説明

暗色のアゾ染料

本発明は、
a)式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料を含む、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪のための非酸化性着色剤と、
b)少なくとも1つの酸化剤(例えば、過酸化水素)と、少なくとも1つの酸化性染料前駆体と、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料と、を含む、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪のための酸化性着色剤と、
c)少なくとも1つの酸化剤(例えば、過酸化水素)と、R4がカチオン基である、式(I)又は(II)に係る、少なくとも1つの染料と、を含む、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪のためのつや出し剤と、に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗色のアゾ染料、これらのアゾ染料の調製方法、並びにこれらの化合物を含む、例えばヒトの毛髪、ウール、又は毛皮等のケラチン繊維の染色及び/又はつや出しのための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケラチン含有繊維の着色には、2つの方法が使用される。第1の方法は、1つ以上の顕色構成要素(一次中間体)の、1つ以上のカップラー構成要素との酸化カップリングにより形成される、周知の酸化染料に関する。しかしながら、酸化剤を使用すると、毛髪構造へのダメージが観察される。更に、使用される酸化毛髪色素前駆体のいくつかは、感作の可能性を有しうる。特定の着色効果を達成するために、必要であれば、酸化安定性の直接染料も、酸化系に添加することができる。別の可能性は直接染料のみの使用にある。これらの直接染料は、好適な担体塊に使用される。この方法は、一般に染色として既知であり、使用が容易であり、際立って刺激が少なく、アンモニア又は過酸化物を添加しないので、ケラチン繊維に与えるダメージが低いことを特徴とする。これらの染料は、耐久性、洗濯堅牢度及び耐光性、良好な毒性及び皮膚科学的特性、並びに所望に応じて、酸化剤(例えば、過酸化水素)に対する安定性等の、少なくともいくつかの基本的な要件を満たす必要がある。直接染料に基づく着色系は多くの場合、種々の異なった所望の陰影を得るために、いくつかの染料の組み合わせが必要となる。この事実は、黒色の陰影のような暗色の場合、特に興味深い。
【0003】
通常、黒色の陰影は、異なった染色特性(例えば、拡散等)を備える、いくつかの異なった直接染料の混合物によってのみ達成することができる。したがって、様々な直接染料の混合物の代わりに、1つの単独の黒色直接染料のみを有することが望ましい。
【0004】
グリフィス(Griffith)及びリープル(Riepl)(Griffith/Riepl、Chem.Commun.1998、1349〜1350頁)は、帯青黒色のモノアゾ分散染料に通じる方法と、液晶ディスプレイ及び光学フィルターでのそれらの使用を公開した。染料及び色素(Dyes and Pigments)、第27巻、No.1、45〜54頁(1995)並びに染料及び色素、第37巻、No.4、283〜289頁(1998)での発表では、標準的なアゾ染料に対し、良好な安定性を有し、一部の例で熱的かつ光化学的に優れている、特殊な4−アミノ−2−アリールアゾチアゾールを開示している。毛髪染料は開示していない。WO特許第2005/117816 A1号は、カチオン性キノキサリンチアゾールアゾ染料、及びケラチン繊維のための着色剤におけるそれらの使用を開示している。
【0005】
独国特許第102004056403 A1号は、カチオン性ピリジニルチアゾ染料、及びケラチン繊維のための着色剤におけるそれらの使用を開示している。独国特許第102004051072 A1号は、カチオン性ヘテロアリールピラゾロンアゾ染料、及びケラチン繊維のための着色剤におけるそれらの使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO特許第2005/117816 A1号
【特許文献2】独国特許第102004056403 A1号
【特許文献3】独国特許第102004051072 A1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】グリフィス(Griffith)及びリープル(Riepl)(Griffith/Riepl、Chem.Commun.1998、1349〜1350頁)
【非特許文献2】染料及び色素(Dyes and Pigments)、第27巻、No.1、45〜54頁(1995)
【非特許文献3】染料及び色素、第37巻、No.4、283〜289頁(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、水性製剤に相溶し、上述の要件に加えて適合する、新規の暗色で、それぞれ黒色の直接染料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、特殊なカチオン性、並びにアニオン性又は中性の(非荷電)アゾ配置が、暗色を提供し、繊維に穏やかに適用することができ、自然に着色された陰影を生成することが、現在明らかになっている。これらの染料も酸化剤(例えば、過酸化水素)に対し安定性があるため、つや出し製剤で、又は酸化系における補助染料として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、
a)式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料を含有する、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪の非酸化性着色のための薬剤と、
b)少なくとも1つの酸化剤(例えば、過酸化水素)と、少なくとも1つの酸化性染料前駆体と、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料とを含む、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪のための酸化性着色のための薬剤と、
c)少なくとも1つの酸化剤(例えば、過酸化水素)と、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料とを含む、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪のつや出しのための薬剤と、に関し、式中、
【0011】
【化1】

【0012】
R1及びR2は、同一又は異なってもよく、互いに独立して、水素、ベンジル基、C1〜C6−アルキル基、C2〜C4−ヒドロキシアルキル基、C2〜C4−シアノアルキル基又はC4〜C6−ポリヒドロキシアルキル基であり、ここで、これらアルキル基は、分枝状及び線状の両方であることが可能であり、
R3は、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII)に係る基であるか、
【0013】
【化2】

【0014】
あるいは、ホルミル基であり、式中、R8が、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、又はニトロ基であり、式中、R1が、上述の意味を有し、
R4は、一般式(VIII)又は(IX)に係るカチオン基であって、式中、
【0015】
【化3】

【0016】
Eは、C1〜C4−アルキル基、C3〜C6−シクロアルキル基又はアリール基であってもよく、R1は、上述の意味を有し、
+は、
a)カチオン性、芳香族複素環式アンモニウム化合物、好ましくはN−メチルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−エチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾールのカチオン性誘導体、あるいはピリジン、4−ジメチルアミノ−ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、N−メチル−ピラゾール又はキノリンのカチオン性誘導体、あるいは
b)非芳香族複素環式アンモニウム化合物、特にN−メチル−モルホリン、N−エチル−モルホリン又は1−メチル−ピペリジンのカチオン性誘導体、あるいは
c)式NRabcに係る、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物であって、式中、Ra、Rb及びRcは、互いに独立して、ベンジル残基、フェニル残基又はC1〜C6−アルキル残基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基であるが、先述のこれらアルキル基は、非置換又は1つ以上のヒドロキシ基若しくはアミノ基で置換されてもよい、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物、あるいは
d)カチオン性ホスホニウム基、例えば、トリブチルホスホニウム基、好ましくはトリメチルホスホニウム基又はトリエチルホスホニウム基であってもよく、
R5は、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、ヒドロキシ基、C1〜C6−アルキルオキシ基、アミノ基又はアミノアセチル基であり、
R6は、それぞれC1〜C6−アルキルスルホン酸基、C1〜C6−アルキル硫酸基(C1〜C6−アルキルスルホン酸エステル)あるいはそれらの対応するナトリウム又はカリウム塩であり、
R7は、クロロ原子、ピロリジン残基、ピペリジン残基、N−メチル−ピペラジン残基、あるいは同一又は異なってもよい、2つのC1〜C4−アルキル鎖を有する脂肪族二級アミン残基であり、
-は、アニオン性対イオン、好ましくは硫酸アニオン、メチル硫酸アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、シュウ酸アニオン、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、クエン酸アニオン、酒石酸アニオン、マロン酸アニオン、ピルビン酸アニオン又はハロゲンアニオンであり、特にメチル硫酸アニオンが好ましい。
【0017】
一般式(I)又は(II)に係る染料は、
【0018】
【化4】

【0019】
メチル硫酸4−(2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−(1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(1)
【0020】
【化5】

【0021】
メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(2)
【0022】
【化6】

【0023】
メチル硫酸4−(5−(2,2−ジシアノビニル)−2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(3)
【0024】
【化7】

【0025】
メチル硫酸4−(5−(2,2−ジシアノビニル)−2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(4)
【0026】
【化8】

【0027】
メチル硫酸4−(5−{(Z)−[1−(ジシアノメチレン)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン]メチル}−2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(5)
【0028】
【化9】

【0029】
メチル硫酸4−(5−{(Z)−[1−(ジシアノメチレン)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン]メチル}−2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム(6)
【0030】
【化10】

【0031】
2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸(7)
【0032】
【化11】

【0033】
2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム(8)
【0034】
【化12】

【0035】
2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピロリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸(9)
【0036】
【化13】

【0037】
2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピロリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム(10)
【0038】
【化14】

【0039】
2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸(11)
【0040】
【化15】

【0041】
2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム(12)
【0042】
【化16】

【0043】
2−[{4−[(E)−(4−クロロ−5−ホルミル−1,3−チアゾール−2−イル)ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸(13)から選択される。
【0044】
特に、メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピロリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、及び2−[{4−[(E)−(4−クロロ−5−ホルミル−1,3−チアゾール−2−イル)ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸が好ましい。
【0045】
一般式(I)及び(II)の本発明による染料は、2−アミノ−4−クロロ−1,3−チアゾール−5−カルバルデヒド(EP 0450438 A1及びKasali A.Bello、染料及び色素、第27巻、1995、No.1、45〜54頁)のジアゾ化、並びに式中R1及びR2が上述の意味を有する構造Aによって表される、第1の中間染料誘導体を得るための様々な置換アニリンとのその後の結合で始まる多段階合成により調製することができる(スキーム1)。
【0046】
【化17】

【0047】
第2の工程で、適切なCH−酸受容体基(例えば1H−インデン−1,3(2H)−ジオン)をアルコール溶媒内でチアゾール環で濃縮して、構造Bに係る化合物を得た(スキーム2)。この作業は、文献の手順(マツイマサキら、染料及び色素、第37巻、1998、No.4、283〜289頁)に従って行った。
【0048】
【化18】

【0049】
第3の工程は、ピペリジン(ジョン・グリフィス(John Griffith)ら、Chem.Commun.、1998、1349〜1350頁)等の2級アミン又はTHF(テトラヒドロフラン)のような溶媒内の1−メチルピペラジンによるBのクロロ原子の求核置換を伴い、構造Cに係る暗色の染料を得る(スキーム3)。
【0050】
【化19】

【0051】
アセトニトリル内のジメチル硫酸のようなアルキル化剤によるCの処置である最終工程により、本発明による所望のカチオン性染料(Dで図示)の形成をもたらす(スキーム4)。
【0052】
【化20】

【0053】
アニオン性誘導体は、対応する硫酸(スルホン酸エステル)を得るために、クロロスルホン酸を適切なヒドロキシルアンカーと反応させることにより得られ、その後必要に応じて、本発明によるアルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩に変換される。しかしながら、ほとんどの場合、非荷電性の硫酸は、十分な溶解度を示した。実施例(E、対応するE*で示す)をスキーム5に図示する。
【0054】
【化21】

【0055】
一般式(I)又は(II)の本発明による染料を含有する製剤は、ケラチン繊維、特にヒトの毛髪の均一な着色に、良好な耐光性、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度、発汗堅牢度等の好ましい染色特性を与える。低選択性の自然な着色は、穏やかな条件下ですぐに得ることができる。
【0056】
本発明による一般式(I)又は(II)の染料は、好ましくは本発明による着色剤に、0.01〜10重量パーセント、特に0.1〜8重量パーセントの総量で存在する。
【0057】
特殊な色素陰影を生成するため、本発明による一般式(I)又は(II)の染料の他に、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、アゾ染料、アントラキノン染料及びトリフェニルメタン染料からなる群から1つ以上の追加的な慣例の直接染料を、本発明による薬剤に添加することが可能である。更に、本発明による着色剤は、例えば、ヘンナレッド、ヘンナナチュラル、ヘンナブラック、カモミール、ビャクダン、紅茶、セイヨウイソノキの樹皮、セージ、ロッグウッド、アカネ根、アセンヤクノキ、セードル(sedre)及びアルカンナ根のような天然染料も含むことができる。
【0058】
上述の追加的な直接染料及び天然染料は、約0.01〜5重量パーセントの総量で存在することができ、本発明による着色剤における染料の総含量は、約0.01〜10重量パーセント、特に0.1〜5重量パーセントであることが好ましい。
【0059】
適用前に酸化剤(例えば、過酸化水素)と混合される、本発明による酸化性着色系は、式(I)及び(II)に係る直接染料の他に、少なくとも1つ以上の酸化性染料前駆体(一次中間体、カップラー物質及び自己結合物質)を含有する。
【0060】
上述の酸化性前駆体は、約0.01〜12重量パーセント、特に0.2〜6重量パーセントの総量で存在してよい。
【0061】
一般的に、本発明によるつや出し組成物及び酸化性着色剤は、少なくとも1つの酸化剤源を含んでよい。本明細書に用いるのに好ましい酸化剤は、水溶性過酸素酸化剤である。本明細書で定義されるとき、「水溶性」とは標準状態で少なくとも0.1g、好ましくは少なくとも1g、より好ましくは10gの前記酸化剤が1リットルの脱イオン水に溶解され得ることを意味する。酸化剤は、初期可溶化及びメラニンの脱色(脱色)に有用であり、毛幹中での酸化染料前駆体の酸化(酸化染色)を促進する。
【0062】
本発明では、当該技術分野において既知のいずれの酸化剤を使用してもよい。好ましい水溶性酸化剤は、水溶液中に過酸化水素を生じさせることが可能な無機過酸素物質である。水溶性過酸素酸化剤は当該技術分野において周知であり、過酸化水素、無機アルカリ金属過酸化物、例えば過ヨウ素酸ナトリウム及び過酸化ナトリウム、並びに有機過酸化物、例えば過酸化尿素、過酸化メラミン、及び無機過水和物塩の脱色化合物、例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、過硫酸塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの無機過水和物塩は、一水和物、四水和物などとして組み込まれてもよい。アルキル及びアリール過酸化物、並びに/又はペルオキシダーゼも用いてもよい。また必要に応じて、2つ以上のそのような酸化剤の混合物を用いることもできる。酸化剤は、水溶液で、又は使用前に溶解される粉末として提供されてもよい。本発明による組成物に用いるのに好ましいのは、過酸化水素、過炭酸塩、過硫酸塩及びこれらの組み合わせである。
【0063】
本発明によれば、これらの組成物は、約0.1重量%〜約15重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、最も好ましくは約2重量%〜約7重量%の酸化剤を含む。
【0064】
本明細書で使用するための別の好ましい酸化剤は、ペルオキシモノ炭酸イオン(peroxymonocarbonate ions)の供給源である。好ましくは、このような供給源は、過酸化水素供給源及び炭酸水素イオン供給源からその場で形成される。
【0065】
本発明によれば、組成物は、ラジカルスカベンジャー供給源を更に含んでもよい。本明細書で使用するとき、「ラジカルスカベンジャー」という用語は、反応性ラジカル、好ましくは炭酸塩ラジカルと反応して、反応性ラジカルを一連の高速反応によって、より反応性の低い種に変換させることのできる種を指す。
【0066】
本発明による着色剤は、生理学的に適合性のある温度である45℃未満においてでさえ、自然な着色を生み出す。したがって、これらはヒトの毛髪の着色に特に適している。ヒトの毛髪へ使用するために、着色剤は通常、水性化粧品担体へ組み込まれる。適した化粧品担体は、例えば、クリーム、エマルション、ゲル又は例えばシャンプーのような他の界面活性剤含有起泡性溶液、あるいはケラチン含有繊維への適用に適した他の製剤である。また必要であれば、着色剤を、無水担体、粉末、ペレット又は顆粒へ組み込むことも可能である。
【0067】
本発明による着色剤は、このような製剤に対して慣例及び既知である全ての添加剤、例えば、香油、錯化剤、ワックス、防腐剤、ポリマー、増粘剤、酸化防止剤、アルギン酸、グアーガム、例えば、カチオン性ポリマー又はラノリン誘導体のようなヘアケア物質、あるいはアニオン性、非イオン性、双極性、両性又はカチオン性の界面活性物質(界面活性剤)を更に含むことができる。
【0068】
上述の添加剤は、例えば、0.1〜30重量パーセントの濃度の界面活性物質、0.1〜5重量パーセントの量のケア物質、及び0.01〜20重量パーセントの量のポリマーといった、かかる目的に慣例の量で使用される。
【0069】
特に毛髪の着色剤である場合、本発明による着色剤は、水性又は水性−アルコール性製剤で適用前に溶解される粉末又は顆粒形態、あるいは水性又は水性−アルコール溶液の形態、クリーム、ゲル、エマルション又はエアゾールフォームの形態であることが可能である。本発明の毛髪着色剤は、単独構成成分の製剤形態、又は複数構成成分の製剤形態、例えば、一般式(I)又は(II)の直接染料及び他の染料(例えば、酸化性染料前駆体)が、他の成分(例えば、過酸化水素)から分離してパッケージ化されており、2つの構成成分を混合することですぐに使用できる毛髪着色剤を適用直前に調製する、2つの構成成分の製剤形態のいずれかであることが可能である。
【0070】
本発明による着色剤は概して、具体的に一般式(I)に係る直接染料の場合、約7〜10の塩基性pH、一般式(II)に係る直接染料の場合、約3〜4の酸性pHに対して、中性の、約2〜11、好ましくは約3〜10のpHを有する。
【0071】
本発明によるpHを調整するために、有機酸及び無機酸の両方が適している。適切な酸の例は以下の酸である:例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸又はリンゴ酸のようなα−ヒドロキシカルボン酸、アスコルビン酸、グルコノラクトン、酢酸、塩酸又はリン酸、並びにこれら酸の混合物。適切なアルカリ化媒体は、特に炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アンモニア、アミノプロピル−プロパノール及び水酸化ナトリウム、並びにこれらの塩基の混合物である。
【0072】
目的に応じて、本発明による着色剤は、過酸化水素等の酸化剤の存在下又は非存在下で適用され得る。
【0073】
一般に本発明による着色剤は、毛髪の長さに応じて通常約30〜120グラムの適切な量の毛髪着色剤を毛髪に適用し、毛髪着色剤を約15〜45℃で約1〜60分、好ましくは5〜30分間作用させた後、毛髪を水で完全にすすぎ、所望により、シャンプーで洗浄及び/又はヘアコンディショニング組成物で後処理を行い、最後に乾燥させることによって使用される。
【0074】
加えて、酸化剤を着色の主要部分に添加しない場合には、上述した着色剤は天然若しくは合成ポリマー又は化粧品組成物に慣用的な天然起源の変性ポリマーを含むことができ、その結果、着色と同時に毛髪のセットが達成される。このような組成物は一般に、着色定着組成物又は色素定着組成物と呼ばれる。上述のポリマーは、このような組成物に慣例の量、具体的には約1〜5重量パーセントで、これらの着色定着組成物又は色素定着組成物に存在してよい。本発明によるカラースタイリングフォーム/ムースのpHは、具体的には約6〜9である。追加の定着組成物を有する毛髪着色剤は、既知かつ慣用的方法で、毛髪を定着組成物で濡らし、毛髪を髪型に固定し(整え)た後、乾燥させることにより使用される。
【0075】
本発明による着色剤は、皮膚及び/又は頭皮の著しい変色なしに、均一で、強く、長期間持続する、ケラチン繊維(例えば、ヒトの毛髪、ウール又は羊毛)の着色を可能にする。
【0076】
下記実施例は、これらの実施例に主題を限定することなく、本発明の主題をより詳細に説明することを意図している。
【実施例】
【0077】
実施例1:メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウムの合成
工程1:2−{[2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−4−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチレン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンの合成
1.00g(2.20ミリモル)の2−[(4−クロロ−2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−5−イル)メチレン]−1H−インデン−1,3(2H)−ジオン及び0.30g(2.70ミリモル)の1−メチルピペラジンを40mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析が出発物質の完全な消費を示したとき、5時間撹拌しながら加熱した。室温まで冷却した後、形成された沈殿物をろ過し、THFで洗浄し、40℃の真空で乾燥させて、暗緑色の粉末を得た。
収率:0.95g(84%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.20(t,J=6.9Hz,6H,2xCH3),2.34(s,3H,CH3),3.01−3.04(m,4H,2xCH2),3.57−3.62(m,4H,2xCH2),3.84−3.86(m,4H,2xCH2),6.96(d,J=9.3Hz,2H,フェニル),7.75(s,1H),7.77(s,4H),7.85(d,J=9.0Hz,2H,フェニル)。
【0078】
工程2:メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウムの合成
0.93g(1.80ミリモル)の2−{[2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−4−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチレン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンを20mlのアセトニトリルに溶解した。0.5g(3.70ミリモル)のジメチル硫酸を添加した後、混合物を還流させながら24時間加熱した。室温まで冷却した後、形成された沈殿物をろ過し、40℃の真空で乾燥させて、暗緑色の固体を得た。
収率:0.85g(74%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.22(t,J=6.6Hz,6H,2xCH3),2.91(s,3H,CH3,メチル硫酸),3.29(s,3H,CH3),3.35(s,8H,4xCH2),3.38(s,3H,CH3),3.62−3.64(m,4H,2xCH2),7.00(d,J=9.3Hz,2H,フェニル),7.75(s,1H),7.84(s,4H),7.88(d,J=9.0Hz,2H,フェニル)。
【0079】
実施例2:2−[{4−[(4−クロロ−5−ホルミル−1,3−チアゾール−2−イル)ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
工程1:4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−カルバルデヒドの合成
1.3g(18.56ミリモル)の亜硝酸ナトリウムを13.2gの濃縮硫酸に少しずつ添加し、0℃に冷却し、4.8mLのプロピオン酸と19.2mLの酢酸で希釈した。次いで3.0g(18.45ミリモル)の2−アミノ−4−クロロ−1,3−チアゾール−5−カルバルデヒドを少しずつ添加した。粘稠な反応混合物を0℃で2時間撹拌した。次いでこの混合物を、6mLの硫酸を含有する、180mLの水に3.2g(18.56ミリモル)の2−[エチル(フェニル)アミノ]エタノールを加えた溶液にゆっくりと添加した。室温で更に2時間撹拌した後、得られた沈殿物をろ過し、水で洗浄し、真空にて40℃で乾燥させた。
収率:3.58g(57%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.20(t,J=6.9Hz,3H,CH3),3.47−3.55(m,6H,3xCH2),3.96(s,br.,1H,OH),7.03(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),7.84(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),9.92(s,1H,ホルミル)。
【0080】
工程2:2−[{4−[(4−クロロ−5−ホルミル−1,3−チアゾール−2−イル)ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
0.8g(2.36ミリモル)の4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−カルバルデヒドを35mlのTHFに溶解し、0℃まで冷却した。次いで0.28g(2.36ミリモル)のクロロスルホン酸を撹拌しながら一滴ずつゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応混合物を還流させながら4時間加熱し、室温まで冷却させ、一晩撹拌した。氷浴で更に冷却させた後、形成された沈殿物をろ過し、若干低温のTHFで洗浄し、真空にて40℃で乾燥させた。
収率:1.05g(100%、微量の結晶水を含む)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.20(t,J=6.9Hz,3H,CH3),3.66−3.68(m,2H,CH2),3.80−3.82(m,2H,CH2),3.95−3.97(m,2H,CH2),4.77(s,br.,OH,+結晶水),7.06(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),7.85(d,J=9.3Hz,2H,フェニル),9.93(s,1H,ホルミル)。
【0081】
実施例3:2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
工程1:2−{[4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−フェニル}ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチルイデン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンの合成
3.5g(10.33ミリモル)の4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−カルバルデヒド及び2.33g(15.50ミリモル)の1H−インデン−1,3(2H)−ジオンを90mlのエタノールに溶解し、還流させながら撹拌した。6時間後、混合物を室温まで冷却した。形成された沈殿物をろ過し、エタノールで洗浄し、40℃の真空で乾燥させて、暗色の粉末を得た。
収率:3.93g(82%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.22(t,J=7.2Hz,3H,CH3),3.65−3.67(m,6H,3xCH2),7.02(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),7.78(s,1H),7.84(d,J=9.3Hz,2H,フェニル),7.93(s,4H)。
【0082】
工程2:2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
0.5g(1.07ミリモル)の2−{[4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−フェニル}−ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチルイデン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンを50mLのTHFに溶解し、0℃まで冷却した。次いで0.19g(1.60ミリモル)のクロロスルホン酸を撹拌しながら一滴ずつゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応混合物を還流させながら4時間加熱し、室温まで冷却させ、一晩撹拌した。氷浴で更に冷却させた後、形成された沈殿物をろ過し、若干低温のTHFで洗浄し、真空にて40℃で乾燥させた。
収率:0.53g(90%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.23(t,J=6.6Hz,3H,CH3),3.43−3.98(m,6H,3xCH2),5.65(s,br.,OH,+結晶水),7.00(d,J=8.7Hz,2H,フェニル),7.75(s,1H),7.82(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),7.98(s,4H)。
【0083】
実施例4:2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
工程1:2−{[2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチレン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンの合成
0.5g(1.07ミリモル)の2−{[4−クロロ−2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチレン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンを20mlのTHFに溶解した。次いで0.2g(2.14ミリモル)のピペリジンを滴下して添加し、混合物を6時間還流させながら撹拌した。室温まで冷却した後、撹拌を一晩継続した。形成されたピペリジン塩酸塩をろ過で分離し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。粗生成物を含有する、得られた沈殿物を、トルエンで再結晶させて、暗色の粉末を得た。
収率:0.36g(66%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.21(t,J=6.6Hz,3H,CH3),1.65−1.74(m,6H,3xCH2),3.64−3.66(m,6H,3xCH2),3.83−3.85(m,4H,2xCH2),4.96(s,1H,OH),7.02(d,J=9.3Hz,2H,フェニル),7.75(s,1H),7.76(s,4H),7.87(d,J=9.0Hz,2H,フェニル)。
【0084】
工程2:2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸の合成
0.32g(0.62ミリモル)の2−{[2−((E)−{4−[エチル(2−ヒドロキシエチル)アミノ]フェニル}−ジアゼニル)−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−5−イル]メチレン}−1H−インデン−1,3(2H)−ジオンを33mLのTHFに溶解し、0℃まで冷却した。次いで0.11g(0.93ミリモル)のクロロスルホン酸を撹拌しながら一滴ずつゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応混合物を還流させながら4時間加熱し、室温まで冷却させ、一晩撹拌した。氷浴で更に冷却させた後、形成された沈殿物をろ過し、若干低温のTHFで洗浄し、真空にて40℃で乾燥させた。
収率:0.10g(27%)
1HNMR(d6−DMSO/300MHz):δ=1.22(t,J=6.6Hz,3H,CH3),1.70−1.75(m,6H,3xCH2),3.67−3.69(m,2H,CH2),3.82−3.86(m,6H,3xCH2),3.95−3.97(m,2H,CH2),5.57(s,br.,OH,+結晶水),7.05(d,J=9.0Hz,2H,フェニル),7.77(s,1H),7.78(s,4H),7.87(d,J=9.0Hz,2H,フェニル)。
【0085】
実施例5:毛髪着色剤
【0086】
【表1】

【0087】
実施例6〜8:
【0088】
【表2】

【0089】
実施例5〜8の毛髪着色は、毛髪着色に十分な量の着色剤を毛髪に適用し、ブラシを使用して均一に広げることによって行う。40℃にて30分の接触時間後、毛髪をぬるま湯ですすぎ、シャンプーで洗浄し、ぬるま湯ですすいだ後、乾燥させる。
【0090】
更に、実施例5の染料も、塩基性及び中性pHでの酸化剤としての過酸化水素の存在下で処理した。第2のトリートメントのために、実施例5による5gの上記の色素担体塊を5gの強度6%の過酸化水素溶液と混合した。第3のトリートメントのために、強度25%のアンモニアを使用して、pHを9の塩基性pHに調節した。着色結果を、下記表1にまとめた。
【0091】
【表3】

【0092】
特に指示のない限り、本特許出願の全ての百分率は、重量による。
【0093】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく限定されるものとして理解するべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料を含むことを特徴とする、ケラチン繊維の非酸化性着色のための薬剤であって、式中、
【化1】

R1及びR2は、同一又は異なってもよく、互いに独立して、水素、ベンジル基、C1〜C6−アルキル基、C2〜C4−ヒドロキシアルキル基、C2〜C4−シアノアルキル基又はC4〜C6−ポリヒドロキシアルキル基であり、ここで、これらアルキル基は、分枝状及び線状の両方であることが可能であり、
R3は、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII)に係る基であるか、
【化2】

あるいは、ホルミル基であり、式中、R8が、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、又はニトロ基であり、式中、R1が、上述の意味を有し、
R4は、一般式(VIII)又は(IX)に係るカチオン基であって、式中、
【化3】

Eは、C1〜C4−アルキル基、C3〜C6−シクロアルキル基又はアリール基であってもよく、R1は、上述の意味を有し、
+は、
a)カチオン性、芳香族複素環式アンモニウム化合物、好ましくはN−メチルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−エチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾールのカチオン性誘導体、あるいはピリジン、4−ジメチルアミノ−ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、N−メチル−ピラゾール又はキノリンのカチオン性誘導体、あるいは
b)非芳香族複素環式アンモニウム化合物、特にN−メチル−モルホリン、N−エチル−モルホリン又は1−メチル−ピペリジンのカチオン性誘導体、あるいは
c)式NRabcに係る、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物であって、式中、Ra、Rb及びRcは、互いに独立して、ベンジル残基、フェニル残基又はC1〜C6−アルキル残基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基であるが、先述のこれらアルキル基は、非置換又は1つ以上のヒドロキシ基若しくはアミノ基で置換されてもよい、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物、あるいは
d)カチオン性ホスホニウム基、例えば、トリブチルホスホニウム基、好ましくはトリメチルホスホニウム基又はトリエチルホスホニウム基、であってもよく、
R5は、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、ヒドロキシ基、C1〜C6−アルキルオキシ基、アミノ基又はアミノアセチル基であり、
R6は、それぞれC1〜C6−アルキルスルホン酸基、C1〜C6−アルキル硫酸基(C1〜C6−アルキルスルホン酸エステル)あるいはそれらの対応するナトリウム又はカリウム塩であり、
R7は、クロロ原子、ピロリジン残基、ピペリジン残基、N−メチル−ピペラジン残基、あるいは同一又は異なってもよい、2つのC1〜C4−アルキル鎖を有する脂肪族二級アミン残基であり、
-は、アニオン性対イオンである、薬剤。
【請求項2】
少なくとも1つの酸化剤と、少なくとも1つの酸化性染料前駆体と、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料とを含み、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料を含むことを特徴とする、ケラチン繊維の酸化性着色のための薬剤であって、式中、
【化4】

R1及びR2は、同一又は異なってもよく、互いに独立して、水素、ベンジル基、C1〜C6−アルキル基、C2〜C4−ヒドロキシアルキル基、C2〜C4−シアノアルキル基又はC4〜C6−ポリヒドロキシアルキル基であり、ここで、これらアルキル基は、分枝状及び線状の両方であることが可能であり、
R3は、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII)に係る基であるか、
【化5】

あるいは、ホルミル基であり、式中、R8が、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、又はニトロ基であり、式中、R1が、上述の意味を有し、
R4は、一般式(VIII)又は(IX)に係るカチオン基であって、式中、
【化6】

Eは、C1〜C4−アルキル基、C3〜C6−シクロアルキル基又はアリール基であってもよく、R1は、上述の意味を有し、
+は、
a)カチオン性、芳香族複素環式アンモニウム化合物、好ましくはN−メチルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−エチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾールのカチオン性誘導体、あるいはピリジン、4−ジメチルアミノ−ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、N−メチル−ピラゾール又はキノリンのカチオン性誘導体、あるいは
b)非芳香族複素環式アンモニウム化合物、特にN−メチル−モルホリン、N−エチル−モルホリン又は1−メチル−ピペリジンのカチオン性誘導体、あるいは
c)式NRabcに係る、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物であって、式中、Ra、Rb及びRcは、互いに独立して、ベンジル残基、フェニル残基又はC1〜C6−アルキル残基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基であるが、先述のこれらアルキル基は、非置換又は1つ以上のヒドロキシ基若しくはアミノ基で置換されてもよい、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物、あるいは
d)カチオン性ホスホニウム基、例えば、トリブチルホスホニウム基、好ましくはトリメチルホスホニウム基又はトリエチルホスホニウム基であってもよく、
R5は、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、ヒドロキシ基、C1〜C6−アルキルオキシ基、アミノ基又はアミノアセチル基であり、
R6は、それぞれC1〜C6−アルキルスルホン酸基、C1〜C6−アルキル硫酸基(C1〜C6−アルキルスルホン酸エステル)あるいはそれらの対応するナトリウム又はカリウム塩であり、
R7は、クロロ原子、ピロリジン残基、ピペリジン残基、N−メチル−ピペラジン残基、あるいは同一又は異なってもよい、2つのC1〜C4−アルキル鎖を有する脂肪族二級アミン残基であり、
-は、アニオン性対イオンである、薬剤。
【請求項3】
少なくとも1つの酸化剤と、式(I)又は(II)に係る少なくとも1つの染料とを含むことを特徴とする、ケラチン繊維のつや出しのための薬剤であって、式中、
【化7】

R1及びR2は、同一又は異なってもよく、互いに独立して、水素、ベンジル基、C1〜C6−アルキル基、C2〜C4−ヒドロキシアルキル基、C2〜C4−シアノアルキル基又はC4〜C6−ポリヒドロキシアルキル基であり、ここで、これらアルキル基は、分枝状及び線状の両方であることが可能であり、
R3は、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII)に係る基であるか、
【化8】

あるいは、ホルミル基であり、式中、R8が、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、又はニトロ基であり、式中、R1が、上述の意味を有し、
R4は、一般式(VIII)又は(IX)に係るカチオン基であって、式中、
【化9】

Eは、C1〜C4−アルキル基、C3〜C6−シクロアルキル基又はアリール基であってもよく、R1は、上述の意味を有し、
+は、
a)カチオン性、芳香族複素環式アンモニウム化合物、好ましくはN−メチルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−エチルイミダゾール又は1,2−ジメチルイミダゾールのカチオン性誘導体、あるいはピリジン、4−ジメチルアミノ−ピリジン、ピリミジン、ピラゾール、N−メチル−ピラゾール又はキノリンのカチオン性誘導体、あるいは
b)非芳香族複素環式アンモニウム化合物、特にN−メチル−モルホリン、N−エチル−モルホリン又は1−メチル−ピペリジンのカチオン性誘導体、あるいは
c)式NRabcに係る、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物であって、式中、Ra、Rb及びRcは、互いに独立して、ベンジル残基、フェニル残基又はC1〜C6−アルキル残基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基であるが、先述のこれらアルキル基は、非置換又は1つ以上のヒドロキシ基若しくはアミノ基で置換されてもよい、カチオン性アルキルアンモニウム化合物又はアリールアンモニウム化合物、あるいは
d)カチオン性ホスホニウム基、例えば、トリブチルホスホニウム基、好ましくはトリメチルホスホニウム基又はトリエチルホスホニウム基であってもよく、
R5は、水素、ハロゲン原子、C1〜C6−アルキル基、ヒドロキシ基、C1〜C6−アルキルオキシ基、アミノ基又はアミノアセチル基であり、
R6は、それぞれC1〜C6−アルキルスルホン酸基、C1〜C6−アルキル硫酸基(C1〜C6−アルキルスルホン酸エステル)あるいはそれらの対応するナトリウム又はカリウム塩であり、
R7は、クロロ原子、ピロリジン残基、ピペリジン残基、N−メチル−ピペラジン残基、あるいは同一又は異なってもよい、2つのC1〜C4−アルキル鎖を有する脂肪族二級アミン残基であり、
-は、アニオン性対イオンである、薬剤。
【請求項4】
天然ポリマー、合成ポリマー、及び自然由来の変性ポリマーからなる群から選択される、化粧料に慣例の少なくとも1つのポリマーを含み、着色定着組成物又は色素定着組成物の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
前記酸化剤が、過酸化水素、並びに尿素、メラミン、ホウ酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムへの過酸化水素の付加化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤。
【請求項6】
前記酸化剤が、過酸化水素、並びに尿素、メラミン、ホウ酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムへの過酸化水素の付加化合物、並びに過硫酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の薬剤。
【請求項7】
前記対イオンX-が、硫酸アニオン、メチル硫酸アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、シュウ酸アニオン、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、クエン酸アニオン、酒石酸アニオン、マロン酸アニオン、ピルビン酸アニオン及びハロゲンアニオンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項8】
式(I)及び(II)に係る前記染料が、メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−{2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)−フェニル]ジアゼニル}−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−4−イル}−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−(5−(2,2−ジシアノビニル)−2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−(5−(2,2−ジシアノビニル)−2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−(5−{(Z)−[1−(ジシアノメチレン)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン]メチル}−2−{(E)−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、メチル硫酸4−(5−{(Z)−[1−(ジシアノメチレン)−3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン]メチル}−2−{(E)−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ジアゼニル}−1,3−チアゾール−4−イル)−1,1−ジメチルピペラジン−1−イウム、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピペリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピロリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、2−[{4−[(E)−{5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−4−(1−ピロリジニル)−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム、2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸、2−[{4−[(E)−{4−クロロ−5−[(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−インデン−2−イリデン)メチル]−1,3−チアゾール−2−イル}ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸ナトリウム、及び2−[{4−[(E)−(4−クロロ−5−ホルミル−1,3−チアゾール−2−イル)ジアゼニル]フェニル}(エチル)アミノ]エチル硫酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項9】
式(I)及び(II)の前記染料が、0.01〜10重量パーセントの総量で含有されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項10】
ニトロ染料、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、塩基性染料、酸性染料、及び天然染料からなる群から選択される、少なくとも1つの更なる直接染料を追加的に含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項11】
前記追加的直接染料が、0.01〜5重量パーセントの総量で存在することを特徴とする、請求項10に記載の薬剤。

【公表番号】特表2010−510172(P2010−510172A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531004(P2009−531004)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054308
【国際公開番号】WO2008/050295
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】