説明

暖房便座装置及びトイレ装置

【課題】温風を循環させた暖房を可能としつつ、便座の内部に残った水を確実且つ容易に排出可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供する。
【解決手段】外部から空気を取り込む吸引口と、外部に空気を排出する排出口と、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記空気の流れる風路を切り替える風路切替手段と、前記送風部、前記加熱部及び前記風路切替手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記風路切替手段を制御することにより、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から外気を導入し前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路を介して前記排出口から排出させる排気モードと、を実行可能とし、便座を乾燥させる指令に基づいて、便座乾燥動作として前記排気モードを実行することを特徴とする暖房便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置及びトイレ装置に関し、より具体的には、温風により便座を暖房する暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器の便座を暖房できると、気温の低い冬場などでもトイレを快適に使用することができる。便座を暖房する手段として、温風を循環させる方法がある。温風を循環させると、排熱を抑制し少ないヒータパワーで効率的に便座を暖房することが可能となる。
【0003】
またさらに、このように温風を循環させる暖房便座装置であって、便座を着脱自在にしたものが開示されている(特許文献1)。便座を取り外せると、便座の取り付け部を清掃できるばかりでなく、取り外した便座を水などで丸洗いすることも可能となり、清潔な状態を容易に維持することができる。
【特許文献1】実開平5−237047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温風により暖房する便座装置において便座を取り外して水で丸洗いした場合、便座の内部に水が残ることが考えられる。特に、温風を循環させる暖房便座装置の場合、便座の内部に残った水は外部に排出されにくい。そして、便座の内部に水が残ると、温風による暖房効率を低下させ、またヒータなどの部品が劣化したり、カビや臭気の発生などが懸念される。
本発明は、温風を循環させた暖房を可能としつつ、便座の内部に残った水を確実且つ容易に排出可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、外部から空気を取り込む吸引口と、外部に空気を排出する排出口と、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記空気の流れる風路を切り替える風路切替手段と、前記送風部、前記加熱部及び前記風路切替手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記風路切替手段を制御することにより、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から外気を導入し前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路を介して前記排出口から排出させる排気モードと、を実行可能とし、便座を乾燥させる指令に基づいて、便座乾燥動作として前記排気モードを実行することを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、外部から空気を取り込む吸引口と、外部に空気を排出する排出口と、送風部と、前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、内部に便座内風路を有する便座と、前記空気の流れる風路を切り替える風路切替手段と、前記送風部、前記加熱部及び前記風路切替手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記風路切替手段を制御することにより、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から前記送風部と前記加熱部を介して前記便座内風路に外気を導入し前記排出口から排出させる排気モードと、を実行可能とし、便座を乾燥させる指令に基づいて、便座乾燥動作として前記循環送風モードと前記排気モードとを実行することを特徴とする暖房便座装置が提供される。
【0007】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、便器と、前記便器の上に設けられた上記のいずれかの暖房便座装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温風を循環させて暖房を可能としつつ、便座の内部に残った水を確実且つ容易に排出可能とした暖房便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【0010】
本具体例の暖房便座装置は、水洗便器300の上部に設けられたケーシング500を有する。なお、水洗便器300の洗浄機構としては、いわゆる「ロータンク式」でもよく、あるいはロータンクを用いない「水道直圧式」であってもよい。
【0011】
ケーシング500には、便座410及び便蓋400がそれぞれ開閉自在に軸支されている。これら便座410及び便蓋400は、手動により開閉できるとともに、電動開閉機構により自動的に開閉可能としてもよい。また、便座410はケーシング500から着脱自在とされている。そして、本実施形態においては、ケーシング500に温風供給手段550が設けられ、便座410の中に温風を導入することにより便座410の暖房が可能とされている。
【0012】
またさらに、ケーシング500には、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、この暖房便座装置は、便座410に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する吐水ノズル615を有する洗浄機能部などを適宜備える。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。そして、本具体例の暖房便座装置は、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる温風乾燥機能を備える。またさらに、便器のボウル内の空気を吸い込み、フィルタや触媒などを介して臭気成分を低減させる脱臭機能や、トイレ室内に温風を吹き出してトイレ室を暖房する室内暖房機能などを有するものとすることができる。これらの動作は、例えば、ケーシング500とは別体として設けられたリモコン200により操作可能としてもよい。ただし、本発明においては、吐水ノズル615やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよく、便座410の温風暖房機構と、温風乾燥機能などの人体に向けて温風を噴出する機能部と、が設けられていればよい。
【0013】
図2は、本実施形態の便座暖房機構を表す概念図である。なお、図2以降の各図においては、既出の図面について説明したものと同様の要素、ステップには同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
ケーシング500の中には、温風供給手段550として、例えば、ファン552とヒータ554とが設けられている。ファン552から送出された空気はヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、便座410の中に導入される。便座410の中には、温風の風路としての便座内風路412が形成されており、送出部560から便座410の便座内風路412に導入された温風は、便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500の温風供給手段550に戻る。すなわち、本具体例の便座暖房機構は、温風供給手段550、送出部560、便座内風路412、戻入部570、温風供給手段550という循環路を形成し、温風がこの循環路を繰り返し流れるようにされている。このようにすれば、排熱を抑制して熱効率の優れた温風暖房が可能となる。そして、この温風暖房機構の動作は、例えばリモコン200により制御可能とされている。すなわち、リモコン200に便座410の温度を表示させたり、温度を設定可能とすることができる。
【0014】
送出部560においては、ケーシング500の側に温風の吹出口が設けられ、便座410の側にも、この吹出口に対応した導入口が設けられている。戻入部570についても、便座410の側に温風の吹出口が設けられ、ケーシング500の側も、これに対応した導入口が設けられたものとすることができる。なお、後に図4に関して説明するように、戻入部570は送出部560に隣接させてもよい。
【0015】
以上説明したように、本具体例においては、便座410の中に温風を循環させて暖房可能とされている。温風を循環させることにより、排熱を抑制して高い効率で便座410を暖房することが可能となる。
また、便座410を温風で暖房するので、ヒータの配線などを便座410に接続する必要がない。このため、便座410をケーシング500から取り外す際にも、簡単に取り外し、再装着することができる。また、取り外した便座410を水などで丸洗いすることもできる。このようにすれば、常に清潔で衛生的な状態を容易に維持できる。
【0016】
ただし、便座410を取り外して水などで洗ったような場合、その内部すなわち便座内風路412に残った水を完全に取り除くことは容易ではない。これに対して、本実施形態においては、便座乾燥動作を実行可能とされ、取り外して水洗いなどした便座410の内部に残った水を確実且つ容易に排出できる。
以下、本実施形態の暖房便座装置の構成とその動作について説明する。
図3は、本実施形態にかかる暖房便座装置のブロック図である。なお、同図においては、各要素間の電気的な接続を実線で表し、風路を破線で表した。
ケーシング500には、風路の上流側から順に、第1温度検知部540、ダンパ(風路切替手段)548、ダンパ(風路切替手段)546、送風部552、加熱部554、第2温度検知部542が設けられている。制御部510は、第1温度検知部540と第2温度検知部542の検出結果に基づき送風部552、加熱部554などの動作を制御する。なお、これら各要素の配置関係やダンパの数などについては、種々の変更を加えたものも本発明の範囲に包含される。
そして、本具体例においては、便座着脱検知部520、タイマー522、カウンタ524、人体検知部526、残水検知部528が設けられている。これら各要素については、後に詳述する。なお、図8は一例に過ぎず、本発明の暖房便座装置がこれらの要素を全て具備する必要はない。
【0017】
図4は、本実施形態の暖房便座装置において便座乾燥動作に伴う温風の風路の切替を説明するための模式図である。
【0018】
ケーシング500には、外気を取り込む吸引口580と、空気を排出する排出口582と、が設けられている。これら吸引口580と排出口582は、例えばケーシング500の後方(使用者から見て背面側)や側面などに設けることができる。または、後に詳述するように、排出口582を便器300のボウルに向けて設けてもよい。
そして、これら吸引口580と排出口582に連通する風路には、開閉自在のダンパ546、548がそれぞれ設けられている。そして、これらダンパ546、548により開閉される風路の途上には、温風供給手段550として、例えば、ファン(送風部)552とヒータ(加熱部)554とが設けられている。
【0019】
図4(a)に表したように、循環送風モード(便座暖房運転)においては、ダンパ546、548がそれぞれ閉じられた状態とされ、送風が環流される循環風路が形成される。この状態で、ファン552から送出された空気がヒータ554により加熱されて温風が生成され、この温風は送出部560を介して、便座410の中に導入される。便座410の中には、仕切り418により区画された温風の便座内風路412が形成されている。送出部560から便座410の風路412に導入された温風は、矢印で表したように便座410の中を流れ、戻入部570を介してケーシング500のファン552の上流側に戻る。
【0020】
一方、図4(b)に表したように、排気モードにおいては、ダンパ546、548が開かれた状態とされる。すると、ファン552により吸引口580から導入された外気がヒータ554により暖められて温風が生成され、便座内風路412を介して排出口582から外部に排出される。
【0021】
図5は、本実施形態において実行可能な便座乾燥動作の第1の実施例を表すフローチャートある。
また、図6は、本実施例に対応するタイムチャートである。
【0022】
本実施例においては、便座乾燥動作として、図4(b)に表した排気モードを実行する。
【0023】
すなわち、便座乾燥動作を開始するための指令が出されると(ステップS20)、図4(b)に表した排気モードが実行される(ステップS30)。
この時、図6に表したように、ファン552の風量とヒータ554の出力を所定のレベルとし、ダンパ546、548を開くことにより、図4(b)に表した排気モードが開始される。
【0024】
本発明者の検討の結果によれば、例えば、第2温度検知部(図3及び図4参照)における検出温度を60℃〜70℃程度にすると、暖房便座装置の各部に熱的な劣化や損傷などを与えることなく、短時間で便座410の中の水を排出できる。
このようにして排気モードで運転をすることにより、便座410を水洗いなどした後に便座内風路412に残った水を蒸発させ、排出口582から外部に排出できる。なお、排気モードにおいて、ファン552の風量とヒータ554の出力を高くするほど、便座410の中に残った水を短時間で迅速に排出できる。
【0025】
便座乾燥動作を終了する指令が出されると、排気モードを終了し、便座乾燥動作が終了する(ステップS40)。すなわち、図6に表したように、ダンパ546、548が閉まり、ファン552の風量とヒータ554も停止する。あるいは、この後に、図4(a)に関して前述した循環送風モードを開始して便座410を暖房してもよい。
【0026】
ここで、本実施例において、便座乾燥動作を開始(ステップS20)または終了(ステップS40)させる指令を発する手段としては、例えば、暖房便座装置のケーシング500やリモコンに設けられたスイッチの操作を挙げることができる。
図7は、リモコン200の操作面を例示する模式図である。
リモコン200の上面には、その両端にケーシング500との通信のための赤外線透過窓231が設けられている。また、大洗浄スイッチ232、小洗浄スイッチ234、便蓋閉スイッチ236、便蓋開スイッチ238、便座開スイッチ240などがそれぞれ設けられている。
【0027】
また、リモコン200の正面にも、各種のスイッチが設けられている。そして、本具体例においては、リモコンの正面の下方に、「便座乾燥」スイッチ250が設けられている。使用者がこのスイッチ250を押すたびに指令を発して、便座乾燥動作の開始と停止とを交互に指示することができる。なお、「便座乾燥」スイッチ250が押された時に、直ちに便座乾燥動作が開始するようにしてもよいが、スイッチ250が押された後、所定時間が経過してから便座乾燥動作が開始するようにしてもよく、または、ケーシング500に設けられた人体検知部(図3参照)の検知結果を参照して、人体が非検知になったら便座乾燥動作を開始するようにしてもよい。
【0028】
一方、便座乾燥動作の開始のスイッチを他のスイッチと共用することもできる。
図8は、リモコン200の操作面を例示する模式図である。
本具体例の場合、「便座乾燥」スイッチは設けられていない。その代わりに、例えば、「おしり」を温風で乾燥をするための「乾燥」スイッチ242と「便座乾燥」スイッチと兼用させることができる。つまり、「乾燥」スイッチ242を例えば、1秒以下押すたびに、「おしり」に向けて温風が吹き出す「おしり乾燥」の運転を開始・停止させ、「乾燥」スイッチ242を5秒以上長押しするたびに指令を発して、便座乾燥動作を開始・停止させることができる。
【0029】
一方、本実施例において、便座乾燥動作を終了(ステップS40)させる指令を発する手段としてタイマー522(図3参照)を用いてもよい。
図9は、タイマーを用いて指令を発する制御のフローチャートである。
すなわち、便座乾燥動作が開始されると(ステップS20)、便座乾燥動作を実行中であるか否かを判定する(ステップS102)。これは、たとえば、図7に関して前述したリモコンのスイッチ250などによって便座乾燥動作が随時終了される可能性があるからである。
【0030】
便座乾燥動作を実行中でなければ(ステップS102:no)、プロセスを終了する(ステップS40)。一方、便座乾燥動作を実行中であれば(ステップS102:yes)、タイマー522をカウントアップし(ステップS104)、その計測値が所定の設定値を超えたか否かを判定する(ステップS106)。設定値を超えていない場合(ステップS106:no)は、ステップS102に戻り、設定値を超えた場合(ステップS106:yes)は、便座乾燥動作を終了する(ステップS40)。
このように、タイマー522により所定の設定値がカウントされたら便座乾燥動作を終了させる指令を発し、便座乾燥動作を終了させることができる。
【0031】
また一方、本実施例において、便座乾燥動作を開始(ステップS20)させたり終了(ステップS40)させる指令を発する手段として残水検知部528を用いることもできる。
ここで、残水検知部528は、便座410の中に水が残っているか否かを検知するものであり、例えば、便座内風路412を流れた温風の湿度を計測する湿度センサや、水分の存在による電気抵抗の変化を検知するセンサなどを用いることができる。また、第1温度検知部540による検知の結果と、ファン552及びヒータ554への出力と、から水の存在を間接的に把握するものであってもよい。すなわち、ファン552やヒータ554への出力が同一であっても、便座410の中に水が残っていると、第1温度検知部540における検出値は通常よりも低くなる傾向がある。従って、これらの関係を調べることにより、便座410の中に水が残っているか否かを推定することができる。
【0032】
図10は、残水検知部528を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
すなわち、残水検知部528が水の有無を検知する(ステップS112)。そして、水があると判定した場合(ステップS112:yes)は、便座乾燥動作が開始される指令を発し、便座乾燥動作を開始する(ステップS20)。残水検知部528は、その後さらに水の有無を検知し(ステップS114)、水が無いと判定する(ステップS114:yes)と、便座乾燥動作を終了する指令を発し、便座乾燥動作を終了する(ステップS40)。このようにすれば、便座410の中に水があると便座乾燥動作を開始させ、水なくなったタイミングで便座乾燥動作を終了させることができる。
なお、例えばリモコンのスイッチ250の操作などで便座乾燥動作を開始させ、開始した便座乾燥動作を終了させる手段として残水検知部528を利用してもよい。
【0033】
また一方、本実施例において、便座乾燥動作を開始(ステップS20)させたり終了(ステップS40)させる指令を発する手段として、便座着脱検知部520を用いることもできる。
ここで、便座着脱検知部520は、ケーシング500に便座410が取り付けられたことを検知するものであり、例えば、接触スイッチなどを用いて、便座410が取り付けられた場合には接触スイッチがオン(ON)し、便座410が取外された場合には接触スイッチがオフ(OFF)するように接触スイッチをケーシング500に配置することで構成される。または、接触スイッチの代わりにリードスイッチ等の切替スイッチや、磁気を利用したホールセンサなどの非接触式のセンサなどを用いて同様の作用をもたらすように構成してもよい。
【0034】
図11は、便座着脱検知部520を用いて指令を発する制御のフローチャートである。 便座着脱検知部520を用いて便座乾燥動作を開始させる場合には、便座着脱検知部520の検知出力がOFFからONに切替わったかどうかを判断する(ステップS112)。検知出力がOFFからONに切替わった場合には、検知出力を指令として、便座乾燥動作を実行する(ステップS20)。便座着脱検知部520によって一旦便座乾燥動作を開始させた後は、通常、前述したタイマー制御や残水検知部、若しくは後述するカウンタ等による他の指令に基づいて便座乾燥動作を終了する。また、便座着脱検知部520の検知出力がOFFからONに切替わったかどうかを判断し(ステップS114)、OFFからONに切替わった(ステップS114:yes)ことに基づいて便座乾燥動作を終了する指令を発して便座乾燥動作を終了する(ステップS40)こともできる。このようすれば、不意に便座410がケーシング500から外れた場合などに便座乾燥動作を自動的に停止させることができる。
【0035】
一方、以上説明した便座乾燥動作の実行に際して、人体検知部526(図3参照)の出力も考慮することができる。
人体検知部526は、例えばケーシング500やリモコン200などに設けられたセンサであり、暖房便座装置の近傍に人体がある場合にこれを検知する人体検知センサであったり、便座410に人が座っている時にこれを検知する着座センサである。
これらのうちで、例えば、着座センサが人体を検知している時には、便座乾燥動作を禁止するようにしてもよい。こうすると、便座410に座った使用者は、便座乾燥動作に煩わされずに快適にトレイ装置を使用することができる。具体的には、便座乾燥動作の開始の指令が出された時に、着座センサが人体を検知している時には、これが非検知となるまで、便座乾燥動作の開始を保留にすることができる。また、便座乾燥動作を実行しているときに、着座センサが人体を検知したら、便座乾燥動作を中断し、着座センサが非検知となったら便座乾燥動作を再開するようにしてもよい。この場合に、例えば、図9に関して前述したタイマー522が計測している時には、タイマー522の計測も中断させ、着座センサが非検知となって便座乾燥動作を再開する時に、タイマー522の計測を再開させればよい。
【0036】
次に、便座乾燥動作の第2の実施例について説明する。
図12は、本実施形態において実行可能な便座乾燥動作の第2の実施例を表すフローチャートある。
また、図13は、本実施例に対応するタイムチャートである。
【0037】
本実施例においては、便座乾燥動作として、図4(a)に表した循環送風モードと、図4(b)に表した排気モードと、を組み合わせて実行する。
【0038】
すなわち、便座乾燥動作を開始するための指令が出されると(ステップS20)、まず図4(a)に関して前述した循環送風モードが実行される(ステップS60)。この時のファン552とヒータ554の出力は、例えば、第2温度検知部542における計測値が50℃程度とすることができる。この状態においては、温風が便座内風路412を循環するので、排熱を抑制し、少ない電力で効率よく便座内風路412に残った水を蒸発させることができる。また、排気モードと比べて、便座内風路412をより均一に加熱することができる。つまり、便座410の中に残った水をより均一に蒸発させることができる。
【0039】
次に、図4(b)に表した排気モードが実行される(ステップS70)。こうすれば、ステップS60において循環送風モードで効率よく蒸発させた水分を、排出口582から一気に外部に排出させることが可能となる。
なお、この時のファン552とヒータ554の出力は、例えば、第2温度検知部542における計測値が60℃〜70℃程度とすることができる。ファン552とヒータ554の出力を上げるのは、図5に関して前述したように、循環送風モードで便座410の中の水を蒸発させた状態で排気モードを開始した時に、吸引口580から取り込んだ外気により便座410の内部の温度が下がって内部で結露することを防ぐためである。また、ファン552の風量とヒータ554の出力を増加させたほうが、便座内風路412に残った水分を迅速に蒸発させ排出口582から外部に排出できる。なおこの時、図13に表したように、ファン552とヒータ554の出力を予め上げておいてから、ダンパ546、548を開くようにすると、風路を切り替えた時の温風の温度の低下を抑制できる。ただし、ファン552とヒータ554の出力を上げず、循環送風モードと同様の出力で排気モードを実行しても、蒸発した水分を外部に放出することは可能である。
しかる後に、再び循環送風モードに戻る(ステップS60)。前述したように、この状態では、排熱を抑制し、少ない電力で効率よく便座内風路412に残った水を蒸発させることができる。その後、再び排気モードを実行して蒸発させた水分を排出口582から外部に一気に排出させる(ステップS70)。このように、必要に応じて、循環送風モードと排気モードとを交互に繰り返す。
【0040】
本実施例において、循環送風モード(ステップS60)を実行する時間は、循環風路内の温度が安定し、便座内風路412の水がある程度蒸発するために必要な時間とすることが望ましく、例えば、数分〜10数分程度とすることができる。また、第1温度検知部540や第2温度検知部542の検出結果により決定してもよい。例えば、これら温度検知部のいずれかの検出値が所定の設定値に達したら、循環送風モードを終了し排気モードに移行するようにしてもよい。
【0041】
一方、排気モード(ステップS70)を実行する時間は、循環送風モードにより蒸発させた水分を排出口582から排出させるために必要な時間とすることが望ましい。吸引口580から外気を吸引し、便座内風路412を介して排出口582から排出させるまでの時間は、概ね0.5秒程度のオーダーであるので、排気モード(ステップS70)を実行する時間は、数秒〜数分程度とすることができる。
【0042】
実施例によれば、循環送風モードにおいて熱を抑制しつつ少ない電力で効率よく便座内風路412に残った水を蒸発させ、蒸発させた水分を排気モードにより外部に一気に排出させることができる。その結果として、少ない電力で効率よく便座410を乾燥させることが可能となる。
【0043】
また、本実施例において、便座乾燥動作の開始や終了の指令を発する手段としては、図1〜図11に関して前述した各種のものを同様に用いることができる。またここで、例えば、図9に関して前述したタイマー522を用いる時には、循環送風モード(ステップS60)と排気モード(ステップS70)を実行した合計の時間を計測してもよく、これらいずれかのステップの実行時間のみを計測してもよい。
【0044】
また、本実施例においては、便座乾燥動作の開始や終了の指令を発する手段としてカウンタ524(図3参照)を用いることもできる。
図14は、カウンタ524を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
すなわち、便座乾燥動作が開始されると(ステップS20)、便座乾燥動作を実行中であるか否かを判定する(ステップS112)。これは、たとえば、図7に関して前述したリモコンのスイッチ250などによって便座乾燥動作が随時終了される可能性があるからである。
【0045】
便座乾燥動作を実行中でなければ(ステップS112:no)、プロセスを終了する(ステップS40)。一方、便座乾燥動作を実行中であれば(ステップS112:yes)、排気モード(ステップS70)が終了したか否かを判定する(ステップS114)。終了した場合(ステップS114:yes)には、カウンタ524をカウントアップする(ステップS116)。そして、カウンタ524の計測値が所定の設定値を超えたか否かを判定する(ステップS118)。超えていない場合(ステップS118:no)には、ステップS112に戻り、超えた場合(ステップS118:yes)には、便座乾燥動作を終了する(ステップS40)。
【0046】
このように、カウンタ524により排気モード(ステップS70)の実行回数を計測し、所定の設定値がカウントされたら便座乾燥動作を終了させることができる。
【0047】
その他、本実施例においても、前述したように、便座着脱検知部520、タイマー522、人体検知部526、残水検知部528などの出力に基づいて、便座乾燥動作の開始や終了あるいは中断を指令することができる。
【0048】
以下、本実施形態において採用できる他の特徴部分について説明する。
図15は、本実施形態の暖房便座装置における温風の風路の変型例を表す模式図である。すなわち、図15(a)は循環送風モードを表し、図15(b)は排気モードを表す。
本変型例においては、排出口582が便器のボウル330に向けて開口している。つまり、図15(b)に表した排気モードにおいて、吸引口580から吸引され、ファン552、ヒータ554、便座内風路412を流れた温風は、排出口582からボウル330に向けて排出される。
【0049】
このようにすると、排熱をボウル330の中に放出し、便座410を外側から加熱あるいは保温することが可能となる。特に、便座410とともに便蓋400(図1参照)も閉じられた状態においては、排出口582から排出された排熱をボウル330の中に閉じ込めることができるので、便座410の温度の低下を抑制し、その結果として、循環送風モードにおいて蒸発した水分が冷めた便座410の内部に再び結露することを防ぐこともできる。つまり、便座410の暖房効果を維持するとともに、水分の排出を促進することも可能となる。
【0050】
また、本具体例において、排出口582を、いわゆる「おしり乾燥」用のダクトと兼用してもよい。すなわち、便座410に座った使用者の「おしり」に向けて温風を吹き付けることにより、「おしり」を乾燥させることができる。本具体例においては、この「おしり乾燥」のための温風吹出ダクトと排出口582とを兼用することができる。
【0051】
図16は、本実施形態に設けることができる排水構造を例示する模式図である。
また、図17は、この排水構造の模式断面図である。
すなわち、排出口582の近傍に排水口720を設け、通水路730を接続する。通水路730は、便器300のボウル330に延在し、その先端には放水口740が設けられている。図4(b)などに関して前述した排気モードにおいては、循環送風モードにおいて蒸発した水分が排出口582を介して放出されるが、この時に、排出口582の近傍は、循環風路と比較して温度が低いために、蒸発した水分が結露することもあり得る。そこで、本具体例においては、このように結露した水分を排水口720から通水路730を介して放水口740からボウル330に排水可能とされている。このようにすれば、結露した水が暖房便座装置の内部に侵入したり、トイレの床面を濡らすことを防止できる。またここで、排水口720の周囲に水勾配Sを設けると、結露した水分を確実に排水口720に集めることができる。また、通水路730にも、放水口740に向けて例えば2/100程度の水勾配をつけると、放水口740に向けて確実に流すことができる。なお、通水路730はケーシング500の内部に設けることが望ましく、例えばケーシング500の底面にあって排水口720から放水口740へと続くように設けた溝や、同じく底面から延在するリブを用いて構成する水路を用いてもよい。
【0052】
図18は、ケーシング500と便座410の間に設けられた送出部560の断面構造を例示する概念図である。
本具体例の場合、ケーシング500には、突出したダクト562が設けられている。ダクト562の先端にはダンパ564が開閉自在に設けられている。ダクト562は、便座410を開いた状態においては後退し、ケーシング500の前端面が略平坦な面となるようにしてもよい。便座410を閉じた状態においてはダクト562は突出し、便座410に設けられた導入口414に挿入された状態となる。この状態で便座410の風路412に温風を導入することができる。また、ダンパ564の開度を制御することにより、便座内風路412の温度の均一性を向上させることも可能である。さらに、ダクト562の周囲に、弾性材料からなるパッキン568を適宜設けることにより、送出部560における温風の「漏れ」を抑制できる。また、戻入部570においても同様の構造を採用することができる。
このような構造にすれば、便座410をケーシング500から取り外して清掃や水洗いなどする際にも、簡単に取り外し、再装着することができる。
【0053】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図18に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、暖房便座装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図18に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。例えば、送出部560や戻入部570の位置は具体例において説明した構成とは異なっていても、本発明の乾燥動作を実行できればよく、送出部560や戻入部570をケーシング500が便座410を軸支する軸支部に設け、温風がケーシング500から軸支部を通り便座410に流入するような構成の便座装置であっても、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本実施形態の便座暖房機構を表す概念図である。
【図3】本実施形態にかかる暖房便座装置のブロック図である。
【図4】本実施形態の暖房便座装置において便座乾燥動作に伴う温風の風路の切替を説明するための模式図である。
【図5】本実施形態において実行可能な便座乾燥動作の第1の実施例を表すフローチャートある。
【図6】本実施例に対応するタイムチャートである。
【図7】リモコン200の操作面を例示する模式図である。
【図8】リモコン200の操作面を例示する模式図である。
【図9】タイマー522を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
【図10】残水検知部528を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
【図11】便座着脱検知部520を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
【図12】本実施形態において実行可能な便座乾燥動作の第2の実施例を表すフローチャートある。
【図13】本実施例に対応するタイムチャートである。
【図14】カウンタ524を用いて指令を発する制御のフローチャートである。
【図15】本実施形態の暖房便座装置における温風の風路の変型例を表す模式図である。
【図16】本実施形態に設けることができる排水構造を例示する模式図である。
【図17】排水構造の模式断面図である。
【図18】ケーシング500と便座410の間に設けられた送出部560の断面構造を例示する概念図である。
【符号の説明】
【0055】
200 リモコン
231 赤外線透過窓、232 大洗浄スイッチ、234 小洗浄スイッチ、236 便蓋閉スイッチ、238 便蓋開スイッチ、240 便座開スイッチ、242 スイッチ、250 スイッチ、300 水洗便器、330 ボウル、400 便蓋、410 便座、412 便座内風路、414 導入口、418 仕切り、500 ケーシング、510 制御部、520 便座着脱検知部、522 タイマー、524 カウンタ、526 人体検知部、528 残水検知部、540 第1温度検知部、542 第2温度検知部、546、548 ダンパ、550 温風供給手段、552 ファン(送風部)、554 ヒータ(加熱部)、560 送出部、562 ダクト、564 ダンパ、568 パッキン、570 戻入部、580 吸引口、582 排出口、615 吐水ノズル、720 排水口、730 通水路、740 放水口、S 水勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から空気を取り込む吸引口と、
外部に空気を排出する排出口と、
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記空気の流れる風路を切り替える風路切替手段と、
前記送風部、前記加熱部及び前記風路切替手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記風路切替手段を制御することにより、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から外気を導入し前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路を介して前記排出口から排出させる排気モードと、を実行可能とし、
便座を乾燥させる指令に基づいて、便座乾燥動作として前記排気モードを実行することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
外部から空気を取り込む吸引口と、
外部に空気を排出する排出口と、
送風部と、
前記送風部により送風される空気を加熱する加熱部と、
内部に便座内風路を有する便座と、
前記空気の流れる風路を切り替える風路切替手段と、
前記送風部、前記加熱部及び前記風路切替手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記風路切替手段を制御することにより、前記送風部と前記加熱部と前記便座内風路とを含む循環風路において空気を環流させる循環送風モードと、前記吸引口から前記送風部と前記加熱部を介して前記便座内風路に外気を導入し前記排出口から排出させる排気モードと、を実行可能とし、
便座を乾燥させる指令に基づいて、便座乾燥動作として前記循環送風モードと前記排気モードとを実行することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記便座乾燥動作として、前記循環送風モードを実行した後に前記排気モードを実行することを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記便座乾燥動作として、前記循環送風モードと前記排気モードとを繰り返すことを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記繰り返しの回数に関する情報を蓄積するカウンタをさらに備え、
前記制御部は、前記カウンタに蓄積された前記情報に基づいて前記循環送風モードと前記排気モードとを繰り返すことを特徴とする請求項4記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記循環送風モードから前記排気モードに切り替える際に、前記加熱部の出力を上げることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記便座乾燥動作の指令を入力可能とした便座乾燥スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記便座乾燥スイッチが操作されると前記便座乾燥動作を実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項8】
前記便座内風路に存在する水を検知する残水検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記残水検知部が前記水を検知すると前記便座乾燥動作を実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項9】
前記便座の着脱を検知する便座着脱検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記便座着脱検知部の検知により前記便座が再装着されたことを把握すると前記便座乾燥動作を実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項10】
人体を検知する人体検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記人体検知部が人体を検知している時は、前記便座乾燥動作を実行しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項11】
前記排出口に至る風路の底面に、水を排出する排水口が設けられたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項12】
前記排水口に排出された水を前記暖房便座装置が設置される便器のボウルに導く通水路をさらに備えたことを特徴とする請求項11記載の暖房便座装置。
【請求項13】
便器と、
前記便器の上に設けられた請求項1〜12のいずれか1つに記載の暖房便座装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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