説明

暖房装置

【課題】水等の反応媒体と化学蓄熱材との化学反応を暖房熱として利用し、更に、化学蓄熱材の反応生成物を再生させるときにおける再生効率を高め得る暖房装置を提供する。
【解決手段】暖房装置1は、互いに取り付けおよび取り外し可能な化学蓄熱部3および熱取出部6を有する。化学蓄熱部3は、反応媒体と可逆的に反応して熱を発生させる化学蓄熱材Aを収容する化学蓄熱材収容部3と、化学蓄熱材収容部3に収容されている反応後の反応生成物を加熱させて反応生成物から反応媒体を分離させて化学蓄熱材Aを再生させる加熱部4とを有する。熱取出部6は、化学蓄熱部2に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられており、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aが発生した熱を受熱すると共に受熱した熱を外部に暖房として放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は暖房装置に関し、特に電気自動車等の車両、建築構造物、屋外等において使用できる暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両、建築構造物、屋外等における暖房として、様々な暖房装置が考えられている。例えば、エンジンを搭載せずモータで走行する電気自動車では、エンジン駆動式の車両と異なり、エンジン冷却水の放熱を暖房熱として利用すること事が出来ないため、様々な暖房装置が考えられている。特許文献1では、バッテリ充電中に電気ヒータをオンして蓄熱タンク内の温水を生成して冷媒圧縮機を暖めておき、暖房時に、蓄熱タンク内の温水の熱を室内放熱器で放熱させると共に、蓄熱タンクの温水により暖められた冷媒圧縮機を作動させてヒートポンプを暖房運転させる装置が開示されている。特許文献2では、ビスカスヒータをモータ軸からの駆動力によって回転させて水を加熱し、更に水と空気とを熱交換させて暖房熱として用いる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-338432号公報
【特許文献2】特開2010-179717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2共に、走行中にバッテリを消費するため、暖房すれば、走行に必要な電力が減り、結果としてフル充電での車両走行距離が短縮される。このような事情により、電気自動車ばかりか、建築構造物、屋外等における暖房として、産業界では、電力の使用を低減または廃止できる暖房装置の開発が要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、水等の反応媒体と化学蓄熱材との化学反応を暖房熱として利用し、電力の使用を低減または廃止でき、更に、化学蓄熱材の反応生成物を加熱させて再生させるときにおける再生効率を高め得る暖房装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る暖房装置は、(i)反応媒体と可逆的に反応して熱を発生させると共に反応生成物を形成させる化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材収容部と、化学蓄熱材収容部に収容されている反応後の反応生成物を加熱させて反応生成物から反応媒体を分離させることにより反応生成物を化学蓄熱材として再生させる加熱部とを有する化学蓄熱部と、(ii)化学蓄熱部に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられ、化学蓄熱材収容部の化学蓄熱材が発生した熱を受熱すると共に受熱した熱を外部に暖房熱として放出させる熱取出部とを具備することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る暖房装置によれば、請求項1において、化学蓄熱部は、化学蓄熱材収容部と、再生時に化学蓄熱材収容部の反応生成物から分離された反応媒体を収容する反応媒体収容部と、化学蓄熱材収容部と反応媒体収容部とを連通させ化学蓄熱材収容部と反応媒体収容部との間において反応媒体を移動させる連通路と、連通路を流れる反応媒体の単位時間あたりの流量を規制させる流量規制部とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る暖房装置によれば、請求項1または2において、車両の室内を暖房させるものであり、熱取出部は車両に据え付けられており、化学蓄熱部は車両に対して取り外し可能とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る暖房装置によれば、請求項1〜3のうちの一項において、車輪を回転駆動させる走行モータと走行モータを駆動させる電力を蓄電すると共に外部電源により充電可能なバッテリとを有する車両に搭載されるものであり、バッテリを外部電源に接続させて外部電源からバッテリを充電させるとき、加熱部は、外部電源から給電加熱されて化学蓄熱材収容部の反応生成物を化学蓄熱材として再生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る暖房装置によれば、暖房時には化学蓄熱部に熱取出部が取り付けられる。この状態で、化学蓄熱材収容部に収容されている化学蓄熱材が反応媒体と可逆的に反応し、熱を発生させる。化学蓄熱材が発生させた熱は、熱取出部から取り出され、暖房熱として使用される。このとき、化学蓄熱材は反応媒体と反応して反応生成物となる。
【0011】
上記したように暖房における主エネルギとして化学蓄熱材の反応熱を利用する。このため暖房自体において、電力の使用を低減または廃止できる。従って、電気自動車等の電気車両に適用した場合には、車両走行時の暖房自体における電力の使用を低減または廃止でき、車両走行距離を延ばすのに有利となる。勿論、建築構造物の室内または屋外等において暖房装置として使用することができる。
【0012】
また、請求項1に係る暖房装置によれば、反応生成物を化学蓄熱材として再生させるときには、化学蓄熱材収容部に収容されている反応生成物を、加熱部は加熱させる。これにより化学蓄熱材の反応生成物から反応媒体を分離させ、反応生成物を化学蓄熱材として再生させ、暖房に再度使用することができる。
【0013】
加えて、請求項1に係る暖房装置によれば、熱取出部は、化学蓄熱部に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられている。このため、暖房時には、熱取出部を化学蓄熱部に取り付ければ、前述したように、化学蓄熱部が発生させた熱を熱取出部は暖房熱として取り出すことができる。更に、反応生成物を加熱部で加熱させて化学蓄熱材として再生させるときには、化学蓄熱部から熱取出部を取り外し、化学蓄熱部および熱取出部を互いに分離させた状態にできる。この状態で、化学蓄熱部内において化学蓄熱材が反応した反応生成物を加熱部で加熱させて再生させれば、加熱部の熱が熱取出部に奪われることが抑制され、再生時における熱損失が低減される。従って、再生時において、加熱部の熱が化学蓄熱部の化学蓄熱材収容部に効率よく伝達される。ひいては、化学蓄熱部の化学蓄熱材収容部に収容されている反応生成物を効率よく加熱させて化学蓄熱材として再生させることができ、再生効率を高めることができる。
【0014】
請求項2に係る暖房装置によれば、請求項1において、化学蓄熱部は、化学蓄熱材収容部と、再生時に化学蓄熱材収容部の化学蓄熱材から分離された反応媒体を収容する反応媒体収容部と、化学蓄熱材収容部と反応媒体収容部とを連通させ化学蓄熱材収容部と反応媒体収容部との間において反応媒体を移動させる連通路と、連通路を流れる反応媒体の単位時間あたりの流量を規制させる流量規制部とを有する。流量規制部としては、弁部、可変オリフィス、ポンプ等が挙げられる。弁部としては、オンオフ式の開閉バルブ、流量可変バルブが例示される。反応媒体収容部の圧力が化学蓄熱材収容部よりも高圧であるとき、流量規制部が開放されると、差圧に基づいて、反応媒体は連通路および流量規制部を介して反応媒体収容部から化学蓄熱材収容部に向かい、化学蓄熱材と反応して反応生成物を生成させつつ、反応熱を暖房熱として発生させる。
【0015】
これに対して化学蓄熱材収容部に収容されている化学蓄熱材の反応生成物を再生させるときには、加熱部で反応生成物を加熱させる。加熱により反応生成物から反応媒体が分離され、反応生成物が化学蓄熱材として再生される。この場合、反応生成物から反応媒体が分離されるため、化学蓄熱材収容部の内部の圧力が次第に増加する。そして、化学蓄熱材収容部の内部の圧力が反応媒体収容部の内部の圧力よりも高圧になっている状態において、流量規制部が開放されると、差圧に基づいて、化学蓄熱材収容部の反応媒体は連通路および流量規制部を介して反応媒体収容部に向かい、反応媒体収容部に収容される。
【0016】
請求項3に係る暖房装置によれば、請求項1または2において、車両の室内を暖房させるものであり、熱取出部は車両に据え付けられており、化学蓄熱部は車両に対して取り外し可能とされていることを特徴とする。この場合、熱取出部から取り出された熱は、車両(電気自動車等の電気車両)の車室暖房に使用できる。化学蓄熱部を車両から取り外せば、化学蓄熱部の加熱部を、外部加熱源で加熱させ、化学蓄熱材収容部の反応生成物を化学蓄熱材として再生させることができる。外部加熱源としては、車載電源以外の外部電源等が挙げられる。
【0017】
請求項4に係る暖房装置によれば、請求項1〜3のうちの一項において、車輪を回転駆動させる走行モータと走行モータを駆動させる電力を蓄電すると共に外部電源により充電可能なバッテリとを有する車両に搭載されるものであり、バッテリを外部電源に接続させて外部電源からバッテリを充電させるとき、加熱部は、外部電源から給電加熱されて化学蓄熱材収容部の化学蓄熱材を再生させることを特徴とする。この場合、バッテリを外部電源に接続させて外部電源からバッテリを充電させるとき、加熱部は、外部電源から給電加熱されて化学蓄熱材収容部の反応生成物を化学蓄熱材として再生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係り、暖房装置を構成する化学蓄熱部および熱取出部を分離させた状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態2に係り、暖房装置を構成する化学蓄熱部および熱取出部を分離させた状態を示す部分断面図である。
【図3】実施形態3に係り、暖房装置を構成する化学蓄熱部および熱取出部を分離させた状態を示す部分断面図である。
【図4】実施形態4に係り、車両に据え付けられている熱取出部から化学蓄熱部を分離させた状態を示す図である。
【図5】実施形態5に係り、建築構造物の室内に設けられている熱取出部に化学蓄熱部を取り付ける直前の状態を示すとともに、屋外で暖房装置を使用している状態を示す図である。
【図6】実施形態6に係り、車両の走行時および停車時における使用状態を示す図である。
【図7】実施形態8に係り、暖房装置を構成する化学蓄熱部および熱取出部を分離させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
化学蓄熱材および反応媒体は、互いに可逆的に反応して反応熱を発生させるものを意味する。化学蓄熱材が反応した後の反応生成物が加熱されると、化学蓄熱材と反応媒体とは可逆的に分離される。このような化学蓄熱材としてはアルカリ土類金属(二価の金属)の化合物が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),バリウム(Ba)が挙げられる。化合物としては水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物等が挙げられる。
【0020】
下記の(1)〜(4)に例示する反応式に基づけば、化学蓄熱材Aとしては酸化カルシウム(CaO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)が挙げられる。反応媒体としては、価格、処理しやすさ等を考慮すると、液相状、気相状または気液共存状態の水が挙げられる。以下、これらの水を含めて水と称する。反応生成物としては、水酸化カルシウム(Ca(OH))、硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)、硫酸カルシウム2水和物(CaSO・2HO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))が例示される。
(1)CaO+HO→←Ca(OH)
(2)CaSO+1/2HO→←CaSO・1/2H
(3)CaSO+2HO→←CaSO・2H
(4)MgO+HO→←Mg(OH)
(5)BaO+HO→←Ba(OH)
【0021】
上記した反応式として示すように、酸化カルシウム(CaO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)は、水(HO)と可逆的に反応して熱を発生させる。反応生成物である水酸化カルシウム(Ca(OH))、硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)、硫酸カルシウム2水和物(CaSO・2HO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))が、再生処理として電気ヒータ等の加熱部で加熱されると、反応生成物から水(HO)を分離させつつ、元の出発材料である酸化カルシウム(CaO)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)が可逆的に再生される。
【0022】
なお、化学蓄熱部および熱取出部の双方または一方は、持ち運び可能なポータブルタイプでも良いし、電気自動車等の車両、建築構造物、船舶、屋外等に固定的に据え付けられているタイプでも良い。
【0023】
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念図を示す。暖房装置1は、互いに分離可能な化学蓄熱部2と熱取出部6とを有する。この暖房装置1は、例えば、車載用、家庭用、業務用として使用できる。化学蓄熱部2は化学蓄熱材Aから熱を発生させるものであり、化学蓄熱材収容部3と電気ヒータ4(加熱部)とを有する。電気ヒータ4は通電により発熱するものの、容器31や連通路36等の他部品に通電しないように他部品に対して絶縁されている。化学蓄熱材収容部3は、反応媒体と可逆的に反応して熱を発生させる粒状または粉末状の化学蓄熱材A(酸化カルシウム,CaO)を収容する収容室30をもつ容器31で形成されている。化学蓄熱材Aの粒子サイズは、反応性、反応媒体の通過性、コスト等を考慮して設定される。容器31は熱伝導性が良好な材料(例えばアルミニウム合金、銅合金、炭素鋼、合金鋼等の金属、熱伝導性が良いセラミックス)で形成されていることが好ましい。上記した(1)式に基づけば、酸化カルシウム(CaO)は水(HO)と反応し、反応生成物として水酸化カルシウム(Ca(OH))を形成する。この場合、反応熱が発生し、化学蓄熱材収容部3が昇温される。
【0024】
図1に示すように、化学蓄熱材収容部3は、複数の凹状部で形成された複数の取付部32と、熱取出部6の支持性を高めるためのサポート部33とを有する。場合によっては、サポート部33を廃止させることもできる。電気ヒータ4は、化学蓄熱材収容部3の容器31の内部または外部に設けられていることが好ましい。電気ヒータ4は、化学蓄熱材収容部3に収容されている化学蓄熱材Aの反応生成物(Ca(OH))を加熱させることにより、反応生成物から水(HO)を分離させる。このように反応生成物を加熱させることにより、反応生成物の吸熱反応により、反応生成物から水(HO)を分離させ、反応生成物を元の化学蓄熱材A(酸化カルシウム,CaO)として再生させる。
【0025】
図1に示すように、化学蓄熱部2は、化学蓄熱材収容部3と水収容部35(反応媒体収容部)と連通路36と弁部37(流量規制部)とを有する。水収容部35は化学蓄熱材収容部3に接続された状態で配置されている。水収容部35は、水(反応媒体)を予め収容しており、更に、再生時において化学蓄熱材収容部3に収容されている化学蓄熱材Aの反応生成物から分離された水(反応媒体)を収容する。連通路36は、化学蓄熱材収容部3と水収容部35とを連通させることにより、化学蓄熱材収容部3と水収容部35との間において水を移動させる。弁部37は連通路36を開閉させる。
【0026】
熱取出部6は、化学蓄熱部2の取付部32に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられている。熱取出部6は、取付部32に対して伝熱可能な取り付けられるブロック状の受熱部60と、受熱部60に伝熱可能に繋げられた放熱フィンで形成された放熱部62とを有する。熱取出部6の受熱部60が化学蓄熱部2の凹状の取付部32に脱着可能に嵌合されて取り付けられると、熱取出部6が化学蓄熱部2の取付部32に取り付けられ、熱取出部6および化学蓄熱部2が一体となる。このように熱取出部6が化学蓄熱部2に取り付けられているとき、受熱部60は、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aが発生した反応熱を受熱する。放熱部62は、受熱部60が受熱した熱を外部に暖房熱として放出させる。このため熱取出部6は暖房機器として機能できる。なお、受熱部60および放熱部62は、熱伝導性が良好な材料(例えばアルミニウム合金、銅合金、炭素鋼、合金鋼等の金属)で形成されていることが好ましい。受熱部60および放熱部62の熱接触面積は大きい方が好ましい。
【0027】
化学蓄熱材収容部3に収容されている化学蓄熱材A(酸化カルシウム,CaO)が反応を終えて反応生成物となると、暖房機能は低下する。暖房機能が低下したら、図略の電源から電気ヒータ4に給電させて電気ヒータ4を加熱させる。これにより化学蓄熱材収容部3に収容されている化学蓄熱材Aの反応生成物(水酸化カルシウム,Ca(OH))を加熱させる。これにより反応生成物から水(HO)を分離させることにより、反応生成物を化学蓄熱材A(酸化カルシウム,CaO)として再生させることができる。再生された化学蓄熱材A(CaO)を再び水(HO)と反応させれば、暖房熱となる反応熱を生成させつつ反応生成物(Ca(OH))となる。
【0028】
本実施形態によれば、水収容部35、化学蓄熱材収容部3および連通路36の内部は、基本的には減圧雰囲気とされている。よって、水収容部35に収容されている水(反応媒体)の一部または大部分は、蒸発して水蒸気とされている。低温環境においても水収容部35には多量の水蒸気が収容されている。
【0029】
暖房前では、水収容部35に収容されている水の蒸発が進行しているため、水収容部35の内部圧力Pwが化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcよりも高くされている。この状態で、制御装置または手動により弁部37が開放されると、差圧に基づいて、水収容部35の水蒸気(水)は、連通路36および弁部37を介して化学蓄熱材収容部3に移動し、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aと反応して反応熱を暖房熱として生成させる。暖房時間が継続し水収容部35に収容されていたかなりの流量の水蒸気(水)が連通路36を介して化学蓄熱材収容部3に移動すると、水収容部35の内部圧力Pwが次第に低下し、差圧が低下すると共に、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aの大部分が反応生成物とされる。化学蓄熱材Aの大部分が反応生成物とされると、反応熱が低下して暖房能力が低下するため、反応生成物を再生させることが好ましい。
【0030】
反応生成物を再生させるときには、電気ヒータ4で化学蓄熱材収容部3内の反応生成物を加熱させる。すると、化学蓄熱材収容部3に収容されている反応生成物が水を水蒸気として放出するため、化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcが次第に高くなり、水収容部35の内部圧力Pwよりも高くなる。この状態で弁部37が開放されると、化学蓄熱材収容部3に溜まっている水蒸気(水)は、差圧に基づいて、連通路36および弁部37を介して水収容部35に移動し、水収容部35で冷却されて凝縮されて液相状の凝縮水となる。このように水収容部35は凝縮器として機能できる。
【0031】
弁部37の構造は特に限定されるものではない。弁部37はオンオフする開閉弁でも良い。この場合、制御装置は弁部37を連続的に開放させてもよいし、断続的に開放させても良い。断続的に開放される場合、弁部37の開放時間(オン時間)を調整すれば、水収容部35から化学蓄熱材収容部3に向かう単位時間あたりの水蒸気の流量を調整できるため、暖房装置1の暖房能力を調整できる。あるいは、弁部37は、連通路36を流れる単位時間当たりの水蒸気の流量を可変にできる可変弁でも良い。この場合、流量を調整すれば、水収容部35から化学蓄熱材収容部3に向かう単位時間あたりの水蒸気の流量を調整できるため、暖房装置1の暖房能力を調整できる。
【0032】
本実施形態によれば、図1に示すように、化学蓄熱材収容部3に形成されている取付部32は、凹状部とされており、鉛直方向に沿って延設された互いに対向する伝熱面32cを有するスライド溝状とされている。相手側である受熱部60は、鉛直方向に沿って延設された互いに対向する伝熱面60cを有する凸部で形成されている。このため、化学蓄熱部2の取付部32に対して熱取出部6の受熱部60を鉛直方向に沿って嵌合させつつ相対的にスライドさせる簡単な操作で、化学蓄熱部2に対して熱取出部6を取り付けることができる。伝熱面32c,60c同士は接触することが好ましいが、場合よっては、伝熱できる限り、微小隙間が形成されていても良い。また、分離させるときにおいても、化学蓄熱部2の取付部32に対して熱取出部6の受熱部60を鉛直方向に沿って逆方向に向けて相対的にスライドさせる簡単な操作で嵌合を解除させ、化学蓄熱部2および熱取出部6を互いに分離させることができる。なお、化学蓄熱材収容部3において横方向に沿ってスライド溝を取付部として形成し、化学蓄熱部2の取付部32に対して熱取出部6の受熱部60を横方向に沿って嵌合させつつ相対的にスライドさせる簡単な操作で、化学蓄熱部2に対して熱取出部6を取り付けることにしても良い。
【0033】
更に図1に示すように、水収容部35、連通路36および弁部37は、化学蓄熱部2のうち取付部32と反対側の側部3sに設けられているので、化学蓄熱部2および熱取出部6を互いに取り付ける際にこれらと干渉することが抑えられている。但し、水収容部35、連通路36および弁部37のうちの少なくとも一つは、熱取出部6と干渉しないように、化学蓄熱部2の下面側に設けられていても良い。
【0034】
(実施形態2)
図2は実施形態2の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的にと同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図2は化学蓄熱材収容部3の付近の断面を示す。図2に示すように、化学蓄熱材収容部3は、粒状の化学蓄熱材A(CaO)を収容する複数の収容室30をもつ容器31と、収容室30にそれぞれ水を供給させる複数の給排管38と、給排管38に連通すると共に水収容部35に弁部37を介して繋がる集合部39とを備えている。給排管38は、集合部39の集合室39aに連通する通路38aと、通路38aと収容室30とを連通させるように給排管38の周壁に形成された複数の開口38cとを有する。開口38cは分散して形成されている。給排管38は抵抗発熱材料で形成されており、電源7m(直流電源でも交流電源でも良い)からの給電により発熱する。従って給排管38は電気ヒータを兼務する。給排管38は集合部39,容器31等の他部品に通電しないように電気絶縁されている。
【0035】
暖房時には、化学蓄熱部2の凹状の取付部32に、熱取出部6の凸状の受熱部60が嵌合して熱的に接触させた状態で取り付けられる。取付部32の壁面と受熱部60の壁面との熱的接触度は、高い方が好ましい。このように化学蓄熱部2と熱取出部6とが熱的に接触している状態において、水収容部35内の水蒸気等の水が連通路36,弁部37,集合部39の集合室39a、給排管38の通路38a、給排管38の開口38c、収容室30の順に供給され、収容室30内の化学蓄熱材Aと接触して反応熱を発生させる。反応熱は前述したように暖房熱として使用される。
【0036】
本実施形態によれば、図2に示すように、複数の収容室30のそれぞれには給排管38が挿入されている。各給排管38の周壁には、水蒸気を出入りさせる複数の開口38cがほぼ均等に形成されている。このため水蒸気等の水を収容室30の化学蓄熱材A(CaO)にまんべんなく接触させて反応させることができる。
【0037】
再生時には、給排管38は給電されて電気ヒータとして機能する。このため収容室30の反応生成物(Ca(OH))を加熱させて水を分離させ、反応生成物(Ca(OH))を化学蓄熱材A(CaO)として再生させることができる。反応生成物から分離された水蒸気等の水は、給排管38の開口38c、通路38a、集合部39の集合室39a、連通路36、弁部37を介して水収容部35に戻る。給排管38は電気ヒータを兼務するため通電により発熱するものの、他部品に通電しないように集合部39や容器31等の他部品に対して絶縁された状態とされている。
【0038】
本実施形態によれば、熱取出部6は、前述したように、化学蓄熱部2に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられている(図2参照)。このため、暖房時には、熱取出部6を化学蓄熱部2に取り付ければ、化学蓄熱部6が発生させた熱を熱取出部6の放熱部62は、暖房熱として取り出すことができる。
【0039】
また、反応後の化学蓄熱材Aを再生させるときには、化学蓄熱部2から熱取出部6を取り外し、化学蓄熱部2および熱取出部6を互いに分離させた状態とする。この状態で、電気ヒータ4を加熱させれば、電気ヒータ4の熱が熱取出部60に奪われることが抑制される。従って、電気ヒータ4の熱が化学蓄熱部2の化学蓄熱材収容部3に効率よく伝達される。ひいては、化学蓄熱部2の化学蓄熱材収容部3に収容されている反応後の反応生成物を効率よく加熱させ、化学蓄熱材Aとして再生させることができる。この結果、本実施形態によれば、反応生成物から化学蓄熱材Aを再生させる再生効率を高めることができる。なお電気ヒータ4は給電線4xおよびコンセント4yを介して脱着可能に電源7mに接続される。
【0040】
(実施形態3)
図3は実施形態3の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的にと同様の構成および同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図3に示すように、粒状または粉末状の化学蓄熱材Aを収容する学蓄熱材複数の収容室30のそれぞれには、給排管38が挿入されている。各給排管38の周壁には、コイル状の電気ヒータ4が巻回されている。再生時には、電気ヒータ4は給電されて発熱され、収容室30の反応生成物(Ca(OH))を加熱させて水を分離させ、反応生成物を(Ca(OH))を化学蓄熱材A(CaO)として再生させることができる。反応生成物から分離された水蒸気等の水は、給排管38の開口38c、通路38a、集合部39の集合室39a、連通路36および弁部37を介して水収容部35に戻る。電気ヒータ4は給電線4xおよびコンセント4yを介して脱着可能に電源7mに接続される。なお、電気ヒータ4は電源7m(直流電源でも交流電源でも良い)からの通電により発熱するものの、他部品に通電しないように給排管38、集合部39、容器31等の他部品に対して絶縁された状態とされている。
【0041】
(実施形態4)
図4は実施形態4の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図4から理解できるように、本実施形態に係る暖房装置1は、車両の室内を暖房させるものである。熱取出部6は自動車等の車両に固定的に据え付けられている。熱取出部6の放熱部62は、冷風を通過させて温風として吹き出す。化学蓄熱部2は、熱取出部6に対して取り外し可能とされており、ひいては、車両74に対して取り外し可能とされている。
【0042】
再生された化学蓄熱材A(CaO)を収容した化学蓄熱材収容部3と水を収容した水収容部35とを備える新しい化学蓄熱部2を、車両に複数個準備しておけば、連続して車室内を暖房することができる。この場合、1台の化学蓄熱部2の発熱機能が低下したら、その発熱機能が低下した化学蓄熱部2を、車両に据え付けられている熱取出部6から取り外し、その後、新しい1台の化学蓄熱部2を熱取出部6に脱着可能に取り付けるように交換すれば良い。
【0043】
あるいは、化学蓄熱材A(CaO)を収容した化学蓄熱材収容部3と水を収容した水収容部35とを備える新しい化学蓄熱部2をガソリンスタンド、コンビニ等の販売店で市販するシステムを構築させても良い。この場合、車両74が長時間走行する際、販売店で取得(購入)した新しい化学蓄熱部2と、暖房として使用したため発熱機能が低下した化学蓄熱部2とを適宜交換させれば良い。
【0044】
なお、反応生成物を再生させるときには、車両74に据え付けられている熱取出部6から化学蓄熱部2を取り外し、更に、車両74の外に持ち出し、車室外の家庭用または業務用の外部電源(商用電源)に電気ヒータ4を繋いでオンさせることが好ましい。車載バッテリの充電量が充分に多い場合には、車載バッテリに電気ヒータ4を繋いでオンさせても良い。
【0045】
(実施形態5)
図5は実施形態5の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的にと同様の構成および同様の作用効果を有する。図5から理解できるように、本実施形態に係る暖房装置1は、建築構造物70の室内を暖房させるものである。熱取出部6は建築構造物70の室内に据え付けられていることが好ましい。化学蓄熱部2は、熱取出部6に対して取り外し可能とされている。
【0046】
再生された化学蓄熱材A(CaO)を収容した化学蓄熱材収容部3と水を収容した水収容部35とを備える新しい化学蓄熱部2を、建築構造物70の内部に複数個準備しておけば、連続して室内を暖房することができる。この場合、暖房として使用している1台の化学蓄熱部2の発熱機能が低下したら、その発熱機能が低下した化学蓄熱部2を熱取出部6から取り外し、その後、新しい1台の化学蓄熱部2を熱取出部6に脱着可能に取り付けるように交換すれば良い。商用電源が停電しているとき、または、商用電源が給電されていない僻地や山地等における建築構造物の室内暖房として使用できる。
【0047】
なお、反応生成物を再生させるときには、建築構造物70の室内に固定的に据え付けられている熱取出部6から化学蓄熱部2を取り外し、更に、建築構造物70の家庭用または業務用の外部電源(商用電源)に電気ヒータ4を繋いでオンさせることが好ましい。
【0048】
また、矢視W1として示すように、熱取出部6および化学蓄熱部2の双方共に持ち運び可能なポータブルタイプであるときには、屋外暖房用として使用できる。
【0049】
(実施形態6)
図6は実施形態6の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的にと同様の構成および同様の作用効果を有する。図6の『走行時』の図から理解できるように、本実施形態に係る暖房装置1は、車両74の室内を暖房させる。車両74は電気自動車(電気車両)であり、車輪75を回転駆動させる走行モータ76と、走行モータ76を駆動させる電力を蓄電するバッテリ77(車載電源)を有するものの、エンジンを搭載していない。車両の走行時には、車両74に固定状態に据え付けられている熱取出部6に化学蓄熱部2を脱着可能に取り付ける。そして、化学蓄熱部2が発生させた熱を熱取出部6から温風として放熱させて車室を暖房させる。この場合、車両74に搭載されているバッテリ77の電力を車室暖房として使用せずに良いため、車両走行距離を長くできる。
【0050】
ここで、バッテリ77は化学電池または物理電池で形成されており、車外の家庭用電源または業務用電源等の外部電源78により充電可能とされている。車両74に搭載されている車載給電経路73は、バッテリ77に繋がる経路73vと、電気ヒータ4に繋がる経路78hと、経路78hをオンオフさせるスイッチ72とを有する。
【0051】
具体的には、図6の『停車時I(再生時)』として示すように、車両が停車している場合、バッテリ77を充電させるときには、給電線78cにより外部電源78と車両搭載端子79とを電気的に接続させる。これにより外部電源78から給電線78cおよび車載給電経路73の経路73vを介してバッテリ77を充電させる。このとき、電気ヒータ4は、車載給電経路73の経路78hおよびスイッチ72を介して外部電源78から給電され、化学蓄熱材収容部3内の反応生成物を加熱させて化学蓄熱材Aとして再生させることができる。
【0052】
再生時には、図6の『停車時II(再生時)』として示すように、放熱性をもつ熱取出部6が持ち運びイプである場合には、車両に据え付けられている化学蓄熱部2から熱取出部6を取り外して互いに分離させることが好ましい。この場合、放熱性をもつ熱取出部6に電気ヒータ4の発熱が奪われることが未然に防止され、化学蓄熱部2を加熱させる加熱効率ひいては反応生成物を再生させる再生効率を高めることができる。但し、熱取出部6が車両74に固定的に据え付けられている場合には、熱取出部6を化学蓄熱部2に取り付けた状態で再生を行うことができる。
【0053】
また、図示しないものの、熱取出部6が車両74に固定的に据え付けられていると共に化学蓄熱部2が持ち運び可能である場合には、熱取出部6から化学蓄熱部2を取り外して互いに分離させて車外に取り出すことができる。この状態で、車外に取り出した化学蓄熱部2の電気ヒータ4に車外の外部電源78から給電して、化学蓄熱材収容部3内の反応生成物を加熱させて化学蓄熱材Aとして再生させることもできる。この場合、電気ヒータ4の熱が熱取出部6に奪われないため、化学蓄熱材収容部3内の反応生成物を効率よく加熱させて再生させることができる。
【0054】
上記したように本実施形態によれば、停車時において、バッテリ77の充電工程と、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aの再生工程とを時間的に重複させつつ行うことができる。よって再生処理に特段の時間を必要としない。なお、夏季や熱帯地域等のように車室暖房の必要がないときには、電気ヒータ4に給電する経路73hのスイッチ72をオフさせても良い。この場合、バッテリ77の充電工程は実施されるものの、化学蓄熱材Aの再生工程は実施されない。
【0055】
(実施形態7)
本実施形態は前記した実施形態1と基本的にと同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1を準用する。弁部37は流量可変バルブとされている。暖房時には、水収容部35の水蒸気(水)は、連通路36および弁部37を介して化学蓄熱材収容部3に移動し、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aと反応して反応熱を暖房熱として生成させる。このとき弁部37の流路断面積を調整して暖房出力を調整させるのに有利である。更に、再生時には、弁部37の流路断面積を最大値とすることが好ましい。この場合、電気ヒータ4の発熱で化学蓄熱材収容部3に収容されている反応生成部から離脱した水蒸気を迅速に水収容部35に戻すことができ、反応生成物からの水蒸気離散が促進され、再生時間の短縮に貢献できる。
【0056】
(実施形態8)
図7は実施形態8の概念図を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。前述したように水収容部35、化学蓄熱材収容部3および連通路36の内部は、基本的には減圧雰囲気とされている。よって、水収容部35に収容されている水の一部または大部分は、蒸発して水蒸気とされている。暖房前では、水収容部35および化学蓄熱材収容部3は基本的に同じ温度である考えられる。この場合、通常の状態では、減圧雰囲気の水収容部35に収容されている水の蒸発が進行しているため、弁部37が閉鎖している状態では、水収容部35の内部圧力Pwは、化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcよりも高くされている。この状態で弁部37が開放されると、差圧に基づいて、水収容部35の水蒸気(水)は連通路36および弁部37を介して化学蓄熱材収容部3に移動し、化学蓄熱材収容部3の化学蓄熱材Aと反応して反応熱を暖房熱として生成させる。反応が進行するにつれて、化学蓄熱材収容部3の温度は次第に上昇する。そして、暖房時間が継続して水収容部35のかなりの流量の水蒸気(水)が連通路36を介して化学蓄熱材収容部3に移動すると、水収容部35の内部圧力Pwが次第に低下し、差圧が低下すると共に、化学蓄熱材Aの大部分が反応生成物とされる。この場合、暖房能力が低下するため、再生処理を実施することが好ましい。
【0057】
反応生成物を再生させるときには、外部電源または車載電源から電気ヒータ4に給電して化学蓄熱材収容部3を加熱させる。すると、化学蓄熱材収容部3に収容されている反応生成物が加熱され、水を水蒸気として放出する。このため化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcが内部圧力Pwよりも高くなる。この状態で弁部37が開放されていると、化学蓄熱材収容部3に溜まっている水蒸気(水)は、差圧に基づいて、連通路36および弁部37を介して水収容部35に移動し、水収容部35で冷却され、凝縮されて液相状の凝縮水となる。再生が終了すると、電気ヒータ4をオフとさせる。
【0058】
本実施形態によれば、図7に示すように、水収容部35の内部温度または内部圧力を検知する第1センサ91が設けられている。化学蓄熱材収容部3の内部温度または内部圧力を検知する第2センサ92が設けられている。第1センサ91および第2センサ92の検知信号は制御装置93に入力される。
【0059】
水収容部35の内部圧力Pwが化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcよりも所定値以上高ければ、弁部37の開放により、水収容部35の水蒸気を化学蓄熱材収容部3に良好に移動させて化学蓄熱材Aと反応させ、反応熱を暖房熱として発生させることができる。なお、内部圧力Pwと内部圧力Pcとの差圧がなければ、弁部37が開放していたとしても、水収容部35の水蒸気を化学蓄熱材収容部3に移動させることができず、暖房熱は基本的には発生しない。上記したように水蒸気の移動方向を把握するためには、内部圧力Pc,Pwの検知が効果的である。また、水収容部35の内部温度は、基本的には、水収容部35において生成される水蒸気量に影響を与え、水収容部35の水蒸気圧として換算することができる。化学蓄熱材収容部3の内部温度は、化学蓄熱材収容部3において生成される水蒸気量に影響を与え、基本的には、化学蓄熱材収容部3の水蒸気圧として換算することができる。
【0060】
第1センサ91および第2センサ92が検知する内部温度または内部圧力に基づいて、制御装置93は、水収容部35の内部圧力Pwと化学蓄熱材収容部3の内部圧力Pcとの高低および差圧を推定できる。このように水収容部35の内部温度または内部圧力を検知する第1センサ91の検知信号、化学蓄熱材収容部3の内部温度または内部圧力を検知する第2センサ92の検知信号は、暖房装置1の化学蓄熱材収容部3で暖房可能であるか否かの指標として使用することができる。
【0061】
(その他)
本発明は、エンジンを搭載せず走行モータ76を搭載する電気自動車、走行モータ76およびエンジンを併有するハイブリッドカー等の車両、建築構造物、屋外等における暖房に使用できる暖房装置として利用できる。実施形態1では、熱取出部6は、取付部32に対して伝熱可能な取り付けられるブロック状の受熱部60と、受熱部60に伝熱可能に繋げられた放熱フィンで形成された放熱部62とを有するが、放熱部としては、水や空気等の熱媒体を通過させる配管で形成されていても良く、要するに暖房熱を放出できるものであれば良い。実施形態1では、化学蓄熱材としては、酸化カルシウム(CaO)を採用しているが、これに限らず、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)とすることもできる。実施形態1では、反応生成物を加熱させて化学蓄熱材として再生させる加熱部として、電気ヒータ4が採用されている。しかしこれに限らず、反応生成物を加熱できるものであれば何でも良い。流量規制部として弁部37が設けられているが、可変オリフィス、ポンプでも良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0062】
1は暖房装置、2は化学蓄熱部、3は化学蓄熱材収容部、35は水収容部(反応媒体収容部)、4は電気ヒータ(加熱部)、35は水収容部、36は連通路、37は弁部(流量規制部)、6は熱取出部、60は受熱部、62は放熱部、70は建築構造物、74は車両、76は走行モータ、77はバッテリ、78は外部電源を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体と可逆的に反応して熱を発生させると共に反応生成物を形成させる化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材収容部と、前記化学蓄熱材収容部に収容されている前記反応生成物を加熱させて前記反応生成物から前記反応媒体を分離させることにより前記反応生成物を前記化学蓄熱材として再生させる加熱部とを有する化学蓄熱部と、
前記化学蓄熱部に対して取り付けおよび取り外し可能に設けられ、前記化学蓄熱材収容部の前記化学蓄熱材が発生した熱を受熱すると共に受熱した熱を外部に暖房熱として放出させる熱取出部とを具備することを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
請求項1において、前記化学蓄熱部は、前記化学蓄熱材収容部と、再生時に前記化学蓄熱材収容部の前記反応生成物から分離された前記反応媒体を収容する反応媒体収容部と、前記化学蓄熱材収容部と前記反応媒体収容部とを連通させ前記化学蓄熱材収容部と前記反応媒体収容部との間において前記反応媒体を移動させる連通路と、前記連通路を流れる前記反応媒体の単位時間あたりの流量を規制させる流量規制部とを有することを特徴とする暖房装置。
【請求項3】
請求項1または2において、車両の室内を暖房させるものであり、前記熱取出部は前記車両に据え付けられており、前記化学蓄熱部は前記車両に対して取り外し可能とされていることを特徴とする暖房装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、車輪を回転駆動させる走行モータと前記走行モータを駆動させる電力を蓄電すると共に外部電源により充電可能なバッテリとを有する車両に搭載されるものであり、
前記バッテリを前記外部電源に接続させて前記外部電源から前記バッテリを充電させるとき、前記加熱部は、前記外部電源から給電加熱されて前記化学蓄熱材収容部の前記反応生成物を加熱させて化学蓄熱材として再生させることを特徴とする暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97997(P2012−97997A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247906(P2010−247906)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】