説明

曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置

【課題】 掘削時に排出される排泥土量の低減を図ると共に、発生排泥の処理及び再利用を容易とし、さらに、削孔液の粘性低下による掘削機械の負荷を低減する。また、施工時間に影響を与えるジャイロスコープを用いた削孔軌跡の計測時間を短縮することにより、全体の工期を短縮して工事費用を低減する。
【解決手段】 曲がりボーリング工法に用いる削孔装置10において、気泡液作成送出機60により、削孔管20を介して先端ビット40へ気泡液を送出し、先端ビット40の周辺に気泡液を注入しながら削孔を行う。また、削孔管20内へジャイロスコープ30を挿入する工程で、高圧流体送出機(例えば、圧縮空気送出機50)により、削孔管20内へ高圧流体(例えば、圧縮空気)を送出してジャイロスコープ30を削孔管20の先端部へ向かって圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置に関するものであり、例えば、地上から建造物の下方に向かって斜めに削孔を行い、建造物の下方に薬液注入作業孔を形成する際に使用される工法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震による液状化現象を防止するため、地上から建造物の下方に向かって斜めに削孔を行い、建造物の下方に薬液注入作業孔を形成するための工法として、曲がりボーリング工法が知られている。従来の曲がりボーリング工法では、掘削時の溝壁崩壊を防止するためにベントナイト泥水を使用している(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、地上の掘削用泥水圧送ポンプから、削孔管の先端に設けたノズルに向けて掘削用泥水(ベントナイト泥水)を供給し、この掘削用泥水(ベントナイト泥水)をノズルから高圧噴射するようになっている。
【0003】
また、曲がりボーリング工法では、削孔管による削孔軌跡を把握するために、削孔管内へジャイロスコープを挿入するのが一般的である。例えば、削孔管による削孔軌跡を把握するための方法として、削孔管内の先端部付近までジャイロスコープを挿入した後、ジャイロスコープからの信号を記録しながら、削孔管からジャイロスコープを引き抜いて、削孔軌跡を計測する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
この特許文献2に記載された技術は、ジャイロスコープの先端に、ジャイロスコープに対して回転自在に構成された捻れ検知装置の雄型あるいは雌型を設けると共に、削孔ロッドの先端部に、削孔方向決定部材に対して固定されている捻れ検知装置の雌型あるいは雄型を設ける。そして、ジャイロスコープ先端の雄型あるいは雌型を回転させて削孔ロッド先端部の雌型あるいは雄型と係合させ、その際に雄型あるいは雌型が回転した角度を検出する工程と、捻れ検知装置の雄型と雌型とが係合した地点から地上側の収納位置までジャイロスコープを引き込む工程と、その際にジャイロスコープからの信号を記録して削孔軌跡を計測する工程とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−41301号公報
【特許文献2】特許第3763399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の曲がりボーリング工法では、上述したように、掘削時の溝壁崩壊を防止するためにベントナイト泥水を使用しているが、ベントナイト泥水が掘削土と混合されて排泥土となり地上に排出され、産業廃棄物として処理しなければならなかった。この排泥土量は、掘削土量に比して多くなり処理に手間を要するだけでなく、産業廃棄物処理費が嵩むことになる。
【0007】
また、曲がりボーリング工法において削孔精度を高めるためには、3m程度(削孔管1本分)の削孔を行う毎に、削孔管内にジャイロスコープを送り込んだ後、引き抜きながら削孔軌跡を検出しなければならない。従来の曲がりボーリング工法では、ジャイロスコープの信号ケーブルが大型のリールに巻かれており、このリールを回転させることにより、信号ケーブルの先端に接続されたジャイロスコープを削孔管内へ送り込んだり、削孔管内から引き抜いたりしていた。このような作業には多大な時間を要するため、施工時間が長引くという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、掘削時に排出される排泥土量の低減を図ると共に、発生排泥の処理及び再利用を容易とし、また、削孔液の粘性低下による掘削機械の負荷を低減することが可能であり、さらに、施工時間に影響を与えるジャイロスコープを用いた削孔軌跡の計測時間を短縮することにより、全体の工期を短縮して工事費用を低減することが可能な曲がりボーリング工法及びこれに使用する削孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置は、削孔管の先端に先端ビットを取り付けて地盤中に挿入して削孔を行う工法及び装置であって、先端ビットは先細状のテーパー部を有しており、直線削孔時には、削孔管及び先端ビットを回転させながら削孔し、曲線削孔時には、削孔管及び先端ビットを回転させない状態で地盤中に圧入して、先端ビットのテーパー部に作用する土圧により曲線推進し、削孔管内へジャイロスコープを挿入した後、当該ジャイロスコープを引き抜きながら削孔軌跡を計測するようになっている。
【0010】
そして、削孔工程で、削孔管を介して先端ビットへ気泡液を送出し、先端ビットの周辺に気泡液を注入しながら削孔を行うことを特徴とするものである。また、削孔管内へジャイロスコープを挿入する工程で、削孔管内へ高圧流体を送出してジャイロスコープを削孔管の先端部へ向かって圧送することを特徴とするものである。この曲がりボーリング工法に用いる削孔装置は、気泡液を作成する気泡液作成機と、気泡液を削孔管内へ送出する気泡液送出機とを備えている。また、削孔管内へ高圧流体を送出してジャイロスコープを削孔管の先端部へ向かって圧送する構成とする場合には、削孔管内へ高圧流体を送出する高圧流体送出機をさらに備えている。
【0011】
このような構成からなる曲がりボーリング工法及び削孔装置では、掘削時の溝壁崩壊の防止に用いていたベントナイト泥水に代えて、先端ビットの周辺に気泡液を注入する。なお、気泡液とは、例えば、タンパク系の起泡剤や界面活性剤の水溶液と空気とを混合して泡状にしたものである。
【0012】
また、削孔軌跡を測定する際に、削孔管の基端側から削孔管内にジャイロスコープを挿入した後、削孔管の基端部において信号ケーブルの周囲にシール材を取り付けて、削孔管の基端部を密閉する。そして、高圧流体送出機を用いて削孔管内へ高圧流体を送出することにより、ジャイロスコープを削孔管の先端部へ向かって圧送する。また、ウインチでジャイロスコープに接続された信号ケーブルを巻き取ることにより、削孔管内からジャイロスコープを引き抜くようになっている。なお、高圧流体とは、例えば、圧縮空気や高圧水のことであり、圧縮空気を送出する場合には、高圧流体送出機としてコンプレッサーを使用し、高圧水を送出する場合には、高圧流体送出機としてポンプを使用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置では、気泡液を注入しながら削孔を行うことにより、排出される排泥土量が低減すると共に、発生排泥の処理及び再利用が容易となり、さらに、削孔液の粘性低下による掘削機械の負荷を低減することが可能となる。また、削孔管内へジャイロスコープを挿入する際に、気泡液が潤滑剤及び緩衝材の役目を果たして、ジャイロスコープの挿入負荷が減少するので、ジャイロスコープの挿入が容易となる。
【0014】
また、本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置では、圧縮空気や高圧水等の高圧流体の圧送力により、削孔管内へジャイロスコープを挿入している。したがって、従来の技術のように、ジャイロスコープに接続された信号ケーブルを繰り出すことにより、削孔管内へジャイロスコープを挿入する場合と比較して、ジャイロスコープを速やかに削孔管の先端部まで到達させることができる。このため、施工時間に影響を与えるジャイロスコープを用いた削孔軌跡の計測時間を短縮することができるので、全体の工期が短縮され、工事費用を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る削孔装置及び付属装置の全体構成を示す概略図。
【図2】先端ビットの断面図。
【図3】ジャイロスコープを挿入した状態の先端ビットの断面図。
【図4】気泡液の作成手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置の実施形態を説明する。図1〜図3は曲がりボーリング工法に用いる削孔装置を説明するもので、図1は削孔装置及び付属装置の全体構成を示す概略図、図2は先端ビットの断面図、図3はジャイロスコープを挿入した状態の先端ビットの断面図である。また、図4は気泡液の作成手順を示す説明図である。
【0017】
<削孔装置>
本発明で使用する削孔装置10としては、従来から公知の水平削孔装置を利用することができる。この削孔装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11上に載置され、削孔管20を接続及び切断するための接続切断装置12と、削孔管20の挿入角度を調整するための角度調整装置13と、削孔管20を推進するための推進駆動装置14と、を備えている。また、削孔装置10の後方には、ジャイロスコープ30に接続された信号ケーブル31を巻き取るためのウインチ15が配置されている。また、本発明で使用する削孔装置10は、圧縮空気送出機50、気泡液作成送出機60、起泡剤タンク61を備えている。
【0018】
本発明で使用するジャイロスコープ30の信号ケーブル31は、ジャイロスコープ30からの信号を受信するためと、ジャイロスコープ30を削孔管20内から引き抜くために使用される。これに対して、従来の曲がりボーリング工法における信号ケーブルは、これらの機能だけではなく、ジャイロスコープ30を削孔管20内へ送り込むためにも使用される。したがって、本実施形態における信号ケーブル31は、従来の信号ケーブルと比較して細いものとなっている。このため、本実施形態のウインチ15は、従来の曲がりボーリング工法で使用するリールと比較して小型化することができる。
【0019】
<先端ビット>
削孔管20の先端部には、先端ビット40が取り付けられている。この先端ビット40は、図2及び図3に示すように、先端部が先細状となるようなテーパー部44を有しており、直線削孔時には、削孔管20及び先端ビット40を回転させながら削孔し、曲線削孔時には、削孔管20及び先端ビット40を回転させない状態で地盤中に圧入して、先端ビット40のテーパー部44に作用する土圧により曲線推進するようになっている。なお、図2及び図3中、符号41は先端治具を示している。
【0020】
また、先端ビット40の先端部には、削孔管20を介して送出される気泡液を噴出させるための噴出口42と、削孔管20の内部と噴出口42とを連通するための送出管43とが設けられている。そして、削孔時に、気泡液作成送出機60から削孔管20を介して気泡液が送り込まれ、この気泡液が、先端ビット40の先端部に設けた噴出口42から、先端ビット40の周辺部に注入される。注入後の気泡液は、削孔管20と地盤との隙間を介して地上部へ戻される。
【0021】
<気泡液作成送出機>
気泡液作成送出機60は、気泡液作成機能と気泡液送出機能を兼ね備えた装置であり、起泡剤に空気を混入させて気泡液を作成すると共に、削孔管20内へ気泡液を送出するようになっている。具体的には、例えば、水で希釈した起泡剤中に高圧空気を噴射することにより、起泡剤に空気を混入させて気泡液を作成することができる。そして気泡液送出機能を発揮するコンプレッサー(図示せず)により、削孔管20内へ気泡液を送出する。本実施形態では、気泡液作成機能と気泡液送出機能を兼ね備えた装置としているが、気泡液作成機能を有する装置(気泡液作成装置)と、気泡液送出機能を有する装置(気泡液送出装置)とを別個の装置として設けてもよい。なお、本実施形態では、起泡剤(希釈液)は起泡剤タンク61に貯留されている。
【0022】
<気泡液の作成>
上述したように、気泡液は、希釈した起泡剤中に高圧空気を噴射することにより作成される。具体的には、図4に示すように、起泡剤の原液を所定濃度(例えば、起泡剤の原液に対して100倍程度の濃度)に希釈して希釈起泡剤を作成し、起泡剤タンク61に貯留する。そして、この希釈起泡剤中に高圧空気を噴射することにより、希釈起泡剤中に空気が混入し、所定体積(例えば、希釈起泡剤に対して体積が25倍程度)の気泡液が作成される。なお、気泡液の作成方法は、特に限定されるものではなく、希釈起泡剤中に空気を混入して気泡を発生させる方法であれば、公知の技術を適用することができる。
【0023】
<消泡剤>
地盤中に注入された気泡液は、削孔管20と地盤との隙間を介して地上部へ戻される。そこで、地上部へ戻された気泡液中に消泡剤を混入することにより、気泡液を水と排泥とに分離することができる。本実施形態では、希釈起泡剤に空気を混入することにより、希釈起泡剤を25倍程度の体積となるように発泡させている。したがって、地上部に戻された気泡液に消泡剤を混入して気泡を消すことにより、混入した気泡液を1/25程度の体積に戻すことができる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等、公知の消泡剤を使用することができる。
【0024】
<圧縮空気送出機>
圧縮空気送出機50は、高圧流体送出機として機能する装置であり、例えば公知のコンプレッサーからなる。この圧縮空気送出機50を用いて、削孔管20の先端部へ向かってジャイロスコープ30を圧送するには、まず、削孔管20の基端側から削孔管20内にジャイロスコープ30を挿入した後、削孔管20の基端部において信号ケーブル31の周囲にシール材(図示せず)を取り付けて、削孔管20の基端部を密閉する。そして、圧縮空気送出機50を用いて削孔管20内へ高圧流体を送出すると、ジャイロスコープ30を削孔管20の先端部へ向かって圧送することができる。
【0025】
<高圧流体>
削孔管20内へ送出する高圧流体は圧縮空気に限られず、高圧水を利用し、あるいは圧縮空気及び高圧水の双方を併用することができる。高圧水を利用する場合には、高圧流体送出機として公知のポンプを使用すればよい。ジャイロスコープ30を圧送ための高圧流体として圧縮空気を利用した場合には、地盤中に注入された空気は削孔管20と地盤との隙間を通って地表へ戻り大気中へ放散される。このため、圧縮空気の使用により廃棄物の排出量が増加することはない。一方、ジャイロスコープ30を圧送ための高圧流体として高圧水を利用した場合には、地盤中に注入された水は削孔管20と地盤との隙間を通って地表へ戻るため排水処理が必要となるが、高圧水は圧縮空気と比較してジャイロスコープ30の圧送能力が高いため、この点では圧縮空気と比較して有利となる。したがって、削孔管20の内径、屈曲度合い等、ジャイロスコープ30の圧送に影響を与える種々の要因に応じて、圧縮空気を利用したり、高圧水を利用したり、圧縮空気と高圧水とを併用したりすることにより、適切な工事を行うことが可能となる。なお、削孔管20内へ送出する圧縮空気及び高圧水の圧力は、削孔管20の内径、屈曲度合い、ジャイロスコープ30の大きさ及び重さ等に応じて、適宜設定することができる。
【0026】
<削孔方法>
次に、本発明の曲がりボーリング工法について説明する。
本発明の曲がりボーリング工法は、地上に設置した削孔装置10の接続切断装置12により削孔管20を接続しながら、推進駆動装置14により削孔管20を地盤中に貫入して、先端ビット40により削孔を行う。この際、気泡液作成送出機60により気泡液を作成すると共に、削孔管20を介して先端ビット40へ気泡液を送出する。気泡液は、先端ビット40に設けた噴出口42から、先端ビット40の周辺に注入される。
【0027】
そして、削孔の進行に伴って随時、削孔管20内へジャイロスコープ30を挿入する。この際、圧縮空気送出機50により、削孔管20内へ圧縮空気を送出してジャイロスコープ30を先端ビットへ向かって圧送する。ジャイロスコープ30が先端ビット40の位置まで到達すると、回転角度計測機構(図示せず)により先端ビット40の向きを検出する。
【0028】
なお、回転角度計測機構は、どのような機構であってもよく、例えば、先端ビット40の基端部に固定磁石部を取り付けると共に、ジャイロスコープ30の先端部に回転磁石部を回転可能に取り付けて、回転磁石部を固定磁石部に近接させ、パルスエンコーダ等からなる回転角度計測器により回転磁石部の回転角度を検出する機構とすることができる。
【0029】
この状態から、ウインチ15により信号ケーブル31を巻き取って、ジャイロスコープ30を引き込みながら、ジャイロスコープ30の引き込み軌跡(削孔軌跡)を計測する。ジャイロスコープ30の信号ケーブル31及び回転角度計測機構の信号ケーブル(図示せず)は、コンピュータ(図示せず)に接続されており、コンピュータにより先端ビット40の向き及びジャイロスコープ30の引き込み軌跡(削孔軌跡)を演算し、ディスプレイ装置等に表示する。
【0030】
そして、計測された先端ビット40の向きに基づいて、以降の削孔方向を予測して、ディスプレイ装置等に表示する。このようにして予測された先端ビット40の方向が、予定の計画線と異なる場合には、削孔管20及び先端ビット40を回転させて先端ビット40の向きを制御し、削孔方向を決定すればよい。この際、削孔管20及び先端ビット40の回転に伴い、ディスプレイ装置に表示される予定計画線も変化させる。このように、削孔の進行に伴って随時、削孔軌跡を計測しながら削孔方向を修正することにより、精度の高い削孔を行うことができる。
【0031】
本実施形態の曲がりボーリング工法では、削孔に伴って、地上部へ掘削土が混入した気泡液が戻ってくるが、この気泡液に消泡剤を混入して消泡することにより、排泥土が発生する。この排泥土は、産業廃棄物として処理されるが、後に詳述するように、削孔液としてベントナイト泥水を使用した場合と比較して、産業廃棄物として処理しなければならない排泥土量は大幅に削減される。
【0032】
<従来技術との比較>
本発明の曲がりボーリング工法及びこれに用いる削孔装置では、起泡剤を所定の倍率(100倍程度)に希釈した後、気泡液作成送出機60を用いて発泡倍率が25倍程度の気泡液を作成している。このため、起泡剤「1」に対して、その2500倍程度の気泡液を作成することができるので、材料コストの低減を図ることができる。
【0033】
また、削孔液として、ベントナイト泥水に代えて気泡液を使用しているが、この気泡液は、起泡剤(希釈起泡剤)に空気を混合して作成したものであるため、発生する排泥(気泡液)に消泡剤を添加することで、元の希釈起泡剤に戻すことができる。このため、発生泥土量を、ベントナイト泥水と比較して50〜60%程度低減することができる。
【0034】
また、削孔液として気泡液を使用することにより、削孔液の粘性が低下して、削孔スピードを上昇させることができる。すなわち、気泡液は、ベントナイト泥水と比較して粘性が低いため、削孔管20の回転トルクが低下し、削孔スピードが上昇する。
【0035】
また、従来の曲がりボーリング工法を好適に適用できるのは、砂質土(N<20の液状化層)であったが、本発明では、気泡のベアリング効果により、硬質地盤への適用も可能となる。
【0036】
また、起泡剤(気泡液)は中性の薬剤であるため、地盤改良体(例えば、薬液注入改良体)の品質を向上させることができる。従来、削孔液として使用していたベントナイト泥水はアルカリ性であり、地盤改良体の品質が懸念されていた。すなわち、薬液注入に使用する薬剤はpH管理が非常に重要であり、pHのバランスが変われば所定の注入を行うことができずに、球状の改良体ではなく、いびつな改良体となってしまう場合があった。これに対して、本発明では、中性の削孔液(気泡液)を使用しているため、pH管理が容易となり、品質のよい球状の改良体を作成することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 削孔装置
11 基台
12 接続切断装置
13 角度調整装置
14 推進駆動装置
15 ウインチ
20 削孔管
30 ジャイロスコープ
31 信号ケーブル
40 先端ビット
41 先端治具
42 噴出口
43 送出管
44 テーパー部
50 圧縮空気送出機
60 気泡液作成送出機
61 起泡剤タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔管の先端に先端ビットを取り付けて地盤中に挿入して削孔を行う削孔方法であって、前記先端ビットは先細状のテーパー部を有しており、直線削孔時には、前記削孔管及び前記先端ビットを回転させながら削孔し、曲線削孔時には、前記削孔管及び前記先端ビットを回転させない状態で地盤中に圧入して、前記先端ビットの前記テーパー部に作用する土圧により曲線推進し、前記削孔管内へジャイロスコープを挿入した後、当該ジャイロスコープを引き抜きながら削孔軌跡を計測する曲がりボーリング工法において、
削孔工程で、前記削孔管を介して前記先端ビットへ気泡液を送出し、前記先端ビットの周辺に前記気泡液を注入しながら削孔を行うことを特徴とする曲がりボーリング工法。
【請求項2】
前記削孔管内へ前記ジャイロスコープを挿入する工程で、前記削孔管内へ高圧流体を送出して前記ジャイロスコープを前記削孔管の先端部へ向かって圧送することを特徴とする請求項1に記載の曲がりボーリング工法。
【請求項3】
削孔管の先端に先端ビットを取り付けて地盤中に挿入して削孔を行う削孔装置であって、前記先端ビットは先細状のテーパー部を有しており、直線削孔時には、前記削孔管及び前記先端ビットを回転させながら削孔し、曲線削孔時には、前記削孔管及び前記先端ビットを回転させない状態で地盤中に圧入して、前記先端ビットの前記テーパー部に作用する土圧により曲線推進し、前記削孔管内へジャイロスコープを挿入した後、当該ジャイロスコープを引き抜きながら削孔軌跡を計測する曲がりボーリング工法に用いる削孔装置において、
気泡液を作成する気泡液作成機と、
前記気泡液を前記削孔管内へ送出する気泡液送出機と、
を備え、
前記気泡液作成機により、気泡液を作成し、前記気泡液送出機により、前記削孔管を介して前記先端ビットへ気泡液を送出し、前記先端ビットに設けられた気泡液注入口から前記先端ビットの周辺に前記気泡液を注入しながら削孔を行うことを特徴とする曲がりボーリング工法に用いる削孔装置。
【請求項4】
前記削孔管内へ高圧流体を送出する高圧流体送出機をさらに備え、
前記削孔管内へ前記ジャイロスコープを挿入する工程で、前記高圧流体送出機により、前記削孔管内へ高圧流体を送出して前記ジャイロスコープを前記削孔管の先端部へ向かって圧送することを特徴とする請求項3に記載の曲がりボーリング工法に用いる削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231590(P2011−231590A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105533(P2010−105533)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】