説明

曝気攪拌機

【課題】少ない動力でもって、効率的な曝気と攪拌をすることができる曝気攪拌機を提供すること。
【解決手段】回転軸1の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根2を取り付けるとともに、回転軸1の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根3を取り付け、上下部攪拌羽根2、3の間に取水口41を有して回転軸1の周囲を覆う筒体4を設け、下部攪拌羽根3の下側と上部攪拌羽根2の上側とに上下部の筒管51、52から気泡を供給する散気装置5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水あるいは汚水を処理する廃水処理施設において、流入した汚水と微生物を主体とする活性汚泥を曝気・攪拌する曝気攪拌機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などの廃水処理施設では、流入した下水あるいは汚水を処理するに際し、当該汚水あるいは下水と微生物を主体とする活性汚泥を水槽において混合・攪拌し、さらに当該水槽に空気を供給、すなわち曝気することによって、活性汚泥微生物が空気中の酸素を利用し、下水あるいは汚水中の汚濁物を分解している。
【0003】
近年においては、水槽底部付近に散気装置を設置し、外部に設けた送風機から該散気装置に圧縮空気を導入することにより、水槽内に空気を供給する曝気方法が多く見られる。
この方法では、散気装置から放出される空気を1ミリメートル以下の微細な気泡にすることにより気泡の表面積を大きくし、もって液相への酸素移動効率を高めている。
【0004】
しかしながら、この散気装置では、圧縮空気を水槽底部付近に導入するために大容量の送風機が必要となり、その運転に多大な動力が必要となっている。
また、水槽内での汚水の処理を良好に行うためには、散気装置から放出される空気を水槽全体に行き渡らせる、すなわち水槽内を適切に混合・攪拌する必要があるが、散気装置による曝気方法では、補助的に攪拌装置を設けたり、導入する圧縮空気の量を増やすなど、さらに多大な動力が必要となるなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の曝気・攪拌方法が有する問題点に鑑み、少ない動力でもって、効率的な曝気と攪拌をすることができる曝気攪拌機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の曝気攪拌機は、回転軸の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根を取り付けるとともに、回転軸の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根を取り付け、該上下部攪拌羽根の間に取水口を有して回転軸の周囲を覆う筒体を設け、少なくとも下部攪拌羽根の下側に気泡を供給する散気装置を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、散気装置が、上部攪拌羽根の上側に気泡を供給することができる。
【0008】
また、気泡を放出する気孔を筒管の内側に設け、該筒管の内径を筒体の上部又は下部開口部と略同径にすることができる。
【0009】
また、断面を円形又は多角形に形成した筒管の内側に気孔を設けることができる。
【0010】
また、散気装置が、水に微細気泡を発生させるとともに、該微細気泡を含んだ酸素リッチ水を外部から供給することができる。
【0011】
また、回転軸を中空に形成するとともに、散気装置が該回転軸の内部に微細気泡を含んだ酸素リッチ水を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の曝気攪拌機によれば、回転軸の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根を取り付けるとともに、回転軸の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根を取り付け、該上下部攪拌羽根の間に取水口を有して回転軸の周囲を覆う筒体を設け、少なくとも下部攪拌羽根の下側に気泡を供給する散気装置を設けることから、散気装置からの気泡を下部攪拌羽根による強いせん断作用により微細化することができ、これにより、気泡を供給する気孔の径を大きくして空気の出口抵抗を減少させることができる。
また、微細化した気泡は曝気攪拌機による下降、上昇の水流とともに水槽の下部に長く滞留し、供給する空気量が少なくても必要な酸素溶解速度を得ることができ、これにより、空気の供給量を減じて散気装置のブロワの動力を大幅に低減することができる。
また、下部攪拌羽根の水流により、汚泥堆積を防止するために十分な底部流速の確保と槽内の均質攪拌を図ることができる。
【0013】
この場合、散気装置が、上部攪拌羽根の上側に気泡を供給することにより、散気装置からの気泡を上部攪拌羽根による強いせん断作用により微細化するとともに、微細化した気泡は水流とともに水槽の上部に長く滞留することができる。
【0014】
また、気泡を放出する気孔を筒管の内側に設け、該筒管の内径を筒体の上部又は下部開口部と略同径にすることにより、筒管の内側に発生するせん断流により気泡を微細化するとともに、攪拌羽根の水流の障害物にはならない構造とすることができる。
【0015】
また、断面を円形又は多角形に形成した筒管の内側に気孔を設けることにより、気孔を密集させ、攪拌羽根の水流による負圧を利用して、空気を吹き込む動力を減らしたり、大気圧で気泡を供給したりすることができる。
【0016】
また、散気装置が、水に微細気泡を発生させるとともに、該微細気泡を含んだ酸素リッチ水を外部から供給することにより、微細化した気泡を地上側で水に発生させ、散気装置のブロワの動力を大幅に低減するとともに、微細化した気泡を攪拌羽根の水流とともに水槽に長く滞留させ、少量の空気でも必要な酸素溶解速度を得ることができる。
【0017】
また、回転軸を中空に形成するとともに、散気装置が該回転軸の内部に微細気泡を含んだ酸素リッチ水を供給することにより、回転軸を通じて微細気泡を下部攪拌羽根の下側に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の曝気攪拌機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の曝気攪拌機は、図1に示すように、回転軸1の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根2を取り付けるとともに、回転軸1の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根3を取り付けている。
そして、上下部の攪拌羽根2、3の間に取水口41を有して回転軸1の周囲を覆う筒体4を設け、下部攪拌羽根3の下側と上部攪拌羽根2の上側とに上下部の筒管51、52から気泡を供給する散気装置5を設けている。
【0020】
本発明の曝気攪拌機では、水槽内に吹き込む空気量を大幅に減少させ、その吹き込みに要するブロワ53の動力を大幅に低減する。
一方では、少量の空気を水槽内に長時間滞留させるとともに、底部流速を確保するために、水流の軌跡が長距離となるような強制対流を発生させるための攪拌羽根2、3の動力を追加するが、その攪拌羽根2、3は所要動力に対して吹き出し流量が大きな高効率のものであるため、追加する動力は僅かでよい。
水槽内の汚水(活性汚泥混合液など)に吹き込む空気量を減少させるにもかかわらず、汚水への酸素溶解速度を一定量に保つために以下のことを行う。
【0021】
(1)汚水に滞留させる気泡径を微小とし、気泡の持つ浮力を減少させることにより、気泡は攪拌羽根2、3で発生する水流に導かれ、水面に浮上するまでに水流とともに水槽内の長距離を移動するようになる。
【0022】
(2)一般的に、気泡を放出する気孔を小さくしても、それに伴って気泡は小さくならず、圧力損失が増加し、所要動力が増加することが知られている。
それを防止するために、上下部の筒管51、52から吹き出す気泡径においては、放出直後は必ずしも微細とはせず、一旦大きめの気孔から大きめの気泡を発生させ、その気泡を攪拌羽根2、3による強いせん断作用により微細化する。
【0023】
(3)気孔を施した上下部の筒管51、52の断面は円形であり、気孔はその内側にあるため、気孔から吹き出された気泡は円形断面の表面を滑るように移動し、上下部の筒管51、52の内側に発生するせん断流により微細化される。
【0024】
(4)気孔を施した上下部の筒管51、52は、筒体4の水流吹き出し部とほぼ同一内径のリング形状としており、水流の障害物にはならない構造としている。
【0025】
(5)微細気泡を水槽底部に長時間滞留させるために、上向き流と下向き流の2重の流れを発生させる。
(6)上向き流と下向き流の流量比は、3:7から7:3までとし、特に、5:5程度が下向き流の水流により気泡の滞留時間を延長するのに適している。
【0026】
(7)滞留時間の延長に適した気泡の供給位置は、下向き流の吹き出し部直下であることが判っており、この位置に下部筒管52を配置する。
【0027】
(8)下向き流の微細気泡が主に滞留するエリアは水槽の下半分となるため、上半分にも微細気泡を滞留させるために、別途、上向き流の吹き出し部の上にも気孔を施した上部筒管51を配置し、水槽上部にも気泡を拡散させる。
この場合、気泡発生面積を確保する上でも、上下部の筒管51、52は、筒体4の水流吹き出し部とほぼ同一内径のリング形状とし、水流の障害物にはならない構造とする。
【実施例1】
【0028】
図1に、本発明の曝気攪拌機の第1実施例を示す。
この曝気攪拌機は、電動機11により回転する回転軸1の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根2を取り付けるとともに、回転軸1の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根3を取り付け、該上下部の攪拌羽根2、3の間に取水口41を有して回転軸1の周囲を覆う筒体4を設けている。
そして、下部攪拌羽根3の下側と上部攪拌羽根2の上側とに気泡を供給する散気装置5を設けている。
【0029】
散気装置5は、水槽内に設置された、内側に気孔を有する下部筒管52と上部筒管51とに、ブロワ53による空気(酸素)を導管54を通して送風することにより、上下部の筒管51、52から気泡を放出する。
放出された気泡は、上部攪拌羽根2又は下部攪拌羽根3により発生する下部水流S1又は上部水流S2により微細化される。
下部水流S1は下部筒管52の特に下側において乱れが強くなり、気泡を微細化し、気泡の直径は微小となる。
【0030】
微小の直径となった気泡は浮力を失い、下部攪拌羽根3が発生する下向き流に導かれて水槽内で長距離を移動するため、結果的に長時間滞留することになる。
しかも、上向き流の上部水流S2が水槽の上部で循環し、蓋のように作用するため、下向き流とともに流れた気泡は、水深方向の中央部又は底部に長時間滞留する。
また、上部筒管51から放出される気泡も、下部筒管52からのものと同様に上部水流S2により微細化され、上部水流S2とともに今度は水槽の上部付近を長時間滞留する。
【0031】
かくして、本第1実施例の曝気攪拌機は、回転軸1の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根2を取り付けるとともに、回転軸1の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根3を取り付け、該上下部の攪拌羽根2、3の間に取水口41を有して回転軸1の周囲を覆う筒体4を設け、少なくとも下部攪拌羽根3の下側に気泡を供給する散気装置5を設けることから、散気装置5からの気泡を下部攪拌羽根3による強いせん断作用により微細化することができ、これにより、気泡を供給する気孔の径を大きくして空気の出口抵抗を減少させることができる。
また、微細化した気泡は曝気攪拌機による下降、上昇の水流とともに水槽の下部に長く滞留し、供給する空気量が少なくても必要な酸素溶解速度を得ることができ、これにより、空気の供給量を減じて散気装置5のブロワ53の動力を大幅に低減することができる。
また、下部攪拌羽根3の水流により、汚泥堆積を防止するために十分な底部流速の確保と槽内の均質攪拌を図ることができる。
【0032】
そして、散気装置5が、上部攪拌羽根2の上側に気泡を供給することにより、散気装置5からの気泡を上部攪拌羽根2による強いせん断作用により微細化するとともに、微細化した気泡は水流とともに水槽の上部に長く滞留することができる。
【0033】
また、気泡を放出する気孔を上下部の筒管51、52の内側に設け、該上下部の筒管51、52の内径を筒体4の上部又は下部開口部と略同径にすることにより、上下部の筒管51、52の内側に発生するせん断流により気泡を微細化するとともに、攪拌羽根2、3の水流の障害物にはならない構造とすることができる。
【実施例2】
【0034】
図2に、本発明の曝気攪拌機の第2実施例を示す。
断面が多角形の筒管55は、吹き出す気泡の量を多くする場合の散気管であり、図1に示す下部筒管52より多くの気孔をその内側に設けることができる。
空気量に応じて、断面が円形の下部筒管52を複数段重ねるか、断面が多角形の筒管55を設けるかを選択する。
【0035】
また、この第2実施例の曝気攪拌機は、上部筒管51としても、断面が多角形の筒管55を配置している。
なお、この第2実施例の曝気攪拌機のその他の構成は、第1実施例と同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
このように、本第2実施例の曝気攪拌機は、断面を円形又は多角形に形成した筒管55の内側に気孔を設けることにより、気孔を密集させ、攪拌羽根2、3の水流による負圧を利用して、空気を吹き込む動力を減らしたり、大気圧で気泡を供給したりすることができる。
【実施例3】
【0037】
図3に、本発明の曝気攪拌機の第3実施例を示す。
この曝気攪拌機は、散気装置6が、水に微細気泡を発生させるとともに、該微細気泡を含んだ酸素リッチ水を外部から供給することにより、微細化した気泡を地上側で水に発生させている。
また、回転軸1を中空に形成するとともに、散気装置6が該回転軸1の内部に微細気泡を含んだ酸素リッチ水を供給することにより、回転軸1を通じて微細気泡を下部攪拌羽根3の下側に供給するようにしている。
なお、図3において、第1実施例と同様の構成は、同一符号を記すことによりその説明を省略する。
【0038】
具体的には、上部筒管61及び下部筒管62は、図1に示す上部筒管51及び下部筒管52と同様の位置に配置しているが、この上部筒管61及び下部筒管62からは気泡を含んだ水が放出される。
その水は、元々水槽内の汚水であり、ポンプ66により汲み上げられ、一時貯留タンク65に流入する。
その後、微小気泡発生装置により気泡を含んだ水となり、さらに導管63を通って上部筒管61及び下部筒管62から放出される。
【0039】
また、一時貯留タンク65に流入した汚水は、導管64にも流れるように配管されており、回転継ぎ手67を介して中空の回転軸1の内部を流れ、回転軸1の下部開口部より放出される。
【0040】
かくして、本第3実施例の曝気攪拌機は、散気装置6が、水に微細気泡を発生させるとともに、該微細気泡を含んだ酸素リッチ水を外部から供給することから、微細化した気泡を地上側で水に発生させ、散気装置6のブロワの動力を大幅に低減するとともに、微細化した気泡を攪拌羽根2、3の水流とともに水槽に長く滞留させ、少量の空気でも必要な酸素溶解速度を得ることができる。
【0041】
また、回転軸1を中空に形成するとともに、散気装置6が該回転軸1の内部に微細気泡を含んだ酸素リッチ水を供給することにより、回転軸1を通じて微細気泡を下部攪拌羽根3の下側に供給することができる。
【0042】
以上、本発明の曝気攪拌機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の曝気攪拌機は、少ない動力でもって、効率的な曝気と攪拌をすることができるという特性を有していることから、省動力化を図るようにした曝気攪拌機として広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の曝気攪拌機の第1実施例を示す断面図である。
【図2】同第2実施例を示す部分断面図である。
【図3】同第3実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 回転軸
11 電動機
2 上部攪拌羽根
3 下部攪拌羽根
4 筒体
41 取水口
5 散気装置
51 上部筒管
52 下部筒管
53 ブロワ
54 導管
55 断面が多角形の筒管
6 散気装置
61 上部筒管
62 下部筒管
63 導管
64 導管
65 一時貯留タンク
66 ポンプ
67 回転継ぎ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の上部に上向き流を発生させる上部攪拌羽根を取り付けるとともに、回転軸の下部に下向き流を発生させる下部攪拌羽根を取り付け、該上下部攪拌羽根の間に取水口を有して回転軸の周囲を覆う筒体を設け、少なくとも下部攪拌羽根の下側に気泡を供給する散気装置を設けたことを特徴とする曝気攪拌機。
【請求項2】
散気装置が、上部攪拌羽根の上側に気泡を供給することを特徴とする請求項1記載の曝気攪拌機。
【請求項3】
気泡を放出する気孔を筒管の内側に設け、該筒管の内径を筒体の上部又は下部開口部と略同径にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の曝気攪拌機。
【請求項4】
断面を円形又は多角形に形成した筒管の内側に気孔を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の曝気攪拌機。
【請求項5】
散気装置が、水に微細気泡を発生させるとともに、該微細気泡を含んだ酸素リッチ水を外部から供給することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の曝気攪拌機。
【請求項6】
回転軸を中空に形成するとともに、散気装置が該回転軸の内部に微細気泡を含んだ酸素リッチ水を供給することを特徴とする請求項5記載の曝気攪拌機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−17655(P2010−17655A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180428(P2008−180428)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】