説明

有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法

【課題】遷移金属酸化物をホール注入層に用いたときのデバイスの発光特性を改善する。特に、遷移金属酸化物の電子ブロッキング特性の向上をはかる。
【解決手段】陽極および陰極と、前記陽極および陰極の間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記陽極と前記発光機能を有した層との間に少なくとも1種類の遷移金属酸化物層からなる電荷注入層を有するエレクトロルミネッセント素子であって、該遷移金属酸化物層の陽極側における金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した層側における金属と酸素の比が陽極側よりも大きくなっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント素子およびその製造方法にかかり、特に携帯電話用のディスプレイや表示素子、各種光源などに用いられ、低輝度から光源用途等の高輝度まで幅広い輝度範囲で駆動される電界発光素子である有機エレクトロルミネッセント素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子は固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光デバイスであり、小型のディスプレイとして一部で実用化されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセント素子は発光層に用いられる材料によって、いくつかのグループに分類することが出来る。代表的なもののひとつは発光層に低分子量の有機化合物を用いる低分子有機エレクトロルミネッセント素子で、主に真空蒸着を用いて作成される。そして今一つは発光層に高分子化合物を用いる高分子有機エレクトロルミネッセント素子である。
【0004】
高分子有機エレクトロルミネッセント素子は各機能層を構成する材料を溶解した溶液を用いることでスピンコート法やインクジェット法、ノズルコート法、キャップコーティング法、スプレー法、印刷法等の湿式塗布法による成膜が可能であり、その簡便なプロセスから低コスト化や大面積化が期待できる技術として注目されている。
【0005】
典型的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子は陽極および陰極の間に電荷注入層、発光層等の複数の機能層を積層することで作成される。以下に代表的な高分子有機エレクトロルミネッセント素子の構成およびその作成手順を説明する。
【0006】
例えば図8に示すように、まず陽極1122としてのITO(インジウム錫酸化物)を成膜したガラス基板100上に電荷(ホール)注入層1123としてPEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物:以下PEDTと記載する)薄膜をスピンコート法などによって成膜する。PEDTは電荷注入層として事実上の標準となっている材料であり、陽極側に配置されることでホール注入層として機能する。
【0007】
PEDT層の上に、有機高分子材料からなる中間層1124を設ける。中間層は、一例としてトリフェニルアミン誘導体とポリフルオレンの共重合体であり、例えばTFBと指称されるpoly-(2,7(9,9-di-n-octylfluorene)-(1,4-phenylene-((4-sec-buthylphenyl)imino)-1,4-phenylene))を用いる。本化合物はホール注入性に優れ、かつ電子ブロッキング機能を有している。そのため発光効率が向上し、駆動寿命も良化する。次に、発光層1125としてポリフェニレンビニレン(以下PPVと表す)およびその誘導体、またはポリフルオレンおよびそれらの誘導体がスピンコート法などによって成膜される。発光層上には、1126として電子を注入材料として、Ba、Ca、Mg、Li、Cs等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいは、LiF、BaOなどこれら金属のフッ化物や酸化物、CsCo等の炭酸化物等の仕事関数の小さい材料を用いて、有機材料の最低空軌道(LUMO)に効率的に注入をおこなっている。その後、陰極として、AlやAg等の金属電極1127を設ける。これらの金属類は真空蒸着法、スパッタ法、あるいは湿式塗布法によって形成される。
【0008】
このように高分子有機エレクトロルミネッセント素子は簡易なプロセスで作成することが出来るという優れた特徴を備えており、様々な用途への応用が期待されているが、ホール注入層として用いられているPEDT:PSSが酸性水溶剤であることから、使用している塗布装置の金属部分を腐食させるという装置的な課題や、画素を分割するために設ける主としてレジスト材料から形成した隔壁へのヌレ性が悪いことに起因する課題、有機溶媒に溶解させた発光機能を有する材料とのヌレ性が悪いため、ディスプレイ等の細かいピクセルに分割した場合、ピクセル内の塗布膜の均一性が不十分になり、発光の均一性が損なわれていたり、ショートが起こりやすい等の重大な課題があった。また、電荷が注入されることにより化学的な劣化を起こし、寿命に悪影響を与えることが知られていた。
【0009】
この高分子有機エレクトロルミネッセント素子の発光強度の低下、すなわち劣化は通電時間と素子を流れる電流の積に比例して進行するが、その詳細については未だ明らかになっておらず鋭意研究が進められているところである。
【0010】
発光強度の低下の原因については様々な推測がなされているが、発光材料そのものもしくはホール注入層、電子注入層等の機能層の電子やホールに対する安定性、励起子からの副反応、熱的な安定性、層間の界面の安定性、熱による材料の拡散、陰極材料の酸化等々種々の要因の複合であると考えられている。
【0011】
高分子エレクトロルミネッセント素子においては、前述のようにPEDTの劣化はその主なものの一つとして考えられている。PEDTは前述したようにポリスチレンスルホン酸とポリチオフェンという二つの高分子物質の混合物であって、前者はイオン性、後者は高分子鎖に局所的な極性がある。このような電荷の異方性に起因するクーロン相互作用により両者は緩やかな結合をし、それにより優れた電荷注入特性を発揮している。
【0012】
PEDTが優れた特性を発揮する為には両者の密な相互作用が不可欠であるが、一般に高分子物質の混合物は溶媒に対する微妙な溶解性の違いにより相分離を起こしやすいものである。これはPEDTについても例外ではない。相分離を生じるということは2つの高分子の緩やかな結合は比較的容易に外れてしまうということを意味しており、PEDTが有機エレクトロルミネッセント素子中にあって駆動される際に不安定である可能性や、相分離の結果、結合に寄与しなかった成分、特にイオン性の成分が通電に伴う電場によって拡散し、他の機能層に望ましくない作用を及ぼす可能性があることを示している。このようにPEDTは優れた電荷注入特性を持っているが、決して安定な物質であるとは言えない。
【0013】
本発明者らは種々の実験の結果から、上述したようなPEDTに関連する懸念に対し、陽極と発光層との間に、PEDTに代えて、酸化モリブデンMoO等の遷移金属酸化物を形成することにより、良好な注入特性を得ることができることを提案している(特許文献1)。
【0014】
この発明により、ホール注入層にまつわる課題は大きく改善されたが、発光効率の観点からは使用する材料によっては発光効率が低下する場合があり、さらなる改善が求められていた。
【0015】
また、塗布法によって形成されたMoSとMoOとの積層膜を形成した発光ダイオードや、MoSをアニール処理したITO/MoS/MoO/高分子有機半導体層構造の電極をもつ発光素子も提案されている(非特許文献2,3)。これらはいずれもMoSを塗布法で形成しており、パターンエッジにおける表面の盛り上がりにより、均一な膜厚で形成するのが困難であるだけでなく、MoSは、リーク電流が大きく、隣接画素とのリーク電流が大きくなり、特に微細化、高集積化に際しては、1体形成は困難であるという問題もあった。
【0016】
また、電子ビーム法により酸化タングステンをITO上に蒸着して450℃で熱処理を行い、低分子系の有機EL材料を蒸着すると、発光効率が向上したとの報告がある(非特許文献4)しかしながら、本技術は、アニール温度が450℃と高くディスプレイ等を構成したときに、絶縁膜や画素分離用の隔壁等の他の構成部材に悪影響を与えるため使用できない。また、最適膜厚が1.5nmと極めて薄くまた膜厚依存性も大きいことから第2世代以上の大型基板を用いたときにはバラツキが生じてしまうという重大な欠点がある。
【0017】
さらに、酸化ニッケルを用いた例もある。(非特許文献5)即ち、10nmのNi金属を蒸着し、その後500℃で熱処理をし酸化ニッケルに変換するという方法である。この文献によると熱処理を行うことにより発光効率が向上し、最適条件は4時間であるとの記載がある。しかしながら本文献でもアニール温度が高く、また下地が金属Niであるためすべて酸化されていないとクロストークが生じるという課題がある。さらに従来用いられているホール注入層、例えばスターバーストアミンや銅フタロシアニン等に比べて高効率が達成できるとの記載はない。
また、大型基板を用いた場合には、膜厚依存性が大きいことは歩留まりに大きく影響し安定的に量産ができないことにつながる。
【0018】
【特許文献1】特開2005−203340号公報
【非特許文献2】“Journal of Applied Physics Volume 92,(2002)7556−7563”
【非特許文献3】“Advanced Materials 2002,Volume 14,265-268”
【非特許文献4】“Synthetic metals, 151(2005)141-146”
【非特許文献5】“Thin Solid Films, 515(2007)5099-5102”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上のように、上記構造では、陽極上に、膜厚10―100nm程度の遷移金属酸化物からなるホール注入層を用いており、この上層に発光層などの機能層を形成している。この機能層は、主として中間層および発光層あるいは電子輸送層からなるが、ここで用いられる中間層は膜厚が約20nm前後と薄く、発光材料とほぼ同じ有機溶媒を含んでいるため、層間の混合が起こる場合が多い。また、中間層(インターレイヤー)は陰極から注入された電子を発光層内にとどめるために電子ブロッキング機能を有することが求められているが層間の混合の問題や、化学構造的な問題から、電子を完全にブロックすることができず、一部の電子が再結合することなしに陽極へ通過してしまい、結果として十分な発光効率が得られない等の問題があった。
【0020】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、遷移金属酸化物をホール注入層に用いたときのデバイスの発光特性を改善することを目的とする。
特に、遷移金属酸化物の電子ブロッキング特性の向上を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、陽極および陰極と、前記陽極および陰極の間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記陽極と前記発光機能を有した層との間に少なくとも1種類の遷移金属酸化物層からなる電荷注入層を有するエレクトロルミネッセント素子であって、該遷移金属酸化物層の陽極側における金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した層側における金属と酸素の比が陽極側よりも大きくなっていることを特徴とする。
通常、還元雰囲気下で成膜された酸化モリブデンなどの遷移金属酸化物は化学量論比に対して酸素欠損になっており、金属と酸素の比が化学量論比であるものに比べ比抵抗が小さく、ホールは十分に輸送可能な特性を有する。これに反し、化学量論比の酸化モリブデンは絶縁体として知られている。従ってこのようにして作製したホール注入層に、大気中での熱処理、UV処理、酸素プラズマ処理等の表面酸化処理を施すと表面のみ酸化が進行し相対的に酸素の比率が増加し、化合物の理論比に近づくことで、絶縁性が向上し、その結果電子ブロッキング機能が発揮されるようになる。また、複数の画素にまたがるようにホール注入層を形成した場合は比抵抗が小さい場合はクロストークが起きやすくなり画像のコントラストが低下するため、もともとの成膜時の比抵抗は、コントラストの要求仕様にもよるが、一定以上の抵抗を有することが好ましい。さらに酸化が進んですべてが化学量論比になってしまうと逆に注入効率が大きく損なわれることが実験からわかっており、酸素欠損の領域と化学量論比に近い値を持つ領域とが共存することが必要である。化学量論比に組成が近い場合は前述のように絶縁体であるためホールが注入される機構としては、トンネル電流によると考えられる。従って、この層に電子ブロッキング機能を持たせることも可能となり有機材料から形成される電子ブロッキング層を省略することもでき、より膜厚が薄くなることによって低電圧駆動であってかつ発光効率の高い有機エレクトロルミネッセント素子を提供することが可能となる。
【0022】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層が、成膜後、表面酸化処理を行うことで形成された遷移金属酸化物層であるものを含む。
この構成により、遷移金属酸化物層の成膜後、酸素欠損の領域と化学量論比に近い値を持つ領域とが共存する状態を容易に得ることができる。酸化処理は酸化処理の時間やパワー、温度等により薄膜の膜厚方向に酸化が進んでいくと考えられるが、酸化が進んですべてが化学量論比になってしまうと逆に注入効率が大きく損なわれる。従って、本発明の発光効率向上の効果を最大限に発現させるためには、陽極と接している側は酸素欠損を有しHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)上に欠陥順位を形成していること、発光機能を有する材料と接する側はごく表面のみ酸化処理が施されていることが必要と考えられる。
【0023】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層が、熱処理によって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有するものを含む。
この構成によれば、短時間で作業性よく酸化処理を行うことで遷移金属酸化物層を形成することができる。
【0024】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層が、紫外線処理によって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有するものを含む。
この構成によれば、紫外線照射時間を制御し易いことから、酸化層の深さを高精度に制御することができる。
【0025】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層は、酸素を含むプラズマによって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有するものを含む。
この構成によれば、プラズマ強度とプラズマ密度および加速時間を制御することで、酸化層の深さを、より高精度に制御することができる。
【0026】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層がドライプロセスで形成されたものを含む。
この構成により、安定で膜質の優れた遷移金属酸化物層を形成することが可能となる。
【0027】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層のうち、前記陽極側に位置する遷移金属酸化物層の比抵抗が1×10exp(5)Ωcm以上であることが好ましい。
この構成により、複数の画素にわたり一体的に形成した場合にもクロスロークを低減することができる。なお、複数の画素にまたがらせず画素ごとにホール注入層を独立させた場合は前記のクロストークは実質的に問題とはならないので、遷移金属酸化物層そのものに起因する電圧降下を小さくし高輝度発光を可能とするには、前記遷移金属酸化物層の比抵抗は10000Ωcm以下と低い方が望ましい。
【0028】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記遷移金属酸化物層が複数の画素にわたって一体的に形成されたものを含む。
この構成により、複数の画素にわたって一体的に形成された場合にも、比抵抗が大きいためクロストークの問題もなく、またこの上層に形成される発光機能を有した層は、下地層全体が同じ材料から形成されるため特に塗布型においては接触角が変動することもなく、均一な膜厚を容易に得ることが可能となる。この場合は、画素規制層は、遷移金属酸化物層の下層に形成しておくのが望ましい。
【0029】
また本発明は、上記有機エレクトロルミネッセント素子において、前記金属酸化物層の可視光透過率が70%以上であるものが好ましい。
この構成により、十分な発光光量を維持することができる。
【0030】
また、本発明は、陽極および陰極と、前記陽極および陰極の間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記陽極と前記発光機能を有した層との間に少なくとも1種類の遷移金属酸化物層からなる電荷注入層を有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、前記遷移金属酸化物層を形成する工程が該遷移金属酸化物層の陽極側における金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した側における金属と酸素の比が陽極側よりも大きくなるように形成する工程である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明してきたように、本発明によれば、酸素欠損を有するように形成した遷移金属酸化物薄膜は酸素欠損状態であり、比抵抗が高いもののホールを注入することは可能であるが、使用する発光材料によっては発光効率がやや低下する場合があった。この理由としては電子ブロッキング能が不十分であることが推測される。この発光効率の低下を補償するためには、ホールと電子の再結合領域を中間層と発光層の界面ではなくより陰極に近い側に持ってくることも有効であるが、生成した励起子の拡散距離によっては陰極側にエネルギー移動してしまい十分な効果が得られない場合があった。本発明においては、酸素欠損を有する遷移金属酸化物薄膜を形成後に、表面酸化などにより極表面層のみを酸化させることで、相対的に酸素の比率が増加し、化合物の理論比に近づくことで、表面で電子ブロッキング機能が発揮されることになり、発光効率の高い有機エレクトロルミネッセント素子を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1の高分子有機エレクトロルミネッセント素子の基本的構造について説明する。
【0033】
本実施の形態では、図1にその構造概略説明図を示すように、陽極と発光機能を有する層との間に形成される遷移金属酸化物層である酸化モリブデン層(MoO)の表面を酸化し、酸化モリブデン層の陽極側(MoOx1)における当該モリブデンと酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した層側(MoOx2)におけるモリブデンと酸素の比が陽極側よりも大きくなるようにしたことを特徴とするものである。ここでX2<3、X1<X2である。すなわち、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセント素子を構成するもので、透光性のガラス基板1上に形成された酸化インジウム錫(ITO)層からなる陽極2上に、正孔注入層3として、表面の酸化された酸化モリブデン薄膜、発光層4としての高分子材料を順次積層し、この上にさらに、アルカリ土類金属からなる電子注入層5を形成すると共にこの上層にアルミニウム層からなる陰極6を順次積層したことを特徴とするものである。
【0034】
すなわち、本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子は、図1に示すように、透光性のガラス材料からなる基板1と、この基板1上に形成された陽極2としてのITO薄膜と、更にこの上層に形成された電荷注入層3としての遷移金属酸化物薄膜と、高分子材料からなる発光層4と、バリウム層で構成された電子注入層5と、アルミニウム層からなる陰極6とで構成される。
【0035】
上記有機エレクトロルミネッセント素子の陽極2をプラス極として、また陰極6をマイナス極として直流電圧または直流電流を印加すると、高分子膜からなる発光層4には、陽極2から正孔注入層3を介してホールが注入されるとともに陰極6から電子が注入される。発光層4では、このようにして注入されたホールと電子とが再結合し、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起る。
【0036】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子によれば、正孔注入層を、表面酸化の成された酸化モリブデンで構成しているため、安定化と注入特性の向上をはかることができる。従って、発光特性の向上および長寿命化を図ることが可能となり、信頼性の高いボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセント素子を構成することができる。
なお前記実施の形態1において、発光機能を有した層側(MoOx2)におけるモリブデンと酸素の比が陽極側のそれよりも大きくなっているだけでなく、酸素が化学量論比よりも大きい(X2>3)場合にさらに有効である。
【0037】
(実施の形態2)
図2に本発明の実施の形態2の高分子有機エレクトロルミネッセント素子の基本的構造について説明する。
【0038】
本実施の形態と前記実施の形態1の有機エレクトロルミネッセント素子との差は、図1に示した前記実施の形態1の有機エレクトロルミネッセント素子の発光層4と正孔注入層としての酸化モリブデン3との間に、図2に示すように、膜厚20nm程度のTFBからなる中間層(電子ブロッキング層)7を介在させた点である。この中間層は、LUMOレベルが発光層より浅い位置にあり、発光層から中間層への電子の注入バリアを形成しているかあるいは電子の移動度をホールの移動度より小さくして実質的に電子移動が起こらないようにするような設計が可能である。他部については前記実施の形態1の有機エレクトロルミネッセント素子と同様に形成されている。
【0039】
すなわち、本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子は、図2に示すように、透光性のガラス材料からなる基板1と、この基板1上に形成された陽極2としての酸化インジウム錫(ITO)薄膜と、更にこの上層に形成された正孔注入層3としての表面を酸化された遷移金属酸化物薄膜と、中間層7と、高分子材料からなる発光層4と、電子注入層5と、アルミニウム層からなる陰極6とで構成される。
【0040】
この場合も、上記有機エレクトロルミネッセント素子の陽極2をプラス極として、また陰極6をマイナス極として直流電圧または直流電流を印加すると、塗布法で形成された高分子膜からなる発光層4には、陽極2から正孔注入層3を介してホールが注入されるとともに陰極6から電子が注入される。ここで中間層7は電子ブロッキング層として作用する。発光層4では、このようにして注入されたホールと電子とが再結合し、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起る。
【0041】
本実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子によれば、実施の形態1による作用効果に加え、中間層7を介在させているためにより電子ブロック機能が強化され電子とホールの再結合確率を高めることが出来る。従って、発光特性の向上および長寿命化を図ることが可能となり、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセント素子を構成することができる。
【0042】
以下実施例の説明に先立ち、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子を構成する各要素について説明する。
(電子注入層)
本実施例の電子注入層は、仕事関数の小さいアルカリ金属、アルカリ土類金属によって構成することができる。具体的には、Ca,Ba、Li、Cs等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらの金属以外にもそれらの酸化物、例えばCaO、BaO、LiO、Cs、MgOや、LiF等のハロゲン化物も含まれる。
また、欠陥準位を有する酸化チタン、酸化亜鉛等を用いることも好ましい。これらの材料を用いた場合はアルカリ金属および/またはそれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物を用いた場合よりは大気に放置した場合でも水分や酸素との反応が低下し有機ELの欠点と言われている大気中での駆動が可能になる。
【0043】
これら酸化チタンや酸化亜鉛を電子注入層として用い、本発明のホール注入層を組み合わせた場合、本発明のホール注入層は電子ブロック機能を有しているために、中間層を用いずとも生成したエキシトンが電極にエネルギー移動をすることなく再結合するため、発光層中での発光領域をホール側によせることが可能である。これによって層構成がシンプルになり歩留まりの向上やコストの低減に寄与する。この場合の層構成は、陽極/遷移金属酸化物層/有機発光層/遷移金属酸化物層/陰極となり、極めてシンプルな構成となる。陰極と有機発光層に挟まれた遷移金属酸化物層には、ドーパントとしてCaO、BaO、LiO、Cs、MgO等のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含むことが望ましい。これらは大気中で不安定であるが、欠陥準位を有する酸化モリブデン等にドーピングすることにより不安定性が低下しかつ電子注入性を改善することが出来る。さらには遷移金属酸化物マトリクスにて周りが覆われているため他層への拡散が起こりにくくなり、発光効率や駆動寿命に悪影響を与えることが少なくなる。一般には、電子の放出が起こりにくくなることも予想されるが本発明の場合は、種々の実験の結果、そのような副作用が少なく良好な電子放出性を示した。従って本発明の素子構造を用いることにより、従来必要であった、有機物からなる電子輸送層や、低仕事関数のアルカリ金属等からなる層を配することが不要となり、ロバストな素子を得ることが出来る。
また、本発明に電子注入層として用いられる不純物含有遷移金属酸化物層は、仕事関数が4から6eVのものが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
なお、亜鉛は近年、典型元素に分類されることがあるが、本発明の遷移金属元素に含まれるものとして取り扱うものとする。
【0044】
(ホール注入層)
本発明で用いられるホール注入層は遷移金属酸化物を用いることが望ましい。
遷移金属酸化物を用いることにより、電極材料がイオン性のものを含んでいる場合でもバリア層として作用し、電極側から反応性物質が拡散して発光層の劣化を招くようこともない。また、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化バナジウムのような遷移金属酸化物は、欠陥準位や異なる酸化数を持つようなプロセスにて薄膜を作製した場合、有機エレクトロルミネッセント素子の電荷の注入が効率よくなされる。また、比抵抗が小さい場合は1μm以下の薄膜で用いる場合、電圧降下が少なく、両電極間に印加される電界がそのまま発光層にかかり、低電圧での駆動が可能となる。また本発明の遷移金属酸化物薄膜は正孔注入性、正孔輸送性、あるいは電子ブロック性等の多機能性を有するため、単層で高機能を得ることができ、素子の層構成をシンプルにすることができ低コストのデバイスを実現することが可能となる。
【0045】
また、ここで、表面を酸化された遷移金属酸化物層の厚さは1nm以上1μm以下であるのが望ましい。
1μmを超えると透過率が低下してしまい、高い透過率を確保するのが難しくなってしまう。また成膜時間も考慮すると望ましいのは500nm以下となっている。また、薄い場合、膜状になっていなくても、平均的な厚さが1nm程度の膜であると、島状であっても上述したのと同等の効果を得ることができる。1nmよりも薄い膜の場合は、十分なホール注入特性を得ることができない。
具体的には、酸化モリブデンのほか、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化ルテニウム等を用いることができるがこれらに限定するものではない。これらの化合物は複数の酸化状態をとり、金属と酸素の比率が化学量論比の場合は絶縁物となり、酸素欠損を有する場合は導電性を示し、本発明のように膜厚方向で酸化状態をコントロールして電子ブロック能を持たせることが可能である。酸化数や、組成はXPS(X線光電子分光)分析によって知ることが出来る。
【0046】
表面酸化の方法としては、成膜後酸化することが簡便である。例えば酸素が共存する雰囲気において、UV照射、熱処理を行うことや、酸素プラズマ照射、さらには溶液での酸化処理等種々の方法が適用可能でありその方法は問わない。また後述の製膜中に金属と酸素の比率が所望の値になるように条件を変更しながら製膜することも可能である。
【0047】
(発光層・中間層)
ホール注入層の上には、有機半導体材料を塗布して、発光層を形成する。この際、発光層とホール注入層の間にホールブロッキング層として、中間層を設けると発光効率の点で好ましい。このホールブロッキング層としては、ポリフルオレン系の高分子材料で発光層に用いる材料よりLUMOレベルが高いか、もしくは電子移動度が低いトリフェニルアミン骨格を有するTFB等が用いられるが、これに限ったものではない。発光層としては、高分子型としてはポリフルオレン系、ポリフェニレンビニレン系の共重合体に加え、ペンダント型、デンドリマー型や溶液に溶解し塗布乾燥後にも結晶化等が起こらず良好な薄膜系性能を有する塗布型の低分子、あるいは高分子のホストに低分子の発光材料をドープして塗布する系を含め、溶媒に溶解させ、塗布して薄膜を形成出来るものであれば種類を問わない。
【0048】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子において、この発光機能を有した層は高分子化合物に限定されない。低分子化合物あるいはオリゴマー等のいずれでもよい。これらの材料としては従来公知である材料を用いることが可能である。
【0049】
また、低分子エレクトロルミネッセントデバイスとしては、基板/陽極/ホール注入層/ホール輸送層/電子ブロッキング層/発光層(ドーピング材料を含む)/ホールブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極の層構成が代表的な構造としてあげられるが、この他にも種々のバリエーションがある。このように高分子型エレクトロルミネッセントデバイスに比べると多層構造になっておりこれがコストの高騰の要因となっていた。本発明のホール注入層を用いることによりホール注入層とホール輸送層、電子ブロッキング層を一体化することが出来、コストの低減には有効である。
【0050】
(層構成)
上記の例は、基板側から光を取り出すいわゆるボトムエミッション型について述べてきたが、光を基板と反対方向から取り出すトップエミッション型(この場合は、陽極として高反射率の銀合金やアルミニウム合金を用いることが好ましい)、陽極と陰極の配置を逆にしたリバース構造型、そのトップエミッション型等があり、材料としても蛍光発光材料、燐光発光材料等種々の化合物を用いる場合に適用可能である。この場合、本発明のホール注入層を付与することによって、反射陽極を加熱した場合に起きやすいいわゆるヒロックの発生を防止することが出来る。
【0051】
(陰極)
陰極としては、本発明の電子注入層とオーミックコンタクトをとることのできる材料が好ましい。一般的な、AlやAg、Auに代表される金属、ITO、IZOに代表される透明導電性酸化物等は好ましく用いられる。
【0052】
(封止)
本発明のデバイスには封止を行うことが好ましい。従来のエレクトロルミネッセントデバイスにおいては、できるだけ水分透湿性の小さい封止樹脂を用いることや、素子上に形成した薄膜層による膜封止や乾燥剤を封入する等、信頼性の確保のために多大なコストを要していた。本発明によれば簡便なデバイスの封止は必要であるが、従来の封止方法によりコストを低減することができる。簡便な封止材料としては既存の材料のなかから広く選択することができる。
【0053】
(製膜方法)
また、本発明の有機エレクトロルミネッセント素子を構成する機能層のうち、陽極側における当該遷移金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した層側における遷移金属と酸素の比が陽極側よりも大きくなるように構成した遷移金属酸化物層の形成については、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシー法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法などのドライプロセスが望ましい。
【0054】
このようなドライプロセスにおいては、基板温度を制御するのが望ましいことが実験結果からわかっている。なお、蒸着法の場合、基板温度を60℃から100℃とすることで輝度の向上および発光開始電圧の低下を達成することができる。また、スパッタ法の場合でもスパッタ中に基板温度は上昇するが、スパッタ開始時点から基板温度を上げておくことは必要な酸素欠陥を導入する上で好ましい。
【0055】
さらにまた、反応性スパッタ法を用いて金属ターゲットのスパッタ中に酸素導入量を変えながら成膜することも可能である。すなわち、酸素欠陥を有する第1層を成膜し、酸素含有量を増大させながら遷移金属酸化物層を成膜する、連続形成法も有効である。
また、共蒸着で、ターゲットからの蒸発量を変化させながら、組成傾斜膜を成膜するようにしてもよい。
【0056】
また、組成の異なる遷移金属酸化物を混合した合金をターゲットとして用いたり、モリブデン、タングステンなど複数種の遷移金属を含む複数のターゲットを用いて共スパッタ法で形成するのも有効である。この場合も酸素の量を変化させながらスパッタリングを行なうかあるいは酸素含有量の異なるターゲットを切り替えながらスパッタリングを行なうことで、所望の酸素含有量の遷移金属酸化膜を得ることができる。
【0057】
膜厚としては、正孔注入性を損なわない範囲にとるのが望ましいが、数nmから500nmが好ましい。また、膜厚が厚くなると透過率のロスが大きくなるため薄い方が好ましいが量産時のバラツキ等を考慮して膜厚を決定すればよい。
また、酸化物のナノ粒子等を適用することも出来る。この場合は、ゾルゲル法、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)、レイヤーバイレイヤー法、スピンコート法、インクジェット法、ディップコーティング法、スプレー法などの湿式法などからも適宜選択可能であり、結果的に本発明の効果を奏効し得るように形成可能な方法であれば、いかなるものでもよいことはいうまでもない。
【0058】
本発明の機能層(発光層、或いは、必要に応じて形成される正孔注入層、電子注入層)を高分子材料で形成する場合、スピンコーティング法や、キャスティング法や、ディッピング法や、バーコート法や、ロールコート法、インクジェット法、ノズルコーティング法、スプレー法等の湿式法が用いられる。これにより、大規模な真空装置が不要であるため、安価な設備で成膜が可能となるとともに、容易に大面積の有機エレクトロルミネッセント素子の作成が可能となる
【0059】
なお、ガラス基板100は無色透明なガラスの一枚板である。ガラス基板100としては、例えば透明または半透明のソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の遷移金属酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラスを用いることができる。
【0060】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態の有機エレクトロルミネッセント素子を用いた表示装置について説明する。この実施の形態は、トップエミッション型の高分子有機エレクトロルミネッセント表示装置の一例である。
まず、有機エレクトロルミネッセント素子を用いた表示装置について説明する。本実施の形態の表示装置は、基本的には、ガラス基板上に作製したポリシリコンからなるトランジスタを設けた駆動基板上に絶縁膜を設け、アルミ合金を陽極としてパターニングした。その上に正孔注入層としての酸化モリブデンとタングステンのスパッタ膜を複数の画素にまたがるように形成した。このように画素間を分離しないで正孔注入層を作製することでプロセスを簡略化できる。その後表面を大気中でアニール処理して酸化させた後にRGBの各画素を分離するための隔壁を設けた。その後、中間層、発光層を、インクジェット法を用いて塗布した。次に、電子輸送層として低分子の電子輸送材料にBaをドープしたものをRGB画素全面に共蒸着した。引き続き陰極としてITOをスパッタリングして封止を施し基本的なデバイスを作製した。ここで行った大気中のアニール処理によって発光効率が向上した。本実施の形態は、表面のアニール処理により、相対的に酸素の比率が増加し、化合物の理論比に近づくことで、表面で電子ブロッキング機能が発揮されるようにしたものである。そしてさらに本実施の形態では、機能層として、陰極6側に酸化バリウム含有酸化モリブデン層(電子注入層)5を介在させたもので、図1に示した実施の形態1の有機エレクトロルミネッセント素子と同様の発光装置を用いてアクティブマトリックス型の表示装置を構成したものである。これにより、発光層側で酸素が、遷移金属酸化物は酸素欠損であり、比抵抗が小さいが、表面酸化などにより、酸化モリブデン(遷移金属酸化物)が酸化され、相対的に酸素の比率が増加し、化合物の理論比に近づくことで、表面で電子ブロッキング機能が発揮されるものと思われる。
この表示装置は、図4にこのアクティブマトリックス型の表示装置の等価回路図、図5にレイアウト説明図、図6に断面図、図7に上面説明図を示すように、各画素に駆動回路を形成したアクティブマトリックス型の表示装置を構成するものである。
【0061】
この表示装置140は、図4に等価回路図、図5に画素のレイアウト説明図を示すように、画素を形成する有機エレクトロルミネッセント素子(エレクトロルミネッセント)110およびスイッチングトランジスタ130、光検出素子としてのカレントトランジスタ120とからなる2つの薄膜トランジスタ(TFT:T1,T2)とコンデンサCとからなる駆動回路を上下左右に複数個配列し、左右方向に並んだ各駆動回路の第1のTFT(T1)のゲート電極を走査線143に接続して走査信号を与え、また上下方向に並んだ各駆動回路の第1のTFTのドレイン電極をデータ線に接続し、発光信号を供給するように構成されている。エレクトロルミネッセント素子(エレクトロルミネッセント)の一端には駆動用電源(図示せず)が接続され、コンデンサCの一端は接地されている。143は走査線、144は信号線、145は共通給電線、147は走査線ドライバ、148は信号線ドライバ、149は共通給電線ドライバである。
【0062】
図6は有機エレクトロルミネッセント素子の断面説明図(図6は図5のA−A断面図である)、図7はこの表示装置の上面説明図であり、駆動用のTFT(図示せず)を形成したガラス基板100に、陽極(Al)112、表面酸化のなされた酸化モリブデン層(遷移金属酸化物層)113、有機中間層(電荷ブロッキング層)(図示せず)、発光層114(赤色発光層R,緑色発光層G,青色発光層B)、酸化バリウム含有酸化モリブデン層115、陰極116を形成してトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセント素子を形成している。構造としては、陽極および電荷注入層は個別に形成され、発光層は画素規制層117としての酸化シリコン層からなる突出部で開口面積を規定され、陰極116は、陽極に直交する方向に走行するストライプ状に形成されている。
【0063】
なおこの駆動用のTFTは、例えばガラス基板100上に有機半導体層(高分子層)を形成し、これを、ゲート絶縁膜で被覆しこの上にゲート電極を形成すると共にゲート絶縁膜に形成したスルーホールを介してソース・ドレイン電極を形成してなるものである。そして、この上にポリイミド膜などを塗布して絶縁層(平坦層)を形成し、その上部に陽極(ITO)112、表面酸化のなされた酸化モリブデン層113、電子ブロッキング層、発光層などの有機半導体層114、酸化バリウム含有酸化モリブデン層115、陰極116(Al超薄膜、ITO)を形成して有機エレクトロルミネッセント素子を形成した構造を有している。なお、図7では、コンデンサや配線については省略したが、これらも同じガラス基板上に形成されている。このようなTFTと有機エレクトロルミネッセント素子からなる画素が同一基板上に複数個マトリクス状に形成されてアクティブマトリクス型の表示装置を構成している。
【0064】
製造に際しては図5に示すように、ガラス基板100上に形成された走査線143、信号線144、スイッチングTFT130、画素電極を構成するアルミニウムのパターンからなる電極112などの上に画素規制層117を形成し、その後開口部を設ける。
そしてこの上層に、全面に遷移金属酸化物層113をスパッタ法によって形成した後、表面を紫外線で酸化する。
【0065】
この後、インクジェット法によって必要に応じて中間層としてTFBを塗布する。このTFB層は遷移金属酸化物層と同様に全面に塗布してもよいし、開口部に対応する部分だけに塗布してもよい。
そして、乾燥工程を経て、開口部に対応する位置にインクジェット法によって所望の色(RGBのいずれか)に対応する高分子有機エレクトロルミネッセント材料を塗布し、発光層114を形成する。
さらに、共蒸着法などにより酸化バリウム含有酸化モリブデン層115を成膜し、最後に表示画素141が配置されている領域に対して陰極116を形成する。
【0066】
この構成によれば、高速駆動が可能で信頼性の高い表示装置を提供することができる。発光層と陽極との間に、一体的に形成された遷移金属の酸化物である酸化モリブデン層が表面酸化されたかたちで介在しているため、クロストークがなく、発光層は酸化モリブデン層により平滑化され、高精度にサイズが制御された、内表面を持つ凹部に充填されている。このためインクジェット法により、位置ずれも無く確実に発光層を形成することができ、膜厚およびサイズが高精度に制御された発光層を得ることができる。また、発光層の上層にも一体形成された酸化モリブデン層が、形成されているため、陰極を形成する際にスパッタダメージを受けたり、パターニング工程におけるプラズマダメージを受けたりすることもない。
【0067】
従って、発光層が均一に形成された表面に形成されると共に、表面も平滑な状態を維持できることになり、発光層が均一に形成され、電界集中もなく、陽極および陰極によって印加される電界が均一に発光層に付与され、良好な発光特性を得ることができる。また各発光層が均一に形成されることになり、発光特性のばらつきもなく良好な発光特性を得ることができる。
【0068】
次にエレクトロルミネッセント素子を2次元的に複数配置した発光装置を用いた照明装置の例を、図5を援用して説明する。2次元的に配置されたエレクトロルミネッセント素子110について、例えば全てのエレクトロルミネッセント素子を一斉に点灯/消灯するような構成は極めて容易に実現できる。ただしこのように一斉に点灯/消灯するような構成であっても、少なくとも一方の電極(例えばAlで構成される画素電極(図6の陽極112参照))は個々のエレクトロルミネッセント素子単位に分離した構成とすることが望ましい。これは何らかの要因によって表示画素141に欠陥があったとしても、欠陥が当該表示画素141に留まるため、照明装置全体の製造歩留まりを向上させることができるからである。このような構成を有する照明装置は、例えば家庭における一般的な照明器具に応用することができる。この場合に照明装置を極めて薄く構成することができるから、天井のみならず壁面にも容易に設置することができるようになる。
【0069】
また、2次元的に配置されたエレクトロルミネッセント素子は任意のデータを供給することで、その発光パターンを簡単に制御することができ、かつ本発明に係るエレクトロルミネッセント素子は、その発光領域を例えば40μm角程度のサイズで構成できるから、照明装置にデータを供給してパネル型の表示装置と兼用するようなアプリケーションを構成できる。もちろんこの場合には表示画素141は位置に応じて赤色、緑色、青色に塗り分けられている必要があるが、インクジェット法を用いることにより、極めて容易に多色化が可能となる。
【0070】
従来は照明装置と表示装置を比較したときに、その発光輝度は照明装置の方が大きいものであった。しかしながら本発明に係るエレクトロルミネッセント素子110は十分に大きく面積をとることができ、極めて高い発光輝度を有しているため、照明装置と表示装置を兼用することができる。この場合、照明装置と表示装置ではその機能の違い(すなわち使用モード)に起因して発光輝度を調整する機構が必要となるが、この機構は例えば前記実施の形態2に示した構成を採用し駆動電流を制御して各エレクトロルミネッセント素子の発光輝度を調整することで実現できる。即ち照明装置として使用する場合は全てのエレクトロルミネッセント素子をより大きな電流で駆動し、表示装置として使用する場合は小電流でかつ階調に応じて制御された電流値で(すなわち画像データに応じて)各エレクトロルミネッセント素子を駆動すればよい。このようなアプリケーションにおいて、照明装置として機能する場合の電源と、表示装置として機能する場合の電源は単一のものとしてもよいが、駆動電流を制御する、例えばディジタル−アナログ変換器のダイナミックレンジが大きく、表示装置として使用する際の階調数が不足するような場合には、図4および図5に示す共通給電線145に接続された電源(図示せず)を使用モードに応じて切り替えるような構成とすることが望ましい。もちろん照明装置としての使用モードにおいても、明るさの制御が必要な態様(すなわち調光機能を有する照明装置)にあっては、先に説明した階調に応じた電流値制御によって容易に対応することができる。また本発明のエレクトロルミネッセント素子は、ガラス基板100の上のみならず例えばPETなどの樹脂基板上にも形成できることから、様々なイルミネーション用の照明装置としても応用することができる。
【0071】
なお、薄膜トランジスタを有機トランジスタで構成してもよい。また薄膜トランジスタ上に有機エレクトロルミネッセント素子を積層した構造、あるいは有機エレクトロルミネッセント素子上に薄膜トランジスタを積層した構造なども有効である。
【0072】
加えて、高画質のエレクトロルミネッセント表示装置を得るために、有機エレクトロルミネッセント素子を形成したエレクトロルミネッセント基板と、TFT、コンデンサ、配線などを形成したTFT基板とを、エレクトロルミネッセント基板の電極とTFT基板の電極とが接続バンクを用いて接続されるように貼り合わせるようにしてもよい。
【0073】
なお、実施の形態3の変形例として、カラー表示装置における、色の塗り分けを行なう方法について説明する。
この例では、薄膜トランジスタを形成した基板を用いて、RGBの塗り分けを行った。TFT基板には、絶縁性の有機材料にて平坦化膜を形成した。その基板上に、透明電極としてITOをスパッタ法で形成しその後、実施の形態4と同様にSiNにて画素規制層をそれぞれの厚みで形成し、所望の発光領域になるようにドライエッチングする。
【0074】
そしてこのTFT基板を用いて、RGBの塗り分けを行った。TFT基板には、絶縁性の有機材料にて平坦化膜を形成した。その基板上に、透明電極としてITOをスパッタ法で形成しその後、実施例1と同様にSiONにて画素規制層をそれぞれの厚みで形成し、所望の発光領域になるようにドライエッチングを行った。その後、本発明のホール注入層として、タングステンとモリブデンの合金をターゲットとして酸素とアルゴンを流しながらスパッタを行い酸化物からなるホール注入層を作製した。引き続き基板を酸素プラズマ装置に導入し200Wにて30秒照射し、最表面を酸化させた。
【0075】
その後、ポリイミドからなるバンクをRGBの画素列毎に形成した。これによりバンクで素子の列ごとにストライプ状に分割された基板を得た。また、この場合のバンクは順テーパの形状をとった。その基板を用いて、エレクトロルミネッセント素子を形成した。これは、PEDTに比べて抵抗が高く、クロストークが生じないとの特徴があるため、このような使い方が出来る。次にバンクで分割された列毎に、中間層としてTFBを20nmの厚さになるようにインクジェット法を用いて塗布した。それを乾燥、ベーキングしたあとに、発光層として、今度はディスペンサーを用いて、バンクで分割されたそれぞれの列に赤色発光材料、緑色発光材料、青色発光材料のインクを調合し、平均で80nmの厚みになるように塗布を行った。その後、電子注入層として、抵抗加熱蒸着法にて低分子の電子輸送材料にBaをドープした層を形成した。その後、陰極としてアルミニウムを100nm真空蒸着した。電子注入層および陰極は画素のすべてを覆うように形成した。
【0076】
得られた試料の一部のTFTを外部回路で動作させ発光状態と寿命を評価した。その結果、十分な発光状態と寿命が得られた。
【0077】
(実施の形態5)
(照明装置)
【0078】
照明装置の例として、ITOを設けた30cm角のガラス基板に酸化モリブデンを100nmの厚みにスパッタし、その後、高分子型の白色発光材料を100nmの厚みになるようにスピンコートした。引き続き、電子注入層として本発明の酸化亜鉛にフッ化リチウムを10%共蒸着しその後Agを陰極として100nm形成した。
このようにして得られた試料にDCを10V印加したところ均一な発光が得られ、封止がない状態でもショートやダークスポットの生成をすることなく1時間安定に駆動した。
【0079】
(実施例1)
以下に本発明の実施例について説明する。本発明の有機エレクトロルミネッセント発光装置は実施の形態1に対応する例であり図1を参照しつつ説明する。
パターニングされた厚さ0.7mmのITO(2)付きガラス基板1上に、正孔注入層として、スパッタリング法により酸化モリブデン層を厚み10nmになるように成膜し、ウシオ電機製のSNA/14と指称されるエキシマUV露光装置を用い、発振波長:172nm、3分の照射を行なって、表面を酸化した。その後、窒素で満たされたグローブボックスにサンプルを入れ、中間層としてフルオレンとトリフェニルアミンの共重合ポリマーであるTFB(poly 2,7-9,9-di-n-octylfluorene_-alt-1,4-phenylene-4-sec-butylphenylimino-1,4-phenylene)を20nmの厚みになるようスピンコートした後、180℃にて窒素中でベークした。続いて、緑色発光材料(サメイション社製)を80nmスピンコートし同様に窒素中でベークし発光層を形成した。次に、素子を真空蒸着装置に移し、電子注入層として厚さ5nmのBaを、陰極としてAlを厚さ100nm蒸着した。得られた素子は、窒素雰囲気下で有機EL用のゲッター剤を封入し、周辺部をUV感光性の封止樹脂にてシールした。これを試料103とした。試料104は試料102において、酸化モリブデン膜を形成後、酸素プラズマ装置に導入後200Wのプラズマを1分間照射した以外、試料102と同様にして作製した。
ここで、表面酸化に際しては、大気中250℃45分間処理を行っても同様な結果が得られた。
【0080】
なお、比較のため比較試料102は、試料103,104においてUV照射も酸素プラズマ照射もなしにそのまま用いたものである。また比較試料102において酸化モリブデンを10nm真空蒸着するかわりに、パターニングされた厚さ0.7mmのITO(2)付きガラス基板1上に、正孔注入層として、H.C.Starck製PEDTを厚み60nmになるように大気中でスピンコートし、200℃にて10分ベークし乾燥させた。そしてグローブボックスに移して同様に中間層以下を塗布し試料102乃至104と同様にして作製しものを試料101とした。
【0081】
なお、前述したように、試料103は、試料102において、酸化モリブデン層を形成後に、UV照射を行った。それ以外は試料102と同様にして作製した。
試料104は試料102において、酸化モリブデン膜を形成後、酸素プラズマ装置に導入後200Wのプラズマを1分間照射した以外、試料102と同様にして作製した。
得られた試料101から104について、ITOを陽極、Alを陰極としてIV特性および発光輝度特性を評価した。
その結果、試料101に比べ、試料102−104は約0.5V低電圧化していた。発光特性を下表に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から明らかなように、未処理のMoOを用いた場合は、駆動寿命は改善されているが、発光効率が比較例のPEDTを用いた場合より悪化しているのに対し、本発明の酸化処理を行った試料は発光効率がPEDT同等以上になり、かつ駆動寿命も向上していることがわかる。
次に、図5に示したような複数画素を有するパターンを作製した。陽極としてのITOは個々に分割されており、外部からの個別の駆動が可能になるように作製される。この基板に絶縁膜として感光性レジストを塗布、露光、現像し、所望の大きさの画素を形成した。この上に、試料101−104に用いた材料を全面に塗布もしくは蒸着した。得られた試料は、正孔注入層、中間層、発光層、陽極は複数の画素に跨って形成されている。これらの試料において1画素のみに電圧を印可し約1000cd/mにて発光させたところ、試料101は隣接した画素も目視出来るレベルで発光していることが観察された。一方、試料102−104については発光が確認されなかった。
【0084】
一般的に中間層、発光層は有機材料からなるため抵抗が高く、画素を跨って一体に形成されていても、クロストークは起こらない。これに対し、PEDTはもともと水に分散された溶液であり乾燥しても比抵抗が小さい。このため、複数の画素に跨って形成した場合、共通の陰極を用いると電圧を印可していない隣接画素も発光してしまう大きな欠点がある。これに対し、 本発明の酸化モリブデンでは、横方向の比抵抗が高くクロストークが生じない利点があるが、asdepoの酸化モリブデンを用いた場合は、発光材料の種類によって発光効率がPEDT同等以上にはならない欠点があった。それに対し、本発明の酸化処理を行うと発光効率がPEDT同等以上になりかつIV特性は同等であった。かつ発光効率が向上することにより駆動電流値が下げられるため寿命も良化するというメリットを見出すことが出来た。
【0085】
前記実施例1において、試料102−104に用いた酸化モリブデン薄膜の表面組成をX線光電子分光法を用いてモリブデンと酸素の比率を調べた。その結果、試料102についてはMoと酸素の比率が2.7と求められた。これはMoの3p軌道のシグナルと酸素の2p軌道のシグナルの比をとった値である。試料103については2.9、試料104については3.0と求められた。これは、実施例1に示した表面の酸化処理によって酸化モリブデンが酸化され、モリブデンに比べて相対的に酸素の比率が増加していることを示していることは明らかである。すなわち、本発明の酸化処理によって酸素の欠損を有した酸化モリブデンの表面は酸化処理によって酸素欠損の部分が酸化されて化合物の理論比に近づいたことを示している。これらの酸化処理は酸化処理の時間やパワー、温度等により薄膜の膜厚方向に酸化が進んでいくと考えられるが、酸化が進んですべてが化学量論比になってしまうと逆に注入効率が大きく損なわれる。従って、本発明の発光効率向上の効果を最大限に発現させるためには、陽極と接している側は酸素欠損を有しHOMO上に欠陥順位を形成していること、発光機能を有する材料と接する側はごく表面のみ酸化処理が施されていることが必要と考えられる。
なおここで、発光機能を有した層側におけるモリブデンと酸素の比が陽極側よりも大きくなっているだけでなく、酸素が化学量論比よりも大きい(X>3)場合にさらに有効である。
【0086】
(実施例2)
実施例1の試料102−104に示した試料の酸化モリブデンに代えて、酸化タングステンのスパッタ膜を20nm形成し、同様な試料202−204を作製した。酸化タングステンは、金属ターゲットを用い酸素を導入するいわゆる反応性スパッタで酸化タングステンを形成させた。それ以外の工程は実施例1と同じである。実施例1と同様な評価を行ったところほぼ同様な結果を得た。
【0087】
(実施例3)
実施例2の試料において、ターゲットをモリブデンとタングステンを30:70の元素比の合金ターゲットを作製し同様に試料302−304の作製と評価を行った。その結果を表2に示した。
【0088】
【表2】

【0089】
この結果から明らかなように、タングステン、モリブデンの合金ターゲットを用い、本発明の表面処理を施した試料は、モリブデン単独、タングステン単独で作製し表面処理を行った結果より発光効率の上昇分が大きかった。詳細な理由は不明であるが極表面での欠陥準位の形成が電子ブロック層に適した準位になっているものと思われる。
【0090】
また、多数の有機エレクトロルミネッセント素子セルを配列形成する場合に、樹脂性の隔壁を設け、この隔壁に囲まれた領域に発光機能を有する層を形成する場合、電子注入層上に樹脂膜をパターニングする必要があるが、このパターニング工程で、酸化モリブデンは溶出することがあるが、タングステンが含有されていることで溶出を防ぐことができ、この場合にも表面の平滑性を失うことなく、平滑な表面を維持することができ、特性劣化を防ぐことができる。
【0091】
(実施例4)
実施例3の試料302−304で用いた正孔注入層を用い、中間層を用いることなしに緑色発光材料を塗布して同様に陰極形成して作製した試料を試料402−404とした。これらの試料の特性を評価したところ,駆動電圧は約さらに0.5V、低電圧化した。これは中間層を除去することによって有機半導体層の全膜厚が減少したことによるものと思われる。発光効率は未処理の酸化モリブデンは大きく低下した。一方、酸化処理を施した本発明の試料は中間層を除去しても発光効率の低下は起こらなかった。これは、酸化処理を施すことによって酸化モリブデンの表面が酸化され表面層のみが絶縁体の性質を示し発光層のLUMOをホッピングしてきた電子のエネルギー順位のところには有効な空乏層が存在しなくなったことによると考えられる。一方、正孔注入については数nmの厚みであればトンネル注入が可能であり、正孔の注入効率が落ちていないことは理解できる。
【0092】
【表3】

【0093】
以上の実施例から、本発明の酸化処理がIV特性に悪影響を与えることなく発光効率を向上させうることが示され、かつクロストークの要求項目も満足していることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の有機エレクトロルミネッセント素子は、有機エレクトロルミネッセント素子において、特に電子ブロッキング特性の向上を図るとともに長寿命の有機エレクトロルミネッセント素子を提供することが可能となり、例えばテレビ、ディスプレイの多色発光を必要とするアプリケーションのみならず単色発光を利用する露光デバイス、プリンタ、ファクシミリなどに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1の有機エレクトロルミネッセント素子の構造を示す概略説明図
【図2】本発明の実施の形態2の有機エレクトロルミネッセント素子の構造を示す概略説明図
【図3】本発明の実施例3の有機エレクトロルミネッセント素子の構造を示す概略説明図
【図4】本発明の実施の形態3の表示装置の等価回路図
【図5】本発明の実施の形態3の表示装置のレイアウト説明図
【図6】本発明の実施の形態3の表示装置の断面図
【図7】本発明の実施の形態3の表示装置の上面説明図
【図8】従来例の有機エレクトロルミネッセント素子を示す説明図
【符号の説明】
【0096】
1 ガラス基板
2 陽極
3 ホール注入層
4 発光機能を有した層
5 電子注入層
6 陰極
7 中間層
100 ガラス基板
112 陽極
113 遷移金属酸化物層
114 発光層
115 表面酸化された酸化モリブデン層
116 陰極
117 画素規制部
118 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極と、前記陽極および陰極の間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記陽極と前記発光機能を有した層との間に少なくとも1種類の遷移金属酸化物層からなる電荷注入層を有するエレクトロルミネッセント素子であって、該遷移金属酸化物層の前記陽極側における当該遷移金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した層側における当該遷移金属と酸素の比が前記陽極側よりも大きくなっている有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層は、成膜後、表面酸化処理を行うことで形成された遷移金属酸化物層である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層は、熱処理によって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有する有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層は、紫外線処理によって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有する有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層は、酸素を含むプラズマによって表面を酸化処理された遷移金属酸化物層を含有する有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層がドライプロセスで形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層のうち、前記陽極側に位置する遷移金属酸化物層の比抵抗が1×10exp(5)Ωcm以上である有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記遷移金属酸化物層が複数の画素にわたって一体的に形成された有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記金属酸化物層の可視光透過率が70%以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項10】
陽極および陰極と、前記陽極および陰極の間に形成された複数の機能層とを具備し、前記機能層は少なくとも1種類の有機半導体からなる発光機能を有した層と、前記陽極と前記発光機能を有した層との間に少なくとも1種類の遷移金属酸化物層からなる電荷注入層を有するエレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記遷移金属酸化物層を形成する工程が該遷移金属酸化物層の陽極側における金属と酸素の比が化学量論比よりも酸素含有率が小さく、かつ発光機能を有した側における金属と酸素の比が陽極側よりも大きくなるように形成する工程である有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記遷移金属酸化物層を形成する工程は、遷移金属酸化物層を成膜する工程と、前記遷移金属酸化物層表面を酸化する、表面酸化処理工程を含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記表面酸化処理工程は、熱処理によって表面を酸化処理する工程を含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記表面酸化処理工程は、紫外線処理によって表面を酸化処理する工程を含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記表面酸化処理工程は、酸素を含むプラズマによって表面を酸化処理する工程を含む有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法であって、
前記遷移金属酸化物層を形成する工程はドライプロセスである有機エレクトロルミネッセント素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−277788(P2009−277788A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126112(P2008−126112)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】