの微細な模様部および母材表面からの深さが0.09を有する、縦5.0mm、横10.0mmの微細な模様部を、母材平面に対して、重なりを有するように模様付け加工を行った以外は、実施例1と同様にして、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0083】
〔実施例5〕
砥石を手によりスライドさせた以外は、実施例1と同様にして、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例6〕
ステンレス鋼(SUS316L)を、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0085】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度500の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの所望の深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0086】
〔比較例1〕
母材表面からの深さが0.1μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
【0087】
〔比較例2〕
粒度4000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石を用いた以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
得られた模様部は、非常に見えにくかった。
【0088】
〔比較例3〕
粒度70の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石を用いた以外は、実施例1と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(1)を用いて観察を行った。結果を表1に示す。
得られた模様部は深すぎであったため、キラツキ感のみであった。
【0089】
【表1】
【0090】
〔実施例7〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.005μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0091】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度2000の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0092】
〔実施例8〕
母材表面からの深さが0.001、0.05および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例4と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0093】
〔比較例4〕
母材表面からの所望の深さが0.1μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例4と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(2)を用いて観察を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
〔実施例9〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.09μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0096】
続いて、該母材の表面上の異なる位置に、粒度80の砥粒(材質:アランダム)を含む砥石で、該母材に対して砥石を回転させることで、母材表面からの深さ(0.02、0.03および0.05μm)を有する、縦0.2mm、横2.0mmの微細な模様部の模様付け加工を3箇所施した。なお、模様部と模様部との間隔は、1mmであった。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0097】
〔実施例10〕
母材表面からの深さを0.001、0.05および0.09μmを有する微細な模様付け加工を施した以外は、実施例6と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0098】
〔比較例5〕
母材表面からの所望の深さを0.5μmを有する微細な模様付け加工を3箇所施した以外は、実施例6と同様に模様付け加工を行い、模様部を得た。
得られた模様部に対して、観察方法(3)を用いて観察を行った。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
〔実施例11〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0101】
続いて、該母材の表面上の同じ位置および異なる位置に、粒度100〜1000の様々な砥粒を含む研磨手段で、母材表面からの深さ0.001以上0.10μm未満を有する、様々な微細な模様付け加工を施し、様々な模様部を有する時計部品を得た。なお、模様付け加工は、母材に対して研削手段を回転、スライド、振動および手技を用いて行った。
【0102】
続いて、該時計部品を有機溶剤で洗浄・脱脂し、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
【0103】
<成膜条件>
ターゲット:チタン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.02Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
次いで、このチタンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmのシリコンメッキ被膜をスパッタリング法(マグネトロンスパッタリング方式)により下記の成膜条件で形成した。
【0104】
<成膜条件>
ターゲット:シリコン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
スパッタガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.05Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
次いで、このシリコンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmの黒色のダイヤモンドライクカーボン(DLC)メッキ被膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により下記の成膜条件で形成した。
【0105】
<成膜条件>
ガス:ベンゼン
成膜圧力:0.2Pa
フィラメント電流:20A
アノード電流:2.0A
カソード電圧(加速電圧):−1.0〜−5.0kV
【0106】
このようにして、黒色を呈する腕時計用の部品を得た。得られた部品について、図2に示した。
図2に示すように、得られた時計部品は、まるで宇宙から飛来する隕石をイメージするかのような、極めてロマンあふれる外観を有した。
【0107】
〔実施例12〕
純チタン丸棒を用いて、機械加工により腕時計ケース用装飾品母材を成型した。該母材に鏡面仕上げを施し、表面粗さが、0.01μmの腕時計ケース用装飾品母材を得た。その後、該母材を、有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0108】
続いて、該母材の表面上の同じ位置および異なる位置に、粒度100〜1000の様々な砥粒を含む研磨手段で、母材表面からの深さ0.001以上0.10μm未満を有する、様々な微細な模様付け加工を施し、様々な模様部を有する時計部品を得た。なお、模様付け加工は、母材に対して研削手段を回転、スライド、振動および手技を用いて行った。
【0109】
続いて、該時計部品をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
次いで、これらの基材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0110】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0111】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0112】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0113】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0114】
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0115】
このようにして、ステンレス鋼色を呈する腕時計用の部品を得た。得られた部品について、図3に示した。
図3に示すように、得られた時計部品は、まるで結晶の群生をイメージするかのような、極めて神秘的な輝きを有した。
【符号の説明】
【0116】
1 模様部(1)
2 模様部(2)
3 装飾品用母材
4 研磨手段
5 砥粒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、
該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有する
ことを特徴とする美的処理が施された時計部品。
【請求項2】
前記模様部が、前記装飾品用母材の表面から見て、少なくとも2個以上重なっている部分を有することを特徴とする請求項1に記載の時計部品。
【請求項3】
前記模様付け加工の研磨手段が、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、毛、羽毛、繊維、木材、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂から選ばれる1種以上の材料であるか、または該材料を含んで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の時計部品。
【請求項4】
前記模様付け加工が、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を行うことを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項5】
前記装飾品用母材の模様付け加工前の表面粗さが、0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項6】
前記模様部の少なくとも1個が、縦0.20mm以上、横2.0mm以上および該母材の表面から深さ0.001μm以上0.10μm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項7】
前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項8】
前記被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、プラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、クリアー塗装からなる被膜またはアルマイト被膜から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7に記載の時計部品。
【請求項9】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(1)を設け、
次いで、該模様部(1)と同一または異なる位置に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(2)を設ける工程を含む
ことを特徴とする美的処理が施された時計部品の製造方法。
【請求項10】
模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の時計部品の製造方法。
【請求項11】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を設けることを特徴とする時計部品の美的処理方法。
【請求項1】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施して得られ、
該母材の表面上の同一または異なる位置に、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を、少なくとも2個以上有する
ことを特徴とする美的処理が施された時計部品。
【請求項2】
前記模様部が、前記装飾品用母材の表面から見て、少なくとも2個以上重なっている部分を有することを特徴とする請求項1に記載の時計部品。
【請求項3】
前記模様付け加工の研磨手段が、砥石、バフ、研磨液、水、有機溶剤、毛、羽毛、繊維、木材、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂から選ばれる1種以上の材料であるか、または該材料を含んで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の時計部品。
【請求項4】
前記模様付け加工が、前記装飾品用母材に対して前記研磨手段を相対的に、回転、スライド、振動または手技の、少なくともいずれかの操作を行うことを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項5】
前記装飾品用母材の模様付け加工前の表面粗さが、0.001μm以上0.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項6】
前記模様部の少なくとも1個が、縦0.20mm以上、横2.0mm以上および該母材の表面から深さ0.001μm以上0.10μm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項7】
前記模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆して得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の時計部品。
【請求項8】
前記被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、プラチナ(Pt)からなる被膜、プラチナ合金からなる被膜、金(Au)からなる被膜、金合金からなる被膜、クリアー塗装からなる被膜またはアルマイト被膜から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7に記載の時計部品。
【請求項9】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(1)を設け、
次いで、該模様部(1)と同一または異なる位置に、粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部(2)を設ける工程を含む
ことを特徴とする美的処理が施された時計部品の製造方法。
【請求項10】
模様付け加工を施した後に、装飾品用母材の表面に被膜を被覆する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の時計部品の製造方法。
【請求項11】
JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた表面粗さ(Ra)が0.10μm未満である装飾品用母材の表面上に、
粒度80〜3000の砥粒を含む研磨手段で微細な模様付け加工を施すことにより、JIS B 0601−2001に準拠して測定して得られた該母材の表面から深さ(Rz)0.001μm以上0.10μm未満の模様部を設けることを特徴とする時計部品の美的処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−163815(P2011−163815A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24412(P2010−24412)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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