説明

暖房便座装置

【課題】断熱性能を維持しつつ、便蓋の少なくとも側面部の厚みを薄くすることで、意匠性が損なわれることなく、待機時の消費電力を低減させた暖房便座装置を提供する。
【解決手段】加熱部210を有する便座200と、真空断熱体320と、前記真空断熱体320を被覆する被覆体301、302と、を有し、前記便座200の上方及び便座200の側面部305を覆う構造とした便蓋300と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置100とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置は、例えば、内部にヒータを有する便座と、その便座の上部をカバーする便蓋と、を備えている。このような暖房便座装置では、便座の温度が暖房に値する温度(例えば、約38〜40℃程度)に達するまでに時間がかかるため、暖房時にはヒータを常時通電状態としている。このとき、便座と便蓋との間の隙間や、便器と便座との間の隙間などから空気が流れ込むと、ヒータからの熱はその対流により放熱する。その結果、大きな熱損失が生ずる場合がある。大きな熱損失が生ずると、暖房便座装置の待機時の消費電力はより大きくなる。
【0003】
そこで、熱の対流による流出を防止し、対流熱損失を減少させて省エネルギーを図った便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された便座装置では、便蓋を閉めたときに、その便蓋は便座の少なくとも上面と外側面とを略覆うように構成されている。さらに、特許文献1では、便蓋内に断熱層を設けた便座装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、例えば発泡材のような断熱材を便蓋の内部に設けて断熱層を形成すると、便蓋の厚みが大きくなる。これに伴い、便蓋の側面部の厚みが大きくなると、使用者が便蓋を手で開閉する際に、その便蓋を持ちにくくなるという問題がある。また、便蓋が開いている場合には、便蓋の側面部が人目に付きやすいため、意匠性を損なうという問題がある。
【特許文献1】特開2000−83862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、断熱性能を維持しつつ、便蓋の少なくとも側面部の厚みを薄くすることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、加熱部を有する便座と、真空断熱体と、前記真空断熱体を被覆する被覆体と、を有し、前記便座の上方を覆う便蓋と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、より優れた断熱性を有する真空断熱体が便蓋の空洞部に配設されているため、断熱性能を維持しつつ、便蓋の少なくとも側面部の厚さを薄くすることができる。そのため、使用者は、便蓋を手で開閉させる際に、その便蓋を持ちにくいと感じるおそれは少ない。また、側面部の厚さは薄いため、便蓋の意匠性が損なわれるおそれは少ない。さらに、便座からの放熱を抑制することができるため、待機時の消費電力を低減させることができる。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記便蓋は、前記便座の上面を覆う上面部と、前記便座の外周側面を覆う側面部と、を有し、前記真空断熱体は、前記上面部および前記側面部に配設されたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、真空断熱体が便蓋の上面部および側面部に配設され、便座の上面および外周側面を覆うため、便座からの放熱をより抑制することができる。
【0008】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記真空断熱体は、前記便蓋が閉じられた状態において、前記上面部の前記便座側に配設された第1の真空断熱体と、前記側面部の前記便座側に配設された第2の真空断熱体と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便蓋の上面部に配設される真空断熱体と、便蓋の側面部に配設される真空断熱体と、は別体として設けられているため、便蓋の上面部と側面部とをより自由な形状に形成することができる。つまり、この暖房便座装置によれば、便蓋の上面部と側面部との形状に対してより柔軟に対応することができ、別体の真空断熱体を上面部および側面部にそれぞれ配設することができる。
【0009】
また、第4の発明は、第2の発明において、前記真空断熱体は、芯材と、前記芯材を大気圧よりも減圧された封止部に密閉した外皮と、を有し、前記封止部のうちで前記上面部に設けられた部分の周囲には、内側に向かって切り込まれた複数のスリットにより前記封止部を複数に区画した折込片が設けられ、前記折込片を屈曲させて前記側面部に配設させたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便蓋の上面部と側面部との間にほとんど隙間なく真空断熱体を配設できるため、より優れた断熱性能を確保することができる。
【0010】
また、第5の発明は、第2〜第4のいずれか1つの発明において、閉じた状態において上面を形成する便蓋本体と、閉じた状態において下面を形成する前記被覆体と、を有し、前記真空断熱体は、前記上面部において、前記便蓋本体と前記被覆体との間で前記被覆体に沿うように配設され、前記便蓋本体と前記真空断熱体との間には断熱材が配設されたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、より優れた断熱性能を有する真空断熱体と、より軽量な発泡樹脂製の断熱材と、を組み合わせて設けることにより、便蓋の上面部を適度な厚さに設定することができる。そのため、便蓋の被覆体を便座に近接させることができる。その結果、便蓋を閉じた状態において、真空断熱体を便座に近接させることができるため、便座からの放熱をより抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、断熱性能を維持しつつ、便蓋の少なくとも側面部の厚みを薄くすることができる暖房便座装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する側面模式図である。
なお、便蓋については、その内部構造を表している。
【0013】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)500と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、便座200と、便蓋300と、を有する。
【0014】
便座200は、その内部に加熱部210を有する。この加熱部210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。また、便座200は、その下部に支持部203を有する。この支持部203は、便座200が閉じた状態において、便器500に当接され、便座200を支持することができる。なお、図1に表した便座200は1本の加熱部210を有しているが、これだけに限定されず、2本以上の複数の加熱部210を有していてもよい。また、加熱部210は、線状のものに限定されず、面状のものであってもよい。
【0015】
便蓋300は、図1に表したように、閉じた状態において、上面を形成する便蓋本体301と、下面を形成する底板(被覆体)302と、を有する。そして、便蓋本体301と、底板302と、の間には、空洞部303が形成されている。また、便蓋300は、図1に表したように、閉じた状態において、便座200の上面201を覆う上面部304と、便座200の外周側面202を覆う側面部305と、を有する。つまり、便蓋300は、閉じた状態において、便座200の上面201および外周側面202を覆うように形成されている。
【0016】
便蓋300の内部の空洞部303には、真空断熱体320、330が設けられている。真空断熱体(第1の真空断熱体)320は、便蓋300の上面部304に配設され、真空断熱体(第2の真空断熱体)330は、便蓋300の側面部305に配設されている。また、真空断熱体320は、図1に表したように、便蓋300を閉じた状態において、上面部304の下側、すなわち便座200側に配設されている。つまり、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304において、底板302に沿うように配設されている。これにより、真空断熱体320は、便蓋300を閉じた状態において、便座200に近接している。また、真空断熱体330は、図1に表したように、便蓋300を閉じた状態において、側面部305の内側、すなわち便座200側に配設されている。これにより、真空断熱体330は、便蓋300を閉じた状態において、便座200に近接している。
【0017】
便蓋300の内部の空洞部303には、発泡樹脂製の断熱材310がさらに設けられている。この断熱材310は、便蓋本体301と真空断熱体320との間に配設され、真空断熱体320の動きを拘束する役割も果たしている。ここで、真空断熱体について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図2は、本実施形態の真空断熱体の構造を例示する断面模式図である。
真空断熱体320は、外皮321と芯材323とを有する。外皮321の内部には芯材323が充填され、その内部は真空排気されている。すなわち、芯材323は、外皮321によって、大気圧よりも減圧された封止部に密閉されている。外皮321は、例えば、ガスバリア性を有するガスバリア層と、有機フィルムと、が積層されたラミネートフィルムなどにより形成されている。ガスバリア層としては、例えば、アルミニウムの金属箔などが使用される。一方、芯材323は、例えば、断熱性を有する多孔質構造の材料などにより形成されている。このような芯材323としては、シリカなどの微粉末や、ウレタンフォームなどの発泡材や、ガラス繊維などが使用される。
【0019】
外皮321には、図示しない接着層が設けられている。そして、2枚の外皮321は、それぞれの接着層が向かい合うように配置され、熱により接着(融着)されている。その結果、図2に表したように、芯材323の周囲の全周に亘って、接着部325が形成されている。これにより、芯材323が充填された外皮321の内部では、真空性が確保されている。
【0020】
このような真空断熱体320は、気体による熱伝導率が無視できるほどに小さいため、ウレタンフォームなどの発泡材よりも優れた断熱性能を有する。つまり、真空断熱体320は、同じ厚さのウレタンフォームなどの発泡材と比較すると、より優れた断熱性を有する。そのため、真空断熱体320は、その厚さが薄い場合であっても、ウレタンフォームなどの発泡材と同等あるいはそれ以上の断熱性能を有する。したがって、真空断熱体320を使用する場合には、その厚さを薄くしても、断熱性能を確保することができる。
【0021】
なお、図2に関する説明では、便蓋300の上面部304に配設された真空断熱体320を例に挙げて説明したが、便蓋300の側面部305に配設された真空断熱体330についても同様の構造および性能を有する。また、後に詳述する真空断熱体340、350についても同様の構造および性能を有する。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304に配設され、真空断熱体330は、便蓋300の側面部305に配設されているため、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200から外方への放熱を抑制できる。また、便蓋300の空洞部303には、より優れた断熱性能を有する真空断熱体320、330と、より軽量な発泡樹脂製の断熱材310と、が組み合わせて設けられているため、便蓋300の上面部304を適度な厚さに設定することができる。そのため、便蓋300の底板302を便座200に近接させることができる。その結果、便蓋300を閉じた状態において、真空断熱体320を便座200に近接させて便座200の周囲の空気量を少なくすることができるため、暖房便座装置100は、便座200から周囲への放熱をより抑制できる。
【0023】
さらに、便蓋300は、閉じた状態において、便座200の上面201および外周側面202を覆うため、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200と便蓋300との間の隙間や、便器500と便座200との間の隙間などからの対流による放熱を抑制できる。そのため、暖房便座装置100は、待機時の消費電力を低減させることができる。
【0024】
またさらに、図2に関して前述したように、真空断熱体320、330は、より優れた断熱性を有するため、その厚さが薄い場合であっても、断熱性能を確保することができる。そのため、本実施形態の暖房便座装置100では、断熱性能を維持しつつ、便蓋300の少なくとも側面部305の厚さを薄くすることができる。
【0025】
これによれば、使用者は、便蓋300を手で開閉させる際に、その便蓋300を持ちにくいと感じるおそれは少ない。また、開いている状態の便蓋300の側面部305は、人目に付きやすいが、その側面部305の厚さは薄いため、便蓋300の意匠性が損なわれるおそれは少ない。
【0026】
次に、便蓋300の上面部304に配設される真空断熱体320と、便蓋300の側面部305に配設される真空断熱体330と、の構造および設置形態について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の便蓋の上面部に配設される真空断熱体を表す平面模式図である。 また、図4(a)は、本実施形態の便蓋の側面部に配設される真空断熱体を表す平面模式図であり、図4(b)は、本実施形態の便蓋の側面部に配設された状態の真空断熱体の設置形態を上方から眺めた平面模式図である。
【0027】
真空断熱体320は、図2に関して前述したように、外皮321と芯材323とを有し、その外皮321の内部に芯材323が充填されている。そして、その芯材323の周囲の全周に亘って、接着部325が形成されている。以下、説明の便宜上、外皮の内部に芯材が充填された部分を「封止部」と称する。
【0028】
便蓋300の上面部304に配置される真空断熱体320の封止部324は、図3に表したように、前方部において曲線部を有し、後方部において直線部を有する。接着部325は、その封止部324の周囲の全周に亘って形成されている。つまり、真空断熱体320は、便蓋300を上面に対して垂直に見た場合において、その便蓋300の形状と同様の形状を有する。そして、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304の略全体に亘って配設されている。
【0029】
接着部325は、図1に表したように、便蓋300の上面部304に配設された際には、適宜折り曲げられている。このように、接着部325の厚さは薄いため、その接着部325を折り曲げたり、折り重ねることができる。つまり、接着部325は、ある程度の曲げに対して柔軟に対応することができる。
【0030】
一方、封止部324は、ある程度の曲げに対して対応することはできるが、曲げられた部分の内半径は、封止部324の厚さ以上の大きさが必要である。そのため、封止部324を折り重ねることは困難であり、もし折り重ねることができた場合であっても、その折り重ねられた部分の厚さは封止部324の厚さの3倍以上になる。
【0031】
そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、便蓋300の上面部304に配設される真空断熱体320と、便蓋300の側面部305に配設される真空断熱体330と、は別体として設けられている。そこで、便蓋300の側面部305に配設される真空断熱体330の封止部334は、図4(a)に表したように、帯状の形状を有する。接着部335は、その封止部334の周囲の全周に亘って形成されている。なお、放熱防止のために、真空断熱体330は、便蓋300の側面形状にほぼ合致する形状に形成するのが好ましい。
【0032】
真空断熱体330は、図4(b)に表したように、便蓋300の側面部305に沿うように曲げられて配設されている。つまり、図4(a)に表した封止部334の表面が、便蓋300の外側あるいは内側に向くように配設されている。このように曲げられたときの封止部334の内半径は、その封止部334の厚さよりも十分に大きい。そのため、便蓋300の側面部305に沿うように真空断熱体330を曲げることにより、その真空断熱体330を側面部305に配設することができる。
【0033】
このように、本実施形態かかる暖房便座装置100では、上面部304に配設される真空断熱体320と、側面部305に配設される真空断熱体330と、は別体として設けられているため、便蓋300の上面部304と側面部305とをより自由な形状に形成することができる。つまり、本実施形態かかる暖房便座装置100では、便蓋300の上面部304と側面部305との形状に対してより柔軟に対応することができ、真空断熱体320、330を上面部304および側面部305にそれぞれ配設することができる。
【0034】
図5は、本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する側面模式図である。
また、図6は、本変形例の真空断熱体を表す平面模式図である。
なお、便蓋については、図1に表した便蓋と同様に、その内部構造を表している。
【0035】
本変形例にかかる暖房便座装置100aの便蓋300aは、その内部の空洞部303に真空断熱体340を有する。真空断熱体340は、便蓋300aの上面部304および側面部305に配設されている。つまり、真空断熱体340は、図1に表した真空断熱体320と真空断熱体330とが一体化されたような構造を有する。
【0036】
真空断熱体340の封止部344は、図6に表したように、前方部において曲線部を有し、後方部において直線部を有する。接着部325は、その封止部324の周囲の全周に亘って形成されている。ここで、真空断熱体340を上面部304および側面部305に配設させるために、図6に表した二点鎖線Aに沿って封止部344を曲げると、封止部344および接着部345の前方部に皺(しわ)がそれぞれ生ずる。これは、封止部344および接着部345が、その前方部に曲線部をそれぞれ有するためである。封止部344および接着部345に皺がそれぞれ生じた場合には、その皺の部分を折り重ねて、封止部344および接着部345の厚さをより薄くすることが好ましい。
【0037】
しかしながら、図3および図4に関して前述したように、封止部344は、ある程度の曲げに対して対応することはできるが、曲げられた部分の内半径は、封止部344の厚さ以上の大きさが必要である。つまり、封止部344は、封止部344自身の厚さ以下の大きさの内半径では屈曲できない。そのため、封止部344に生じた皺の部分を折り重ねることは困難である。
【0038】
これに対して、本変形例の真空断熱体340の封止部344は、図6に表したように、その周端部を複数に区画された折込片344aを有する。そして、隣接する折込片344a同士の間には、封止部344の周端部から内側に向かって切り込まれたスリット344bが形成されている。言い換えれば、スリット344bが形成され、封止部344の周端部が複数に区画された結果、上面部304に設けられる封止部344の周囲には側面部305に設けられる折込片344aが形成されている。
【0039】
これによれば、図6に表した二点鎖線Aに沿って封止部344を曲げた場合であっても、封止部344の曲線部において皺が生ずることはない。これは、封止部344を曲げた際に生ずる余計な部分(皺になる部分)が、スリット344bによって吸収されるためである。そのため、本変形例の暖房便座装置100aでは、真空断熱体340を図6に表した二点鎖線Aに沿って曲げることにより、その真空断熱体340を上面部304および側面部305に配設させることができる。このように封止部344にスリット344bが形成されるだけでも、真空断熱体340を底板302に沿わせて曲げることができる。
【0040】
このとき、隣接する折込片344a同士の間の接着部345は、折り重なった状態になる。その場合、隣接する折込片344a同士の間には、封止部344の無い断熱性の弱い部分が形成されてしまう。そこで、接着部345にも、封止部344に形成されたスリット344bの間に入り込むようにして、スリット345aを形成するのが好ましい。このスリット345aは、封止部344の真空を保持するのりしろ部を残すように形成される。これによれば、隣接する折込片344a同士をより近づけることができ、また、接着部345の曲線部において皺が生ずることはない。
【0041】
なお、上面部304と側面部305との間の屈曲部349の内半径は、封止部344の厚さ以上の大きさを有する。そのため、本変形例の真空断熱体340は、屈曲部349において屈曲できる。なお、その他の構造については、図1に表した暖房便座装置100と同様の構造と同様である。
【0042】
本変形例にかかる暖房便座装置100aによれば、便蓋300aの上面部304と側面部305との間にほとんど隙間なく真空断熱体340を配設できるため、図1に表した暖房便座装置100よりも優れた断熱性能を確保することができる。そのため、本実施形態の暖房便座装置100aでは、断熱性能を維持しつつ、便蓋300aの少なくとも側面部305の厚さをより薄くすることができる。これによれば、使用者は、便蓋300aを手で開閉させる際に、その便蓋300aを持ちにくいと感じるおそれはより少ない。また、便蓋300aの側面部305の厚さはより薄いため、便蓋300aの意匠性が損なわれるおそれはより少ない。
【0043】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置について、具体例を挙げつつ、より具体的に説明する。
図7は、本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図8は、本具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
【0044】
本具体例にかかる暖房便座装置100を備えたトイレ装置は、図7に表したように、便器500と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、便座200と、便蓋300と、機能部400と、を有する。便座200と便蓋300とは、機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便座200は、前述したように、その内部に加熱部210を有する。
【0045】
機能部400は、図示しない温度センサからの検知信号に基づいて加熱部210の加熱量を制御する制御部410を有する。加熱部210は、制御部410からの制御信号に基づいて発熱することにより、便座200を暖めることができる。
【0046】
また、機能部400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0047】
またさらに、機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、機能部400の側面には、脱臭ユニットからの図示しない排気口、及び室内暖房ユニットからの図示しない排出口が適宜設けられる。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0048】
便蓋300は、図8に表したように、閉じた状態において、上面を形成する便蓋本体301と、下面を形成する底板302と、を有する。そして、便蓋本体301と、底板302と、の間には空洞部303が形成され、その空洞部303には、真空断熱体320、330が設けられている。真空断熱体(第1の真空断熱体)320は、便蓋300の上面部304に配設され、真空断熱体(第2の真空断熱体)330は、便蓋300の側面部305に配設されている。
【0049】
また、真空断熱体320は、図8に表したように、便蓋300を閉じた状態において、上面部304の下側、すなわち便座200側に配設されている。つまり、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304において、底板302に沿うように配設されている。これにより、真空断熱体320は、便蓋300を閉じた状態において、便座200に近接している。さらに、真空断熱体320は、その後方部の領域Cにおいて、上方に曲げられている。このとき、領域Cにおける屈曲部の内半径は、封止部324の厚さ以上の大きさを有する。そのため、図8に表したように、本具体例の真空断熱体320は、領域Cにおいて屈曲できる。
【0050】
便蓋300の内部の空洞部303には、発泡樹脂製の断熱材310がさらに設けられている。この断熱材310は、便蓋本体301と真空断熱体320との間に配設されている。その他の構造については、図1〜図4に関して前述した通りである。
【0051】
本具体例にかかる暖房便座装置100によれば、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304に配設され、真空断熱体330は、便蓋300の側面部305に配設されているため、便座200から外方への放熱を抑制することができる。また、便蓋300の空洞部303には、より優れた断熱性能を有する真空断熱体320、330と、より軽量な発泡樹脂製の断熱材310と、が組み合わせて設けられているため、便蓋300の上面部304を適度な厚さに設定することができる。そのため、便蓋300の底板302を便座200に近接させることができ、その結果として、真空断熱体320を便座200に近接させて便座200の周囲の空気量を少なくすることができる。したがって、本具体例にかかる暖房便座装置100は、便座200から周囲への放熱をより抑制でき、待機時の消費電力を低減させることができる。
【0052】
さらに、図2に関して前述したように、真空断熱体320、330は、より優れた断熱性を有するため、その厚さが薄い場合であっても、断熱性能を確保することができる。そのため、本実施形態の暖房便座装置100では、断熱性能を維持しつつ、便蓋300の少なくとも側面部305の厚さを薄くすることができる。
【0053】
これによれば、使用者は、便蓋300を手で開閉させる際に、その便蓋300を持ちにくいと感じるおそれは少ない。また、開いている状態の便蓋300の側面部305は、人目に付きやすいが、その側面部305の厚さは薄いため、便蓋300の意匠性が損なわれるおそれは少ない。
【0054】
図9は、本実施形態の他の具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
本具体例にかかる暖房便座装置100aの便蓋300aは、その内部の空洞部303に真空断熱体340を有する。真空断熱体340は、便蓋300aの上面部304および側面部305に配設されている。つまり、真空断熱体340は、図8に表した真空断熱体320と真空断熱体330とが一体化されたような構造を有する。その他の構造については、図8に表した暖房便座装置100の構造と同様である。
【0055】
本具体例にかかる暖房便座装置100aによれば、便蓋300aの上面部304と側面部305との間にほとんど隙間なく真空断熱体340を配設できるため、図8に表した暖房便座装置100よりも優れた断熱性能を確保することができる。そのため、本実施形態の暖房便座装置100aでは、断熱性能を維持しつつ、便蓋300aの少なくとも側面部305の厚さをより薄くすることができる。
【0056】
そのため、使用者は、便蓋300aを手で開閉させる際に、その便蓋300aを持ちにくいと感じるおそれはより少ない。また、便蓋300aの側面部305の厚さはより薄いため、便蓋300aの意匠性が損なわれるおそれはより少ない。また、その他の効果についても、図8に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0057】
図10は、本実施形態のさらに他の具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
本具体例にかかる暖房便座装置100bでは、便蓋300bと機能部400bとの上面が略水平且つ略同一面となるように設けられている。つまり、便蓋300bが閉じた状態において、便蓋本体301bは、略水平となるように形成されている。これによれば、暖房便座装置100bは、すっきりとしたデザインを有する。そのため、本具体例にかかる暖房便座装置100bは、その意匠性を高めることができる。
【0058】
本具体例の便座200bは、便蓋本体301bと同様に、その上面201bが略水平となるように形成されている。便蓋本体301bと、便座200bの上面201bと、が略水平に形成されていることにより、便蓋300bが閉じた状態の上面部304において、真空断熱体320bと底板302bとは略水平に形成されている。つまり、真空断熱体320bおよび底板302bは、図8および図9に表した領域Cのようには、曲げられていない。また、便蓋本体301bと真空断熱体320bとの間に設けられた断熱材310bは、図10に表したように、その厚さが略均一となるように形成されている。その他の構造については、図8に表した暖房便座装置100の構造と同様である。
【0059】
これによれば、真空断熱体320bは、閉じた状態の便蓋300bの上面部304において、略水平に設けられ、図8および図9に表した領域Cのようには曲げられていないため、真空断熱体320bをより容易に形成することができる。また、図10に表したように、便蓋300bの側面部305の厚さだけではなく、便蓋300bの上面部304の厚さをより薄くすることができる。つまり、本実施形態の暖房便座装置100bでは、断熱性能を維持しつつ、便蓋300bの全体をより薄く形成することができる。
【0060】
したがって、使用者は、便蓋300bを手で開閉させる際に、その便蓋300bを持ちにくいと感じるおそれはより少ない。また、前述したように、暖房便座装置100bは、すっきりとしたデザインを有するため、意匠性を高めることができる。なお、本具体例においては、上面部304に配設された真空断熱体320bと、側面部305に配設された真空断熱体330と、が別体である場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されず、図9に表したような一体化された真空断熱体340が、上面部304および側面部305に配設されていてもよい。この場合であっても、断熱性能を維持しつつ、便蓋300bの全体をより薄く形成することができる。
【0061】
図11は、本実施形態のさらに他の具体例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図12は、本具体例の真空断熱体を表す平面模式図である。
【0062】
本具体例にかかる暖房便座装置100cを備えたトイレ装置は、図7に表したトイレ装置と同様に、便器500cと、その上に設けられた暖房便座装置100cと、を備える。暖房便座装置100cは、便座200cと、便蓋300cと、機能部400cと、を有する。便座200cと便蓋300cとは、機能部400cに対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便座200cは、前述したように、その内部に加熱部210を有する。
【0063】
また、便蓋300cは、図11に表したように、矩形に近い形状を有する。より具体的には、便蓋300cを上面に対して垂直に見た場合に、便蓋300cの後方部および左右側方部は略直線を有し、便蓋300cの前方部のみが曲線を有する。これに伴い、便座200cは、便蓋300cと同様に、矩形に近い形状を有する。これによれば、暖房便座装置100cを備えたトイレ装置は、シャープなデザインを有するため、その意匠性を高めることができる。
【0064】
本具体例の便蓋300cでは、図12に表した真空断熱体350が便蓋300cの上面部および側面部に配設される。つまり、真空断熱体350は、図9に表した真空断熱体340と同様に、図8に表した真空断熱体320と真空断熱体330とが一体化されたような構造を有する。
【0065】
ここで、本変形例の真空断熱体350の封止部354は、図12に表したように、その周端部を複数に区画された折込片354aを有する。そして、隣接する折込片354a同士の間には、封止部354の周端部から内側に向かって切り込まれたスリット354bが形成されている。言い換えれば、スリット354bが形成され、封止部354の周端部が複数に区画された結果、封止部354の周端部には折込片354aが形成されている。一方、接着部355には、封止部354に形成されたスリット354bの間に入り込むようにして、スリット355aが形成されている。
【0066】
そして、真空断熱体350は、便蓋300cと同様に、矩形に近い形状を有する。より具体的には、真空断熱体350は、図12に表したように、真空断熱体350の後方部および左右側方部は略直線を有し、真空断熱体350の前方部のみが曲線を有する。その曲線は、図6に表した真空断熱体340の前方部の曲線よりも大きな半径を有し、直線により近い。そのため、本具体例の真空断熱体350には、その前方部においてのみ、スリット354b、355aおよび折込片354aが形成されている。つまり、本具体例の真空断熱体350に設けられたスリット354b、355aおよび折込片354aは、図6に表した真空断熱体340に設けられたスリット344b、345aおよび折込片344aよりもそれぞれ少ない。
【0067】
これによれば、図12に表した二点鎖線Dに沿って折り曲げる折込片354aが、図6に表した折込片344aよりも少ないため、封止部354および接着部355の前方部には皺(しわ)が生じにくい。つまり、封止部344および接着部345を曲げた際に生ずる余計な部分(皺になる部分)が、生じにくい。また、スリット354b、355aおよび折込片354aの数はより少ないため、真空断熱体350をより容易に形成することができる。なお、その他の効果についても、図9に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、真空断熱体320は、便蓋300の上面部304に配設され、真空断熱体330は、便蓋300の側面部305に配設されている。あるいは、真空断熱体340は、便蓋300aの上面部304および側面部305に配設されている。真空断熱体320、330、340は、より優れた断熱性を有するため、その厚さが薄い場合であっても、断熱性能を確保することができる。そのため、本実施形態の暖房便座装置では、断熱性能を維持しつつ、便蓋の少なくとも側面部の厚さを薄くすることができる。したがって、使用者は、便蓋を手で開閉させる際に、その便蓋を持ちにくいと感じるおそれはより少ない。また、開いている状態の便蓋の側面部は、人目に付きやすいが、その側面部の厚さは薄いため、便蓋の意匠性が損なわれるおそれは少ない。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、暖房便座装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや便蓋300や便座200や加熱部210などの設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、断熱材310を設けることなく、真空断熱体320、330、340を底板302に押し当てるリブを便蓋本体301、301bに設けたり、真空断熱体320、330、340を底板302、302bに接着したりして、真空断熱体320、330、340を底板302、302bに沿うように配設してもよい。すなわち、真空断熱体320、330、340の動きを拘束するものは、断熱材310に限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する側面模式図である。
【図2】本実施形態の真空断熱体の構造を例示する断面模式図である。
【図3】本実施形態の便蓋の上面部に配設される真空断熱体を表す平面模式図である。
【図4】図4(a)は、本実施形態の便蓋の側面部に配設される真空断熱体を表す平面模式図であり、図4(b)は、本実施形態の便蓋の側面部に配設された状態の真空断熱体の設置形態を上方から眺めた平面模式図である。
【図5】本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する側面模式図である。
【図6】本変形例の真空断熱体を表す平面模式図である。
【図7】本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図8】本具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
【図9】本実施形態の他の具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
【図10】本実施形態のさらに他の具体例の便蓋の内部構造を表す断面模式図であり、図7に表したB−B断面図に相当する。
【図11】本実施形態のさらに他の具体例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図12】本具体例の真空断熱体を表す平面模式図である。
【符号の説明】
【0071】
100、100a、100b、100c 暖房便座装置、 200、200b、200c 便座、 201、201b 上面、 202 外周側面、 203 支持部、 210 加熱部、 300、300a、300b、300c 便蓋、 301、301b 便蓋本体、 302、302b 底板、 303 空洞部、 304 上面部、 305 側面部、 310、310b 断熱材、 320、320b 真空断熱体、 321 外皮、 323 芯材、 324 封止部、 325 接着部、 330 真空断熱体、 334 封止部、 335 接着部、 340 真空断熱体、 344 封止部、 344a 折込片、 344b スリット、 345 接着部、 345a スリット、 349 屈曲部、 350 真空断熱体、 354 封止部、 354a 折込片、 354b スリット、 355 接着部、 355a スリット、 400 機能部、 400b 機能部、 400c 機能部、 410 制御部、 500、500c 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を有する便座と、
真空断熱体と、前記真空断熱体を被覆する被覆体と、を有し、前記便座の上方を覆う便蓋と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記便蓋は、
前記便座の上面を覆う上面部と、
前記便座の外周側面を覆う側面部と、
を有し、
前記真空断熱体は、前記上面部および前記側面部に配設されたことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記真空断熱体は、前記便蓋が閉じられた状態において、前記上面部の前記便座側に配設された第1の真空断熱体と、前記側面部の前記便座側に配設された第2の真空断熱体と、を有することを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記真空断熱体は、
芯材と、
前記芯材を大気圧よりも減圧された封止部に密閉した外皮と、
を有し、
前記封止部のうちで前記上面部に設けられた部分の周囲には、内側に向かって切り込まれた複数のスリットにより前記封止部を複数に区画した折込片が設けられ、前記折込片を屈曲させて前記側面部に配設させたことを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記便蓋は、
閉じた状態において上面を形成する便蓋本体と、
閉じた状態において下面を形成する前記被覆体と、
を有し、
前記真空断熱体は、前記上面部において、前記便蓋本体と前記被覆体との間で前記被覆体に沿うように配設され、前記便蓋本体と前記真空断熱体との間には断熱材が配設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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