説明

暖房便座装置

【課題】快適な座り心地を得ることができ、便座の外観を損なうことがない暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、前記基材の上に設けられ弾力性を有するクッション部と、前記基材に設けられた発熱部と、着座面よりも低い位置に形成され、前記クッション部には覆われていない又は前記着座面の下に設けられたクッション部の厚さよりも薄い厚さのクッション部により覆われた受け部と、を有する便座と、閉じた状態において前記便座の表面に接触して前記受け部により受けられる脚部を有し、前記便座の上を覆うことができる便蓋と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されている。そのため、使用者が便座に座ったときに、硬い座り心地を与えている。また一方、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると、冷感を感じる。そこで、座り心地を向上させるために、ベース部材の材料よりも軟質の材料で形成され、使用者の着座にともなって弾性変形可能な被覆部材を備えた便座装置がある(特許文献1)。
【0003】
また、便蓋は、一般的に、閉じた状態で便蓋自身を支持する脚部を有する。ここで、例えば特許文献1に記載された被覆部材などのような弾性変形可能な部分は、弾力性を有するため、便座の着座面には便蓋に設けられた脚部の跡が残るおそれがある。この課題を解決するために、特許文献1に記載された便座装置では、ベース部材の上方部材の一部が被覆部材の開口穴から突出して、突出部を形成している。そして、その便座装置は、便蓋が閉じた状態において、便座の突出部と便蓋の当接部とが一致した箇所となるように構成されている。特許文献1に記載された便座装置によれば、便蓋の当接部は、便蓋が閉じられた状態では常にベース部材の上方部材の一部に設けられた突出部の表面に当接するため、被覆部材に圧痕などが生ずるおそれがない。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された便座装置では、ベース部材の上方部材の一部に設けられた突出部が表面に露出するため、着座した使用者のおしりや腿が突出部と当接するおそれがある。そうすると、使用者は、座り心地の悪化を感ずるおそれがある。また、ベース部材の上方部材の一部に設けられた突出部が表面に露出するため、便座の外観が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、快適な座り心地を得ることができ、便座の外観を損なうことがない暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、基材と、前記基材の上に設けられ弾力性を有するクッション部と、前記基材に設けられた発熱部と、着座面よりも低い位置に形成され、前記クッション部には覆われていない又は前記着座面の下に設けられたクッション部の厚さよりも薄い厚さのクッション部により覆われた受け部と、を有する便座と、閉じた状態において前記便座の表面に接触して前記受け部により受けられる脚部を有し、前記便座の上を覆うことができる便蓋と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0008】
この暖房便座装置によれば、便座は、クッション部には覆われていない受け部を有する。そのため、受け部は、閉じた状態の便蓋から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。あるいは、便座は、着座面の下方に設けられたクッション部の厚さよりも薄い厚さのクッション部により覆われた受け部を有する。そのため、受け部が、閉じた状態の便蓋から荷重を受けても、その圧縮変形量は、着座面の下方に設けられたクッション部が荷重を受けた場合の圧縮変形量よりも小さい。そのため、受け部に圧縮痕が残ることはない。したがって、閉じた状態の便蓋から受ける荷重によっては、便座の表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、便座の外観が損なわれることはない。また、クッション部は、基材の上に設けられ弾力性を有するため、使用者が便座に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記便座は、前記クッション部および前記受け部の上を覆う表皮材をさらに有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、表皮材は、クッション部および受け部の上を覆っている。そのため、クッション部と受け部との間の隙間からゴミが入り込むことはない。これにより、便座の防汚性をより高めることができる。
【0011】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記便座は、前記基材の内部に設けられて前記受け部の下まで延設され、前記受け部からの放熱を抑える断熱材をさらに有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、基材の内部に設けられた断熱材は、受け部の下まで延設されている。そのため、断熱材は、ヒータの熱が受け部から放熱することを抑えることができる。これにより、無駄な消費電力を削減し、省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
また、断熱材は、ヒータの熱が受け部から放熱することを抑えることができるため、便座に着座した使用者が受け部を熱いと感じることを抑えることができる。そのため、使用者が便座に座ったときの座り心地をより向上させることができる。
【0014】
また、第4の発明は、第1または第2の発明において、前記便座は、前記基材の内部に設けられ前記受け部からの放熱を抑える第1の断熱材と、前記受け部に配設され前記受け部からの放熱を抑える第2の断熱材と、をさらに有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、第1の断熱材が基材の内部に設けられ、第2の断熱材が受け部に配設されている。そのため、ヒータの熱が受け部から放熱することを抑えることができる。これにより、無駄な消費電力を削減し、省エネルギー化を図ることができる。
【0016】
また、第1および第2の断熱材は、ヒータの熱が受け部から放熱することを抑えることができるため、便座に着座した使用者が受け部を熱いと感じることを抑えることができる。そのため、使用者が便座に座ったときの座り心地をより向上させることができる。
【0017】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記受け部は、前記便座の外周縁に設けられたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、受け部は、便座の外周縁に設けられているため、着座した使用者の腿などと受け部とが接触するおそれは少ない。そのため、使用者が便座に座ったときの座り心地が損なわれるおそれは少ない。また、受け部が便座の外周縁に設けられているため、汚れが受け部に付着しても、その汚れは、周囲が囲まれた部分に入り込むことはない。したがって、清掃者は、受け部に沿って汚れを拭き取ることにより、その受け部を容易に清掃することができる。これにより、便座の防汚性をより高めることができる。また、便座の外観が損なわれることはない。
【0019】
また、第6の発明は、基材と、前記基材の上に設けられた弾力性を有するクッション部と、前記基材に設けられた発熱部と、前記クッション部の一部において着座面よりも低い位置に形成され、前記クッション部の弾力性よりも小さい弾力性を有する硬質部と、を有する便座と、閉じた状態において前記便座の表面に接触して前記硬質部により受けられる脚部を有し、前記便座の上を覆うことができる便蓋と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0020】
この暖房便座装置によれば、便座が有する硬質部は、クッション部の一部において着座面よりも低い位置に形成されており、クッション部の弾力性よりも小さい弾力性を有する。そのため、硬質部は、閉じた状態の便蓋から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。そのため、硬質部に圧縮痕が残ることはない。したがって、閉じた状態の便蓋から受ける荷重によっては、便座の表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、便座の外観が損なわれることはない。また、クッション部は、基材の上に設けられ弾力性を有するため、使用者が便座に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、快適な座り心地を得ることができ、便座の外観を損なうことがない暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図3】本実施形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
【図4】本実施形態の便蓋が閉じた状態を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態の便座の変形例を表す断面模式図である。
【図6】本実施形態の便座の他の変形例を表す断面模式図である。
【図7】本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
【図8】本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
【図9】本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
【図10】本実施形態の便座の受け部を拡大して眺めた拡大模式図である。
【図11】本実施形態の比較例にかかる暖房便座装置を例示する斜視模式図である。
【図12】図11に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【図13】クッション部と表面部とを接合する方法を説明するための斜視模式図である。
【図14】クッション部と表面部とが接合された状態を表す平面模式図である。
【図15】クッション部と表面部と基材とが接合された状態を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図3は、本実施形態にかかる暖房便座装置の便座の断面を表す断面模式図である。
なお、図3は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0024】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、暖房便座機能部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0025】
便座200は、ヒータ(発熱部)210を内蔵する。このヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座200の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。ヒータ210の通電量(加熱量)の制御は、暖房便座機能部400に内蔵された制御部410により実行される。制御部410は、例えば便座200に内蔵された図示しない温度検知手段などからの検知信号に基づいてヒータ210の通電量を制御することができる。
【0026】
なお、図1および図2に表した便座200では、1本のヒータ210が往復するように設置されているが、ヒータ210の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数のヒータ210が設置されていてもよい。
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シースヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0027】
また、便座200を加熱する手段としては、ヒータ210に限定されるわけではない。便座200を加熱する手段は、例えば、通電されて磁界を発生する加熱コイルと、加熱コイルから発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する加熱板と、を有する誘導加熱手段であってもよい。便座200を加熱する手段が誘導加熱手段である場合には、発熱部は加熱板である。このような加熱板(発熱部)としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体により形成された金属板が挙げられる。
【0028】
便蓋300は、閉じた状態において便蓋300自身を支持する脚部310を有する。つまり、脚部310は、便蓋300が閉じた状態で便座200の表面と接触することにより、便蓋300を支持することができる。なお、脚部310の設置位置および設置数は、図1に表した脚部310の設置位置および設置数だけに限定されるわけではなく、適宜変更可能である。また、便蓋300は、閉じた状態において便座200の上を覆うことができる。
【0029】
また、便蓋300を支持する脚部の形状は、図1に表した脚部310の形状に限定されるわけではない。便蓋300を支持する脚部は、例えば、便蓋300の周縁部320であってもよい。つまり、図1に表した脚部310が設けられていない場合には、便蓋300の周縁部320は、便蓋300を支持する脚部として機能し、便座200の表面と接触することにより便蓋300を支持することができる。すなわち、本願明細書において「脚部」とは、便座200の表面と接触することにより便蓋300を支持することができる部分をいうものとする。
【0030】
ここで、便座200についてさらに説明する。
便座200は、図3に表したように、基材230と、弾力性(クッション性)を有するクッション部240と、クッション部240の上面や側面を覆う表面部(表皮材)250と、ヒータ210の上に隣接して設けられた熱伝導体260と、を有する。基材230は、上板231と底板233とを有する。但し、基材230は、一体的に形成されていてもよい。また、表面部250の表面は、着座面として機能する。なお、本願明細書において「弾力性(クッション性)」とは、荷重を受けて圧縮変形したり、荷重を受けて厚みが変化する性質をいう。
【0031】
基材230は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成されている。熱伝導体260としては、例えばアルミシートやカーボンシートなどが挙げられる。ヒータ210は、基材230に適宜設けられている。クッション部240は、基材230よりも柔らかい材料により形成され、使用者が便座200に着座すると、その体重に応じて変形して体重を分散させる。クッション部240は、基材230の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0032】
しかしながら、クッション部240は弾力性を有するため、便蓋300の開閉が繰り返されたり、あるいは便蓋300を閉じた状態が長い間続くと、脚部310や周縁部320の圧縮痕が便座200の表面に残るおそれがある。そうすると、座り心地が低下したり、便座200の外観が損なわれるおそれがある。
【0033】
これに対して、本実施形態にかかる暖房便座装置100の便座200は、図1〜図3に表したように、脚部310や周縁部320を受けることができる受け部270を外周縁に有する。受け部270は、クッション部240には覆われておらず、便座200の着座面よりも低い位置に形成されている。すなわち、受け部270は、便座200の着座面から凹んでいる。受け部270の作用および効果については、後に詳述する。
【0034】
受け部270は、図1に表したように、便座200の右側方から前方を介し左側方へ亘って形成されていてもよいし、図2に表したように、便座200の右側方および左側方の両側に形成されていてもよい。すなわち、図2に表した暖房便座装置100では、受け部270は、端部271から後方へ向かって形成されており、端部271よりも前方には形成されていない。図2に表した受け部270の形成位置によれば、便座200に着座した使用者の腿が受け部270と接触することを抑えることができる。そのため、図2に表した暖房便座装置100では、より快適な座り心地を得ることができる。
【0035】
次に、受け部270の作用および効果について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態の便蓋が閉じた状態を表す断面模式図である。
なお、図4(a)は、便蓋300を支持する部分が脚部310である場合を例示する断面模式図であり、図4(b)は、便蓋300を支持する部分が周縁部320である場合を例示する断面模式図である。
【0036】
図1〜図3に関して前述したように、本実施形態の便座200は、基材230がクッション部240に覆われていない受け部270を有する。つまり、本実施形態の受け部270は、基材230の一部により形成されている。そのため、本実施形態の受け部270は、基材230と同様に、例えばポリプロピレン等の樹脂により形成されている。
【0037】
受け部270は、図4(a)に表したように、閉じた状態の便蓋300の脚部310を表面部250を介して受けることができる。あるいは、受け部270は、図4(b)に表したように、閉じた状態の便蓋300の周縁部320を表面部250を介して受けることができる。これにより、受け部270は、閉じた状態の便蓋300を支持することができる。
【0038】
ここで、本実施形態の受け部270は、クッション部240によっては覆われておらず、例えばポリプロピレン等の比較的硬い樹脂により形成されているため、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。そのため、受け部270に圧縮痕が残ることはない。
一方、図4(a)および図4(b)に表したように、クッション部240および表面部250は、便蓋300とは接触しない。そのため、クッション部240は、閉じた状態の便蓋300からは荷重を受けない。したがって、クッション部240に圧縮痕が残ることはない。
【0039】
これらによれば、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重によっては、便座200の表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、本実施形態の便座200の外観が損なわれることはない。また、本実施形態によれば、クッション部240は、基材230の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態の表面部(表皮材)250は、図4(a)および図4(b)に表したように、クッション部240および受け部270の上方を覆っている。そのため、クッション部240と受け部270との間の隙間からゴミが入り込むことはない。これにより、便座200の防汚性をより高めることができる。
【0041】
次に、本実施形態の便座の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態の便座の変形例を表す断面模式図である。
なお、図5は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0042】
本変形例の便座200aは、着座面の下方に設けられたクッション部240の厚さよりも薄い厚さのクッション部240により覆われた受け部270aを有する。すなわち、図3および図4に関して前述した便座200の受け部270が基材230の一部により形成されているのに対し、本変形例の便座200aの受け部270aは、基材230の一部と薄い厚さのクッション部240とにより形成されている。その他の構造は、図3および図4に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0043】
本変形例によれば、受け部270aが有するクッション部240の厚さは、着座面の下方に設けられたクッション部240の厚さよりも薄い。そのため、本変形例の受け部270aが、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けても、その圧縮変形量は、着座面の下方に設けられたクッション部240が荷重を受けた場合の圧縮変形量よりも小さい。そのため、受け部270aに圧縮痕が残るおそれは少ない。
【0044】
一方、着座面の下方に設けられたクッション部240および表面部250は、図4に関して前述した便座200の同様に便蓋300とは接触しない。そのため、着座面の下方に設けられたクッション部240は、閉じた状態の便蓋300からは荷重を受けない。したがって、着座面の下方に設けられたクッション部240に圧縮痕が残ることはない。
【0045】
これらによれば、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重によっては、便座200aの表面に圧縮痕が残るおそれは少ない。そのため、本変形例の便座200aの外観が損なわれることはない。また、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0046】
図6は、本実施形態の便座の他の変形例を表す断面模式図である。
なお、図6は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
クッション部240は、後に詳述するが、例えばポリプロピレンフォームや発泡ポリエチレンなどの多孔質材料により形成される。そのため、クッション部240の熱伝導率は、基材230や表面部250の熱伝導率よりも低い。したがって、クッション部240は、ヒータ210の熱が便座200の上方および側方へ放熱することを抑えることができる。
【0047】
ここで、図3に関して前述した便座200の受け部270は、クッション部240に覆われていない。また、図5に関して前述した便座200aの受け部270aが有するクッション部240の厚さは、着座面の下方に設けられたクッション部240の厚さよりも薄い。そのため、図3および図5に関して前述した便座200、200aでは、ヒータ210の熱が受け部270、270aからそれぞれ放熱しやすい場合がある。また、図3および図5に関して前述した便座200、200aでは、ヒータ210の熱が受け部270、270aからそれぞれ放熱しやすい場合があるため、便座200、200aに着座した使用者は、受け部270、270aを熱いと感じることもあり得る。
【0048】
これに対して、本変形例の便座200bは、基材230の内部に設けられた断熱材220を備える。断熱材220は、図6に表したように、基材230の底板233に載置され、受け部270の下方まで延設されている。その他の構造は、図3および図4に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0049】
本変形例によれば、基材230の内部に設けられた断熱材220は、受け部270の下方まで延設されているため、ヒータ210の熱が受け部270から放熱することを抑えることができる。さらに、断熱材220は、ヒータ210の熱が便座200bの外周側や下方へ放熱することを抑えることができる。そのため、無駄な消費電力を削減し、省エネルギー化を図ることができる。
また、断熱材220は、ヒータ210の熱が受け部270から放熱することを抑えることができるため、便座200bに着座した使用者が受け部270を熱いと感じることを抑えることができる。そのため、使用者が便座200bに座ったときの座り心地をより向上させることができる。さらに、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0050】
図7は、本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
なお、図7は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
本変形例の便座200cは、図6に関して前述した便座200bと同様に、基材230の内部に設けられた断熱材220a(第1の断熱材)を備える。断熱材220aは、図6に関して前述した断熱材220のようには受け部270の下方までは延設していない。
【0051】
また、本変形例の便座200cの受け部270には、図7に表したように、断熱材220aとは別の断熱材220b(第2の断熱材)が配設されている。断熱材220bは、硬質な材料により形成されている。このような断熱材220bの材料としては、例えば発泡硬質ウレタンフォームや低発泡率の発泡スチロールなどが挙げられる。
さらに、基材230の外周側の側面には、着座面の下方と同様にクッション部240が設けられている。その他の構造は、図3および図4に関して前述した便座200の構造と同様である。
【0052】
本変形例によれば、断熱材220aが基材230の内部に設けられ、断熱材220bが受け部270に配設されているため、ヒータ210の熱が受け部270から放熱することを抑えることができる。また、クッション部240は、基材230の外周側の側面にも設けられているため、ヒータ210の熱が便座200cの外周側や下方へ放熱することを抑えることができる。そのため、無駄な消費電力を削減し、省エネルギー化を図ることができる。
【0053】
さらに、断熱材220bは、硬質な材料により形成されているため、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。そのため、受け部270に圧縮痕が残ることはない。つまり、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重によっては、便座200cの表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、本変形例の便座200cの外観が損なわれることはない。また、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0054】
図8は、本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
なお、図8は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
本変形例の便座200dは、図6および図7に関して前述した断熱材220、220a、220bよりも高い断熱性を有する断熱材220cを備える。断熱材220cは、図8に表したように、着座面の下方に設けられたクッション部240の端面と、基材230の外周側の側面に設けられたクッション部240の端面と、を覆っている。その他の構造は、図7に関して前述した便座200cの構造と同様である。なお、本変形例の便座200dの基材230の内部には、例えば図7に関して前述した断熱材220aが設けられていてもよい。
【0055】
ここで、基材230からみたときに、より近い部分のクッション部240の温度は、より遠い部分のクッション部240の温度よりも高い。つまり、クッション部240の温度は、基材230から離れるにつれて低下する。これは、図8に表したように、ヒータ210が基材230の近傍に設けられているためである。さらに、クッション部240の熱伝導率が基材230や表面部250の熱伝導率よりも低く、クッション部240は、より大きい温度勾配を有するためである。そのため、着座した使用者の腿などが受け部270と接触すると、その使用者は、不快感を感ずる場合がある。
【0056】
これに対して、本変形例の便座200dによれば、より高い断熱性を有する断熱材220cは、着座面の下方に設けられたクッション部240の端面と、基材230の外周側の側面に設けられたクッション部240の端面と、を覆っている。そのため、着座した使用者の腿などが受け部270と接触しても、クッション部240の温度勾配を感ずるおそれは少ない。そのため、使用者が不快感を感ずることを抑えることできる。つまり、使用者が便座200dに座ったときの座り心地をより向上させることができる。さらに、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0057】
図9は、本実施形態の便座のさらに他の変形例を表す断面模式図である。
なお、図9は、図1および図2に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
本変形例の便座200eの受け部270には、硬質部240aが形成されている。硬質部240aは、クッション部240の一部が圧縮されたものである。そのため、硬質部240aの弾力性は、クッション部240の弾力性よりも小さい。その他の構造は、図7に関して前述した便座200cの構造と同様である。なお、本変形例の便座200eの基材230の内部には、例えば図7に関して前述した断熱材220aが設けられていてもよい。
【0058】
本変形例によれば、硬質部240aは、受け部270に形成され、クッション部240の弾力性よりも小さい弾力性を有する。そのため、硬質部240aは、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。そのため、受け部270に圧縮痕が残ることはない。つまり、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重によっては、便座200eの表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、本変形例の便座200eの外観が損なわれることはない。また、その他の効果についても、図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0059】
なお、図6〜図9を参照しつつ、受け部270がクッション部240によっては覆われていない便座(図3参照)の種々の変形例について説明したが、便座の変形例は、これだけに限定されるわけではない。例えば、図6〜図9に表した便座の変形例は、着座面の下方に設けられたクッション部240の厚さよりも薄い厚さのクッション部240により覆われた受け部270aを有する便座(図5参照)に適用されてもよい。この場合でも、図6〜図9に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0060】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置の防汚性について、図面を参照しつつ説明する。
図10は、本実施形態の便座の受け部を拡大して眺めた拡大模式図である。
図11は、本実施形態の比較例にかかる暖房便座装置を例示する斜視模式図である。
また、図12は、図11に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
なお、図10は、図3に表した領域Cを拡大して眺めた拡大模式図である。
【0061】
本実施形態の便座200の受け部270は、図1〜図3に関して前述したように、便座200の外周縁に設けられている。そのため、受け部270は、その周囲を囲まれているわけではなく、図10に表したように、少なくとも一方向に開放されている。そのため、汚れ501が受け部270に付着しても、その汚れ501は、周囲が囲まれた部分に入り込むことはない。したがって、清掃者は、受け部270に沿って汚れ501を拭き取ることにより、その受け部270を容易に清掃することができる。
【0062】
これに対して、本実施形態の比較例にかかる暖房便座装置100aの便座200fは、図11に表したように、便蓋300の脚部310や周縁部320を受けることができる受け部を有していない。そのため、便座200fの表面には、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重により圧縮痕201が残る場合がある。圧縮痕201は、例えば図12に表したように、その周囲を囲まれている。
【0063】
そのため、汚れ501が圧縮痕201に付着すると、その汚れ501は、周囲が囲まれた圧縮痕201の内部に入り込む。したがって、清掃者が圧縮痕201に入り込んだ汚れ501を拭き取ったり、取り除くことは困難である。つまり、清掃者が受け部270を清掃することは困難である。
【0064】
次に、本実施形態の便座200の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
図13は、クッション部と表面部とを接合する方法を説明するための斜視模式図である。
また、図14は、クッション部と表面部とが接合された状態を表す平面模式図である。 また、図15は、クッション部と表面部と基材とが接合された状態を表す断面模式図である。
【0065】
クッション部240と表面部250とが接合される前においては、クッション部240には、図13に表したように、切り欠き部241が形成されている。そして、切り欠き部241を有するクッション部240と、表面部250と、を接合すると、図14に表したように、クッション部240が表面部250の一部に接合された接合体を得ることができる。
【0066】
ここで、クッション部240は、例えばポリプロピレンフォームや発泡ポリエチレンなどにより形成されている。また、表面部250は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO:Thermo Plastic Olefin)やポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)などにより形成されている。そして、クッション部240と表面部250との接合は、例えば、クッション部240と表面部250との間にプライマーを塗布することにより実行される。
【0067】
また、基材230は、例えばポリプロピレン等の樹脂により形成されている。そのため、基材230を射出成形する際に、クッション部240と表面部250との接合体を金型に予め配置しておくことにより、クッション部240と表面部250との接合体を射出成形と同時に基材230と接合することができる。このとき、クッション部240が接合されていない表面部250の非接合部251は、便座200の外周側を含むように、すなわち受け部270が形成される部分を含むように金型に配置される。
【0068】
これによれば、クッション部240は射出成形と同時に基材230と接合するため、基材230とクッション部240との間の接合強度はより大きい。そのため、使用者が便座200に着座することにより基材230とクッション部240とが相対的にずれたり、クッション部240に皺が生ずるおそれは少ない。そのため、便座200の外観が損なわれることはない。
【0069】
また、表面部250は、オレフィン系熱可塑性エラストマーやポリ塩化ビニルなどにより形成されており、その表面部250の厚さは薄い。そのため、表面部250は、基材230の射出成形の際に基材230およびクッション部240の形状に追従することができる。そのため、表面部250と基材230との間の接合強度はより大きい。そのため、使用者が便座200に着座することにより基材230と表面部250とが相対的にずれたり、表面部250に皺が生ずるおそれは少ない。そのため、便座200の外観が損なわれることはない。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、便座200は、基材230がクッション部240に覆われていない受け部270を有する。そのため、受け部270は、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けてもほとんど圧縮変形しない。そのため、受け部270に圧縮痕が残ることはない。あるいは、便座200aは、着座面の下方に設けられたクッション部240の厚さよりも薄い厚さのクッション部240により覆われた受け部270aを有する。そのため、受け部270aが、閉じた状態の便蓋300から荷重を受けても、その圧縮変形量は、着座面の下方に設けられたクッション部240が荷重を受けた場合の圧縮変形量よりも小さい。そのため、受け部270aに圧縮痕が残るおそれは少ない。したがって、閉じた状態の便蓋300から受ける荷重によっては、便座200、200aの表面に圧縮痕が残ることはない。そのため、便座200、200aの外観が損なわれることはない。また、クッション部240は、基材230の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200や便蓋300などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや受け部270や脚部310の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
100、100a 暖房便座装置、 200、200a、200b、200c、200d、200e、200f 便座、 201 圧縮痕、 210 ヒータ、 220、220a、220b、220c 断熱材、 230 基材、 231 上板、 233 底板、 240 クッション部、 240a 硬質部、 241 切り欠き部、 250 表面部、 251 非接合部、 260 熱伝導体、 270、270a 受け部、 271 端部、 300 便蓋、 310 脚部、 320 周縁部、 400 暖房便座機能部、 410 制御部、 501 汚れ、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられ弾力性を有するクッション部と、
前記基材に設けられた発熱部と、
着座面よりも低い位置に形成され、前記クッション部には覆われていない又は前記着座面の下に設けられたクッション部の厚さよりも薄い厚さのクッション部により覆われた受け部と、
を有する便座と、
閉じた状態において前記便座の表面に接触して前記受け部により受けられる脚部を有し、前記便座の上を覆うことができる便蓋と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記便座は、前記クッション部および前記受け部の上を覆う表皮材をさらに有することを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座は、前記基材の内部に設けられて前記受け部の下まで延設され、前記受け部からの放熱を抑える断熱材をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記便座は、
前記基材の内部に設けられ前記受け部からの放熱を抑える第1の断熱材と、
前記受け部に配設され前記受け部からの放熱を抑える第2の断熱材と、
をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記受け部は、前記便座の外周縁に設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
基材と、
前記基材の上に設けられた弾力性を有するクッション部と、
前記基材に設けられた発熱部と、
前記クッション部の一部において着座面よりも低い位置に形成され、前記クッション部の弾力性よりも小さい弾力性を有する硬質部と、
を有する便座と、
閉じた状態において前記便座の表面に接触して前記硬質部により受けられる脚部を有し、前記便座の上を覆うことができる便蓋と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−172789(P2011−172789A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40039(P2010−40039)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】