有機りん化合物、難燃剤および難燃性有機高分子組成物
【課題】新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有していて、ハロゲンを含有していない難燃性有機高分子組成物を提供する事。
【解決手段】一般式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物を提供する事によって課題を解決する。
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【解決手段】一般式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物を提供する事によって課題を解決する。
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機りん化合物、難燃剤および難燃性有機高分子組成物に関する。さらに詳細には、新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有していて、有機ハロゲン化合物を含有していない難燃性有機高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機高分子化合物の難燃剤としては有機ハロゲン化合物がその大きな難燃効果、適用される有機高分子化合物の範囲の広さ、適用の容易さまたは価格の低廉さなどが魅力的であり、有機ハロゲン化合物は難燃剤として広く有機高分子化合物に適用されてきた。そして、有機ハロゲン化合物としては塩素系または臭素系のものが実用されていて、それぞれ多種類の化合物がその目的に応じて難燃剤として多量に使用されてきた。
【0003】
しかし最近では、有機ハロゲン化合物を難燃剤として含有している有機高分子組成物は火災時に有毒ガスを発生し、人体に対して被害を与える事が問題視されている。さらに、ハロゲン系の難燃剤を含有している高分子組成物はその焼却処分時に焼却炉を腐食する酸性ガスを発生するばかりではなく、環境汚染性の強い有害物質を排出する事などが明らかにされている。故に、難燃剤を使用する業界ではこのようなハロゲン系の難燃剤を使用する事を嫌って、ハロゲン系の難燃剤を他の難燃剤に置換しようとする動きが活発であり、中でも有機りん化合物が最近、特に注目されている。
【0004】
ただし、ハロゲン系の難燃剤が広い範囲の有機高分子化合物に効果的に適用されるのに対して、従来の有機りん化合物が難燃剤として効果的なのはポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂またはセルローズ類などのように燃焼時に比較的に炭化物の生成が容易な有機高分子化合物に限られている。故に、有機りん化合物が難燃剤として有効に機能する事の出来ない多くの有機高分子化合物では依然として、ハロゲン系の難燃剤の他の難燃剤への切り替えが円滑でないのが現状である。
【0005】
有機ハロゲン化合物系難燃剤と有機りん化合物系難燃剤との効果上の差異はそれぞれの難燃化の機構の相違であると理解されている。多くの文献によれば、有機ハロゲン化合物系難燃剤の難燃化機構は火炎すなわち、高温の気相中で生成される安定なハロゲンラジカルによる火炎の消火作用であると説明されていて、一般に支持されている。そして、それが火炎を上げて燃焼する多種類の有機高分子化合物の難燃剤として有効である理由の説明としても理解出来るものである。一方、有機りん化合物系難燃剤の難燃化機構は、りん化合物による有機高分子化合物の炭化促進作用によって燃焼時に表面に生成するりんを含んだ炭化物皮膜による火源の熱エネルギーまたは空気の遮蔽効果であると説明されていて、有機りん化合物系の難燃剤が効果的な有機高分子化合物はいずれもその燃焼時に比較的に炭化物皮膜が生成し易い事実および有機りん化合物自身が燃焼時にりんを含有している表面皮膜を生成し易いもの程難燃効果がより高い事実とはこの説明を良く裏付けている。
【0006】
有機ハロゲン化合物系の難燃剤以外のものでも難燃化の機構が火炎のラジカル的消火作用であると思われる若干の文献が発見される。例えば、特許文献1および特許文献2では有機りん化合物と同時に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが、特許文献3では臭素化合物と共に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが使用されていて、この化合物の火炎中でのラジカル対生成による相乗効果的な難燃性が期待されている。また、特許文献4および特許文献5には9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ベンジル−10−オキサイドの特異的な難燃効果が開示されている。そして、この化合物の特異性は通常の有機りん化合物には見出だせないものであって、他の有機りん化合物が難燃剤として殆ど機能しない非炭化性の有機高分子化合物にも優れた難燃効果が見出だされている。この事は、これが火炎中で生成する9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド−10−イルラジカルとベンジルラジカルとのラジカル対による火炎の消火作用であると推理する事は困難ではない。そして、非特許文献1にはビ−9−フルオレニルの難燃剤としての記述があり、この難燃効果が火炎中で生成される9−フルオレニルラジカルによる消火作用であろうと推理する事も同様に困難ではない。さらに、特許文献6などには発泡ポリスチレンの難燃助剤としてジクミルパーオキサイドまたはクメンハイドロパーオキサイドなどの比較的に高い分解温度を持った有機過酸化物が使用されていて、火炎中で生成するラジカルの相乗的な消火作用が暗示されている。
【0007】
しかしながら、目下、ハロゲンラジカル以外のラジカルによる難燃機構を持った難燃剤の文献例または実用例は極めて少なく、これは今後大いに発展させなければならない技術分野であろうと思われる。
【特許文献1】JP2003−34749A
【特許文献2】JP2004−115763A
【特許文献3】JP2000−1563A
【特許文献4】JP2002−275473A
【特許文献5】JP2004−292495A
【特許文献6】JPH11−130898A
【非特許文献1】Lattimer & Kroenko: J. Polymer Sci.,26,1191(1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は高度の難燃効果を持っている新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有していて、有機ハロゲン化合物を含有しない難燃性有機高分子組成物を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、一般式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【0012】
ここで、置換基を持っていてもよいアニリノ基とはアニリノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、o−アニシジノ基、p−アニシジノ基、o−フェネチジノ基、p−フェネチジノ基、1−ナフチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基またはN−アリルアニリノ基などを指している。
【0013】
一般式1で表される有機りん化合物(以下、一般式1と称する。)の持っている広範囲の有機高分子化合物に対する高度の難燃効果はその化学構造からも予測されるように、火炎中で分裂して生成する安定なラジカル対による消火作用であると考えられる。これはハロゲン化合物の難燃機構と類似している。しかし、ハロゲン分子や過酸化物などのラジカル対への分裂がホモリチック(Homolytic)であり、容易であるのに対して、本発明の有機りん化合物のラジカル対への分裂がヘテロリチック(Heterolytic)であるにも関わらず、その分裂が極めて円滑であるのは分裂によって生成するラジカル対の不対電子が双方に隣接するベンゼン環のπ電子によって安定化されている理由によると考えられる。故に、一般式1はりん原子および分裂の予測される他のラジカル原子すなわちRのラジカル原子が共に少なくとも一つのベンゼン環に結合している事が特徴であり、これが本発明の技術思想でもあり、一般式1の構造を限定している理由でもある。
【0014】
ホモリチックな分裂様式を持った有機過酸化物または若干のアゾ化合物のようにラジカル対に分裂する事の容易な化合物の分裂温度は一般に150℃以下であり、難燃剤として使用するには低すぎる分裂温度である。これに対して、一般式1の場合は安定なラジカル対に分裂する事が出来る化学構造を持った化合物のヘテロリチックな分裂様式であり、そのラジカル対への分裂温度は200℃よりも高く、難燃剤として利用するのには好適である。ちなみに、その分裂の仕方は分裂によって生成する二つのラジカル対が共により安定な程容易であり難燃剤として利用するには好ましい。仮に、一般式1のR位置にあたる基がメチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基であるとして比較した時、これらの分裂によって生成する9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド−10−イルラジカルと対をなすラジカルの安定性はメチル≪ベンジル<ベンズヒドリル<9−フルオレニルの順であり、最も不安定なメチル基の場合はラジカル対への分裂が困難であって、そのラジカル的な難燃効果も殆ど期待されない。一方、ベンズヒドリルラジカルおよび9−フルオレニルラジカルは二つのベンゼン環で安定化されていて、ラジカル対への分裂がより円滑であり、しかもその火炎中での難燃効果はベンジル基の場合よりも高い。これは、ハロゲンラジカルの安定性がF≪Cl<Br<Iの順であり、その難燃効果の大きさもこの順序である事実に相似している。
【0015】
本発明に係る有機りん化合物を主成分とした難燃剤もまた可塑剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤などの高分子添加剤と同様に、分子量が小さくて揮発性の大きなものは有機高分子化合物との高温度下での混合または成形工程で揮発して作業環境を汚染するだけではなく、有機高分子組成物の長期に及ぶ使用中に徐々に揮発してその添加効果を次第に減ずるので好ましくない。たとえば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンは火炎中で二個のクミルラジカルに分裂する事が知られているがその分子量が238.37と非常に小さく、難燃効果が充分に発揮される程度の量を有機高分子化合物に添加して高温で混合または成形すればその工程中で多く揮発して、著しく作業環境を不快なものにする。逆に、その分子量があまりにも大きなものは燃焼時にも揮発する事が少なく、従って、火炎中でのラジカル対の生成が少ないので、その添加効果が充分に発揮されず、また好ましくない。
【0016】
有機化合物の揮発性はその分子量だけに依存するものではないが、類似化合物を比較する時にはその分子量を揮発性の目安とする事が出来る。一般式1の内、水素結合を形成しない有機りん化合物は揮発性が大きく、本発明の使用目的には分子量が320〜430の範囲内が最も好ましい。水素結合を形成する化合物の揮発性はそれよりも小さく、分子量が300〜400の範囲内が最も好ましい。ただし、これらの好ましい分子量の範囲は本発明者等の多くの経験から得られた単なる目安に過ぎない。ちなみに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−ベンジル−10−オキサイドは水素結合を形成する事がなく、しかも、その分子量が306.3とやや小さく、混合または成形の工程中で揮発してその特有の不快臭を発する事が知られている。
【0017】
通常の有機りん化合物は有機高分子化合物の燃焼時に炭化物の生成を促進する作用を持っていて、これは若干の有機高分子化合物の難燃剤として有効である。しかし、一般式1は一種の有機りん化合物であるにも関わらず、他の有機りん化合物とは異なっていて、有機高分子化合物に対する燃焼時の炭化促進作用が大きくない。故に、他の有機りん化合物が有効なポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂またはセルローズ類などの比較的に炭化物生成の容易な有機高分子化合物などには本発明の一般式1と共に他の有機りん化合物を添加すれば、ラジカル的な消火作用と炭化促進作用との相乗的な効果が引き出されて、より高い難燃性が与えられる。
【0018】
他の有機りん化合物の内、分子中に一個のりん原子を持っているものとしてはトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルキシリルホスフェート、フェニルジキシリルホスフェート、ジフェニル−o−キセニルホスフェートまたはジフェニルフェニルホスホネートなどが挙げられ、それらは既に公知であって、その製造方法も知られている。分子中に二個以上のりん原子を持っている有機りん化合物はJPH5−1079A、JPH6−306277A、JPH8−277344A、JPH8−301884A、JPH10−45774A、JPH11−343382AまたはJP2004−115763Aなどに記述があり、その製造方法も明らかにされている。本発明に相乗効果を与える目的で、特に好適に利用される他の有機りん化合物は分子中に二個のりん原子を持っているものである。
【0019】
本発明の難燃剤が適用される有機高分子化合物は広範囲にわたっていて、ポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体(MBS樹脂)、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレングラフト重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイ、ポリアミド類、ポリウレタン類、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはセルローズ類などが挙げられ、特にポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド類、ポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイなど、従来の有機りん化合物系難燃剤では難燃効果の比較的に小さな有機高分子化合物への適用は本発明の効果が最も特徴的なものである。
【0020】
本発明に係る難燃性有機高分子化合物は主としてフィルムまたは押出し成形品として実用に供される事が多い。通常、有機高分子化合物と難燃剤とは溶融混合してフィルムまたは押出し成形品とされる。ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミド類はフィルムまたは成形品として実用される事もあるが、繊維として織物などに実用される事も多い。難燃性繊維の製造方法としては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリアミド類に難燃剤ほ溶融混合してから、紡糸する方法と、とりわけポリエチレンテレフタレートでは難燃剤を含有していない繊維または織物を難燃剤を含有する溶液または水系エマルジョンで処理してから、100℃以上で加熱処理を施して難燃剤を繊維内部に固定し、難燃性の繊維または織物を製造する方法との二つを採用する事が出来る。また、ポリスチレンは一般の成形品の他に発泡ポリスチレンとして利用される事も多い。難燃性発泡ポリスチレンの製造方法としてはJPH4−137276Aに示されているように、ポリスチレンの水懸濁液に発泡剤と難燃剤の微粒子を加えてポリスチレン粒子にこれらを含浸させ、さらに幾つかの工程を経て難燃製品を得る方法などが採用されていて、本発明においてもこの方法が利用される。
【0021】
通常、一般式1を難燃剤として有機高分子化合物に添加する時、その添加量は0.5ないし25重量%、より好ましくは1ないし20重量%そして最も好ましくは2ないし15重量%である。一般式1と同時に使用される他の有機りん化合物は任意に添加する事も出来るが、必要ならば2ないし15重量%、さらに好ましくは3ないし14重量%そして最も好ましくは5ないし12重量%が添加される。前者の添加量が0.5重量%以下では充分な難燃効果またはその相乗効果は得られず、25重量%以上でもそれ以上の効果が得られないばかりでなく、添加によって有機高分子組成物の物理的な性質が低下するので好ましくない。また、後者の添加量が2重量%以下では、前者との充分な相乗効果が期待されず、15重量%以上でも相乗効果のそれ以上の向上は期待されない。
【発明の効果】
【0022】
各実施例および比較例から明らかなように、本発明に係る難燃剤および難燃性有機高分子化合物はハロゲンを全く含有しないで、優れた難燃効果を持っている事が明らかにされ、かつ、それが工業的な規模で容易に実施される事が証明された。なお、実施例13−3および参考例1によってポリアミドとトリアリルイソシアヌレートとは一般式1の存在下に放射線処理によって架橋構造を形成して、その耐熱性が向上する結果が示され、工業的な価値が示唆された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
一般式1はその製造方法の点で二つの形式に分けられる。
【0024】
その一つは窒素原子を持った有機りん化合物であって、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの10位の置換基すなわち、一般式1におけるRが、置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、またはフェノチアジノ基であるものが例示される。これらは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ハロゲノ−10−オキサイドと置換基を持っていてもよいアニリン、インドール、インドリン、ジフェニルアミン、カルバゾールまたはフェノチアジンとを塩基の存在下または不存在下に縮合反応を行なわせて製造される。ここで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ハロゲノ−10−オキサイドは9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドとハロゲン元素との反応または9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの前駆体である9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−クロライドの酸化反応によって調製する事が出来る。特に、後者の方法は調製工程が簡単であり工業的には前者よりも有利である。上記の方法で製造される一般式1としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−アニリノ−10−オキサイド(以下、「10−アニリノ」と称する。)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(N−メチルアニリノ)−10−オキサイド{以下、「10−(N−メチルアニリノ)」と称する。}、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(N−エチルアニリノ)−10−オキサイド{以下、「10−(N−エチルアニリノ)」と称する。}、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ジフェニルアミノ−10−オキサイド(以下、「10−ジフェニルアミノ」と称する。)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−カルバゾリル−10−オキサイド(以下、「10−カルバゾリル」と称する。)などが例示される。
【0025】
他の一つは窒素原子を持たない有機りん化合物であって、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの10位の置換基がベンズヒドリル基または9−フレオニル基であるものが例示される。これらは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドとベンズヒドリルハロゲナイドまたは9−ハロゲノフルオレンとを直接に脱ハロゲン化水素縮合反応を行なわせて製造される。以上の方法で調製される一般式1としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ベンズヒドリル−10−オキサイド(以下、「10−ベンズヒドリル」と称する。)および9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(9−フルオレニル)−10−オキサイド{以下、「10−(9−フルオレニル)」と称する。}とが例示される。
【0026】
一般式1の難燃剤としての適用が好ましい有機高分子化合物は既に記述した通りであり、さらに一般式1の適用が最も好ましい有機高分子化合物も既に記述したように、ポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド類、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイなどである。これらはすべてが熱可塑性の有機高分子化合物であり、燃焼時に滴下(Drip)を生じ易い。この好ましくない滴下を防止する方法としては、炭素繊維またはガラス繊維などの添加が推奨される。
【0027】
ポリオレフィン類としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンまたはポリメチルペンテンなどが挙げられる。これらのポリオレフィン類には一般式1と共に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはクレイのような無機化合物を添加すればより高い難燃効果が得られるので好ましい。
【0028】
ポリスチレンとしてはスチレンホモポリマーとポリブタジエンに対するスチレンのグラフト重合体(ハイインパクトポリスチレン)とが含まれる。これらには「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」、「10−カルバゾリル」または「10−ベンズヒドリル」などの添加が効果的である。また、発泡ポリスチレンにおいては「10−(N−メチルアニリノ)」または「10−(N−エチルアニリノ)」が低融点であり、それらの添加が処理工程上、最も円滑であり且つ効果的である。
【0029】
一般にABS樹脂と称されるのは、基本的にはブタジエン、アクリロニトリルおよびスチレンの重合体から構成されていて、その製造方法および構成モノマーの比率によって多種類のものが製造されている。ABS樹脂には一般式1のすべてが好適に使用されるが、特に、「10−アニリノ」、「10−(N−メチルアニリノ)」または「10−(N−エチルアニリノ)」の添加が最も高い難燃効果が得られる。また、高温での混合または成形時にABS樹脂のゲル成分が増加する事があるが、これを嫌う場合には少量のヒンダードフェノール系重合防止剤の添加が推奨される。
【0030】
ポリメタクリル酸メチルは高い軟化点と優れた透明性を持った有機高分子化合物であり、アクリルグラスと称されて、構造材料として広く利用されている。そしてこれは他の有機りん化合物による難燃化の困難な有機高分子化合物の一つである。一般式1の内、「10−アニリノ」を除いたすべてが、その高軟化点と高透明性を害する事がなくて、好適に使用される。また、透明性の犠牲が可能ならば、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムとの共用は相乗効果が期待される。
【0031】
ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとはテレフタル酸とエチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールとの重縮合体であって、成形品、フィルム製品または繊維製品として広く利用されている。ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートの成形品、フィルム製品または繊維製品には一般式1を溶融状態で混合する事が出来る。この時には「10−ベンズヒドリル」または「10−(9−フルオレニル)」の添加が推奨される。また、繊維製品においては難燃剤の添加を先に説明したように、その溶液または水懸濁液で処理する方法を施して行なう事ができる。この方法に適した一般式1としては、「10−アニリノ」、「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」または「10−ベンズヒドリル」などが挙げられる。
【0032】
ポリアミド類としては、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−11、ナイロン−12、共重合ナイロン、ナイロン−MXD,6またはナイロン−4,6などが例示される。一般式1の内、ポリアミド類への添加が好ましいものとしては、「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」、「10−カルバゾリル」または「10−ベンズヒドリル」などが挙げられ、同時に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはクレイなどの無機化合物を添加する事が推奨される。
【0033】
ポリカーボネート樹脂は透明性の優れた有機高分子化合物であり、通常、ビスフェノール−Aとホスゲンとの重縮合体を指しているが、ビスフェノール−Aと共に4,4’−ビフェノール、ビスフェノール−Fまたは3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、さらに末端基として、フェノール、p−ターシャリブチルフェノール、p−クミルフェノールまたはp−フェニルフェノールなどが共重合されていてもよい。ポリカーボネート樹脂は他の有機りん化合物が難燃剤として効果的な有機高分子化合物の一つではあるが、他の有機りん化合物と一般式1とを同時に使用すればその相乗効果によって、難燃剤の添加量が減少できるので、樹脂の熱的および機械的な強度の低下が軽減される。
【0034】
ポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイはABS樹脂単独での難燃化の困難性を回避する目的で多く利用されている。ポリカーボネート樹脂と同様に一般式1および他の有機りん化合物が添加されてよい。
【0035】
これらの有機高分子化合物には、一般式1を主成分とする難燃剤および必要ならば他の有機りん化合物を添加し、さらに可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、発泡剤または無機充填剤などを添加する事が出来る。可塑剤としては、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルまたは高分子量エステル類などのカルボン酸エステル類、りん酸エステル類またはスルホンアミド類が使用される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系またはりん系のものが使用される。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系のものが使用される。帯電防止剤、着色剤、滑剤、または発泡剤は一般市販のものが使用されてよい。無機充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、無水珪酸、クレイ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化アンチモンなどが使用される。なお、無機充填剤が20重量%以上添加されれば、有機高分子組成物の耐熱性と難燃性が向上する事が知られている。とりわけ、他の有機りん化合物、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムは一般式1と同時に添加使用される時に相乗効果が見られ、高度の難燃効果が発現されるので本発明では重要な添加剤である。
【実施例】
【0036】
次に本発明をさらに明確にするために、具体的な実施例、比較例および参考例を挙げて説明する。なお、例中、「%」は重量%を「部」は重量部を表すものとする。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1−1)(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドの製造)
かきまぜ機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよびガス吹き込み口の付いた内容積2,000mlの硬質ガラス製五つ口フラスコに9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド324.3g(1.5モル)およびクロロベンゼン1,000gを仕込んだ。ガス吹き込み口から窒素ガスを吹き込みながらフラスコを加熱して、内容物の温度を100℃まで上昇させた。内容物が融解したので、強くかきまぜながら内容物の温度を80℃まで冷却した。ここで、滴下ロートから臭素239.7g(1.5モル)をゆっくり滴下した。反応は発熱であり、フラスコを冷却して内容物の温度を70〜80℃に保った。反応により発生した臭化水素は還流冷却器の上部から外部に誘導して処理した。滴下終了と同時に反応は終了した。ここで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドのクロロベンゼン溶液が調製された。
【0038】
(実施例1−2)(「10−アニリノ」の製造)
かきまぜ機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよびガス吹き込み口の付いた内容積10,000mlの硬質ガラス製五つ口フラスコにアニリン158g(1.7モル)、トリエチルアミン152g(1.5モル)およびトルエン4,000gを仕込んだ。ガス吹き込み口から窒素ガスを吹き込みながら、滴下ロートから実施例1−1で得られ、保温しておいた9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドのクロロベンゼン溶液を滴下した。滴下は70℃で3時間を要した。滴下終了後1時間70℃に保った。これに水1,000gを加え、80℃で30分間かきまぜ、30分間静置した。水層を除去して、さらに水1,000gを加え、80℃で30分間かきまぜ、30分間静置して水層を除去した。この操作をもう一度繰り返してから、還流冷却器の下部に水分離器を取り付けて、フラスコを加熱しトルエンと共沸する水を除去し、さらにトルエン3,500gを除去した。これを熱時濾過してから0℃まで冷却して結晶を析出させた。結晶を濾過して冷却したトルエン600gで洗浄し、乾燥した。融点が206℃の白色結晶410gが得られた。結晶は液体クロマトグラム(LC)分析で純度が99%である事が知られた。この赤外吸収スペクトル(IR)は図1、1H NMRは図2の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が70.41%(理論値:70.36%)、水素が4.58%(理論値:4.592%)、窒素が4.57%(理論値:4.559%)そしてりんが10.10%(理論値:10.08%)であり、これが「10−アニリノ」である事が確認された。
【0039】
(実施例2){「10−(N−メチルアニリノ)」の製造}
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をN−メチルアニリン182g(1.7モル)に代えた以外は実施例1−2と全く同様にして、融点が173℃の白色結晶400gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図3、1H NMRは図4の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が71.0%(理論値:71.02%)、水素が5.03%(理論値:5.020%)、窒素が4.38%(理論値:4.360%)そしてりんが9.65%(理論値:9.639%)であり、これが「10−(N−メチルアニリノ)」である事が確認された。
【0040】
(実施例3){「10−(N−エチルアニリノ)」の製造}
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をN−エチルアニリン206g(1.7モル)に代えた以外は実施例1−2と全く同様にして、融点が82℃の白色結晶380gが得られた。ただし、結晶化に際しては溶液の温度を−10℃にまで冷却した。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図5、1H NMRは図6の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が71.65%(理論値:71.63%)、水素が5.42%(理論値:5.409%)、窒素が4.17%(理論値:4.178%)そしてりんが9.23%(理論値:9.236%)であり、これが「10−(N−エチルアニリノ)」である事が確認された。
【0041】
(実施例4)(「10−ジフェニルアミノ」の製造)
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をジフェニルアミン271g(1.6モル)に代えた以外は実施例1−2と同様にして、融点が147℃の白色結晶490gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。また、IRは図7、1H NMRは図8の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が75.3%(理論値:75.19%)、水素が4.75%(理論値:4.732%)、窒素が3.63%(理論値:3.654%)そしてりんが8.11%(理論値:8.08%)であり、これらの分析結果から、これが「10−ジフェニルアミノ」である事が確認された。
【0042】
(実施例5)(「10−カルバゾリル」の製造)
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をカルバゾール267.6g(1.6モル)に代えた以外は実施例1−2と同様にして、融点が205℃の白色結晶520gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図9、1H NMRは図10の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が75.7%(理論値:75.59%)、水素が4.20%(理論値:4.229%)、窒素が3.66%(理論値:3.674%)そしてりんが8.13%(理論値:8.122%)であり、これが「10−カルバゾリル」である事が確認された。
【0043】
(実施例6)(「10−ベンズヒドリル」の製造)
かきまぜ機、温度計、ガス吹き込み口および還流冷却器の付いた内容積3,000mlのガラス製四つ口フラスコに9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド335g(1.55モル)、ベンズヒドリルクロライド304g(1.5モル)およびオルソジクロロベンゼン200gを仕込んだ。ガス吹き込み口から少しずつ窒素ガスを吹き込んだ。フラスコを加熱し、徐々に温度を上げて100℃にした。フラスコ内容物が融解したので、かきまぜ機を動かした。さらに、徐々に内容物の温度を上げた。内容物の温度が170℃に達した頃から還流冷却器上部から塩化水素ガスが流出したので、外部に導いて処理した。さらに、内容物の温度を徐々に上げて210℃に6時間保った。塩化水素ガスの発生が停止し、LC分析の結果、原料のベンズヒドリルクロライドが検出されなくなった。内容物の温度を110℃にして、トルエン1,300gおよび沸騰水500gを添加した。30分かきまぜた後、30分静置して水層を除去した。水500gを加えて、80℃で30分間かきまぜてから30分間静置して水層を除去した。この操作をさらにもう一度繰り返した。これを共沸的に脱水してから、熱時濾過して濾液を徐々に冷却して結晶を析出させた。0℃まで冷却してから濾過し、結晶を冷却したトルエン400gで洗浄した。乾燥した結晶は白色で融点が177℃であり、510gが得られた。LC分析ではこれが99%の純度である事が知られた。これのIRは図11そして1H NMRは図12の通りであり、元素分析の結果は炭素が78.50%(理論値:78.52%)、水素が5.02%(理論値:5.008%)そしてりんが8.11%(理論値:8.100%)であった。これらの分析結果から、これが「10−ベンズヒドリル」である事が確認された。
【0044】
(実施例7−1)
日本国、三井化学社製のポリメチルペンテン(TPX)100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム25部および実施例2で得られた「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、押し出し成形機でUL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0045】
(実施例7−2)
実施例7−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を実施例2で得られた「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例7−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0046】
(比較例1)
実施例7−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をトリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)15部に代えた以外は実施例7−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0047】
(実施例8−1)
市販のポリスチレン100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム25部および「10−(N−メチルアニリノ)」12部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0048】
(実施例8−2)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部を「10−(N−エチルアニリノ)」12部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0049】
(実施例8−3)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部を「10−ジフェニルアミノ」15部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0050】
(比較例2)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部をTPP12部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0051】
(実施例9−1)
日本国、東レ社製のABS樹脂100部にガラス短繊維30部、クレイ20部および「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0052】
(実施例9−2)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0053】
(実施例9−3)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−アニリノ」15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0055】
(実施例10−1)
市販のポリメタクリル酸メチル100部に「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。なお、試験片は透明であった。
【0056】
(実施例10−2)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0057】
(実施例10−3)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−カルバゾリル」15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0058】
(比較例4)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0059】
(実施例11−1)
市販のポリエチレンテレフタレート100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム20部および「10−ジフェニルアミノ」15部を加えて、加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0060】
(実施例11−2)
実施例11−1で使用した「10−ジフェニルアミノ」15部を「10−ベンズヒドリル」15部に代えた以外は実施例4と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0061】
(比較例5)
実施例11−1で使用した「10−ジフェニルアミノ」15部をTPP15部に代えて試験片を作成しようとしたが、ポリエチレンテレフタレートの分子量が著しく低下して、試験片を作成する事が出来なかった。なお、他の有機りん化合物も試みたが同様に試験片は得られなかった。
【0062】
(実施例12−1)
市販のポリブチレンテレフタレート100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム20部および「10−カルバゾリル」15部を加えて、加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0063】
(実施例12−2)
実施例12−1で使用した「10−カルバゾリル」15部を「10−ベンズヒドリル」15部に代えた以外は実施例4と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0064】
(比較例6)
実施例12−1で使用した「10−カルバゾリル」15部をTPP15部に代えた以外は実施例12−1と同様にして、試験片を作成しようとしたが、ポリブチレンテレフタレートの分子量が著しく低下して、試験片を作成する事が出来なかった。
【0065】
(実施例13−1)
日本国、旭化成社製ナイロン−6,6 100部にガラス短繊維30部、クレイ20部および「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0066】
(実施例13−2)
実施例13−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例13−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0067】
(実施例13−3)
日本国、旭化成社製ナイロン−6,6 100部にガラス短繊維30部、クレイ20部、「10−(N−エチルアニリノ)」15部、トリアリルイソシアヌレート3部およびトリエチレングリコール−ビス−3−(3−ターシャリブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート0.03gを加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0068】
(比較例7)
実施例13−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例13−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0069】
(参考例1)
実施例13−3で得られた試験片にコバルト60からのγ−線40kGyの照射を行なった。未処理の試験片は300℃で大きく変形したが、γ−線処理された試験片は300℃でも変形しなかった。なお、燃焼試験の結果はV−0が維持された。
【0070】
(実施例14−1)
市販のポリカーボネート樹脂100部にガラス短繊維30部、クレイ10部、「10−(N−メチルアニリノ)」5部およびTPP3部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0071】
(実施例14−2)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部を「10−(N−エチルアニリノ)」5部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0072】
(実施例14−3)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部を「10−ベンズヒドリル」5部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0073】
(比較例8)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部およびTPP3部をTPP8部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。なお、試験片の耐熱性は実施例14−1に比べて、約15℃低下していた。
【0074】
(実施例15−1)
市販のABS樹脂・ポリカーボネート樹脂ポリマーアロイ100部にガラス短繊維、30部、クレイ10部、「10−(N−メチルアニリノ)」9部を加え、加熱混合して、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0075】
(実施例15−2)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部を「10−(N−エチルアニリノ)」9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0076】
(実施例15−3)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部を「10−アニリノ」9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0077】
(比較例9)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部をTPP9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0078】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1−2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図2】実施例1−2で得られた化合物の1H NMR図である。
【図3】実施例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図4】実施例2で得られた化合物の1H NMR図である。
【図5】実施例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図6】実施例3で得られた化合物の1H NMR図である。
【図7】実施例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図8】実施例4で得られた化合物の1H NMR図である。
【図9】実施例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図10】実施例5で得られた化合物の1H NMR図である。
【図11】実施例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図12】実施例6で得られた化合物の1H NMR図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は有機りん化合物、難燃剤および難燃性有機高分子組成物に関する。さらに詳細には、新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有していて、有機ハロゲン化合物を含有していない難燃性有機高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機高分子化合物の難燃剤としては有機ハロゲン化合物がその大きな難燃効果、適用される有機高分子化合物の範囲の広さ、適用の容易さまたは価格の低廉さなどが魅力的であり、有機ハロゲン化合物は難燃剤として広く有機高分子化合物に適用されてきた。そして、有機ハロゲン化合物としては塩素系または臭素系のものが実用されていて、それぞれ多種類の化合物がその目的に応じて難燃剤として多量に使用されてきた。
【0003】
しかし最近では、有機ハロゲン化合物を難燃剤として含有している有機高分子組成物は火災時に有毒ガスを発生し、人体に対して被害を与える事が問題視されている。さらに、ハロゲン系の難燃剤を含有している高分子組成物はその焼却処分時に焼却炉を腐食する酸性ガスを発生するばかりではなく、環境汚染性の強い有害物質を排出する事などが明らかにされている。故に、難燃剤を使用する業界ではこのようなハロゲン系の難燃剤を使用する事を嫌って、ハロゲン系の難燃剤を他の難燃剤に置換しようとする動きが活発であり、中でも有機りん化合物が最近、特に注目されている。
【0004】
ただし、ハロゲン系の難燃剤が広い範囲の有機高分子化合物に効果的に適用されるのに対して、従来の有機りん化合物が難燃剤として効果的なのはポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂またはセルローズ類などのように燃焼時に比較的に炭化物の生成が容易な有機高分子化合物に限られている。故に、有機りん化合物が難燃剤として有効に機能する事の出来ない多くの有機高分子化合物では依然として、ハロゲン系の難燃剤の他の難燃剤への切り替えが円滑でないのが現状である。
【0005】
有機ハロゲン化合物系難燃剤と有機りん化合物系難燃剤との効果上の差異はそれぞれの難燃化の機構の相違であると理解されている。多くの文献によれば、有機ハロゲン化合物系難燃剤の難燃化機構は火炎すなわち、高温の気相中で生成される安定なハロゲンラジカルによる火炎の消火作用であると説明されていて、一般に支持されている。そして、それが火炎を上げて燃焼する多種類の有機高分子化合物の難燃剤として有効である理由の説明としても理解出来るものである。一方、有機りん化合物系難燃剤の難燃化機構は、りん化合物による有機高分子化合物の炭化促進作用によって燃焼時に表面に生成するりんを含んだ炭化物皮膜による火源の熱エネルギーまたは空気の遮蔽効果であると説明されていて、有機りん化合物系の難燃剤が効果的な有機高分子化合物はいずれもその燃焼時に比較的に炭化物皮膜が生成し易い事実および有機りん化合物自身が燃焼時にりんを含有している表面皮膜を生成し易いもの程難燃効果がより高い事実とはこの説明を良く裏付けている。
【0006】
有機ハロゲン化合物系の難燃剤以外のものでも難燃化の機構が火炎のラジカル的消火作用であると思われる若干の文献が発見される。例えば、特許文献1および特許文献2では有機りん化合物と同時に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが、特許文献3では臭素化合物と共に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが使用されていて、この化合物の火炎中でのラジカル対生成による相乗効果的な難燃性が期待されている。また、特許文献4および特許文献5には9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ベンジル−10−オキサイドの特異的な難燃効果が開示されている。そして、この化合物の特異性は通常の有機りん化合物には見出だせないものであって、他の有機りん化合物が難燃剤として殆ど機能しない非炭化性の有機高分子化合物にも優れた難燃効果が見出だされている。この事は、これが火炎中で生成する9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド−10−イルラジカルとベンジルラジカルとのラジカル対による火炎の消火作用であると推理する事は困難ではない。そして、非特許文献1にはビ−9−フルオレニルの難燃剤としての記述があり、この難燃効果が火炎中で生成される9−フルオレニルラジカルによる消火作用であろうと推理する事も同様に困難ではない。さらに、特許文献6などには発泡ポリスチレンの難燃助剤としてジクミルパーオキサイドまたはクメンハイドロパーオキサイドなどの比較的に高い分解温度を持った有機過酸化物が使用されていて、火炎中で生成するラジカルの相乗的な消火作用が暗示されている。
【0007】
しかしながら、目下、ハロゲンラジカル以外のラジカルによる難燃機構を持った難燃剤の文献例または実用例は極めて少なく、これは今後大いに発展させなければならない技術分野であろうと思われる。
【特許文献1】JP2003−34749A
【特許文献2】JP2004−115763A
【特許文献3】JP2000−1563A
【特許文献4】JP2002−275473A
【特許文献5】JP2004−292495A
【特許文献6】JPH11−130898A
【非特許文献1】Lattimer & Kroenko: J. Polymer Sci.,26,1191(1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は高度の難燃効果を持っている新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有していて、有機ハロゲン化合物を含有しない難燃性有機高分子組成物を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、一般式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【0012】
ここで、置換基を持っていてもよいアニリノ基とはアニリノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、o−アニシジノ基、p−アニシジノ基、o−フェネチジノ基、p−フェネチジノ基、1−ナフチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基またはN−アリルアニリノ基などを指している。
【0013】
一般式1で表される有機りん化合物(以下、一般式1と称する。)の持っている広範囲の有機高分子化合物に対する高度の難燃効果はその化学構造からも予測されるように、火炎中で分裂して生成する安定なラジカル対による消火作用であると考えられる。これはハロゲン化合物の難燃機構と類似している。しかし、ハロゲン分子や過酸化物などのラジカル対への分裂がホモリチック(Homolytic)であり、容易であるのに対して、本発明の有機りん化合物のラジカル対への分裂がヘテロリチック(Heterolytic)であるにも関わらず、その分裂が極めて円滑であるのは分裂によって生成するラジカル対の不対電子が双方に隣接するベンゼン環のπ電子によって安定化されている理由によると考えられる。故に、一般式1はりん原子および分裂の予測される他のラジカル原子すなわちRのラジカル原子が共に少なくとも一つのベンゼン環に結合している事が特徴であり、これが本発明の技術思想でもあり、一般式1の構造を限定している理由でもある。
【0014】
ホモリチックな分裂様式を持った有機過酸化物または若干のアゾ化合物のようにラジカル対に分裂する事の容易な化合物の分裂温度は一般に150℃以下であり、難燃剤として使用するには低すぎる分裂温度である。これに対して、一般式1の場合は安定なラジカル対に分裂する事が出来る化学構造を持った化合物のヘテロリチックな分裂様式であり、そのラジカル対への分裂温度は200℃よりも高く、難燃剤として利用するのには好適である。ちなみに、その分裂の仕方は分裂によって生成する二つのラジカル対が共により安定な程容易であり難燃剤として利用するには好ましい。仮に、一般式1のR位置にあたる基がメチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基であるとして比較した時、これらの分裂によって生成する9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド−10−イルラジカルと対をなすラジカルの安定性はメチル≪ベンジル<ベンズヒドリル<9−フルオレニルの順であり、最も不安定なメチル基の場合はラジカル対への分裂が困難であって、そのラジカル的な難燃効果も殆ど期待されない。一方、ベンズヒドリルラジカルおよび9−フルオレニルラジカルは二つのベンゼン環で安定化されていて、ラジカル対への分裂がより円滑であり、しかもその火炎中での難燃効果はベンジル基の場合よりも高い。これは、ハロゲンラジカルの安定性がF≪Cl<Br<Iの順であり、その難燃効果の大きさもこの順序である事実に相似している。
【0015】
本発明に係る有機りん化合物を主成分とした難燃剤もまた可塑剤、酸化防止剤または紫外線吸収剤などの高分子添加剤と同様に、分子量が小さくて揮発性の大きなものは有機高分子化合物との高温度下での混合または成形工程で揮発して作業環境を汚染するだけではなく、有機高分子組成物の長期に及ぶ使用中に徐々に揮発してその添加効果を次第に減ずるので好ましくない。たとえば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンは火炎中で二個のクミルラジカルに分裂する事が知られているがその分子量が238.37と非常に小さく、難燃効果が充分に発揮される程度の量を有機高分子化合物に添加して高温で混合または成形すればその工程中で多く揮発して、著しく作業環境を不快なものにする。逆に、その分子量があまりにも大きなものは燃焼時にも揮発する事が少なく、従って、火炎中でのラジカル対の生成が少ないので、その添加効果が充分に発揮されず、また好ましくない。
【0016】
有機化合物の揮発性はその分子量だけに依存するものではないが、類似化合物を比較する時にはその分子量を揮発性の目安とする事が出来る。一般式1の内、水素結合を形成しない有機りん化合物は揮発性が大きく、本発明の使用目的には分子量が320〜430の範囲内が最も好ましい。水素結合を形成する化合物の揮発性はそれよりも小さく、分子量が300〜400の範囲内が最も好ましい。ただし、これらの好ましい分子量の範囲は本発明者等の多くの経験から得られた単なる目安に過ぎない。ちなみに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−ベンジル−10−オキサイドは水素結合を形成する事がなく、しかも、その分子量が306.3とやや小さく、混合または成形の工程中で揮発してその特有の不快臭を発する事が知られている。
【0017】
通常の有機りん化合物は有機高分子化合物の燃焼時に炭化物の生成を促進する作用を持っていて、これは若干の有機高分子化合物の難燃剤として有効である。しかし、一般式1は一種の有機りん化合物であるにも関わらず、他の有機りん化合物とは異なっていて、有機高分子化合物に対する燃焼時の炭化促進作用が大きくない。故に、他の有機りん化合物が有効なポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂またはセルローズ類などの比較的に炭化物生成の容易な有機高分子化合物などには本発明の一般式1と共に他の有機りん化合物を添加すれば、ラジカル的な消火作用と炭化促進作用との相乗的な効果が引き出されて、より高い難燃性が与えられる。
【0018】
他の有機りん化合物の内、分子中に一個のりん原子を持っているものとしてはトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルキシリルホスフェート、フェニルジキシリルホスフェート、ジフェニル−o−キセニルホスフェートまたはジフェニルフェニルホスホネートなどが挙げられ、それらは既に公知であって、その製造方法も知られている。分子中に二個以上のりん原子を持っている有機りん化合物はJPH5−1079A、JPH6−306277A、JPH8−277344A、JPH8−301884A、JPH10−45774A、JPH11−343382AまたはJP2004−115763Aなどに記述があり、その製造方法も明らかにされている。本発明に相乗効果を与える目的で、特に好適に利用される他の有機りん化合物は分子中に二個のりん原子を持っているものである。
【0019】
本発明の難燃剤が適用される有機高分子化合物は広範囲にわたっていて、ポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体(MBS樹脂)、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレングラフト重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイ、ポリアミド類、ポリウレタン類、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはセルローズ類などが挙げられ、特にポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド類、ポリカーボネート樹脂、またはポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイなど、従来の有機りん化合物系難燃剤では難燃効果の比較的に小さな有機高分子化合物への適用は本発明の効果が最も特徴的なものである。
【0020】
本発明に係る難燃性有機高分子化合物は主としてフィルムまたは押出し成形品として実用に供される事が多い。通常、有機高分子化合物と難燃剤とは溶融混合してフィルムまたは押出し成形品とされる。ポリエチレンテレフタレートおよびポリアミド類はフィルムまたは成形品として実用される事もあるが、繊維として織物などに実用される事も多い。難燃性繊維の製造方法としては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリアミド類に難燃剤ほ溶融混合してから、紡糸する方法と、とりわけポリエチレンテレフタレートでは難燃剤を含有していない繊維または織物を難燃剤を含有する溶液または水系エマルジョンで処理してから、100℃以上で加熱処理を施して難燃剤を繊維内部に固定し、難燃性の繊維または織物を製造する方法との二つを採用する事が出来る。また、ポリスチレンは一般の成形品の他に発泡ポリスチレンとして利用される事も多い。難燃性発泡ポリスチレンの製造方法としてはJPH4−137276Aに示されているように、ポリスチレンの水懸濁液に発泡剤と難燃剤の微粒子を加えてポリスチレン粒子にこれらを含浸させ、さらに幾つかの工程を経て難燃製品を得る方法などが採用されていて、本発明においてもこの方法が利用される。
【0021】
通常、一般式1を難燃剤として有機高分子化合物に添加する時、その添加量は0.5ないし25重量%、より好ましくは1ないし20重量%そして最も好ましくは2ないし15重量%である。一般式1と同時に使用される他の有機りん化合物は任意に添加する事も出来るが、必要ならば2ないし15重量%、さらに好ましくは3ないし14重量%そして最も好ましくは5ないし12重量%が添加される。前者の添加量が0.5重量%以下では充分な難燃効果またはその相乗効果は得られず、25重量%以上でもそれ以上の効果が得られないばかりでなく、添加によって有機高分子組成物の物理的な性質が低下するので好ましくない。また、後者の添加量が2重量%以下では、前者との充分な相乗効果が期待されず、15重量%以上でも相乗効果のそれ以上の向上は期待されない。
【発明の効果】
【0022】
各実施例および比較例から明らかなように、本発明に係る難燃剤および難燃性有機高分子化合物はハロゲンを全く含有しないで、優れた難燃効果を持っている事が明らかにされ、かつ、それが工業的な規模で容易に実施される事が証明された。なお、実施例13−3および参考例1によってポリアミドとトリアリルイソシアヌレートとは一般式1の存在下に放射線処理によって架橋構造を形成して、その耐熱性が向上する結果が示され、工業的な価値が示唆された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
一般式1はその製造方法の点で二つの形式に分けられる。
【0024】
その一つは窒素原子を持った有機りん化合物であって、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの10位の置換基すなわち、一般式1におけるRが、置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、またはフェノチアジノ基であるものが例示される。これらは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ハロゲノ−10−オキサイドと置換基を持っていてもよいアニリン、インドール、インドリン、ジフェニルアミン、カルバゾールまたはフェノチアジンとを塩基の存在下または不存在下に縮合反応を行なわせて製造される。ここで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ハロゲノ−10−オキサイドは9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドとハロゲン元素との反応または9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの前駆体である9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−クロライドの酸化反応によって調製する事が出来る。特に、後者の方法は調製工程が簡単であり工業的には前者よりも有利である。上記の方法で製造される一般式1としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−アニリノ−10−オキサイド(以下、「10−アニリノ」と称する。)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(N−メチルアニリノ)−10−オキサイド{以下、「10−(N−メチルアニリノ)」と称する。}、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(N−エチルアニリノ)−10−オキサイド{以下、「10−(N−エチルアニリノ)」と称する。}、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ジフェニルアミノ−10−オキサイド(以下、「10−ジフェニルアミノ」と称する。)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−カルバゾリル−10−オキサイド(以下、「10−カルバゾリル」と称する。)などが例示される。
【0025】
他の一つは窒素原子を持たない有機りん化合物であって、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドの10位の置換基がベンズヒドリル基または9−フレオニル基であるものが例示される。これらは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドとベンズヒドリルハロゲナイドまたは9−ハロゲノフルオレンとを直接に脱ハロゲン化水素縮合反応を行なわせて製造される。以上の方法で調製される一般式1としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ベンズヒドリル−10−オキサイド(以下、「10−ベンズヒドリル」と称する。)および9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−(9−フルオレニル)−10−オキサイド{以下、「10−(9−フルオレニル)」と称する。}とが例示される。
【0026】
一般式1の難燃剤としての適用が好ましい有機高分子化合物は既に記述した通りであり、さらに一般式1の適用が最も好ましい有機高分子化合物も既に記述したように、ポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド類、ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイなどである。これらはすべてが熱可塑性の有機高分子化合物であり、燃焼時に滴下(Drip)を生じ易い。この好ましくない滴下を防止する方法としては、炭素繊維またはガラス繊維などの添加が推奨される。
【0027】
ポリオレフィン類としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンまたはポリメチルペンテンなどが挙げられる。これらのポリオレフィン類には一般式1と共に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはクレイのような無機化合物を添加すればより高い難燃効果が得られるので好ましい。
【0028】
ポリスチレンとしてはスチレンホモポリマーとポリブタジエンに対するスチレンのグラフト重合体(ハイインパクトポリスチレン)とが含まれる。これらには「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」、「10−カルバゾリル」または「10−ベンズヒドリル」などの添加が効果的である。また、発泡ポリスチレンにおいては「10−(N−メチルアニリノ)」または「10−(N−エチルアニリノ)」が低融点であり、それらの添加が処理工程上、最も円滑であり且つ効果的である。
【0029】
一般にABS樹脂と称されるのは、基本的にはブタジエン、アクリロニトリルおよびスチレンの重合体から構成されていて、その製造方法および構成モノマーの比率によって多種類のものが製造されている。ABS樹脂には一般式1のすべてが好適に使用されるが、特に、「10−アニリノ」、「10−(N−メチルアニリノ)」または「10−(N−エチルアニリノ)」の添加が最も高い難燃効果が得られる。また、高温での混合または成形時にABS樹脂のゲル成分が増加する事があるが、これを嫌う場合には少量のヒンダードフェノール系重合防止剤の添加が推奨される。
【0030】
ポリメタクリル酸メチルは高い軟化点と優れた透明性を持った有機高分子化合物であり、アクリルグラスと称されて、構造材料として広く利用されている。そしてこれは他の有機りん化合物による難燃化の困難な有機高分子化合物の一つである。一般式1の内、「10−アニリノ」を除いたすべてが、その高軟化点と高透明性を害する事がなくて、好適に使用される。また、透明性の犠牲が可能ならば、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムとの共用は相乗効果が期待される。
【0031】
ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとはテレフタル酸とエチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールとの重縮合体であって、成形品、フィルム製品または繊維製品として広く利用されている。ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートの成形品、フィルム製品または繊維製品には一般式1を溶融状態で混合する事が出来る。この時には「10−ベンズヒドリル」または「10−(9−フルオレニル)」の添加が推奨される。また、繊維製品においては難燃剤の添加を先に説明したように、その溶液または水懸濁液で処理する方法を施して行なう事ができる。この方法に適した一般式1としては、「10−アニリノ」、「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」または「10−ベンズヒドリル」などが挙げられる。
【0032】
ポリアミド類としては、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−11、ナイロン−12、共重合ナイロン、ナイロン−MXD,6またはナイロン−4,6などが例示される。一般式1の内、ポリアミド類への添加が好ましいものとしては、「10−(N−メチルアニリノ)」、「10−(N−エチルアニリノ)」、「10−ジフェニルアミノ」、「10−カルバゾリル」または「10−ベンズヒドリル」などが挙げられ、同時に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはクレイなどの無機化合物を添加する事が推奨される。
【0033】
ポリカーボネート樹脂は透明性の優れた有機高分子化合物であり、通常、ビスフェノール−Aとホスゲンとの重縮合体を指しているが、ビスフェノール−Aと共に4,4’−ビフェノール、ビスフェノール−Fまたは3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、さらに末端基として、フェノール、p−ターシャリブチルフェノール、p−クミルフェノールまたはp−フェニルフェノールなどが共重合されていてもよい。ポリカーボネート樹脂は他の有機りん化合物が難燃剤として効果的な有機高分子化合物の一つではあるが、他の有機りん化合物と一般式1とを同時に使用すればその相乗効果によって、難燃剤の添加量が減少できるので、樹脂の熱的および機械的な強度の低下が軽減される。
【0034】
ポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイはABS樹脂単独での難燃化の困難性を回避する目的で多く利用されている。ポリカーボネート樹脂と同様に一般式1および他の有機りん化合物が添加されてよい。
【0035】
これらの有機高分子化合物には、一般式1を主成分とする難燃剤および必要ならば他の有機りん化合物を添加し、さらに可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、発泡剤または無機充填剤などを添加する事が出来る。可塑剤としては、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルまたは高分子量エステル類などのカルボン酸エステル類、りん酸エステル類またはスルホンアミド類が使用される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系またはりん系のものが使用される。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系のものが使用される。帯電防止剤、着色剤、滑剤、または発泡剤は一般市販のものが使用されてよい。無機充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、無水珪酸、クレイ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズまたは酸化アンチモンなどが使用される。なお、無機充填剤が20重量%以上添加されれば、有機高分子組成物の耐熱性と難燃性が向上する事が知られている。とりわけ、他の有機りん化合物、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムは一般式1と同時に添加使用される時に相乗効果が見られ、高度の難燃効果が発現されるので本発明では重要な添加剤である。
【実施例】
【0036】
次に本発明をさらに明確にするために、具体的な実施例、比較例および参考例を挙げて説明する。なお、例中、「%」は重量%を「部」は重量部を表すものとする。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1−1)(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドの製造)
かきまぜ機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよびガス吹き込み口の付いた内容積2,000mlの硬質ガラス製五つ口フラスコに9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド324.3g(1.5モル)およびクロロベンゼン1,000gを仕込んだ。ガス吹き込み口から窒素ガスを吹き込みながらフラスコを加熱して、内容物の温度を100℃まで上昇させた。内容物が融解したので、強くかきまぜながら内容物の温度を80℃まで冷却した。ここで、滴下ロートから臭素239.7g(1.5モル)をゆっくり滴下した。反応は発熱であり、フラスコを冷却して内容物の温度を70〜80℃に保った。反応により発生した臭化水素は還流冷却器の上部から外部に誘導して処理した。滴下終了と同時に反応は終了した。ここで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドのクロロベンゼン溶液が調製された。
【0038】
(実施例1−2)(「10−アニリノ」の製造)
かきまぜ機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよびガス吹き込み口の付いた内容積10,000mlの硬質ガラス製五つ口フラスコにアニリン158g(1.7モル)、トリエチルアミン152g(1.5モル)およびトルエン4,000gを仕込んだ。ガス吹き込み口から窒素ガスを吹き込みながら、滴下ロートから実施例1−1で得られ、保温しておいた9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−ブロモ−10−オキサイドのクロロベンゼン溶液を滴下した。滴下は70℃で3時間を要した。滴下終了後1時間70℃に保った。これに水1,000gを加え、80℃で30分間かきまぜ、30分間静置した。水層を除去して、さらに水1,000gを加え、80℃で30分間かきまぜ、30分間静置して水層を除去した。この操作をもう一度繰り返してから、還流冷却器の下部に水分離器を取り付けて、フラスコを加熱しトルエンと共沸する水を除去し、さらにトルエン3,500gを除去した。これを熱時濾過してから0℃まで冷却して結晶を析出させた。結晶を濾過して冷却したトルエン600gで洗浄し、乾燥した。融点が206℃の白色結晶410gが得られた。結晶は液体クロマトグラム(LC)分析で純度が99%である事が知られた。この赤外吸収スペクトル(IR)は図1、1H NMRは図2の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が70.41%(理論値:70.36%)、水素が4.58%(理論値:4.592%)、窒素が4.57%(理論値:4.559%)そしてりんが10.10%(理論値:10.08%)であり、これが「10−アニリノ」である事が確認された。
【0039】
(実施例2){「10−(N−メチルアニリノ)」の製造}
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をN−メチルアニリン182g(1.7モル)に代えた以外は実施例1−2と全く同様にして、融点が173℃の白色結晶400gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図3、1H NMRは図4の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が71.0%(理論値:71.02%)、水素が5.03%(理論値:5.020%)、窒素が4.38%(理論値:4.360%)そしてりんが9.65%(理論値:9.639%)であり、これが「10−(N−メチルアニリノ)」である事が確認された。
【0040】
(実施例3){「10−(N−エチルアニリノ)」の製造}
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をN−エチルアニリン206g(1.7モル)に代えた以外は実施例1−2と全く同様にして、融点が82℃の白色結晶380gが得られた。ただし、結晶化に際しては溶液の温度を−10℃にまで冷却した。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図5、1H NMRは図6の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が71.65%(理論値:71.63%)、水素が5.42%(理論値:5.409%)、窒素が4.17%(理論値:4.178%)そしてりんが9.23%(理論値:9.236%)であり、これが「10−(N−エチルアニリノ)」である事が確認された。
【0041】
(実施例4)(「10−ジフェニルアミノ」の製造)
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をジフェニルアミン271g(1.6モル)に代えた以外は実施例1−2と同様にして、融点が147℃の白色結晶490gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。また、IRは図7、1H NMRは図8の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が75.3%(理論値:75.19%)、水素が4.75%(理論値:4.732%)、窒素が3.63%(理論値:3.654%)そしてりんが8.11%(理論値:8.08%)であり、これらの分析結果から、これが「10−ジフェニルアミノ」である事が確認された。
【0042】
(実施例5)(「10−カルバゾリル」の製造)
実施例1−2で使用したアニリン158g(1.7モル)をカルバゾール267.6g(1.6モル)に代えた以外は実施例1−2と同様にして、融点が205℃の白色結晶520gが得られた。結晶はLC分析で99%である事が知られた。このIRは図9、1H NMRは図10の通りであった。なお、元素分析の結果は炭素が75.7%(理論値:75.59%)、水素が4.20%(理論値:4.229%)、窒素が3.66%(理論値:3.674%)そしてりんが8.13%(理論値:8.122%)であり、これが「10−カルバゾリル」である事が確認された。
【0043】
(実施例6)(「10−ベンズヒドリル」の製造)
かきまぜ機、温度計、ガス吹き込み口および還流冷却器の付いた内容積3,000mlのガラス製四つ口フラスコに9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド335g(1.55モル)、ベンズヒドリルクロライド304g(1.5モル)およびオルソジクロロベンゼン200gを仕込んだ。ガス吹き込み口から少しずつ窒素ガスを吹き込んだ。フラスコを加熱し、徐々に温度を上げて100℃にした。フラスコ内容物が融解したので、かきまぜ機を動かした。さらに、徐々に内容物の温度を上げた。内容物の温度が170℃に達した頃から還流冷却器上部から塩化水素ガスが流出したので、外部に導いて処理した。さらに、内容物の温度を徐々に上げて210℃に6時間保った。塩化水素ガスの発生が停止し、LC分析の結果、原料のベンズヒドリルクロライドが検出されなくなった。内容物の温度を110℃にして、トルエン1,300gおよび沸騰水500gを添加した。30分かきまぜた後、30分静置して水層を除去した。水500gを加えて、80℃で30分間かきまぜてから30分間静置して水層を除去した。この操作をさらにもう一度繰り返した。これを共沸的に脱水してから、熱時濾過して濾液を徐々に冷却して結晶を析出させた。0℃まで冷却してから濾過し、結晶を冷却したトルエン400gで洗浄した。乾燥した結晶は白色で融点が177℃であり、510gが得られた。LC分析ではこれが99%の純度である事が知られた。これのIRは図11そして1H NMRは図12の通りであり、元素分析の結果は炭素が78.50%(理論値:78.52%)、水素が5.02%(理論値:5.008%)そしてりんが8.11%(理論値:8.100%)であった。これらの分析結果から、これが「10−ベンズヒドリル」である事が確認された。
【0044】
(実施例7−1)
日本国、三井化学社製のポリメチルペンテン(TPX)100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム25部および実施例2で得られた「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、押し出し成形機でUL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0045】
(実施例7−2)
実施例7−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を実施例2で得られた「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例7−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0046】
(比較例1)
実施例7−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をトリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)15部に代えた以外は実施例7−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0047】
(実施例8−1)
市販のポリスチレン100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム25部および「10−(N−メチルアニリノ)」12部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0048】
(実施例8−2)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部を「10−(N−エチルアニリノ)」12部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0049】
(実施例8−3)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部を「10−ジフェニルアミノ」15部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0050】
(比較例2)
実施例8−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」12部をTPP12部に代えた以外は実施例8−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0051】
(実施例9−1)
日本国、東レ社製のABS樹脂100部にガラス短繊維30部、クレイ20部および「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0052】
(実施例9−2)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0053】
(実施例9−3)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−アニリノ」15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例9−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例9−1と同様にして試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0055】
(実施例10−1)
市販のポリメタクリル酸メチル100部に「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。なお、試験片は透明であった。
【0056】
(実施例10−2)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0057】
(実施例10−3)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−カルバゾリル」15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0058】
(比較例4)
実施例10−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例10−1と同様にして透明な試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0059】
(実施例11−1)
市販のポリエチレンテレフタレート100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム20部および「10−ジフェニルアミノ」15部を加えて、加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0060】
(実施例11−2)
実施例11−1で使用した「10−ジフェニルアミノ」15部を「10−ベンズヒドリル」15部に代えた以外は実施例4と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0061】
(比較例5)
実施例11−1で使用した「10−ジフェニルアミノ」15部をTPP15部に代えて試験片を作成しようとしたが、ポリエチレンテレフタレートの分子量が著しく低下して、試験片を作成する事が出来なかった。なお、他の有機りん化合物も試みたが同様に試験片は得られなかった。
【0062】
(実施例12−1)
市販のポリブチレンテレフタレート100部にガラス短繊維30部、水酸化マグネシウム20部および「10−カルバゾリル」15部を加えて、加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0063】
(実施例12−2)
実施例12−1で使用した「10−カルバゾリル」15部を「10−ベンズヒドリル」15部に代えた以外は実施例4と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0064】
(比較例6)
実施例12−1で使用した「10−カルバゾリル」15部をTPP15部に代えた以外は実施例12−1と同様にして、試験片を作成しようとしたが、ポリブチレンテレフタレートの分子量が著しく低下して、試験片を作成する事が出来なかった。
【0065】
(実施例13−1)
日本国、旭化成社製ナイロン−6,6 100部にガラス短繊維30部、クレイ20部および「10−(N−メチルアニリノ)」15部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0066】
(実施例13−2)
実施例13−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部を「10−(N−エチルアニリノ)」15部に代えた以外は実施例13−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0067】
(実施例13−3)
日本国、旭化成社製ナイロン−6,6 100部にガラス短繊維30部、クレイ20部、「10−(N−エチルアニリノ)」15部、トリアリルイソシアヌレート3部およびトリエチレングリコール−ビス−3−(3−ターシャリブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート0.03gを加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0068】
(比較例7)
実施例13−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」15部をTPP15部に代えた以外は実施例13−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0069】
(参考例1)
実施例13−3で得られた試験片にコバルト60からのγ−線40kGyの照射を行なった。未処理の試験片は300℃で大きく変形したが、γ−線処理された試験片は300℃でも変形しなかった。なお、燃焼試験の結果はV−0が維持された。
【0070】
(実施例14−1)
市販のポリカーボネート樹脂100部にガラス短繊維30部、クレイ10部、「10−(N−メチルアニリノ)」5部およびTPP3部を加えて加熱混合し、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0071】
(実施例14−2)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部を「10−(N−エチルアニリノ)」5部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0072】
(実施例14−3)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部を「10−ベンズヒドリル」5部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0073】
(比較例8)
実施例14−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」5部およびTPP3部をTPP8部に代えた以外は実施例14−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。なお、試験片の耐熱性は実施例14−1に比べて、約15℃低下していた。
【0074】
(実施例15−1)
市販のABS樹脂・ポリカーボネート樹脂ポリマーアロイ100部にガラス短繊維、30部、クレイ10部、「10−(N−メチルアニリノ)」9部を加え、加熱混合して、UL−94の燃焼試験規格に合致する厚さ1/16インチの試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0075】
(実施例15−2)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部を「10−(N−エチルアニリノ)」9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0076】
(実施例15−3)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部を「10−アニリノ」9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0077】
(比較例9)
実施例15−1で使用した「10−(N−メチルアニリノ)」9部をTPP9部に代えた以外は実施例15−1と同様にして、試験片を作成した。燃焼試験の結果を表−1に示す。
【0078】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1−2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図2】実施例1−2で得られた化合物の1H NMR図である。
【図3】実施例2で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図4】実施例2で得られた化合物の1H NMR図である。
【図5】実施例3で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図6】実施例3で得られた化合物の1H NMR図である。
【図7】実施例4で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図8】実施例4で得られた化合物の1H NMR図である。
【図9】実施例5で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図10】実施例5で得られた化合物の1H NMR図である。
【図11】実施例6で得られた化合物の赤外吸収スペクトル(IR)図である。
【図12】実施例6で得られた化合物の1H NMR図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1で表される事を特徴とする有機りん化合物。
【化1】
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【請求項2】
一般式1においてRがアニリノ基、N−メチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基またはベンズヒドリル基である事を特徴とする有機りん化合物。
【請求項3】
一般式1で表される有機りん化合物の一種以上を主成分とする事を特徴とする難燃剤。
【請求項4】
有機高分子化合物が一般式1で表される有機りん化合物を0.5ないし25重量%含有している事を特徴とする難燃性有機高分子組成物。
【請求項5】
有機高分子化合物がポリオレフィン類である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項6】
有機高分子化合物がポリスチレンである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項7】
有機高分子化合物がABS樹脂である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項8】
有機高分子化合物がポリメタクル酸メチルである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項9】
有機高分子化合物がポリエチレンテレフタレートである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項10】
有機高分子化合物がポリブチレンテレフタレートである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項11】
有機高分子化合物がポリアミド類である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項12】
有機高分子化合物がポリカーボネート樹脂である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項13】
有機高分子化合物がポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項1】
一般式1で表される事を特徴とする有機りん化合物。
【化1】
(式1中、Rは置換基を持っていてもよいアニリノ基、インドリル基、インドリニル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、フェノチアジノ基、ベンズヒドリル基または9−フルオレニル基を示す。)
【請求項2】
一般式1においてRがアニリノ基、N−メチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基またはベンズヒドリル基である事を特徴とする有機りん化合物。
【請求項3】
一般式1で表される有機りん化合物の一種以上を主成分とする事を特徴とする難燃剤。
【請求項4】
有機高分子化合物が一般式1で表される有機りん化合物を0.5ないし25重量%含有している事を特徴とする難燃性有機高分子組成物。
【請求項5】
有機高分子化合物がポリオレフィン類である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項6】
有機高分子化合物がポリスチレンである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項7】
有機高分子化合物がABS樹脂である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項8】
有機高分子化合物がポリメタクル酸メチルである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項9】
有機高分子化合物がポリエチレンテレフタレートである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項10】
有機高分子化合物がポリブチレンテレフタレートである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項11】
有機高分子化合物がポリアミド類である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項12】
有機高分子化合物がポリカーボネート樹脂である請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【請求項13】
有機高分子化合物がポリカーボネート樹脂・ABS樹脂ポリマーアロイである請求項4に記載の難燃性有機高分子組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−91606(P2007−91606A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280258(P2005−280258)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(504233720)松原産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(504233720)松原産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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