説明

書籍用スキャン装置及び画像処理プログラム

【課題】書籍12をデジタルカメラ14で撮影する書籍用スキャナーにおいて頁の綴じ部分16までの撮影を高速に、簡易に、安価で可能とする書籍用スキャナーを提供する。
【解決手段】V字型の書籍台11に置かれた書籍12を、V字型の透明な板13で押さえ、書籍12の上方からデジタルカメラ14を設置し、必要に応じて偏光フィルターを設置して撮影する装置を用い、撮影して得られた電子データを、画像処理プログラムを用いて、デジタルカメラ14からの距離に応じて補正を行うことにより正規の形へ変形させて平面画像に投影し、所望する画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像歪み補正装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からある方法として、スキャナーに特開平08−310740号公報に示されるような給紙機構を設け、連続して電子データを作成する方法が多く用いられている。前述の給紙機構を用いた電子化の方法は、給紙機構を利用するために、書籍12の綴じ部分16付近を裁断するなどして書籍12を頁毎にバラバラに分解する必要がある。この方法はスキャン速度、スキャン精度は高いものの、書籍12を分解するために書籍12が古書や貴重な書籍、また個人的なノート等のように分解できない場合には利用が出来ない方式であった。
【0003】
このため、書籍12を分解せずに電子データに変換する場合、特開2006−157234号公報に示されているように、平面で透明な台である原稿台の上に書籍12を置き、下から読み込む形でスキャンを行って電子データを得る方式がある。当該スキャンを行う機器はスキャナーと呼ばれており、現在では一般的に平面の文書を電子データとして変換する際に用いられている機器である。しかしながら前述の特開2006−157234号公報に示されているような方法では、書籍の綴じ部分16をスキャナーの原稿台に密着させる事が出来ないため、画像としてのゆがみが発生する。また厚みのある書籍では、頁を180度開く事で綴じ部分16を痛める事になる。さらには1ないし数頁毎に書籍12を原稿台から持ち上げて裏返してページをめくり、再び書籍12を裏返してスキャンする事から作業効率が良くなかった。このため、綴じ部分16を裁断せずに書籍12を効率良くスキャンする方法としてデジタルカメラ14を利用して電子データを得るスキャン方法が考案されている。
【0004】
図2に示すように、デジタルカメラ14を利用した従来のスキャン方法では、書籍12の見開き面を180度まで開かず60度から120度の間で書籍12の綴じ部分16を傷めない角度まで開き、スキャンする書籍12をV字型の書籍台11に固定し、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁をV字型の透明な板13によって押さえ、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁から垂直なカメラ面方向にデジタルカメラ14、2台を設置し、スキャンを行う方式が考案されている。しかし、図3に示すように、当該方法では、書籍12の綴じ部分16付近が、V字型の透明な板13に厚みがあるためデジタルカメラ14によって撮影することが不可能であった。また、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁から垂直なカメラ面方向から撮影する場合は、僅かではあるもののV字型の透明な板13に周囲の光がさすことによる反射があるため、デジタルカメラ14が撮影した場合に書籍12の周囲の光が写りこんでしまうという問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−3170740号公報
【特許文献2】特開2006−157234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
書籍12を電子データに変換するために、書籍12を開いてスキャナーの原稿台の上に置く場合、綴じ部分16がスキャナーの原稿台に密着出来ないため、得られた電子データうち綴じ部分16付近の画像が変形してしまい、書籍12の文字や図柄等を正確に読み取ることが出来なかった。また、スキャナーは画像読み取り装置が、原稿台と並行に移動してスキャンするため、1頁のスキャンに数秒から数十秒の長い時間が掛かった。
【0007】
デジタルカメラ14を利用した書籍12のスキャンでは、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁の平面化のためにV字型の透明な板13で押さえ、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁から垂直な位置よりデジタルカメラ14で撮影を行う方式が考案されているが、当該方式では同じ形式のデジタルカメラ14が2台必要となるため、より高価なシステムとなっていた。さらにV字型の透明な板13は、V字型に配置されるため、図3に示すように書籍12の綴じ部分16付近に、V字型の透明な板13の厚み分数ミリメートル幅の範囲でデジタルカメラ14による撮影が不可能な領域が発生した。
【0008】
V字型の透明な板13は一定の割合で光を反射してしまう、このため反射を抑制する必要のある場合は、反射元となる方向に黒いカバーをかぶせて反射を見えなくするか、従来は、V字型の透明な板13に高価な表面処理を行って反射を抑制するしか方法がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、V字型の書籍台11、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を平面化するV字型の透明な板13と、デジタルカメラ14、1台、画像処理プログラムから構成される。書籍12をV字型の書籍台11の上に載せ、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を広げる。書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁をV字の透明な板13で押さえて平面を確保する。このV字の透明な板13の上方にデジタルカメラ14を設置して、必要に応じて偏光フィルター15をデジタルカメラ14のレンズと書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁との間に設置する。デジタルカメラ14にて書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を撮影し、得られた電子データを画像処理プログラムを用いて遠近感を考慮した補正を行い、得られた電子データを平面上に投影した補正電子データ22を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、頁と頁の中心の綴じ部分16付近にV字型の透明な板13の厚み分の範囲でデジタルカメラ14による撮影が不可能な領域が発生せず、補正電子データ22を得ることが可能となる。このため、書籍12が、見開きページのように左右が繋がっている頁である場合でも、左右が繋がった形での補正電子データ22を得ることが可能となる。また2頁を同時に撮影することができるため、デジタルカメラ14を2台利用する方式とスキャン速度の差が無く高速な撮影によって補正電子データ22の取得が可能となる。さらに、画像処理プログラムによって3次元的な電子データを平面へ投影変換し、補正電子データ22を得ることによって、撮影時に書籍12の配置ずれを気にする必要もなく手軽な撮影で高品質な補正電子データ22を得ることが可能となる。そのうえ、V字の透明な板13の面の上方からデジタルカメラ14で撮影するため、V字の透明な板13で反射された余計な反射像は偏光されている。偏光された反射像は、必要に応じて偏光フィルター15を設置することで大幅にカットでき排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の概要図である。
【図2】デジタルカメラ14を2台利用する一般的な書籍スキャナーの概要図である。
【図3】綴じ部分16付近における撮影が不可能な領域の説明図である。
【図4】スキャン頁17の説明図である。
【図5】スキャン面18の説明図である。
【図6】スキャン面18について縮小係数を得るための長さに関する説明図である。
【図7】デジタルカメラ14の位置から縮小係数を得るための長さ、角度に関する説明図である。
【図8】スキャン面18について縮小係数を得るための縦方向長さに関する説明図である。
【図9】スキャン面18について縦方向に対して縮小補正を行った説明図である。
【図10】スキャン面18について横方向に対して縮小補正を行った説明図である。
【図11】本発明のブロックダイアグラムである
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、書籍12をV字型の書籍台11の上に、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を開いて見開きが上になるようにして設置する。当該書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を透明なV字型の板13を用いて上方より押さえる。書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁の上方にデジタルカメラ14を設置する。デジタルカメラ14によって書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を撮影し、図4に示すように、電子データであるスキャン頁17を得る。デジタルカメラ14におけるピントの合掌距離は単一の距離であるため合掌点の前後に位置する部分はボケが発生する。書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁は上方から撮影するため、焦点位置以外の個所にボケが発生する。このため絞りを調整してボケの範囲を調整して撮影を行う。
【0013】
本発明においては、V字の透明な板13の上方からデジタルカメラ14で撮影するため、V字の透明な板13の表面や裏面で反射された反射像や光は偏光されている。かかる偏光された反射像や反射した光を大幅にカットし排除するために、請求項4記載のとおり、必要に応じて偏光フィルター15をデジタルカメラ14と書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁との間に設置してもよい。
【0014】
次に、スキャン頁17をパソコン等の電子機器を用いて画像処理を行い、平面に投影する処理を行うための請求項5記載の画像処理プログラムについて説明する。本発明によれば、スキャン頁17は、綴じ部分16がデジタルカメラより最も遠く、書籍の端部分19が最も近くなるため、図4に示すように3次元的に変形した画像となっている。
【0015】
まず、図5に示すように、スキャン頁17のうち書籍12の綴じ部分16を撮影した個所に相当する線を綴り位置20とし、スキャン頁17のうち書籍12の書籍の端部分19を撮影した個所に相当する線を書籍の端位置21とする。スキャン頁17を綴り位置20を中心に左右の頁に分け、左右各々の輪郭を抽出して左右各々についてスキャン面18の電子データを作成する。かように各々のスキャン頁17毎に綴り位置20を中心に左右のページに分けて左右各々の輪郭を抽出して左右各々のスキャン面18を作成し、今後は、それぞれのスキャン面18に処理を行っていく。まず、輪郭形状について述べると、書籍12の1頁の輪郭の縦幅と横幅の長さは固定的であってその輪郭形状は長方形のシート形状をなしている。しかし、図5に示すように、スキャン面18においては、書籍12の輪郭形状は台形となっているが、これは綴じ部分16とデジタルカメラ14との間の距離Lと書籍の端部分19とデジタルカメラ14との間Dの距離が異なるため、見掛け上の大きさが変化したためである。
【0016】
次に、一般的に、デジタルカメラ14と被写体の距離が半分になれば、撮影した電子データにおける被写体に関する画像の大きさ、サイズは2倍になることからもわかるように、デジタルカメラ14からの撮影距離と撮影した電子データにおける被写体に関する画像の大きさ、サイズには相関関係がある。さらに書籍12の輪郭形状は長方形をなしており、書籍12のうちの1頁の縦幅の長さは一定であることから、撮影距離の比率を類推することが可能となる。図7に示すように、デジタルカメラ14から被写体である書籍12までの距離は、デジタルカメラ14の撮影点を点aとし、書籍12の綴じ部分16を点bとすると点aから点bまでの距離Lとなる。図6に示すように、電子データであるスキャン面18のうち、綴り位置20の点tから点t’までの縦幅の長さをHとし、書籍の端位置21の点rから点r’までの縦幅の長さをCとする。書籍12における位置関係と電子データであるスキャン面18の画像上位置関係を比較すると、図6の点t、点t’が図7の点bに対応し、図6の点r、点r’が図7の点b’に対応するため、図7における点bから点b’までの長さは、電子データの画像上に投影されたスキャン面18の横幅の長さDWに対応する。なお、点aから点bまでの線と点bから点b’までの線は垂直に交わっている。また、仮に書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁を、V字型の書籍台11の上に設置せずに、平面になるようにして撮影した場合のスキャン面18は、角度αがゼロ度であるため、輪郭形状が長方形をなし見掛け上の大きさが変化しない。そのため当該平面になるようにして撮影した場合のスキャン面18の点rは点r2の位置になり、点r’は点r2’の位置となる。当該平面になるようにして撮影した場合のスキャン面18の横幅の長さは点tから点r2の間の長さWとなる。縦幅の長さCと縦幅の長さHの比率は長さD+Uと長さDの比率に等しい。書籍の端部分19を点d’とし、点bから点b’までの線と並行して点d’から引いた線と点aから点bまでの線との交わり点を点d’とすると、点dから点d‘までの長さFは、点bと点b’の横幅の長さがDWであること、縦幅の長さCと縦幅の長さHの比率は長さD+Uと長さDの比率に等しいことから以下の式で求められる。
【数1】

角度αはV字型の透明な板13の角度に等しい角度となる。点d点d’と点b点b’と並行であるので、角度b、d’、dの角度も等しくαとなる。図7に示すように、点d、点d’、点bからなる三角形は直角三角形のため角度αが判明していれば以下の計算で容易に点bから点d’の横幅の長さWを求める事ができる。
【数2】

以上の計算方法によりスキャン面18の縦幅と横幅のサイズは縦幅と横幅の比率がH:Wであることが算出できる。
【0017】
さらに、得られたH:Wと同一比率になるようにスキャン面18を変形させるのだが、スキャン面18は綴じ部分16から離れるに従ってデジタルカメラとの距離が近づく、すなわち距離に比例して拡大されていくため、平面に投影するためには単純な拡大、縮小処理では実現できない。このため、図8のように綴り位置20からの離れ量を基準とする拡大率の変化に合わせた変形を行う。拡大率は綴り位置20を基準とすると、書籍の端位置21付近の面が最も大きな拡大率となり、それぞれ連続的に拡大率が変化している。このため平面に投影するには逆に綴り位置20から離れるに従って拡大率の逆数をもって縮小補正係数を作成し、これを掛ければ良い事になる。図6の縦幅長さHと縦幅長さCから、拡大率の逆数をもって縮小補正係数とし、スキャン面18を縮小補正係数に従って、図9に示すように、縦方向に縮小処理を、図10に示すように横方向に縮小処理を行い、スキャン面18を平面に投影した補正電子データ22を得る。図11は以上の経緯を説明した本発明のダイアグラムである。縦方向と横方向の縮小処理は、縦方向から始めても横方向から始めてもよい。かように距離に応じて補正を行うことによりスキャン面18を正規の形へ変形させて平面画像に投影し、補正電子データ22を得る。その後、隣り合うスキャン面18に関する補正電子データ22をあわせることで、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁の画像に関する電子データを得ることができる。これをパソコン等の電子機器に映したり、紙に印刷するなどの方法により、書籍12のうちスキャンして電子データを得たい頁の画像を得る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、ノート、雑誌、文庫本等のように一方を綴られた書類を電子データに変換するための装置に関するものであり、原稿となる書類に与える物理的なダメージを最小限に抑えながら、綴じ部分16付近まで電子データに変換する装置である。このため従来の方法では難しかった貴重な書籍、資料や、個人のノート等のように傷める事を避けたい書類を簡単な機器で安価かつ迅速に電子データへと変換することを可能とする書籍スキャナーに関するものである。
【符号の説明】
【0019】
11 V字型の書籍台
12 書籍
13 V字型の透明な板
14 デジタルカメラ
15 偏光フィルター
16 綴じ部分
17 スキャン頁
18 スキャン面
19 書籍の端部分
20 綴り位置
21 書籍の端位置
22 補正電子データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書籍12を載せるV字型の書籍台11と書籍12の一部を覆うV字型の透明な板13とV字型の透明な板13の上方に設置したデジタルカメラ14と撮影した電子データを画像処理により正規の形へ変形させることを特徴とする書籍用スキャナー。
【請求項2】
書籍12を載せるV字型の書籍台11と書籍12の一部を覆うV字型の透明な板13とV字型の透明な板13の上方に設置したデジタルカメラ14とデジタルカメラ14とV字型の透明な板13との間に偏光フィルター15を設置し、撮影した電子データを画像処理により正規の形へ変形させることを特徴とする書籍用スキャナー。
【請求項3】
書籍12の頁を電子データ化する工程と、電子データを左右の面に分け輪郭形状を取得する工程と、左右に分けた電子データにデジタルカメラ14からの距離に応じた補正を行う工程とを備えることを特徴とする画像処理方法
【請求項4】
偏光フィルター15を用いて書籍12の頁を電子データ化する工程と、電子データを左右の面に分け輪郭形状を取得する工程と、左右に分けた電子データにデジタルカメラ14からの距離に応じた補正を行う工程とを備えることを特徴とする画像処理方法
【請求項5】
デジタルカメラ14で撮影した電子データを画像処理により台形型のスキャン画像を正規の形へ変形させることを特徴とする書籍用スキャナー用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51655(P2013−51655A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189903(P2011−189903)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(505023009)株式会社コスモテック (1)
【Fターム(参考)】