説明

有機エレクトロルミネッセンスデバイス用材料

本発明は、一般式I又はIIの遷移金属錯体、特には誘起電子デバイスにおける発光体分子としての遷移金属錯体、本発明の化合物を含んだ層及び電子デバイス、並びに本発明の化合物の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、一般式I又はIIの遷移金属錯体、特には有機電子デバイスにおける発光体分子としての遷移金属錯体、本発明に係る化合物を含んだ層及び電子デバイス、並びに本発明に係る化合物を調製するためのプロセスに関する。
【0002】
キレート錯体及び有機金属化合物は、最も広義には電子産業であるとされ得る様々なタイプの多くの応用において、機能性材料として使用される。有機構成要素に基づいた有機エレクトロルミネッセンスデバイス(その構造の一般的な記述については、US 4,539,507及びUS 5,151,629を参照のこと)及びその個々の構成要素である有機発光ダイオード(OLED)の場合、市場導入は既に行われている。既に達成されている成功にも拘らず、ここでは、更なる改良が未だに望まれている。
【0003】
近年、蛍光の代わりに燐光を示す有機金属錯体が益々検討されている(M. A. Baldo, S. Lamansky, P. E. Burrows, M. E. Thompson, S. R. Forrest, Appl. Phys. Lett., 1999, 75, 4-6)。燐光発光体としての有機金属化合物を使用すると、スピン統計理論的な理由で、エネルギー及び出力効率を4倍まで増加させることが可能である。実用のためにここで言及すべき主な条件は、特には、長い動作寿命、熱応力に対する高い安定性、並びにモバイル用途を促進するための低い使用及び動作電圧である。
【0004】
知られている金属錯体の類は、各材料の個々の特定の弱点に加え、以下に簡単に記載する一般的な弱点を有している。
【0005】
・知られている金属錯体の多くは、熱安定性が低い(R. G. Charles, J. Inorg. Nucl. Chem., 1963, 25, 45)を参照のこと)。真空蒸着では、これは、不可避的に有機熱分解生成物の遊離を常にもたらし、これは、或る場合には、少量であったとしてもOLEDの動作寿命を相当に短くする。
【0006】
・固体における錯体単位の強い相互作用は、特に白金(II)などのd8金属の平面錯体の場合、そのドーピングの程度が約0.1%を超えると、発光体層における錯体単位の凝集を更に生じさせる。これは、現在の先行技術に従う場合である。この凝集は、(光学的な又は電気的な)励起時に所謂エキシマ又はエキシプレックスの形成をもたらす。これら凝集体は、定まった形を持たないブロードな発光帯をしばしば有し、これは、純粋な原色(RGB)の発生を相当に困難にするか又は完全に不可能とする。一般に、この遷移についての効率も低下する。
【0007】
・加えて、発光色が、ドーピングの程度、即ち、特に大量製造プラントにおいては相当な技術的努力によってのみ正確に制御可能なパラメータに強く依存することは、上記から明らかである。
【0008】
OLED技術では、中心金属が2つの芳香族N原子及び2つのC原子を介して(WO 2004/108857、WO 2005/042550、WO 2005/042444、US 2006/0134461 A1)、又は2つのイミン様N原子及び2つのフェノール性O原子を介して(WO 2004/108857)、又は2つの芳香族N原子及び2つの塩基性N原子を介して(WO 2004/108857)結合した10族の遷移金属(Ni、Pd、Pt)の金属錯体が知られている。これら公知の化合物は、とりわけ、電磁スペクトルの青、赤及び緑色域におけるエレクトロルミネッセンスを有している。
【0009】
それにも拘らず、上述した不利益を有しておらず、好ましくは電磁スペクトルの青、赤及び緑色域においてエレクトロルミネッセンスを示し、特には発光層として純粋な形態で用いられ得る更なる化合物への要求が未だにある。
それ故、本発明の目的は、このタイプの化合物を提供することにある。
【0010】
驚くべきことに、芳香族C原子と組み合わされたイミン様N原子を又は芳香族N原子と組み合わされたオレフィンC原子を含んだ錯体は、OLEDにおける燐光発光体として長い動作寿命を達成し、これら配位子を橋架けすることにより、熱応力に対する高い安定性と低い使用及び動作電圧とを達成することが見出されている。
本発明は、この点において、一般式Iの化合物を提供する。
【化1】

【0011】
ここで、
Mは+2の酸化状態にある金属イオンであり、
Arは、あらゆる所望のタイプの1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、複数の前記環システムArは任意に一重結合又はあらゆる所望のラジカルRによって互いに結合していてもよく、
Yは、C、N又はPであって、出現毎に同一であるか異なっており、但し、2つのC原子及び2つのN原子又は2つのC原子及び2つのP原子のどちらかが常に前記金属と結合しており、
Xは、B(R1)、C(R12、Si(R12、C=O、C=NR1、C=C(R12、O、S、S=O、SO2、N(R1)、P(R1)及びP(=O)R1から選ばれる2価の基若しくはそれらの組み合わせであるか、又は1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであるか、又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、あらゆる所望のラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、
nは、0又は1であって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、n=0については、関与しているXの代わりに水素又はラジカルR又はArが結合している。
【0012】
更に、本発明は、一般式IIの化合物を提供する。
【化2】

【0013】
ここで、
Mは+2の酸化状態にある金属イオンであり、
Arは、あらゆる所望のタイプの1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、複数の前記環システムArは任意に一重結合又はあらゆる所望のラジカルRによって互いに結合していてもよく、
Yは、C、N又はPであって、出現毎に同一であるか異なっており、但し、2つのC原子及び2つのN原子又は2つのC原子及び2つのP原子のどちらかが常に前記金属と結合しており、
Xは、B(R1)、C(R12、Si(R12、C=O、C=NR1、C=C(R12、O、S、S=O、SO2、N(R1)、P(R1)及びP(=O)R1から選ばれる2価の基若しくはそれらの組み合わせであるか、又は5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであって、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環若しくは芳香族複素環システムであるか、又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、あらゆる所望のラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、
nは、0又は1であって、出現毎に同一であるか異なており、ここで、n=0については、関与しているXの代わりに水素又はラジカルR又はArが結合している。
【0014】
本発明の好ましい態様では、一般式I又はIIの化合物において、
Arは、あらゆる所望のタイプの1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、複数の前記環システムArは任意に一重結合又はあらゆる所望のラジカルRによって互いに結合していてもよく、
Xは、
【化3】

【0015】
から選ばれる2価の基若しくはそれらの組み合わせであるか、又は
【化4】

【0016】
から選ばれ、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環若しくは芳香族複素環システムであるか、又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Rは、D、F、Cl、Br、I、N(Ar12、N(R22、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、C(=O)Ar1、C(=O)R2、P(=O)(Ar12、P(=O)(R22、S(=O)Ar1、S(=O)R2、S(=O)2Ar1、S(=O)22、CR2=CR2Ar1、OSO22、各々は1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよく、1つ以上の非隣接CH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S若しくはCONR2によって置換されていてもよく、1つ以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNO2によって置換されていてもよい、1乃至40個のC原子を有している直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3乃至40個のC原子を有している分枝若しくは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、或いは各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム、或いは1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有しているアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、或いはこれらシステムの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、2つ以上の置換基Rは、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
Ar1は、1つ以上の非芳香族ラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至40個の芳香環原子を有している芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、H、D、F、CF3、CN、各々は1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよく、1つ以上の非隣接CH2基はR2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22で置換されていてもよく、1つ以上のH原子はD、F、Cl、Br、I、CN若しくはNO2によって置換されていてもよい、1乃至40個のC原子を有しているアルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3乃至40個のC原子を有している分枝若しくは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、或いは各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム、或いは1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有しているアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、或いはこれらシステムの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、R1は、Rと単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
2は、H、D、F、CN、或いは1つ以上のH原子はFによって置換されていてもよい、1乃至20個のC原子を有している脂肪族、芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素ラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、2つ以上の置換基R2は、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよい。
【0017】
本発明の更に好ましい態様では、MはPd又はPtに相当している。Mは、特に好ましくはPtに相当している。
【0018】
本発明の尚更に好ましい態様では、一般式I又はIIの化合物において、
MはPtであり、
Arは、複数のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Xは、
【化5】

【0019】
から選ばれる2価の基又はそれらの組み合わせであるか、或いは
【化6】

【0020】
から選ばれ、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至15個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Yは、C又はNであって、出現毎に同一であるか異なっており、但し、2つのC原子及び2つのN原子は常に前記金属に結合しており、
Rは、N(Ar12、CN、各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、1乃至3個の炭素原子を有している直鎖アルキル基又は5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、H、D、CN、各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、1乃至10個のC原子を有しているアルキル基又は5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
2は、H、F、CN、或いは1乃至10個の炭素原子を有している脂肪族、芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素ラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、2つ以上の置換基R2は、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
Ar1は、上記と同様である。
【0021】
先に規定したラジカル及び添え字が1つの化合物において何度も出現する場合、それらラジカルは、それぞれの定義に対応し、出現毎に互いから独立して、同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
以下の2つの化合物は、本発明から除外される。
【化7】

【0023】
本発明の目的では、アリール基は6乃至60個のC原子を含み;本発明の目的では、ヘテロアリール基は、2乃至60個のC原子と少なくとも1つのへテロ原子とを、C原子とヘテロ原子との和が少なくとも5個であるという条件で含む。
【0024】
ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及びSから選ばれる。アリール基又はヘテロアリール基は、ここでは、単一芳香環、例えばベンゼン、又は、単一芳香族複素環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェンなど、又は、縮合アリール若しくはヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、カルバゾールなどの何れかを意味するものと解釈される。
【0025】
本発明の目的では、一般式I及びIIにおける基Arは、特に好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン又はインドールであって、ここでは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、キノリン及びイソキノリンが最も好ましい。
【0026】
縮合芳香族基のうち、ナフタレン、キノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン及びインドールが本発明の目的では好ましく、ナフタレン及びキノリンが特に好ましい。
【0027】
本発明の目的では、芳香環システムは、6乃至60個のC原子を環システム内に含んでいる。本発明の目的では、芳香族複素環システムは、2乃至60個のC原子と少なくとも1つのへテロ原子とを、C原子とヘテロ原子との和が少なくとも5個である条件で環システム内に含んでいる。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選ばれる。本発明の目的では、芳香環又は芳香族複素環システムは、必ずしもアリール又はヘテロアリール基のみを含んでいる訳ではなく、寧ろ、複数のアリール又はヘテロアリール基が、例えばsp3混成C、N又はO原子などの非芳香族単位によって(好ましくは、H以外の原子の10%未満で)割り込まれていてもよいシステムを意味するように解釈されることを意図している。それ故、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベンなどのシステムも、本発明の目的の芳香環システムであると解釈されることが意図され、2つ以上のアリール基が、例えば直鎖若しくは環状アルキル基によって又はシリル基によって割り込まれたシステムも同様である。
【0028】
5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環又は芳香族複素環システムであって、それらは各々の場合において上述したラジカルR1によって置換されていてもよく、それらはあらゆる所望の位置を介して芳香環又は芳香族複素環システムに結合していてもよいシステムは、特には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス又はトランスインデノフルオレン、トラクセン、イソトラクセン、スピロトラクセン、スピロイソトラクセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントラオキサゾール、フェナントラオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリンe、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解釈される。
【0029】
本発明の目的では、脂肪族炭化水素ラジカル又はアルキル基であって、典型的には1乃至40個の又は1乃至20個のC原子を含んでいてもよく、更に、個々のH原子又はCH2基は上述した基によって置換されていてもよい脂肪族炭化水素ラジカル又はアルキル基は、好ましくは、ラジカルである、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル又はオクチニルを意味するものと解釈される。1乃至40個のC原子を有しているアルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、s−ペントキシ、2−メチルブトキシ、n−ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n−ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ又は2,2,2−トリフルオロエトキシを意味するものと解釈される。1乃至40個のC原子を有しているチオアルキル基は、特には、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、i−プロピルチオ、n−ブチルチオ、i−ブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、s−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n−ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n−オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2−トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオ又はオクチニルチオを意味するものと解釈される。一般に、本発明に係るアルキル、アルコキシ又はチオアルキル基は、直鎖、分枝又は環状であってもよく、ここで、1つ以上の非隣接CH2基は、R1C=CR1、C≡C、Si(R12、Ge(R12、Sn(R12、C=O、C=S、C=Se、C=NR1、P(=O)(R1)、SO、SO2、NR1、O、S又はCONR1によって置換されていてもよく、更に、1つ以上のH原子もF、Cl、Br、I、CN又はNO2によって、好ましくはF、Cl又はCNによって、更に好ましくはF又はClによって、特に好ましくはFによって置換されていてもよい。
【0030】
式I及びIIの化合物の好ましい態様は、以下の一般式III及びIVである。
【化8】

【0031】
ここで、M、X、Y、R及びR1は上述した意味を有し、Zは、CR又はNを、特に好ましくはCRを表しており、出現毎に同一であるか異なっている。
【0032】
上述した好ましい化合物に加え、以下の表1に示す化合物がとりわけ好ましい。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【0033】
本発明に係る化合物は、好ましくは、酸化状態が+2の四配位金属イオンを含んだ平面四角形錯体である。この金属は、好ましくは、元素の周期表の10族の金属、特にはPd及びPtから選ばれる。本発明に係る化合物は、三重項発光を示し、非常に良好な寿命、高効率、熱応力に対する高い安定性、及び高いガラス転移温度Tgを有している。
【0034】
また、本発明は、一般式I又はIIの化合物を調製するプロセスに関する。
【化9】

【0035】
ここで、M、X、Y、Ar、R、R1、R2及びnは、先に既定した意味を有している。
【0036】
本発明に係る式I又はIIの化合物は、当業者に一般に知られている合成ステップによって調製され得る。
【0037】
配位子合成の出発点は、例えば、N−フェニルベンズアルドイミン(Tetrahedron Lett. 2007, 48(40), 7177−7180)、N,N’−ジベンジリデン−o−フェニレンジアミン(J. Chem. Res. 2006, (1), 1−2)、N,N’−ビス(2−ナフタレニルメチレン)−1,2−ベンゼンジアミンジエン(J. Indian Chem. Soc. 2002, 79(6), 502−504)又はN,N’−ジ(ベンジリデン)−1,8−ジアミノナフタレン(Toxicological and Environmental Chemistry 2006, 88(4), 579−586)であり得る。
【0038】
第1ステップは、対応する配位子の合成を伴い、それらは、更なるステップにおいて組み合わされて、所望の配位子システムを与える。続いて、反応が、適当な金属塩、例えばK2PtCl4又はK2PdCl4の溶液として通常使用される対応の金属(例えばPt又はPd)を用いて行われる。
【0039】
式I又はIIの金属錯体を調製するための一般的な合成手順を方法(A)及び(B)に描く。ここで、中心金属Ptは、例えば、類似の反応においてPdによって置換され得る。
【化10】

【0040】
式(II)の化合物も、同じように調製され得る。
また、本発明は、有機電子デバイスにおける、本発明に係る化合物の特には発光化合物としての使用に関する。本発明に従って使用される電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED)若しくは高分子エレクトロルミネッセンスデバイス(PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検波器、有機受光器、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学的電池(LEC)又は有機レーザダイオード(O−レーザ)であり得て、特には、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(=有機発光ダイオード、OLED、PLED)である。
【0041】
また、本発明は、本発明に係る化合物の、電荷輸送材料及び/又は電荷注入材料としての、好ましくは対応した層における使用に関する。これは、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層又は電子注入層の何れであってもよい。電荷ブロック材料としての使用も可能である。
【0042】
本発明は、同様に、有機電子デバイス、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイス若しくは高分子エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED、PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検波器、有機受光器、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学的電池(LEC)又は有機レーザダイオード(O−レーザ)であるが、特には、先に既定した式I又はIIの化合物を1つ以上含んだ有機エレクトロルミネッセンスデバイス(=有機発光ダイオード、OLED、PLED)である。ここで、有機電子デバイスは、陽極と、陰極と、少なくとも1種の有機又は有機金属化合物を含んだ少なくとも1つの層とを備えている。しかしながら、このデバイスは、無機材料を更に含んでいてもよい。
【0043】
式I又はIIの化合物は、好ましくは、電子デバイスの1つの層内に存在している。
それ故、本発明は、先に規定した式I又はIIの化合物を含んだ層にも関する。
【0044】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、陰極と、陽極と、少なくとも1つの発光層とを備えている。これら層は別として、それは、更なる層、例えば、各々の場合において1つ以上の、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層及び/又は電荷発生層を更に含んでいてもよい(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J. Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J. Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)。例えば励起子ブロック機能を有している中間層が2つの発光層間に導入されることも同様に可能である。しかしながら、これら層の各々は必ず存在していなければならない訳ではないことに注意すべきである。これら層は、先に既定した式I又はIIの化合物を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の好ましい態様では、式I又はIIの化合物は、発光層において発光化合物として又は電荷輸送層において電荷輸送化合物として用いられる。ここで、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、1つの発光層を又は複数の発光層を含んでいてもよく、ここで、少なくとも1つの発光層は、先に規定した式I又はIIの化合物を少なくとも1種含んでいる。複数の発光層が存在している場合、これらは、好ましくは、380nm乃至750nmに複数の発光極大を有しており、全体的に見れば、結果として白色発光をもたらす−即ち、蛍光又は燐光を生じ得る様々な発光化合物が、それら発光層において使用される。3層システムが特に好ましく、ここでは、3つの層は、青、緑及び橙又は赤色発光を呈する(基本構造については、例えばWO 05/011013を参照のこと)。このデバイスは、複数の電荷輸送層を更に含んでいてもよい。
【0046】
式I又はIIの化合物が発光層において発光化合物として用いられる場合、それは、好ましくは、マトリクスとして機能する1種以上の化合物と組み合わせて用いられる。これらの場合、式I又はIIの化合物とマトリクス材料とを含んだ混合物は、発光体とマトリクス材料とを含んだ混合物全体に基づいて、式I又はIIの化合物を、1乃至99重量%、好ましくは2乃至90重量%、特に好ましくは3乃至40重量%、特には5乃至15重量%含む。これに対応して、この混合物は、発光体とマトリクス材料とを含んだ混合物全体に基づいて、マトリクス材料を、99乃至1重量%、好ましくは98乃至10重量%、特に好ましくは97乃至60重量%、特には95至85重量%含む。
【0047】
好ましいマトリクス材料は、芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシド、芳香族スルホキシド若しくはスルホン、例えば、WO 04/013080、WO 04/093207、WO 06/005627又は未刊行の出願DE 102008033943.1に従うもの、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、例えば、WO 05/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527又はWO 08/086851において開示されているCBP(N,N−ビスカルバゾリルビフェニル)又はカルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、例えば、WO 07/063754又はWO 08/056746に従うもの、アザカルバゾール 誘導体、例えば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160に従うもの、バイポーラマトリクス材料、例えば、WO 07/137725に従うもの、シラン、例えば、WO 05/111172に従うもの、アザボロール又はボロン酸エステル、例えば、WO 06/117052に従うもの、トリアジン 誘導体、例えば、未刊行の出願DE 102008036982.9、WO 07/063754又はWO 08/056746に従うもの、亜鉛錯体、例えば、EP 652273又はWO 09/062578に従うもの、或いは、ジアザシロール又はテトラアザシロール誘導体、例えば、未刊行の出願DE 02008056688.8に従うものである。
【0048】
本発明の更に好ましい態様は、式I又はIIの化合物の、2つ以上の異なるマトリクス材料と組み合わせた、発光体材料としての使用である。これらの場合において好適なマトリクス材料は、上述した好ましい化合物である。
【0049】
更に、材料を真空昇華ユニットにおいて10-5mbar未満の、好ましくは10-6mbar未満の、特に好ましくは10-7mbar未満の圧力で気相堆積させる昇華プロセスによって1つ以上の層が適用された有機エレクトロルミネッセンスデバイスが好ましい。
【0050】
同様に、10-5mbar乃至1barの圧力の下で材料が適用されるOVPD(有機気相堆積)プロセスによって又はキャリアガス昇華を用いて1つ以上の層が適用されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが好ましい。このプロセスの特別な場合はOVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、そこでは、材料はノズルを通って直接に適用され、それ故、構造化される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0051】
更に、1つ以上の層が、溶液から、例えば、スピンコートによって又はあらゆる所望の印刷プロセス、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷若しくはオフセット印刷によって形成されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが好ましいが、特に好ましくは、LITI(光誘起熱画像形成、熱転写印刷)又はインクジェット印刷である。例えば適当な置換によって得られる可溶性化合物が、この目的のために必要である。
【0052】
これらプロセスは、当業者には一般に知られており、先に既定した式I又はIIの化合物を含んだ有機エレクトロルミネッセンスデバイスに対して問題を生じることなしに当業者によって適用され得る。
【0053】
上述した本発明に係る化合物、特には反応性基で置換又は機能化した化合物は、対応のオリゴマー、デンドリマー又はポリマーを調製するためのモノマーとして使用され得る。
【0054】
それ故、本発明は、先に既定した式(I)又は(II)の化合物を1種以上含み、式I又はIIの化合物からポリマー、オリゴマー又はデンドリマーへと1つ以上の結合が存在しているオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーに更に関する。式I又はIIの化合物の橋架けに依存して、この錯体は、それ故、オリゴマー又はポリマーの側鎖を形成するか又は主鎖内で橋架けされる。ポリマー、オリゴマー又はデンドリマーは、共役、部分共役又は非共役であってもよい。オリゴマー又はポリマーは、直鎖状、分枝状又は樹木状であってもよい。
【0055】
オリゴマー又はポリマーの調製のために、式I又はIIの機能化した化合物は、単独重合させられるか、又は、更なるモノマーと共重合させられる。式I又はIIの化合物が好ましくは0.01乃至50mol%の程度まで、特に好ましくは0.1乃至20mol%の範囲内で存在しているコポリマーが好ましい。
【0056】
ポリマーの幹を形成する適当且つ好適なコモノマーは、フルオレン(例えば、EP 842208又はWO 00/22026に従うもの)、スピロビフルオレン(例えば、EP 707020、EP 894107又はWO 06/061181に従うもの)、パラフェニレン(例えば、WO 92/18552に従うもの)、カルバゾール(例えば、WO 04/070772又はWO 04/113468に従うもの)、チオフェン(例えば、EP 1028136に従うもの)、ジヒドロフェナントレン(例えば、WO 05/014689に従うもの)シス及びトランスインデノフルオレン(例えば、WO 04/041901又はWO 04/113412に従うもの)ケトン(例えば、WO 05/040302に従うもの)、フェナントレン(例えば、WO 05/104264又はWO 07/017066に従うもの)、又は複数のこれら単位から選ばれる。これら単位の合計の割合は、好ましくは、少なくとも50mol%の範囲内にある。ポリマー、オリゴマー及びデンドリマーは、更なる単位、例えば、正孔輸送単位、特には、トリアリールアミンに基づいたもの、及び/又は、電子輸送単位を更に含んでいてもよい。
【0057】
一般式I又はIIの化合物を含んだこのタイプのポリマーは、PLEDの製造に、特にはPLEDの発光体層として使用され得る。高分子発光体層は、例えば、溶液からコーティング(スピンコート又は印刷プロセス)によって生じさせることができる。
【0058】
本発明に係る化合物及びこれを用いて製造される有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、先行技術を上回る以下の驚くべき利益によって区別される。
【0059】
・昇華時に部分的又は完全な熱分解を生じる、先行技術に係る多くの金属錯体とは対照的に、本発明に係る化合物は、高い熱安定性を有している。
【0060】
・芳香環又は芳香族複素環システム上での嵩高い置換基の使用は、錯体の凝集を及びそれ故にエキシマー又はエキシプレックスの形成を実質的に抑制する。
【0061】
・式I又はIIの化合物を発光材料として含んだ有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、優れた寿命を有している。
【0062】
・効率のよい濃青、赤又は緑色の発光色を有し且つ有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける使用時に長い寿命を有する青、赤及び緑色燐光錯体が利用可能である。これは、先行技術を上回る顕著な利点である。というのは、青、赤及び緑色燐光デバイスは、これまで、乏しい色調和で及び特には非常に乏しい寿命でしか利用できなかったからである。
【0063】
・有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用される、本発明に係る化合物は、低い使用電圧と同時に、高い効率と急峻な電流−電圧曲線とをもたらす。
上述したこれら利益は、他の電子特性の低下を伴わない。
【0064】
本発明を、以下の例によってより詳細に説明するが、これらによって本発明を限定することを望む訳ではない。当業者は、進歩性なしに本発明に係る更なる化合物を合成し、それらを有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用することが可能であろう。
【0065】
例:
以下の合成は、他に示さない限り、乾燥溶媒中、保護ガス雰囲気のもとで行われる。
【0066】
錯体の合成(方法A):
130mLの酢酸中に対応のイミン配位子(4.1mmol)を含んだ溶液を、130mLの酢酸中に1.7gのK2PtCl4(4.1mmol)を含んだ溶液にN2のもとで加え、この混合物を、90℃で3日間に亘って攪拌する。濾過後、固形分を真空中で乾燥させ、次いで、保護ガスのもとで再結晶化する。
【0067】
錯体の合成(方法B):
20mLのメタノール中に対応のイミン配位子(2mmol)を含んだ溶液を、25mLのMeOH中に0.57gのアリルパラジウム(II)クロリドダイマー(1mmol)を含んだ溶液にN2のもとで加え、この混合物を40℃で4日間に亘って攪拌する。濾過後、分離した固形分を、130mLの酢酸中、更に2mmolの対応のイミン配位子と共に、90℃で3日間に亘って攪拌する。濾過後、固形分を真空中で乾燥させ、次いで、保護ガスのもとで再結晶化する。
【0068】
例1:Pt錯体(9)
【化11】

【0069】
1300mLの酢酸中に11g(41.5mmol)のN,N’−ジベンジリデン−o−フェニレンジアミンを含んだ溶液を、1300mLの酢酸中に17.2gのK2PtCl4(41.5mmol)を含んだ溶液にN2のもとで加え、この混合物を90℃で3日間に亘って攪拌する。72時間後、析出した固形分を低温のメタノールで洗浄し、真空中で乾燥させ、続いて、保護ガスのもとで無水EtOHから再結晶化して、16g(33.3mmol)の結晶質の固体を得る。全収率は87%である。
【0070】
例2:Pt錯体(11)
【化12】

【0071】
1300mLの酢酸中に15.9g(41.5mmol)のN,N’−ビス(2−ナフタレニルメチレン)−1,2−ベンゼンジイミンを含んだ溶液を、1300mLの酢酸中に17.2gのK2PtCl4(41.5mmol)を含んだ溶液にN2のもとで加え、この混合物を90℃で3日間に亘って攪拌する。72時間後、析出した固形分を低温のメタノールで洗浄し、真空中で乾燥させ、続いて、保護ガスのもとで無水EtOHから再結晶化して、19.4g(33.4mmol)の結晶質の固体を得る。全収率は81%である。
【0072】
例3:Pt錯体(20)
【化13】

【0073】
1300mLの酢酸中に12.8g(41.5mmol)のN,N’−di(ベンジリデン)−1,8−ジアミノナフタレンを含んだ溶液を、1300mLの酢酸中に17.2gのK2PtCl4(41.5mmol)を含んだ溶液にN2のもとで加え、この混合物を90℃で3日間に亘って攪拌する。72時間後、析出した固形分を低温のメタノールで洗浄し、真空中で乾燥させ、続いて、保護ガスのもとで無水EtOHから再結晶化して、17g(32.1mmol)の結晶質の固体を得る。全収率は78%である。
【0074】
例4:Pt錯体(1)
【化14】

【0075】
120mLのメタノール中に2.17g(12mmol)のN−フェニルベンズアルジミンを含んだ溶液を、150mLのMeOH中に4.4g(4.25mmol)のビス(メチルアリル白金(II)クロリド)を含んだ溶液に加え、この混合物を40℃で4日間に亘って攪拌する。濾過後、分離した固形分を、780mLの酢酸中で、2.17g(12mmol)のN−フェニルベンズアルジミンと共に、90℃で3日間に亘って攪拌する。濾過後、固形分を真空中で乾燥させ、続いて、保護ガスのもとで再結晶化して、5.4g(9.4mmol)の結晶質の固体を得る。全収率は80%である。
【0076】
例5:有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造及びキャラクタリゼーション
本発明に係るエレクトロルミネッセンスデバイスは、例えば、WO 05/003253に記載されているように製造され得る。ここでは、様々なOLEDについての結果を比較する。基本構造、使用した材料、ドーピングの程度及びそれらの層の厚さは、より良好な比較可能性のために同一である。
【0077】
第1デバイス例は、先行技術に係る比較用の標準を記述しており、そこでは、発光層は、ホスト材料であるスピロケトンと、ゲスト材料(ドーパント)であるIr(ppy)3又は本発明に係る化合物とからなる。更に、様々な構造のOLEDが記述され、各々の場合においてホスト材料はスピロケトンであり、以下の構造を有しているOLEDが、上述した一般的プロセスと同様に製造される。
【0078】
正孔注入層(HIL) 20nmの2,2’,7,7’−テトラキス(ジ−パラ
−トリルアミノ)スピロ−9,9’−ビフルオレン
正孔輸送層(HTL) 20nmのNPB(N−ナフチル−N−フェニル−4,
4’−ジアミノビフェニル)
発光層(EML) 40nmのホスト:スピロ−ケトン(SK)(ビス(9
,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン)
ドーパント:Ir(ppy)3(10%ドーピング、気
相堆積;WO 03/0068526に従って合成)又は本発明に係
る化合物
電子輸送層(ETL) 20nmのAlQ3(トリス(キノリラト)アルミニウ
ム(III))
陰極 1nmのLiF,上面に150nmのAl
Ir(ppy)3及びスピロケトンの構造を、明快さの目的で以下に描く。
【化15】

【0079】
使用した本発明に係る化合物を、以下に描く。
【化16】

【0080】
これらの未だ最適化していないOLEDは、標準的な方法によって特性を決定する。この目的のため、エレクトロルミネッセンススペクトルと、電流−電圧−輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての効率(cd/Aで測定した)と、寿命とを求めた。表2は、デバイス測定の結果を示している。本発明に係る化合物を含んだデバイスは、同等の効率と改善された寿命とを示している。
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I又はIIの化合物であって、
【化1】

Mは+2の酸化状態にある金属イオンであり、
Arは、あらゆる所望のタイプの1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、複数の前記環システムArは任意に一重結合又はあらゆる所望のラジカルRによって互いに結合していてもよく、
Yは、C、N又はPであって、出現毎に同一であるか異なっており、但し、2つのC原子及び2つのN原子又は2つのC原子及び2つのP原子のどちらかが常に前記金属と結合しており、
Xは、B(R1)、C(R12、Si(R12、C=O、C=NR1、C=C(R12、O、S、S=O、SO2、N(R1)、P(R1)及びP(=O)R1から選ばれる2価の基若しくはそれらの組み合わせであるか、又は1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであるか、又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、あらゆる所望のラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、
nは、0又は1であって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、n=0については、関与しているXの代わりに水素又はラジカルR又はArが結合しており、
以下の2つの化合物
【化2】

が発明から除外される化合物。
【請求項2】
請求項1に係る化合物であって、
Arは、あらゆる所望のタイプの1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、複数の前記環システムArは任意に一重結合又はあらゆる所望のラジカルRによって互いに結合していてもよく、
Xは、
【化3】

から選ばれる2価の基若しくはそれらの組み合わせであるか、又は
【化4】

から選ばれ、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい芳香環若しくは芳香族複素環システムであるか、又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Rは、D、F、Cl、Br、I、N(Ar12、N(R22、CN、NO2、Si(R23、B(OR22、C(=O)Ar1、C(=O)R2、P(=O)(Ar12、P(=O)(R22、S(=O)Ar1、S(=O)R2、S(=O)2Ar1、S(=O)22、CR2=CR2Ar1、OSO22、各々は1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよく、1つ以上の非隣接CH2基は、R2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、P(=O)(R2)、SO、SO2、NR2、O、S若しくはCONR2によって置換されていてもよく、1つ以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CN若しくはNO2によって置換されていてもよい、1乃至40個のC原子を有している直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3乃至40個のC原子を有している分枝若しくは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、或いは各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム、或いは1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有しているアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、或いはこれらシステムの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、2つ以上の置換基Rは、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
Ar1は、1つ以上の非芳香族ラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至40個の芳香環原子を有している芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、H、D、F、CF3、CN、各々は1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよく、1つ以上の非隣接CH2基はR2C=CR2、C≡C、Si(R22、Ge(R22、Sn(R22で置換されていてもよく、1つ以上のH原子はD、F、Cl、Br、I、CN若しくはNO2によって置換されていてもよい、1乃至40個のC原子を有しているアルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3乃至40個のC原子を有している分枝若しくは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、或いは各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム、或いは1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、5乃至60個の芳香環原子を有しているアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、或いはこれらシステムの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、ここで、R1は、Rと単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
2は、H、D、F、CN、或いは1つ以上のH原子はFによって置換されていてもよい、1乃至20個のC原子を有している脂肪族、芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素ラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、2つ以上の置換基R2は、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよい化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物であって、MはPd又はPt、好ましくはPtである化合物。
【請求項4】
請求項1乃至3の1項以上に記載の化合物であって、
MはPtであり、
Arは、複数のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環又は芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Xは、
【化5】

から選ばれる2価の基又はそれらの組み合わせであるか、或いは
【化6】

から選ばれ、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい、5乃至15個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システム又はそれらの組み合わせであって、出現毎に同一であるか異なっており、
Yは、C又はNであって、出現毎に同一であるか異なっており、但し、2つのC原子及び2つのN原子は常に前記金属に結合しており、
Rは、N(Ar12、CN、各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、1乃至3個の炭素原子を有している直鎖アルキル基又は5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
1は、H、D、CN、各々の場合において1つ以上のラジカルR2によって置換されていてもよい、1乃至10個のC原子を有しているアルキル基又は5乃至10個の芳香環原子を有している芳香環若しくは芳香族複素環システムであって、出現毎に同一であるか異なっており、
2は、H、F、CN、或いは1乃至10個の炭素原子を有している脂肪族、芳香族及び/又は複素環式芳香族炭化水素ラジカルであって、出現毎に同一であるか異なっており、2つ以上の置換基R2は、互いに単環又は多環式脂肪族又は芳香環システムを形成していてもよく、
Ar1は、請求項2にいて既定したのと同様である化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4の1項以上に記載の化合物であって、前記基Arは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、フラン、チオフェン、ピロール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン及びインドールから選ばれ、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、キノリン及びイソキノリンが最も好ましい化合物。
【請求項6】
請求項1乃至5の1項以上に記載の、式III又はIVの化合物であって、
【化7】

ここで、M、X、Y、R及びR1は上述した意味を有し、Zは、CR又はNを、特に好ましくはCRを表しており、出現毎に同一であるか異なっている化合物。
【請求項7】
請求項1乃至6の1項以上に係る化合物を1種以上含んだオリゴマー、ポリマー又はデンドリマーであって、式I又はIIの化合物からポリマー、オリゴマー又はデンドリマーへと1つ以上の結合が存在しているオリゴマー、ポリマー又はデンドリマー。
【請求項8】
請求項1乃至6の1項以上に係る化合物を調製する方法であって、遊離配位子が対応の金属塩と反応して前記錯体を与えることを特徴とする方法。
【請求項9】
有機電子デバイス、特には、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED)若しくは高分子エレクトロルミネッセンスデバイス(PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検波器、有機受光器、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学的電池(LEC)又は有機レーザダイオード(O−レーザ)、特には、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(=有機発光ダイオード、OLED、PLED)における、請求項1乃至7の1項以上に係る化合物の使用。
【請求項10】
請求項1乃至7の1項以上に係る化合物を少なくとも1種含んだ層。
【請求項11】
有機電子デバイス、特には、有機エレクトロルミネッセンスデバイス若しくは高分子エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED、PLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検波器、有機受光器、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学的電池(LEC)又は有機レーザダイオード(O−レーザ)であって、請求項1乃至7の1項以上に係る化合物を1種以上含んだ有機電子デバイス。
【請求項12】
請求項11に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、請求項1乃至7の1項以上に係る前記化合物は、発光層において発光化合物として又は電荷輸送層若しくは電荷注入層において電荷輸送化合物として用いられている有機エレクトロルミネッセンスデバイス。

【公表番号】特表2012−508699(P2012−508699A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535893(P2011−535893)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007360
【国際公開番号】WO2010/054728
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】