説明

暖房便座装置

【課題】より高い安全性を確保することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座と、高周波電流を生成する高周波電源回路と、前記高周波電源回路から供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電源回路における前記高周波電流の生成を制御する制御部と、人が前記便座に着座すると、前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を前記制御部を介さずに停止させるスイッチと、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷感を感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置では、省エネルギー化や安全性を図るために種々の提案がなされている。
【0003】
着座検知手段により着座を検知すると、制御部が発熱体の加熱を停止または加熱量を低減する暖房便座がある(特許文献1)。特許文献1に記載された暖房便座によれば、使用者がトイレに入室した後、便座を高速に昇温させ、着座検知手段の信号により、使用者が便座着座時には発熱体への付勢を遮断または低出力に制限する。そのため、常時便座を加温しておく必要がなく、便座への着座直前だけ便座加温を行うので、省エネになる。また、特許文献1の記載によれば、万一安全装置などが故障しても使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配がなく安全である。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された暖房便座では、使用者が排便のために着座すると、着座検知手段の信号によりランプヒーターへの通電量をゼロまたは便座温度が過昇しないところまで低減するように制御部が制御する。そのため、制御部が故障した場合には、使用者が排便のために着座してもランプヒーターへの通電量をゼロまたは便座温度が過昇しないところまで低減することはできない。
【0005】
また、制御装置が、入室検知手段でトイレへの入室を検知したなら電磁誘導加熱コイルを作動させ、人体検知手段で人体を検知したなら電磁誘導加熱コイルを作動させない便座暖房装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された便座暖房装置によれば、瞬間的に便座を暖房できる。よって、ヒータで常時予熱しなくても済むか又は従来より少ない電力で予熱すればよく、電力消費を節減できる。また、特許文献2の記載によれば、便ふたの近傍に人体が存在しているときは電磁誘導加熱コイルを作動させないため、電磁誘導加熱コイルから発生する電磁波に起因する人体への直接的な悪影響や、身に着けているアクセサリーやベルトのバックル等の金属物への悪影響を防止できる。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された便座暖房装置では、制御装置は、人体検知手段で人体を検知したなら電磁誘導加熱コイルを作動させない。そのため、制御装置が故障した場合には、人体検知手段で人体を検知しても電磁誘導加熱コイルを作動させないようにはできない。これにより、人が便座に着座している状態において既定値以上の磁界が発生したままとなるおそれがある。そして、規定値以上の磁界が人体に照射されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−12346号公報
【特許文献2】特開2008−18114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、より高い安全性を確保することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、便座と、高周波電流を生成する高周波電源回路と、前記高周波電源回路から供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電源回路における前記高周波電流の生成を制御する制御部と、人が前記便座に着座すると、前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を前記制御部を介さずに停止させるスイッチと、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、人が便座に着座すると、スイッチが誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を制御部を介さずに停止させる。そのため、制御部が故障した場合でも、人が便座に着座すると誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を確実に停止させることができる。これにより、制御部が故障した場合でも、規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。そのため、より高い安全性を確保することができる。
【0011】
また、第2の発明は、便座と、前記便座を覆うことが可能な便蓋と、高周波電流を生成する高周波電源回路と、前記高周波電源回路から供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電源回路における前記高周波電流の生成を制御する制御部と、前記便蓋が開くと、前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を前記制御部を介さずに停止させるスイッチと、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、便蓋が開くと、スイッチが誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を制御部を介さずに停止させる。そのため、制御部が故障した場合でも、便蓋が開くと誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を確実に停止させることができる。これにより、制御部が故障した場合でも、規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。そのため、より高い安全性を確保することができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記高周波電源回路は、前記制御部から送信される制御信号により開閉動作をする制御スイッチを有し、前記スイッチは、前記制御部と前記制御スイッチとを接続する信号線上に設けられ、人が前記便座に着座すると、または前記便蓋が開くと、前記信号線の通信を遮断することにより前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を停止させることを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、高周波電源回路は、前記制御部から送信される制御信号により開閉動作をする制御スイッチを有し、スイッチは、制御部と制御スイッチとを接続する信号線上に設けられている。そのため、より簡易的な回路構成で規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、より高い安全性を確保することができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態の便座の内部構造を表す断面模式図である。
【図3】本実施形態の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
【図4】本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
【図5】本実施形態の他の変形例にかかる暖房便座装置の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
【図6】本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置の便座に使用者が着座した状態を例示する平面模式図である。
【図7】本具体例の便座に使用者が着座したときの便座の動作を説明するための拡大模式図である。
【図8】本具体例の便座の軸支部近傍の構造を例示する斜視模式図である。
【図9】本具体例の可動部と固定部とを組み立てる前の状態を表す斜視模式図である。
【図10】本具体例の可動部と固定部とを組み立てた後の状態を表す斜視模式図である。
【図11】使用者が本具体例の便座に着座する前のマイクロスイッチ近傍の状態を例示する平面模式図である。
【図12】使用者が本具体例の便座に着座した後のマイクロスイッチ近傍の状態を例示する平面模式図である。
【図13】本実施形態の他の具体例にかかる暖房便座装置の便蓋が開いた状態を例示する平面模式図である。
【図14】本具体例の便蓋が閉じた状態を例示する斜視模式図である。
【図15】本具体例の便蓋が開いた状態を例示する斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態の便座の内部構造を表す断面模式図である。
なお、図2は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0018】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0019】
便座200は、図2に表したように、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0020】
便座200の筐体210の内部には、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222と、誘導加熱コイル222を支持する支持体280と、が設けられている。また、誘導加熱コイル222は、後に詳述する高周波電源回路500(例えば図3参照)と電力供給線221により接続されている。電力供給線221は、例えば複数の絶縁素線を撚り合わせた構造を有するリッツ線などである。
【0021】
なお、図2に表した誘導加熱コイル222は、支持体280により支持されているが、これだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、支持体280に支持されることなく、例えば便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていてもよい。
【0022】
また、便座200には、誘導加熱コイル222から発生した磁界により誘導加熱される発熱部231が設けられている。より具体的には、発熱部231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。発熱部231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、発熱部231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、発熱部231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0023】
発熱部231としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を発熱部231に用いることがより好ましい。なお、発熱部231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と発熱部231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが発熱部231の表面に施されることがより好ましい。
【0024】
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、誘導加熱コイル222が便座200の内部に設けられた場合を例に挙げて説明しているが、誘導加熱コイル222の設置形態は、これだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、便蓋300の内部に設けられていてもよい。この場合でも、便蓋300が閉じた状態において、発熱部231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱することができる。
【0026】
図3は、本実施形態の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
本実施形態にかかる暖房便座装置100は、高周波電流を生成し誘導加熱コイル222にその高周波電流を供給する高周波電源回路500を有する。高周波電源回路500は、交流電源である商用電源10から供給される電流を整流する整流部520と、整流部520により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する平滑部530と、共振用コンデンサ541と、制御部410から送信される制御信号により開閉動作をする制御スイッチ551と、を有する。
【0027】
整流部520は、正負が入れ替わる商用電源10の電流や電圧を例えば正のみに整流し、共振しやすい状態とする。
平滑部530は、平滑コイル531と、平滑コンデンサ533と、を有し、誘導加熱コイル222において電力が不足した場合には、電力を供給することができる。
【0028】
制御スイッチ551は、ノーマルオープンタイプの開閉スイッチであり、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)などである。制御スイッチ551は、例えばケーシング400に内蔵された制御部410から信号線415を介して送信される制御信号により、「入」(オン)と「切」(オフ)の動作(開閉動作)をする。制御部410と制御スイッチ551とを接続する信号線415上には、信号線415を遮断可能なスイッチ421が設けられている。なお、高周波電源回路500や、制御部410や、スイッチ421は、ケーシング400に内蔵されていてもよいし、便座200あるいは便蓋300に内蔵されていてもよい。
【0029】
まず、制御部410が制御スイッチ551を「入」の状態に制御すると、商用電源10から供給された電流は、整流部520により整流され、平滑部530により平滑化され、誘導加熱コイル222に流れる。そして、誘導加熱コイル222にエネルギーが溜まる。 続いて、制御部410が制御スイッチ551を「切」の状態に制御すると、商用電源10からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル222に溜められたエネルギーが共振用コンデンサ541へ移動し共振する。
続いて、制御部410が制御スイッチ551を再び「入」の状態に制御すると、共振用コンデンサ541へ移動していたエネルギーが誘導加熱コイル222へ戻り共振する。
【0030】
このように、制御部410が制御スイッチ551の「入」の状態と「切」の状態とを切り替え制御することにより、誘導加熱コイル222および共振用コンデンサ541において共振が生ずる。その結果、高周波電流が生成され誘導加熱コイル222へ供給される。つまり、制御部410は、高周波電源回路500における高周波電流の生成を制御する。
【0031】
ここで、本実施形態にかかる暖房便座装置100では、使用者が便座200に着座すると、スイッチ421が信号線415を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。スイッチ421は、ノーマルクローズタイプのスイッチである。つまり、使用者が便座200に着座していない状態では、スイッチ421はオン状態(接続状態)である。一方、使用者が便座200に着座している状態では、スイッチ421はオフ状態(非接続状態)である。
【0032】
あるいは、便蓋300が開くと、スイッチ421が信号線415を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。つまり、便蓋300が閉じた状態では、スイッチ421はオン状態である。一方、便蓋300が開いた状態では、スイッチ421はオフ状態である。
これらにより、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が制御部410に依らず強制的に停止される。
【0033】
より具体的に説明すると、スイッチ421が信号線415を遮断すると、制御部410から送信された制御信号が制御スイッチ551に到達できないため、制御部410は、制御スイッチ551の動作を制御できない。つまり、信号線415の通信が遮断される。そうすると、制御部410が制御スイッチ551の「入」の状態と「切」の状態とを切り替え制御できないため、誘導加熱コイル222および共振用コンデンサ541において共振が生じない。これにより、高周波電流が誘導加熱コイル222へ供給されず、誘導加熱コイル222からは磁界は発生しない。また、発熱部231には渦電流は発生せず、その発熱部231は発熱しない。
【0034】
本実施形態によれば、スイッチ421が信号線415を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させるため、制御部410が故障した場合でも、使用者が便座200に着座すると誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を確実に停止させることができる。あるいは、制御部410が故障した場合でも、便蓋300が開くと誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を確実に停止させることができる。これにより、制御部410が故障した場合でも、規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。また、スイッチ421が信号線415上に設けられた回路構成であるため、より簡易的な回路構成で規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、より高い安全性を確保することができる。
【0035】
図4は、本実施形態の変形例にかかる暖房便座装置の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
本変形例にかかる暖房便座装置100aでは、図3に関して前述した信号線415を遮断可能なスイッチ421の代わりに、商用電源10からの電力の供給を遮断可能なスイッチ423が設けられている。図4に表したスイッチ423は、商用電源10と高周波電源回路500とを接続する給電線416上に設けられ、その給電線416を遮断可能である。その他の回路構成は、図3に関して前述した暖房便座装置100の回路構成と同様である。
【0036】
本変形例にかかる暖房便座装置100aでは、使用者が便座200に着座すると、スイッチ423が給電線416を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。あるいは、便蓋300が開くと、スイッチ423が給電線416を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。これにより、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が制御部410に依らず強制的に停止される。
【0037】
より具体的に説明すると、スイッチ423が給電線416を遮断すると、商用電源10から高周波電源回路500への電力の供給が停止される。そうすると、誘導加熱コイル222への電力の供給が停止されるため、誘導加熱コイル222および共振用コンデンサ541において共振が生じない。これにより、高周波電流が誘導加熱コイル222へ供給されず、誘導加熱コイル222からは磁界は発生しない。また、発熱部231には渦電流は発生せず、その発熱部231は発熱しない。
【0038】
本変形例によれば、スイッチ423が給電線416を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させるため、制御部410が故障した場合でも、使用者が便座200に着座すると誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を確実に停止させることができる。あるいは、制御部410が故障した場合でも、便蓋300が開くと誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を確実に停止させることができる。これにより、図3に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0039】
図5は、本実施形態の他の変形例にかかる暖房便座装置の高周波電源回路を説明するための回路構成図である。
本変形例にかかる暖房便座装置100bでは、高周波電源回路500を遮断可能なスイッチ425が高周波電源回路500の一部として設けられている。スイッチ425は、例えば平滑部530と制御スイッチ551との間に設けられている。
【0040】
本変形例にかかる暖房便座装置100bでは、使用者が便座200に着座すると、スイッチ425が高周波電源回路500を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。あるいは、便蓋300が開くと、スイッチ425が高周波電源回路500を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させる。これにより、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が制御部410に依らず強制的に停止される。これにより、図3および図4に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0041】
次に、使用者が便座200に着座するとスイッチ421、423、425がオフ状態となる具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の具体例にかかる暖房便座装置の便座に使用者が着座した状態を例示する平面模式図である。
また、図7は、本具体例の便座に使用者が着座したときの便座の動作を説明するための拡大模式図である。
【0042】
使用者は、図6に表したように、便器800に腰を掛けるようにして便座200に着座することができる。ここで、使用者が便座200に着座していない状態では、図7の拡大図(a)に表したように、便座200の後方部の下面に付設された便座後部クッション241と、便器800と、の間には隙間D1が存在する。そのため、使用者が便座200に着座すると、便座200および便座200の軸支部250は、図7の拡大図(b)に表した矢印A1のように、下へ移動することができる。
【0043】
図8は、本具体例の便座の軸支部近傍の構造を例示する斜視模式図である。
また、図9は、本具体例の可動部と固定部とを組み立てる前の状態を表す斜視模式図である。
また、図10は、本具体例の可動部と固定部とを組み立てた後の状態を表す斜視模式図である。
【0044】
便座200の軸支部250には、図8に表したように、ヒンジ軸450が挿入されている。ヒンジ軸450の下には、可動部460と、固定部470と、が設けられている。固定部470は、ケーシング400に固定されている。また、固定部470には、マイクロスイッチ480が付設されている。つまり、可動部460と、固定部470と、マイクロスイッチ480と、はケーシング400の内部に設けられている。本具体例のマイクロスイッチ480は、図3〜図5に関して前述したスイッチ421、423、425に相当する。
【0045】
可動部460は、図9に表したように、マイクロスイッチ480と接触可能な腕部461と、嵌合爪463と、ヒンジ軸450を受ける軸受部465と、を有する。
一方、固定部470は、ねじなどの締結部材を固定可能な固定穴471と、可動部460の嵌合爪463と嵌合する嵌合穴473と、可動部460の一部が挿入される挿入部475と、を有する。
【0046】
可動部460は、図9に表した矢印A2のように、嵌合爪463を有する部分が固定部470の挿入部475に挿入されることにより固定部470に取り付けられる。そして、図10に表したように、嵌合爪463と嵌合穴473とが嵌合する。嵌合穴473の上下方向の長さは、嵌合爪463の上下方向の長さよりも長い。そのため、可動部460は、固定部470に挿入された状態のままで上下方向に移動することができる。このとき、可動部460の腕部461は、固定部470の挿入部475には挿入されず、固定部470の外部に配置される。
【0047】
マイクロスイッチ480は、ねじなどの締結部材が貫通可能な貫通穴481を有する。そして、図示しない締結部材がマイクロスイッチ480の貫通穴481を通り、固定部470の固定穴471に固定される。これにより、可動部460が固定部470に挿入され取り付けられた状態において、マイクロスイッチ480は、可動部460の腕部461の上に固定される。
【0048】
図11は、使用者が本具体例の便座に着座する前のマイクロスイッチ近傍の状態を例示する平面模式図である。
また、図12は、使用者が本具体例の便座に着座した後のマイクロスイッチ近傍の状態を例示する平面模式図である。
【0049】
使用者が便座200に着座する前では、図11に表したように、ヒンジ軸450とケーシング400との間に隙間D2が存在する。また、可動部460の腕部461は、マイクロスイッチ480と接触している。この状態では、マイクロスイッチ480は、オン状態である。使用者が便座200に着座すると、図7に関して前述したように、便座200および軸支部250は、下へ移動する。
【0050】
そうすると、軸支部250に挿入されているヒンジ軸450は、下へ移動し可動部460の軸受部465を下へ押し下げる。そのため、可動部460が固定部470に挿入された状態のままで下へ移動する。これに伴い、可動部460の腕部461は、マイクロスイッチ480から離れる方向すなわち下へ移動する。
【0051】
ヒンジ軸450が下へさらに移動すると、図12に表したように、ヒンジ軸450とケーシング400との間の隙間D2はなくなる。つまり、ヒンジ軸450とケーシング400とが接触する。そうすると、ヒンジ軸450の下への移動は停止し、可動部460の腕部461は、マイクロスイッチ480から離れる。そして、腕部461とマイクロスイッチ480との間には、隙間D3が存在する。これにより、マイクロスイッチ480は、オン状態からオフ状態へ遷移する。
【0052】
これによれば、マイクロスイッチ480は、信号線415や給電線416を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。または、マイクロスイッチ480は、高周波電源回路500を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。つまり、使用者が便座200に着座したときに便座200にかかる重量が増加することにより、マイクロスイッチ480は、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を停止させることができる。これにより、制御部410が故障した場合でも、使用者が便座200に着座すると誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を機械的に確実に停止させることができる。
【0053】
なお、本具体例では、マイクロスイッチ480がケーシング400の内部であって便座200の軸支部近傍に設けられた場合を例に挙げて説明したが、マイクロスイッチ480の設置形態は、これだけに限定されるわけではない。マイクロスイッチ480は、便座200の後方部の下面に付設された便座後部クッション241、または便座200の前方部の下面に付設された便座前部クッション243(図6参照)の内部に設けられていてもよい。この場合でも、使用者が便座200に着座したときに便座200にかかる重量が増加することにより、マイクロスイッチ480は、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。
【0054】
次に、便蓋300が開くと、スイッチ421、423、425がオフ状態となる具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図13は、本実施形態の他の具体例にかかる暖房便座装置の便蓋が開いた状態を例示する平面模式図である。
また、図14は、本具体例の便蓋が閉じた状態を例示する斜視模式図である。
また、図15は、本具体例の便蓋が開いた状態を例示する斜視模式図である。
なお、図14(a)および図15(a)は、暖房便座装置を斜め上方から眺めた斜視模式図であり、図14(b)および図15(b)は、本具体例の便蓋の軸支部近傍の構造を例示する斜視模式図である。
【0055】
使用者は、図13に表した矢印A3のように、手動により便蓋300を開けることができる。
ここで、便蓋300の軸支部350には、図14(a)および図15(a)に表したように、ヒンジ軸455が挿入されている。ヒンジ軸455は、便蓋300に固定され、便蓋300の回動と連動して回動することができる。また、ケーシング400の内部であって、便蓋300の軸支部350の近傍には、ロータリスイッチ490が設けられている。
【0056】
ロータリスイッチ490は、一端部において回動軸491を有する。回動軸491は、図14(b)および図15(b)に表したように、ヒンジ軸455に挿入されている。そして、回動軸491は、ヒンジ軸455の回動と連動して回動することができる。これにより、回動軸491は、便蓋300の回動と連動して回動することができる。
【0057】
本具体例のロータリスイッチ490は、図3〜図5に関して前述したスイッチ421、423、425に相当する。つまり、ロータリスイッチ490は、例えば制御部410と制御スイッチ551とを接続する信号線415上に設けられている。あるいは、ロータリスイッチ490は、例えば商用電源10と高周波電源回路500とを接続する給電線416上に設けられている。あるいは、ロータリスイッチ490は、例えば高周波電源回路500の一部として設けられている。
【0058】
便蓋300が閉じた状態では、図14(b)に表したように、ロータリスイッチ490の端子間は接続されている。そのため、ロータリスイッチ490は、オン状態である。一方、便蓋300が開くと、図15(b)に表した矢印A4のように、ヒンジ軸455および回動軸491が回動することにより、ロータリスイッチ490の端子間は接続されていない状態となる。そのため、ロータリスイッチ490は、オン状態からオフ状態へ遷移する。
【0059】
これによれば、ロータリスイッチ490は、信号線415や給電線416を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。または、ロータリスイッチ490は、高周波電源回路500を遮断することにより誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。つまり、便蓋300が開き、ロータリスイッチ490の端子間が接続されていない状態となることにより、ロータリスイッチ490は、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を制御部410を介さずに停止させることができる。これにより、制御部410が故障した場合でも、便蓋300が開くと誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を機械的に確実に停止させることができる。
【0060】
なお、図6〜図12に関して前述した具体例においては、スイッチ421、423、425がマイクロスイッチ480である場合を例に挙げて説明した。また、図13〜図15においては、スイッチ421、423、425がロータリスイッチ490である場合を例に挙げて説明した。但し、スイッチ421、423、425は、これだけに限定されるわけではない。スイッチ421、423、425は、例えば光を媒体とした信号伝送装置であるフォトカプラなどであってもよい。フォトカプラは、例えば図4に関して前述したスイッチ423のように、商用電源10から高周波電源回路500への電力の供給を停止し、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を停止させることができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、使用者が便座200に着座すると、スイッチ421、423、425が信号線415や給電線416や高周波電源回路500を遮断することにより、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が制御部410に依らず強制的に停止される。あるいは、便蓋300が開くと、スイッチ421、423、425が信号線415や給電線416や高周波電源回路500を遮断することにより、誘導加熱コイル222への高周波電源の供給が制御部410に依らず強制的に停止される。これにより、制御部410が故障した場合でも、規定値以上の磁界が人体に照射されることを防止することができる。そのため、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、より高い安全性を確保することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200、便蓋300、およびケーシング400などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやスイッチ421、423、425の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
10 商用電源、 100、100a、100b 暖房便座装置、 200 便座、 210 筐体、 210a 上面、 221 電力供給線、 222 誘導加熱コイル、 231 発熱部、 241 便座後部クッション、 243 便座前部クッション、 250 軸支部、 280 支持体、 300 便蓋、 350 軸支部、 400 ケーシング、 410 制御部、 415 信号線、 416 給電線、 421、423、425 スイッチ、 450、455 ヒンジ軸、 460 可動部、 461 腕部、 463 嵌合爪、 465 軸受部、 470 固定部、 471 固定穴、 473 嵌合穴、 475 挿入部、 480 マイクロスイッチ、 481 貫通穴、 490 ロータリスイッチ、 491 回動軸、 500 高周波電源回路、 520 整流部、 530 平滑部、 531 平滑コイル、 533 平滑コンデンサ、 541 共振用コンデンサ、 551 制御スイッチ、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
高周波電流を生成する高周波電源回路と、
前記高周波電源回路から供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、
前記便座の着座部に設けられ前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱部と、
前記高周波電源回路における前記高周波電流の生成を制御する制御部と、
人が前記便座に着座すると、前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を前記制御部を介さずに停止させるスイッチと、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
便座と、
前記便座を覆うことが可能な便蓋と、
高周波電流を生成する高周波電源回路と、
前記高周波電源回路から供給された高周波電流により磁界を発生する誘導加熱コイルと、
前記便座の着座部に設けられ前記誘導加熱コイルが発生した磁界により誘導加熱される発熱部と、
前記高周波電源回路における前記高周波電流の生成を制御する制御部と、
前記便蓋が開くと、前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を前記制御部を介さずに停止させるスイッチと、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項3】
前記高周波電源回路は、前記制御部から送信される制御信号により開閉動作をする制御スイッチを有し、
前記スイッチは、前記制御部と前記制御スイッチとを接続する信号線上に設けられ、人が前記便座に着座すると、または前記便蓋が開くと、前記信号線の通信を遮断することにより前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate