説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】画素を高精細化したとしても、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、あるいは、室温のみならず、酸化しやすい高温環境下に放置したとしても、長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を防止することができる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】支持基板上に、下部電極と、層間絶縁膜と、湿式成膜した有機発光媒体と、対向電極とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記層間絶縁膜および湿式成膜した有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に有機EL表示装置と称する場合がある。)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子、あるいは当該有機EL素子と蛍光媒体等とを組み合わせた有機EL表示装置において、大気中の水分による影響を排除して、発光領域中に存在する無発光領域または無発光箇所(ダークスポットと称する場合がある。)の発生を抑制するために、各種封止手段や防湿手段が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、封止手段を用いて、有機EL素子および乾燥剤をそれぞれ封入した有機EL表示装置が開示されており、特許文献2には、防湿のために、上部電極上に、酸化ゲルマニウム(GeO)等の無機化合物からなる保護膜を設けた有機EL素子が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの有機EL表示装置や有機EL素子は、より高精細化されるにつれ、図15に示すように、画素の周囲に、幅あるいは直径数十μm程度の無発光領域または無発光箇所が発生し、そのため発光領域が縮小して、発光輝度が低下するという問題が見られた。
【0005】
また、特許文献3および特許文献4に開示されたインクジェット法で成膜された有機発光媒体や、特許文献5に開示されたミセル電解方式で成膜された有機発光媒体は、真空蒸着法で成膜された有機発光媒体と比較して、無発光領域または無発光箇所の発生頻度が著しく高く、従来の封止手段や防湿手段を用いても、無発光領域または無発光箇所の発生を効果的に抑制することが困難であるという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、従来の問題を検討した結果、外部から侵入してくる水分よりも、図16および図17に概念的に示すように、有機EL表示装置に設けられた平坦化層や層間絶縁膜に含まれた水分が、有機発光媒体あるいは上部電極に移動し、これらの酸化劣化による悪影響を及ぼすことを見出し、それを改良して、耐久性に優れた有機EL表示装置を提案している。
【0007】
例えば、特許文献6においては、蛍光媒体と下部電極との間に設けた平坦化層における含水率を1.0重量%以下とした有機EL表示装置を提案しており、また、特許文献7においては、層間絶縁膜の一部に吸水剤を含有させて、含水率を0.1重量%以下とした有機EL表示装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】特開平7−14675号公報
【特許文献3】特開平11−40358号公報
【特許文献4】特開平11−54270号公報
【特許文献5】特開平11−87054号公報
【特許文献6】特開平11−26156号公報
【特許文献7】特開平11−54285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献6や特許文献7に開示された有機EL表示装置によれば、室温状態で保管した場合においては、無発光領域または無発光箇所の発生をある程度抑制することができても、例えば80℃の高温環境下で保管した場合においては、無発光領域または無発光箇所の発生や発光面の劣化を十分に抑制して、長期間にわたって高い発光輝度を得ることは困難であった。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、かかる問題をさらに鋭意検討したところ、有機EL表示装置を組み立てた後の有機発光媒体等の含水率と、無発光領域または無発光箇所の発生または発光面の劣化との間に一定の臨界的関係があり、当該含水率を一定範囲以下の値とすることにより、画素周囲における無発光領域または無発光箇所の発生を飛躍的に抑制できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、画素をより高精細化しても(例えば、画素サイズ100μm×300μm角以下)、有機発光媒体を湿式成膜したとしても(例えば、塗布方式)、あるいは、高温環境下で長時間保管したとしても(例えば、80℃、2週間以上)、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を防止することができ、結果として、耐熱性に優れ、長期間にわたって高い発光輝度が得られる有機EL表示装置、およびこのような有機EL表示装置が効率的に得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] 本発明によれば、支持基板上に、下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを含む有機EL表示装置であって、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とした有機EL表示装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0013】
すなわち、このように有機EL表示装置を構成することにより、有機発光媒体中の水分に起因した、対向電極の酸化劣化を防止することができ、室温はもちろんのこと、高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することができる。
【0014】
[2] また、本発明の別の態様によれば、支持基板上に、下部電極と、層間絶縁膜(電気絶縁層と称する場合がある。)と、有機発光媒体と、対向電極とを含む有機EL表示装置において、層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とした有機EL表示装置が提供される。
このように構成することにより、上下電極間ですぐれた電気絶縁性が得られ、高精細なマトリックス表示が可能となるばかりか、80℃等の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することができる。
なお、当該有機EL表示装置の変形例として、対向電極の有機発光媒体と反対面に、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材や、平坦化膜、さらには封止用部材等を設けることも好ましい。
【0015】
[3] また、本発明のさらに別の態様によれば、支持基板上に、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材と、下部電極と、層間絶縁膜と、有機発光媒体と、対向電極とを含む有機EL表示装置において、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、さらに、層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とした有機EL表示装置が提供される。
このように構成することにより、カラー表示が容易となるばかりか、80℃等の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することができる。
【0016】
[4] また、本発明のさらに別の態様によれば、支持基板上に、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材と、平坦化層と、下部電極と、層間絶縁膜と、有機発光媒体と、対向電極とを含む有機EL表示装置において、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、平坦化層、層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とした有機EL表示装置が提供される。
このように構成することにより、カラー表示が容易となるばかりか、蛍光媒体等の表面凹凸に起因したショート発生を有効に防止することができ、さらには80℃等の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することができる。
【0017】
[5] また、本発明の別の態様は有機EL表示装置の製造方法であって、支持基板上に、下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを設けるとともに、有機発光媒体の形成前および形成後、あるいはいずれか一方の時に脱水工程を設けて脱水処理を行うことにより、有機EL表示装置組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴としている。
このように実施することにより、80℃等の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生を抑制可能な有機EL表示装置を効率的に提供することができる。
【0018】
[6] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水工程における露点を−10℃以下の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、簡易な設備を用いて、より短時間で脱水処理することが可能となる。
【0019】
[7] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水工程における真空度を13.3Pa(0.1Torr)以下の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、簡易な設備を用いて、より短時間で脱水処理することが可能となる。
【0020】
[8] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水工程における加熱温度を60〜300℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、簡易な設備を用いて、より短時間で脱水処理することが可能となる。
【0021】
[9] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水工程において、不活性ガスを導入することが好ましい。
このように実施することにより、有機発光媒体または電極を酸化させることなく、より短時間で脱水処理することが可能となる。
【0022】
[10] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水ユニットと、成膜ユニットと、これらのユニットを連結する搬送ユニットとを含む製造装置を用いるとともに、
脱水ユニットを用いて、有機発光媒体形成前および形成後、あるいはいずれか一方の時に支持基板の脱水処理を行う工程と、
搬送ユニットに含まれる搬送装置を用いて当該支持基板を前記成膜ユニットに移送する工程と、
当該成膜ユニットにより有機発光媒体を形成する工程と、
を含むことが好ましい。
このように実施することにより、有機EL表示装置の組み立て後の、有機発光媒体における含水率を効率的に低下させることができる。
【0023】
[11] また、本発明の別の有機EL表示装置における製造方法の態様は、支持基板上に、下部電極、有機発光媒体、および対向電極を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子層と、封止用基板上に、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいは一方の部材を設けた封止部材とを積層してなる有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法において、
少なくとも前記有機発光媒体および封止部材に対し、脱水工程を設けて脱水処理することにより、有機EL表示装置の組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴としている。
このように実施することにより、カラー化が容易であり、しかも封止用基板側に蛍光媒体等を設けた場合であっても、長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生を抑制可能な有機EL表示装置を効率的に提供することができる。
【0024】
[12] また、本発明のさらに別の有機EL表示装置における製造方法の態様は、支持基板上に、下部電極と、有機発光媒体と、対向電極とを設けた有機EL表示装置の製造方法であり、有機発光媒体を湿式成膜した後に、脱水工程を設けて脱水処理することにより、有機EL表示装置の組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴としている。
このように実施することにより、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、有機発光媒体や対向電極を酸化劣化させることなく、長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生を抑制可能な有機EL表示装置を効率的に提供することができる。
【0025】
[13] また、本発明の有機EL表示装置の製造方法を実施するにあたり、脱水ユニットと、成膜ユニットと、これらのユニットを連結する搬送ユニットとを含む製造装置を用いるとともに、
有機発光媒体を湿式成膜する工程と、
脱水ユニットを用いて、有機発光媒体形成後の支持基板の脱水処理を行う工程と、
搬送ユニットに含まれる搬送装置を用いて当該支持基板を前記成膜ユニットに移送する工程と、
当該成膜ユニットにより対向電極を形成する工程と、
を含むことが好ましい。
このように実施することにより、有機EL表示装置の組み立て後の、有機発光媒体における含水率を効率的に低下させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、画素を高精細化したとしても、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、あるいは、室温のみならず、酸化しやすい高温環境下に放置したとしても、長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を防止することができる有機EL表示装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】は、有機発光媒体の含水率と、発光面積比との関係を示す図である。
【図2】は、有機EL表示装置の断面図である(その1)。
【図3】は、有機EL表示装置の断面図である(その2)。
【図4】は、有機EL表示装置の断面図である(その3)。
【図5】は、有機EL表示装置における電極のマトリックスを示す平面図である。
【図6】は、図5に示す有機EL表示装置のX−X’断面図である。
【図7】は、有機EL表示装置に設けられたTFT素子の断面図である。
【図8】は、有機EL表示装置の断面図である(その4)。
【図9】は、有機EL表示装置の断面図である(その5)。
【図10】は、有機EL表示装置の断面図である(その6)。
【図11】は、有機EL表示装置の製造装置の概略図である(その1)。
【図12】は、有機EL表示装置の製造装置の概略図である(その2)。
【図13】は、有機EL表示装置の製造装置における脱水ユニットの概略図である(その1)。
【図14】は、有機EL表示装置の製造装置における脱水ユニットの概略図である(その2)。
【図15】は、従来の有機EL表示装置における無発光領域または無発光箇所発生の説明に供する図である(その1)。
【図16】は、従来の有機EL表示装置における無発光領域または無発光箇所発生の説明に供する図である(その2)。
【図17】は、従来の有機EL表示装置における無発光領域または無発光箇所発生の説明に供する図である(その3)。
【図18】は、全自動水分吸脱着測定装置の説明に供する図である。
【図19】は、図18に示す全自動水分吸脱着測定装置により測定した水分測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、参照する図面は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。したがって、この発明は図示例にのみ限定されるものではない。また、図面では、断面を表すハッチングを省略する場合がある。
【0029】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の有機EL表示装置18は、図3にその断面を示すように、支持基板1と、蛍光媒体9(またはカラーフィルタ11)と、平坦化層10と、層間絶縁膜3と、下部電極2と、有機発光媒体4と、対向電極(上部電極)5と、封止用ガラス基板8とから実質的に構成されている。
【0030】
なお、蛍光媒体9またはカラーフィルタ11は、それぞれ単独で設けることもできるし、あるいは両方とも設けることも好ましい。
【0031】
そして、第1の実施形態では、図3に示す有機発光媒体4(あるいは、有機発光媒体4、蛍光媒体9(またはカラーフィルタ11)、平坦化層10、および層間絶縁膜3の混合物)の含水率を0.05重量%以下の値としてあるため、画素を高精細化したとしても、あるいは、高温条件下で駆動させたとしても、無発光領域または無発光箇所の発生を抑制し、発光領域の減少を有効に防止することができる。
【0032】
以下、第1の実施形態において、図3を適宜参照しながら、有機EL表示装置の構成要素や、その含水率等について説明する。
【0033】
(1)有機発光媒体
(1)−1 構成
有機発光媒体は、電子と正孔とが再結合して、EL発光が可能な有機発光層を含む媒体と定義することができる。かかる有機発光媒体は、例えば、陽極上に、以下の各層を積層して構成することができる。
(i)有機発光層
(ii)正孔注入層/有機発光層
(iii)有機発光層/電子注入層
(iv)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(v)有機半導体層/有機発光層
(vi)有機半導体層/電子障壁層/有機発光層
(vii)正孔注入層/有機発光層/付着改善層
これらの中で、(iv)の構成が、より高い発光輝度が得られ、耐久性にも優れていることから通常好ましく用いられる。
【0034】
(1)−2 機能および種類
有機発光媒体に使用される有機発光材料の種類としては、特に制限されるものではないが、より優れた発光特性や耐久性を得ることができることから、以下の3つの機能を併せ持つことが好ましい。
(a)電荷の注入機能:電界印加時に陽極あるいは正孔注入層から正孔を注入することができる一方、陰極層あるいは電子注入層から電子を注入することができる機能。
(b)輸送機能:注入された正孔および電子を電界の力で移動させる機能。
(c)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光につなげる機能。
【0035】
したがって、このような機能を有する有機発光材料として、例えば、p−クオーターフェニル誘導体、p−クィンクフェニル誘導体、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、金属キレート化オキシノイド化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、ブタジエン系化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体、ポリフェニル系化合物等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0036】
また、これらの有機発光材料のうち、芳香族ジメチリディン系化合物としての、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル(DTBPBBiと略記する。)や、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBiと略記する。)およびこれらの誘導体がより好ましい。
【0037】
また、ジスチリルアリーレン骨格等を有する有機発光材料をホスト材料とし、当該ホスト材料に、ドーパントとしての青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系材料、あるいはホストと同様の蛍光色素をドープした材料を併用することも好適である。より具体的には、ホスト材料として、上述したDPVBi等を用い、ドーパントとして、N,N−ジフェニルアミノベンゼン(DPAVBと略記する。)等を用いることが好ましい。
【0038】
また、所望のEL発光色に応じて、上述した有機発光材料を選択することも好ましい。例えば、紫外域から紫色のEL発光を得たい場合には、p−クオーターフェニル誘導体等を使用することが好ましく、青色から緑色のEL発光を得たい場合には、スチリルベンゼン系化合物等を使用することが好ましい。また、白色のEL発光を得たい場合には、有機発光材料を選択し、青色発光体と、緑色発光体とを積層しておき、さらに赤色蛍光体を含有した構成することが好ましい。
【0039】
なお、有機発光媒体には、後述する蛍光媒体における蛍光色素や、その他染料や有機顔料等を含むことも好ましい。
【0040】
また、上述した有機発光材料としては、真空蒸着やスパッタリング等が可能なように、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定される数平均分子量が10,000未満の低分子材料を使用することが好ましいが、スピンコーターやインクジェット等を用いて均一に湿式成膜することができることから、逆に、数平均分子量が10,000以上の高分子材料を使用することも好ましい。
【0041】
このような高分子材料としては、例えば、ポリアリーレンビニレンおよびその誘導体(例えば、PPV)、ポリフルオレンおよびその誘導体、フルオレン含有共重合体およびその誘導体等が挙げられる。
【0042】
一方、有機発光媒体における正孔注入層には、1×10〜1×10V/cmの範囲の電圧を印加した場合に測定される正孔移動度が、1×10−6cm/V・秒以上であって、イオン化エネルギーが5.5eV以下である化合物を使用することが好ましい。このような正孔注入層を設けることにより、有機発光層への正孔注入が良好となり、高い発光輝度が得られたり、あるいは、低電圧駆動が可能となる。
【0043】
このような正孔注入層の構成材料としては、具体的に、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、縮合芳香族環化合物、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPDと略記する。)や、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATAと略記する。)等の有機化合物が挙げられる。
【0044】
また、正孔注入層の構成材料として、p型−Siやp型−SiC等の無機化合物を使用することも好ましい。
【0045】
なお、上述した正孔注入層と、陽極層との間、あるいは、上述した正孔注入層と、有機発光層との間に、導電率が1×10−10S/cm以上の有機半導体層を設けることも好ましい。このような有機半導体層を設けることにより、さらに有機発光層への正孔注入がより良好となる。
【0046】
また、有機発光媒体における電子注入層には、1×10〜1×10V/cmの範囲の電圧を印加した場合に測定される電子移動度が、1×10−6cm/V・秒以上であって、イオン化エネルギーが5.5eVを超える化合物を使用することが好ましい。このような電子注入層を設けることにより、有機発光層への電子注入が良好となり、高い発光輝度が得られたり、あるいは、低電圧駆動が可能となる。
【0047】
このような電子注入層の構成材料としては、具体的に、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体(Alキレート:Alq)、またはその誘導体、あるいは、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0048】
また、有機発光媒体における付着改善層は、かかる電子注入層の一形態とみなすことができ、すなわち、電子注入層のうち、特に陰極との接着性が良好な材料からなる層であり、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体またはその誘導体等から構成することが好ましい。
【0049】
なお、上述した電子注入層に接して、導電率が1×10−10S/cm以上の有機半導体層を設けることも好ましい。このような有機半導体層を設けることにより、さらに有機発光層への電子注入性が良好となる。
【0050】
(1)−3 膜厚
また、有機発光媒体の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、当該膜厚を5nm〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0051】
この理由は、有機発光媒体の膜厚が5nm未満となると、発光輝度や耐久性が低下する場合があり、一方、有機発光媒体の膜厚が5μmを超えると、印加電圧の値が高くなる場合があるためである。
【0052】
したがって、有機発光媒体の膜厚を10nm〜3μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20nm〜1μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
(1)−4 含水率
また、第1の実施形態において、無発光領域または無発光箇所の発生を抑制するためには、下記式(1)で定義される有機発光媒体の含水率(W)を0.05重量%以下の値とすることが必要である。
【0054】
また、さらに高温環境下においても、無発光領域または無発光箇所の発生を抑制するとともに、より高精細な画素においても発光面積の縮小が問題とならないようにするためには、有機発光媒体の含水率を0.0001〜0.04重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.0001〜0.03重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましく、0.0001〜0.01重量%の範囲内の値とすることが最も好ましい。
W={(重量A−重量B)/重量B}×100 (1)
重量A:外部から水分が混入しない環境下(例えば、ドライボックス内又はドライガス雰囲気中)で有機EL表示装置から採取された有機発光媒体について、全自動水分吸脱着測定装置(精密天秤付き)により測定される重量(mg)である。
重量B:有機発光媒体を、ドライボックス内又はドライガス雰囲気中で、例えば80℃、30分の条件で加熱脱水処理した後の有機発光媒体について、全自動水分吸脱着測定装置により測定される重量(mg)である。すなわち、水分の脱着により重量減少するが、重量Bはその減少して得られた値を意味する。
【0055】
ここで、全自動水分吸脱着測定装置の概要について、図18および図19を参照して説明する。
【0056】
図18に示す全自動水分吸脱着測定装置51は、装置の一例であるが、循環部Aと、水分測定部Bとから構成してあり、図面上点線でそれぞれ区分してある。そして、循環部Aは、ガス貯蔵部68と、このガス貯蔵部68から二股に分かれて設けられたドライガス循環装置67および湿潤ガス循環装置66と、これらの循環装置66、67と、水分測定部Bとを連結する循環路61とから構成されている。なお、これらの循環装置66、67は、水分測定部Bに含まれる制御室65によって、遠隔的に制御してある。
【0057】
一方、水分測定部Bは、制御室65と、天秤室62と、比較試料室(比較試料皿含む。)64と、ドライボックス56と、オイルバス52等から構成されている。また、ドライボックス56の周囲には、加熱装置57が設けてあり、さらにドライボックス56内において、測定試料を載置するための天秤53の近傍に、ドライボックス56内の温度をモニターするための温度センサー54と、湿度をモニターするための湿度センサー55とがそれぞれ設けてある。
【0058】
このように構成された全自動水分吸脱着測定装置51によれば、循環部Aから供給されたドライガスを、オイルバス52を通過させることにより温度又は湿度を一定にした後、このドライガスを注入口58を介してドライボックス56内に導入するとともに、加熱装置57により、ドライボックス56内の湿度および温度を一定に保持することができる。そして、このような状態で、精密天秤63を用いて、比較試料室64内の比較試料(リファレンス)と対比しながら、天秤53に載置された測定試料の重量を、制御室65において測定することが可能である。
【0059】
また、図19に重量を測定して得られた測定チャートを示すが、横軸に経過時間(分)を採って示してあり、縦軸に、試料の重量(g)を採って示してある。この試料の測定例では、重量Aが、554.440mgであり、重量Bが、554.300mgとなる。ただし、この例ではドライボックス56内の湿度を0%に制御してある。
【0060】
なお、重量Aおよび重量Bは、このように全自動水分吸脱着測定装置に設けられた精密天秤を用いて測定することが好ましいが、その他に、ASTM D570−63による方法や、熱分析(示差熱分析DTA,示差走査熱量測定DSC)またはカールフィッシャー法によっても含水率を測定することができる。
【0061】
また、有機発光媒体の周囲に、層間絶縁膜、平坦化層、蛍光媒体、カラーフィルタ等の有機膜が存在し、有機発光媒体とそれ以外の有機膜とを区別するのが困難な場合がある。その場合には、有機発光媒体以外の有機膜を一部含んだ混合物として重量Aおよび重量Bを測定し、それから得られる値を有機発光媒体の含水率としても良い。なんとならば、このような混合物の含水率を0.05重量%以下の値とすることによっても、発光面積比の低下を効率的に図ることができることが別途判明しているためである。
【0062】
すなわち、このようにして測定された含水率としての水分は、例えば、層間絶縁膜等の有機発光媒体以外の有機膜に局在することなく拡散し、有機発光媒体に侵入して、平衡状態に達するとともに、有機発光媒体又は対向電極を酸化劣化させると考えられる。
【0063】
したがって、例えば、有機発光媒体と、層間絶縁膜等の混合物を採取した場合であっても、当該有機発光媒体の含水率が0.05重量%以下であると考えられる。
【0064】
よって、有機発光媒体の周囲に、例えば層間絶縁膜が設けてある場合には、有機発光媒体および層間絶縁膜を任意に混合物として採取し、それらについての重量Aおよび重量Bを測定して、それから算出した含水率を0.05重量%以下の値とすれば良い。
【0065】
ここで、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値に制限する理由を、図1を参照しながら詳細に説明する。
図1は、有機発光媒体(一部、他の有機膜を含む場合がある。)の含水率と、無発光領域または無発光箇所の発生による発光領域の変化率との関係を示しており、横軸には、有機発光媒体の含水率(重量%)を採って示してあり、縦軸には、発光領域の変化率(無発光領域または無発光箇所発生後の発光領域の面積/無発光領域または無発光箇所発生前の発光領域の面積(有機EL表示装置作製直後の発光領域の面積))を発光面積比として示してある。
【0066】
また、図1中、●印は、80℃の恒温槽内、2週間の条件で有機EL表示装置を放置した場合の発光面積比、▲印は、大気中、室温(25℃)、2週間の条件で有機EL表示装置を放置した場合の発光面積比をそれぞれ表している。
【0067】
そして、図1から容易に理解されるように、有機発光媒体の含水率が少ないほど、発光面積比の値が大きくなり、逆に有機発光媒体の含水率が多いほど、発光面積比の値が小さくなる傾向が見られた。ただし、発光面積比は、有機発光媒体の含水率に対して直線的に変化するものではなく、含水率が0.05重量%を超えると、発光面積比が著しく低下する現象が見られた。
【0068】
したがって、有機発光媒体の含水率を、このような臨界的意義を有する0.05重量%以下の値に制限することにより、発光面積比の低下防止を効率的に図ることができ、すなわち、無発光領域または無発光箇所の発生を抑制して、長期間にわたって高い発光輝度を得ることができる。
【0069】
なお、同じ含水率であれば、80℃の恒温槽、2週間の放置条件のほうが、大気中、室温(25℃)、2週間の放置条件よりも、発光面積比が小さくなる傾向が見られたが、含水率が0.05重量%を超えると発光面積比が著しく低下するという現象は、いずれの放置条件においても観察された。
【0070】
これを換言するならば、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下に制限することにより、大気中、室温(25℃)、2週間の放置条件のみならず、80℃の恒温槽、2週間の放置条件においても無発光領域または無発光箇所の発生を著しく抑制することができることを意味する。したがって、有機EL表示装置を、高温条件で使用する場合には、含水率を0.05重量%以下の値とすることは、さらに有用となる。
【0071】
(1)−5 形成方法
有機発光媒体の形成方法については、特に制限されるものではないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、ラングミュアーブロジェット法(LB法: Langumuir−Blodgett法)、インクジェット法、ミセル電解法等の一般的に公知の方法を採ることができる。
【0072】
(2)電極
(2)−1 陽極層
陽極層は、有機EL表示装置の構成に応じて下部電極あるいは対向電極に該当するが、当該陽極層は、仕事関数の大きい(例えば、4.0eV以上)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的に、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ストロンチウム銅酸化物(SrCu)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、金、白金、パラジウム等の電極材料を単独で使用するか、あるいはこれらの電極材料を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0073】
これらの電極材料を使用することにより、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法、化学蒸着法(CVD法,Chemical Vapor Deposition)、有機金属気相成長法(MOCVD法, Metal Organic Chemical Vapor Deposition),プラズマCVD法等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて、均一な厚さを有する陽極層を形成することができる。
【0074】
なお、陽極層からEL発光を取り出す場合には、当該陽極層を透明電極とする必要がある。その場合、ITO、IZO、SrCu、SnO、ZnO等の導電性透明材料を使用して、EL発光の透過率を10%以上の値とすることが好ましい。
【0075】
また、陽極層の膜厚も特に制限されるものではないが、10〜1000nmの範囲内の値とするのが好ましく、10〜200nmの範囲内の値とするのがより好ましい。
【0076】
この理由は、陽極層の膜厚をこのような範囲内の値とすることにより、均一な膜厚分布や、10%以上のEL発光の透過率が得られる一方、陽極層のシート抵抗を1000Ω/□以下の値、より好ましくは、100Ω/□以下の値とすることができるためである。
【0077】
なお、図5および図6に示すように、陽極層(下部電極)と、有機発光媒体と、陰極層(対向電極)とを設け、当該下部電極および対向電極をXYマトリックス状に構成することにより、発光面における任意の画素を発光させることも好ましい。すなわち、陽極層等をこのように構成することにより、有機EL表示装置において、種々の情報を容易に表示することができる。
【0078】
また、陽極層(下部電極)または陰極層(対向電極)をドット状に形成し、図7に示すように、各ドットに対応させてTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を配置して、各ドットを選択的に発光させることにより、種々の情報を表示することも好ましい。
【0079】
(2)−2 陰極層
一方、有機EL表示装置における陰極層についても、有機EL表示装置の構成に応じて下部電極または対向電極に該当するが、仕事関数の小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物あるいは含有物を使用することが好ましい。
【0080】
具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、セシウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、インジウム、希土類金属、これらの金属と有機発光媒体材料との混合物、およびこれらの金属と電子注入層材料との混合物等からなる電極材料を単独で使用するか、あるいはこれらの電極材料を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0081】
また、陰極層の膜厚についても、陽極層と同様に、特に制限されるものではないが、具体的に10〜1,000nmの範囲内の値とするのが好ましく、10〜200nmの範囲内の値とするのがより好ましい。
【0082】
さらに、陰極層からEL発光を取り出す場合には、当該陰極層を透明電極とする必要があり、その場合、EL発光の透過率を10%以上の値とすることが好ましい。
【0083】
なお、陰極層についても、陽極層と同様に、真空蒸着法や、スパッタリング法等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて形成することが好ましい。
【0084】
(3)支持基板
有機EL表示装置における支持基板は、機械的強度に優れ、水分や酸素の透過性が少ないものが好ましく、具体的には、ガラス板、金属板、セラミックス板、あるいはプラスチック板(ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等)等を挙げることができる。
【0085】
また、これらの材料からなる支持基板は、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、さらに無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。
【0086】
また、特に有機発光媒体への水分の侵入を避けるために、支持基板における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。具体的に、支持基板の含水率を0.0001重量%以下の値およびガス透過係数を1×10−13cc・cm/cm・sec.cmHg以下の値とすることがそれぞれ好ましい。
【0087】
(4)層間絶縁膜
(4)−1 機能
本発明の有機EL表示装置における層間絶縁膜(電気絶縁膜)は有機EL素子の周縁または周辺に存在し、有機EL表示装置の高精細化、有機EL素子の下部電極と上部電極との短絡防止、またはTFT(薄膜トランジスタ)にて有機EL表示装置を駆動する場合において、TFTを保護したり、有機EL素子の下部電極を平坦化するため等に用いられる。
【0088】
したがって、層間絶縁膜は、必要に応じて、隔壁、スぺーサー、平坦化膜等の名称で呼ぶ場合があり、本発明では、それらを包含するものである。
【0089】
(4)−2 構成および材料
層間絶縁膜の構成としては、より具体的には、例えば、図5および図6に示すように、第1の層間絶縁膜15、およびその上に重ねて設けられた第2の層間絶縁膜(隔壁と称する場合がある。)16から構成してあることが好ましい。
【0090】
すなわち、第1の層間絶縁膜15および第2の層間絶縁膜16から構成し、有機発光媒体4をマトリックス状に配列して、画素14として構成するために設けられる。また図7に示すように層間絶縁膜3を配置することによりTFTを保護するために設けられる。
【0091】
また、層間絶縁膜に用いられる材料としては、通常、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、環状ポリオレフィン、ノボラック樹脂、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、等が挙げられる。
【0092】
特に、耐熱性が要求される場合には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド、環状ポリオレフィン、エポキシ樹脂が好ましい。
【0093】
それらの絶縁膜は、感光性基を導入してフォトリソグラフィ法で所望のパターンに加工されるか、印刷手法にて所望のパターンに加工される。
【0094】
以下、層間絶縁膜を構成する第1の層間絶縁膜および第2の層間絶縁膜に分けて、それぞれの構成について説明する。
【0095】
(i)第1の層間絶縁膜
第1の層間絶縁膜は、ストライプ状パターンの下部電極上に、例えば、光硬化性樹脂を積層した後、下部電極のパターンに直交するストライプ状パターンとなるように、フォトリソグラフィ法により形成することが好ましい。
【0096】
ここで、第1の層間絶縁膜のストライプ幅、および隣接するストライプ間のギャップ幅および膜厚は、それぞれ所望の画素(発光領域)の大きさによるが、例えば、ライン幅を5〜200μm,ギャップ幅を5〜300μm、および膜厚を0.01〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0097】
また、第1の層間絶縁膜の電気絶縁性を、体積抵抗(電圧1MΩ、周波数100Hz印加測定)として、1×10Ω・cm以上の値とすることが好ましく、1×10〜1×1012Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましい。なお、この電気絶縁性に関しては、後述する第2の層間絶縁膜についても、同様の値とすることが好ましい。
【0098】
(ii)第2の層間絶縁膜
第2の層間絶縁膜についても、上述した第1の層間絶縁膜の上から、例えば、光硬化性樹脂を積層した後、フォトリソグラフィ法を用いて、第1の層間絶縁膜上に、隔壁となるように形成することができる。
【0099】
また、第2の層間絶縁膜は、隣接する画素間の隔壁となるように、ストライプ幅、および隣接するストライプ間のギャップ幅および膜厚を決定することが好ましいが、例えば、ライン幅を1〜150μm,ギャップ幅を10〜500μm、膜厚を0.5〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0100】
なお、第2の層間絶縁膜は、露光条件やエッチング条件を制御して、図6に示すように、その断面形状を逆台形とすることが好ましい。このように構成することにより、発光領域の面積を大きくすることができる一方、隣接する上部電極間の電気絶縁性をより確実に保持することができる。
【0101】
(4)−3 含水率
また、層間絶縁膜の含水率を、有機発光媒体と同様に、0.05重量%以下の値とすることが好ましく、0.03重量%以下の値とすることがより好ましく、0.01重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0102】
この理由は、層間絶縁膜の含水率が0.05重量%を超えると、含まれる水分が上部電極や有機発光媒体の酸化劣化を促進して、無発光領域または無発光箇所が発生しやすくなる場合があるためである。
【0103】
なお、層間絶縁膜の含水率は、有機発光媒体の含水率と同様に測定することが可能である。
【0104】
(5)蛍光媒体
(5)−1 構成
有機EL表示装置における蛍光媒体は、有機EL素子の発光を吸収して、より長波長の蛍光を発光する機能を有しており、平面的に分離配置された層状物として構成されている。各蛍光媒体は、有機EL素子の発光領域、例えば下部電極と上部電極との交差部分の位置に対応して配置してあることが好ましい。このように構成することにより、下部電極と上部電極との交差部分における有機発光層が発光した場合に、その光を各蛍光媒体が受光して、異なる色(波長)の発光を外部に取り出すことが可能になる。特に、有機EL素子が青色発光するとともに、蛍光媒体によって、緑色、赤色発光に変換または一部透過可能な構成とすると、一つの有機EL素子であっても、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であることから好適である。
【0105】
また、各蛍光媒体間に、有機EL素子の発光及び各蛍光媒体からの光を遮断して、コントラストを向上させ、視野角依存性を低減するための遮光層(ブラックマトリックス)を配置することも好ましい。
【0106】
なお、蛍光媒体は、外光によるコントラストの低下を防止するため、後述するカラーフィルタとの組み合せまたは混合により構成してもよい。
【0107】
(5)−2 蛍光色素
蛍光媒体は、例えば、蛍光色素および樹脂、または蛍光色素のみからなり、蛍光色素および樹脂からなる場合には、蛍光色素を、顔料樹脂および/またはバインダー樹脂中に溶解または分散させることにより得ることができる。
【0108】
ここで、具体的な蛍光色素について説明すると、まず、近紫外光から紫色の有機EL素子の発光から青色発光に変換する蛍光色素としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、トランス−4,4’−ジフェニルスチルベンの等スチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン等のクマリン系色素を挙げることができる。
【0109】
次に、青色、青緑色または白色発光部材の発光から緑色発光に変換する蛍光色素としては、例えば、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフロルメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(以下、クマリン6)、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、あるいは、ベーシックイエロー51、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等を挙げることができる。
【0110】
また、青色から緑色までの、または白色の発光部材の発光から、橙色から赤色までの発光に変換する蛍光色素としては、例えば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パークロレート等のピリジン系色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。
【0111】
さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等)も蛍光性があれば選択することが可能である。
【0112】
また、蛍光色素をポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の顔料樹脂中にあらかじめ練りこんで顔料化したものでもよい。
【0113】
また、これらの蛍光色素または顔料は、必要に応じて、単独または混合して用いてもよい。なお、適度な混合により、例えば、有機EL素子における青〜青緑色の発光を、白色の発光に変換することができる。
【0114】
また、蛍光色素の顔料樹脂および/またはバインダー樹脂を含めた蛍光媒体中の濃度は、蛍光色素の種類によって異なるが、当該蛍光色素の濃度を例えば、1〜10−4mol/kgの範囲内の値、好ましくは0.1〜10−3mol/kgの範囲内の値、より好ましくは、0.05〜10−2mol/kgの範囲内の値とすることである。
【0115】
(5)−3 バインダー樹脂
一方、バインダー樹脂としては、例えば、可視光の透過率が50%以上の透明材料が好ましい。このような透明材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0116】
また、蛍光媒体を平面的に分離配置するために、バインダー樹脂として、フォトリソグラフィ法が適用できる感光性樹脂も好適に選ばれる。例えば、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、ポリケイ皮酸ビニル系樹脂、環化ゴム系樹脂等の光硬化型レジスト材料が挙げられる。
【0117】
また、印刷法を用いる場合には、透明な樹脂を用いた印刷インキ(メジウム)が選ばれる。このような印刷インキを用いる場合には、バインダー樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂等が挙げられる。
【0118】
(5)−4 含水率
また、蛍光媒体の含水率を、有機発光媒体と同様に、0.05重量%以下の値とすることが好ましく、0.03重量%以下の値とすることがより好ましく、0.01重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
【0119】
この理由は、蛍光媒体の含水率が0.05重量%を超えると、含まれる水分が上部電極や有機発光媒体の酸化劣化を促進して、無発光領域または無発光箇所の発生抑制が困難となる場合があるためである。
【0120】
なお、蛍光媒体の含水率は、有機発光媒体の含水率と同様に測定することが可能である。
【0121】
(5)−5 形成方法
蛍光媒体が、主に蛍光色素からなる場合は、所望の蛍光媒体のパターンが得られるマスクを介して真空蒸着またはスパッタリング法で成膜することが好ましい。
【0122】
一方、蛍光媒体が、蛍光色素と樹脂からなる場合は、蛍光色素と樹脂と適当な溶剤とを混合、分散または可溶化させて液状物とし、当該液状物を、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で成膜し、その後、フォトリソグラフィ法で所望の蛍光媒体のパターンにパターニングしたり、スクリーン印刷等の方法で所望のパターンにパターニングして、蛍光媒体を形成するのが好ましい。
【0123】
(5)−6 膜厚
蛍光媒体の膜厚は、有機EL素子の発光を十分に受光(吸収)するとともに、蛍光の発生機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5μm〜1mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0124】
(6)カラーフィルタ
(6)−1 構成
カラーフィルタは、光を分解またはカットして色調整またはコントラストを向上するために設けられ、色素のみからなる色素層、または色素をバインダー樹脂中に溶解または分散させて構成した層状物として構成される。
【0125】
また、カラーフィルタは、蛍光媒体と同様に、印刷法や、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることが好ましい。
【0126】
さらに、カラーフィルタの構成として、青色、緑色、赤色の色素を含むことが好適である。このようなカラーフィルタと、白色発光の有機EL素子とを組み合わせることにより、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であるためである。
【0127】
(6)−2 色素
赤色(R)色素として、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等の一種単独または二種類以上の組み合わせが挙げられる。
【0128】
また、緑色(G)色素として、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等の一種単独または二種類以上の組み合わせが挙げられる。
【0129】
また、青色(B)色素として、銅フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等の一種単独または二種類以上の組み合わせが挙げられる。
【0130】
なお、カラーフィルタにおける色素の濃度は、精度良くパターニングできるとともに、有機発光層の発光を十分透過できるような範囲であれば好ましい。したがって、色素の種類にもよるが、使用するバインダー樹脂を含めたカラーフィルタ中の色素濃度を0.5〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0131】
(6)−3 バインダー樹脂
カラーフィルタのバインダー樹脂としては、蛍光体層のバインダー樹脂と同様の材料を選ぶことができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0132】
(6)−4 含水率
また、カラーフィルタの含水率を、有機発光媒体と同様に、0.05重量%以下の値とすることが好ましく、0.03重量%以下の値とすることがより好ましく、0.01重量%以下の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、カラーフィルタの含水率が0.05重量%を超えると、含まれる水分が上部電極や有機発光媒体の酸化劣化を促進するため、無発光領域または無発光箇所の発生抑制が困難となる場合があるためである。
【0133】
(7)平坦化層
(7)−1 種類
平坦化層をポリマーから構成する場合、好ましいポリマーとして、光硬化型樹脂または熱硬化型樹脂が好ましい。具体的に、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,アニリンホルムアルデヒト樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0134】
また、平坦化層を無機酸化物から構成する場合、好ましい無機酸化物として、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)酸化チタン(TiO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、ほう酸(B)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化鉛(PbO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)等を挙げることができる。
【0135】
また、後述する水蒸気または酸素のガス透過係数が小さいことから、酸化ケイ素,酸化アルミニウム,および酸化チタンからなる群から選ばれる一種以上の無機酸化物を使用することがより好ましく、さらには、ガス透過性がより小さいことから、無機酸化物の膜性を非結晶性(アモルファス)とすることが好ましい。
【0136】
また、平坦化層を無機酸化物から構成する場合、その組成として、無機酸化物を主に含むものであればよく、窒化物(例えばSi)等の無機物が含まれていてもよい。
【0137】
さらに、無機酸化物からなる平坦化層として、ガラス板を挙げることができる。このようなガラス板としては、ソーダ−石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等がより好ましい。
【0138】
(7)−2 平坦化層の膜厚等
平坦化層の膜厚は、表示の精細度,蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸にもよるが、好ましくは10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、このように構成することにより、蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸を十分に平坦化できるとともに、高精細表示の視野角依存性を低減することができるためである。
【0139】
したがって、平坦化層の膜厚を100nm〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100nm〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0140】
なお、平坦化層は、蛍光媒体またはカラーフィルタを被覆するように設けられているとともに、400nm〜700nmの光の透過率が50%以上で、かつ、電気絶縁層性のものであることが好ましい。
【0141】
(7)−3 含水率等
また、平坦化層の含水率を0.05重量%以下の値とすることが好ましく、0.03重量%以下の値とすることが好ましく、0.01重量%以下の値とすることが特に好ましい。
【0142】
この理由は、平坦化層の含水率が0.05重量%を超えると、含まれる水分が上部電極や有機発光媒体の酸化劣化を促進するため、無発光領域または無発光箇所の発生抑制が困難となる場合があるためである。
【0143】
また、同様に、無発光領域または無発光箇所の発生抑制を図るために、平坦化層の水蒸気または酸素のガス透過係数を、それぞれ1×10−12cc・cm/cm・s・cmHg以下の値とすることが好ましく、1×10−13cc・cm/cm・s・cmHg以下の値とすることがさらに好ましい。
【0144】
(7)−4 形成方法
平坦化層は、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法等の方法を用いて成膜するか、あるいは、スパッタリング法、蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、イオンプレーティング法等の方法で成膜することが好ましい。
【0145】
また、適当な金属を成膜後、陽極酸化して無機酸化物層とすることも好ましいし、さらには、平坦化層として、ガラス板を用いる場合には、接着剤を用いて貼り合わせことによって、容易に形成することができる。
【0146】
(8)封止用部材
有機EL表示装置における封止用部材は、内部への水分侵入を防止するために当該有機EL表示装置の周囲に設けるか、さらには、このように設けた封止用部材と、有機EL表示装置との間に、公知の封止媒体、例えば、乾燥剤、ドライガス、フッ化炭化水素等の不活性液体を封入することが好ましい。また、かかる封止用部材は、蛍光媒体や、カラーフィルタを上部電極の外部に設ける場合の、支持基板としても使用することができる。
【0147】
このような封止用部材としては、支持基板と同種の材料、例えば、ガラス板または金属板を用いることができる。また、封止用部材の形態についても、特に制限されるものでなく、例えば、板状やキャップ状とすることが好ましい。そして、例えば、板状とした場合、その厚さを、0.01〜5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0148】
さらに、封止用部材は、有機EL表示装置の一部に溝等設けておき、それに圧入して固定することも好ましいし、あるいは、光硬化型の接着剤等を用いて、有機EL表示装置の一部に固定することも好ましい。
【0149】
(9)有機EL表示装置の構成例
本発明の有機EL表示装置は、上述した構成要素を基本的に組み合わせて構成することができるが、それ以外の他の構成要素、例えば正孔注入層や電子注入層とを組み合わせることも好ましい。
【0150】
以下に典型的な有機EL表示装置についての構成例を示すが、これに限定されるものでない。
(i)支持基板/陽極層/有機発光層/陰極層/封止用部材
(ii)支持基板/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(iii)支持基板/蛍光媒体/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(iv)支持基板/蛍光媒体/平坦化層/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(v)支持基板/カラーフィルタ/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(vi)支持基板/カラーフィルタ/平坦化層/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(vii)支持基板/カラーフィルタ/蛍光媒体/平坦化層/陽極層/層間絶縁膜/有機発光層/陰極層/封止用部材
(viii)支持基板/陽極層/有機発光層/陰極層/蛍光媒体/封止用部材
(ix)支持基板/陽極層/有機発光層/陰極層/カラーフィルタ/封止用部材
【0151】
なお、図2に、(ii)の構造の有機EL表示装置を、図3および図9に、(iv)または(vi)の構造の有機EL表示装置を、図4および図10に、(viii)または(ix)の構造の有機EL表示装置を、図8に、(iii)または(v)の構造の有機EL表示装置を、それぞれ示す。
【0152】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図3(または図9)等に示す構成の有機EL表示装置の製造方法に関し、以下に示す第1〜第3の工程を含んでいる。
【0153】
そして、第3の工程において有機発光媒体を形成する前に、第2の工程として、脱水工程を設けて支持基板等を脱水し、最終的に、第3の工程を経て有機EL表示装置を組み立て後に、有機発光媒体(あるいは、有機発光媒体、カラーフィルタ、蛍光媒体、平坦化層、層間絶縁膜の混合物)の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴としている。
【0154】
このように実施することにより、有機発光媒体に悪影響を与えることなく、当該有機発光媒体中の含水率を0.05重量%以下の値とした、無発光領域または無発光箇所の発生が抑制可能な有機EL表示装置を効率的に製造することができる。
【0155】
また、第2の実施形態において、図11に示す製造装置20を用いて、有機EL表示装置を製造することを特徴としており、具体的に、成膜ユニット(真空蒸着装置)22に連結された脱水ユニット21を用いて、支持基板の脱水処理を行った後、搬送ユニット24における搬送装置25により当該支持基板を成膜ユニット22に移送し、有機発光媒体を形成することを特徴としている。
【0156】
このように実施することにより、大気に露出することがないため、外部の湿度等の影響を排除して低い含水率を保持し、有機EL表示装置の生産効率をさらに向上させることができる。
【0157】
(1)第1の工程
第1の工程は、有機発光媒体の形成前の工程であり、有機EL表示装置の構成にもよるが、少なくとも下部電極の形成工程を含んだ工程である。その他、第1および第2の層間絶縁膜またはTFT基板の形成工程、蛍光媒体およびカラーフィルタあるいはいずれか一方の形成工程、さらには平坦化膜の形成工程等を含むことも好ましい。
なお、支持基板への下部電極の形成工程、第1および第2の層間絶縁膜またはTFT基板の形成工程、あるいは蛍光媒体、カラーフィルタおよび平坦化膜の形成工程は、それぞれ蒸着法やフォトリソグラフィ法等を組合わせて実施することが好ましい。
【0158】
(2)第2の工程
第2の工程は、支持基板上のカラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜またはTFT基板上の層間絶縁膜等の有機膜からの水分の脱水工程であり、具体的に以下の脱水処理条件で、単独処理あるいは二つ以上の脱水処理条件を組み合わせて処理することが好ましい。
【0159】
なお、かかる第2の工程は、後述する製造装置の脱水ユニットにおいて行うことが好ましい。
【0160】
(2)−1 露点調整
脱水工程において処理する支持基板等の周囲の露点を−10℃以下の値として、支持基板等を脱水処理するものである。この理由は、かかる露点が−10℃を超えると、脱水効率が著しく低下する場合があるためである。
【0161】
したがって、脱水工程の露点を−50℃以下の値とすることがより好ましく、露点を−50℃〜−150℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0162】
なお、脱水工程の露点は、不活性ガスの導入、脱水ユニット内の温度の調節により、露点計をモニターしながら、脱水ユニット内の水分量を調節して容易に行うことができる。
【0163】
また、露点を−10℃以下の値とした場合の脱水時間は、カラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等の面積や膜厚または脱水ユニットの容積等に影響されるが、当該脱水時間を例えば、10分〜40時間の範囲内の値とすることが好ましい。
【0164】
この理由は、脱水時間が10分未満となると、脱水処理が不十分となって、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下にするのが困難となる場合があるためである。一方、脱水時間が40時間を超えても、処理時間が長くなるだけで、得られる効果は変わらない場合があるためである。
【0165】
したがって、脱水時間を、30分〜24時間の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜12時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、露点を調整する脱水方法は、第3の実施形態で説明するように、有機発光媒体を湿式成膜した場合に特に有効な方法であるが、第2の実施形態において、真空蒸着等の乾式(ドライ)状態で成膜した場合であっても有効な方法である。
【0166】
すなわち、乾式状態で成膜した場合には、有機発光媒体の水分量は微量であるので、支持基板あるいはその上の層間絶縁膜中の水分を除去すれば、酸化劣化を抑制することができるものの、露点を調節する脱水処理方法によれば、脱水工程での有機発光媒体の劣化が生じるおそれが少ないことから、湿式成膜しない場合であっても有効な方法であると言える。
【0167】
(2)−2 真空度調整
脱水工程の真空度を13.3Pa(0.1Torr)以下の値とすることが好ましい。この理由は、かかる真空度が13.3Pa(0.1Torr)を超えると、脱水効率が著しく低下する場合があるためである。
したがって、脱水工程の真空度を13.3×10−4Pa(1×10−5Torr)以下の値とすることがより好ましく、13.3×10−4Pa〜13.3×10−8Pa(1×10−5Torr〜1×10−9Torr)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0168】
また、この脱水方法によれば、支持基板等の加熱を低くすることができ、有機発光媒体および蛍光媒体の劣化が少なくなるとともに、短時間で脱水することができる。
【0169】
なお、脱水工程の真空度を13.3×10−4Pa(1×10−5Torr)以下の値とした場合の脱水時間は、カラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等の面積や膜厚または脱水ユニットの容積等に影響されるが、当該脱水時間を例えば、10分〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
【0170】
この理由は、脱水時間が10分未満となると、脱水処理が不十分となって、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下にするのが困難となる場合があるためである。一方、脱水時間が30時間を超えても、処理時間が長くなるだけで、得られる効果は変わらない場合があるためである。
【0171】
したがって、脱水時間を、30分〜20時間の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0172】
ここで、脱水行程が終了したかどうかは、四重極質量分析計(Q−Mass)を配置した真空脱水槽において、水の分子量(Mw=18)のピーク値が低下して、安定状態になったことを目安することもできる。
【0173】
(2)−3 不活性ガス導入
脱水工程に、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスを、脱水ユニットに導入し、これらの不活性ガス中で脱水することが好ましく、製造コストが安価となることから、窒素を用いることがより好ましい。
このような不活性ガスを使用することによって、有機発光媒体を含む有機層や、陰極等が反応して酸化するのを抑制しながら、脱水処理を施すことができることから好ましい。
【0174】
また、より優れた脱水効果を得るために、不活性ガスに対しても、あらかじめ脱水処理を施しておくことが好ましい。
【0175】
なお、不活性ガスによる脱水処理した場合の脱水時間は、不活性ガスの流入速度、あるいは、カラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等の面積や膜厚または脱水ユニットの容積等にそれぞれ影響されるが、当該脱水時間を例えば、10分〜40時間の範囲内の値とすることが好ましい。
【0176】
この理由は、脱水時間が10分未満となると、脱水処理が不十分となって、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下にするのが困難となる場合があるためである。一方、脱水時間が40時間を超えても、処理時間が長くなるだけで、得られる効果は変わらない場合があるためである。
【0177】
したがって、脱水時間を、30分〜24時間の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜12時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0178】
(2)−4 加熱処理
脱水工程の加熱温度を60〜300℃の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、加熱温度が60℃未満となると、脱水効率が著しく低下する場合があるためであり、一方、加熱温度が300℃を超えると、有機発光媒体または蛍光媒体等の有機膜に対して熱損傷を与える場合があるためである。
したがって、脱水工程の加熱温度を100〜250℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0179】
また、有機EL表示装置の保管環境または駆動環境を考慮して、脱水工程の加熱温度を決定することも好ましい。すなわち、これらの保管環境または駆動環境における温度よりも高い温度、より好ましくは当該温度よりも少なくとも10℃高い温度で予め処理することにより、保管環境または駆動環境における無発光領域または無発光箇所の発生を抑制することができる。
【0180】
なお、加熱による脱水処理した場合の脱水時間は、カラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等の面積や膜厚に影響されるが、当該脱水時間を例えば、10分〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
【0181】
この理由は、脱水時間が10分時間未満となると、脱水処理が不十分となって、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下にするのが困難となる場合があるためである。一方、脱水時間が12時間を超えても、処理時間が長くなるだけで、得られる効果は変わらない場合があるためである。
【0182】
したがって、脱水時間を、30分〜10時間の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜6時間の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0183】
(2)−5 脱水処理方法の組み合わせ
上記二つ以上の脱水処理条件を組み合わせて処理することも、脱水時間をさらに短縮できることからより好ましい。
例えば、有機発光媒体を乾燥状態で成膜する場合、有機発光媒体の形成前に、露点−50℃、乾燥窒素使用、および支持基板等の加熱温度60℃の条件で、30分〜3時間の脱水処理により、支持基板等の水分を十分除去することができ、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値に容易に調整することができる。
【0184】
また、脱水処理方法の直接的な組み合わせではないが、支持基板上に、下部電極、有機発光媒体、および対向電極等を設けた有機EL素子層と、封止用基板上に、カラーフィルタおよび蛍光媒体等を設けた封止部材とを積層して有機EL表示装置を製造するに際し、第2の工程において、有機EL素子層と、封止部材とをそれぞれ脱水処理することも好ましい。
【0185】
このように脱水処理を施すことにより、封止用基板上に、カラーフィルタおよ等を設けた場合であっても、組み立て後の有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることがより容易となり、無発光領域または無発光箇所の発生をさらに抑制することが可能となる。
【0186】
なお、このように脱水処理を行った後、支持基板等を第3の工程に移動するまでに、大気に触れない状態に保持するのが好ましい。また、仮に支持基板等の脱水処理後、大気に触れる状態を経過する場合であっても、その時間を10分未満の値とすることが好ましく、より好ましくは、5分未満の値とすることである。なぜならば、脱水処理後、支持基板等が10分を超える時間大気に触れると、大気中の水分を、再び支持基板等が吸着または吸水するおそれがあるためである。
【0187】
(3)第3の工程
第3の工程は、有機発光媒体の形成工程や上部電極の形成工程、あるいは封止工程等である。
【0188】
有機発光媒体の形成工程や上部電極の形成工程については、後述する成膜ユニットにおいて行うことが好ましく、具体的に、真空蒸着法やスパッタリング法等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて形成することが好ましい。
【0189】
また、封止工程については、後述する封止ユニットにおいて、乾燥剤やドライガス等の封入や、封止部材を積層することにより実施するのが好ましい。
【0190】
(4)製造装置
有機EL表示装置の製造装置は、信頼性に優れた有機EL表示装置を簡易かつ効率的に製造するために、有機発光媒体の含水率を所定以下の値にする脱水設備(脱水ユニット)を有することが好ましい。
【0191】
具体的に、図11に示すように、製造装置は、成膜ユニット22と、脱水ユニット21、封止ユニット23と、搬送ユニット24と、を備えてなり、脱水ユニット21が、仕切り弁26および搬送装置25を内部に含む搬送ユニット24を介して、成膜ユニット22および封止ユニット23にそれぞれ接続していることが好ましい。
【0192】
ここで、脱水ユニットについてより詳細に説明すると、図13に示すように、脱水ユニット21は、例えば、ハウジング32と、支持基板1等を載置するための基板ステージ33と、ホットプレート34(冷却装置を含む。)と、ドライガス循環装置35、36と、露点計30と、必要に応じて図18に示す全自動水分吸脱着測定装置と、を具備したドライボックスの構成である。そして、脱水ユニット21の側方には、仕切り弁および搬送装置を含む搬送ユニット24が設けてあり、当該搬送ユニット24を介して成膜ユニット(図示せず。)および封止ユニット(図示せず。)にそれぞれ接続してあることが好ましい。
【0193】
また、脱水ユニット21の別の態様を図14に示すが、例えば、ハウジング32と、基板ステージ33と、ホットプレート34(冷却装置を含む。)と、真空装置38と、真空度計39と、必要に応じて図18に示す全自動水分吸脱着測定装置と、を具備したドライボックスであり、さらに、図13に示す脱水ユニット21と同様に、側方に仕切り弁および搬送装置を含む搬送ユニット24が設けてあり、当該搬送ユニット24を介して成膜ユニット(図示せず。)および封止ユニット(図示せず。)にそれぞれ接続してあることが好ましい。
【0194】
なお、図13と、図14にそれぞれ示す脱水ユニットを組み合わせて、真空処理およびドライガスの導入が可能である脱水ユニットとするのが、より機能的であるので好ましい。
【0195】
これらの構成部材のうち、ハウジング32は、脱水する支持基板1等と基板ステージ33とを収容するための部材であり、このうち基板ステージ33は、脱水する支持基板1等を固定するための部材である。
【0196】
また、ホットプレート34および冷却装置は、基板ステージ33の下部に設けるか、基板ステージそのものをホットプレートにしてあり、支持基板1等の温度を調節(加熱または冷却)して、脱水するための部材である。なお、さらに短時間で加熱することができることから、ホットプレートの代りに、あるいは、ホットプレートとともに、赤外線ランプ等の別の加熱治具を設けることも好ましい。
【0197】
また、ドライガス循環装置35、36は、露点計30により露点を調節しながら、不活性ガスを導入して脱水するために設けられており、図13に示す例では、側面下方に、不活性ガス導入口35が設けてあり、側面上方に、不活性ガス排出口36が設けてある。
【0198】
したがって、図13に示す脱水ユニット21を用いた場合、ハウジング内の基板ステージに固定された支持基板等に対して、ドライガス循環装置を用いて、不活性ガスを、例えば、流量10リットル/分の条件で吹き付け、露点計により露点が−10℃以下の値となるのを確認しながら、所定時間脱水処理を行うことが好ましい。
【0199】
また、不活性ガスの導入と同時あるいは別時に、基板ステージの下部に設けてあるホットプレートあるいは冷却装置を用いて、支持基板等を所定温度、例えば60℃〜300℃の範囲内の値に制御して、脱水処理を行うことも好ましい。
【0200】
一方、図14に示す脱水ユニット21を用いた場合、真空ポンプ38を用いて、ハウジング内の真空度を、例えば、13.3Pa(0.1Torr)以下の値、より好ましくは、0.00133Pa(1×10−5Torr)以下の値に調節し、所定時間脱水処理を行うことが好ましい。ここで真空の場合には、四重極質量分析計(Q−Mass)を配置して、脱水のレベルを把握することが好ましい。
【0201】
また、図13および図14に示す脱水ユニット21を用いて有機発光媒体中の含水率を測定するには、内部に設けられた全自動水分吸脱着測定装置(図示せず。)を用いることになる。すなわち、支持基板等から有機発光媒体の一部を採取し、上述した重量Aおよび重量Bを測定することにより、有機発光媒体中の含水率を算出することができる。なお、有機発光媒体の採取は、手動または、搬送装置を用いて自動に行うことができる。
【0202】
ただし、有機EL表示装置の構成にもよるが、有機発光媒体を採取することなく有機発光媒体の含水率、あるいは有機発光媒体を含む有機膜の含水率をおおまかに把握することもできる。
【0203】
すなわち、支持基板等を含めた状態で有機発光媒体あるいは有機発光媒体を含む有機膜の乾燥前の重量C、および乾燥後の重量Dを、全自動水分吸脱着測定装置の精密天秤を用いて測定するとともに、予め精密天秤を用いて測定しておいた有機発光媒体以外の支持基板等の重量E、あるいは有機発光媒体を含む有機膜以外の支持基板等の重量Eを加味して、下記式(2)から、有機発光媒体、あるいは有機発光媒体を含む有機膜の含水率(W)を推定することができる。
W={(重量C−重量D)/(重量D−重量E)}×100 (2)
【0204】
一方、脱水ユニットに連結された搬送ユニットには、成膜ユニットおよび封止ユニットが連結してあり、その間に設けてある搬送機構、例えば、回転支持され、先端に把持部を有し、さらに伸縮自在なロボットアームにより、大気にふれることなく、支持基板等を脱水ユニットから成膜ユニットや封止ユニットにそれぞれ移送したり、あるいは成膜ユニットから脱水ユニットや封止ユニットに、それぞれ移送できるように構成してある。
【0205】
したがって、このような有機EL表示装置の製造装置を用いることにより、脱水ユニットにおいて有機発光媒体を形成前に、支持基板等の脱水処理を十分に行い、次いで、成膜ユニットにおいて含水率の低い有機発光媒体を形成することができる。
【0206】
そして、有機発光媒体形成後、成膜ユニットから、封止ユニットに移送して、封止部材を用いて周囲を封止し、有機EL表示装置を組み立てることができ、有機発光媒体の含水率を所定範囲の値に容易に制御することができる。
【0207】
よって、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積比の低下を防止することができる有機EL表示装置であって、長期間にわたって高い発光輝度が得られる有機EL表示装置を効率的に製造することができる。
【0208】
なお、図11に示す製造装置ばかりでなく、同様に、図12に示す製造装置を用いても、第1〜第3の工程を実施して、本発明の有機EL表示装置を製造することが可能である。
【0209】
すなわち、図12に示す製造装置においては、例えば、脱水ユニット21と、成膜ユニット22と、封止ユニット23とが横方向に、それぞれ仕切り弁26を介して直列に配列されており、さらに配列の両外に、合計二つの搬送ユニット24が設けてある。
【0210】
したがって、図12に示す製造装置によれば、図11に示す製造装置と同様に、支持基板等を、脱水ユニット21と、成膜ユニット22と、封止ユニット23との間で、大気にさらすことなくそれぞれ移動することができ、含水率が所定値以下の有機発光媒体を含む有機EL表示装置を効率的に製造することが可能である。
【0211】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、有機EL表示装置の製造方法に関する別の実施形態であり、以下に示す第1’〜第3’の工程を含んでいる。
【0212】
そして、第1’の工程で有機発光媒体を湿式成膜するとともに、第2’の工程で、有機発光媒体形成後に脱水工程を設けて有機発光媒体を脱水し、最終的に、第3’の工程を経て得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(あるいは、有機発光媒体、カラーフィルタ、蛍光媒体、平坦化層、層間絶縁膜の混合物)の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴としている。
【0213】
このように実施することにより、含水率が多くなりやすい湿式成膜により有機発光媒体を形成した場合であっても、最終的に組み立てた有機EL表示装置において、有機発光媒体の含水率を容易に0.05重量%以下の値とすることができる。
【0214】
(1)第1’の工程
第1’の工程は、有機発光媒体を形成するまでの工程であり、蛍光媒体、カラーフィルタ、平坦化膜、下部電極、第1および第2の層間絶縁膜またはTFT基板(層間絶縁膜を含む)の形成工程、並びに有機発光媒体の形成工程等が含まれる。
【0215】
ここで、第2の実施形態と同様に、下部電極の形成工程、第1および第2の層間絶縁膜またはTFT基板(層間絶縁膜を含む)の形成工程、あるいは蛍光媒体、カラーフィルタおよび平坦化膜の形成工程は、それぞれフォトリソグラフィ法を用いて行うことが好ましい。
【0216】
また、有機発光媒体の形成工程は、第3の実施形態では、湿式成膜することを特徴としており、具体的に、スピンコート法、ラングミュアーブロジェット法(LB法)、インクジェット法、ミセル電解法等を採ることが好ましい。
【0217】
(2)第2’の工程
第2’の工程は、湿式成膜した有機発光媒体の脱水工程であり、当該脱水工程の処理条件については、第2の実施形態と実質的に同様の内容とすることができる。
【0218】
したがって、(i)露点調整、(ii)真空度調整、(iii)不活性ガス導入、(iv)加熱処理の単独処理、またはこれらの脱水処理を2以上組み合わせることにより、有機発光媒体から効率的に脱水することができる。
【0219】
ただし、(i)露点調整する脱水処理方法は、湿式成膜した有機発光媒体に対して特に有効な方法である。
【0220】
すなわち、有機発光媒体を湿式成膜した場合には、有機発光媒体中に多量の水を含んでおり、他の脱水処理方法、例えば、加熱処理方法では、有機発光媒体を劣化させずに、含水率を所定範囲内の値に制御することが困難な場合があるためである。
【0221】
なお、有機発光媒体を湿式成膜せず、真空蒸着等の乾式(ドライ)状態で成膜した場合には、有機発光媒体の水分量は微量であるので、支持基板あるいはその上の層間絶縁膜中の水分を除去すれば、酸化劣化を抑制することができる。すなわち、有機発光媒体の成膜前に、露点を−10℃以下の値に制御して、支持基板等を脱水処理するだけで、組み立て後の有機発光媒体の含水率を所定範囲内の値に制御することができる。
【0222】
したがって、露点を調節する脱水処理方法は、脱水工程での有機発光媒体の劣化が生じるおそれがないことから、湿式成膜しない場合であっても有効な方法であることは言うまでもない。
【0223】
さらに、有機発光媒体等の水分調整が容易となることから、形成した有機発光媒体等を大気に触れない状態で第2’の工程から第3’の工程に移送するのが好ましいことは言うまでもない。
【0224】
(3)第3’の工程
第3’の工程は、有機発光媒体の形成以降の工程である。第2の実施形態と同様に、上部電極の形成工程、あるいは封止工程等を設けることが好ましい。
【0225】
具体的に、上部電極の形成工程については、成膜ユニットにおいて、真空蒸着により形成することが好ましく、封止工程については、封止ユニットにおいて、封止用部材を用いて、有機発光媒体等の周囲を覆うことが好ましい。
【実施例】
【0226】
[実施例1]
(1)有機EL素子の作製
(i)陽極(下部電極)の形成
縦112mm、横143mm、厚さ1.1mmのガラス基板(OA2ガラス、日本電気硝子(株)製)上に、膜厚130nmのITO膜をスパッタリング法により全面的に成膜した。このITO膜上に、ポジ型レジストHPR204(富士ハントエレクトロニクステクノロジー(株)製)をスピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した。
【0227】
次いで、ストライプ状パターン(ライン幅90μm,ギャップ幅20μm)を有するフォトマスクを介して、露光量が100mJ/cmとなるように、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った。現像液としてTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を用いて現像した。
【0228】
次いで、オーブンを用いて、温度130℃の条件でポストベーク処理した後、臭化水素酸水溶液(濃度47重量%)をエッチャントとして用いて、ITO膜をエッチングした。その後、剥離液N303(長瀬産業(株)製)を用いてポジ型レジストを除去し、陽極(下部電極)としてのストライプ状のITOパターン(ライン数960本)を形成した。
【0229】
(ii)第1の層間絶縁膜の形成
次いで、ITOパターン上に、アクリル酸系のネガ型レジストV259PA(新日鉄化学(株)製)をスピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した後、ITOが70μm×290μmの長方形状に露出するようなフォトマスクを介して、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った(露光量:300mJ/cm)。
【0230】
次いで、現像液としてTMAHを用いて現像し、さらに、オーブンを用いて、温度160℃の条件でポストベーク処理して、第1の層間絶縁膜とした。
【0231】
(iii)第2の層間絶縁膜の形成
次いで、第1の層間絶縁膜の上から、ノボラック樹脂系のネガ型レジストZPN1100(日本ゼオン(株)製)をスピンコートした。温度80℃、時間15分の条件で乾燥した後、下部電極であるITOパターンに対して直交するストライプ状パターン(ライン幅20μm,ギャップ幅310μm)が得られるフォトマスクを介して、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行い(露光量:70mJ/cm)、次に温度90℃、時間15分でベークした。
【0232】
次いで、現像液としてTMAHを用いて現像し、隔壁としての第2の層間絶縁膜(ライン幅20μm,ギャップ幅310μm、膜厚5μm)とした。
【0233】
(iv)脱水工程
次いで、ITOパターン等が形成されたガラス基板(以下、単にガラス基板と称する場合がある。)に対して、イソプロピルアルコール洗浄および紫外線洗浄を施した後、このガラス基板を、脱水工程を実施するための脱水ユニットに移動した。すなわち、ガラス基板を、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、窒素等)循環部と、露点制御部と、加熱装置部(ホットプレート)とを具備したドライボックス内に収容した。
【0234】
そして、ドライボックス内のガラス基板を、ホットプレートを用いて60℃に加熱し、その状態で乾燥窒素を導入しながら、露点を−50℃まで低下させて、約2時間放置し、第1および第2の層間絶縁膜中の水分並びにガラス基板表面等に付着している水分を除去した。
【0235】
(v)有機発光媒体の形成
ホットプレートの加熱を停止し、ガラス基板の温度が室温まで低下した後、大気にさらすことなく露点を維持して真空蒸着装置(日本真空技術(株)製)内の基板ホルダーに固定した。
【0236】
そして、真空蒸着装置内のモリブテン製の加熱ボードに、以下の材料をそれぞれ充填した。
【0237】
正孔注入材料:4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、および4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル(NPD)、
有機発光材料:4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)
電子注入材料:トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)
【0238】
また、対向電極(陰極)材料として、Al−Li合金(Li濃度10atm%)をタングステン製フィラメントに装着した。
【0239】
次いで、真空蒸着装置の真空度を665×10−7Pa(5×10−7Torr)まで減圧し、以下の蒸着速度および膜厚となるように、正孔注入層から陰極の形成まで、途中で真空状態を破らず、一回の真空引きで積層して、有機発光媒体等を形成した。
MTDATA:蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.,膜厚60nm
NPD :蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.,膜厚20nm
DPVBi :蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.,膜厚50nm
Alq :蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.,膜厚20nm
Al−Li :蒸着速度0.5〜1.0nm/sec.,膜厚150nm
【0240】
(vi)封止工程
次いで、乾燥窒素を導入した封止ユニット内で、封止用ガラス基板(青板ガラス、ジオマテック(株)製)を陰極側に積層して、その周囲を光硬化型接着剤TB3102(スリーボンド(株)製)により封止して、図2に示す発光性能測定用の有機EL表示装置とした。
【0241】
なお、同様の製造条件で、含水率測定用の有機EL表示装置および耐久性試験用の有機EL表示装置をそれぞれ作製した。
【0242】
(2)有機EL素子の評価
(i)含水率の測定
得られた有機EL表示装置を、乾燥窒素を連続的に導入した状態のドライボックス内で分解し、スパチュラを用いて有機発光媒体(一部、層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取するとともに、当該ドライボックス内に設けた全自動水分吸脱着測定装置IGA SORP(英国Hiden社製)を用いて重量を測定した。その結果、採取した有機発光媒体の重量Aは、43.9194mgであった。
【0243】
次いで、採取した有機発光媒体を、ドライボックス内で、80℃、30分の条件で加熱処理し、その処理後の重量を上述した全自動水分吸脱着測定装置を用いて測定した。その結果、加熱処理後の有機発光媒体の重量Bは、43.9190mgであった。
【0244】
よって、得られた重量Aおよび重量Bを上述した式(1)に導入して、有機発光媒体の含水率(W(%))を算出した。その結果、有機発光媒体の含水率(W)は0.0009重量%であった。
【0245】
すなわち、有機発光媒体を形成する前に脱水工程を設けて、支持基板表面および、第1および第2の層間絶縁膜から水分を除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0246】
(ii)発光性能の測定
得られた有機EL表示装置の下部電極(ITOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して、各電極の交差部分である各画素(約23万画素)を発光させた。そして、色彩色差計CS100(ミノルタ(株)製)を用いて発光輝度を測定したところ、300cd/mという値が得られた。なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
また、同様条件で有機EL装置の各画素を発光させてCIE色度を測定したところ、CIE色度座標において、CIEx=0.15,CIEy=0.18である青色発光が得られることを確認した。
【0247】
(iii)耐久性試験
得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置した。その後、上述した電圧条件で有機EL表示装置の各画素を発光させて、無発光領域または無発光箇所の発生が生じておらず、適切に発光している領域(以下、発光領域)の面積を測定し、放置前の発光領域の面積との比較から耐久性を評価した。また、2週間放置後の2組の有機EL表示装置の発光輝度についても同様に評価した。
【0248】
その結果、放置前の発光領域の面積を1としたときに、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.98であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.97であった。また、このときの発光輝度は、室温条件下では294cd/m、80℃条件下では291cd/mであった。
【0249】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できるとともに、発光輝度の低下を防止できることが判明した。
【0250】
[実施例2]
(1)有機EL素子の作製
(i)蛍光媒体の作製
光硬化性樹脂として、アクリル系光硬化型レジスト V259PA(新日鉄化学社製、固形分:50重量%、溶媒:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)100gと、有機蛍光体として、クマリン6 0.53g、ベーシックバイオレット11 1.5g、およびローダミン6G 1.5gと、顔料樹脂として、ベンゾグアナミン樹脂25gとを、ボールミルを用いて均一に混合し、蛍光媒体用組成物(蛍光媒体用インキ)とした。
【0251】
得られた蛍光媒体用組成物を、縦112mm、横143mm、厚さ1.1mmのガラス基板OA2(日本電気硝子(株)製)上に、スピンコートし、温度80℃、時間10分の条件で乾燥した。次いで、表示領域のパターンが得られるフォトマスクを介して、露光量が1500mJ/cmとなるように紫外線(波長365nm)を照射し、光硬化させて蛍光部(色変換部)とする一方、現像液(2重量%KOH水溶液)を用いて未露光部を除去した。次いで、160℃、30分の条件で、ポストベーク処理し、膜厚20μmの蛍光媒体とした。
【0252】
(ii)有機EL表示装置の作製
(i)で得られた蛍光媒体が形成されたガラス基板上に、膜厚200nmのIZO(インジウム亜鉛酸化物)膜をスパッタリング法により全面的に成膜した。このIZO膜を実施例1と同様の条件でパターン化して、陽極(下部電極)とするとともに、次いで、第1および第2の層間絶縁膜を形成後、実施例1と同一の条件で脱水を行うことにより正孔注入層と、発光層と、電子注入層と、陰極とからなる有機EL素子を形成し、さらに封止用ガラス基板(青板ガラス、ジオマテック(株)製)を陰極側に積層して、その周囲を光硬化型接着剤TB3102により封止して、図8に示す構成の有機EL表示装置を作製した。
【0253】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、層間絶縁膜および蛍光媒体を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量を測定した。その結果、採取した有機発光媒体の重量Aは、201.3977mgであり、重量Bは、201.3360mgであった。
【0254】
したがって、有機発光媒体の含水率は0.0306重量%であった。よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0255】
なお、同様に、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜中の含水率を測定したが、それぞれ0.05重量%未満の値であり、さらにIZOパターン中の含水率を測定したが、0.001重量%未満の値であった。
【0256】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(IZOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、90cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.61,Y=0.34である赤色発光が得られることを確認した。
【0257】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0258】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領
【0259】
域の面積変化から耐久性を評価した。
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.93であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.90であった。
【0260】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0261】
[実施例3]
(1)有機EL表示装置の作製
実施例2において蛍光媒体と、陽極(下部電極)との間に、平坦化層を形成したほかは、実施例2と同様にして、図9に示す構成の有機EL表示装置を作製した。
【0262】
すなわち、蛍光媒体を形成後、アクリル系の平坦化材料V259PA(新日鉄化学(株)製)をスピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した後、蛍光媒体を被覆可能なパターンを有するフォトマスクを介して、露光量が300mJ/cmとなるように、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った。次いで、現像液としてTMAHを用いて、未露光部を現像し、さらに、オーブンを用いて、温度160℃の条件でポストベーク処理して、膜厚約5μmの平坦化層とした。
【0263】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、蛍光媒体、平坦化層、および層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。
【0264】
その結果、有機発光媒体の含水率は0.0451重量%であった。よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、蛍光媒体、平坦化層、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0265】
なお、同様に、IZOパターン中の含水率を測定したが、0.001重量%未満の値であった。
【0266】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(IZOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、90cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.61,Y=0.34である赤色発光が得られることを確認した。
【0267】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0268】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0269】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.92であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.90であった。
【0270】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0271】
[実施例4]
(1)有機EL表示装置の作製
実施例1においてガラス基板と、陽極(下部電極)との間に、赤色カラーフィルタを形成し、有機発光媒体材料として、DPVBiとルブレンとを組み合わせて使用し、有機発光媒体の成膜前の脱水工程において、乾燥ヘリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図8に示す構成の有機EL表示装置を作製した。
【0272】
すなわち、ガラス基板上に、アクリル系樹脂からなるネガ型光硬化性材料V259R(新日鉄化学(株)製)をスピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した後、発光領域に対応したパターンを有するフォトマスクを介して、露光量が600mJ/cmとなるように、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った。
【0273】
次いで、現像液としてNaCO水溶液(濃度2重量%)を用いて、未露光部を現像し、さらに、オーブンを用いて、温度200℃の条件でポストベーク処理して、赤色カラーフィルタとした。
また、実施例1の真空蒸着装置において、有機発光層を形成する際に、下記蒸着速度で、それぞれDPVBiと、ルブレンとを同時蒸着した。
DPVBi :蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.
ルブレン :蒸着速度0.0005〜0.0015nm/sec.
【0274】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、カラーフィルタ、および層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。その結果、有機発光媒体の含水率は0.0312重量%であった。よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、カラーフィルタ、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0275】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(ITOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、50cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.65,Y=0.32である赤色発光が得られることを確認した。
【0276】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0277】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0278】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.93であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.92であった。
【0279】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0280】
[実施例5]
(1)有機EL表示装置の作製
実施例3において、ガラス基板と、蛍光媒体との間に、赤色カラーフィルタをさらに形成したほかは、実施例3と同様にして、図8に示す構成の有機EL表示装置を作製した。
【0281】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、カラーフィルタ、蛍光媒体、平坦化層、IZOおよび層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。その結果、有機発光媒体の含水率は0.0385重量%であった。よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、カラーフィルタ、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0282】
なお、IZOパターン中の含水率を測定したが、0.0001重量%未満の値であった。
【0283】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(IZOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、70cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.65,Y=0.32である赤色発光が得られることを確認した。
【0284】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0285】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0286】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.94であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.91であった。
【0287】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0288】
[実施例6]
(1)有機EL表示装置の作製
実施例2において、陽極(下部電極)をIZOから、CrとITOとの積層膜とするとともに、ガラス基板と陰極との間に形成した蛍光媒体を、封止用ガラス基板と陰極との間に形成したほかは、実施例2と同様にして、図10に示す有機EL表示装置を作製した。
【0289】
すなわち、ガラス基板OA2ガラス(日本電気硝子(株)製)上に、膜厚200nmのCr膜をスパッタリング法により全面的に成膜し、さらにその上に、膜厚130nmのITO膜をスパッタリング法により成膜した。このITO膜上に、ポジ型レジストHPR204をスピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した。
【0290】
次いで、ストライプ状パターン(ライン幅90μm,ギャップ幅20μm)を有するフォトマスクを介して、露光量が100mJ/cmとなるように、高圧水銀灯を光源としたコンタクト露光を行った。現像液としてTMAHを用いて、露光部を現像した。
【0291】
次いで、オーブンを用いて、温度130℃の条件でポストベーク処理した後、臭化水素酸水溶液(濃度47重量%)をエッチャントとして用いて、ITO膜をエッチングし、さらに硝酸セリウムアンモニウム/過塩素酸水溶液HCE(長瀬産業(株)製)にて、Cr膜をエッチングした。
【0292】
その後、剥離液N303を用いてポジ型レジストを除去し、陽極(下部電極)としてのストライプ状のCr/ITOパターン(ライン数960本)を形成するとともに、第1および第2の層間絶縁膜を形成した。
【0293】
なお、この段階で、脱水工程を設けて、実施例2で乾燥アルゴンを用いたこと以外は同一の条件で脱水処理した。そして、さらに実施例2と同様に、第1および第2の層間絶縁膜上に、正孔注入層、有機発光媒体、電子注入層、および陰極(上部電極)を形成して、有機EL素子を形成した。
【0294】
なお、ここで陰極として、AlqとLiとをそれぞれ蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、0.005nm/秒で共蒸着し、さらにIZOを200nm成膜した。
【0295】
一方、実施例2で使用した蛍光媒体用組成物(蛍光媒体用インキ)を、縦95mm、横128mm、厚さ1.1mmの封止用ガラス基板(青板ガラス、ジオマテック(株)製)上に、スピンコートし、温度80℃、時間15分の条件で乾燥した。そして、表示領域のパターンが得られるフォトマスクを介して、露光量が1500mJ/cmとなるように紫外線(波長365nm)を照射し、光硬化させて蛍光部とする一方、現像液(2重量%KOH水溶液)を用いて未露光部を除去した。
【0296】
次いで、160℃、30分の条件で、ポストベーク処理し、膜厚20μmの蛍光媒体を具えた封止用ガラス基板とした。なお、この段階で、得られた蛍光媒体を具えた封止用ガラス基板を、ドライボックス内に収容し、実施例2で乾燥アルゴンを用いたこと以外は同一の条件で脱水処理した。
【0297】
次いで、ドライボックス内において、有機EL素子の陰極(上部電極)上に、蛍光媒体を具えた封止用ガラス基板をさらに積層するとともに、周囲を、光硬化型接着剤を用いて封止し、図10に示す構成の有機EL表示装置を得た。
【0298】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。その結果、有機発光媒体の含水率は0.0210重量%であった。
【0299】
よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、蛍光媒体、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0300】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(Cr/ITOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、80cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.60,Y=0.34である赤色発光が得られることを確認した。
【0301】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0302】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0303】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.93であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.91であった。
【0304】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0305】
[実施例7]
(1)有機EL表示装置の作製
実施例6において、封止用ガラス基板上の蛍光媒体の代りに、実施例4と同様の赤色カラーフィルタを封止用ガラス基板上に設けたこと、および有機EL素子の作製を実施例4と同一にしたこと以外は、実施例6と同様にして、図10に示す構成の有機EL表示装置を作製した。
【0306】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体(一部、層間絶縁膜を含む。以下、同様である。)を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。その結果、有機発光媒体の含水率は0.0153重量%であった。よって、有機発光媒体を形成する前に脱水工程において、カラーフィルタ、第1および第2の層間絶縁膜等から水分除去することは、有機発光媒体の含水率を低下させるのに有効な手段であることが判明した。
【0307】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(Cr/ITOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、40cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.65,Y=0.34である赤色発光が得られることを確認した。
【0308】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0309】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0310】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.93であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.91であった。
【0311】
すなわち、有機発光媒体中の含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0312】
[実施例8]
(1)有機EL表示装置の作製
(i)陽極および層間絶縁膜の形成
実施例1と同様に、ガラス基板OA2ガラス上に、陽極(下部電極)、第1の層間絶縁膜および第2の層間絶縁膜(隔壁)を形成した。
【0313】
(ii)有機発光媒体の湿式成膜
次いで、湿式成膜として、インクジェット法にて、以下のインキから有機EL素子の有機発光媒体を形成した。すなわち、以下のインキをインクジェットプリント用装置のヘッドから、第1の層間絶縁膜の開口部に向けて噴出させて塗布した後、窒素中、150℃、4時間の条件で加熱処理し、水や溶剤を飛散させるとともに、PPV前駆体を高分子量化させて、赤色の有機発光媒体とした。
ポリp−フェニレンビニレン(PPV)前駆体: 0.3750重量%
グリセリン : 5.0000重量%
ジエチレングリコール :10.0000重量%
水 : 1.2235重量%
メタノール :23.3940重量%
N,N−ジメチルホルムアミド :60.0000重量%
ローダミンB : 0.0075重量%
【0314】
(iii)電子注入層の形成
次いで、有機発光媒体が形成されたガラス基板を、真空蒸着装置(日本真空技術(株)製)内の基板ホルダーに固定した。そして、真空蒸着装置内のモリブテン製の加熱ボードに、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)を収容し、真空度665×10−7Pa(5×10−7Torr)、蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.の条件で膜厚20nmの電子注入層を形成した。
【0315】
(iv)脱水工程
次いで、(iii)で得られたガラス基板を、脱水工程を実施するための脱水ユニットに移動した。すなわち、このガラス基板をドライボックス内に収容し、ホットプレートを用いて60℃に加熱し、その状態で乾燥窒素を導入しながら、露点を−50℃まで低下させて、約2時間放置し、有機発光媒体、第1および第2の層間絶縁膜中の水分並びにガラス基板表面等に付着している水分を除去した。
【0316】
(v)陰極の形成
(iv)で得られたガラス基板を、上記蒸着装置内の基板ホルダーに固定した。そして、対向電極(陰極)材料としてのAl−Li合金(Li濃度10atm%)をタングステン製フィラメントに装着した。この状態で、真空度665×10−7Pa(5×10−7Torr)、蒸着速度0.5〜1.0nm/sec.の条件で、ストライプ状の膜厚150nmの陰極(ライン数240本)を形成して、有機EL素子とした。
【0317】
(vi)封止
得られた有機EL素子を、乾燥窒素を導入したドライボックス内に収容し、さらに青板ガラス(ジオマテック(株)製)で発光面を被覆するとともに、周辺部に対して光硬化型接着剤TB3102(スリ−ボンド(株)製)を処理して封止した。
【0318】
このようにして、下部電極と、上部電極とがXYマトリックスを形成してなる図2に示す構成の有機EL表示装置とした。
【0319】
(2)有機EL表示装置の評価
(i)含水率の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置における有機発光媒体を採取して、全自動水分吸脱着測定装置IGA SORPを用いて重量Aおよび重量Bを測定した。その結果、有機発光媒体の含水率は0.0301重量%であった。よって、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、第1および第2の層間絶縁膜等とともに、脱水工程により、十分水分除去可能であることが判明した。
【0320】
(ii)発光性能の測定
実施例1と同様に、得られた有機EL表示装置の下部電極(ITOパターン,陽極)と、対向電極である上部電極(陰極)との間に、DC10Vの電圧を印加して発光させ、色彩色差計CS100を用いて発光輝度を測定したところ、50cd/mという値が得られ、CIE色度座標は、X=0.58,Y=0.34である赤色発光が得られることを確認した。
【0321】
なお、発光面の全面積を100%としたときの、画素面積の割合である開口率は56%であった。
【0322】
(iii)耐久性試験
実施例1と同様に、得られた2組の有機EL表示装置を、大気中、室温(25℃)の条件と、恒温槽中、80℃条件とに、それぞれ2週間放置し、発光領域の面積変化から耐久性を評価した。
【0323】
その結果、大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.92であり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、放置後の発光領域の面積は、0.90であった。
【0324】
すなわち、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、含水率を所定値(0.05重量%)以下の値とすることにより、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0325】
[実施例9]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を、60℃から120℃とした以外は、同一の条件で、有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0326】
結果から理解されるように、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を100℃以上とすることにより、有機発光媒体の含水率を0.0098重量%と、0.01重量%以下に低下させられることが判明した。
【0327】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.95となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.95となった。すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を100℃以上にすることにより、有機発光媒体の含水率を0.01重量%以下の値とすることができ、結果として、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0328】
[実施例10]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を、60℃から160℃とした以外は、同一の条件で、有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0329】
結果から理解されるように、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を150℃以上とすることにより、有機発光媒体の含水率を0.0006重量%と、0.001重量%以下に著しく低下させられることが判明した。
【0330】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.98となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.97となった。
【0331】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程におけるガラス基板の加熱温度を150℃以上にすることにより、有機発光媒体の含水率を0.001重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を著しく抑制できることが判明した。
【0332】
[実施例11]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程(ドライボックス)において、露点を−50℃から−10℃とした以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0333】
結果から理解されるように、脱水工程における露点を−10℃以下とすることにより、有機発光媒体の含水率を0.0495重量%と、0.05重量%以下に低下させられることが判明した。
【0334】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.90となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.87となった。
【0335】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程における露点を−10℃以下にすることにより、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0336】
[実施例12]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程(ドライボックス)において、露点を−50℃にしたまま、ホットプレートで加熱しなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0337】
結果から理解されるように、脱水工程において、ガラス基板を加熱しなくとも、露点を−50℃以下とすることにより、有機発光媒体の含水率を0.0450重量%と、0.05重量%以下に低下させられることが判明した。
【0338】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.91となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.87となった。
【0339】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程において、ガラス基板を加熱しなくとも、露点を−50℃以下とすることにより、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0340】
[実施例13]
カラーフィルタを設けた実施例4において、脱水工程(ドライボックス)において、露点を−50℃にしたまま、乾燥窒素を導入しながら、ホットプレートでガラス基板を250℃に加熱した以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0341】
結果から理解されるように、脱水工程において、乾燥窒素を導入しながら、ホットプレートでガラス基板を100℃以上で加熱することにより、有機発光媒体の含水率を0.0006重量%と、0.001重量%以下に低下させられることが判明した。
【0342】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.99となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.98となった。
【0343】
すなわち、カラーフィルタを設けたとしても、脱水工程において、乾燥窒素を導入しながら、ホットプレートでガラス基板を100℃以上で加熱することにより、有機発光媒体の含水率を0.001重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を著しく抑制できることが判明した。
【0344】
[実施例14]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程(ドライボックス)において、乾燥窒素の導入、露点の調整およびホットプレートによる加熱をせずに、真空度を133×10−5Pa(1×10−5Torr)とした以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0345】
結果から理解されるように、脱水工程において、真空度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.0238重量%と、0.05重量%以下の低い値に低下させられることが判明した。
【0346】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.91となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.88となった。
【0347】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程において、真空度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0348】
[実施例15]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程(ドライボックス)において、乾燥窒素の導入および露点の調整をせずに、真空度を133×10−5Pa(1×10−5Torr)とするとともに、ホットプレートによりガラス基板を160℃に加熱した以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0349】
結果から理解されるように、脱水工程において、真空度および加熱温度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.0006重量%と、0.001重量%以下に低下させられることが判明した。
【0350】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.99となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.98となった。
【0351】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程において、真空度および加熱温度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.001重量%以下の値とすることができ、大気中、室温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を著しく抑制できることが判明した。
【0352】
[実施例16]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、脱水工程(ドライボックス)において、乾燥窒素の導入、露点の調整およびホットプレートによる加熱をせずに、真空度を133×10−1Pa(1×10−1Torr)とした以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表3に示す。
【0353】
結果から理解されるように、脱水工程において、真空度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.0488重量%と、0.05重量%以下の低い値に低下させられることが判明した。
【0354】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、気温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.91となり、恒温層中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.85となった。
【0355】
すなわち、カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けたとしても、脱水工程において、真空度を調節することにより、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができ、大気中、気温(25℃)の条件はもとより、80℃の高温環境下においても長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制できることが判明した。
【0356】
[比較例1]
実施例1において、有機EL素子の形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表4に示す。
【0357】
結果から理解されるように、脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.0713重量%であり、0.05重量%以下の値に低下させることができなかった。
【0358】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.80となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.55となった。
【0359】
すなわち、有機EL素子の形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0360】
[比較例2]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、有機EL素子の形成前に脱水処理を実施しなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表4に示す。
【0361】
結果から理解されるように、脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.3215重量%であり、0.05重量%以下の値に低下させることができなかった。
【0362】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.33となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.15となった。
【0363】
すなわち、有機EL素子の形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0364】
[比較例3]
カラーフィルタ、蛍光媒体および平坦化層を設けた実施例5において、有機EL素子の形成前に、乾燥窒素を導入し、露点0℃、室温、2時間の条件で、わずかに脱水処理を実施した以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表4に示す。
【0365】
結果から理解されるように、わずかに脱水処理を実施したばかりであるため、有機発光媒体の含水率は0.1001重量%であり、0.05重量%以下の値に低下することができなかった。
【0366】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.60となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.30となった。
【0367】
すなわち、有機EL素子の形成前に十分に脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0368】
[比較例4]
カラーフィルタを設けた実施例4において、有機EL素子の形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表4に示す。
【0369】
結果から理解されるように、脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.0821重量%であり、0.05重量%以下の値に低下することができなかった。
【0370】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.75となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.45となった。
【0371】
すなわち、有機EL素子の形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0372】
[比較例5]
湿式成膜した実施例8において、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表4に示す。
【0373】
結果から理解されるように、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.1234重量%であり、0.05重量%以下の値に低下することができなかった。
【0374】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.55となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.42となった。
【0375】
すなわち、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0376】
[比較例6]
実施例6において、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表5に示す。
【0377】
結果から理解されるように、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.1230重量%であり、0.05重量%以下の値に低下することができなかった。
【0378】
また、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.40となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.25となった。
【0379】
すなわち、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0380】
[比較例7]
実施例1において、有機EL素子の陰極形成後に、60℃、30分の条件でわずかに脱水処理をした以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表5に示す。
【0381】
結果から理解されるように、有機EL素子の陰極形成前に十分に脱水処理を行わなかったために、有機発光媒体の含水率は0.1重量%を超えており、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.53となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.40となった。
【0382】
すなわち、有機EL素子の陰極形成前に脱水工程を設けて十分に脱水処理をしなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0383】
[比較例8]
実施例3において、平坦化層と下部電極との間に、水分バリア層としてのSiO層(膜厚200μm)をスパッタリングにより設けたものの、有機EL素子形成前に脱水工程を設けて脱水処理をしなかった以外は、同一の条件で有機EL表示装置を作製して、評価した。得られた結果を表5に示す。
【0384】
結果から理解されるように、脱水工程を設けなかったために、有機発光媒体の含水率は0.1重量%を超えており、得られた有機EL表示装置を大気中、室温(25℃)の条件で、2週間放置した場合には、放置前と比較して、放置後の発光領域の面積は、0.40となり、恒温槽中、80℃条件で、2週間放置した場合には、0.20となった。
【0385】
すなわち、有機EL素子の形成前に脱水処理を行わなかったため、有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることができず、大気中、室温(25℃)条件および、80℃の高温環境下の2週間放置において、無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を抑制することは困難であることが判明した。
【0386】
【表1】

【0387】
【表2】

【0388】
【表3】

【0389】
【表4】

【0390】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0391】
以上、本発明の有機EL表示装置によれば、画素を高精細化したとしても、有機発光媒体を湿式成膜したとしても、あるいは、室温のみならず、酸化しやすい高温環境下に放置したとしても、長時間にわたって無発光領域または無発光箇所の発生による発光面積の縮小を防止することができる有機EL表示装置を提供することができるようになった。
【0392】
したがって、本発明の有機EL表示装置は、小型表示携帯端末装置(携帯電話)、車載用表示装置、インストルメントパネル装置、カーナビゲーター装置、ノート型パーソナルコンピューター、壁掛テレビ等の民生用表示機器や、オフィスオートメーション表示装置、ファクトリーオートメーション表示装置、計装装置用モニター等の産業用表示機器に広く使用することができる。
【0393】
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法によれば、このような有機EL表示装置を、簡易な装置を用いて、効率的に得ることができるようになった。
【符号の説明】
【0394】
1 支持基板
2 下部電極
3 層間絶縁膜
4 発光媒体
5 対向電極(上部電極)
8 封止用ガラス基板
9 蛍光媒体
10 平坦化層
11 カラーフィルタ
12 無発光領域
13 発光領域
14 画素
15 第1の層間絶縁膜
16 第2の層間絶縁膜(隔壁)
17 水分
18 有機EL表示装置
20 製造装置
21 脱水ユニット
22 成膜ユニット(真空蒸着装置)
23 封止ユニット
24 搬送ユニット
25 搬送装置
26 仕切り弁
30 露点計
32 ハウジング
33 基板ステージ
34 ホットプレートあるいは冷却装置
35 ドライガス循環装置、不活性ガス導入口
36 ドライガス循環装置、不活性ガス排出口
38 真空装置、真空ポンプ
39 真空度計
51 全自動水分吸脱着測定装置
52 オイルバス
53 天秤
54 温度センサー
55 湿度センサー
56 ドライボックス
57 加熱装置
58 注入口
61 循環路
62 天秤室
63 精密天秤
64 比較試料室
65 制御室
66 湿潤ガス循環装置
67 ドライガス循環装置
68 ガス貯蔵部
A 循環部
B 水分測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に、下部電極と、層間絶縁膜と、湿式成膜した有機発光媒体と、対向電極とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記層間絶縁膜および湿式成膜した有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
さらに、支持基板上にカラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材を含み、
前記カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、層間絶縁膜および湿式成膜した有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
さらに、支持基板上に平坦化層を含み、
前記カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、平坦化層、層間絶縁膜および湿式成膜した有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
支持基板上に、下部電極と、TFT(薄膜トランジスタ)と、層間絶縁膜と、有機発光媒体と、対向電極とを含む有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記層間絶縁膜により前記TFTが保護または平坦化されていることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
さらに、支持基板上にカラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材を含み、
前記TFT、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
さらに、支持基板上に平坦化層を含み、
前記TFT、カラーフィルタおよび蛍光媒体、あるいはいずれか一方の部材、平坦化層、層間絶縁膜および有機発光媒体の含水率を0.05重量%以下の値とすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−278028(P2010−278028A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204264(P2010−204264)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2001−557343(P2001−557343)の分割
【原出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】