説明

最適な吸光度測定のための光路長センサ及び方法

線形アクチュエータの非回転シャフトを含む光ファイバホルダ内に光ファイバが装着された装置を説明する。ファイバホルダは、ファイバホルダ及び結果的にそこに装着されたファイバが線形アクチュエータの作動中に回転するのを抑止するために拘束的に保持することができ、それによって移動中のファイバの最小限の回転効果及び最小限の光学アラインメント変化しか伴わない線形移動がもたらされる。更に、本発明では、光路長センサが、最適化された吸光度の作動方法と併せて利用され、それぞれの受光ファイバと伝達ファイバの間のミクロン精度の変位を与え、それによってあらゆる所定の経路長に対して約0.005吸光度単位から約2.0吸光度単位までの精密な吸光度測定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全てが2008年10月3日出願でありかつ全てが引用によって本明細書に組み込まれる「吸光度を測定するための光路長センサ」という名称の米国特許仮出願第61/102,740号、「線形アクチュエータ及び光ファイバ光送出及び集光システムのための方法及び装置」という名称の米国特許仮出願第61/102,553号、及び「最適光学吸光度測定のための方法」という名称の米国特許仮出願第61/102,560号の恩典を請求するものである。
【0002】
本発明は、小容積サンプルを特徴付けるための分光光度計及び関連計器の分野に関する。より具体的には、本発明は、光ファイバ光送出及び集光システム、並びにそのような計器内で測定を最適化するための手段に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合に、液体、混合物、溶液、及び反応混合物は、測光法、分光測定法、蛍光測定法、又は蛍光分光測定法のような光学技術を用いて特徴付けられる。これらの液体のサンプルを特徴付けるために、従来の方法及び装置は、一般的に、収容された液体を特徴付けるのに必要な波長の通過を許すような光学品質の2つ又はそれよりも多くの側面を有するサンプル保持容器又はセル、例えば、キュベットを使用する。
【0004】
残念ながら、生体サンプリング技術は、多くの場合に、分析に対してごく僅かな量の材料しかもたらさない。従って、サンプル材料の最小限の消費しか伴わない吸光度及び蛍光の測定が最も卓越したものになっている。ごく僅かなサンプル容積、例えば、1から2マイクロリットルを処理する場合には、充填するのに十分小さいセル又はキュベットを作り出し、かつ工業規格である1cmの光路を使用することを可能にするのは困難である。また、別のサンプルにおける使用に対してこれらのセル又はキュベットを洗浄するのも困難であり、及び/又は時間を消費する。従って、レーザ捕捉顕微解剖によって生成される生体サンプルのような僅かなサンプル容積を処理する場合には、測光法、分光測定法、蛍光測定法、蛍光分光測定法のような従来の方法は非実用的である。
【0005】
測光法又は分光測定法の場合には、通例的な着目量は、液体サンプルでは殆どの場合に次式で定められる吸光度Aである。

ここで、Tは透過率であり、IRは、測定対象サンプルを通じて透過する光の強度(例えば、パワー)であり、I0は、ブランク又は基準サンプルを通じて透過する光の強度である。最も一般的には、吸光度値は、1cmの経路長を有するセル又はキュベット内で測定される。しかし、ランベルトの法則は、均一な濃度の均一溶液を通過する平行化された(全ての光線がほぼ平行な)光ビームでは、吸光度Aが溶液の経路長に比例することを説明している。2つの光路長P1及びP2に対して次式が成り立つ。

ここで、A1及びA2は、それぞれ経路長P1及びP2において判断又は決定される吸光度値である。更に、吸光度は、次式の関係による吸光係数ε、経路長P、及び被分析物濃度cの関数である。

【0006】
従って、多くの場合に、1cm以外の経路長を用いて吸光度を測定し、その結果を用いて濃度又は吸光係数を計算するか、又は必要に応じて従来データとのより手早い比較のために吸光度を1cm経路に対する同等値に補正することができる。
【0007】
各々が全体として引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,809,826号及び第6,628,382号は、極めて僅かな液体サンプルに対する分光測定法などの方法及び装置を教示している。上記に引用した特許に教示されている0.2mmから2mmの範囲のサンプル経路長は、1cmの経路均等物に容易に補正することができる吸光度値を発生させるのに使用することができる。
【0008】
上記に引用した特許における教示によると、サンプル液滴は、2つの対向する実質的に平行な面の間で界面張力によって保持され、一方の面が、他方に対して遠近方向に制御可能に移動される。測定のために光を供給して液滴を通して透過させ、測定のために光を集めるために、面のうちの少なくとも一方は、光学測定品質を有する部分を有することができる。これは、面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部分を光ファイバの研磨端として設けることによって達成することができ、そのような光ファイバの各々は、周囲の面部分と同一平面で仕上げることができる。一般的に、そのような周囲の面部分は、多くの場合に、標準の光ファイバコネクタ又は他のファイバホルダの端部の面を含む。
【0009】
上記に言及した特許に開示するように、約2マイクロリットルよりも少ないサンプルの測定を行うために、そのような量は、面の一方、例えば、図1A及び図2Aに示している下側面の上に直接に分注される。その後に、上側面である面13は、サンプルに係合するように下方に移動し、次に、下側面から上方及び分離する方向に移動して、それによって界面張力を用いて下側面15と上側面13に接着し、この場合、表面張力は、機械的に制御される経路長を有する液体コラム14を形成する(図1A〜図1B及び図2A〜図2Bを参照されたい)。上側及び下側の面、すなわち、面13及び面15の形状及び性質は、事前に定められた光路内にサンプルを維持するように機能する。面の一方、例えば、面13は、異なるサンプルに対する測定の間の簡単な洗浄のために他方に対して旋回して空けることができる。
【0010】
更に、図1A及び図1B、並びに図2A〜図2Bに示しているように、差分吸光度経路を使用することができる。1つ又はそれよりも多くの経路長の各々において透過光強度Iを測定することにより、透過強度の差を既知の経路長差と併用して、サンプル吸光度を計算することができる。サンプル14がサンプルを通過する比較的長い光路長P1で示された図1A、及びサンプル14がサンプルを通過する比較的短い光路長P2で示された図1Bに示しているようにして測定値が取られる。上述のように、これらの経路長は、互いに対向する2つの面の間、例えば、上側部材12の面13と下側部材16の面15との間で測定される。測定中に、光は、2つの面の一方を通じてサンプル内に供給され、光のうちでサンプルを通じて透過する部分が、サンプルから面のうちの他方を通じて収集される。上側及び下側の部材をそれぞれ上側及び下側のアンビル又はペデスタルと呼ぶ場合がある。しかし、アンビル又はペデスタルは、有益な構成ではあるが、そのような術語は、上側及び下側の部材に対するいかなる特定の幾何学形状も明示又は暗示しないことに注意されたい。
【0011】
光路長の差分ΔP(=|P2−P1|)は、多くの場合に、P1及びP2のいずれよりも高い程度の正確さ及び精度で把握することができるので、図1A〜図1B及び図2A〜図2Bに示しているサンプル14の光学吸光度を計算するのに使用することができる。経路長自体は、例えば、上側部材を保持するヒンジ式振りアームのピン上に支持することができるプランジャを有する装置の下に装着されたソレノイドのような移動手段によって制御することができる。プランジャの上及び/又は下への移動は、振りアームをそのヒンジの回りに僅かに回転させ、それによってサンプルを通る光路長を変更するように、ピンから変位して離れている上側部材を上及び/又は下に移動させる。
【0012】
図2A及び図2Bは、上側及び下側の部材が光ファイバコネクタ又はホルダを含み、第1の光ファイバ18aが第1の部材を貫通し、第2の光ファイバ18bが第2の部材を貫通する上述の装置の更に別の構成を略示している。光は、2つの光ファイバの一方からサンプル内に供給され、光のうちでサンプルを通じて透過する部分が、光ファイバのうちの他方によってサンプルから集光される。
【0013】
従って、上述の図に示している構成は、1つ又はそれよりも多くの着目波長におけるサンプルの吸光度を計算するために、透過強度の差を所望のサンプルを通る経路長の既知の差と併せて使用することを可能にする。
【0014】
サンプルの吸光度Aが高い場合には、サンプルを通した透過率Tは低く、その逆も成り立つ。十分なマグニチュードの吸光度を測定することを可能にするために、多くの場合に、十分な濃度のサンプル又は十分に長い経路長を有することが望ましい。吸光度が過度に低い場合には、比較的高いレベルの透過光からのいわゆる「ショット」ノイズが測定値に干渉する可能性がある。一方、過度に大きい吸光度を有するサンプルを与えると、測定透過光のレベルが過度に低くなる可能性があり、それによって電子又は他のシステムの背景ノイズが、吸光度値の正確な特定を妨害するか又は不明瞭にする場合がある。そのような競合効果は、吸光度の信号対ノイズを最大にすることができる最適な吸光度レベルが存在することになることを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許仮出願第61/102,740号
【特許文献2】米国特許仮出願第61/102,553号
【特許文献3】米国特許仮出願第61/102,560号
【特許文献4】米国特許第6,809,826号
【特許文献5】米国特許第6,628,382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、最適な信号対ノイズ特性を有する吸光度測定値を保証するために、光路長を変更することによってサンプルの吸光度を迅速に変更することができる計器を提供する必要性が存在する。更に、同じく最適な信号対ノイズ特性を保証するために、計器からもたらされる円形誤差を最小にするためだけではなく、拘束された表面張力モード位置に保持されている間にサンプルに対して得られる可変経路長(例えば、P1及びP2)を精密に測定し、それによってΔPを正確に計算し、従って、得られる吸光度及び他の関連計器測定を正確に提供するために、例えば、1対の光ファイバのようなそれぞれの光学要素の位置を精密に制御する更に別の必要性が存在する。本発明は、そのような必要性に向けられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、サンプルの光学的性質を測定するための光学装置に関し、装置は、透過端部を有する第1の光学導管に結合された第1のペデスタル面と、ベースプレートと、ベースプレートに機械的に結合され、第1の液体サンプルを受け取るように構成された第2のペデスタル面とを含み、第2のペデスタル面は、受光端部を有する第2の光学導管に結合され、第2のペデスタルは、更に、第1及び第2のペデスタルの間の分離を可変距離(P)に調節して第1の液体サンプルを表面張力によって保持されるようにコラム状に牽引し、それによって第1の光学導管の透過端部と第2の光学導管の受光端部とを有する測光又は分光測定のための光路を提供するように作動可能であり、装置は、更に、第1及び第2のペデスタル面の間の精密な変位を可能にして可変距離(P)を与えるためのフィードバックを提供するセンサを伴って構成された基板を含み、基板は、線形アクチュエータモータ本体を装置に対して保持することを可能にし、かつ従って、
a)第2の光学導管と共に第2の光学導管の軸と平行な回路基板の平行移動を可能にし、かつ
b)全体としての装置に対する回路基板及び第2の光学導管の回転を防止するように更に構成され、
それによって第1の光学導管に対する第2の光学導管の最小限の回転効果及び光学アラインメントの最小限の変化しか伴わない線形移動をもたらす。
【0018】
実施形態は、光ファイバホルダの円筒形雄ネジ部分と、光ファイバホルダの雄ネジ部分に係合する雌ネジ部分を有するナットと、ナットに機械的に結合され、かつナットを回転させて光ファイバホルダを移動させて距離Pを調節するように作動可能なモータとを更に含むことができ、線形アクチュエータは、モータ、ナット、及び光ファイバホルダを含む。一部の実施形態は、装着プレートと、摺動可能に結合することによって装着プレートに機械的に結合され、かつ光ファイバホルダに固定されたアダプタブッシングとを更に含むことができ、アダプタブッシングは、ナットの回転中の光ファイバホルダの回転を防止する。
【0019】
本発明の付加的な態様は、材料の化学的濃度を測定する方法を含み、本方法は、光学吸収の測定に対して最適なSN比を提供するためにターゲット光学吸光度値を決定する段階と、ターゲット光学吸光度値に対応する材料を通る最適光路長を実験的に決定する段階と、材料を通る光路長を決定された最適光路長に実質的に等しく設定する段階と、材料の設定光路長を通じて光学吸収を測定する段階と、材料の既知の吸光係数、設定光路長、及び材料の設定光路長を通した測定光学吸収から材料の化学的濃度を計算する段階とを含む。
【0020】
本発明の上記に言及した態様及び様々な他の態様は、一例としてのみ提供する以下の説明から、更に正確な縮尺のものではない添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】界面張力を用いて2つの面の間に維持された液体サンプルを通して吸光度を測定するための装置の図である。
【図1B】界面張力を用いて2つの面の間に維持された液体サンプルを通して吸光度を測定するための装置の図である。
【図2A】界面張力を用いて各々がそれぞれの光ファイバの端部を部分的に含む2つの面の間に維持された液体サンプルを通じて吸光度を測定するための第2の装置の図である。
【図2B】界面張力を用いて各々がそれぞれの光ファイバの端部を部分的に含む2つの面の間に維持された液体サンプルを通じて吸光度を測定するための第2の装置の図である。
【図3A】本発明の例示的な実施形態を閉位置で有利に示す側面図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態を開放置で有利に示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態によるねじ山付き中空ネジを含む光ファイバホルダ及び付随するプレート又は基板の斜視図である。
【図5A】下側範囲の位置に配置された光ファイバホルダとプレート又は基板とを示す図4の光ファイバホルダとプレート又は基板との図である。
【図5B】光ファイバホルダと、光学断続器及び光センサに結合されたプレート又は基板とを下からの視点で示す図である。
【図5C】上側範囲の位置に配置された光ファイバホルダとプレート又は基板とを示す図4の光ファイバホルダとプレート又は基板との図である。
【図6A】界面張力によって2つの面の間に維持された液体サンプルを通して吸光度を測定するための本発明による装置の代替的な実施形態の図である。
【図6B】界面張力によって2つの面の間に維持された液体サンプルを通して吸光度を測定するための本発明による装置の代替的な実施形態の図である。
【図7】本発明の有利な代替構成による装置の側面図である。
【図8】本発明の有利な付加的な構成による装置の側面図である。
【図9】本発明の有利な更に別の代替構成による装置の側面図である。
【図10A】基準強度I0の値とシステムノイズ分散kの値との異なる組合せに対する百分率透過率と計算されたSN比とのグラフである。
【図10B】基準強度I0の値とシステムノイズ分散kの値との異なる組合せに対する百分率透過率と計算されたSN比とのグラフである。
【図10C】いかなるサンプルも存在しない場合の1000の信号例に対して水平軸上に透過信号強度を示し、それに対して縦軸上に吸光度及びパーセント誤差を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態による第1の例示的方法の流れ図である。
【図12】本発明の実施形態による第2の例示的方法の流れ図である。
【図13】本発明の実施形態による第3の例示的方法の流れ図である。
【図14】本発明の実施形態による自動化された光学吸光度測定のためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書における本発明の説明では、別途暗示的又は明示的に解釈又は説明しない限り、単数形で現れる用語は、その用語の単数及び複数の対応物を含むことは理解される。更に、本明細書において説明するいかなる所定の構成要素又は実施形態も、また、その構成要素に対して列挙する可能な候補又は代替物のうちのいかなるものも、別途暗示的又は明示的に解釈又は説明しない限り、一般的に個別に又は互いの組合せに使用することができることは理解される。更に、別途暗示的又は明示的に解釈又は説明しない限り、そのような候補又は代替物のいかなる列挙物も、単に例示的であり、限定的ではないことが理解されるであろう。
【0023】
更に別途示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に対して使用する成分、組成、反応条件、及び他のものの量を表現する数は、「約」という用語によって加減されるものであると理解されるものとする。従って、反意を示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲に示す数値パラメータは、本明細書に提供する主題によって得ようとする望ましい性質に依存して変化する可能性がある近似値である。最低でも、特許請求の範囲に対する均等物の教義の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告される有意な桁の数を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈すべきである。本明細書に提供する主題の広義な範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにも関わらず、特定の例において示す数値は、可能な限り精密に報告されるものである。しかし、あらゆる数値は、そのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から必然的にもたらされるある一定の誤差を本質的に含む。
【0024】
一般的な説明
本発明は、自由空間環境(例えば、表面張力保持環境)内に収容される望ましい液体の蛍光測定分析、測光分析、分光測定分析、及び/又は蛍光分光測定分析を含むサンプル内の検体を測定するための光学計器及び最適化された方法のためのものである。
【0025】
一般的な作動では、方向付けされた光学的放射は、表面張力によってコラム状態で保持された溶液又は懸濁液を通って透過し、入射光は、有色化合物による光の吸収、及び/又は微粒子物質による光線の散乱によって減少する。そのような発明は、多くの用途を有し、着色分子を調査する、培養液内の細菌の密度をモニタする、更には酵素反応の進行を追跡するのに使用することができる。
【0026】
本発明の測定を行う上で、本明細書に説明するように、可変経路長の作成を提供し、装置の振りアームの円形誤差を排除するために、光学導管(例えば、光ファイバ)のうちの少なくとも1つを変換器(例えば、線形変換器)内に軸線方向に装着することができる。可変経路長から得られる経路長は、モータの運動と、多くの場合にモータネジの端部に結合することができる渦電流センサであるセンサの出力との組合せから決定又は測定することができる。
【0027】
一例示的実施形態として、そのような渦電流センサを有する回路基板は、経路長を測定するための変換器としてだけではなく、下側光学導管(例えば、受光光ファイバ)を保持する駆動体(すなわち、ネジ)に対する回転抑制体としての役割も達成する。更に、本発明の回路基板は、下側光学導管に結合され、線形アクチュエータモータ本体を装置に対して保持する特殊な固定具上に乗るスロットを有し、そのような固定具の回転を防ぐ手段を提供する。また、回路基板は、アクチュエータモータの背面プレートを渦電流が発生する物体として使用する渦電流センサの駆動要素を形成するコイルを保持する。アクチュエータモータの背面に対する回路基板誘導子の間隔からもたらされる変化する回路インピーダンスは、回路の共振周波数を変化させ、デジタル回路が、ある期間内のパルスを計数して、基板からモータまでの間隔、従って、正確な望ましい経路長を判断又は決定する。
【0028】
上記に簡潔に説明し、かつ本節で詳述する新しい構成の使用により、本発明の作動方法は、この場合に最適な信号対ノイズ特性を有する吸光度測定値を更に保証する。
【0029】
従って、本発明の新しい統合された装置は、約2μリットルよりも少ないサンプル容積として構成された表面張力拘束サンプルを通過する光の量により、任意の所与の経路長において約0.005吸光度単位から約2.0吸光度単位までの吸光度を測定することができる計器(すなわち、約10ミクロンまで、より多くの場合に約50ミクロンまでの経路長を有する)を提供する。
【0030】
具体的な説明
ここで図面を参照すると、図3A〜図3Bは、本発明の実施形態による例示的装置の側面図である。特に、図3Bに例示し、参照符号50で一般的に表す装置は、液滴検体又は基準サンプル(約10μlよりも少ない、より多くの場合に、約2μlよりも少ない)が下側プラットフォーム面15上に分配又は吸引される「開」位置で示している。以下により詳細に解説するように、そのような「開」位置は、液体サンプルを収容する面、例えば、面15の端部への簡単な接近を可能にし、かつユーザがそのような面を容易に洗浄し、必要に応じて装置内に新しいサンプルを装着することも可能にする。
【0031】
従って、図3Bの「開放置」では、約10μlよりも少ない、多くの場合に、約2μlよりも少ない液体サンプルの滴下又は分注を多くの場合に米国マサチューセッツ州ウォーザン所在の「ThermoFisher Scientific」からのFinnpipette(登録商標)等であるが、これに限定されない分注手段(図示せず)を用いて送出することができる。この場合、分注される液体は、下側プラットフォーム15に送出され、下側プラットフォーム15は、多くの場合に、特製又は市販のSMA光ファイバコネクタ16sの端部を含むことができるペデスタル又はアンビルのような面であり、一部の用途では、付加された液滴検体又は基準サンプル(図示せず)の過拡散を防止することが当業者によって公知である材料で処理することができる面として構成される。
【0032】
その後に、液滴が付加されると、装置50は、ユーザによって今度は図3Aに示しているように「閉位置」になるように角度移動され、それによって同じく多くの場合に図3Bに特定の参照符号で示している特製又は市販のSMA光ファイバコネクタ12sの端部である上側のペデスタル又はアンビルのような面13が、滴下又は分注された液滴サンプル(図示せず)と接触状態にされ、望ましい液滴サンプルが、面13と、図3Bに同じく特定の参照符号で示している下側面15との間に表面張力モードで拘束される。
【0033】
図3Bの開放置が図3Aの閉位置になることによって示すように、振りアーム54のそのような角度移動は、振りアーム54と、ベースプレート52に対して堅固に固定されたヒンジスペーサブロック57の両方にある孔を通じて構成されたヒンジロッド56との機械的結合によって可能になる。従って、面13を含み、振りアーム54内の孔の中に装着され、そこを貫通する光ファイバコネクタ12sも同じく、面15上に滴下された液滴サンプルと接触状態になるようにベースプレート52に対してヒンジロッド56の回りに角度回転する。ベースプレート52に結合され、ピンの形態にあるとすることができる停止具53は、液滴サンプルの接触及び測定を可能にするようにアームが回転された時にアームの下側面が当接する望ましい位置を提供する。
【0034】
同じく図3A及び図3Bに例示しているように、例えば、上側光ファイバ18a及び下側光ファイバ18bのようなそれぞれのコネクタに配置された1対の光学導管は、これらの作動位置、すなわち、図3Aに例示している「閉位置」において互いに直径方向に対向することによって光学伝達を可能にする。
【0035】
そのような光学導管、例えば、光ファイバ18a及び18bは、単一モードファイバ、偏波保持光ファイバのようなあらゆる種類のものとすることができるが、いずれかを特定の光ファイバ測定方式又は制限に本発明を拘束しないように、好ましくは、多重モードファイバとすることができることに注意されたい。別の構成例として、ファイバ端部は開裂又は研磨され、必ずではないが多くの場合に、光ファイバコネクタ12s及び16sの端部と同一平面にある。別の有利な構成として、それぞれの光学導管18aと18bの間の有害な光学的損失を最小にするために、そのような光ファイバ18a及び18bは、方向付けされた(例えば、平行化)、受光された(例えば、集光ファイバの開口数に対する補正)光の光学補正を提供するように、そのような光ファイバコネクタ12s及び16s内に付加的に配置された1つ又はそれよりも多くの光学屈折面(例えば、レンズ(図示せず))に結合される。
【0036】
望ましいサンプルの測定における面15及び面13の精密な位置決めを説明するために、ここでもっぱら図3Aを参照すると、下側光ファイバ18bのための下側光ファイバホルダ16sは、以下により詳細に説明するように、線形アクチュエータのためのシャフトとしての役割も達成することに注意されたい。上側光ファイバコネクタ12s(従って、更に、結合された光学導管ファイバ18a)は、振りアーム54に対して固定されるが、下側光ファイバコネクタ16s(従って、更に、下側光学導管、例えば、ファイバ18b)は、2つの光ファイバの間の間隔を変更することを可能にするために、下側光ファイバコネクタ16sの軸と平行に(例えば、垂直方向に沿って)平行移動させることができる。ベースプレート52には、下側光ファイバコネクタ16sの精密な平行移動を可能にするように装着された線形アクチュエータが設けられている。図3Aに示しているように、線形アクチュエータは、固定具(ファスナ)65(例えば、附属のブッシングを有するか又は伴わないネジ、ポスト、ピン、リベットのような)を用いてベースプレート52に堅固に固定されたモータ62を含むことができる。固定具は、延長モータ装着ネジを含み、ブッシング68を貫通することができ、以下に更に説明するように、このブッシング68は、プレート又は基板64との摺動又はスライド可能な機械的係合を提供する。
【0037】
図3Aに一般的に例示しているように、モータは、下側光ファイバホルダ16sの嵌め合いネジ付きシャフト部分(図示せず)に配置されるネジ付きナット(図示せず)の回転運動を生成するように設計される。下側光ファイバコネクタ16sは、線形アクチュエータのアクチュエータシャフトと置き換わり、及び/又はそのように機能する。モータ62によってどちらかの方向に駆動される雄ネジシャフト部分に対する雌ネジの回転は、下側光ファイバコネクタ16s及びその内部に収容された配置された光学導管(例えば、18b)の制御された平行移動をもたらす。下側光ファイバコネクタ16sの位置は、挿入リング66を用いて下側光ファイバホルダ16sに機械的に結合されたプレート又は基板64(例えば、CPU基板)によって安定化することができる。プレート又は基板64は、ブッシング68及びネジ65のような固定具が貫通する孔又はスロット(図示せず)を有することができる。固定具65は、延長モータ装着ネジを含むことができる。更に、モータ62は、付加的な固定具(図示せず)によってベースプレート52に堅固に固定することができる。
【0038】
有利な構成として、モータ62は、市販のモータ、線形アクチュエータ、又は線形平行移動モータとすることができる。一例に過ぎないが、線形アクチュエータモータアセンブリは、米国コネチカット州ウォーターベリー所在の「Haydon Switch Instruments」から部品番号28H43−05−036で入手可能である。標準の汎用線形アクチュエータ又は線形平行移動装置のアクチュエータシャフトは、本明細書に説明するように下側光ファイバホルダ16sによって置換する必要がある場合がある。
【0039】
有利な実施形態として、正確に測定された経路長を提供するように、図3に示している装置50の作動中に、下側光ファイバホルダ16sの移動距離及び/又は位置がモニタされる。有利な構成として、プレート又は基板64は、作動中に、プレート又は基板が下側光ファイバホルダと共に移動するように、下側光ファイバコネクタ16sに固定される。プレート又は基板64は、プレート又は基板64の移動又は位置を感知する機能を実施する電子計器を保持するプリント回路基板(PCB)を含むことができる。例えば、基板64は、キャパシタンスセンサを保持することができ、より多くの場合には渦電流センサを保持することができ、渦電流センサは、限定されないがアルミニウム、スチール、銅、磁性材料等の任意の材料、又は本発明の基板によって感知されるように渦電流を誘導することができる他の任意の材料から構成されるモータ62の背面プレートまでの基板64の距離を感知することができる。そのような渦電流センサPCB基板は、特製で作られたもの又はいくつかの異なる製造業者から市販のものとすることができる。特に、本発明の渦電流センサPCB基板64は、多くの場合に、センサコイル(図示せず)、駆動電子計器(図示せず)、及び同じく図示していない信号処理ブロック(例えば、回路)を含む。上述のように構成されたセンサコイルは、AC電流によって駆動される時に、モータ62上に構成されたプレート内に渦電流を誘導する振動場を生成する。そのような誘導電流は、渦電流センサPCB基板64上に位置決めされたコイルのものと反対の経路で循環し、それによってインダクタンスが低減し、コイルの抵抗が増大する。特に、モータ62上のプレートに対する基板センサの移動は、約1mmから約5ミクロンまで細かい精度の経路長測定を可能にするミクロンサイズの変位を解像又は決定するようにモニタされるインピーダンス変化に反映される。
【0040】
基板64は、基準位置センサ82を含み、この基準位置センサ82は、モータ制御システムが、起動時、又は中断を可能にする停止プレート(図5Bの符号79を参照されたい)の一部として構成された光断続器又は光遮断器デバイス79’によって中断される時に初期化を行う際の「ホーム」位置又は基準位置を確立し、それによって2次停止機構だけではなく、ホーム位置も与えられる。更に、下側光ファイバホルダ16sの意図する機械的限界を超える過移動を防止する停止具として機能するように、下側光ファイバコネクタ16sの最下部のネジなし部分の上に圧入され、プレート又は基板64の「下側面」に延びるカラー又はブッシング67を加設することができる。
【0041】
直前に説明したように、プレート又は基板64が位置センサとして利用される場合には、ブッシング68は、基板64の孔又はスロット(図示せず)と固定具65の間の摺動可能な機械的係合を提供する。従って、そのようなスロット(図示せず)と固定具65は、下側光ファイバホルダ16sの軸と平行な基板64の(下側光ファイバホルダ16sと一緒の)平行移動を可能にするが、全体として装置に対する基板及び下側光ファイバホルダの回転を防止する。そのような回転は、下側光ファイバホルダ16s内に収容された光ファイバのミスアラインメント、撚り、光損失、又は更には破損をもたらす可能性があることから望ましくない。
【0042】
挿入リング66は、プレート又は基板64に常設的又は一時的のいずれかで固定することができる。例えば、挿入リングは、半田付けによって常設的にプレート又は基板に固定することができる。同様に挿入リング66は、当業者によって把握される公知の技術によって下側光ファイバホルダ16sに常設的又は一時的のいずれかで固定することができる。作動中に下側光ファイバホルダ16sとプレート又は基板64とが一体的に移動する場合には、挿入リング66は、少なくともそのような作動中には、下側光ファイバホルダ16sとプレート又は基板64の両方に結合される。部品の組み立て又は置換を容易にするために、時々に下側光ファイバホルダを装置の残りの部分から取り外すことができるように、下側光ファイバホルダ16sと挿入リング66の間で非常設的結合を使用するのが望ましいとすることができる。非常設的固定は、下側光ファイバホルダ16sのネジ付き部分(図示せず)の雄ネジと挿入リング66の内側空洞部分の雌ネジとの間の密着した機械的係合を含むことができる。そのような方式で、下側光ファイバホルダ16sは、モータ62の作動中に回転しないように挿入リング内に十分に密接して保持することができるが、依然として分解中に挿入リングから容易に外すことができる。
【0043】
上述のモータ制御機構及びセンサによるサンプルコラムを表面張力モードで示した図3Bに示している面13及び面15の適正な位置決めが行われると、光は、例えば、光ファイバ18a又は他の従来の光学手段を通じて方向付けされ、それによって図1A〜図2Bに示しているコネクタ12s、サンプル14を通して更に方向付けされ、それに応じてその後に光ファイバ18bによって受光されるようになる。この場合、光は、分析に対して、検出マスター装置である市販又は特製の分光計(図示せず)にその後に結合されるように選択される。
【0044】
照会のために記すと、本発明の光源(図示せず)は、キセノンフラッシュランプ又は「Ocean Optics,inc.」から市販の重水素アーク放電と石英ハロゲン白熱ランプとの組合せ(製品番号DT−1000)のような放射線源を含む。そのような市販の光源は有利であるが、本発明では、本発明の設計パラメータに準拠する場合には、少なくとも約200nmの照明波長、より多くの場合に、約190nmから約840nmまでの照明波長を送出することができるあらゆる光源を利用することができることも理解されたい。更に、利用される光源及び行われる測定に基づいて、約190nmから約840nmまでの間で望ましい波長を可能にするために、干渉フィルタのようなフィルタを具備することができる。必要に応じて、そのようなフィルタは、光路の設計領域への即座の挿入又はそこからの即座の回収を可能にするために、カートリッジ又はホイール形式(図示せず)で形成することができる。
【0045】
更に、分光計(図示せず)、光源(図示せず)、モータ駆動機構等は、高度な特製又は市販のソフトウエア、一部の場合はDNA、RNA、及びたんぱく質の定量化のような一般的な機能に対して事前にプログラムされたモジュールを有するコンピュータ駆動(PC)システム(図示せず)に結合される。取得データは、公知の方法によって表示し、後の参照に対して記憶することができ、ユーザフレンドリーな操作を可能にするために統計的手段が実施される。別の構成として、ソフトウエアは、PCとは反対に分光計内に組み込むことができる。別の有利な構成として、データをフラッシュドライブのような携帯記憶デバイスにエクスポートするか又はUSB接続又は無線(Bluetooth)接続、IEEE接続、超広帯域(UWB)接続を通じてPCに直接にエクスポートすることができる。
【0046】
従って、図3A及び図3Bの装置は、ユーザが、表面張力モードにおいて、約10μlよりも少ない、より多くの場合に約2μlよりも少ない少量であり、約10μまで短い、より多くの場合に約10μまで短い経路長を有する液滴検体のサンプルの制御された光学吸収測定を行うために、嵩張る支持部品の機械的移動の必要なく、かつ適応可能な場合に希釈及びキュベットを必要とする可能性がある大きいサンプル容積の必要なく、上側ファイバ(又は他の光学構成要素)と下側ファイバ(又は他の光学構成要素)の間の分離を精密に制御することを可能にする。
【0047】
図4は、本発明の一部の実施形態による下側光ファイバホルダ16s、並びに附属の装着プレートのより詳細な斜視図を示している。図4に示している構成例では、モータは、下側光ファイバホルダ16sの嵌め合いネジ付きシャフト部分74の上に支持されるネジ付きナット(図示せず)の回転運動を生成する。下側光ファイバコネクタは、線形アクチュエータのアクチュエータシャフトと置き換わり、及び/又はそのように機能する。図3A及び図3Bに示されているように、モータ62によってどちらかの方向に駆動される雄ネジ山付きシャフト部分74に対する雌ネジ山付きネジの回転は、下側光ファイバコネクタ16s及びその内部に収容された下側ファイバ18bの制御された平行移動をもたらす。下側光ファイバホルダの位置は、挿入リング66を用いて下側光ファイバホルダ16sに機械的に結合されたプレート又は基板64(図3A〜図3Bを参照されたい)によって安定化することができる。プレート又は基板64は、ブッシング68及びネジのような固定具65が貫通する孔又はスロット78を有することができる(図4に示しているように)。固定具65は、延長モータ装着ネジを含むことができる。図3A及び図3Bに示しているモータ62は、更に、付加的な固定具(図示せず)により、図3A及び図3Bに示しているベースプレート52に堅固に固定することができる。
【0048】
多くの場合に、例えば、渦電流センサ態様によって上述したように、装置50(図3A〜図3B)の作動中に、下側光ファイバホルダ16sの移動距離及び/又は位置がモニタされる。有利な態様では、プレート又は基板64は、作動中に、プレート又は基板が下側光ファイバホルダと共に移動するように下側光ファイバコネクタに固定される。プレート又は基板64は、プレート又は基板64の移動又は位置を感知する機能を実施する(例えば、渦電流センサを用いて)電子計器を保持するプリント回路基板(PCB)を含むことができる。
【0049】
直前に説明したように、プレート又は基板64が位置センサとして利用される場合には、ブッシング68は、基板64の孔又はスロット78と固定具65の間の摺動可能な機械的係合を与え、下側光ファイバホルダ16sの軸と平行な基板64の(下側光ファイバホルダ16sと一緒の)平行移動を可能にするが、全体として装置に対する基板及び下側光ファイバホルダの回転を防止する。そのような回転は、下側光ファイバホルダ16s内に収容された光ファイバのミスアラインメント、撚り、光損失、又は更には破損をもたらす可能性があることから望ましくない。
【0050】
挿入リング66は、プレート又は基板64に常設的又は一時的のいずれかで結合することができる。例えば、挿入リングは、半田付けによって常設的にプレート又は基板に固定することができる。同様に挿入リング66は、下側光ファイバホルダ16sに常設的又は一時的のいずれかで結合することができる。作動中に下側光ファイバホルダ16sとプレート又は基板64とが一体的に移動する場合には、上述のように、挿入リング66は、少なくともそのような作動中には下側光ファイバホルダ16sとプレート又は基板64の両方に固定される。部品の組み立て又は置換を容易にするために、時々に下側光ファイバホルダを装置の残りの部分から取り外すことができるように、下側光ファイバホルダ16sと挿入リング66の間で非常設的固定を使用するのが望ましいとすることができる。非常設的固定は、下側光ファイバホルダ16sのネジ付き部分74の雄ネジと挿入リング66の内側空洞部分の雌ネジとの間の密着した機械的係合を含むことができる。このようにして、下側光ファイバホルダは、モータ62の作動中に回転しないように挿入リング内に十分に密接して保持することができるが、依然として分解中に挿入リングから容易に外すことができる。
【0051】
図5A及び図5Cは、光ファイバホルダ16sとプレート又は基板64との立面図を示している。これらの立面図は、下側光ファイバホルダの最下部のネジなし部分の上に圧入され、プレート又は基板64の「下に」、すなわち、モータと反対の基板の側に延びるカラー又はブッシング67を示している。カラー又はブッシング67は、下側光ファイバホルダの意図する機械的限界を超える過移動を防止する停止具として機能することができる。更に、図5A及び図5Cに示している装置において、光センサ82による中断を可能にする光断続器デバイス79’として構成された部分を有する停止プレート79(図5C)を有利に構成することができ、それによって2次停止機構だけではなく、ホーム位置も与えられる。図5Aは、固定されて一体的に移動する、下側光ファイバホルダ16s、挿入リング66、プレート又は基板64、及びカラー又はブッシング67を示しており、図5A及び図5Cは、それぞれ、これらの部品がこれらの部品の下側移動範囲及び上側移動範囲にある状態を示している。
【0052】
図5Bは、本発明の基板64に結合された全てのカラー又はブッシング67、光センサ82と組み合わされて作動する光断続器デバイス79’を有する停止プレート79の底面図を示している。
【0053】
図6A〜図6Bは、界面張力によって2つの面の間に維持された液体サンプルを通して吸光度を測定するための本発明による装置の代替的な実施形態の2つの図である。これまでに説明した本発明における実施形態(例えば、図2A〜図2B)では、ファイバは、上側及び下側のアンビル又はペデスタルと同一平面で仕上げ、かつ研磨することができる。しかし、図6A〜図6Bに示している代替的な実施形態80では、ファイバ18a〜18bは、それぞれの面13及び15までアンビル又はペデスタルを完全には貫通していない。代替的に、サンプルに入射する光を平行化すること、又はサンプルからの光を効率的に集光することのいずれかを行うために、アンビル又はペデスタルの一方又は他方の中にレンズを埋め込むことができる。例えば、光が下側ファイバ18bによって送出される場合には、この光は、ファイバ18bから射出した後、サンプル14に入射する前にレンズ17bによって平行化される。次に、サンプルを透過するあらゆる光が、レンズ17aによって集光され、検出器(図示せず)への送出に対してファイバ18aの端部に集束される。構成例として、レンズ17a〜17bは、特製又は市販の漸変屈折率(GRIN)レンズとすることができ、これらのレンズの露光平坦面は、それぞれ面13及び面15と同一平面に配置することができる。
【0054】
図7は、本発明の代替的な実施形態による装置に対する側面図である。全ての共通参照符号は、前に利用したものと同じである。図7に示している装置90では、ヒンジスペーサブロックは排除される。代替的に、ヒンジロッド56が、ベースプレートとアーム54の両方を貫通する。ヒンジロッドがアーム54の回転軸を定めるので、アーム54が機械的停止具53に当接する時の停止位置において、アーム54はベースプレート52と平行には位置しない。しかし、それにも関わらず、上側光ファイバホルダ12sは、依然として、上側光ファイバホルダ12s内の上側ファイバ18aの長手が下側光ファイバホルダ内の下側ファイバ18bの長手と同軸であるように停止位置にくるようになっている。すなわち、アーム54に対する上側光ファイバホルダ12sの配置は、それらファイバが、停止位置において互いに対して光学的に整列することを保証する。
【0055】
図8は、本発明の別の代替的な実施形態による装置の側面図である。全ての共通参照符号は、前に利用したものと同じである。図8に示している装置100では、下側光ファイバホルダ16sは、モータ62によって回転されるカムシャフト102によって回転されるカム104(又は他の手段)から直接に駆動される。そのような構成は、回転運動を直線運動に変換することができる。カム104は、下側光ファイバホルダ16sのスロット又は凹部106の壁に係合することができる。好ましくは、ベースプレート52を貫通する通路において、下側光ファイバホルダを取り囲むブッシング108の半径方向位置を拘束するバネ及びベアリングのような、下側光ファイバホルダの適正な装填を保証するための手段が設けられる。そのようなベアリングは、単純なサファイアジャーナルベアリング又は線形ボールベアリングとすることができる。
【0056】
図9は、本発明の更に別の代替的な実施形態による装置の側面図である。全ての共通参照符号は、前に利用したものと同じである。図9に示している参照符号200によって一般的に表す装置では、下側光ファイバホルダ16sは、ベースプレート52に直接に結合されない。代替的に、下側光ファイバホルダ16sは、補助ベースプレート110に機械的に結合され、補助ベースプレート110は、補助ベースプレートの肉薄領域を含むことができる屈曲ベアリング112で屈曲することができる。補助ベースプレート110は、下側光ファイバホルダの取り付け部とは反対の屈曲ベアリング側でベースプレート52に装着され、補助ベースプレートの長手を自由に屈曲させる状態にし、それによって取り付けられた下側光ファイバホルダの移動を駆動する。そのような屈曲は、補助ベースプレートに圧接する線形アクチュエータシャフト103を作動させるモータ62によって制御される。
【0057】
従って、上述の構成は、少量のサンプル(例えば、液滴)の制御された光学吸収測定を行うために、ベースプレート、アーム、又は装置本体のような嵩張る支持部品の機械的移動の必要なく上側ファイバ(又は他の光学構成要素)と下側ファイバ(又は他の光学構成要素)の間の精密に制御された分離を可能にする。有利な態様においては、そのような制御された分離中に1つの光ファイバホルダ(及びその中に収容されたファイバ)しか移動せず、光ファイバホルダは、実際に線形アクチュエータのシャフトを含むことができるので、附属部品数及び付随する望ましくない運動は最小限に維持される。好ましくは、製作を簡易化するために、可動光ファイバホルダは、既存の線形アクチュエータシャフトに対する置換物又は場合によってその修正物とすることができる。可動光ファイバホルダは、位置センサプリント回路基板とすることができるプレート又は基板に取り付けることができ、プレート又は基板は、可動光ファイバホルダと共に移動する。プレート又は基板に摺動可能に機械的に係合した1つ又はそれよりも多くのブッシングは、光ファイバホルダの軸と平行な光ファイバホルダの運動を可能にするが、光学アラインメントに悪影響をもたらすか又は更にはファイバ破損をもたらす可能性がある望ましくない左右の運動又は回転運動を防止する。
【0058】
実際の測定自体に関して、吸収スペクトルにおいて一般的に得られる量は、相対的透過率(T)であり、T=IR(λ)/I0(λ)≡(IR/I0)(λ)によって与えられ、ここで、IR(λ)は、サンプルを通して透過した光の測定強度(すなわち、パワー)であり、I0(λ)は、一般的にいかなるサンプルも存在しない場合に得られる基準強度である。しかし、通例的な着目量は、式1で与えられる吸光度Aである。AをIRの関数とし、すなわち、A≡f(IR)とし、各波長λにおいて得られた実験測定値を非ランダム変数Iactual(λ)と、2つのランダム変数XRMS(λ)及びX1/fとの和として表す。従って、この表現によると、次式が成り立つ。
a.IR(λ)=Iactual(λ)+XRMS(λ)+X1/f (式4)
【0059】
上式で、Iactualは、検出器に達し、それによって検出可能な光強度の仮定上の実際値又は真値であり、XRMSは、いわゆるショットノイズであり、X1/fは、信号レベルに依存しないシステムノイズ(例えば、「1/fノイズ」)である。ショットノイズの分散は、Iactualの平方根によって与えられ、システムノイズの分散は、IR(又はIactual)には依存しない定数kである。量IRの統計的期待値E(IR)は、単純にE(IR)=Iactualとして与えられる。更に、非ランダム変数Iactualの分散はゼロに等しく、I0は、各λにおいて単純な定数である(しかし、全てのλに対して必ずしも同じではない)。2つのランダム変数XRMSとX1/fは互いに依存しないので、これらの共分散はゼロ(nil)であり、すなわち、Cov(XRMS,X1/f)=0である。従って、次式が成り立つ。
b.Var(IR)=Var(XRMS+X1/f)=Var(XRMS)+Var(X1/f) (式5a)
又は、代替形式では次式が成り立つ。
c.Var(T)=(1/I02)Var(IR)=(1/I02)Var(XRMS)+(1/I02)Var(X1/f) (式5b)
【0060】
上述のランダム変数は、IR及びTの関数として与えられているが、式1によって与えられるようにIRの関数である吸光度Aに関してSN比を計算することが望ましい。ランダム変数IRの関数fの分散は、次式の通りに近似することができる。

【0061】
従って、吸光度に関して予想SN比(S/N)は、次式で表すことができる。

【0062】
図10A及び図10Bは、式7に従って計算した百分率透過率SN比のグラフである。これらのグラフでは、吸光度を横座標としてプロットし、計算したSN比(S/N)及び百分率透過率(%T)をそれぞれグラフの最も左及び最も右の縦軸に沿って示している2つの異なる縦座標目盛りでプロットしている。吸光度の目盛りは両方のグラフで等しく、%TはAの一価関数であるから、百分率透過率%Tを表す曲線24は同じ曲線である。
【0063】
図10Aでピーク23を有する曲線22は、式7の定式化において任意単位のI0=1000及びk=3を用いて計算したS/Nである。同様に図10Bでピーク25を有する曲線26は、任意単位のI0=1000及びk=100を用いて計算したS/Nである。曲線22(図10A)と曲線26(図10B)の間の比較は、システム背景ノイズの増大(一定のI0における)が、予想通り、全体の吸光度SN比を低下させるのみならず、S/N最大値を低い吸光度値(大きいIR)にシフトさせることを示している。吸光度Aに関する最適範囲は、ほぼ0.3〜0.7であり、0.43という吸光度値において最良のS/N特性を有することが見出された。
【0064】
ユーザは、自らのシステム及びサンプルに適切なデータを入力することにより、本発明の方法実施形態による式3、又は図10A及び図10Bに示しているもののようなグラフを、改善された又は最適な信号対ノイズ特性を得るようなサンプルを通した光路長を設定するためのガイドとして使用することができる。例えば、多くの関連において、図1A及び図1Bに示している装置10のような装置をあらゆる事前に定められた最小濃度にあるか又はそれを超える液体サンプル内の検体の存在を検出するのに使用することができる。
【0065】
式3におけるε及びAの両方が、一般的にλの関数になる。多くの場合に、吸光係数値εは、任意の所与の対象検体に対して、規格表又は規格データベースの参照、又は検体の密度サンプル又は純サンプルの正確な測定を含む予備実験のいずれかによって予め把握されることになる。従って、例えば、ユーザは、検体密度cを判断する目的の光学吸収測定において、可能な最良の信号対ノイズをもたらすように、装置10(図1A〜図1B)及び式7の結果を用いてPの値を設定することができる。
【0066】
上述のように、吸光度Aの最適範囲は、ほぼ0.3〜0.7であり、0.43という吸光度値において最良のS/N特性を有する。特に、上述の厳密な導出の代替として、通例的な着目量、すなわち、式3によって与えられる吸光度Aを次式として一般的に表現することができる。
A=2−LogT (式8)
ここで、Aは吸光度であり、Tは放射線の百分率透過率である。
【0067】
図10Cは、いかなるサンプルも存在しない場合の1000の信号例に対して水平軸上に透過信号強度を示し、それに対して縦軸上に吸光度及びパーセント誤差を示すデータ例のグラフによる概念を示している。それに応じて、そのような構成における吸光度21を下側のプロットで示し、この場合、±3単位の信号に設定された想定固定ノイズ成分を有するパーセント誤差27を図10Cの上側プロットで示している。図示のようにこのデータでは、誤差最小値は、ほぼ0.43という吸光度において発生し、eが自然対数である場合に、信号は、非吸収信号の1/e倍である。
【0068】
従って、図1A〜図2Bを参照し直すと、吸光度は、cm-1という単位を有するサンプル厚に線形に関連するので、ユーザが、サンプル吸光度が約0.43であるようにサンプル厚P1−P2を設定した場合には、単位cm-1におけるサンプル吸光度は、1cmをサンプル経路長で割算し、その結果に、例えば、0.43を乗算し、すなわち、次式によって計算することができる。
吸光度(A)=0.43×(1/P) (式9)
【0069】
ここで、Pは、単位cmで設定されたサンプル経路長である。
【0070】
従って、作動方法の例として、サンプル吸光度が例えば0.43であるようにサンプルを通る経路長が設定された場合には、一般的に遭遇する条件の下では、測定に対するノイズの効果は最小にされる。
【0071】
これらの段階を図11に示す方法300に概説している。それによると、方法300の段階320では、恐らくは着目波長において、最も好ましいS/Nをもたらすことになるターゲット吸光度値が計算又は推定される。一般的に着目波長は、対象検体の既知の吸収線又は吸収帯域とすることができる。次に、段階330では、例えば、式8又は上述の類似の表現式を用いて、ターゲット吸光度値に対応するように、光路長が設定される。段階340では、設定された経路長において光学吸収測定値が得られ、最終的に段階360において、この測定値が、既知の吸光係数及び設定された経路長との併用で検体の濃度に変換される(例えば、式3を参照されたい)。cが既知の場合には、εを決定するのに類似の手順を使用することができる。
【0072】
一部の実験的状況では、その後のAの慎重な測定において最良のSN比をもたらすことになるPの値を決定するために、A対Pの大まかな予備走査を実施することが望ましいとすることができる。そのような作業を実施するための本発明の実施形態による例示的方法である方法400の詳細内容を図12に示し、以下の解説においてより詳細に解説する。
【0073】
ここで図12を参照すると、作動方法400の段階420は、ターゲット吸光度値、すなわち、着目波長においてS/N比の最大値を提供する吸光度値を計算又は推定する段階を含む。方法400の段階430は、後に吸光度値を端から端までの吸光度値を通して走査するのに使用される、光路長増分ΔPの符号(変化の方向に対応する)及びマグニチュード(大きさ)を設定する段階を含む。段階420と段階430の相対的な順序は、図12に示しているものから逆転することができることに注意されたい。段階440は、吸光度値を低から高に走査するか、又は高から低に走査するかに応じて、ターゲット吸光度値の光路長の下又は上のいずれかに、予想吸光度値をもたらすような値の初期光路長P0を設定する段階を含む。段階460は、着目波長及び現在の光路長において光学吸光度の予備測定値を取得する段階を含む。その後の段階480は、段階430において設定された増分値に従って現在光路長を新しい値に変更する段階を含む。段階500では、着目波長及び新しい現在光路長において光学吸光度の予備測定値が得られる。
【0074】
図12に示しているように、判断段階520では、走査された測定吸光度が、段階420において計算又は推定されたターゲット吸光度を通過したか否かの判断が行われる。ターゲット吸光度が通過したか否かに関わらず、光路長の直近の変更(段階480)が、ターゲット吸光度に十分に近い、すなわち、ターゲット吸光度のある許容誤差範囲内の測定吸光度をもたらす可能性がある。従って、判断段階540又は判断段階560のいずれかにおいてそのように判断された場合には、最終段階590において、現在光路長における最終測定値が得られる。一般的に最終測定値は、より長い期間で測定を実施することにより、予備測定値のうちのあらゆるものよりも高い品質又は高い精度のものである。
【0075】
直近の測定吸光度がターゲット吸光度の許容誤差範囲内にない場合は(段階540又は段階560)、光路長を変更しなければならず、新しい光路長において新しい測定値が得られる。吸光度がターゲット吸光度を通過して走査されていない場合には、方法の実行は、段階540から段階480に直接に戻る。吸光度がターゲット吸光度を通過して走査された場合には、実行は段階560から段階580に進み、段階580では、光路長増分の符号(方向)は、逆向きに走査するように変更される。段階580では、ターゲット吸光度がより精密に得られるように、増分のマグニチュードを低減することも望ましいとすることができる。段階480〜580によって定められるループは、測定吸光度がターゲット吸光度許容誤差範囲内にくるまで繰り返すことができる。
【0076】
作動方法400又はそのうちで抜粋される段階は、コンピュータ又は他の電子プロセッサと、ディスクドライブ、磁気テープ、光学ディスクドライブ、メモリカードのようなコンピュータ可読媒体上に有形に収録されたコンピュータプログラム命令とを含むシステムによって自動的に実施することができることが理解される。本発明の実施形態による1つのそのようなシステムを図14に例示している。参照符号900で一般的に表すシステムは、光学吸収測定セル910と、光学吸収測定セルに機械的に結合された光路長調節器920と、光学吸収測定セルに光学的に結合された光源930と、同じく光学吸収測定セルに光学的に結合された光検出器940とを含む。更に、システム900は、経路長調節器と光検出器の両方に電子的に結合されたコンピュータ又は電子プロセッサ950と、コンピュータ又は他の電子プロセッサに電子的に結合されたコンピュータ可読媒体960とを含む。コンピュータ可読媒体960は、入力と出力の両方のデバイスとして機能することができる。任意的に、コンピュータ/プロセッサ950は、表示画面、プリンタのような1つ又はそれよりも多くの他の出力デバイス970、及び/又はキー基板、インターネット接続のような1つ又はそれよりも多くの他の入力デバイス980に電子的に更に結合することができる。
【0077】
図14の破線の接続線は、電子信号及び電子信号情報流を伝達する接続経路を表す。様々な接続線上の矢印は、情報流の可能な方向、又は代替的に光伝播方向を表す。光源と吸収測定セルの間、及び吸収測定セルと光検出器の間の接続線は、光ファイバ、レンズ、プリズム、ミラー、光学フィルタのようなあらゆる必要な光伝達光学系を暗示的に含む。
【0078】
更に、吸収測定セル910は、上述の米国特許第6,809,826号及び第6,628,382号に開示されている吸収測定セル装置のうちのいずれかとすることができる。それに応じて、経路長調節器920は、これらの特許文献に説明されているアンビルの間の分離Pを機械的に変更する(例えば、本明細書の図1を参照されたい)ように作動可能なあらゆる装置を含むことができる。光源930は、白熱ランプ、電離ガスランプ、レーザ、発光ダイオードのようなあらゆる形態の電磁放射線源とすることができる。光検出器940は、光ダイオード、光ダイオードアレイ、光マルチプレクサチューブ、電荷結合デバイスのようなあらゆる適切な光検出器とすることができる。
【0079】
システム900では、コンピュータ/プロセッサ950は、経路長調節器920に命令を与え、それによって吸収測定セル910内の光路長をある一定の値に設定するように経路長調節器に命令する。例えば、コンピュータ/プロセッサは、図12に示している方法400の段階440及び段階480にあるように光路長を設定又は変更する命令を自動的に送信することができる。光路調節器920が位置センサも含む場合には、そのような位置情報を経路長調節器からコンピュータプロセッサ950に戻すことができる。また、コンピュータプロセッサ950は、吸収測定セルからの光の伝達の後に光検出器によって感知されたそのような光の強度(例えば、パワー)に関する電子信号情報を受信する。例えば、そのような信号受信は、方法400の測定段階460、500、及び590中に自動的に発生させることができる。コンピュータ/プロセッサは、計算を自動的に実施し、方法400の段階420、520、540、及び560の判断を評価することができる。コンピュータ/プロセッサは、段階430及び段階560にあるように変数の値を設定することができる。コンピュータ/プロセッサ950によって実施されるイベントシーケンスは、コンピュータ可読媒体960上に記憶されたプログラム命令であり、そこからコンピュータ/プロセッサに転送されるプログラム命令に従って制御することができる。測定結果、例えば、方法400の段階590における最終測定の結果は、コンピュータ/プロセッサ950からコンピュータ可読媒体960に、その上での記憶に対して転送することができる。出力デバイス970により、ユーザに出力を送出することができる。ユーザは、入力デバイス980によってプログラム実行を制御することができる。例えば、ユーザは、方法400の段階420及び段階430においてパラメータを入力することができる。
【0080】
複数の化学化合物が単一のサンプルに存在する実験状況が発生する場合がある。これらの化合物のうちの一部は検体を含む場合があり、他のものは溶剤成分を含む場合がある。例えば、多くの状況において、サンプルが、判別可能な量において、検体と溶剤(例えば、水)という2つの化学成分のみを持つ場合がある。サンプル内に、指標i(ただし、1≦i≦n)で参照されるn種類のそのような化学化合物が存在する(又は恐らく存在すると考えられる)と仮定する。そのような各化合物は、その独自の濃度ciで存在する可能性があり、検体化合物のそれぞれのものは、例えば、装置10(図1A〜図1B)によって吸光度測定値が得られることになる1つ又はそれよりも多くの着目波長を関連付けることができる。i番目の化合物(検体、溶剤、又は他のものいずれか)のそのようなj番目の波長をλi,jで表し、任意の波長λkにおけるその化合物のモル吸光係数をεi,kで表すことにする。また、単なる解説目的で、波長λには依存しない単一のターゲット吸光度Atargetが存在すると仮定する。合計でw個の着目波長λi,jが存在する場合には、これらの波長を増大する波長の順序でλk(ただし、1≦k≦w)と指標付けし直すことにする。この場合、式3から、次式の形式の複数のターゲット光路長Pkが存在することになる。

【0081】
式10の導出では、成分の吸光度を加算性のものであると捉え、各化合物の吸光係数εiが、既知の材料の以前の測定値から、又はスペクトル、表、電子データベースのような標準参照データから、波長の関数として推測的に既知であると仮定している。この場合、記号εi,kは、εi,k≡εi(λk)によって定められる。
【0082】
複数の化学化合物が単一のサンプルに存在する、式10を参照して上述したような状況では、光ダイオードアレイ又は電荷結合デバイス(CCD)検出器のような多チャンネル検出器上への、サンプルを通した透過の後の分散光による場合がそうであるように、測定はいくつかの波長において同時に行うことができる。このようにして、段階的な経路長シーケンスの各経路長において、各着目波長λkで吸光度を測定することができる。式3から、波長λk及び各経路長Pにおける測定された吸光度Akは次式になる。

【0083】
実験的に経路長Pを低値から高値に段階的に変更することができ(又はその逆も同様である)、各そのような段階において、予備のAk値のセット(例えば、予備的な吸光度スペクトル)が測定又は決定される。次に、各測定された予備Akの変化をグラフプロット又は数学的解析のいずれかによって経路長に対して決定することができる。全てのそのようなAkは、Pと共に増大し、一般的にこの増大は、Pに関して線形である。しかし、λに伴う様々なεiの変化に起因して、これらの増大は、一般的に同一ではない。内挿により、各AkがAtargetを通過する際の(及びλkでの測定において信号対ノイズ特性が最適化される際の)ターゲットP値Ptarget(λk)を決定することができる。その後に、決定された各Ptarget(λk)値に等しくなるように順次に経路長を設定することができ、そのような設定を用いて、λkの近くで高品質の測定値が得られる。Ptarget値は、全てのAkに対して同一でない可能性があるから、この手順は、経路長Pのいくつかの設定を必要とする可能性がある。
【0084】
上述の段階は、本発明による例示的方法の一部分である図13に例示している方法600を含む。最初の段階である方法600の段階620では、予備的な経路長限界Pmin及びPmaxの推定を行うことができる。パラメータPmin及びPmaxは、それぞれ、段階的経路長シーケンスの間に必要になる最小及び最大の光路長である。パラメータPminは、予想サンプル吸光度が着目波長λkにおけるAtargetよりも大きくなく(許容誤差範囲で)、式10の分母内の和が最大値を有するように十分小さく設定すべきである。同様に、パラメータPmaxは、予想サンプル吸光度が最小でも着目波長λkにおけるAtargetであり(許容誤差範囲で)、式10の分母内の和が最小値を有するように十分大きく設定すべきである。一部の場合には、機械的限界が経路長をPmin又はPmaxのいずれか又は両方に設定するのを阻止する可能性がある。そのような場合には、関連パラメータは、最も近い利用可能値に設定される。方法600の段階640は、後に段階的な経路長シーケンスの間に使用するべき光路長増分ΔPの符号(変化の方向に対応する)及びマグニチュードを設定する段階を含む。段階620と段階640との相対的順序は、図13に示しているものから逆転することができることに注意されたい。
【0085】
図13の方法600の解説を続けると、段階660は、光路長増分ΔPの符号に応じて、開始値であるPmin又はPmaxのいずれかに光路長Pを設定する段階を含む。次の段階680は、現在のPにおいて着目する全てのλにおける光学吸光度の予備測定値を取得する(例えば、予備吸光度スペクトルを取得する)段階を含む。段階700では、終了経路長であるPmin又はPmaxのいずれかに達したか否かに関して判断が行われる。達していない場合には、段階720において経路長Pが増分に従って変更され、実行は、段階680に戻る。段階700で終了経路長に達した状態で、段階760において、上述したように、恐らくは内挿によって各Akに対してPtarget(λk)に最も近い近似値が判断される。この段階の結果は、Ptarget(λk)のw値セットである(ただし、w≧n及び1≧k≧w)。段階780では指標kが1に設定され、それに続く段階800〜840は、Pが各Ptarget(λk)に順次設定され、かつそのような各設定において高品質吸光度測定値が得られるループを含む。最後の任意選択段階である段階860は、吸光度測定値、及び推測的に既知の吸光係数値を用いて化学化合物濃度のセット{ci}に対する解(正確な解又は最適近似解のいずれか)を取得する段階を含む。溶剤のような一部の成分の濃度は、単に仮定することができる。
【0086】
ここでもまた、作動方法600又はそのうちで抜粋される段階は、コンピュータ又は他の電子プロセッサと、コンピュータ可読媒体上に有形に収録されたコンピュータプログラム命令とを含むシステムによって自動的に実施することができる。そのような自動段階は、上述のように図14に例示しているシステム900によって実施することができる。
【0087】
本出願に含まれる解説は、基本説明として機能するように意図したものである。本発明を図示して説明した様々な実施形態に従って説明したが、当業者は、これらの実施形態に対する変形が存在する可能性があり、これらの変形が、本発明の精神及び範囲に収まることになることを直ちに認識するであろう。閲読者は、特定の解説が、全ての可能な実施形態を明示的に説明することができず、多くの代替物が潜在することを察知すべきである。そのような修正などは、当業者の能力の範囲、及び本発明の範囲及び精神内に十分に収まる単純な修正であると考えられる。従って、多くのそのような修正は、本発明の精神、範囲、及び本質から逸脱することなく当業者によって行われるであろう。本明細書、図面、又は術語のいずれも本発明の範囲を限定するように意図したものではなく、本発明は、特許請求の範囲によって規定されるものである。
【符号の説明】
【0088】
50 本発明の装置
52 ベースプレート
53 機械的停止具
54 振りアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面張力によって拘束されたサンプルの光学的性質を測定するための装置であって、
透過端部を有する第1の光学導管に結合された第1のペデスタル面と、
ベースプレートと、
前記ベースプレートに機械的に結合され、第1の液体サンプルを受け取るように構成された第2のペデスタル面と、
を含み、
前記第2のペデスタル面は、受光端部を有する第2の光学導管に結合され、該第2のペデスタルは、更に、前記第1及び第2のペデスタルの間の分離を可変距離(P)に調節して前記第1の液体サンプルが表面張力によって保持されるようにコラム状に牽引し、それによって前記第1の光学導管の前記透過端部と該第2の光学導管の該受光端部とを有する、測光又は分光測定のための光路を提供するように作動可能であり、
装置が、
前記第1及び第2のペデスタル面の間の精密な変位を可能にして前記可変距離(P)を与えるようにするためのフィードバックを提供するセンサを伴って構成された基板、
を更に含み、
前記基板は、線形アクチュエータモータ本体を装置に対して保持することを可能にするように構成され、かつ従って、
a)前記第2の光学導管と共に前記回路基板を、第2の光学導管の軸と平行に平行移動させることを可能にし、かつ
b)全体として装置に対する前記回路基板及び前記第2の光学導管の回転を防止する、
ように更に構成され、それによって前記第1の光学導管に対する第2の光学導管の最小限の回転効果及び光学アラインメントの最小限の変化を伴う線形移動をもたらす、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記基板は、プリント回路基板を含み、該プリント回路基板上に構成された前記センサは、前記線形アクチュエータモータ本体の背面プレートを渦電流が発生する物体として使用するように構成された渦電流センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記線形アクチュエータモータ本体の前記背面プレートに対する前記プリント回路基板上の誘導子の間隔によってもたらされる変化する回路インピーダンスが、該プリント回路基板上の回路の共振周波数を変化させ、
結合されたデジタル回路が、時間間隔内に得られるパルスを計数し、前記回路基板から前記結合アクチュエータモータの背面プレートまでの間隔を決定して望ましい前記光路長を提供する、ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記変化する回路インピーダンスは、約1mmから約50ミクロンまでの精度の経路長測定を可能にするミクロンサイズの変位を決定するようにモニタされることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記基板は、前記線形アクチュエータモータ本体を装置に対して保持することを可能にする1つ又はそれよりも多くの固定具上を進む1つ又はそれよりも多くのスロットを伴って構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
任意の所与の経路長に対して約0.005から約2.0吸光度単位までの吸光度を測定することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記基板は、平行移動制御システムが起動時又は光断続器デバイスによって中断される時に初期化する際に基準位置を確立する位置センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の光学導管は、雄ネジ付きホルダ内に配置された光ファイバを含み、
雌ネジ部分を有するナットが、前記ホルダの前記雄ネジ部分と機械的に係合し、
前記線形アクチュエータモータは、前記ナットに機械的に結合され、かつ該ナットを回転させて該ホルダを移動させ、前記距離Pを調節するように作動可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の光学導管は、単一モードファイバ、偏波保持光ファイバ、及び多重モードファイバから選択された少なくとも1つの光ファイバを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
約190nmから約840nmまでの波長を提供するように構成された照明光源を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
表面張力によって拘束された材料の化学的濃度を測定する方法であって、
光学吸収の測定に対して最適なSN比を提供するためにターゲット光学吸光度値を決定する段階と、
前記ターゲット光学吸光度値に対応する材料を通る最適光路長を実験的に決定する段階と、
を含み、
最適光路長を実験的に決定する前記段階は、可変距離(P)を提供するために第1のペデスタル面に対する第2のペデスタル面の精密な変位を可能にするフィードバックを提供するセンサを、結合プリント回路基板に提供する段階を更に含み、該基板は、該第1のペデスタル面に対する最小限の回転効果及びアラインメントの最小限の変化を伴う該第2のペデスタルの線形移動を可能にするように更に構成され、
前記方法が、
前記材料を通る光路長を前記実験的に決定された最適光路長に実質的に等しく設定する段階と、
前記材料の前記設定光路長を通した光学吸収を測定する段階と、
前記材料の化学的濃度を、該材料の既知の吸光係数、前記設定光路長、及び該材料の該設定光路長を通じた前記測定光学吸収から計算する段階と、
を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
最適なSN比を提供するためにターゲット光学吸光度値を決定する前記段階は、信号の単位に対して固定ノイズ成分を仮定する段階を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
最適光路長を実験的に決定する前記段階は、
a)ある一定の吸光度値での光路長を前記ターゲット吸光度値のものよりも下又は上に設定する段階、
b)前記材料の光学吸光度の測定値を取得する段階、
c)前記光路長を既知の符号及びマグニチュードによって増分する段階、
d)前記材料の光学吸光度の測定値を取得する段階、及び
e)前記ターゲット光学吸光度値が見つかるまで以上の段階c〜dを繰り返す段階、
を更に含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記精密な変位は、約1mmから約50ミクロンまでの精度の経路長測定を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
光学吸収を測定する前記段階は、任意の所与の経路長に対して約0.005から約2.0吸光度単位までの吸光度を測定する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記材料の前記設定光路長を通じた光学吸収を測定する前記段階は、前記サンプルを約190nmから約840nmまでの波長で照明する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2012−504769(P2012−504769A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530278(P2011−530278)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/059445
【国際公開番号】WO2010/040104
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(511084991)ナノドロップ テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】