説明

有害物浄化材料および有害物の浄化方法

【課題】 有害物を分解することにより浄化できる有害物浄化材料と、該有害物浄化材料を用いた有害物の浄化方法を提供する。
【解決手段】 有害物を分解して浄化するための有害物浄化材料であって、光触媒機能を有する層状リン酸塩を含有することを特徴とする有害物浄化材料と、該有害物浄化材料に、有害物の共存下で、波長が280nm以下の紫外線を照射して上記有害物を分解することを特徴とする有害物の浄化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物を分解・浄化するための有害物浄化材料と、該材料を用いた有害物の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルデヒド、硫化水素などの悪臭ガスを始めとする各種の有害物を除去する材料としては、例えば、化学吸着機能を有する臭素添着活性炭(特許文献1)や層状リン酸塩(特許文献2、3、非特許文献1)などが知られている。
【0003】
上記の各材料は、その化学吸着機能によって有害物を吸着し除去することができるものの、除去できる有害物の種類が限定的であるといった欠点も抱えている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−33397号公報
【特許文献2】特公昭58−5097号公報
【特許文献3】特開平9−276380号公報
【非特許文献1】第15回無機リン化学討論会講演要旨集、日本無機リン化学会、平成15年10月14日〜15日、p.17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有害物を分解することにより浄化できる有害物浄化材料と、該有害物浄化材料を用いた有害物の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の有害物浄化材料は、有害物を分解して浄化するためのものであって、光触媒機能を有する層状リン酸塩を含有することを特徴とするものである。
【0007】
上記の層状リン酸塩としては、波長が280nm以下の紫外線を照射することにより光触媒機能を発揮し得るものが挙げられ、より具体的には、トリポリリン酸二水素アルミニウムまたはその二水和物;若しくはアンモニアがインターカレートしているトリポリリン酸二水素アルミニウムまたはその二水和物;が好ましい。
【0008】
また、上記本発明の有害物浄化材料に、有害物の共存下で、波長が280nm以下の紫外線を照射して上記有害物を分解する有害物の浄化方法も、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有害物浄化材料は、光触媒機能により有害物を分解して無害化できる。
【0010】
また、本発明法によれば、有害物を良好に分解して無害化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の層状リン酸塩が、特定波長の光を照射することによって光触媒機能を発揮でき、この機能により良好に有害物を分解して無害化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の有害物浄化材料は、光触媒機能を有する層状リン酸塩を含有するものである。
【0013】
上記の層状リン酸塩としては、例えば、波長が280nm以下の紫外線を照射することにより光触媒機能を発揮でき、この機能により有害物を分解・浄化し得るものが挙げられる。
【0014】
上記のような光触媒機能を有する層状リン酸塩としては、例えば、トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH10)またはその二水和物(AlH10・2HO)、層状リン酸ジルコニウム[Zr(HPO・HO]、層状リン酸チタニウム[Ti(HPO・HO]、層状リン酸セリウム[Ce(HPO・1.33HO]などが挙げられる。
【0015】
上記例示の各層状リン酸塩は、上記の光触媒機能に加えて、アルカリ性化学物質(例えば、アンモニア、アミンなど)を化学吸着し得る機能も有している。よって、これらの層状リン酸塩を含有する有害物浄化材料では、280nm以下の紫外線を照射することにより各種の有害物を分解・浄化できると共に、アルカリ性化学物質である有害物については、こうした光触媒機能を発揮させるための光を照射していない状況下においても、その化学吸着機能により吸着・除去することができる。
【0016】
また、上記のような光触媒機能を有する層状リン酸塩として、上記例示の層状リン酸塩、すなわち、トリポリリン酸二水素アルミニウムまたはその二水和物、層状リン酸ジルコニウム、層状リン酸チタニウム、若しくは層状リン酸セリウムなどに、アンモニアまたはアミンがインターカレートされているものも挙げられる。
【0017】
層状リン酸塩にインターカレートされる上記アミンとしては、例えば、化学式:HNC(NHCx−1NH[ただし、xは1〜5の整数]で表されるポリアミン、化学式:HNC(NHCy−1NH[ただし、yは1〜3の整数]で表されるポリアミン、などが挙げられる。具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミンなどが例示できる。
【0018】
アンモニアやアミンがインターカレートされている層状リン酸塩においては、インターカレートされたアンモニアやアミンの量は、例えば、層状リン酸塩1gに対し、0.5〜4mmol程度であることが好ましい。
【0019】
上記の各アミンやアンモニアは、1種のみが層状リン酸塩にインターカレートされていてもよく、2種以上が層状リン酸塩にインターカレートされていても構わない。
【0020】
上記例示の、アンモニアまたはアミンがインターカレートされた層状リン酸塩は、上記の光触媒機能に加えて、酢酸、アセトアルデヒド、硫化水素などのガスを吸着し得る機能も有している。よって、これらの層状リン酸塩を含有する有害物浄化材料では、280nm以下の紫外線を照射することにより各種の有害物を分解・浄化できると共に、酢酸、アセトアルデヒド、硫化水素などのガスを含む悪臭ガスなどの有害物については、こうした光触媒機能を発揮させるための光を照射していない状況下においても、その化学吸着機能により吸着・除去することができる。
【0021】
上記の層状リン酸塩は、例えば、特開平3−150214号公報に記載の製法により得ることができる。また、上記の、アンモニアまたはアミンがインターカレートされた層状リン酸塩は、例えば、特開平9−276380号公報(上記特許文献4)に記載の製法により得ることができる。
【0022】
本発明の有害物浄化材料では、上記例示の層状リン酸塩、または上記例示の、アンモニア若しくはアミンがインターカレートされた層状リン酸塩を、1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していても構わない。
【0023】
本発明の有害物浄化材料の形態については、特に制限は無く、例えば、粉末状、水などの分散媒に分散させた分散品、造粒成形品などの各種形態をとることができる。
【0024】
本発明の有害物浄化材料は、少なくとも、光触媒機能を有する層状リン酸塩を含有していればよい。よって、上記有害物浄化材料は、光触媒機能を有する層状リン酸塩のみで構成されていてもよいが、必要に応じて他の材料を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0025】
例えば、本発明の有害物浄化材料が水に分散させた分散品の形態である場合には、好ましくは各種界面活性剤などの公知の分散剤を用いることが好ましく、これにより層状リン酸塩の水に対する分散性を高めることができる。
【0026】
他方、例えば、本発明の有害物浄化材料が造粒成形品の形態である場合には、添加剤として、アクリル樹脂エマルション、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルエマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチルセルロースなどのバインダーを含有させて、その成形性を高めることが好ましく、また、必要に応じて、ベントナイト、ホワイトカーボン、ゼオライト、セピオライトなどの各種材料を更に含有させて、これらの材料による機能を持たせてもよい。
【0027】
本発明の有害物浄化材料を用いて有害物を浄化するには、有害物の共存下で、例えば波長が280nm以下の紫外線、好ましくは210〜280nmの波長の紫外線を照射すれ ばよく、これにより、有害物を分解して無害化することにより浄化が達成できる。
【0028】
本発明の有害物浄化材料は、その光触媒機能によって、悪臭ガスなどの他、アレルゲン、ウイルス、微生物、植物などの各種の有機物である有害物を分解・浄化することができ、例えば、硫化ジメチル、メチルメルカプタン、硫化水素などの硫黄含有有機化合物の分解・浄化に特に有効である。また、上記例示の特定の層状リン酸塩を用いた場合には、それらの化学吸着機能に基づいて、光触媒機能を発揮させるための光を照射していないときにも、特定種の有害物については、吸着・除去することもできる。
【0029】
よって、本発明の有害物浄化材料は、上述の、粉末状、水などの分散媒に分散させた分散品、造粒成形品などの形態で、各種奪取装置などの産業用機器;エアコンディショナーや空気清浄機などの家電製品;カーテン、カーペットなどの繊維製品;食品包装フィルム、シート、紙、雑貨などの各種家庭用製品;内装塗料、壁紙、壁材、天井材、接着剤などの建築用品;などの各種用途に使用でき、その工業的価値は顕著である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0031】
実施例1
有害物浄化材料をトリポリリン酸二水素アルミニウム二水和物[テイカ社製「K−FRESH♯100P」(商品名)]で構成した。この有害物浄化材料1.00gを入れた試料皿(54×70×5mm)を反応容器内(外寸法:長さ41.5cm、幅10.5cm、高さ5cm)に入れた。反応容器上面は石英ガラスをパッキングで挟み、ネジで固定した。反応容器の入口と出口とにガスサンプリング口を設け、入口から代表的な悪臭物質である硫化ジメチル(以下、DMS)を1.0L/minの流量で流通させた。ギャップは2mmとした。25%オキシジプロピオニトリル(ODPN)/UniportA(60/80mesh)を充填した内径3mm、長さ3mのカラム(ジーエルサイエンス社製)を用いたガスクロマトグラフ(島津製作所製「GC15A型」)で、反応容器の入口と出口のガス濃度を定量し、入口と出口とのガス濃度が同じになった時点で、波長254nmの紫外線を、反応容器上面における強度が1mWcm−2となるように照射し、その際のDMSの光分解除去率を下式(1)により求めた。結果を表1に示す。
【0032】
光分解除去率(%)=(照射前DMSガス濃度−照射後DMSガス濃度)
/照射前DMSガス濃度×100 (1)
【0033】
また、上記の紫外線照射によるDMSの分解反応によって生成するCO生成率を下式(2)により求めたところ、59.0%であった。
CO生成率(%)=(照射後COガス濃度−照射前COガス濃度)
/理論CO生成濃度×100 (2)
【0034】
なお、上式(1)および(2)における「照射前」、「照射後」は、それぞれ紫外線の照射前、照射後を意味している。
【0035】
実施例2
アンモニアがインターカレートされたトリポリリン酸二水素アルミニウム[テイカ社製「K−FRESH 4150」(商品名)]で構成された有害物浄化材料を用いた他は、実施例1と同様にしてDMSの分解試験を行った。結果を表1に示す。
【0036】
実施例3
特開平3−150214号公報の実施例3に記載の方法に準じて作製した層状リン酸ジルコニウムで構成された有害物浄化材料を用いた他は、実施例1と同様にしてDMSの分解試験を行った。結果を表1に示す。
【0037】
実施例4
特開平3−150214号公報の実施例4に記載の方法に準じて作製した層状リン酸チタニウムで構成された有害物浄化材料を用いた他は、実施例1と同様にしてDMSの分解試験を行った。結果を表1に示す。
【0038】
実施例5
特開平3−150214号公報の実施例1に記載の方法に準じて作製した層状リン酸セリウムで構成された有害物浄化材料を用いた他は、実施例1と同様にしてDMSの分解試験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、実施例1〜5の有害物浄化材料に、有害物であるDMSの共存下で、特定波長の紫外線を照射することにより、DMSを分解・浄化できることが分かる。
【0041】
なお、参考までに、実施例1および実施例2の有害物浄化材料について、これらの化学吸着機能による有害物の吸着試験も行った。
【0042】
実施例1の有害物浄化材料については、アルカリ性化学物質であるアンモニアの吸着試験を行った。実施例1の有害物浄化材料0.5gを3L容量のにおい袋に入れ、1,100ppm濃度のアンモニアガスを注入し、30分後に残存ガス濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定したところ、0ppmであった。
【0043】
におい袋内の気体を追い出し、窒素ガスを注入した。この操作を2回行った後、におい袋容量の約2割分の窒素ガスを注入し、密閉後、これを60℃の恒温機に入れた。2時間後、におい袋を取り出し、これに窒素ガスを充填し、直ちに、におい袋内のガス濃度をガス検知管にて測定したところ、0ppmであった。すなわち、この条件下においては、実施例1の有害物浄化材料によりアンモニアが吸着されており、かつ有害物浄化材料に吸着されたアンモニアは再放出されていないことが分かる。
【0044】
また、実施例2の有害物浄化材料については、ホルムアルデヒドの吸着試験を行った。実施例2の有害物浄化材料0.5gを3L容量のにおい袋に入れ、200ppm濃度のホルムアルデヒドガスを注入し、60分後に残存ガス濃度をガス検知管(ガステック社製)にて測定したところ、0ppmであった。
【0045】
におい袋内の気体を追い出し、窒素ガスを注入した。この操作を2回行った後、におい袋容量の約2割分の窒素ガスを注入し、密閉後、これを60℃の恒温機に入れた。2時間後、におい袋を取り出し、これに窒素ガスを充填し、直ちに、におい袋内のガス濃度をガス検知管にて測定したところ、0ppmであった。すなわち、この条件下においては、実施例2の有害物浄化材料によりホルムアルデヒドが吸着されており、かつ有害物浄化材料に吸着されたホルムアルデヒドは再放出されていないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物を分解して浄化するための有害物浄化材料であって、
光触媒機能を有する層状リン酸塩を含有することを特徴とする有害物浄化材料。
【請求項2】
上記層状リン酸塩は、波長が280nm以下の紫外線を照射することにより光触媒機能を発揮し得るものである請求項1に記載の有害物浄化材料。
【請求項3】
上記層状リン酸塩は、トリポリリン酸二水素アルミニウムまたはその二水和物である請求項2に記載の有害物浄化材料。
【請求項4】
上記層状リン酸塩は、アンモニアがインターカレートされた、トリポリリン酸二水素アルミニウムまたはその二水和物である請求項2に記載の有害物浄化材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の有害物浄化材料に、有害物の共存下で、波長が280nm以下の紫外線を照射して上記有害物を分解することを特徴とする有害物の浄化方法。

【公開番号】特開2007−117868(P2007−117868A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312606(P2005−312606)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【出願人】(391016842)岐阜県 (70)
【Fターム(参考)】