説明

有機エレクトロルミネッセンス素子および該素子の製造方法

【課題】長寿命化、可撓性付与、耐衝撃性付与、耐熱性付与、寸法安定性付与、輝度ムラ低減、実用的発光面積での歩留まり向上、バックライト適性を有する有機EL素子を提供すること。
【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムからなる基板上に、透明電極層と、少なくとも発光層を含む有機層と、対向電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記プラスチックフィルムは、架橋樹脂とガラス繊維とを含み、且つ該プラスチックフィルムの30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であり、前記発光層が、発光層ホストとりん光材料からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略す)および該素子の製造方法に関し、さらに詳しくは、より低電力での駆動が可能で、有機EL素子として耐久性に優れ、周囲の温度変化の影響を受けにくい安定性が高い有機EL素子および該素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、直流電源による駆動であり、数ボルト程度の電池による低電圧化が可能で、自発光であることによる視野角依存性のないこと、応答の速いことなどから、液晶表示材料のための白色光源(バックライト)として、また液晶ディスプレイよりさらに進化した有機ELディスプレイとして研究が進められており、一部は商品化されている。
【0003】
しかしながら、携帯用や薄型化のさらに厳しい要求を満たすために自発光型のフラットパネルディスプレイや自発光型でない液晶ディスプレイ用の高輝度白色光源として、軽量で、発光効率のよい、長寿命の有機EL素子が求められている。
【0004】
特に薄くて、耐衝撃性のある面状光源で、均一発光を達成するものは従来技術では実現されていなかった。
【0005】
その最も大きな理由として、従来の有機EL素子の基材はガラスであり、封止用の基材はガラス板や金属板の一部を掘り込んだプレートであったからである。発光面が大きくなればなるほど、ガラスを用いた場合は薄くすることが難しく、工程での取り扱いだけでなく、一般消費者の通常使用に耐えられる強度を維持することが難しい。
【0006】
有機EL素子の発光機能は、その電気化学的な性質から、水分子や酸素分子によって妨害されるので、可撓性のあるプラスチックフィルムやシート状の基材を使用しても、実用的な発光素子を形成することも、長時間にわたって発光させることも、困難であった。
【0007】
有機EL素子の基材にプラスチックフィルムやプラスチックシートを用いることが出来なかった理由は、(1)プラスチックフィルムにガラス並みの耐熱性がないため、スパッタなどで透明電極を形成する際の熱に耐えられず、良好な導電性をもつ透明電極が形成できないこと、(2)プラスチックフィルムを他の材料や部品に貼り合わせたりする際に、紫外光や熱によって硬化する接着剤を用いても接着性能が十分引き出せないこと、(3)微細な発光領域を加熱条件で連続して形成する際に、ガラス基板並みの寸法精度が得られないこと、(4)プラスチック材料の水分や酸素などのガス透過性がガラスより非常に大きいため、有機EL素子の発光寿命を十分長く確保するためには、ピンホールなどのない優れたガスバリア膜がプラスチックフィルム上に形成される必要があること、などが挙げられる。
【0008】
これらの問題を解決するために、例えば、特許文献1にはプラスチックフィルムを多層化したり、吸湿材をプラスチックフィルム中に練り込んだり、無機粒子を含有させたり、表面粗さを制御したりしているが、いまだ十分なものは得られていない。
【0009】
さらに曲面上での発光面の達成や、製造時における基材フィルムを元巻で供給したり、加工後に巻き取ったりする、いわゆるロールツウロール加工を可能にするためには、ガラス基板はもちろん、従来のプラスチックフィルムでは、本発明の要求レベルを達成することは到底困難であった。
【0010】
その実用化にあたって、軽量化、薄型化と共に曲面形状とすることが可能な形状加工性が求められており、高分子フィルムなどの可撓性を有する材料からなる基板を用いることが提案されている(例えば特許文献2や特許文献3など)。
【0011】
また有機EL素子による大面積の白色光源へ応用が強く期待されるもう一つの理由は、現在、一般に広く用いられている民生用の白熱灯、蛍光灯の欠点を改良できるからである。すなわち、白熱灯は光のスペクトルが太陽光に近く、自然の光に近いが壁面全体を均一に明るくしたりするには不向きであり、発光スペクトルを変化させることが困難な光源である。また電気エネルギーを光エネルギーに変換する効率も低い。蛍光灯は白熱灯より電気エネルギーを光エネルギーに変換する効率が優れるため、現在のところ多用されているが、蛍光灯にも欠点がいくつかある。
【0012】
蛍光灯は、水銀蒸気のグロー放電を利用しているため、点灯時間が遅れるとともに、点灯直後は放電が不安定で光量が安定しない。また、低温環境下での光量低下が問題である。さらに、蛍光灯は、ガラス管に水銀蒸気を封入しているため、小型化が困難な上、水銀による環境汚染も問題である。
【0013】
これに対して、有機EL素子は、薄膜の有機化合物からなる発光層を電極で保持した構成で、電極間に電流を供給すると発光する素子であり、薄膜である有機EL素子を光源として利用すると、小型化、軽量化が容易である上、蛍光灯に比べて発光の応答速度が速く、点灯直後の光量も比較的安定した照明装置となる。
【0014】
従って、破損しやすいガラスを耐衝撃性に優れたプラスチックへの置き換え、水銀を使用しない、プラスチックタイプの有機EL素子が出来れば、非常に有用である。
【0015】
近年の携帯電話等、携帯情報端末機器に設けられる表示装置や電子光学デバイスには、前述のように、通常ガラス等の基板が用いられており、ガラスは透湿性が小さい点で優れているが、重い、フレキシブル性(可撓性)がないために、落下により割れやすい等の欠点がある。
【0016】
このため、これらの普及に伴い、可撓性のある(例えば、プラスチック基板を用いた)折り曲げに強い素子が要望されており、蛍光灯に代わる照明等の発光光源においてもフレキシブルで可撓性を有する支持体上に有機EL素子を発光光源として形成し照明用途に用いようとする要望も大きい。
【0017】
実際に、特許文献4、特許文献5に開示されるようなプラスチックフィルム上に有機EL素子を形成する方法は知られている。従来、容易にガラス基板がプラスチック基板で代替できなかった理由のひとつに、熱膨張係数が、ガラスとプラスチックでは大きくことなることがあげられる。面状に均一に発光させる場合であっても、プラスチック上のガス遮蔽層や電極層は金属酸化物である場合がほとんどであり、基板であるプラスチックとの熱膨張係数の差によるタワミや変形などが製造上の加熱プロセスで生じる。
【0018】
さらに、透過光を光の3原色である緑、青、赤に分割するため基板上にミクロン単位の細かな画素を形成することは、表示装置や電子光学デバイスでは、しばしば必要なプロセスであり、前述の3原色の塗り分けの際に基板の寸法変化は形成する画素のサイズよりはるかに小さいことが求められる。
【0019】
また、表示する画面が大きいほど、両端での位置のズレが大きくなり、画素形成のマスクパターンとのズレが大きくなるため、プラスチック基板での大面積化は非常に困難であった。たとえば、有機ELの発光画素はマスクを一定量移動させることにより、規則的に形成できるが、基板が蒸着や搬送などのプロセス中にたわんだり、ずれたりすることにより面積の大きなプラスチック基板で高精細な画素パターンを形成することは難しい。さらに通電時の発熱によりプラスチック基板が変形したり、基板上の素子が剥離して欠陥となったり、発光しなくなったりする問題も生じる。
【0020】
また特に有機EL素子の基板として用いるには、ガラス並みの低い、水蒸気の透過性、酸素の透過性が求められ、プラスチック表面に無機材料からなるガス遮蔽層(バリア層)を形成することがよく行われるが、耐熱性の低いプラスチックでは良質なガス遮蔽層を形成することが難しい。
【0021】
特許文献6には、バリア層を多層化してガス透過性を改善する試みの開示があるが、基板そのものが既存のプラスチックである場合には、耐熱性や低熱膨張性を確保できず、クラック(バリア層の微細な亀裂)やピンホールの生成、前述のプロセス時の熱履歴や発光時の発熱に耐えられないことによる基板の変形などが課題となる。
【0022】
また、基板そのものを小片に加工したり、任意の形状に切断加工したりする場合に端部の微細な破片が発光層形成時に異物となり、高い歩留まりが得られない。
【0023】
例えば、特許文献7には合成樹脂の基板を用いた液晶表示装置の例が開示されているが、耐熱性のある基板上に形成した薄膜デバイスをプラスチック基板上へ転写させることによって形成しており、これでは、プロセスが複雑となって、画素欠陥や転写ずれなどによる問題が発生する。
【0024】
また、熱膨張率を低下させるため、プラスチック中に熱膨張の小さな有機や無機のフィラーとして添加する方法は開示されているが、これらの基板を単純に有機ELの基板として使用したとしても、裁断の加工時や、水、酸素の透過性による有機EL素子への悪影響のため、到底使用できるものではなく、本発明の要求レベルをみたすことは出来なかった。
【特許文献1】特開平2005−38661号公報
【特許文献2】特開平2−251429号公報
【特許文献3】特開平6−124785号公報
【特許文献4】特開2002−175875号公報
【特許文献5】特開2002−190384号公報
【特許文献6】特開2003−17244号公報
【特許文献7】特開2001−166300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、長寿命化、可撓性付与、耐衝撃性付与、耐熱性付与、寸法安定性付与、輝度ムラ低減、実用的発光面積での歩留まり向上、バックライト適性を有する有機EL素子および該素子の製造方法を提供することを課題とする。
【0026】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0028】
(請求項1)
ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムからなる基板上に、透明電極層と、少なくとも発光層を含む有機層と、対向電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記プラスチックフィルムは、架橋樹脂とガラス繊維とを含み、且つ該プラスチックフィルムの30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であり、前記発光層が、発光層ホストとりん光材料からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
(請求項2)
前記ガラス繊維を、プラスチックフィルム組成物に対して、1〜90重量%配合することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0030】
(請求項3)
前記ガス遮蔽性の層が、少なくともガスバリア層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
(請求項4)
前記ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/m・24hr以下(JIS K7129B法に基づき40℃90%RH時の測定値)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0032】
(請求項5)
架橋樹脂とガラス繊維とを含むプラスチックフィルム基板を形成する工程と、
該プラスチックフィルム基板上にガス遮蔽性の層を形成する工程と、
該ガス遮蔽性の層の上に、透明電極層を設けて透明電極付き基板を形成する工程と、
該透明電極層の上に少なくとも発光層を含む有機層を形成する工程と、
該有機層の上に対向電極を形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記プラスチックフィルム基板は、30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0033】
(請求項6)
前記透明電極付き基板を形成した後、該基板をレーザーカッターにより所望の形状に切断する工程を有することを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0034】
(請求項7)
前記透明電極付き基板をレーザーカッターにより所望の形状に切断する工程を経た後、有機溶媒による洗浄工程と該基板の真空下での脱気工程とを経由した後、有機層を形成することを特徴とする請求項5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0035】
(請求項8)
前記透明電極付き基板を形成する工程後に、該透明電極層上に導電性の平坦化層を形成する工程を有し、次いで有機層を形成することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0036】
(請求項9)
前記ガラス繊維を、プラスチックフィルム組成物に対して、1〜90重量%配合することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0037】
(請求項10)
前記ガス遮蔽性の層を形成する工程が、少なくともガスバリア層を形成する工程を有することを特徴とする請求項5〜9の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0038】
(請求項11)
前記ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/m・24hr以下(JISK7129B法に基づき40℃90%RH時の測定値)であることを特徴とする請求項5〜10の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0039】
(請求項12)
発光層が、発光層ホストとりん光材料からなることを特徴とする請求項5〜11の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明によると、長寿命化、可撓性付与、耐衝撃性付与、耐熱性付与、寸法安定性付与、輝度ムラ低減、実用的発光面積での歩留まり向上、バックライト適性を有する有機EL素子および該素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0042】
本発明に係る有機EL素子の製造方法は、架橋樹脂とガラス繊維とを含むプラスチックフィルム基板を形成する工程と、該プラスチックフィルム基板上にガス遮蔽性の層を形成する工程と、該ガス遮蔽性の層の上に、透明電極層を設けて透明電極付き基板を形成する工程と、該透明電極層の上に少なくとも発光層を含む有機層を形成する工程と、該有機層の上に対向電極を形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記プラスチックフィルム基板は、30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0043】
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0044】
〔架橋樹脂とガラス繊維と含むプラスチックフィルム基板を形成する工程〕
本発明のプラスチックフィルムを製造するために用いられる架橋樹脂としては、(A)アクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線および/または熱によって架橋した樹脂又は(B)エポキシ樹脂が挙げられる。
【0045】
本発明において、架橋させるのは後述のガラス繊維を含有せしめた後に行なうのが好ましい。
【0046】
前記(A)の好ましい架橋樹脂は、脂環式構造を有するアクリレート(a1)と、含イオウアクリレート及びフルオレン骨格を有するアクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート(a2)との架橋により得られる透明樹脂が挙げられる。(a1)はガラス繊維よりも屈折率の低い低屈折率モノマーであり、(a2)はガラス繊維よりも屈折率の高いモノマーである。以下にその両者について詳述する。
【0047】
(a1)低屈折率モノマー
ガラス繊維よりも屈折率の低い反応性モノマーとしては、脂環式構造や脂肪族鎖を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に透明性や耐熱性の面から脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式構造を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、反応性、耐熱性や透明性の点から下式(1)及び(2)から選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
【化1】

【0050】
(式中、R及びRは各々独立に水素原子又はメチル基を示す。aは1又は2を示し、bは0又は1を示す。)
【0051】
【化2】

【0052】
(式中、Xは水素原子、−CH、−CHOH、NH、を示し、R及びRは、Hまたは−CH、pは0または1である。)
【0053】
【化3】


【0054】
式(1)においては、特に、R、Rが水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレートが粘度などの物性から好ましい。
【0055】
また、式(2)において、特に、Xが−CHOCOCH=CH、R、Rが水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、X、R、Rがすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートが好ましい。特に、粘度等の点を考慮すると、X、R、Rがすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートが最も好ましい。式(2)の(メタ)アクリレートは、特開平5−70523に開示の方法にて得られる。
【0056】
ガラス繊維よりも屈折率の低い反応性モノマーとしては、下式(6)の環状エーテル(メタ)アクリレートも透明性や耐熱性が高いことから望ましい。
【0057】
【化4】

【0058】
(式中、R18及びR19は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【0059】
(a2)高屈折率モノマー
ガラス繊維よりも屈折率の高い反応性モノマーとしては、イオウや芳香族環を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に屈折率が高いことから含イオウ(メタ)アクリレートやフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0060】
本発明で用いられる含イオウ(メタ)アクリレートとしては、イオウを含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、耐熱性や透明性の点から下式(3)に示す(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
【化5】

【0062】
(式中、Xはイオウ又はSOを示し、Yは酸素又はイオウを示す。R〜R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。nおよびmは0〜2である。)
【0063】
式(3)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、耐熱性や取り扱い易さからXがイオウ、Yが酸素、R〜R10がすべて水素、n及びmがともに1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィドが最も好ましい。
【0064】
本発明で用いられるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、フルオレン骨格を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、耐熱性や透明性の点から下記の式(4)および(5)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
【化6】

【0066】
(式中、R11〜R14は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。rおよびsは0〜2である。)
【0067】
【化7】

【0068】
(式中、R15〜R17は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
【0069】
これらの中でも式(4)においてR11〜R14がすべて水素で、r及びsが1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが最も好ましい。
【0070】
これら低屈折率モノマーと高屈折率モノマーは、目的とする屈折率に応じて適宜の配合割合で混合して架橋を行うことができ、透明樹脂の屈折率を、これと組み合わせるガラス繊維の屈折率に合わせることができる。
【0071】
本発明で用いられる2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートには柔軟性付与などのため、所望の特性を損なうことのない範囲で、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。この場合、樹脂成分全体の屈折率がガラス繊維の屈折率に適合するよう配合量を調整する。
【0072】
(重合開始剤)
反応性モノマーを紫外線等の活性エネルギー線により架橋、硬化させるには、樹脂組成物中にラジカルを発生する光重合開始剤を加えるのが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用してもよい。
【0073】
光重合開始剤の樹脂組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートの合計100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を充分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取り外せないなどの問題が発生する恐れがある。
【0074】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、250〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を加えるのが好ましい。
【0075】
前記(B)のエポキシ樹脂は、使用した硬化剤によって硬化後のエポキシ樹脂の屈折率が異なるが、本発明においては、各々、硬化後の屈折率が、用いられるガラス繊維の屈折率よりも低く、或いは高くなるものであれば特に限定されない。
【0076】
屈折率の低いエポキシ樹脂、或いは高いエポキシ樹脂としては、ガラス繊維として、EガラスやSガラスなど屈折率が1.52以上のガラス繊維を用いる場合、酸無水物を硬化剤として、(i)比較的屈折率の低い脂環式エポキシ樹脂(下式(3)〜(8)など)、及び屈折率が中程度であるトリグリシジルイソシアヌレート(下式(9))から選ばれた少なくとも1種のエポキシ樹脂と、(ii)比較的屈折率の高いイオウ含有エポキシ樹脂(下式(1))及びフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(下式(2))から選ばれた少なくとも1種のエポキシ樹脂の組み合わせなどが好ましい。
【0077】
前記成分(i)としては、それらのうち、トリグリシジルイソシアヌレートが耐熱性の点からより好ましい。
【0078】
一方、NEガラスなど屈折率が1.52未満のガラス繊維を用いる場合、酸無水物を硬化剤として、(i)比較的屈折率の低い脂環式エポキシ樹脂(下式(3)〜(8)など)から選ばれた少なくとも1種のエポキシ樹脂と、(ii)屈折率が中程度であるトリグリシジルイソシアヌレート(下式(9))、並びに比較的屈折率の高いイオウ含有エポキシ樹脂(下式(1))及びフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(下式(2))から選ばれた少なくとも1種のエポキシ樹脂の組み合わせなどが好ましい。
【0079】
前記の比較的屈折率の低いエポキシ樹脂としては、下式(3)〜(8)にて示される脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0080】
【化8】


【0081】
(式中、Rはアルキル基またはトリメチロールプロパン残基を示し、qは1〜20である。)
【0082】
【化9】


【0083】
(式中、R及びRは各々独立して水素原子又はメチル基を示し、rは0〜2である。)
【0084】
【化10】

【0085】
(式中、sは0〜2である。)
【0086】
また、前記の屈折率が中程度であるトリグリシジルイソシアヌレートは下式(9)にて示される。
【0087】
【化11】

【0088】
前記の比較的屈折率の高いイオウ含有エポキシ樹脂としては、イオウを含有し、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されず、耐熱性や透明性の点から下式(1)に示すエポキシ樹脂が好ましい。
【0089】
【化12】

【0090】
(式中、XはSまたはSOを示し、YはOまたはSを示す。R〜Rは各々独立に水素原子又はメチル基を示し、nは0〜2である。)
【0091】
式(1)で示されるエポキシ樹脂の中でも、反応性、耐熱性や取り扱い易さから、XがSO、Yが酸素、R〜R10がすべて水素、nが0〜1であるビスフェノールSが最も好ましい。
【0092】
前記の比較的屈折率の高いフルオレン骨格含有エポキシ樹脂としては、フルオレン骨格を含有し、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、耐熱性や透明性の点から下式(2)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0093】
【化13】

【0094】
(式中、Rは水素又はメチル基を示し、mは0〜2である。)
【0095】
硬化後の屈折率の異なるエポキシ樹脂は、目的とする屈折率に応じて適宜の配合割合で混合し硬化することができ、エポキシ樹脂の屈折率をガラス繊維の屈折率に調整することができる。
【0096】
本発明で用いられるエポキシ樹脂には、柔軟性付与するなどのため、所望の特性を損なうことのない範囲で、単官能のエポキシ化合物を併用してもよい。この場合、樹脂全体の屈折率をガラス繊維の屈折率に合うように配合量を調整する。
【0097】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、硬化剤もしくは重合開始剤存在下、加熱又は活性エネルギー線を照射し、硬化して用いる。硬化剤は、特に限定されないが、優れた透明性の硬化物が得られやすいことから、酸無水物系の硬化剤やカチオン系触媒が好ましい。
【0098】
酸無水物の硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル無水ナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル水添無水ナジック酸、水添無水ナジック酸などがあげられ、なかでも透明性が優れることからメチルヘキサヒドロ無水フタル酸やメチル水添無水ナジック酸が好ましい。
【0099】
酸無水物系硬化剤を使用する場合は、硬化促進剤を併用することが好ましい。この硬化促進剤としては、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン等の三級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン化合物、四級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体等があげられ、これらのなかでもリン化合物が好ましい。これら硬化促進剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0100】
酸無水物系硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物系硬化剤における酸無水物基を0.5〜1.5当量に設定することが好ましく、0.7〜1.2当量がより好ましい。
【0101】
また、カチオン系触媒としては、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、三フッ化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素のアンモニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨウドニウム塩、アルミニウム錯体を含有するカチオン系触媒等をあげることができ、これらのなかでもアルミニウム錯体を含有するカチオン系触媒が好ましい。
【0102】
本発明のプラスチックフィルムに配合するガラス繊維の屈折率は特に限定されるものではないが、組み合わせる樹脂の屈折率の調整が容易なように1.50〜1.57の範囲にあるのが好ましい。特にガラス繊維の屈折率が1.50〜1.54である場合は、ガラスのアッベ数に近い樹脂が選択でき好ましい。樹脂とガラスとのアッベ数が近いと広い波長領域において両者の屈折率が一致し、広い波長領域で高い光線透過率が得られる。
【0103】
本発明に用いるガラス繊維は、ガラス繊維フィラメント(短繊維又は長繊維)、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布などのいずれでもよいが、中でもガラス繊維織布が好ましい。なお、本発明でガラス繊維という場合には、ガラスパウダー、ガラスビーズ、1mm以下のガラス繊維(短繊維)は含まない。
【0104】
ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、クォーツ、低誘導率ガラス、高誘導率ガラスなどがあげられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく、入手が容易なEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。
【0105】
ガラス繊維としてガラス繊維織布を用いる場合、フィラメントの織りかたに限定はなく、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織りなどが適用でき、中でも平織りが好ましい。
【0106】
ガラス繊維織布の厚みは、通常、30〜200μmであるのが好ましく、より好ましくは40〜150μmである。
【0107】
ガラス繊維織布やガラス不織布などのガラス繊維布は1枚だけでもよく、複数枚を重ねて用いてもよい。
【0108】
プラスチックフィルム組成物におけるガラス繊維の配合量は、1〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。ガラス繊維の配合量がこれより少ないと、線膨張係数が本発明の範囲に入らず、一方、これより多いと成形外観が低下する傾向にある。
【0109】
以上のようにして得られたプラスチックフィルム基板は、30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であり、好ましくは0ppm/℃以上、30ppm/℃以下の範囲である。本発明において、線膨張係数の測定方法は、以下の方法による。
【0110】
JIS K7197に準じて、セイコー電子(株)製TMA/Ss120C型熱応力歪測定装置を用いて測定した。
【0111】
〔プラスチックフィルム基板上にガス遮蔽性の層を形成する工程〕
本発明において、ガス遮蔽性の層を形成する工程は、少なくともガスバリア層を形成する工程を有することが好ましい。
【0112】
ガスバリア層を有すると、プラスチックフィルムのガス透過性が大幅に低下するので、外気に含まれる水蒸気、酸素による有機EL素子へのダメージを抑制することによって、発光寿命を延ばすことができる。また、発光中に時間とともに増加する非点灯領域の拡大を抑制することができる。
【0113】
本発明の他の好ましい態様としては、プラスチックフィルム基板の透明電極側に、プラスチックフィルム基板/ガスバリア層/中間コート層/ガスバリア層を順に形成する工程を有することが好ましい。
【0114】
またプラスチックフィルム基板の透明電極側と反対側に、プラスチックフィルム基板/ガスバリア層/オーバーコート層を形成する工程を有することが好ましい。
【0115】
従って、好ましい層構成としては、オーバーコート層/ガスバリア層/プラスチックフィルム基板/ガスバリア層/中間コート層/ガスバリア層/透明電極となるような態様が挙げられる。
【0116】
ガスバリア層としては、透明性を有する無機酸化物膜を設けることが好ましい。この無機酸化物膜は、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム等の1種あるいは2種以上の酸化物を用いて形成することができ、特に酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンが好適に使用できる。
【0117】
無機酸化物膜は酸化珪素を用いた場合、スパッタロールコート装置に装填し、DCマグネトロンスパッタにより、酸素を反応性ガスに用いた反応性スパッタでSiをターゲットとして用いてSiOx膜を形成でき、厚みは、バリアー性と透明性とを考慮して10nm〜500nmの範囲で適宜設定することができる。このような無機酸化物膜は2層以上の多層構成であってもよく、また、窒化珪素等の窒化物を副成分として含有したものであってもよい。
【0118】
オーバーコート層は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂などを溶液、ラテックスあるいは無溶媒のまま、ワイアーバー、イクストルージョン、マイクログラビア、リバースロールなどの塗布方法、蒸着法、スパッター法などの方法で形成することができる。
【0119】
厚みは0.5μmから5μmの範囲が好ましい。
【0120】
また中間コート層は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂などを溶液、ラテックスあるいは無溶媒のまま、ワイアーバー、イクストルージョン、マイクログラビア、リバースロールなどの方法で形成することができる。
【0121】
厚みは0.5μmから5μmの範囲が好ましい。
【0122】
本発明において、前記ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルム基板の水蒸気透過率は、0.01g/m・24hr以下(JISK7129B法に基づき40℃90%RH時の測定値)であることが好ましい。
【0123】
0.01g/m・24hr以下であれば、有機EL素子の発光寿命を実用的な時間で確保でき、また非発光領域(ダークスポット)の成長が目立たないレベルに抑制できる。
【0124】
〔ガス遮蔽性の層の上に、透明電極層を設けて透明電極付き基板を形成する工程〕
透明電極層は、通常、有機EL素子における陽極として機能し、陽極は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。
【0125】
このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、Cul、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0126】
上記陽極は蒸着やスパッタリングなどの方法によりこれらの電極物質の薄膜を形成させ、フォトリソグラフイー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパックリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0127】
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、または、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0128】
本発明において、前記透明電極付き基板を形成した後、該基板をレーザーカッターを用いて所望の形状に切断する工程を有することが好ましい。基板そのものを小片に加工したり、任意の形状に切断加工したりする場合があるが、その場合に端部の微細な破片が発光層形成時に異物となり、高い歩留まりが得られない問題があるが、かかる切断において、通常の切断ナイフやハサミなどでは切り屑が生じ、特に本発明ではガラス繊維が装填されているので、そのガラス繊維の細かなガラス片が生じ、洗浄後の基板の表面に異物として残る問題があるが、レーザーカッターで切断すると、切断面の凹凸もなく、切り屑が生じない効果がある。なお、ガラス繊維が混入していないプラスチックフィルム基板をレーザーカッターで切断すると、炭化して粉が生じるが、ガラス繊維が混入している本発明の基板の場合には、炭化することなく、粉も生じない。
【0129】
レーザーは炭酸ガスレーザーが好ましく、エネルギーは20Wから50Wの範囲が好ましい。
【0130】
次に、本発明においては、前記透明電極付き基板をレーザーカッターを用いて所望の形状に切断する工程を経た後、有機溶媒による洗浄工程と該基板の真空下での脱気工程とを経由した後、有機層を形成することが好ましい。洗浄によって基板端部の切断切り屑の除去および切断部のプラスチックオリゴマーの除去による清浄化が実現し、脱気によってプラスチック基板中に拡散した有機溶媒や水分、酸素ガスの除去が実現し、得られた有機EL素子の長寿命化を図ることができるからである。
【0131】
有機溶媒による洗浄工程で用いる有機溶媒としては、イソプロピルアルコール、エタノールなどのアルコール系溶媒が好ましい。なかでもイソプロピルアルコールが好ましい。
【0132】
基板の真空下での脱気工程における真空度は10−3Paから10−7Paの範囲が好ましい。また、基板の内部に存在する水分や空気などのガス成分は基板内を拡散によって移動するため、基板が存在しないときの十分、排気時間を経た真空チャンバーの表示圧力と本発明の基板を設置したときの到達圧力は通常では差が生じる。基板からの放出ガスによる圧力上昇が、基板の存在しないときと同様で、実質的に無視できるくらいの圧力差となるよう、十分排気時間をとることが重要である。従って、所定の真空度に到達した直後に直ちに有機EL素子の各層の成膜を開始するのではなく、真空チャンバー内の圧力の時間変化がほとんどなくなった状態で成膜し、有機EL素子を形成することが肝要である。
【0133】
〔透明電極層の上に少なくとも発光層を含む有機層を形成する工程〕
本発明では、前記透明電極層を設けて透明電極付き基板を形成する工程後に、該透明電極層上に平坦化層を形成する工程を有し、次いで有機層を形成することが好ましい。
【0134】
平坦化層を形成すると、基板表面に存在する場合がある急峻な凹凸がなだらかになり、素子形成後に陽極と陰極との間で電界が集中することによるリーク電流が抑制される。有機EL素子に電圧を印加し次第に上昇させた場合、最初にショートする箇所は電界の集中する箇所であるため、平坦化層を形成した場合は、面積を拡大しても素子が焼損しにくくなり、発光の歩留まりが向上する。
【0135】
平坦化層としては、導電性材料が広く使えるが、電極から電荷を注入されやすい材料であって、分子が扁平な板状で、積み重なりやすい材料が好ましい。フタロシアニン系の材料が好ましく、特に銅フタロシアニン類(CuPC)が好ましい。平坦化層の形成は、真空中で蒸着法、スパッタ法、ケミカルベーパデポジション(CVD)法などの方法で形成することができる。
【0136】
平坦化層の厚みは1nmから50nmが好ましいが、厚すぎると発光電圧が高くなり、電力効率が低下する。また1nm未満では基板の表面の凹凸を十分に隠すことが出来ず、出来上がった素子に電圧を掛けた場合にリーク電流の増加と電流集中による破損の可能性が大きくなる。
【0137】
なお、本発明における有機層については、後で詳しく説明するので、ここでは省略する。
【0138】
〔有機層の上に対向電極を形成する工程〕
対向電極は、通常、陰極として機能し、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウムーカリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0139】
これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。
【0140】
上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。または、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極の何れか一方が、透明または半透明であれば発光効率が向上するので好都合である。
【0141】
〔封止工程〕
本発明においては、このようにして透光性の基板上に形成された、前記有機EL素子を構成する各層の上(対向電極の上)に、別の封止部材を用いて封止する。
【0142】
封止部材としては、ガラス、樹脂、セラミック、金属、金属化合物、またはこれらの複合体等で形成してもよく、JIS Z−0208に準拠した試験において、その厚さが1μm以上で水蒸気透過率が1g/m2・24hr(1.013×10−1MPa、25℃)以下であることが望ましい。
【0143】
また、本発明に係る透光性のプラスチックフィルム基板を用いることも好ましく、両方の基板を透湿性の低い、可撓性の高い基板とすることで、衝撃に強い有機EL素子が形成出来、また、発光面が曲面である面光源にも適用可能である。
【0144】
また、対向電極側(陰極、例えばAl、Mg電極側)の封止部材(ガラス、フィルム等)においても、電界発光が吸収されたり、背面側に光が拡散するのを抑制するため、封止部材の陰極(Al、Mgなど)側に向き合う表面には白色酸化チタンを充填した顔料層を形成することが好ましい。
【0145】
封止は、封止部材の、例えば、対向陰極(上部電極)側と向き合う面の周辺部に塗布法や転写法等によって設けられたほぼ枠状の接着剤層(又はシール材)を介して、対向する前記有機EL素子各層が形成された透光性の基板とが互いに貼り合わされることで行われる。
【0146】
接着剤層は、熱硬化型エポキシ系樹脂、紫外線硬化型エポキシ系樹脂、または反応開始剤をマイクロカプセル化して加圧することにより反応が開始する常温硬化型エポキシ系樹脂等を用いることができる。この場合、接着剤層の所定の箇所には空気逃げ用開口部等を設け(図省略)封止を完全にする。空気逃げ用開口部は、真空装置内において減圧雰囲気(真空度1.33×10−2MPa以下が好ましい)或いは窒素ガスまたは不活性ガス雰囲気中において、上記硬化型エポキシ系樹脂のいずれか、或いは紫外線硬化型樹脂等で封止される。
【0147】
エポキシ系樹脂の例としては、ビスフェノールA形、ビスフェノールF形、ビスフェノールAD形、ビスフェノールS形、キシレノール形、フェノールノボラック形、クレゾールノボラック形、多官能形、テトラフェニロールメタン形、ポリエチレングリコール形、ポリプロピレングリコール形、ヘキサンジオール形、トリメチロールプロパン形、プロピレンオキサイドビスフェノールA形、水添ビスフェノールA形、またはこれらの混合物を主剤としたものである。
【0148】
又、本発明において、素子内に水分を吸収する、或いは水分と反応する材料(例えば酸化バリウム等)を上記基板に層形成して封入することもできる。
【0149】
《有機EL素子の構成層とドーパント》
本発明において、有機層は少なくとも発光層を有していればよく、ここで、発光層は、広義の意味では、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する層のことであり、具体的には、陰極と陽極からなる電極に電流を流した際に発光する化合物を含有する層のことをさす。
【0150】
本発明において、発光層は、発光層の主材料となる発光層ホスト(以下、ホスト化合物ともいう)にりん光材料(以下、りん光性化合物ともいう)をドーパントとして含有させたものである。
【0151】
本発明において好ましい有機層は、正孔輸送性と電子輸送性等、異なる機能を有する第1の層および第2の層の間に発光層を設けたものがよい。
【0152】
一般に、発光層を構成する材料が2種以上であるとき、主成分をホスト化合物、その他の成分をドーパントといい、本発明においては、上記のように前記リン光性ドーパントが用いられる。
【0153】
その場合、主成分であるホスト化合物に対するドーパントの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜15質量%未満である。
【0154】
(ホスト化合物)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、ホスト化合物としては、有機EL素子に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いてもよい。また前記の正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが発光層ホスト化合物としても使用できる。
【0155】
ホスト化合物としては、有機化合物または錯体であることが好ましい。例えば高分子材料でもよく、さらに前記ホスト化合物を高分子鎖に導入した、または前記ホスト化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
【0156】
発光ホスト(ホスト化合物)との例としては、カルバゾール誘導体、ビフェニル誘導体、スチリル誘導体、ベンゾフラン誘導体、チオフェン誘導体、アリールシラン誘導体等の部分構造を単位として含む材料が挙げられる。なかでもカルバゾール誘導体とビフェニル誘導体は高い発光効率を示す好ましい発光材料である。 ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0157】
(ドーパント)
近年、プリンストン大から励起三重項からのりん光発光を用いる有機EL素子の報告がなされ(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154頁(1998年))、励起一重項からの蛍光発光を用いる有機EL素子に比べて、原理的に発光効率が最大4倍となり注目されている。本発明においても、りん光性化合物(ドーパント)を含有することが発光効率の点で好ましい。
【0158】
本発明におけるりん光性化合物とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、りん光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物である。りん光量子収率は好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上である。
【0159】
上記りん光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのりん光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるりん光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記りん光量子収率が達成されれば良い。
【0160】
ドーパントの原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをドーパントに移動させることでドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはドーパントがキャリアトラップとなり、ドーパント化合物上でキャリアの再結合が起こりドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、ドーパント化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0161】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、ドーパントとして用いられるりん光性化合物としては、好ましくは元素の周期律表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0162】
以下に、本発明で用いられるりん光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。なお含有するりん光性化合物は、重合性官能基または反応性官能基を有していてもいなくてもよい。
【0163】
【化14】

【0164】
【化15】

【0165】
【化16】

【0166】
本発明の有機層は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層及び陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で挟持されていることが好ましい。
【0167】
有機層の具体的な層構成としては以下に示される構造が挙げられる。
【0168】
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
【0169】
《発光層》
本発明の有機EL素子に係る発光層について説明する。
【0170】
発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0171】
その形成方法としては、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成することが出来るが、本発明では、特に蒸着法が好ましい。
【0172】
一般的に発光層は正孔輸送層よりも陰極側に配置する方が素子の性能上好ましく、従って正孔輸送材料に比べれば発光層に用いられる材料は全て相対的には(本発明の定義では)電子輸送材料になる。
【0173】
尚、本発明において、正孔輸送材料および電子輸送材料と言う場合には、該2つの材料のうち、より最高被占分子軌道(HOMO)レベルの高い(真空順位から近い)ものが正孔輸送材料、もう一方が電子輸送材料と定義する。
【0174】
(発光層の膜厚)
このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲に膜厚調整することが好ましい。
【0175】
次に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等、発光層と組み合わせて有機EL素子を構成するその他の層について説明する。
【0176】
《正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層》
本発明に用いられる、正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、)発光層に陰極、電子注入層、または電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
【0177】
《正孔注入材料、正孔輸送材料》
この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0178】
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ビラゾリン誘導体及びビラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニりん系共重合体、または、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフイリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0179】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′一テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−P−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−P−トリルアミノフェニル)シクロへキサン;N,N,N′,N′−テトラ−P−トリルー4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−P−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロへキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−P−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′ −ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−P−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル〕スチルペン;4−N,N−ジフェニルアミノー(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシー4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更に、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターパースト型に連結された4,4′,4〃−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルア
ミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0180】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、または、これらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0181】
または、P型−Si、P型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0182】
(正孔注入層の膜厚、正孔輸送層の膜厚)
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0183】
《電子輸送層、電子輸送材料》
本発明に係る電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0184】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオビランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルポン酸無水物、カルポジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、有機金属錯体などが挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0185】
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0186】
または、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロー8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0187】
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更には、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。または、発光層の材料として例示したジスチリルビラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0188】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
【0189】
(電子輸送層の膜厚)
電子輸送層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜5μmの範囲に調整することが好ましい。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、或いは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0190】
また、本発明においては、蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、または電子輸送層に前記りん光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより更にEL素子の発光効率を高めることができる。これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が350nm〜440nm、更に好ましくは390nm〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
【0191】
次に、有機層を有する有機EL素子を作製する好適な例を説明する。例として、前記の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるEL素子の作製法について説明する。
【0192】
まず適当な基板上に、所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる薄膜を形成させる。
【0193】
更に、陽極と発光層または正孔注入層の間、及び、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0194】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層問に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0195】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルフアスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0196】
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0197】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0198】
更に上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
【0199】
本発明に係る有機EL素子の製法については、前述したが、以下に補足説明する。
【0200】
薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法が好ましい。薄膜化に真空蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0201】
前記の様に、プラスチックフィルム基板上に所望の電極用物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陽極を作製した後、該陽極上に前記の通り正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/電子注入層からなる各層薄膜を形成させた後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させて陰極を設け、所望の有機EL素子が得られる。
【0202】
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫してこの様に正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。または、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。尚、印加する交流の波形は任意でよい。
【実施例】
【0203】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0204】
実施例1
《ガラス繊維含有架橋樹脂入りプラスチックシートの作製》
下記多官能アクリレート樹脂(架橋後の屈折率1.560)を下記ガラス繊維に含浸した後に紫外線硬化装置により連続的に硬化し、樹脂60重量%、ガラス繊維40重量%、幅30cm、長さ100m、厚さ100μmのプラスチックフィルム(1)を得た。
【0205】
<多官能アクリレート樹脂>
ジシクロペンタジエニルジアクリレート(式1)
(東亞合成(株)製M−203、架橋後の屈折率1.527) 58重量部
ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(式3)
(東亞合成(株)試作品TO−2066、架橋後の屈折率1.606) 42重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(チバスペシャリティケミカル製、イルガキュア184) 0.5重量部
【0206】
<ガラス繊維>
Eガラス系のガラスクロス(厚さ50μm、屈折率1.560、ユニチカクロス製E06B(#1080))
【0207】
得られたプラスチックフィルム(1)の30℃から150℃における線膨張係数は、18ppmであった。
【0208】
またこのプラスチックフィルム(1)のガラス転移温度は、tanδmaxで評価したところ300℃以上であった。このプラスチックフィルム(1)の全光線透過率は90%であった。
【0209】
次に、図1に示すように、このプラスチックフィルム(符号1)を、スパッタロールコート装置に装填し、DCマグネトロンスパッタにより、酸素を反応性ガスに用いた反応性スパッタでSiをターゲットとして用いて、プラスチックフィルム(符号1)上に膜厚60nmのSiOx(x=1.8,XPSによる)の成膜を行って、これをガスバリア層(符号2)を形成した。
【0210】
次に、ガスバリア層(符号2)の上に、ロール巻き出し装置、マイクログラビアコーター、乾燥炉、UV照射装置、ロール巻取り装置を備える連続塗工機にて、エポキシアクリレートプレポリマー100重量部、ジエチレングリコール200重量部、酢酸エチル100重量部、ベンゼンエチルエーテル2重量部、シランカップリング剤1重量部の均一混合溶液を、連続塗工機のマイクログラビアコーターで塗布し、120℃の乾燥ゾーンを通過させた後、紫外線を照射して、2μmの厚さのオーバーコート層(符号3)を形成した。
【0211】
次に、このオーバーコート層(符号3)を形成したプラスチックフィルム(符号1)をこのオーバーコート層(符号3)と反対面にガスバリア層(符号4)を成膜するために、スパッタロールコート装置に装填し、DCマグネトロンスパッタにより、酸素を反応性ガスに用いた反応性スパッタでSiをターゲットとして用いて、ガスバリア層1の対面に膜厚60nmのSiOx(x=1.8,XPSによる)の成膜を行って、これをガスバリア層(符号4)を形成した。
【0212】
次に、ガスバリア層(符号4)の上に中間コート層(符号5)をオーバーコート層(符号3)と同様に2μm形成し、これを中間コート層(符号5)とした。
【0213】
最後に、この中間コート層(符号5)の上にバリア層(符号2)及び(符号4)と同様にSiOx(x=1.8,XPSによる) を膜厚60nm成膜し、これをガスバリア層(符号6)を形成した。
【0214】
上記のようにガスバリア層(符号6)まで形成したプラスチックフィルム基板(符号10)をJISK7129B法に基づき40℃90%RH時の水蒸気透過率を測定したところ、0.01g/(m・24hr)以下であった。
【0215】
《ITOの成膜と基板の裁断と洗浄》
上記基板のバリア層(符号6)の上に、酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極(符号7)をスパッタにより100nmの厚みとなるように形成した。
【0216】
このときITOがスパッタされない部分をシャドーマスクを用いて同時に形成し、通電時の電極の形状を基板上に作成した。
【0217】
これをレーザーカッター(炭酸ガスレーザー:エネルギー30W)をもちいて、30mm角の個片に切断した。
【0218】
このITOパターン付きのプラスチック基板を純水、5%界面活性剤水溶液、アンモニア性過酸化水素水、イソプロピルアルコール(IPA)で逐次洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させた。(基板1)
【0219】
〈本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製〉
<緑色りん光標準構成>
次に、本発明のITO電極付き基板(基板1)上に、銅フタロシアニン類(CuPC)を平坦化層(図示せず)として20nm蒸着し、その上に有機層(符号8)を形成した。
【0220】
有機層は、最初に平坦化層の上に、正孔輸送材料NPDを真空蒸着後、発光層ホストCBPと発光層ドーパントIr(ppy)3(例示Ir−1)を共蒸着で成膜した。次いで正孔阻止材料としてBAlq、電子輸送材料Alqを各10nm、40nmの厚さになるように成膜した。
【0221】
その上に対向電極(符号9)として、LiFを0.5nm、およびアルミニウムを150nm蒸着して積層型素子を形成した。
【0222】
この素子を窒素雰囲気下でステンレス製封止缶(符号10)と紫外線硬化性接着剤(符号11)を用いてはりあわせた。
【0223】
なお封止缶と素子の間には酸化バリウムを脱水剤として入れた。この素子にインジウムチンオキシド側を正、アルミニウム側を負として10Vの電圧を印加すると、ピーク波長510nmの緑色の発光が観察された。この素子をOLED1−1とする。
【0224】
【化17】

【0225】
【化18】

【0226】
【化19】

【0227】
【化20】

【0228】
【化21】

【0229】
比較例1
<PETのITO基板の場合>
市販の0.2mm厚みのポリエチレンテレフタレート基板上に、酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極をスパッタにより100nmの厚みとなるように形成した。このときITOがスパッタされない部分をシャドーマスクを用いて同時に形成し、通電時の電極の形状をポリエチレンテレフタレート基板上に作成した。
【0230】
ポリエチレンテレフタレート基板の30℃から150℃における線膨張係数は、60 ppm/℃である。
【0231】
次いで、各パターンを30×30mmの個片にナイフカッターで切り出し、このITOパターン付きのポリエチレンテレフタレート基板を純水、5%界面活性剤水溶液、アンモニア性過酸化水素水、イソプロピルアルコールで逐次洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させた。これを基板2とする。
【0232】
〈比較用有機エレクトロルミネッセンス素子の作製〉
基板2上(インジウムチンオキシド透明電極(ITO電極)を有する洗浄済みポリエチレンテレフタレート基板)にCuPCを平坦化層として20nm蒸着し、正孔輸送材料NPDを真空蒸着後、発光層ホストCBPと発光層ドーパントIr(ppy)3を共蒸着で成膜し、次いで正孔阻止材料としてBAlq、電子輸送材料Alq3を各10nm、40nmの厚さになるように成膜し、次いで、LiFを0.5nmおよびAlを150nm膜厚で蒸着して陰極を形成して、有機EL素子を作製した。
【0233】
この素子を窒素雰囲気下でステンレス製封止缶と紫外線硬化性接着剤を用いてはりあわせた。なお封止缶と素子の間には酸化バリウムを脱水剤として入れた。
【0234】
このようにして作製した有機EL素子OLED2−1とした。
【0235】
実施例2
実施例1の電極付きガラス繊維含有樹脂基板(基板1)を用いて、実施例1のレーザーカット後の基板洗浄のイソプロピルアルコールの代わりに純水で洗浄を行なった他は実施例1と同様にして、積層型素子を形成した。実施例1と同様に封止を施し、素子OLED1−2を得た。
【0236】
実施例3
実施例1の電極付きガラス繊維含有樹脂基板(基板1)を用いて、真空排気を5×10−4Paの圧力で試作し、実施例1と同様な方法で封止を施し、素子OLED1−2を作製した。
【0237】
実施例4
実施例1において、レーザーカットの代わりにナイフカットを採用した以外は、同様にして素子OLED1−4を作製した。
【0238】
実施例5
実施例1において、レーザーカットの代わりにナイフカットを採用し、IPA洗浄を省略し、更に平坦化層を設けず、真空排気圧を表1のように高くした以外は同様にして素子OLED1−5を作製した。
【0239】
比較例2
比較例1において、基板2のITOパターニング後の断裁加工をレーザーカッターを用い、成膜時の真空排気を5×10−3Paで行った他は、比較例1と全く同様にして、積層型素子を形成し、素子OLED2−2を作製した。
【0240】
比較例3
比較例1において、0.2mm厚みのポリカーボネート(線膨張係数は70ppm/℃)を基板にもちいて基板2と同様の方法で、ITOパターニング済みの基板3を作製した。比較例1とまったく同様にして、積層型素子を形成し、素子OLED3−1を作製した。
【0241】
〈有機エレクトロルミネッセンス素子の評価〉
以下のようにして得られた有機EL素子の評価を行い、結果を表1に示す。
【0242】
(発光輝度)
有機EL素子OLED1−1では、初期駆動電圧4Vで電流が流れ始め、緑色の発光を示した。有機EL素子OLED1−1の温度23℃、10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m2)、発光効率(lm/W)を測定した。
【0243】
発光輝度、発光効率は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。発光輝度については、CS−1000(ミノルタ製)を用いて測定した。
【0244】
(耐久性・ダークスポット成長)
10mA/cm2の一定電流で200時間駆動させた後に、6mm×15mm四方の範囲での目視で確認できる非発光点(ダークスポット)の面積を測定した。
【0245】
(輝度ムラ)
6mm×15mmの発光面を3mm×3mmの領域10箇所に区分けし、各領域の中央部の輝度を前述の発光輝度測定法で計測した後、輝度のバラツキを10個の測定値の最大輝度と最小輝度の差を10個の平均輝度で除して、変動率(輝度バラツキ)とした。
【0246】
(発光歩留まり)
各実施例、比較例の素子を10個同様に作製し、試作直後の最初の通電時に電流が流れるにもかかわらず、全面発光しないものを除き、良品として選定し、試作の容易性と異物欠陥の頻度の指標とした。
【0247】
【表1】

【0248】
表1から明らかなように、本発明の基板を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子ではダークスポットが大幅に減少し、特に断裁工程、洗浄工程を改良することで良品の収率(歩留まり)も向上することが明らかになった。
【0249】
本発明の基板を使用することにより、発光歩留まりを向上させる効果があることがわかる(実施例1−5及び比較例2)。また実施例1−3ではレーザーカッターを使用しているため、ナイフを使用している実施例4−5に比べ、発光歩留まりが向上しており、本発明特有の基板とレーザーカッターを組み合わせることで相乗効果が得られることがわかる。
【0250】
また、本発明の基板では有機溶媒での洗浄を併用することで、輝度ムラを低減できることがわかる(実施例1−4と実施例5)。更に実施例2と実施例1を対比すると、純水よりも有機溶媒の方が輝度ムラ低減効果が高いことがわかる。
【0251】
さらに、本発明の基板と平坦化層を併用すると、実施例5と実施例1−4の対比から明らかなように、発光歩留まりが向上し、また実施例3−5と実施例1,2の対比から、蒸着時の真空排気圧をより高真空とすることで、長寿命化、即ちダークスポット成長が抑制されることがわかる。従って、発光歩留まりが向上し、輝度ムラが低減し、ダークスポット成長が抑制されることにより、複合的な効果として実用可能な可撓性のある耐衝撃性に優れたプラスチック製のバックライトが得られる。
【0252】
また、本発明の30℃から150℃における線膨張係数が小さいプラスチック基板を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光輝度が高い場合であっても、発熱による変形や短絡による消灯が発生しにくいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接祝認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図
【符号の説明】
【0255】
1:プラスチックフィルム
2:ガスバリア層
3:オーバーコート層
4:バリア層
5:中間コート層
6:ガスバリア層
7:透明電極
8:有機層
9:対向電極
10:ステンレス製封止缶
11:接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムからなる基板上に、透明電極層と、少なくとも発光層を含む有機層と、対向電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記プラスチックフィルムは、架橋樹脂とガラス繊維とを含み、且つ該プラスチックフィルムの30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であり、前記発光層が、発光層ホストとりん光材料からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記ガラス繊維を、プラスチックフィルム組成物に対して、1〜90重量%配合することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記ガス遮蔽性の層が、少なくともガスバリア層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/m・24hr以下(JIS K7129B法に基づき40℃90%RH時の測定値)であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
架橋樹脂とガラス繊維とを含むプラスチックフィルム基板を形成する工程と、
該プラスチックフィルム基板上にガス遮蔽性の層を形成する工程と、
該ガス遮蔽性の層の上に、透明電極層を設けて透明電極付き基板を形成する工程と、
該透明電極層の上に少なくとも発光層を含む有機層を形成する工程と、
該有機層の上に対向電極を形成する工程とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記プラスチックフィルム基板は、30℃から150℃における線膨張係数が、0ppm/℃以上、40ppm/℃以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記透明電極付き基板を形成した後、該基板をレーザーカッターにより所望の形状に切断する工程を有することを特徴とする請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記透明電極付き基板をレーザーカッターにより所望の形状に切断する工程を経た後、有機溶媒による洗浄工程と該基板の真空下での脱気工程とを経由した後、有機層を形成することを特徴とする請求項5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
前記透明電極付き基板を形成する工程後に、該透明電極層上に導電性の平坦化層を形成する工程を有し、次いで有機層を形成することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス繊維を、プラスチックフィルム組成物に対して、1〜90重量%配合することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記ガス遮蔽性の層を形成する工程が、少なくともガスバリア層を形成する工程を有することを特徴とする請求項5〜9の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
前記ガス遮蔽性の層を有するプラスチックフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/m・24hr以下(JISK7129B法に基づき40℃90%RH時の測定値)であることを特徴とする請求項5〜10の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
発光層が、発光層ホストとりん光材料からなることを特徴とする請求項5〜11の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2008−21575(P2008−21575A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193757(P2006−193757)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】