説明

曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品

【課題】枕、シューズなどに用いられ、適度な冷感と冷感持続性と良好な曲げ耐久性に優れた曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を提供する。
【解決手段】熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなる曲面発熱体用冷感パッド積層体であって、
前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ
裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品に関し、詳しくは、人体や動物に対して使用される用途品、特に枕、シューズといった直接肌が接触する寝具類、運動具などに用いられ、接触する肌に適度な初期冷感と冷感持続性と密着感による心地よい使用感を与え、しかも各種用途に要求される屈曲性や耐久性も満足する曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な環境は、様々であり、人体が不快に感ずる環境や要因は、個人差や固体差はあるものの、特に、人体に直接接触する用途品に対しては、より心地よい使用感を求めるニーズが高い。例えば、環境を改善する機能性物品として、一般的に夏季や運動後では、冷感を与える機能を有するものなどが考えられ、提供されてきた。中でも、皮膚に直接接触する用途品、例えば、人体に対して使用される用途品、特に寝具類、運動具などに対しての、夏場や体温上昇時における用品の熱のこもりや蒸れなどによる不快感は、誰しもが強く感じるものであり、そのため、今日までにおいて、心地よい使用感を求めるニーズに対して、さまざまな用途品が上市、提供されてきた。
【0003】
例えば、上記の各種用途品において、医療用に近いものとしては、「より冷たい持続性を高めた冷却剤の利用」により、強い冷却感を与えるものであったり、また、長時間皮膚接触するものとしては、「皮膚と接触する部位に高い通気性を確保する構造や素材の選択」により、蒸れなどによる不快感を無くそうとするものであったりした。
一般的に、このような冷却感や通気性を得るためには、優れた特性を有する素材を選択することが極めて有効であり、その素材の特徴を活かした構造が各種研究され、提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
本発明者らも、皮膚に直接接触する用途品に対して、優れた冷感性能を得るための素材として、密着感に極めて優れる「ゲル材」、及び熱伝導性に極めて優れる「炭素質材料」に注目してきた。
しかしながら、公開された技術としては、従来までこの2部材を組み合わせて用いる例は、皆無であり、両者を有効に共動し、機能させて優れた効果を得た用途品化への研究について、何ら検討が進められたものはなかった。
これは、これらの特性がそれぞれ堅さ(柔らかさ)、伸展強さ(弱さ);圧縮強さ(弱さ);屈曲強さ(弱さ)について、全く相反する特性を有するため、皮膚に直接接触する用途品に対して、適用、組み合わせようとする発想自体、全く想到されるものではないからに他ならない。
【0005】
一方、本発明者らは、皮膚に直接接触する用途品に対して、密着感に極めて優れる「ゲル材料」については、既にゲル状物を素材に利用した枕やマットレスなどの出願を各種行い、商品化したものは、優れた密着感による快適感がユーザーに高い評価を得ている。
ところが、さらなるユーザーの要求として、「皮膚に接触する快適さとして、より好ましくは、密着感はそのままに、冷感をもっと高めてほしい」というニーズが強くある。
【特許文献1】特開2002−191484公報
【特許文献2】特開平7−323041号公報
【特許文献3】特開平8−267647号公報
【特許文献4】特開2008−114374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の問題点に鑑み、直接肌が接触して使用させる用途品である枕、クッション、マットレスといった寝具類、シューズ、サポーターといった運動具などに用いられ、接触する肌に適度な初期冷感と冷感持続性と密着感による心地よい使用感を与え、しかも各種用途に要求される屈曲性や耐久性も満足する曲げ耐久性に優れた曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を提供することにある。
なお、本発明でいう冷感とは、接触する皮膚に対して長時間強い冷却感を与えればよいというものではない。これは、快適感や休息といった心地よい使用感が要求される条件として、接触初期の冷感具合(初期冷感)と、その後の密着時の温度差の維持具合(冷感持続性)と、皮膚への接触感それぞれが重要であるためであり、これを総じて心地よい使用感として考えるからである。また、本明細書では、前記の初期冷感と冷却持続性を総じて冷感性能という。
このように、特に寝具類や運動具において健康な人体が快適に感じるには、密着感と適度な冷感性能の両立が要求される。これが両立しないと、寝具類で枕を例に取れば、入眠やその後の休息が損なわれるといった結果となってしまう。
これは、例えば、「いつまでも体温から離れた冷たすぎる枕」、あるいは、「外気温度にかかわらず一定温度の枕」であったりすれば、深い眠りにつけず目覚めてしまったり、それだけでなく体調を崩したり、外気温度への自己体温を調整しようとする生理的に不快なストレス、過剰な刺激を感じさせることにもなりかねない。
他方、密着感と適度な冷感性能の両立を得ることができれば、上記用途品では、優れた入眠や休息が得られ、心地よい使用感を得ることができる。
このような背景から、本発明者らは、快適な使用感として、接触初期の冷感温度(初期冷感)と、その後の密着時の温度差の維持具合(冷感持続性)に着眼し、それを実現させる構成を得るために、ゲル材と炭素質材料を用い、特定の条件を満足させて性能を両立させ、適度な冷感性能を維持し、人体に使用して、屈曲性や耐久性も満足させる構成の曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を追求し、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記ユーザーの「皮膚に接触する快適さとして、より好ましくは、密着感はそのままに、冷感をもっと高めてほしい」というニーズに注目し、このため密着感に優れた「ゲル材料」だけで冷感を向上させるのでなく、むしろ熱伝導性に極めて優れる材料として「炭素質材料」を共動させようと着眼した。
ところが、本発明者らが直面した大きな問題点は、「炭素質材料」は、皮膚に直接接触する用途品として必要な屈曲に対し、容易に割裂したり、屈折し折れてしまったりすることであった。また、炭素質材料は、ゲル材との密着性が極めて悪く、それでも長期間密着させようとするほど、ゲル材からの液体成分を炭素質材料が吸収し、それぞれの水分または油分の転移により、両者ともその性能の低下を引き起こし、密着感や熱伝導性の維持すら容易ではなかった。
そこで、本発明者らは、ゲル材と炭素質材料との相反する組み合わせが共動できるための条件を試行錯誤した結果、ゲル材と炭素質材料とが共動できる条件、すなわち、硬さ(柔らかさ)、伸展強さ(弱さ);圧縮強さ(弱さ);屈曲強さ(弱さ)の共動を満足する構成を見出した。
さらに、上記の特定の条件において、皮膚に直接接触する用品に対して、ユーザーの所望する密着感を損なわず、適度な冷感性能によって、心地よい使用感が得られる性能を維持し、耐久性にも十分に満足する構成をも追求した結果、「ゲル材料」と「炭素質材料」の共動による曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を提供できるに至った。
【0008】
具体的には、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱伝導性ゲルシートからなる表面層(A)、樹脂材料からなる中間層(B)及び炭素質材料からなる裏面層(C)の少なくとも3層からなり、また、その裏面層(C)に、面方向に熱伝導率が高いグラファイトシートを用い、さらに、以下のような構成要件をそれぞれに付加とした冷感パッド積層体とすると、適度な冷感と冷感持続性に優れ、そして炭素質材料を適用した場合に、大きな問題点であった割裂や屈折、それに伴う熱伝導性の低下といった不具合も解消し、耐久性が飛躍的に向上して、枕やシューズやサポーターなど曲面に接して頻繁に曲げ変形がされる用途品に適用することができ、総じて適度な冷感性能と密着感による心地よい使用感を付与する冷感パッドとして有益であることを、見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなる曲面発熱体用冷感パッド積層体であって、
前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ
裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
尚、本発明における引張り伸び率は、JIS K6251に準拠した同じダンベル形であるが、厚みは、各層の実厚みでの引張り伸び率であって、前記引張り伸び率の大小関係も、各層の実厚みでの引張り伸び率の比較における大小関係である。これは、各層の硬さと厚みで、引張り伸び率が変わるので、実際の積層構成における各層の引張り伸び特性の大小関係が重要であるためである。そこで本発明では、引っ張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲での数値として定める。また、本発明における曲面発熱体とは、特に生存する人体や動物など、表面が曲面で、柔らかく、冷温感を自覚できるもののことである。
【0010】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記大スリットは、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さい幅で、前記小スリットの方向とほぼ直交する方向に分断させてなることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第2の発明において、裏面層(C)のグラファイトシートは、厚み方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が1〜50W/m・Kで、面方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が100〜3500W/m・Kであり、かつ厚みが0.05〜2.0mmであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有し、補強層(D)は、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することを特徴とする曲面発熱体用の冷感パッド積層体が提供される。
【0012】
本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、表面層(A)には、さらに、被覆層(E)を有し、被覆層(E)は、中間層(B)周端部と接合されて、中間層(B)が密着した部分を除く表面層(A)の全面を被覆してなることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、表面層(B)と被覆層(E)との接合は、全周を溶着したことによるものあり、全周縁に硬質部を形成し、該硬質部により裏面層(C)の過剰な屈曲を抑制するとともに初期形状を維持させる機能を付与したことを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第7又は8の発明において、被覆層(E)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が中間層(B)の樹脂材料と同一または大であり、かつ厚さが0.05〜0.15mmの樹脂フィルムであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
【0013】
本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、中間層(B)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が20〜200%であり、かつ厚さが0.05〜0.5mmの樹脂フィルムであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、表面層(A)は、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、表面層(A)の熱伝導性ゲルシートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
【0014】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明に係る曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする寝具類が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明に係る曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする運動具が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体は、適度な初期冷感と冷感持続性、密着感と曲げ耐久性に優れるという効果を発揮するため、枕、クッションといった寝具類、シューズ、サポーターといった運動具に、好適に用いることができる。例えば、枕に適用した場合には、人体頭部からの熱が表面層(A)により吸熱されるとともに、裏面層(C)を介して放熱でき、その結果、夏季等の熱帯夜のように夜間でも高温状態が続いているような場合であっても、就寝時に適度な冷感が入眠を促進させ、かつ適度な冷感性能によって心地よい使用感が得られ、また、表面層がゲル材料により構成されるため、人体等への密着性と、冷感パッド積層体に接触するものに適した適度の硬度に調整することも容易であり、さらに、電気等の外部エネルギーを必要としないため、環境負荷、経済負荷を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体は、熱源側から順に、ゲル材料からなる表面層(A)と、樹脂材料からなる中間層(B)及び炭素質材料からなる裏面層(C)の少なくとも3層からなり、好ましくは、さらに、裏面層(C)には、可撓性の補強層(D)を有し、一方、表面層(A)には、被覆層(E)を有するものである。
以下に、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体及びその用途品などについて、項目毎に、詳細に説明する。
【0017】
I.曲面発熱体用冷感パッド積層体の構成成分
1.熱源側表面層(A)
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる熱源側表面層(A)は、ゲル材料からなり、好ましくは、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものである。
【0018】
上記熱伝導性ゲルシートは、性状、性能として、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることが好ましい。熱伝導率が0.5W/m・K未満であると、十分な冷感が得られず、一方、熱伝導率が3.0W/m・Kを超えると、熱伝導付与のための熱伝導性フィラーの充填量が大きくなり、熱伝導ゲルシートが硬くなって曲げ撓み性が損なわれて好ましくない。また、硬度が20未満であると、熱伝導ゲルシートが硬くなって曲げ撓み性が損なわれ、一方、硬度が150を超えると、柔らかすぎて、使用時にゲルの破断が起こる虞がある。さらに、厚みが1mm未満であると、十分な冷感が得られず、一方、厚みが10mmを超えると、柔軟性が損なわれ、また、コストアップとなり好ましくない。
【0019】
また、上記熱伝導性ゲルシートは、材料として、有機ゲルと熱伝導性フィラーからなるシート状の熱伝導性ゲル硬化物であることが好ましい。有機ゲルとしては、圧縮歪が小さく、温度安定性に優れたシリコーンゲルが好ましい。シリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができるが、硬度調整の容易さや量産性の観点から、特に2液硬化型シリコーン組成物から得られるシリコーンゲルが好ましい。
熱伝導性フィラー(c)は、熱伝導性充填剤とも言われ、金属酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、フェライトなど公知のものを一種又は二種以上を混合して使用できる。例えば、シリカ(石英)、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、マグネシア、亜鉛華、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、雲母が挙げられる。中でも、シリコーンゲルに対する分散性がよく、安価で環境負荷が少ない観点から、水酸化アルミニウムやアルミナが好ましい。また、これらの熱伝導性フィラーは、ゲルへの分散性とゲルとの密着性の向上のため、必要に応じて、シランカップリング剤などで表面処理をしてもよい。
【0020】
本発明で用いるシリコーンゲルは、硬化後におけるJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることが好ましく、より好ましくは針入度が50〜200である。針入度が30未満であると、熱伝導性ゲルシートにしたときの硬度が硬すぎて、ゲル本来の柔らかい感触が得られず、使用時の密着性にも劣るため好ましくない。また、針入度が250を超えると、柔らかすぎて熱伝導性ゲルシートとして使用した際にシリコーンゲルの破断が起き、熱伝導性ゲルシートの型崩れなどの不具合が発生する虞がある。
また、シリコーンゲルは、上記硬さを備え、温度特性に優れ、溶出の点でも心配がなく、変質せず、耐久性がある等の基本的な諸物性を満たすものであれば、いずれのものも適用できるものである。
【0021】
上記蓄熱ゲルシートは、融点が15〜45℃の蓄熱材を含むものであって、硬度がJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることが好ましい。前記蓄熱材の融点は、発熱体の温度に応じて前記範囲において適宜設定されるが、人体への適用においては皮膚温に近い25〜35℃が好ましい。15℃より低いと初期冷感は強いが短時間で熱飽和して冷感持続時間が短くなり、また45℃を超えると融解が起こりにくく十分な冷感作用が得られない。このような蓄熱材としては、パラフィン等の油脂類が好ましく、さらにゲルへの分散性と蓄熱材の融解時の染み出しを防止する目的でゼラチン等の殻で被覆した所謂マイクロカプセル化したフィラーとすることが特に好ましい。
また、上記蓄熱ゲルシートは、熱伝導性ゲルシートと同様に、シリコーンゲルからなることが好ましく、上記熱伝導性ゲルシートに用いたシリコーンゲルを、同様に用いることができる。
【0022】
上記高吸水性ポリマーゲルシートは、高吸水性ポリマーゲルからなり、その高吸水性ポリマーゲルは、水に少量の高吸水性ポリマーを添加してゲル化させたものなど従来から知られ、保冷、蓄熱用途に市販されている種々の高吸水性ポリマーゲルを適宜選択して用いることができる。
高吸水性ポリマーゲルとしては、好ましくは、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩架橋物に自重の100倍吸水させたゲルなどの高吸水性ポリマーゲルを挙げることができる。
【0023】
2.中間層(B)
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる中間層(B)は、樹脂材料からなり、その面積が後記の裏面層(C)より大きいものである。
また、中間層(B)は、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、裏面層(C)と表面層(A)柔らかい感触を活かしつつ、かつ、伸延性に乏しい裏面層(C)を補強して曲げ追従性と曲げ耐久性の機能、働きを発揮するために、次の性状、性能を有するものである。
すなわち、上記樹脂材料としては、好ましくは、JIS K6251準拠の引張り伸び率が表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、20〜200%、厚さが0.05〜0.5mm、及びJIS K7311準拠のJIS Aの硬度が30〜120の樹脂フィルムが挙げられる。引張り伸び率が20未満であると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。一方、引張り伸び率が200%を超えると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下するので好ましくない。また、厚さが0.05mm未満であると、後述する被覆層(E)との溶着加工の際に、薄すぎて十分な溶着強度が得られない問題が発生する可能性があり、一方、厚さが0.5mmを超えると、可撓性が低下するとともに、中間層(B)の熱抵抗が大きくなるので、表面層(A)から裏面層(C)への熱の伝導が阻害されて、冷感持続性が低下するので好ましくない。特に好ましい厚さは、熱抵抗低減と可撓性の観点から、0.05〜0.15mmの範囲である。さらに、硬度については、硬度が30未満であると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下し、一方、硬度が120を超えると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。
さらに、冷感パッドの冷感性能を損なわない範囲において、中間層(B)で表面層(A)表面全体を被覆してもよく、中間層(B)による全面被覆によって、ゲルシートである表面層(A)の保形と、使用時の熱源へのべた付き付着を防止することができる。
【0024】
また、樹脂フィルムの材料としては、ウレタン、PETなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などが挙げられ、公知のプラスチックフィルムの材料として用いられているものであれば、適宜用いられる。
【0025】
3.裏面層(C)
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる裏面層(C)は、炭素質材料からなり、好ましくは、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなるものである。すなわち、厚み方向の熱伝導率が1〜50W/m・Kで、面方向の熱伝導率が100〜3500W/m・Kである。
そのようなグラファイトシートの熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいものとして、例えば、面方向に配向したタイカ(株)製の商品名「スーパーλGS」の熱伝導異方性(面方向250〜350W/m・K、厚み方向5〜10W/m・K)あるいは商品名「λGS」の熱伝導異方性(面方向170〜200W/m・K、厚み方向5〜10W/m・K)グラファイトシートなどが挙げられる。
【0026】
本発明において、グラファイトシートの厚みは、特に限定するものではないが、厚みが厚くなると、熱拡散性能は向上するが可撓性が損なわれ、曲げ柔軟性と曲げ耐久性に支障をきたし、逆に薄すぎると、可撓性は向上するが十分な熱拡散性能が得られない。したがって、可撓性と熱拡散性能のバランスを考慮して、厚みは、0.05〜0.15mm程度が好適であり、特に好ましくは0.075〜0.10mmである。グラファイトシートの厚みが0.075〜0.10mmの範囲であると、グラファイトシートと中間層(B)との追従性がとくに好ましいものとなる。
さらに、裏面層(C)は、グラファイト粉の脱落や補強の目的で、裏面層(C)表面に、樹脂被覆処理を施したものでもよいし、さらに/あるいは、後述する補強層(D)を積層してもよい。前記樹脂被覆処理としては、アクリル系光硬化樹脂のコーティングなど公知の処理を適用でき、補強層(D)と裏面層(C)の接着性を向上させるにおいて有効である。
【0027】
また、裏面層(C)の形状としては、表面層(A)の形状に相似するようなものが、熱拡散の効率の点から好ましい。また、図4に示されるように、裏面層(C)は、放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成される。前記小スリットは、屈曲によって拡開して、その結果、熱伝導性を損なわずに、裏面層(C)は、冷感パッドの曲げ変形に対する追従を容易にする。なお、ここでいう拡開とは、曲げ変形において、引張り応力によってスリットの形状が変化する(具体的には開くように作用する)現象をいう。小スリットの溝幅や小スリット間の間隔、配置は、適宜決定される。
さらに、裏面層(C)は、少なくとも一本の大スリットで分断されていることが好ましく、前記大スリットの形成により、さらに裏面層(C)の屈曲による形状追従性が向上する。大スリットは、その面積が表面層(A)より小さく、かつ前記小スリットのスリット幅より大きいものであることが好ましい。
前記大スリットのスリット幅は、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さければ、大スリット部分と裏面層(C)部分との冷感の差を感じない(し難い)ので、その範囲内で大スリットの幅を広げることができ、冷感の連続的な感覚を付与しながら、裏面層(C)の屈曲による形状追従性を向上することができる。なお、前記スリット幅の範囲を数値換算すると、具体的には25mm以下が好ましく、20mm以下が特に好ましい。25mmを超えると、冷感パッドの裏面層(C)のある部分と大スリットの部分で、冷感に明らかな差を感じやすくなり、好ましくない。25mm以下であれば、人体に適用した場合には、冷点の感覚において冷感の明らかな差を感じ難くなる作用がある。
小スリットと大スリットとは、略垂直の位置関係にあり、それぞれが面方向の縦(または横)、横(または縦)の曲げ変形時に対して、共動して変形応力を低減させることにより、裏面層(C)の優れた曲面形状追従性と曲げ耐久性を実現させる作用がある。
また、小スリットと大スリットは、その機能を損なわない範囲において、その形状は直線状や波形状など、好適な形状を適用できる。
なお、スリットとは、裏面まで貫通して、裏面層(C)の面方向が分断された状態であって、例えば、ごく薄い刃で切り込みを入れただけの状態も含まれる。
【0028】
さらに、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、上記表面層(A)、中間層、裏面層(C)の3層の引張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の関係である。
この理由としては、熱源側から荷重がかかって冷感パッドが表面層(A)を内側として屈曲(湾曲)した時に、伸縮性に乏しく脆い裏面層(C)が過度の荷重によって破断するのを防ぐために、表面層(A)より中間層(B)の引張り伸び率を小さくする必要があり、さらに、中間層(B)の引張り伸び率が裏面層(C)よりも小さいと、中間層(B)の剛性が大きくなり、冷感パッドとしてのフレキシブル性が損なわれるので、中間層(B)の引張り伸び率は、裏面層(C)よりも大きくする必要があるためである。
また、裏面層(C)は、その面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着させて、屈曲する位置に配置されることもでき、それが望ましい。本発明においては、例えば、裏面層(C)のグラファイトシートが屈曲する位置に配置されたとしても、割裂や屈折、それに伴う熱伝導性の低下といった不具合がなく、屈曲性や耐久性も満足し、曲げ耐久性に優れるものである。
【0029】
4.補強層(D)
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有していることが好ましい。
補強層(D)の形状としては、図2に示されるように、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することが望ましい。
また、補強層(D)の材質としては、可撓性であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ウレタン、ナイロンなどが挙げられる。
さらに、補強層(D)の性能、機能としては、可撓性であれば、特に限定されないが、厚みが0.1〜1mmであり、また、熱伝導性、防水性の性能を有していることが望ましい。
さらに、補強層(D)の裏面層側には粘着層を設けてもよい。粘着剤としては、十分な接着性を得られるものであれば、公知の粘着剤を適宜選択して適用できる。
【0030】
5.被覆層(E)
また、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、表面層(A)には、中間層(B)と接触していない部分に、さらに、被覆層(E)を有していてもよい。
被覆層(E)の形状としては、図5に示されるように、中間層(B)と連結して袋状とし、表面層(A)全面を被覆していることが望ましい。その場合には、少なくとも表面層(A)の熱源側は、被覆層(E)で被覆することが望ましい。
【0031】
被覆層(E)と中間層(B)の連結は、接着剤、粘着テープなどによる接着や、溶着など公知の方法を適用できるが、連結強度の確保の観点から、溶着が好ましい。また、連結部を溶着で行うことにより、溶着部分は、非溶着部に比べて弾性率が大きくなるので、表面層(A)の過剰変形(屈曲)を抑制する作用が得られ、その結果、裏面層(C)の変形に伴う小スリットの拡開を効果的に機能させることができるとともに、過変形によるスリットを基点とした裏面層(C)の破損を防止することができる。
【0032】
被覆層(E)は、中間層(B)と同様の特性を有したものを使用できるが、表面層(A)の柔らかさを活かした、感触や熱源への密着性を得る目的の場合は、被覆層(E)の引張り伸び率は、表面層(A)の伸び率と同等以上とすることが望ましい。また、表面層(A)のゲル触感(冷涼感)を導き出すために、厚みは0.02〜0.15mmが好ましい。0.02mm未満の場合には、中間層(B)との接合、特に溶着の場合に薄すぎて溶着ができない虞があり、0.15mmを超えると、剛性が大きくなり、柔軟性が損なわれるので好ましくない。
また、被覆層(E)の材質としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンや熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、中間層(B)との溶着性の観点から、中間層と同じ材質、もしくは中間層(B)との溶着性に好適なものが好ましい。
さらに、補強層(D)の性能、機能としては、防水性や適度な熱伝導性を有していることが好ましい。
【0033】
II.曲面発熱体用冷感パッド積層体の用途
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体は、枕、クッション、マットレスなどの寝具類、後頸部保冷シート、足裏保冷シート、シューズ等の運道具といった用途に用いることができる。以下、簡単に説明する。
【0034】
1.枕
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を、枕において、人間の後頸部などが接地する箇所に配置して、用いることができる。このようにすれば、表面層(A)のゲル触感(冷涼感)を与え、快適さ導き出し、さらに、裏面層(C)の特定形状、性能のグラファイトシートが放熱性を与え、快適さを持続させることができる。その結果、夏季等の熱帯夜のように夜間でも高温状態が続いてしまっているような場合であっても、就寝時に適度な冷感が入眠を促進させ、かつ適度な冷感性能によって心地よい使用感を、枕に付与できる。また、表面層(A)を熱伝導性ゲルシートとした場合には、予冷処理や電力の供給が不要であるので、そのまま使用でき、さらに、従来の予冷タイプの冷却枕(氷枕等)のように過度の冷し過ぎによる不快感や、結露によって枕や布団が湿ることがない。
【0035】
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を配置する枕としては、本発明の冷感パッドが優れた柔軟性と曲げ耐久性を有するので、形状や硬さなど、特に限定されないが、一例を図6に示し、それに基づき説明する。
枕基体部は、一例として、低反発のウレタンフォーム等から成る低反発発泡体を適用するものであるが、市場の嗜好性等に応じて種々の素材のものに改変して実施することが可能である。
【0036】
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を具えた枕1は、一例として以上のような具体的な形態を有し、以下この作動態様について説明する。
就寝時において、人体頭部からの熱が、被覆層(E)を介して表面層(A)に吸熱され、表面層(A)のゲル層は熱伝導性に優れるため、この熱は下層の裏面層(C)に伝えられる。そして裏面層(C)により熱は拡散される。
【0037】
2.他の用途
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の用途としては、上述したような枕への使用の他、クッション、寝具用マットレス、ベッド、ペット用等の敷マット、シューズなどの運動具、パソコン作業時のアームレスト用マットや座席マットとしての使用など、放熱により冷感を付与されることが好まれる種々のマット材、シート材として使用可能である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【0039】
(1)曲面発熱体用冷感パッド積層体の作製
(i)表面層(A):
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)20重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製HS341)80重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が50Pa・sの未硬化のゲル組成物を準備した。次いで、前記未硬化のゲル組成物を、OPP/PET積層の剥離フィルムC1(タカラインコーポレーション社製、75μm)のOPP積層側に接するように挟んで厚み2.5mmのシートにロール成形機で成形し、電気式温風オーブン内で100℃、2時間加熱して、熱伝導性シートとし、230mm×80mmの長方形にカットして、表面層(A)とする熱伝導性シートを得た。前記熱伝導性シートの熱伝導率は1.0W/m・Kで、破断時の引張り伸び率は360%であった。
【0040】
(ii)中間層(B):
250mm×100mm×厚み0.1mmのウレタンフィルム(日本マタイ社製 エスマーURS92°)を準備した。前記ウレタンフィルムの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は、20%であった。
【0041】
(iii)裏面層(C):
厚み0.07mmで、予め片面にUV樹脂コート処理し、かつ他方面に片面粘着剤付のグラファイトシート(株式会社タイカ製、製品名スーパーラムダGS)を準備した。前記グラファイトシートの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は2%であった。
【0042】
(iv)その他の層(補強層(D)、被覆層(E)):
補強層(D)として、可撓性を有する不織布テープ(恵比寿工業社製、N1040)を、被覆層(E)として、250mm×100mm×厚み0.05mmで、引張り伸び率が40%のウレタンフィルム(日本マタイ社製、エスマーURS92°)を準備した。
【0043】
なお、熱伝導率は、熱伝導率測定用に60mm×120mm×10mm厚のブロック状試料を作製し、前記ブロック状試料が25℃における熱伝導率をJIS R2616準拠の熱線法で測定した。測定装置は、京都電子工業株式会社製の熱伝導率計(商品名:QTM−500 PD−11型プローブ)を用いた。
また、引張り伸び率の測定は、JIS K6251に準拠して、ダンベル3号形状で、引張り強度試験機(島津製作所 AG−10)を用いて、クランプ距離55mm、引張り速度500mm/minの条件で実施した。引張り伸び率は、試験前の標線間距離L0(20mm)、破断時の標線間距離L1において、次式より求めた。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100
ただし、中間層(B)と裏面層(C)の伸び率は、表面層(A)の引張り破断時の試験力における標線間距離をL1として、上記の式から求めた。
【0044】
上記の各層を用いて、以下の要領で、曲面発熱体用冷感パッド積層体を作製した。
作製手順:
(I)中間層(B)と被覆層(C)の各周端部約10mmを溶着シロとして、表面層(A)となる熱伝導ゲルシートの表裏面を、それぞれ中間層(B)と被覆層(E)で挟んで、空気が入らないように被覆、溶着して、250mm×100mmの長方形の熱伝導性ゲルシートのパックを作製する。
(II)熱伝導性ゲルシートのパックの中間層(B)面に、トムソン式抜き刃を用いて小スリットを形成した(又はしない)裏面層(C)を、裏面層(C)の粘着層を介して貼り付ける。(大スリットを形成する場合は、複数の裏面層片を、大スリットを形成するように配置して貼り付ける。)
(III)さらに、裏面層(C)が全被覆されるように、補強層(D)を貼り付ける。
【0045】
(2)曲面発熱体用冷感パッド積層体(又は枕として)の評価
評価法または評価基準としては、次のとおりである。
(i)耐久性(曲げ):
ドラム式乾燥機に冷感パッド積層体を入れ、20時間ドラムを回転させて冷感パッド積層体を屈曲・落下を繰り返したのち取り出して、外観の損傷の有無(特に裏面層)を目視で評価する(日立製作所製、DR−N40R7、回転数54RPM(実測)、温風切、回転のみ)。
【0046】
(ii)熱流束測定:
インタークロス社の熱流束計を用い、同装置のプローブを冷感パッド積層体の測定部へプローブ自重で密着させ、プローブが33.4℃一定になるように温度制御しながら、30min間の経時的な熱流束と、プローブ接触面の温度の変化を測定した。なお、熱流束で250W/m以上、プローブ接触面の温度で31.5℃以下であれば、冷感を感じるとして評価した。ここで、熱流束は、熱源から冷感パッドに熱が移動する方向を正の値としている。
【0047】
(iii)冷感官能試験:
テンピュール社製の枕(製品名:テンピュール(R)コンフォートピロー)の後頭部接触する部分に、作製した冷感パッドを、市販の両面テープ(ニチバン社製 ナイスタック)で固定して、簡易的な冷却枕を構成し、20代、30代、40代、50代の男女各1名の計8名を被験者として、室温30℃、相対湿度70%の環境で、前記冷却枕の冷感パッド部に後頭部〜うなじ(項)が当たるように、仰向けで30分寝て、冷感(初期冷感、冷感持続性、過冷却感)と使用感についてアンケートをとった。
【0048】
[実施例1]
作製手順(I)に従い作製した熱伝導性ゲルのパックの中間層(B)面側中央付近に、50mm×180mmの長方形に裁断した裏面層(C)を、作製手順(II)に従って、図3のように貼合わせて、冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
50mm×80mmの長方形で、かつ、シート面に、長辺方向に略並行に、端部から10mm間隔で略0.5mm幅の表裏面に貫通した小スリットを形成したグラファイトシートを2枚準備し、作製手順(I)に従い作製した熱伝導性ゲルパックの中間層(B)面中央付近に、前記小スリット付のグラファイトシートを20mmの間隔で隣接配置して、前記熱伝導性ゲルパックの中央部に大スリットを形成するように、作製手順(II)に従って図4のように貼合わせて、冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例3]
実施例1の冷感パッドに、さらに、作製手順(III)に従って補強層(D)を積層して補強層付の冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
実施例2の冷感パッドに、さらに、作製手順(III)に従って補強層(D)を積層して補強層付の冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1〜4]
比較例1は、実施例4において、中間層(B)が無い場合である。
また、比較例2は、実施例4において、中間層(B)を引張り伸び率400%(日本ユニポリマー社 FS1035 厚み0.05mm)として、表面層(A)より引張り伸び率が大きい場合である。
さらに、比較例3は、実施例2において、2枚のグラファイトシートの配置間隔を35mmとして、大スリットの幅を大きくした場合である。
またさらに、比較例4は、実施例1の裏面層(C)がない従来の構成である。
これらの評価結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1と表2の結果から、表面層(A)と中間層(B)と裏面層(C)の積層構造とすることにより、従来の冷感パッドに比較して、官能試験での初期冷感、冷感持続性、過冷却の評価についていずれも良好で、冷感の評価が向上することがわかる。また、裏面層(C)に大スリットと小スリットを形成することで、冷感や冷感持続性を損なうことなく、柔軟性を付与できて、裏面層としてグラファイトシートを適用した構造であっても曲げ耐久性が向上されることがわかる。さらに、補強層(D)で裏面層(C)を補強することにより、柔軟性を確保しつつ、裏面層(C)の損壊を防いで、曲げ耐久性をさらに向上させていた。
さらに、熱流束計測定の条件で加熱したときの、冷感パッドの温度の経時的変化を調べた結果、図7のとおり、本発明の冷感パッドの温度上昇が抑制されており、従来品に比べて温度上昇速度が小さく、また、30分経過時において7℃も低く、その結果、冷感持続性が著しく向上した。入眠を想定した30分経過以降は、31〜32℃が維持されており、入眠後の体温に近い温度となっているので、過度の冷感がなく、心地よい睡眠をサポートできる特性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体は、枕やシューズなどの運動具に用いた際には、適度な冷感と冷感持続性による入眠および快眠効果と良好な曲げ耐久性に優れるという効果を発揮する。そのため、枕、クッションやマットレスといった寝具類、シューズやサポーターなどの運動具に好適に用いることができ、それ以外のペット用等の敷マット、パソコン作業時のアームレスト用マットや座席マットとしての使用など、曲面発熱体用のシート材として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を説明する模式図である。
【図2】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の一実施形態を説明する模式図である。
【図3】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の一実施形態(実施例1)を説明する模式図である。
【図4】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の一実施形態(実施例2)、特にスリットを説明する模式図である。
【図5】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の一実施形態を説明する模式図である。
【図6】本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を枕に適用した場合の使用状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例4と比較例4(従来品)の冷感パッドに熱流束計で一定の熱量で接触加熱した場合における冷感パッドの加熱部の温度の経時変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 表面層(A)
2 中間層(B)
3 裏面層(C)
4 補強層(D)
5 被覆層(E)
6 小スリット
7 大スリット
10 冷感パッド積層体
11 枕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなる曲面発熱体用冷感パッド積層体であって、
前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)に炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ
裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とすることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項2】
裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開することを特徴とする請求項1に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項3】
裏面層(C)は、前記小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断されていることを特徴とする請求項2に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項4】
前記大スリットは、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さい幅で、前記小スリットの方向とほぼ直交する方向に分断させてなることを特徴とする請求項3に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項5】
裏面層(C)のグラファイトシートは、厚み方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が1〜50W/m・Kで、面方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が100〜3500W/m・Kであり、かつ厚みが0.05〜2.0mmであることを特徴とする請求項2に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項6】
裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有し、補強層(D)は、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の曲面発熱体用の冷感パッド積層体。
【請求項7】
表面層(A)には、さらに、被覆層(E)を有し、被覆層(E)は、中間層(B)周端部と接合されて、中間層(B)が密着した部分を除く表面層(A)の全面を被覆してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項8】
表面層(B)と被覆層(E)との接合は、全周を溶着したことによるものあり、全周縁に硬質部を形成し、該硬質部により裏面層(C)の過剰な屈曲を抑制するとともに初期形状を維持させる機能を付与したことを特徴とする請求項7に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項9】
被覆層(E)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が中間層(B)の樹脂材料と同一または大であり、かつ厚さが0.05〜0.15mmの樹脂フィルムであることを特徴とする請求項7又は8に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項10】
中間層(B)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が20〜200%であり、かつ厚さが0.05〜0.5mmの樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項11】
表面層(A)は、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項12】
表面層(A)の熱伝導性ゲルシートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項11に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする寝具類。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする運動具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64434(P2010−64434A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234951(P2008−234951)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】