説明

暖房便座装置

【課題】本体に対して便座が着脱自在となる構成において、消費電力を抑えると共に装置コストの低減を図ることができる暖房便座装置を提供すること。
【解決手段】本体2では、便座3から伝送される電力信号(フィードバック信号)を継続して受信できない状態になると、便座3への電力伝送を間欠的に行い所定期間内において伝送される電力を小さくできるので、便座3が本体2から取り外された場合の消費電力を抑えることができる。また、本体2からは、便座3が本体2から取り外された場合にも、間欠的に電力伝送を行っているので、便座3が本体2に取り付けられたか否かを検知する着脱センサを設けることなく、電力信号の受信の再開を検知することによって、便座3が本体2に取り付けられたか否かを判断できる。よって、便座3が本体2から取り外された場合の消費電力を抑えつつ、着脱センサが不要になるので装置コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房便座装置に関し、特に、本体に対して便座が着脱自在となる構成において、消費電力を抑えると共に装置コストの低減を図ることができる暖房便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−36133号公報(以下「特許文献1」と称す)には、本体に設けられた一次側コイルを励起し、便座に設けられた二次側コイルに電流を生じさせて、無配線方式により電力伝送を行い、その電力伝送により便座のヒータに給電して便座を暖める暖房便座装置が開示されている。この暖房便座装置は、ヒータへの通電を検知する通電センサと、ヒータの温度を検知する温度センサとを備えており、その通電センサ及び温度センサの検知を、便座の信号発信素子から本体の信号受信素子に無配線方式により信号伝送可能に構成されている。
【0003】
また、特開平10−179454号公報(以下「特許文献2」と称す)には、特許文献1と同様に、本体から便座への電力伝送および便座から本体への信号伝送を無配線方式で行う暖房便座装置が開示されている。特許文献2の暖房便座装置は、便座の本体に対する着脱を検知する着脱センサを設けており、その着脱センサにより便座の本体からの取り外しが検知されると、本体から便座に伝送される電力を抑えるモードに移行する。
【特許文献1】特開2008−36133号公報
【特許文献2】特開平10−179454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず、便座が本体から取り外される状況について説明する。便座が本体から取り外されるのは、便座と本体との連結部分を清掃する場合や便座自体を水洗いする場合なので、短くて数分間から長くて数時間の間、取り外されたままになる可能性がある。
【0005】
特許文献1の暖房便座装置では、通電センサ及び温度センサの検知に基づいて、一次側コイルの励起を制御して便座のヒータの温度調整は可能であるが、便座が本体から取り外された場合でも、一次側コイルへの励起が継続されるので、便座が本体から取り外された状態が長く続くと、無駄に電力が消費されてしまうという問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2の暖房便座装置では、便座が本体から取り外された場合には、その便座の取り外しを着脱センサにより検知して、本体から便座に伝送される電力を抑えることができる。よって、特許文献1の暖房便座装置に比べて消費電力を抑えることはできる。しかしながら、特許文献2の暖房便座装置は、便座の着脱を検知しなければならないので、便座の着脱を検知する着脱センサが必要となり、その分の装置コストがアップしてしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、本体に対して便座が着脱自在となる構成において、消費電力を抑えると共に装置コストの低減を図ることができる暖房便座装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために請求項1記載の暖房便座装置は、暖房装置を有する便座と、その便座が着脱自在に構成される本体と、その本体から便座へ電力伝送を無配線方式で行う電力伝送手段と、前記便座から本体へ信号伝送を無配線方式で行う信号伝送手段とを備えており、前記便座は、前記電力伝送手段により前記本体から電力が伝送されている場合に、その伝送される電力に対応するフィードバック信号を、前記信号伝送手段により前記本体に伝送する信号伝送実行手段を備え、前記本体は、前記信号伝送手段により前記便座から伝送される前記フィードバック信号を受信できない場合に、前記電力伝送手段により前記便座に対して伝送される電力を、前記暖房装置を駆動しているときの電力より小さい電力とする電力伝送実行手段と、その電力伝送実行手段により電力伝送が行われている状態で、前記フィードバック信号を受信すると、前記便座に対しての電力伝送を前記暖房装置を駆動しているときの電力で再開する再開電力伝送実行手段とを備えている。
【0009】
請求項2記載の暖房便座装置は、請求項1記載の暖房便座装置において、前記便座は、その便座の温度を検出する温度センサを備え、前記信号伝送実行手段は、前記電力伝送手段により前記本体から伝送される電力に対応するフィードバック信号と、前記温度センサにより検出される温度を示す温度信号との両方を、前記信号伝送手段により前記本体へそれぞれ異なるタイミングで伝送可能に構成されている。
【0010】
請求項3記載の暖房便座装置は、請求項1又は2に記載の暖房便座装置において、前記信号伝送実行手段は、前記電力伝送手段により前記本体から伝送される電力レベルを示すフィードバック信号を前記本体に伝送するものであり、前記本体は、前記便座から伝送される前記フィードバック信号により示される電力レベルが、前記本体から伝送した電力レベルに対して低い場合に、その旨を報知する報知手段を備えている。
【0011】
請求項4記載の暖房便座装置は、請求項1から3のいずれかに記載の暖房便座装置において、前記本体と便座とは、その本体または便座の幅方向の両端に設けられる一対の枢支部によって、前記便座が前記本体に対して揺動可能に支持されており、前記電力伝送手段による電力伝送は一方の枢支部で行われると共に、前記信号伝送手段による信号伝送は他方の枢支部で行われる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の暖房便座装置によれば、暖房装置を有する便座とその便座が着脱自在に構成される本体との間は、無配線方式の電力伝送手段により本体から便座へ電力伝送が行われると共に、無配線方式の信号伝送手段により便座から本体へ信号伝送が行われる。また、便座では、電力伝送手段により本体から電力が伝送されている場合に、その伝送される電力に対応するフィードバック信号を、信号伝送実行手段により本体へ伝送する。一方、本体では、便座から伝送されるフィードバック信号を受信できないと、暖房装置を駆動しているときの電力より小さい電力を、電力伝送実行手段により便座に対して伝送する。よって、本体は、便座が本体から取り外されたり、便座が本体に対して正常に取り付けられていない状態(例えば、便座が本体に対して傾いて取り付けられている状態)になり、便座から伝送されるフィードバック信号を受信できないと、便座に伝送される電力を、暖房装置を駆動しているときの電力より小さい電力として伝送できる。従って、特許文献1のように、便座が本体から取り外された後にも電力を継続して伝送し続ける構成に比べて、消費電力を抑えることができるという効果がある。
【0013】
ここで、便座が本体から取り外された場合に、本体からの電力伝送を完全に停止すれば、消費電力を確実に抑えることはできる。しかし、取り外された便座が本体に取り付けられても、便座側に電力が伝送されないため、便座から本体にフィードバック信号が伝送されないので、本体は、便座が本体に取り付けられたか否かを判断できない。そのため、便座が本体に対して取り付けられたか否かを検知する着脱センサを設ける必要が生じ、その分の装置コストがアップしてしまう。
【0014】
請求項1記載の暖房便座装置によれば、本体からは、便座から伝送されるフィードバック信号を受信できないと、便座に対して暖房装置を駆動しているときの電力より小さい電力を伝送するので、便座が本体に取り付けられた場合には、その電力により便座の信号伝送実行手段を動作させて、便座から本体へフィードバック信号を伝送できる。よって、本体は、フィードバック信号の受信に基づいて、便座が本体に取り付けられたことを判断できる。従って、便座が本体から取り外された場合の消費電力を抑えつつ、着脱センサが不要になるので、装置がシンプルになり、装置コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の暖房便座装置によれば、請求項1記載の暖房便座装置の奏する効果に加え、便座では、電力伝送手段により本体から伝送される電力に対応するフィードバック信号と、便座の温度を検出する温度センサにより検出される温度を示す温度信号との両方が、それぞれ異なるタイミングで本体へ伝送されるので、フィードバック信号と温度信号とを1の信号伝送手段により本体へ伝送できる。よって、各信号に応じた信号伝送手段を設ける必要がなく、装置がシンプルになり、装置コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0016】
ここで、電力伝送および信号伝送は、無配線方式で行われるので、電力伝送手段と信号伝送手段とが近接した位置にあると、伝送時に発生する電波や磁界の影響を受けやすく、正確な電力伝送や信号伝送を行えない可能性がある。そのため、伝送時の電波や磁界の影響を考えると、電力伝送手段や信号伝送手段の数を極力少なくした方が好ましい。請求項2の暖房便座装置によれば、フィードバック信号および温度信号の2つの信号をそれぞれ異なるタイミングで伝送でき、2つの信号を1の信号伝送手段により伝送できるので、伝送時の電波や磁界の影響が少なくなる位置に電力伝送手段や信号伝送手段を設置できるという効果がある。
【0017】
なお、便座から本体に伝送されるフィードバック信号と温度信号とは、規則性を有して交互に伝送するように構成しても良い。この構成によれば、本体は、信号伝送手段により伝送されるフィードバック信号と温度信号とを規則性を有して交互に受信できるので、その規則性に基づいて受信した信号がフィードバック信号か温度信号かを簡単に判別可能となる。
【0018】
また、便座から本体に伝送されるフィードバック信号と温度信号とは、通常時にフィードバック信号を伝送し、温度センサにより検出される温度が所定温度以上変化した場合に温度信号を伝送するように構成しても良い。この構成によれば、本体は、常にフィードバック信号を受信できるので、便座が本体に取り付けられたことを早期に検出することができる。
【0019】
また、電力伝送実行手段により電力伝送が行われている状態で、便座から本体に伝送される温度信号を受信した場合には、電力伝送に対応するフィードバック信号を受信していなくても、再開電力伝送実行手段により暖房装置を駆動しているときの電力による電力伝送を再開するものとしても良い。この構成では、便座が本体に取り付けられると、電力信号および温度信号のどちらを受信しても暖房装置を駆動しているときの電力による電力伝送を再開できるので、早期に電力伝送を再開できる。
【0020】
請求項3記載の暖房便座装置によれば、請求項1又は2に記載の暖房便座装置の奏する効果に加え、本体では、便座から伝送されるフィードバック信号により示される電力レベルが、本体から伝送した電力レベルに対して低くなると、報知手段による報知がなされる。ここで、例えば、本体に対して便座が傾いて取り付けられたり、本体と便座との取り付け部分に異物が挟まったりする不具合が生じると、本来伝送されるべき電力が便座に伝送されない。その結果、便座では、本体から伝送される電力のレベルが低く検知され、その電力レベルが低いフィードバック信号を本体に送信する。よって、本体では、便座から伝送されるフィードバック信号により示される電力レベルが、本体から伝送した電力レベルに対して低くなるので、その電力レベルの低下を検出して報知を行うことができる。従って、便座の本体への取り付けが正常に行われていないことなどにより、本体から便座に対して本来伝送されるべき電力が伝送されない状態になると、報知手段により報知がなされるので、不具合の発生をユーザに認識させることができ、その不具合を早期に解消させることができるという効果がある。
【0021】
なお、請求項3において、報知手段により報知がなされている間は、暖房装置を駆動しているときの電力による電力伝送を継続するものとしても良いし、暖房装置を駆動しているときの電力よりも小さい電力での電力伝送を電力伝送実行手段により行うものとしても良い。また、暖房装置を駆動しているときの電力よりも小さい電力での電力伝送を電力伝送実行手段により行っている場合には、便座から伝送されるフィードバック信号により示される電力レベルが、本体から伝送した電力レベルになったら、暖房装置を駆動しているときの電力による電力伝送を再開するように構成しても良い。
【0022】
請求項4記載の暖房便座装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の暖房便座装置の奏する効果に加え、本体と便座とは、本体または便座の幅方向の両端に設けられる一対の枢支部によって、本体に対して便座が揺動可能に支持されており、電力伝送手段による電力伝送は一方の枢支部で行われ、信号伝送手段による信号伝送は他方の枢支部で行われる。よって、電力伝送と信号伝送とを、本体または便座の幅方向の両端の離れた部分で行うことができ、伝送時に発生する電波や磁界による互いの影響を低減できるという効果がある。
【0023】
特に、信号伝送は、フィードバック信号(や温度信号)を本体が受信し、その受信した信号に応じて電力伝送の制御を行うので、電波や磁界などが影響して正確な信号を受信できないと、電力伝送の制御も正確にできない。しかし、本体または便座の幅方向の両端の一対の枢止部のそれぞれで、電力伝送および信号伝送が行われるので、互いの影響を低減でき、電力伝送の制御を正確に行い暖房装置の温度を正確に調整できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態の暖房便座装置1の概略を示した図である。なお、図1では、本発明に関連する部分を示しており、便座蓋や、温度調整用の操作部などを不図示としている。また、図1において、矢印X方向は、暖房便座装置1の左右方向を示しており、矢印Y方向は、暖房便座装置1の奥行方向を示している。
【0025】
本実施形態の暖房便座装置1は、本体2から便座3への電力伝送および便座3から本体2への信号伝送を無配線方式で行い、便座3が本体2に対して着脱自在に構成されており、便座3が本体2から取り外された場合には、本体2から便座3への電力伝送を、便座3に設けられた暖房装置43を駆動しているときの電力よりも小さい電力で行い(本実施形態では、電力伝送を間欠的に行うことで小さい電力としている)、その後、便座3が本体2に取り付けられた場合には、本体2から便座3への電力伝送を、暖房装置43を駆動しているときの電力で再開するように構成されている。
【0026】
図1に示すように、暖房便座装置1は、本体2と便座3とを有しており、その本体2と便座3とは、一対の枢支部10,20によって、便座3が本体2に対して揺動可能に支持されている。一対の枢支部10,20は、本体2又は便座3の左右方向(幅方向、矢印X方向)の両端に設けられており、本体2と便座3との連結部分の中で、最も離れた位置に配置されている。
【0027】
本体2は、略箱状に形成されており、その内部には、外部電源Wに接続され、その外部電源Wから電力が供給される本体側制御部C1が設けられている。本体側制御部C1には、枢支部10に設けられる電力用一次コイル30と、枢支部20に設けられる駆動モータ31と、枢支部20に設けられる信号用二次コイル32とが接続されている。
【0028】
本体側制御部C1は、主に、便座3の信号用一次コイル42から伝送される信号が信号用二次コイル32を介して入力された場合に、その入力した信号に基づいて電力用一次コイル30に電力を供給し、便座3の電力用二次コイル41に電力を伝送する制御と、便座3を開閉動作する場合に駆動モータ30への駆動指示を出力する制御とを行う。
【0029】
便座3は、中央に略楕円形の開口が形成されており、暖房便座装置1の奥側(矢印Y方向上側)の一辺の左右両端(矢印X方向の両端)に、便座3側の枢支部10,20を形成する取付腕部40,40が設けられている。また、一方(矢印X方向の左側)の取付腕部40は、駆動モータ31の取付軸33(図2(a)参照)に連結されており、その取付腕部40と取付軸33とが連結されることで、駆動モータ31の駆動に基づいて便座3全体が開閉動作される。さらに、一方の取付腕部40には、便座3を本体2から分離するのを阻止するロック機構4が設けられており、このロック機構4のロックを解除することで、便座3を本体2から取り外すことができる。
【0030】
便座3の内部には、便座3の制御を行う便座側制御部C2が設けられており、その便座側制御部C2には、枢支部10に設けらる電力用二次コイル41と、枢支部20に設けられる信号用一次コイル42と、面状ヒータ又は誘導コイルと金属膜との組み合わせから成る暖房装置43と、便座3の温度を検出する温度センサ44とが接続されている。
【0031】
便座側制御部C2には、本体2の電力用一次コイル30から伝送される電力を電力用二次コイル41が受信し、その受信した電力が供給される。また、電力用二次コイル41を介して供給された電力は、暖房装置43に給電され、便座3自体が暖められる。
【0032】
便座側制御部C2は、主に、温度センサ44から入力された温度信号s1を高周波に変換して、信号用一次コイル42から本体3の信号用二次コイル32に対して伝送を指示する制御と、電力用二次コイル41を介して受信した電力に対応する電力信号(フィードバック信号)s2を高周波に変換して、信号用一次コイル42から本体3の信号用二次コイル32に対して伝送を指示する制御とを行う。また、後述するが、便座3から本体2に伝送される電力信号s2と温度信号s1とは、交互に規則性を有して伝送される。
【0033】
なお、本体2の電力用一次コイル30と便座3の電力用二次コイル41との間で電力伝送が行われるので、電力用一次コイル30及び電力用二次コイル41により電力伝送手段が構成され、便座3の信号用一次コイル42と本体2の信号用二次コイル32との間で信号伝送が行われるので、信号用一次コイル42及び信号用二次コイル32により信号伝送手段が構成されている。
【0034】
よって、本体2又は便座3の左右方向(矢印X方向)の両端に設けられる一対の枢支部10,20、即ち、本体2と便座3との連結部分における互いが最も離反する位置(矢印X方向に離れた位置)に、電力伝送手段と信号伝送手段とが配置されるので、電力伝送および信号伝送時に発生する磁界による互いの影響を低減できる。特に、温度信号s1は、便座3(暖房装置43)の温度を調整するために、本体2が正確な温度信号s1を受信する必要がある。本実施形態では、最も離された位置に電力伝送手段と信号伝送手段とを配置しているので、本体2が正確な温度信号s1を受信できるため、便座3(暖房装置43)の温度調整を正確に行うことができる。
【0035】
次に、図2を参照して、便座3から本体2への信号伝送を行う信号用のコイル32,42について説明する。図2は、信号用のコイル32,42近傍の概略を示した図であり、図2(a)は、信号用のコイル32,42の近傍を示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における信号用のコイル32,34近傍の断面図であり、図2(c)は、図2(a)の矢印IIc視における信号用のコイル32,42を示した図である。
【0036】
なお、図2では、信号用のコイル32,42の位置関係について説明するため、不要な構成については、2点鎖線で図示する。また、図2において、矢印X方向は、暖房便座装置1の左右方向を示しており、矢印Y方向は、暖房便座装置1の奥行方向を示しており、矢印Z方向は、暖房便座装置1の高さ方向を示している。
【0037】
図2(a)に示すように、本体2に設けられる信号用二次コイル32は、駆動モータ31の外周部に沿った円弧状に形成されると共に、駆動モータ31の全外周部の約1/4の範囲に亘って配置されている。これは、後述するが、便座3が揺動することに伴って、便座3側の信号用一次コイル42が移動した場合にも、その信号用一次コイル42から伝送される信号を確実に受信可能にするためである。
【0038】
また、便座3に設けられる信号用一次コイル42は、取付腕部40内の下端部(矢印Z下方部分)に配置されている。図2(a)の状態は、便座3が本体2に対して閉じられた状態を示しており、信号用一次コイル42が、信号用二次コイル32の下端部(矢印Z方向下側の端部)に対応する位置に設けられている。
【0039】
図2(b)に示すように、信号用一次コイル42は、暖房便座装置1の左右方向(矢印X方向)に巻き数が重ねられているので、矢印YZで構成される面に対して垂直方向に磁界が形成される(図2(a)の矢印A)。その信号用一次コイル42により形成される磁界は、信号用二次コイル32と交差しており、その結果、信号用二次コイル32に誘導起電力が発生し、信号用一次コイル42から信号用二次コイル32に対して制御信号が伝送される。
【0040】
なお、信号用一次コイル42は、取付腕部40の内側空間に対して取付軸33が多くの領域を有するので、コイル径を大きくすることができない。そのため、信用号一次コイル42と信号用二次コイル32との間の制御信号の伝送距離が短くなる可能性があるが、本実施形態では、信号用一次コイル42が巻かれるコアに高透磁率材(例えば、フェライト)を用いているので、制御信号の伝送距離を伸ばすことができる。
【0041】
図2(c)は、便座3の揺動状態を示しており、便座3が本体2に対して閉じられた状態と、便座3が本体2に対して開かれた状態とを示している。図示するように、便座3の最大の揺動範囲に対応して、本体2の信号用二次コイル32と便座3の信号用一次コイル42とが対応して配置されていることが判る。
【0042】
次に、図3を参照して、本体2から便座3への電力伝送を行う電力用のコイル30,41について説明する。図3は、電力用のコイル30,41近傍の概略を示した断面図であり、図3(a)は、便座3が本体2に対して正常に取り付けられた状態を示しており、図3(b)は、便座3を本体2から取り外す場合の状態を示している。なお、図3において、矢印X方向は、暖房便座装置1の左右方向を示しており、矢印Y方向は、暖房便座装置1の奥行方向を示している。
【0043】
図3(a)に示すように、本体2の内部には電力を伝送する送電部34が配置され、便座3の取付腕部40の内部には電力を受信する受電部45が配置され、便座3が本体2に対して正常に取り付けられた状態で、送電部34と受電部45とが近接した位置に配置される。
【0044】
本体2の送電部34は、ボビン35の内部に電力用一次コイル30を内蔵したものである。また、便座3の受電部45も、同様に、ボビン46の内部に電力用二次コイル41を内蔵したものである。
【0045】
本体2には、便座3の取付腕部40と対向する位置に凹部36が形成されており、その凹部36に便座3側の突出部(ボビン46及びスリーブ47)の先端が軸着されるように構成されている。つまり、本体2の凹部36に便座3の突出部が軸着されることで、便座3が本体2に対して揺動可能になり、且つ、電力用のコイル30,41とが近接した状態となる。
【0046】
便座3のボビン46には、その外周にスリーブ47が外挿され、そのフリーブ47の外周に設けられたフランジ面47aと、そのフランジ面47aと対向する取付腕部40の内側面との間に、スプリング48が配設されている。このスプリング48は、スリーブ47(ボビン46)を送電部34側(矢印X方向左側)に付勢し、便座3が本体2から外れることを抑制するものである。
【0047】
また、取付腕部40の外面には、摘み49が設けられており、図3(b)に示すように、この摘み49を本体2の凹部36から離れる方向(矢印X方向右側)に引っ張ることで、本体2の凹部36と便座3側の突出部(ボビン46及びスリーブ47)の先端との軸着状態が解消される。即ち、便座3の本体2からの取り外しは、ロック機構4(図1参照)のロックを解除し、摘み49を外側に引っ張った後に可能な状態になる。
【0048】
また、スリーブ47のフランジ面47aより凹部36側に位置する外周と、スリーブ47が取付腕部40から突出する開口との間には、シール部材50が配設されている。このシール部材50は、スリーブ47(ボビン46)が摘み49の操作により往復動作した場合にも、取付腕部40の内側と外側との間を密閉可能にするものである。つまり、取付腕部40内への水などの進入を防止できるので、本体2から取り外した蓋体3を水洗い可能に構成することができる。
【0049】
なお、本体2の電力用一次コイル30から便座3の電力用二次コイル41への電力伝送は、電力用一次コイル30に電力供給をすると、図3(a)の矢印Bで示すように、ボビン35,46の軸心を通り、ボビン46,36の外周を通った後に、ボビン35,46の軸心へ戻る磁界が発生し、その磁界が電力用二次コイル41に交差することで、電力用二次コイル41に誘導起電力が発生し、電力用一次コイル30から電力用二次コイル41への電力伝送が行われる。
【0050】
次に、図4を参照して、本体2及び便座3の電気回路図の概略について説明する。図4は、本体2及び便座3の電気回路図の概略を示したブロック図である。なお、図4では、本体2から便座3への電力伝送および便座3から本体2への信号伝送に無関係な構成については、図示を省略してある。
【0051】
図4に示すように、本体側制御部C1には、外部電源Wに接続される電源回路60と、電力の断続制御などを行う演算装置であるCPU61とが設けられている。電源回路60は、電力用一次コイル30を駆動すると共に高周波を発信するコイル駆動回路60aと、そのコイル駆動回路60により消費された電力を示す消費電力信号s2を整流してCPU61に入力する整流回路60bとを有している。なお、電源回路60は、CPU61、温度表示部63や復調回路部64へも、その駆動電圧を供給する。
【0052】
CPU61には、操作部62と、復調回路部64を介して信号用二次コイル32と、温度表示部63とが接続されている。なお、復調回路部64は、信号用一次コイル42から受信した変調波を復調してデジタル信号に変換するものである。
【0053】
CPU61は、信号用二次コイル32から入力される温度信号s1に基づいて、電力用一次コイル30への断続制御の指示を出力し、操作部62から入力される温度指示に対応する温度に便座3(暖房装置43)がなるよう温度制御を行う。即ち、温度指示の温度の方が温度信号s1の温度より低ければ、電力用一次コイル30からの電力伝送の開始を指示し、温度指示の温度の方が温度信号s1の温度より高ければ、電力用一次コイル30からの電力伝送の停止を指示する。また、温度指示の温度と電力信号s1の温度との差に応じて伝送される電力の出力レベルの変更(例えば、20ワット〜50ワット間の変更)も指示する。
【0054】
また、CPU61は、信号用二次コイル32から入力される温度信号s1に対応する温度表示を温度表示部63に表示すると共に、便座暖房装置1においてエラーが発生した場合にエラーを表示する制御も行う。
【0055】
便座側制御部C2には、電力用二次コイル41に接続される共に交流を直流に変換して暖房装置43に直流電圧を供給する整流回路71と、電力用二次コイル41が受信した電圧値を検知する二次側電圧検知回路73と、演算処理装置であるCPU74とが設けられている。
【0056】
CPU74には、温度センサ44と、変調回路部75を介して信号用一次コイル42とが接続されている。CPU74は、温度センサ44から入力される便座3の温度に応じた温度信号s1を信号用一次コイル42を介して出力するように制御すると共に、二次側電圧検知回路73により検知された電圧に応じて、受信した電力レベルを示す電力信号(フィードバック信号)s2を出力するように制御する。なお、変調回路部75は、CPU74から出力が指示されたデジタル信号である電力信号s2および温度信号s1を変調するものである。
【0057】
便座3にも、図示しないが、電力用二次コイル41が受信した電力が供給される電源回路が設けられており、その電源回路により、CPU74、温度センサ44や変調回路部75へ、その駆動電圧を供給する。また、電源回路には、充電回路が設けられており、間欠的に伝送される電力を受信した場合にも、電力信号s2や温度信号s1を本体2に伝送可能に構成されている。
【0058】
次に、図5を参照して、本体2に対する便座3の着脱状態に応じて変化する電力伝送および信号伝送について説明する。図5は、本体2に対する便座3の着脱状態に対する電力伝送および信号伝送の変化を示すタイミングチャートである。
【0059】
図5に示すように、時刻t1以前は、本体2に便座3が取り付けられた状態を示している(図5における「着」が対応する)。この時刻t1以前の状態では、便座3の信号用一次コイル42からは、電力信号s2と温度信号s1とが交互に伝送されている。なお、電力信号s2および温度信号s1は、伝送される時間間隔が一定(本実施形態では、電力信号s2が30msで温度信号s1が10ms)で且つ、各信号間の間隔(本実施形態では5ms)も一定となっており、電力信号s2および温度信号s1は、規則性を有して交互に伝送される。
【0060】
つまり、便座3からは、温度信号s1と電力信号s2とを、1組の信号用のコイル32,42により本体2へ伝送できるので、温度信号s1および電力信号s2に応じた信号用のコイルを設ける必要がなくなり、装置がシンプルになり、その分の装置コストの低減を図ることができる。また、暖房便座装置1は、本体2と便座3とが隣接する部分が少ないので、その少ない部分に複数組のコイルを設けると、各コイル間の伝送による磁界の影響が大きくなり、正確な信号伝送が行えない可能性がある。しかし、1組の信号用のコイル32,42によって、便座3から本体2への信号伝送を行っているので、各コイル同士の磁界による影響が大きくなることを抑制し、正確な信号伝送を行うことができる。
【0061】
時刻t1において、便座3が本体2から取り外されると(図5における「脱」が対応する)、便座3の信号用一次コイル42からの電力信号s2および温度信号s1の両方の伝送が停止する。
【0062】
その後、本体2のCPU61は、便座3の信号用一次コイル42からの電力信号s2を一定間隔以上(例えば、40ms)受信できなかった場合に、便座3が本体2から取り外されたと判断し、本体2の電力用一次コイル30から便座3の電力二次コイル41への継続的な電力伝送を停止する(時刻t2)。
【0063】
便座3が本体2から取り外されてから(時刻t1)、本体2の電力用一次コイル30からの継続的な電力伝送が停止する(時刻t2)までの間に一定間隔が設けられているのは、便座3の信号用一次コイル42から本体2の信号用二次コイル32に伝送される電力信号s2および温度信号s1が交互に伝送されるため、電力信号s2が伝送される間隔を考慮し、便座3からの電力信号s2が完全に停止したことを確認するためである。つまり、便座3の信号用一次コイル42から伝送される電力信号s2の受信が終了した後に、次の電力信号s2の受信が開始されるまでの間隔(本実施形態では20ms)より、時刻t1と時刻t2の間の方が長くなるように構成されている(本実施形態では、40ms)。
【0064】
時刻t2から時刻t5の間は、CPU61によって、本体2の電力用一次コイル30から便座3の電力用二次コイル41への電力伝送が間欠的に行われる。本実施形態では、電力伝送を5msで行い、電力伝送の停止期間が45msとなるデューティー比10パーセントの間欠動作を行っている。即ち、本実施形態では、電力伝送を50ms周期で行っているので、便座3が本体2に対して取り付けられたことを早期に検知して、電力用一次コイル30からの通常の電力伝送の再開を早期に行うことができる。
【0065】
本体2の電力用一次コイル30からの電力伝送が間欠的に行われている間において、便座3が本体2に対して取り付けられ(時刻t3)、その後、本体2の電力用一次コイル30からの間欠的な電力伝送を便座3の二次側電圧検知回路73が検知すると、便座3の信号用一次コイル42から本体2の信号用二次コイル32への電力信号s2の伝送が再開される(時刻t4)。
【0066】
本体2のCPU61では、便座3からの電力信号s2の受信の再開を検出すると、間欠的な電力伝送を終了し、便座3の温度制御を行う通常時の電力伝送が開始される(時刻t5)。つまり、CPU61は、便座3の信号用一次コイル42からの電力信号s2の受信が再開された場合に、便座3が本体2に対して取り付けられたと判断することができる。
【0067】
本実施形態では、便座3は、本体2から電力用のコイル30,41によって電力が伝送されると、信号用のコイル32,42によって、まず、電力信号s2を送信し、その後、温度信号s1を伝送するように構成されている。即ち、本体2のCPU61では、電力用一次コイル30からの電力伝送の開始タイミングと、信号用二次コイル32から受信する電力信号s2の受信タイミングとから、電力信号s2であるか温度信号s1であるかの判断を簡単に行うことができる。更には、電力信号s2が伝送される時間長さ(本実施形態では30ms)と、温度信号s1が伝送される時間長さ(本実施形態では10ms)とが異なるように構成されているので、受信した信号の受信長さを判断することで、電力信号s2であるか温度信号s1であるかの判断を簡単に行うこともできる。その結果、本体2と便座3との間で、同期信号を送受信するなど、複雑な電気回路を設ける必要がないので、装置がシンプルになり、装置コストの低減を図ることができる。
【0068】
次に、便座3が本体2に対して傾いて取り付けられていたり、異物を挟み込んで取り付けられた場合の電力伝送および信号伝送の状態について説明する。
【0069】
図5に示すように、便座3が本体2に対して取り付けられている状態であっても、傾いて取り付けられたり、異物を挟み込んで取り付けられていると、便座3の二次側電圧検知回路73により検知される電圧値のレベルが低くなり、その検知されたレベルに応じた電力信号s2が、便座3の信号用一次コイル42から本体2の信号用二次コイル32に伝送される(時刻t6)。
【0070】
本体2のCPU61では、便座3から受信した電力信号s2のレベルが、本体2から便座3に対して伝送した電力のレベルに対して80パーセントより低いことを検知すると(時刻t7)、便座3が本体2に対して傾いて取り付けられたり、異物を挟み込んで取り付けられた可能性があると判断し、温度表示部63の表示を「Err」に変更し、エラー表示を行う。
【0071】
温度表示部63の「Err」の表示を確認したユーザが、本体2に取り付けられた状態の便座3を更に押し込むなどの操作をして、便座3が本体2に対して正常に取り付けられると、便座3の二次側電圧検知回路73により検知される電圧値のレベルも正常に戻るので、便座3の信号用一次コイル42からは、通常の電力レベル(本体2が便座3に対して伝送した電力のレベルと同等のレベル)を示す電力信号s2が出力される(時刻t8)。
【0072】
本体2のCPU61では、便座3から受信した電力信号s2のレベルが80パーセントを超えると、便座3が本体2に対して傾いて取り付けられたり、異物を挟み込んで取り付けられた可能性が無くなったと判断し、温度表示部63の「Err」表示を通常の温度表示に戻す。
【0073】
なお、本体2と便座3との間に異物などが挟まっている場合に、ユーザにより便座3が本体2から取り外された場合には、勿論、時刻t2から時刻t5と同様に、本体2から便座3への電力伝送が間欠的に行われる。
【0074】
次に、図6を参照して、CPU61により実行される電力伝送処理について説明する。図6は、CPU61により実行される電力伝送処理を示すフローチャートである。電力伝送処理は、外部電源Wから電源が供給されている間繰り返し実行される処理である。
【0075】
電力伝送処理が実行されると、まず、操作部62から入力される温度指示と、便座3から信号用のコイル32,42を介して入力される温度信号s1とに基づいた温度制御を行う(S1)。
【0076】
S1の処理は、具体的には、操作部62から入力される温度指示により指示された温度に対して、信号用のコイル32,42を介して入力される温度信号s1により示される温度が低ければ、コイル駆動回路60aを駆動させて本体2から便座3への電力用のコイル30,41を介した電力伝送を行い、入力される温度信号s1により示される温度が高ければ、本体2から便座3への電力用のコイル30,41を介した電力伝送を停止する処理である。つまり、通常時の温度制御で行われる電力伝送は、断続制御により不規則な間欠動作で行われるが、その間隔は、便座3が本体2から取り外された場合の間欠動作(5msの電力伝送期間と45msの電力伝送停止期間)に比べて長い時間(例えば、5分間の電力伝送期間と1分間の電力伝送停止期間など)であり、便座3が本体2から取り外された場合の間欠動作より多くの電力(暖房装置を駆動しているときの電力)が伝送される。
【0077】
S1の処理が終わると、便座3から伝送されてくる電力信号(フィードバック信号)s2を継続して受信しているか否かを確認する(S2)。S2の処理では、上述したように、温度信号s1と電力信号s2とが交互に送信されるので、電力信号s2の受信の停止後、次の電力信号s2を受信開始するまでの一定期間(本実施形態では40ms)が経過したか否かに応じて、電力信号s2を継続して受信しているか否かを確認している。
【0078】
S2の処理で確認した結果、便座3から伝送されてくる電力信号s2の受信が継続していなければ(S2:No)、本体2から便座3への電力伝送を間欠的に行う間欠動作制御を行い(S3)、S4の処理へ移行する。S3の処理では、上述したように、本体2から便座3への電力用のコイル30,41を介した電力伝送を、5msの間行い、45msの間停止するように、コイル駆動回路60aに対して駆動指示を出力する処理である。
【0079】
S4の処理では、便座3から伝送されてくる電力信号(フィードバック信号)s2の受信が再開したか否かを確認し(S4)、電力信号s2の受信が再開していなければ(S4:No)、S3の処理へ戻り、間欠動作の制御を継続して実行し、電力信号s2の受信が再開していれば(S4:Yes)、S1の処理へ戻り、通常の電力伝送を再開する。
【0080】
一方、S2の処理で確認した結果、便座3からの電力信号(フィードバック信号)s2を継続して受信していれば(S2:Yes)、次に、その受信した電力信号s2により示される電力のレベルが、本体2から便座3に対して伝送した電力のレベルに対して80パーセント以上であるか否かを確認する(S5)。
【0081】
S5の処理で確認した結果、便座3から受信した電力信号s2により示される電力のレベルが、本体2から便座3に対して伝送した電力のレベルに対して80パーセントより低ければ(S5:No)、温度表示63においてエラー表示を行い(S6)、80パーセント以上であれば(S5:Yes)、エラー表示の解除、即ち、通常の温度表示を再開し(S7)、S1の処理へ戻る。
【0082】
以上、説明したように、本体2では、便座3から伝送される電力信号(フィードバック信号)s2を継続して受信できない状態になると、便座3への電力伝送を間欠的に行い、且つ、50msのうち5msの間のみ電力伝送を行い所定の期間内において伝送される電力を小さくできるので、便座3が本体2から取り外されても継続して電力伝送を行う場合に比較して、便座3が本体2から取り外された場合の消費電力を抑えることができる。
【0083】
また、便座3が本体2から取り外された場合に、本体2からの電力伝送を完全に停止すれば、消費電力を確実に抑えることも可能である。しかし、取り外された便座3が本体2に取り付けられても、便座3側に電力が伝送されないため、便座3から本体2に対して電力信号s2が送信されないので、本体2では、便座3が本体2に取り付けられたか否かを判断できない。そのため、便座3が本体2に対して取り付けられたか否かを検知する着脱センサを設ける必要が生じ、その分の装置コストがアップしてしまう。本実施形態によれば、本体2からは、便座3が本体2から取り外された場合にも、間欠的に電力伝送を行っている。よって、便座3が本体2に取り付けられた場合には、その電力により便座3のCPU74が動作をし、便座3から本体2へ電力信号s2を送信できるので、本体2は、電力信号s2の受信の再開に基づいて、便座3が本体2に取り付けられたことを判断できる。従って、便座3が本体2から取り外された場合の消費電力を抑えつつ、着脱センサが不要になるので、装置がシンプルになり、装置コストの低減を図ることができる。
【0084】
また、本体2から便座3への間欠的な電力伝送は、通常の電力伝送時の電力レベルと同レベルの電力を伝送するので、便座3が本体2に対して取り付けられた場合に、便座3から本体2に伝送される電力信号s2のレベルも高いものとなる。よって、便座3が本体2に対して取り付けられた場合と、便座3が本体2から取り外された場合とで、受信する電力信号s2のレベルの差が顕著になるので、便座3が本体2に対して取り付けられたことを確実に検知することができる。
【0085】
また、本体2では、便座3から信号用のコイル32,42を介して伝送される電力信号s2により示される電力レベルが所定のレベル(本実施形態では80パーセント)より低くなると、温度表示部36において「Err」の報知を行うので、本体2に対して便座3が傾いて取り付けられたり、本体2と便座3との取り付け部分に異物を挟み込んだ不具合が発生した可能性があることを、早期にユーザに知らせて、不具合を早期に解消させることができる。
【0086】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0087】
例えば、上記実施形態では、便座3が本体2から取り外された場合の間欠的な電力伝送を50ms周期で行うものとしたが、便座3が本体2に対して取り付けられたことを検知可能であれば良いので、1s周期や、30s周期など、電力伝送を如何なる周期で行うものとしても良い。また、電力伝送は、5msの供給を50ms周期で行うデューティ比10パーセントで行ったが、その電力伝送のデューティー比は必ずしも10パーセントに限られるものではなく、20パーセントや50パーセント、80パーセントなど如何なるデューティー比であっても良い。
【0088】
また、上記実施形態では、便座3から伝送される電力信号s2のレベルが80パーセントより低くなった場合に、温度表示部36において「Err」表示を行うものとしたが、電力信号s2のレベルは80パーセントには限らない。また、温度表示部36による「Err」表示に代えて、例えば、枢支部10,20の近傍にランプを設け、そのランプによりエラー報知を行うものとしても良いし、ブザーを設け、音声によりエラー報知を行うものとしても良い。枢支部10,20の近傍に設けたランプによりエラー報知を行った場合には、便座3の不正常な装着と、そのエラー報知を行う場所とが対応するので、便座3の不正常な装着を早期にユーザに知らせることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、便座3から伝送される電力信号s2のレベルが80パーセントより低くなった場合でも、本体2から便座3に対する電力伝送を継続するものとしたが、便座3が本体2から取り外された場合に実行される間欠的な電力伝送を行うように構成しても良い。この構成では、暖房便座装置1において、何らかのエラーが生じている状態での消費電力を抑えることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、便座3から本体2への信号用のコイル32,42を介して伝送される信号を、電力信号s2と温度信号s1とを交互に規則性を有して伝送するものとしたが、通常は電力信号s2のみ送信し、一定の時間間隔で温度信号s1を送信するように構成しても良い。また、温度センサ44により検知される温度の変化が一定温度(例えば1度または0.5度)変化する毎に、温度信号s1を伝送するように構成しても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、本体2から便座3が取り外された場合には、本体2からの電力伝送を間欠的に行うように構成としたが、便座3の温度制御を行うときの電力の出力レベルより低い出力レベルとなる電力で電力伝送を継続して行うように構成としても良い。この構成では、本体2から便座3が取り外された場合に電力伝送が継続されるが、電力の出力レベルが低い出力レベルの電力で電力伝送を行うので、消費電力を抑えることができる。また、本体2から便座3が取り外されている間も電力伝送が行われるので、上記実施形態と同様に、着脱センサが不要になり、装置コストを低減できる。なお、便座3の温度制御を行うときの電力の出力レベルより低い出力レベルの電力とは、例えば、便座3を暖めるために伝送される電力が20ワット〜50ワットの間であれば、5ワットにすることである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態の暖房便座装置の概略を示した図である。
【図2】信号用のコイル近傍の概略を示した図であり、(a)は、信号用のコイルの近傍を示した斜視図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における信号用のコイル近傍の断面図であり、(c)は、図2(a)の矢印IIc視における信号用のコイルを示した図である。
【図3】電力用のコイル近傍の概略を示した断面図であり、(a)は、便座が本体に対して正常に取り付けられた状態を示しており、(b)は、便座を本体から取り外す場合の状態を示している。
【図4】本体及び便座の電気回路図の概略を示したブロック図である。
【図5】本体に対する便座の着脱状態に対する電力伝送および信号伝送の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】CPUにより実行される電力伝送処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 暖房便座装置
2 本体
3 便座
10,20 枢支部
30 電力用一次コイル(電力伝送手段の一部)
32 信号用二次コイル(信号伝送手段の一部)
41 電力用二次コイル(電力伝送手段に一部)
42 信号用一次コイル(信号伝送手段の一部)
44 温度センサ
61 CPU(電力伝送実行手段の一部、再開電力伝送実行手段の一部)
63 温度表示部(報知手段)
74 CPU(信号伝送実行手段の一部)
S3 電力伝送実行手段の一部
S4:Yes 再開電力伝送実行手段の一部
S6 報知手段の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房装置を有する便座と、その便座が着脱自在に構成される本体と、その本体から便座へ電力伝送を無配線方式で行う電力伝送手段と、前記便座から本体へ信号伝送を無配線方式で行う信号伝送手段とを備えた暖房便座装置において、
前記便座は、
前記電力伝送手段により前記本体から電力が伝送されている場合に、その伝送される電力に対応するフィードバック信号を、前記信号伝送手段により前記本体に伝送する信号伝送実行手段を備え、
前記本体は、
前記信号伝送手段により前記便座から伝送される前記フィードバック信号を受信できない場合に、前記電力伝送手段により前記便座に対して伝送される電力を、前記暖房装置を駆動しているときの電力より小さい電力とする電力伝送実行手段と、
その電力伝送実行手段により電力伝送が行われている状態で、前記フィードバック信号を受信すると、前記便座に対しての電力伝送を前記暖房装置を駆動しているときの電力で再開する再開電力伝送実行手段とを備えていることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座は、その便座の温度を検出する温度センサを備え、
前記信号伝送実行手段は、前記電力伝送手段により前記本体から伝送される電力に対応するフィードバック信号と、前記温度センサにより検出される温度を示す温度信号との両方を、前記信号伝送手段により前記本体へそれぞれ異なるタイミングで伝送可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記信号伝送実行手段は、前記電力伝送手段により前記本体から伝送される電力レベルを示すフィードバック信号を前記本体に伝送するものであり、
前記本体は、前記便座から伝送される前記フィードバック信号により示される電力レベルが、前記本体から伝送した電力レベルに対して低い場合に、その旨を報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記本体と便座とは、その本体または便座の幅方向の両端に設けられる一対の枢支部によって、前記便座が前記本体に対して揺動可能に支持されており、
前記電力伝送手段による電力伝送は一方の枢支部で行われると共に、前記信号伝送手段による信号伝送は他方の枢支部で行われることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−75224(P2010−75224A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243667(P2008−243667)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(300044894)北伸電機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】