説明

有機ケイ素化合物、それを含むゴム組成物及びタイヤ

【課題】加硫ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に耐摩耗性を向上させ、タイヤの転がり抵抗性を低くし、耐摩耗性、ウエット制動性及びドライ操縦安定性を向上させる。
【解決手段】分子内に一つ以上のA−C=C部位を含み、且つ一つ以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有する有機ケイ素化合物、それを含むゴム組成物及びタイヤである。
[但し、A−C=C部位中のAは、B、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び下記一般式(1)から選ばれるものである。]


[式中、XはC、N、S及びPから選ばれるものであり、YはO、S及びNRaから選ばれるものであり、ZはO、S及びNRbから選ばれるものであり、Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものであり、mは0〜2の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物、並びにそれを含むゴム組成物及びタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、耐摩耗性及び低転がり抵抗性の良好なタイヤを与えることができる有機ケイ素化合物、それを含むゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
低転がり抵抗性と高いウエット制動性を両立する技術として、充填材にシリカを用いることが有効であることが知られている。
しかし、シリカを配合したゴム組成物は未加硫時の粘度が高く、多段練り等の混練作業に難がある。そのため、加硫遅延や充填材の分散不良等が起こり、加硫後の切断時引張応力や耐摩耗性が大幅に低下する問題が発生していた。
これに対し、分散改良剤添加によって未加硫ゴム組成物の粘度は低下し作業性は改良されるが、耐摩耗性が低下することがある。さらに、分散改良剤がイオン性の高い化合物の場合にはロール密着等の未加硫ゴム組成物の加工性の低下も見られる。
また、公知のシランカップリング剤をシリカと併用することにより、低転がり抵抗性や耐摩耗性が一定程度向上するものの、更なる改良が求められている。(特許文献1及び2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−100675号公報
【特許文献1】特開2008−297358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、加硫ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に耐摩耗性を向上させ、タイヤの転がり抵抗性を低くし、耐摩耗性を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シランカップリング剤である有機ケイ素化合物の分子構造中に、混練り中又は加硫中に生じるポリマー(ジエン系ゴム)由来のラジカル種を受容し易い官能基を導入することにより、有機ケイ素化合物−ポリマー間の反応を促進できることを見出した。これにより、カップリング反応の効率が上昇し、ヒステリシスロスの低下と耐磨耗性の向上が達成されることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
分子内に一つ以上のA−C=C部位を含み、且つ一つ以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有する有機ケイ素化合物、その有機ケイ素化合物を含むゴム組成物及びそのゴム組成物を用いたタイヤである。
[但し、A−C=C部位中のAは、B、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び下記一般式(1)から選ばれるものである。]
【0006】
【化1】

[式中、XはC、N、S及びPから選ばれるものであり、YはO、S及びNRaから選ばれるものであり、ZはO、S及びNRbから選ばれるものであり、Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものであり、mは0〜2の整数である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機ケイ素化合物をゴム組成物に用いることにより、未加硫ゴム組成物の粘度を低下させ、シリカ分散性を改良し、加硫ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に耐摩耗性を向上させ、そのゴム組成物を用いたタイヤの転がり抵抗性を低くし、耐摩耗性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の有機ケイ素化合物は、分子内に一つ以上のA−C=C部位を含み、且つ一つ以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有することを特徴とする。
但し、A−C=C部位中のAは、B、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び下記一般式(1)から選ばれるものである。
【0009】
【化2】

式中、XはC、N、S及びPから選ばれるものであり、YはO、S及びNRaから選ばれるものであり、ZはO、S及びNRbから選ばれるものであり、Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものであり、mは0〜2の整数である。
【0010】
上記の本発明の有機ケイ素化合物は、下記一般式(2)で表わされることが好ましい。
【0011】
【化3】

式中、R1、R2及びR3の少なくとも一つは−O−Cn2n+1(nは1〜20の整数である。)であり、その他は−B1−Cn2n+1(B1はO又はCH2であり、nは1〜20の整数であり、R1、R2及びR3のnはそれぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。)である。R4は−B2−Cp2p−(B2は−O−又は−CH2−であり、pは1〜20の整数である。)であり、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に、−B3−Cq2q+1(B3は−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、qは1〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれるものであり、AはB、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び上記一般式(1)から選ばれるものである。
【0012】
【化4】

式中、R1、R2、R3及びR4は上記一般式(2)と同じである。
【0013】
【化5】

式中、R8は−B4−Cr2r+1{B4は−O−、−S−、−N(Cj2j+1)−(jは1〜20の整数である。)及び−CH2−から選ばれるものであり、rは1〜20の整数である。}、下記一般式(5)及び下記一般式(6)から選ばれるものである。
【0014】
【化6】

式中、Wは−O−、−S−及び−N(Ck2k+1)−(kは1〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R9は−O−Cs2s+1、−S−Cs2s+1、−N(Cs2s+12及び−Cs2s+1から選ばれるものであり、sは1〜20の整数であり、xは0〜5の整数である。
【0015】
【化7】

式中、R10は−O−Ct2t+1、−S−Ct2t+1、−N(Ct2t+12及び−Ct2t+1から選ばれるものであり、tは1〜20の整数であり、yは0〜5の整数である。
【0016】
また、本発明の有機ケイ素化合物において、上記一般式(2)中のAは、−S−、下記一般式(7)、下記式(8)、下記式(9)及び下記一般式(10)から選ばれるものであることが好ましい。
【0017】
【化8】

式中、f及びgはそれぞれ独立に、1〜20の整数である。
【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

式中、hは1〜20の整数である。
【0021】
以下、本発明の有機ケイ素化合物のシランカップリング剤としての特徴を公知のシランカップリング剤との対比により、詳しく説明する。
公知のシランカップリング剤として、例えば、以下のような有機ケイ素化合物(a)がある。
【0022】
【化12】

式中、R41、R42、R43及びR45は、それぞれ通常アルキル基であり、R44はアルキレン基である。
【0023】
上記の有機ケイ素化合物(a)は、下記アルコキシシシリル基(a−1)部位がシリカと反応し、一方、(a−2)部位がゴム成分であるジエン系ゴム(天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム)と反応することによりシリカとジエン系ゴムとのカップリング効果を奏する。
【0024】
【化13】

【0025】
しかしながら、ジエン系ゴムは通常極性が低いので、上記(a−2)部位がカルボニル基等の極性基を有すると有機ケイ素化合物(a)の(a−2)部位とジエン系ゴムとの親和性が低下する。
これに対して、本発明の有機ケイ素化合物は、A−C=C部位、好適には下記(1−2)部位を有するので、本発明の有機ケイ素化合物のジエン系ゴムと反応する部位を疎水化できジエン系ゴムとの親和性を高めるので、シリカの分散性を向上させる効果を奏する。
さらに、A−C=C部位中のAの近くに、ラジカルを安定化させる二重結合を有することにより、ゴム組成物の混練り中に発生する有機ケイ素化合物のラジカルを安定させ、有機ケイ素化合物とジエン系ゴムとの反応性を向上し、有機ケイ素化合物のカップリング効率を高める効果を奏する。
【0026】
【化14】

【0027】
本発明の有機ケイ素化合物のA−C=C部位中のAは、上述のカップリング効率を高める観点からS(硫黄原子)及びSi(ケイ素原子)が好ましく、S(硫黄原子)が特に好ましい。
本発明の好適例である上記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物において、R1、R2及びR3は、少なくとも1つが炭素数1〜10のアルコキシ基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基、デシロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はオクチル基が好ましい。R4は具体的には、プロパン−1,3−ジイル基であることが好ましく、R5、R6及びR7は具体的には、それぞれ独立に水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基又はデシル基であることが好ましい。
また、上記一般式(4)〜(6)におけるR8、R9及びR10は、電子吸引性の置換基であることが好ましい。
【0028】
本発明の好適例である上記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物の具体例として、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルジエトキシメチルシラン、3−(ビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ビニルチオ)プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−(ビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(メタリルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタリルチオ)プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−(メタリルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−[(1−プロペニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン、3−[(1−プロペニル)チオ]プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−[(1−プロペニル)チオ]プロピルジエトキシメチルシラン、3−[(1−ブテニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン、3−[(1−ブテニル)チオ]プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−[(1−ブテニル)チオ]プロピルジエトキシメチルシラン、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルジエトキシメチルシラン、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)エチレン、1,2−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)エチレン、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)プロピレン、1,2−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)プロピレン、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)ブテン−1、1,2−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)ブテン−1、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)オクテン−1、1,2−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)オクテン−1、3−(1−メチルビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−(1−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−メチルビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシデシロキシシラン、3−(2−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン等が好ましく挙げられる。これらの内、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルジエトキシメチルシラン、3−(ビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(メタリルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタリルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、1,1−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)オクテン−1、1,2−ビス(トリエトキシシリルプロピルチオ)オクテン−1、3−(1−メチルビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−メチルビニルチオ)プロピルトリエトキシシラン及び3−(2−メチルビニルチオ)プロピルジエトキシメチルシランがさらに好ましく、3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0029】
次に、本発明の有機ケイ素化合物の他の態様を説明する。本発明の有機ケイ素化合物として、下記一般式(11)で表わされる有機ケイ素化合物も上記一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物と同様に好ましい。
【0030】
【化15】

【0031】
式中、R11、R12及びR13の少なくとも一つは下記一般式(12)で表わされ、他の少なくとも一つは下記一般式(13)及び下記一般式(14)から選ばれるものである。R14は−Cb2b−、下記一般式(15)及び下記一般式(16)から選ばれるものである。R15、R16及びR17はそれぞれ独立に、−B3−Cb2b+1(B3は単結合、−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、bは0〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(17)及び下記一般式(18)から選ばれるものであり、AはB、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び上記一般式(1)から選ばれるものである。ここで、「B3は単結合である。」とは、R15、R16又はR17が「−Cb2b+1」のみからなることをいう。
−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1 ・・・(12)
−M1−Cb2b−R18 ・・・(13)
【0032】
【化16】

【0033】
上記の一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)中、M1は−O−又は−CH2−であり、M2及びM3はそれぞれ独立に、−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。但し、R11、R12及びR13の少なくとも一つのM1は−O−である。R18は−NRcd、−NRc−NRcd及び−N=NRcから選ばれるものである。R19は−ORc、−NRcd及び−Rcから選ばれるものである。但し、Rcは−Cd2d+1であり、Rdは−Ce2e+1であり、b及びcはそれぞれ独立に、0〜20の整数であり、a及びb’はそれぞれ独立に、1〜20の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に、0〜20の整数である。M1は、−O−であることが好ましい。
【0034】
【化17】

【0035】
−M1−Cb2b−R20−Cc2c− ・・・(16)
上記の一般式(15)及び一般式(16)中、M1、M2、M3、R19、b及びcは一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)と同義である。R20は−NRf−、−NRf−NRf−及び−N=N−から選ばれるものであり、Rfは−Cd2d+1であり、dは0〜20の整数である。
【0036】
【化18】

式中、A、R11、R12、R13及びR14は上記一般式(11)と同義である。
【0037】
【化19】

式中、R21は−B4−Cd2d+1{B4は−O−、−S−、−CH2−及び−N(Ce2e+1)−(eは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、dは0〜20の整数である。}、下記一般式(19)及び下記一般式(20)から選ばれるものである。
【0038】
【化20】

式中、W1は−O−、−S−及び−N(Cd2d+1)−(dは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R22は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、x’は0〜5の整数である。
【0039】
【化21】

式中、R23は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、y’は0〜5の整数である。
【0040】
上記一般式(11)で表わされる有機ケイ素化合物において、前記R11、R12及びR13は、それらの一つが−O−Cb2b−R18(R18及びbは上記一般式(11)乃至一般式(14)と同義である。)であり、他の一つが−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1(M1、a及びb’は上記一般式(11)乃至一般式(14)と同義である。)であり、且つ残余の一つが−O−Cb2b+1であり、前記R14が−Cb2b−であり、前記R15が−Cb2b−Rb(Rbは水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものである。)であることがカップリング効率向上の観点から好ましい。
【0041】
また、上記一般式(11)で表わされる有機ケイ素化合物において、前記R11、R12及びR13は、少なくとも一つが−O−Cb2b−NRcd(Rc、Rd及びbは上記一般式(11)乃至一般式(14)と同義である。)であり、且つ少なくとも一つが−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1(M1、a及びb’は上記一般式(11)乃至一般式(14)と同義である。)であり、前記R15が−Cb2b+1であることがカップリング効率向上の観点から好ましい。
【0042】
また、本発明の有機ケイ素化合物のさらなる他の態様を説明する。本発明の有機ケイ素化合物として、下記一般式(21)で表わされる有機ケイ素化合物も上記一般式(2)及び上記一般式(11)で表わされる有機ケイ素化合物と同様に好ましい。
【0043】
【化22】

【0044】
式中、W2は−O−、−NRe−及び−CReg−(Rgは−Rf又は−Cc'2C'−Rhである。但し、Rhは−NRef、−NRe−NRef又は−N=NReであり、Reは−Cd'2d'+1で、Rfは−Ce'2e'+1で、c’、d’及びe’はそれぞれ独立に、1〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R31、及びR32はそれぞれ独立に、−M4−Cb2b−であり、R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1であり、M4は−O−又は−CH2−であり、bは0〜20の整数であり、a及びb’は1〜20の整数である。但し、R31、R32及びR33の少なくとも一つのM4は−O−である。R34は−Cb2b−、下記一般式(22)及び下記一般式(23)から選ばれるものである。R35、R36及びR37はそれぞれ独立に、−B3−Cb2b+1(B3は単結合、−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、bは0〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(24)及び下記一般式(25)から選ばれるものであり、AはB、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び上記一般式(1)から選ばれるものである。
【0045】
【化23】

−M5−Cb2b−R39−Cc2c− ・・・(23)
【0046】
一般式(22)及び一般式(23)中、M5は−O−又は−CH2−であり、M6及びM7はそれぞれ独立に、−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。R38は−ORc、−NRcd及び−Rcから選ばれるものである。R39は−NRc−、−NRc−NRc−、−N=N−及び−B5−Cb2b−から選ばれるものである。但し、Rcは−Cd2d+1であり、Rdは−Ce2e+1であり、B5は−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。b、c、d及びeはそれぞれ独立に、0〜20の整数である。M5は、−O−であることが好ましい。
【0047】
【化24】

式中、A、W1、R31、R32、R33及びR34は上記一般式(21)と同義である。
【0048】
【化25】

式中、R35は−B6−Cd2d+1{B6は−O−、−S−、−CH2−及び−N(Ce2e+1)−(eは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、dは0〜20の整数である。}、下記一般式(26)及び下記一般式(27)から選ばれるものである。
【0049】
【化26】

式中、W3は−O−、−S−及び−N(Cd2d+1)−(dは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R36は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、x”は0〜5の整数である。
【0050】
【化27】

式中、R37は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、y”は0〜5の整数である。
【0051】
上記一般式(21)で表わされる有機ケイ素化合物において、前記W2が−NRe−(Reは上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R31及びR32がそれぞれ独立に、−O−Cb2b−(bは上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1(M4、a及びb’は上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R34が−Cb2b−であり、且つ前記R35が−Cb2b+1であることがカップリング効率向上の観点から好ましい。
【0052】
また、上記一般式(21)で表わされる有機ケイ素化合物において、前記W2が−O−又は−CReg−(Re及びRgは上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R31及びR32がそれぞれ独立に、−O−Cb2b−(bは上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1(M4、a及びb’は上記一般式(21)乃至一般式(23)と同義である。)であり、前記R34が−Cb2b−であり、且つ前記R35が−Cb2b+1であることがカップリング効率向上の観点から好ましい。
【0053】
さらに、上記一般式(11)及び一般式(21)で表わされる有機ケイ素化合物において、前記Aが、−S−、下記一般式(28)、下記式(29)、下記式(30)及び下記一般式(31)から選ばれるものであることがカップリング効率向上の観点から更に好ましい。
【0054】
【化28】

式中、f’及びg’はそれぞれ独立に、1〜20の整数である。
【0055】
【化29】

【0056】
【化30】

【0057】
【化31】

式中、h’は1〜20の整数である。
【0058】
上記の一般式(11)及び一般式(21)で表わされる有機ケイ素化合物においても、一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物と同様に、好適にゴム成分と反応する部位と、好適にシリカ等の無機充填材と反応する部位を有するため、一般式(2)で表わされる有機ケイ素化合物と同様にカップリング剤としての優れた機能を発現する。
【0059】
次に、本発明のゴム組成物について説明する。本発明のゴム組成物は、(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムから1種以上選ばれるゴム成分、(B)無機充填材及び本発明のいずれかの有機ケイ素化合物を含むことを特徴とする。
また、本発明のゴム組成物は、(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムから1種以上選ばれるゴム成分100質量部に対して、(B)無機充填材5〜140質量部を含み、且つ(B)無機充填材に対して本発明のいずれかの有機ケイ素化合物を1〜20質量%含むことが好ましい。(B)無機充填材を140質量部以下含むと、作業性が向上するので好ましく、5質量部以上含むと、耐摩耗性が向上するので好ましい。
(B)無機充填材に対して本発明のいずれかの有機ケイ素化合物を1質量%以上含むと
未加硫ゴム組成物の粘度を低下させ、シリカのゴム組成物への分散性を改良し、加硫ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に耐摩耗性を向上させ、タイヤの転がり抵抗性を低くし、耐摩耗性を向上させることができる。また、(B)無機充填材に対して本発明のいずれかの有機ケイ素化合物を20質量%以下含むことが経済性の観点から好ましい。
本発明のゴム組成物に用いられる本発明の有機ケイ素化合物は、純度が80質量%以上であることが好ましい。純度が80質量%以上であれば、他の成分に影響が少なく本発明に係る有機ケイ素化合物の効果が十分となるからである。
【0060】
本発明のゴム組成物の(A)成分であるゴム成分としては、ジエン系ゴム、即ち、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが用いられる。ここで、ジエン系合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)及びこれらの混合物等が挙げられる。また、その少なくとも一部が各種変性剤により変性された変性ジエン系ゴムであっても良く、多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでも良い。
【0061】
本発明のゴム組成物の(B)成分の無機充填材としては、シリカをはじめ、例えば、下記一般式(32)で表される化合物を挙げることができる。
mM1・xSiOy・zH2O ・・・(32)
(式中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。尚、上記式において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。)
【0062】
上記一般式(32)で表わされる無機充填材としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、上記一般式(32)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
上記式で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
上記無機充填材の中でもシリカ及び/又は水酸化アルミニウムが好ましい。ここで、水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウム無水物及び水酸化アルミニウム水和物の双方を包含するものである。
シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。
このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウエット制動性及び転がり抵抗性低減の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
この湿式シリカは、加工性、転がり抵抗性低減、耐摩耗性、ウエット制動性及びドライ操縦安定性のバランス等の面から、BET法による窒素吸着比表面積(ISO5794/1に準拠し測定する。以下、N2SAということもある。)が40〜350m2/gであることが好ましく、140〜280m2/gであることがより好ましく、160〜250m2/gであることがさらに好ましい。好適な湿式シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)製のAQ、VN3、LP、NA等、デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)等が挙げられる。
また、水酸化アルミニウムとしては、昭和電工(株)製、商品名「ハイジライト」が好適に用いられる。
【0064】
本発明のゴム組成物は、(B)成分の無機充填材に加えて、カーボンブラックを含んでいても良い。カーボンブラックとしては、例えばFEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF等が挙げられる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠し測定する。)は20〜160m2/gであることが好ましく、70〜160m2/gであることがより好ましい。また、好ましくはジブチルフタレート吸油量(DBP、JIS K 6217−4:2001に準拠し測定する。)が80〜170cm3/100gのカーボンブラックである。これらのカーボンブラックを用いることにより、諸物性、特に破壊特性の改良効果は大きくなる。好ましいカーボンブラックはHAF、N339、IISAF、ISAF、SAFである。カーボンブラックの使用量としては、(A)ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部の範囲が好ましく、0〜80質量部の範囲がより好ましく、0〜50質量部の範囲がさらに好ましい。
【0065】
本発明のゴム組成物においては、所望により、プロセスオイルを含有させることができる。このプロセスオイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0〜80質量部の範囲が好ましく、0〜60質量部の範囲がより好ましく、0〜40質量部の範囲がさらに好ましい。当該プロセスオイルの含有量が80質量部以下であれば、得られるタイヤの耐摩耗性確保の観点から好ましい。
また、本発明のゴム組成物においては、耐摩耗性の観点から、油展ゴムに含まれるプロセスオイル以外のプロセスオイルを含まないことが好ましい。
【0066】
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含有させることができる。
本発明のゴム組成物は硫黄加硫性ゴム組成物であることが好ましく、加硫剤としては、硫黄等が好適に挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、0.5〜5.0質量部がより好ましい。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0067】
本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤ用途として、タイヤトレッド(キャップトレッド及び/又はベーストレッド)に好適に用いられる。また、その他サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、ビードコーティングゴム等にも用いることができる。
本発明のタイヤは、前述の本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させたゴム組成物が未加硫の段階でタイヤトレッドに加工され、タイヤ成型機上で通常の方法により貼り付け成型され、生タイヤが成型される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
このようにして得られた本発明のタイヤは、低い転がり抵抗性、優れた耐摩耗性、良好なウエット制動性(湿潤路面での制動性)及びドライ操縦安定性(乾燥路面での操縦安定性)を有している。
【実施例】
【0068】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)及び耐摩耗性は、下記の方法に従って評価した。
(1)加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で測定した損失正接(tanδ)の数値を、比較例1のゴム組成物の数値を100として下記式により指数表示した。数値が小さい程、tanδの値が小さく、低発熱性であって、タイヤの転がり抵抗が小さくなることを示す。
損失正接指数=(供試ゴム組成物の損失正接/比較例1のゴム組成物の損失正接)×100
(2)加硫ゴム組成物の耐摩耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型摩耗試験機を用い、室温でスリップ率25%の条件で試験を行い、得られた摩耗量の逆数を、比較例1のゴム組成物の数値を100として指数表示した。数値が大きい程、耐摩耗性が良好である。
【0069】
実施例1
3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシランの合成
アルゴン雰囲気下。反応容器(50ミリリットル)に3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン:14.3g、1−オクチン:10gを投入し、撹拌しながら常温から100℃まで約1時間かけて昇温した後、さらに100℃で1時間反応を行った。得られた反応物を高真空(133Pa以下。)条件下で除々に160℃まで加温し、残存する未反応原料等の低沸成分を取り除くことにより、15gの目的物を得た。
【0070】
実施例2、3及び比較例1〜2
表1に示す配合組成の4種類のゴム組成物を調製した。各ゴム組成物について、加硫温度145℃、加硫時間33分間の条件で加硫ゴム組成物サンプルを作製し、損失正接(tanδ)及び耐摩耗性を評価した。それらの結果を第1表に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
[注]
*1:JSR(株)製、乳化重合SBR「SBR1500」
*2:N220:旭カーボン(株)製「#80」、窒素吸着比表面積(N2SA)115m2/g、ジブチルフタレート吸油量113cm3/100g
*3:東ソー・シリカ(株)製「AQ」、BET法による窒素吸着比表面積(N2SA)220m2/g
*4:有機ケイ素化合物−A:実施例1で得られた 3−[(1−オクテニル)チオ]プロピルトリエトキシシラン
*5:有機ケイ素化合物−1:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、エボニック デグサ社製、商品名「Si75」(一分子中のSの数が平均2.4)
*6:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
*7:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物:大内新興化学工業(株)製「ノクラック 224」
*8:ジフェニルグアニジン:三新化学工業(株)製「サンセラー D」
*9:ジベンゾチアジルジスルフィド:三新化学工業(株)製「サンセラー DM」
*10:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド:三新化学工業(株)製「サンセラー NS」
【0073】
第1表より明らかなように、実施例2及び3の本発明有機ケイ素化合物を含むゴム組成物は、比較例1及び2のゴム組成物と比較して、加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)が著しく低減すると共に耐摩耗性が大幅に向上した。
さらに、上記4種類のゴム組成物を用い、タイヤサイズ205/55R16の乗用車用空気入りラジアルタイヤを常法に従って試作し、転がり抵抗と耐摩耗性を評価したところ、実施例2及び3の本発明のタイヤは、比較例1及び2のタイヤと比較して、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の有機ケイ素化合物は、無機充填材を配合したゴム組成物に好適に用いられ、未加硫ゴム組成物加工時の作業性に優れると共に、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性が良好なタイヤ、例えば、乗用車用空気入りラジアルタイヤ、軽自動車用空気入りラジアルタイヤ、軽トラック用空気入りラジアルタイヤ、トラック・バス用空気入りラジアルタイヤ、オフザロード用空気入りタイヤ等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に一つ以上のA−C=C部位を含み、且つ一つ以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有する有機ケイ素化合物。
[但し、A−C=C部位中のAは、B、Al、Si、Ge、Sn、N、P、O、S、Se及び下記一般式(1)から選ばれるものである。]
【化1】

[式中、XはC、N、S及びPから選ばれるものであり、YはO、S及びNRaから選ばれるものであり、ZはO、S及びNRbから選ばれるものであり、Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものであり、mは0〜2の整数である。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表わされる請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【化2】

[式中、R1、R2及びR3の少なくとも一つは−O−Cn2n+1(nは1〜20の整数である。)であり、その他は−B1−Cn2n+1(B1は−O−又は−CH2−であり、nは1〜20の整数であり、R1、R2及びR3のnはそれぞれ同じであっても良く、異なっていても良い。)である。R4は−B2−Cp2p−(B2は−O−又は−CH2−であり、pは1〜20の整数である。)であり、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に、−B3−Cq2q+1(B3は−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、qは1〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(3)及び下記一般式(4)から選ばれるものであり、Aは請求項1と同義である。]
【化3】

[式中、R1、R2、R3及びR4は上記一般式(2)と同義である。]
【化4】

[式中、R8は−B4−Cr2r+1{B4は−O−、−S−、−N(Cj2j+1)−(jは1〜20の整数である。)及びCH2から選ばれるものであり、rは1〜20の整数である。}、下記一般式(5)及び下記一般式(6)から選ばれるものである。]
【化5】

[式中、Wは−O−、−S−及び−N(Ck2k+1)−(kは1〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R9は−O−Cs2s+1、−S−Cs2s+1、−N(Cs2s+12及び−Cs2s+1から選ばれるものであり、sは1〜20の整数であり、xは0〜5の整数である。]
【化6】

[式中、R10は−O−Ct2t+1、−S−Ct2t+1、−N(Ct2t+12及び−Ct2t+1から選ばれるものであり、tは1〜20の整数であり、yは0〜5の整数である。]
【請求項3】
前記Aが、−S−、下記一般式(7)、下記式(8)、下記式(9)及び下記一般式(10)から選ばれるものである請求項2に記載の有機ケイ素化合物。
【化7】

[式中、f及びgはそれぞれ独立に、1〜20の整数である。]
【化8】

【化9】

【化10】

[式中、hは1〜20の整数である。]
【請求項4】
下記一般式(11)で表わされる請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【化11】

[式中、R11、R12及びR13の少なくとも一つは下記一般式(12)で表わされ、他の少なくとも一つは下記一般式(13)及び下記一般式(14)から選ばれるものである。R14は−Cb2b−、下記一般式(15)及び下記一般式(16)から選ばれるものである。R15、R16及びR17はそれぞれ独立に、−B3−Cb2b+1(B3は単結合、−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、bは0〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(17)及び下記一般式(18)から選ばれるものであり、Aは請求項1と同義である。]
−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1 ・・・(12)
−M1−Cb2b−R18 ・・・(13)
【化12】

[一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)中、M1は−O−又は−CH2−であり、M2及びM3はそれぞれ独立に、−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。但し、R11、R12及びR13の少なくとも一つのM1は−O−である。R18は−NRcd、−NRc−NRcd及び−N=NRcから選ばれるものである。R19は−ORc、−NRcd及び−Rcから選ばれるものである。但し、Rcは−Cd2d+1であり、Rdは−Ce2e+1であり、b及びcはそれぞれ独立に、0〜20の整数であり、a及びb’はそれぞれ独立に、1〜20の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に、0〜20の整数である。]
【化13】

−M1−Cb2b−R20−Cc2c− ・・・(16)
[一般式(15)及び一般式(16)中、M1、M2、M3、R19、b及びcは一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)と同義である。R20は−NRf−、−NRf−NRf−及び−N=N−から選ばれるものであり、Rfは−Cd2d+1であり、dは0〜20の整数である。]
【化14】

[式中、A、R11、R12、R13及びR14は上記一般式(11)と同義である。]
【化15】

[式中、R21は−B4−Cd2d+1{B4は−O−、−S−、−CH2−及び−N(Ce2e+1)−(eは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、dは0〜20の整数である。}、下記一般式(19)及び下記一般式(20)から選ばれるものである。]
【化16】

[式中、W1は−O−、−S−及び−N(Cd2d+1)−(dは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R22は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、x’は0〜5の整数である。]
【化17】

[式中、R23は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、y’は0〜5の整数である。]
【請求項5】
下記一般式(21)で表わされる請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【化18】

[式中、W2は−O−、−NRe−及び−CReg−(Rgは−Rf又は−Cc'2C'−Rhである。但し、Rhは−NRef、−NRe−NRef又は−N=NReであり、Reは−Cd'2d'+1で、Rfは−Ce'2e'+1で、c’、d’及びe’はそれぞれ独立に、1〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R31、及びR32はそれぞれ独立に、−M4−Cb2b−であり、R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1であり、M4は−O−又は−CH2−であり、bは0〜20の整数であり、a及びb’は1〜20の整数である。但し、R31、R32及びR33の少なくとも一つのM4は−O−である。R34は−Cb2b−、下記一般式(22)及び下記一般式(23)から選ばれるものである。R35、R36及びR37はそれぞれ独立に、−B3−Cb2b+1(B3は単結合、−O−、−S−及び−CH2−から選ばれるものであり、bは0〜20の整数である。)、水素原子、下記一般式(24)及び下記一般式(25)から選ばれるものであり、Aは請求項1と同義である。]
【化19】

−M5−Cb2b−R39−Cc2c− ・・・(23)
[一般式(22)及び一般式(23)中、M5は−O−又は−CH2−であり、M6及びM7はそれぞれ独立に、−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。R38は−ORc、−NRcd及び−Rcから選ばれるものである。R39は−NRc−、−NRc−NRc−、−N=N−及び−B5−Cb2b−から選ばれるものである。但し、Rcは−Cd2d+1であり、Rdは−Ce2e+1であり、B5は−O−、−NRc−及び−CH2−から選ばれるものである。b、c、d及びeはそれぞれ独立に、0〜20の整数である。]
【化20】

[式中、A、W1、R31、R32、R33及びR34は上記一般式(21)と同義である。]
【化21】

[式中、R35は−B6−Cd2d+1{B6は−O−、−S−、−CH2−及び−N(Ce2e+1)−(eは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、dは0〜20の整数である。}、下記一般式(26)及び下記一般式(27)から選ばれるものである。]
【化22】

[式中、W3は−O−、−S−及び−N(Cd2d+1)−(dは0〜20の整数である。)から選ばれるものであり、R36は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、x”は0〜5の整数である。]
【化23】

[式中、R37は−O−Ce2e+1、−S−Ce2e+1、−N(Ce2e+12及び−Ce2e+1から選ばれるものであり、eは0〜20の整数であり、y”は0〜5の整数である。]
【請求項6】
前記AがS又はSiである請求項1〜5のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【請求項7】
前記M1が−O−である請求項4に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項8】
前記M5が−O−である請求項5に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項9】
前記R11、R12及びR13は、それらの一つが−O−Cb2b−R18(R18及びbは請求項4と同義である。)であり、他の一つが−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1(M1、a及びb’は請求項4と同義である。)であり、且つ残余の一つが−O−Cb2b+1であり、前記R14が−Cb2b−であり、前記R15が−Cb2b−Rb(Rbは水素原子及び炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基から選ばれるものである。)である請求項4、6及び7のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【請求項10】
前記R11、R12及びR13は、少なくとも一つが−O−Cb2b−NRcd(Rc、Rd及びbは請求項4と同義である。)であり、且つ少なくとも一つが−(M1−Cb2ba−Cb'2b'+1(M1、a及びb’は請求項4と同義である。)であり、前記R15が−Cb2b+1である請求項4、6、7及び9のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【請求項11】
前記W2が−NRe−(Reは請求項5と同義である。)であり、前記R31及びR32がそれぞれ独立に、−O−Cb2b−(bは請求項5と同義である。)であり、前記R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1(M4、a及びb’は請求項5と同義である。)であり、前記R34が−Cb2b−であり、且つ前記R35が−Cb2b+1である請求項5、6及び8のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【請求項12】
前記W2が−O−又は−CReg−(Re及びRgは請求項5と同義である。)であり、前記R31及びR32がそれぞれ独立に、−O−Cb2b−(bは請求項5と同義である。)であり、前記R33は−(M4−Cb2ba−Cb'2b'+1(M4、a及びb’は請求項5と同義である。)であり、前記R34が−Cb2b−であり、且つ前記R35が−Cb2b+1である請求項5、6、8及び11のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【請求項13】
前記Aが、−S−、下記一般式(28)、下記式(29)、下記式(30)及び下記一般式(31)から選ばれるものである請求項4〜12のいずれかに記載の有機ケイ素化合物。
【化24】

[式中、f’及びg’はそれぞれ独立に、1〜20の整数である。]
【化25】

【化26】

【化27】

[式中、h’は1〜20の整数である。]
【請求項14】
(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムから1種以上選ばれるゴム成分、(B)無機充填材及び請求項1〜13のいずれかに記載の有機ケイ素化合物を含むゴム組成物。
【請求項15】
(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムから1種以上選ばれるゴム成分100質量部に対して、(B)無機充填材5〜140質量部を含み、且つ(B)無機充填材に対して請求項1〜13のいずれかに記載の有機ケイ素化合物を1〜20質量%含むゴム組成物。
【請求項16】
前記有機ケイ素化合物の純度が80質量%以上である請求項14又は15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記(B)無機充填材が、シリカ及び/又は水酸化アルミニウムである請求項14〜16のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記シリカのBET法による窒素吸着比表面積(ISO5794/1に準拠し測定する。)が、40〜350m2/gである請求項17に記載のゴム組成物。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれかに記載のゴム組成物を用いたタイヤ。

【公開番号】特開2010−260840(P2010−260840A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121801(P2009−121801)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】