説明

最適投影像を決定するための方法と装置

【課題】オブジェクト、特に、非対称オブジェクトの最適投影画像を決定する方法を提供する。
【解決手段】a)異なる透視図から得られたオブジェクトの2個以上の二次元画像から三次元の表面再構成を生成するステップと、b)関心があるセクションの位置を、3D再構成上に決めるユーザ指示を受信するステップと、c)関心があるセクションに対し短縮遠近法の観点で最適のビュー方向を含む面を決定するステップと、を備える方法において、ステップb)が少なくとも1個の二次元画像における、関心があるポイントまたは領域の位置をユーザから受信するステップを備え、更に、d)関心があるポイントまたは領域の3D等価ポイントを、3D表面上に決定するステップと、e)ステップc)において決定された最適ビュー方向の中から、ステップd)において決定され3D等価ポイントを含むビュー方向を選択するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関心があるオブジェクト(特に、血管造影画像)の最適投影像を決定するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療行為の間、正確に処置を実行するために可能な限り多くのオブジェクト情報を得ることが出来ることは、重要である。このため、通常採用される結像法は、検診するオブジェクトのより良くかつより詳細な画像を得るために、高解像度容積測定画像を得る装置を使用する。
【0003】
(CTおよびMRマシンのような)この種の装置は、かなりサイズが大きく、その結果扱いにくくかつ高価である。これに加え、この種の装置は、大量の画像データを提供するが、これには、処理時間がかかるので、画像化セッションをリアルタイムで実行することは不可能である。これの欠点は、主に、医療行為の最中にこれらのマシンを使用することが出来ないことである。
【0004】
例えば、大動脈弁のインプラントを意図する医療行為である、経力カーテル大動脈弁インプラント(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)の分野において、弁のタイプおよびその相対的な位置を選択するための最良の画像化技術は、その空間分解能が高いことから、マルチスライスCTである。しかしながら、このような技術は、例えば、弁のサイズを確定するために、手術を予定する場合にしか、使用することができない。何故ならば、これは、医療行為の最中に、リアルタイムで実行することも、血行力学および/または心臓手術室(いわゆるcathlab)で実行することもできないからである。
【0005】
このために、このようなタイプの医療行為は、通常、例えば、いわゆるC−アームまたはL−アーム・タイプの血管造影X線システムによって得られる2D画像のガイダンスの下で実行される。これらのシステムは、検診するオブジェクトの、(2D投影とも呼ばれる)2D画像を得ることを可能にする。いくつかの透視図は、X線源と画像増幅器(image intensifier)を保持しているアームを、患者に対して回転させることにより得ることができる。
【0006】
しかしながら、血管造影システムで得られる画像のような二次元の投影画像は、短縮遠近法と言う問題を有する。短縮遠近法とは、ある透視図から見ると、オブジェクトが圧縮されているように見える現象で、これは、情報にひずみを発生させる。このことは、特に、このような情報に基づいて、臨床医療行為が予定され、および/または例えば、動脈または一般の脈管内へのステントの導入または弁のインプラントが実行されるときに、深刻である。従って、2D画像診断法を用いる際には、正しい透視図から画像を得ることが重要である。
【0007】
非特許文献1に教示されるように、関心があるオブジェクトが最小短縮で視覚されるビューは、最適ビューと呼ばれる。
【0008】
血管造影システムの場合、正しい透視図は、その手順に必要なできる限り多くの情報を含むX線システムの傾き(システムの回転と傾きの両方)で定義される。このことは、通常、画像化システムがオブジェクトの主軸に平行な面に配置されるとき、すなわち、投影がオブジェクトに対して垂直なときに、起こる。
【0009】
この分野の最新の開発の焦点は、臨床医療行為の間に使用することができる1個又は多数の最適投影に当てられている。これらの最適投影は、短縮遠近法のみに基づいて決定される。例えば、非特許文献2を参照されたい。
【0010】
このアプローチの大きな欠点は、画像化されるオブジェクトについて、どの最適投影も含まれる情報量が同量である(すなわち、画像化されるオブジェクトが、対称形である)ことを前提としていることである。このことは、様々な最適投影が、画像に存在するオブジェクト情報を必ずしも全て含んでいない可能性をもたらす。これは、結果として、対称形のオブジェクトにしか適さない最適投影が使用される可能性をもたらす。
【0011】
しかしながら、臨床診療では取扱われるオブジェクトは非対称であるので(図1を参照)、オブジェクトに対して垂直である記録が、必ずしも必要とされる全ての情報を含むわけではない。したがって、短縮遠近法を最小化するのみならず、その臨床医療行為に対する非対称オブジェクトまたはデバイスの全ての関係情報も含む最適ビュー角度または最適投影 を決定することは、望ましいことであろう。
【0012】
この分野の既存の開発が短縮遠近法のみに焦点を当てているので、臨床医は、現在、医療行為の間、このような最適視角を試行錯誤によって得なければならない。この手順は、時間がかかり、かつ患者には負担となる。何故ならば、造影剤の投与によってサポートされているか否かに関わらず、所望の最適のビューが見出される前に、いくつかの収集がなされなければならないからである。どの程度の収集が、必要であるかは、臨床医の経験と患者の状態に依存する。
【0013】
したがって、短縮遠近法を削減する点のみならず、示された情報の完全性と言う点からも、三次元オブジェクトを、最適に視覚することが出来るように、臨床医が正しい透視図を選ぶ助けとなる方法が必要である。このような情報は、状況により変わるので、各画像化手順において前もって決めておくことはできない。このような情報は、画像が撮られる特定の範囲に関係する。
【0014】
特にオブジェクトが非対称であることによる情報損失の量を制限するために、できる限り多くの画像情報を得てかつ使用することが、各画像化セッションの目的であることが、前提であることは、明らかである。しかしながら、全ての手順が、現在の手順に対して同じ画像情報を重要であると分類するわけではない。
【0015】
この理由から、従来技術は、短縮遠近法の問題を減少させる最適投影を見出すことを主な目的としているが、特定のアプリケーションに対するこの最適投影を見出す作業は、臨床医の専門知識に依存しかつ試行錯誤による作業である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Adrie C. M. Dumay, Johan H. C. Reiber, Jan J. Gerbrandsによる論文「最適血管造影視角の決定:基本原理及び評価研究」(IEEE Trans.Med.Imaging、13巻、1号、1994年3月)
【非特許文献2】Joel A. Garcia外による「3Dで再構成されたモデルの定量分析に基づくX線冠動脈造影のための最適視聴領域の決定」、心臓血管画像化の国際ジャーナル(International Journal of Cardiovascular Imaging) 2009、25巻、5号、455―462頁
【非特許文献3】Y. Jiang 外の「グローバルな制約を有する作動中の輪郭モデルを使用するX線像のセグメンテーション」、画像および信号処理におけるコンピュータ・インテリジェンスに関するIEEE シンポジウム、2007年、CIISP 2007 240―245頁
【非特許文献4】Joon Hee Han外による「エピ極性の幾何学的形状を使用する輪郭マッチング」、パターン解析かつ機械知能(Pattern Analysis and Machine Intelligence)、22巻、4号、2000年4月、358〜370頁
【非特許文献5】Yoshinobu Onuma, Chrysafios Girasis, Jean-Paul Aben, Giovanna Sarno, Nicolo Piazza, Coen Lokkerbol, Marie-Angel Morel, Patrick W. Serruysによる論文「分岐点病変のための新規な三次元専用の定量的冠動脈分析方法論」 EuroIntervention 2011;6:1〜00
【非特許文献6】Adrie C. M. Dumay, Johan H. C. Reiber, Jan J. Gerbrandsによる論文「最適血管造影視角の判定:基本原理および評価研究」、IEEE Trans.Med.Imaging、13巻、1号、1994年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、検査中のオブジェクトの正確な3D量を得ることができる複雑な装置を使用せずに、かつ同時に必要な収集の数を減らし(従って、患者への放射線と造影剤の暴露が減少し)、特に、臨床医療行為に対し、最適な有益コンテンツを有する二次元画像を決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的は、特に、非対称オブジェクトの最適投影画像を決定するための方法の、本発明の第一の態様により、実現される。この方法は、
a) 異なる透視図から得られた前記オブジェクトの2個以上の二次元画像から前記オブジェクトの三次元の表面再構成を生成するステップと、
b) 関心があるセクションの位置を、3D再構成上に決めるユーザ指示を受信するステップと、
c) 関心があるこのセクションに対し短縮遠近法の観点で最適のビュー方向を含む面を決定するステップと、
を備える方法において、
ステップb)が、ステップa)において前記オブジェクトの三次元再構成に使用される少なくとも1個の前記二次元画像における、関心があるポイントまたは領域の位置をユーザから受信するステップを備え、
前記方法が、更に、
d) 関心があるポイントまたは領域の3D等価ポイントを、3D表面上に決定するステップと、
e) ステップc)において決定された前記最適ビュー方向の中から、ステップd)において決定された前記3D等価ポイントを含むビュー方向を選択するステップと
を備える。
【0019】
本発明によれば、短縮遠近法が最小である最適投影が、決定されるのみならず、それらの中で、最大の画像情報を有することが出来る最適投影も選択される。このような情報は、経験的に知られているものではなく、考慮されるアプリケーションのタイプにより異なる。本発明においては、どのオブジェクト情報が、現在の手順にとって重要であり、かつ従って、どのオブジェクト情報が、非対称オブジェクトに対し使用可能であるものと分類するかを決定するために、関心があるポイントが、使用されるので、画像化デバイスに必要な情報を、多くの目的のために調整することが出来る。これが、本発明のコアである。このことが、可能なソリューションの過大な一般化をもたらすことになるであろうことから、従来技術は、各アプリケーションに対して最善の投影を提供する問題を解決していない。これに対して、本発明は、この問題を提起し、かつスマートにそれを解決するので、オブジェクトの情報量を最大に保ちつつ、オブジェクトに対する最適投影を決定する手順が、容易になる。ユーザには1個の最適投影が供給されるので、エラー発生を推測する必要は無くなり、かつ経験は最早決定要素ではなくなる。これにより、手順に対する正しい画像を得るための、X線放射の量と(造影剤の使用を必要とするこれらのアプリケーションに対する)造影剤の必要量とが減少しかつ稼働時間がより短くなる。
【0020】
一実施態様によれば、最適ビューの方向を含む面は、対称中心を有する幾何学図形を得るために、3D表面と交差する。この場合、この方法により、対称中心と3D等価ポイントとを通過する線の方向が最適方向と決定されることは、有利である。
【0021】
オブジェクトの三次元再構成のために使用される少なくとも2個の二次元画像上に、関心があるポイントまたは領域が、選択されることが、好ましい。この場合、このような3Dポイントに最も近い3D表面上のポイントが、3D等価ポイントと決定される。
【0022】
関心がある領域のポイントを選択することを、完全に、ユーザのスキルに委ねることもできるが、例えば、このような第二の二次元画像の範囲内の関心がある対応ポイントが予測されるべき、第二の二次元画像にゾーンを示すことによって、ユーザがそのポイントを選択することを少なくとも部分的に、援助することもできる。
【0023】
これに代えて、関心があるポイントまたは領域を、オブジェクトの三次元再構成のために使用される二次元画像の1個のみに選択することができる。この場合、3D等価ポイントは、このような二次元画像上に3Dモデルをバック投影することによって決定することができる。関心があるこのようなポイントまたは領域に最も近いバック投影された二次元画像のポイントを見出し、かつバック投影された二次元画像上のこのようなポイントに対応する3Dモデル上のポイントを決定することにより、関心があるポイントまたは領域が、選択される。
【0024】
オブジェクトまたはその一部分は、三次元再構成のために使用される少なくとも2個の二次元画像内でセグメント化されることが、好ましい。関心があるセクションは、オブジェクトの三次元再構成のために使用される画像上で、または3Dモデルで直接位置づけられる二次元画像上で、手動でまたは自動的に特定することができる。
【0025】
一実施例によると、少なくとも2個の二次元画像は、関心のあるポイントまたは領域が、冠状弁尖(特に、右側冠状弁尖)である大動脈起始部の全体または一部を示す血管造影画像である。この場合、最適投影像は、好ましくは、このような右側冠状弁尖のそれぞれ反対側に位置する後方および左側弁尖を有する中央ポジションの右側冠状弁尖を示す二次元画像である。
【0026】
一般に、本発明の方法のすべてのステップは、厳密に、提示される順序で考察されるわけではなく、他のいかなる意味があるシーケンスでも等しく実行させることができる。例えば、関心があるポイントは、3D再構成の後に確定させることができる。また、オプションとして、3D再構成の範囲内のセグメント確定は、3D再構成および/または関心のあるポイント判定の前に、決定することができる。
【0027】
本発明の方法は、典型的には、異なる透視図から得られた関心のあるオブジェクトの二次元画像へのアクセスにより、データ処理システムによって、実行される。
【0028】
本発明は、また、コンピュータのメモリに直接ロード可能であるコンピュータ製品であり、かつこの製品がコンピュータで実行される時に、上述された方法を実行するソフトウエア・コード部分を備えるコンピュータ製品に関する。
【0029】
他の態様によると、本発明は、三次元のオブジェクトの二次元の投影像を得る装置にも関する。本装置は、異なる透視図から得られるオブジェクトの少なくとも2個の二次元画像における関心のあるポイントまたは領域の位置についてのユーザの指示を受理する手段と、オブジェクトの最適投影像を得るための透視図を決定するよう、本発明の方法を実行するようプログラムされたプロセス手段とを備える。
【0030】
この種の装置を、画像データを得るおよび/または再構成するために使用されるマシン(例えば、CT、MRI、超音波またはX線撮影装置)と同じにすることができることは、好ましい。特に、それは、X線源と画像増幅器をそれぞれアームの反対側に配置させた、C−アームまたはL−アーム・タイプの血管造影システムである、このようなアームは、異なった透視図から二次元画像を得るために、患者に対し少なくともある回転角および傾き(angulation)角で移動可能である。このプロセス手段は、最適投影像を得るためのアームの回転および傾き角を算出するようにプログラムされている。
【0031】
一実施例によると、血管造影システムは、アームを自動的にまたは半自動的に回転させる駆動手段、および/または最適投影像を得るために算出された回転および傾き角に従って、アームを手動で回転させる指示値をユーザに提供する表示手段を備える。同じ向きを有する2個の透視図の間で、装置の回転および傾き角の可動範囲内で対応する回転および傾き角を選択するように、プロセス手段は、プログラムされていることが好ましい。
【0032】
このプロセス手段を、本発明の方法を実行する、つまり、特に有利な構成で、本発明または本発明の一部を実行する、マシンの主要な画像収集機能性を決める専用のプロセッサとすることが出来、これにより、非常にコンパクトで強力な装置を得ることが出来る。
【0033】
本発明の更なる改良は、従属クレームの主題を形成するであろう。
【0034】
本発明の特性およびそこから導出される効果は、添付の図面に図示される、限定されない以下の実施例の説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】非対称オブジェクトに対し可能な全ての最適投影ビュー方向の図式的な具体例である。
【図2】直交ビューから冠動脈ルートを評価する際に起こりえるエラーの概略図である。
【図3】好ましい実施形態における本発明の主なステップのフローチャートである。
【図4】オブジェクトの3D再構成の概略図である。
【図5】関心があるセクションを示した図4の概略図である。
【図6】対応する3Dセクションに垂直なすべての可能性があるビューを算出するために使用される二次元のセクションの開始と終端を示す。
【図7】後ろからの大動脈起始部を示す第一の血管造影画像である。
【図8】下からの大動脈起始部を示す第二の血管造影画像である。
【図9】セグメント化されかつ関心があるポイントとして示されている冠状弁尖を有する図7の画像である。
【図10】セグメント化されかつ関心があるポイントとして示される対応する冠状弁尖を有する図8の画像である。
【図11】関心があるポイントに対する最適方向ベクトルを示す簡略スケッチである。
【図12】同じ最適方向を有する2個の最適ビューを示す。
【図13】本発明の方法によって決定される透視図から得られる前述の図と同じ大動脈起始部の血管造影画像である。
【図14】大動脈弁尖を置き換えるかまたはステントを配置するために使用されるべき最適投影像の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、楕円横断面を有する、動脈の様な管状器官を示す。この非対称オブジェクトに対する可能性があるすべての最適投影ビューは、このオブジェクトの軸に垂直である図示されている灰色の円上に存する。しかしながら、ポイントBで選択される最適投影ビュー方向は、ポイントAから選択される最適投影ビュー方向とは異なるオブジェクト情報を含むであろう。図2は、これを説明する。この図は、異なる直交ビューから見たときの、冠動脈ルートの冠動脈の見え方の違いを示す。この図において、(平面図の図2の下側に示される)大動脈起始部を、2個の透視図から見ることができる。透視図Aを参照すると、大動脈起始部から生じる冠動脈を明確に見ることが出来る(図2の左上図参照)が、透視図Bによると、同じ大動脈起始部の冠動脈は、画像情報(図2の右上図参照)には両方とも存在しない。画像情報に冠動脈が存在しないことは、医療行為の間、結果として重篤な事態を発生させることにもなる。例えば、ステントが冠動脈の前方に配置されると、冠動脈への血流が、阻止され、患者に対して結果として回復不能の損傷をもたらす。
【0037】
次に、図3のブロックダイヤグラムを参照して、本発明の一実施態様を説明する。
【0038】
この具体例では、関心があるオブジェクトについて少なくとも2個の投影像を得ることが前提である。この目的のためには、2D画像を提供することができるいかなる画像デバイスも、使用することができる。例えば、二面または一面血管造影システムを、使用することができ、これらは、例えば、ジーメンス社(Artis Zee Biplane)またはフィリップス社(Allura Xper FD)により製造されている。
【0039】
参照番号10によって示されるステップにおいて、関心があるオブジェクトは、各投影画像において、または異なる透視図から得られる少なく二つの投影画像において、セグメント化される。これは、非特許文献3において開示されるような、いかなる既知の方法によっても実行することが出来る。これらの結果は、例えば、図9および図10に示される、重ねられた関心があるオブジェクトの境界101を有する投影像である。
【0040】
次のステップ20において、関心があるポイントが、少なくとも2個の投影内で、ユーザによって特定される。例えば、オブジェクトが冠動脈ルートである場合、このようなポイントは、図9および図10に示されるように、右側冠状弁尖201となる可能性がある。
【0041】
有利な実施例によると、第一の投影内において関心があるポイントの位置がユーザによって識別されると、このシステムは、第二の投影の領域を自動的に示して、ユーザが、このような第二の投影内で関心がある正しいポイントを選択するための助けとなるガイダンスを提供する。これは、例えば、非特許文献4に教示されたエピ極性の幾何学的形状の属性を考慮することによって達成される。
【0042】
次のステップは、ステップ30と特定される、少なくとも2個の投影から開始される(本開示の範囲内で三次元再構成または3D表面再構成とも呼ばれる)3Dモデルの生成である。このことは、既知であり、かつ、例えば、非特許文献5に従って行うことができる。
【0043】
このステップの結果は、管状器官に対して図4に示されるような、関心があるオブジェクトの3D表面再構成である。
【0044】
ユーザは、通常、生成された3Dモデルの小さいセクションに関心があるので、ユーザは、更なる算出に対して使用されるであろう3Dモデル内に、サブセグメント502'、502''を示す(図5を参照)ことが出来る。これは、例えば、2D画像の内の一画像に(一端が、求められているセグメントの開始部を表し、かつ他端が終端部を表す)2個の線401、402を示すことによって、行うことができる。関心あるセグメントが最も良く見えるので、これは、2D画像において行われるのが好ましい。しかしながら、これを、直接3Dモデルに行うこともできる。
【0045】
次いで、ステップ20内の関心のあるポイントよって示される特徴を用いることにより、最適投影が、次のステップにより決定される。
【0046】
第1に、関心のあるセクション502'、502''または3Dオブジェクト全体に垂直である全てのビュー方向が、決定される。これは、例えば、非特許文献6に記載されている方法により実行することが出来る。
【0047】
以前に生成された3Dモデルを使用することにより(ステップ30)、示されたセクションまたは3Dオブジェクト全体の方位を、導出することができる(ステップ40)。最適のビュー方向が、3Dモデルまたはそのセクションの方位に垂直であるビュー方向として確定される。このモデルが、それに全て垂直である異なる角度から見ることができるので、このステップは、我々に、全てが、オブジェクトに垂直である平面にある最適ビュー方向のさまざまな量(図1を参照)を与える。
【0048】
次いで、ステップ20の2D血管造影画像において示された関心のあるポイント201が、マッチングされる。すなわち、特徴に対して3D等価ポイントが、算出される。これは、ステップ30で説明した、3D再構成に対して使用されるものに類似の技術を使用して行われる。
【0049】
3D等価ポイントは、次いで、3Dモデルの3D表面に最も近いポイントである、ステップ30において生成された3Dモデルに翻訳される。すなわち、3D表面上の3Dポイントの最良の表現が、見いだされる。
【0050】
ユーザが1個の投影にしか関心のあるポイントを示していない状況では、3Dモデルは、このポイントが示された投影に、バック投影される。次いで、関心のあるポイントは、その3D等価を見いだすために、モデルとマッチングされる。関心あるポイントが、ユーザに向いている3Dモデルのセクション内に位置するとき、すなわち、ユーザによって示された興味のある地点が、3Dモデルの背面にない場合に、これが、達成されることが好ましい。
【0051】
次のステップは、3D等価ポイント501も含む(すべての可能性がある最適ビュー方向から)最適ビュー方向を選択することである。これは、3D等価ポイント501の高さでモデルの最適投影輪郭502の中心から開始する方向ベクトル503を決定しかつ図11に示されるようなポイントを通ってそれを外に向けることによって行われる。
【0052】
方向ベクトル503が、可能な最適投影ビュー方向の面を使用して構築されるので、方向ベクトル503は、示されたセクションに対して、確実に、垂直になる。また、この方向が3D等価ポイント501を通るので、この方向ベクトルから導出された最適投影ビューは、確実に、関心のあるポイント201に関する情報を含む。
【0053】
この方向ベクトル503から、一方が方向ベクトルに沿って観察するビュー・ベクトルでかつ他方が方向ベクトルと反対に観察するビュー・ベクトルである、2個のビュー・ベクトル503'、503''を、決定することができる。各ビュー・ベクトル503'、503''は、X線システムの傾き(システムの回転と傾きの両方)によって示される画像透視図を表す。
【0054】
2個の画像透視図の一方は、多分、使用された画像化形式の範囲の外側に存するであろうから、この画像透視図は、記録することはできない。これは、例えば、C−アームは、一定量しか回転させおよび/または傾けることができないので、所定の透視図の内の1個を達成することが出来ないと言う事実に因る可能性がある。
【0055】
このことは、他の画像透視図が適切な透視図となる結果になるであろう。これは、使用されている画像化形式に依存する。
【0056】
次いで、臨床医は、この結果を用いて、この最適投影に属する画像を得ることができ、かつ、最大量のオブジェクト情報で、その情報を見いだすために費やすための時間と患者への負担を最小にして手順を続けることができる。図13は、図7および8の2個の画像を本発明の方法により処理して得られた最適投影像を示す。図14は、非冠動脈(後部)Pと大動脈弁の左側弁尖Lとの間に示される右側弁尖Rを有する大動脈起始部のビューを表す、このようにして得られた画像のスケッチ、つまり、特に、TAVI手順に有用であると考えられる透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト、特に、非対称オブジェクトの最適投影画像を決定する方法であって、
a) 異なる透視図から得られた前記オブジェクトの2個以上の二次元画像から前記オブジェクトの三次元の表面再構成を生成するステップと、
b) 関心があるセクションの位置を、3D再構成上に決めるユーザ指示を受信するステップと、
c) 関心があるこのセクションに対し短縮遠近法の観点で最適のビュー方向を含む面を決定するステップと、
を備える方法において、
ステップb)が、ステップa)において前記オブジェクトの三次元再構成に使用される少なくとも1個の前記二次元画像における、関心があるポイントまたは領域(201)の位置をユーザから受信するステップを備え、
前記方法が、更に、
d) 関心があるポイントまたは領域(201)の3D等価ポイント(501)を、3D表面上に決定するステップと、
e) ステップc)において決定された前記最適ビュー方向の中から、ステップd)において決定された前記3D等価ポイントを含むビュー方向を選択するステップと
を備えることを特徴とするオブジェクトの最適投影画像を決定する方法。
【請求項2】
ステップc)において決定された前記面が、関心のある前記セクションの主方位に垂直である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)において決定された前記面が、対象中心を有する幾何学図を得るために前記三次元表面と交差する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップe)が、前記対象中心と前記3D等価ポイント(501)を通る線の方向(503)を決定するステップを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)が、前記オブジェクトの前記三次元再構成に使用される少なくとも1個の前記二次元画像上の関心のある前記ポイントまたは領域(201)から、3D等価ポイント(501)を決定するステップであって、前記3D等価ポイント(501)が、前記3Dモデルを、前記選択された関心のあるポイントまたは領域が存する二次元画像にバック投影することにより決定されるステップと、
前記バック投影された二次元画像に当該関心のあるポイントまたは領域に最も近接しているポイントを見出すステップと、
前記バック投影された二次元画像上の当該ポイントに対応する3Dモデル上の前記ポイントを決定するステップと
を備える、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
ステップd)が、前記オブジェクトの前記三次元再構成に使用される少なくとも2個の前記二次元画像上の関心のある前記ポイントまたは領域から、3D等価ポイント(501)を決定するステップを備え、前記3D等価ポイントが、当該3Dポイントに最も近接している前記3D表面上のポイントである、請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
‐第一の二次元画像内の関心のあるポイントまたは領域の位置を前記ユーザから受信するステップと、
‐前記ユーザが当該第二の二次元画像内で前記対応する関心のあるポイントを選択することを援助するガイダンスを提供するために、第二の二次元画像内の領域を自動的に示すステップと、
‐前記第二の二次元画像内の当該領域内の関心のあるポイントまたは領域の前記位置を前記ユーザから受信するステップと
を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オブジェクトまたはその一部が、前記三次元再構成に使用される少なくとも2個の前記二次元画像内で、セグメント化される、請求項1〜7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
関心のある前記セクション(502'、502'')が、手動で、または自動的に、前記オブジェクトの前記三次元再構成に使用される前記二次元画像(401、402)上で識別される、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
適切な最適ビューが、前記二次元画像を取得するために使用されるモダリティの関数と同一の方向を有するこれら2個のベクトル(503'、503'')の間で決定される、請求項1〜9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2個の二次元画像が、大動脈起始部全体または一部を示す血管造影法画像であり、関心のある前記ポイントまたは領域が、冠動脈弁尖、特に、右側冠動脈弁尖である、
請求項1〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記最適投影画像が、右側冠動脈弁尖の両側にそれぞれ位置する後部および左側弁尖を有する中央位置にある右側冠動脈弁尖を示す二次元画像である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
デジタル・コンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータ製品であって、前記製品をコンピュータで稼働させる際に、請求項1〜12の何れかに記載の方法を実行するためのソフトウェア・コード部分を備えるコンピュータ製品。
【請求項14】
三次元オブジェクトの二次元投影画像を取得する装置であって、異なる透視図から得られた前記オブジェクトの少なくとも2個の二次元画像内の関心のあるポイントまたは領域の位置についてのユーザ指示を受信する手段と、前記オブジェクトの最適投影画像を得るための透視図を決定するために請求項1〜12の何れかに記載の方法を実行するようにプログラムされている処理手段とを備える、装置。
【請求項15】
アームの両側に各々X線源と画像増幅器を有するC−アームまたはL−アーム・タイプの血管造影装置であって、当該アームが、異なる透視図から二次元画像を得るために患者に対して少なくとも回転角と傾斜角について可動であり、前記処理手段が、最適投影画像を得るために前記アームの回転角と傾斜角を算出するようにプログラムされている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記アームを自動的にまたは半自動的に回転させる駆動手段、および/または最適投影画像を得るために算出された回転角と傾斜角に従って、前記アームを手動で回転させるための指示をユーザに提供する表示手段を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
同一方向を有する2個の透視図の間で、前記処理手段が、前記装置の回転角と傾斜角の可動範囲内で回転角と傾斜角に対応する値を選択するようにプログラムされている、請求項15または16に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−245355(P2012−245355A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−114270(P2012−114270)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(504048537)パイ メディカル イメージング ビー ヴイ (4)
【氏名又は名称原語表記】PIE MEDICAL IMAGING B.V.
【住所又は居所原語表記】Becanusstraat 13D 6216BX Maastricht The Netherlands
【Fターム(参考)】