説明

有機修飾無機粒子およびその製造方法、製造装置

【課題】 簡易な製造工程および製造装置によって、無機粒子の表面に多くの有機化合物を結合させ、無機粒子の表面改質効果を向上させる。
【解決手段】超臨界または亜臨界状態の水である高温高圧水と、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子と、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物とを合流させて、有機化合物を無機粒子の水酸基と化学結合させて有機修飾無機粒子を製造する方法を提供する。この方法では、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から0.5分以上経過した後に、有機化合物を、無機粒子と高温高圧水の混合流体に、連続的に流動させながらさらに合流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機修飾無機粒子およびその製造方法、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界または亜臨界状態の高温高圧水の存在下で、Al、TiO等の無機粒子の表面に有機化合物を化学結合させて、例えば触媒材料や磁性材料を用途とする有機修飾無機粒子を製造する技術が開発されている。特許文献1には、水と、TiO等の無機粒子と、ヘキサナール等の有機化合物とをオートクレーブに仕込み、水が超臨界または亜臨界状態となる高温高圧下で無機粒子の有機修飾を行う方法が記載されている。特許文献2には、連続式の微粒子製造装置を用いて微粒子を製造するに際して、修飾材を用いる場合には、微粒子の原料流体と、修飾材の原料流体とを混合した後に、超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と混合し、連続的に微粒子を製造することが記載されている。有機化合物によって修飾することによって、例えば、無機粒子の表面を親水性から疎水性に変える等の表面改質を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−193237号公報
【特許文献2】特開2005−21724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機化合物による無機粒子の修飾は、水の存在下で無機粒子の表面に形成される水酸基と、有機化合物の官能基とを化学結合させること等によって実現される。従って、無機粒子の表面に形成される水酸基の量を多くできれば、無機粒子の表面に多くの有機化合物を結合させることができ、無機粒子の表面改質効果を向上させることができる。従来、無機粒子の有機修飾を行う前に、予め無機粒子を水熱処理することは行われていたが、水熱処理工程と有機修飾工程は別の工程として行われており、工数が多くなり、装置コストが高くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は、超臨界または亜臨界状態の水である高温高圧水と、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子と、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物とを合流させて、有機化合物を無機粒子の水酸基と化学結合させて有機修飾無機粒子を製造する方法を提供する。有機修飾無機粒子とは、表面に有機化合物が化学結合された無機粒子を指す。この方法では、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から0.5分以上経過した後に、前記有機化合物を、無機粒子と高温高圧水の混合流体に、連続的に流動させながらさらに合流させる。
【0006】
本願によれば、無機粒子と高温高圧水とを合流させて0.5分以上経過し、無機粒子の表面に十分に水酸基が形成された後に、有機化合物を合流させる。このため、有機化合物の官能基と、無機粒子の水酸基との化学結合が形成され易くなる。その結果、無機粒子の表面に強く結合された有機化合物の量が多くなり、無機粒子の表面改質効果を向上させることができる。また、無機粒子、高温高圧水、有機化合物は、連続的に流動した状態で混合されるから、簡易に一連の操作で無機粒子の表面に水酸基を形成する工程と有機修飾を行う工程を行うことができる。
【0007】
上記の製造方法では、無機粒子と、高温高圧水と、有機化合物は、高温高圧水が亜臨界状態となる条件下で合流されることが好ましい。
【0008】
上記の製造方法では、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から1分以上かつ10分以下経過した後に、無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させることが好ましい。
【0009】
上記の製造方法では、無機粒子は、Al、TiO、MgO、NiO、CeO、SnO、SiO、Fe、Co、BN、AlNからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を主成分とするものであってもよい。
【0010】
上記の製造方法では、有機化合物は、水酸基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の基を有していてもよい。
【0011】
また、本願は、上記の製造方法を実現可能な製造装置を提供する。この製造装置は、超臨界または亜臨界状態の水である高温高圧水と水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子とを合流させる第1混合部と、無機粒子と高温高圧水との混合流体に水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物を合流させる第2混合部とを備えている。高温高圧水は、体積流量F1(cc/分)で第1混合部に流入し、無機粒子は、体積流量F2(cc/分)で第1混合部に流入し、第1混合部と第2混合部との間の流動断面積がS(cm)である場合に、第1混合部と、第2混合部との距離L1(cm)は、0.5L1≧(F1+F2)/Sの条件を満たしている。
【0012】
上記の製造装置によれば、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から0.5分以上経過した後に、無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な製造工程および製造装置によって、無機粒子の表面に多くの有機化合物を結合させることができ、無機粒子の表面改質効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る有機修飾無機粒子の製造装置の一部を示す図である。
【図2】赤外拡散スペクトル分析結果を示す図である。
【図3】図2の差スペクトルの一部を示す図である。
【図4】図2の差スペクトルの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願に係る有機修飾無機粒子の製造方法は、超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子と、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物とを連続的に流動させながら合流させて、有機化合物と無機粒子の水酸基と化学結合させる。無機粒子と高温高圧水を合流させた時から0.5分以上経過した後に、無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させる。
【0016】
なお、超臨界状態の高温高圧水とは、水の臨界圧力(22.1MPa)以上かつ臨界温度(374℃)以上の状態の水を意味する。また、本願では、亜臨界状態の高温高圧水とは、温度が300℃以上374℃未満であり、かつ、圧力がその温度における水の飽和蒸気圧以上の状態の水を意味する。
【0017】
無機粒子は、水の存在下で表面に水酸基が配位するものであってもよく、その構造の一部に水酸基を有するものであってもよい。例えば、無機粒子がAl(アルミナ)を主成分とする場合には、Alの結晶構造に水酸基が配位したものであってもよく、Alの酸素原子の一部が水酸基に置き換わったオキシ水酸化物(例えばベーマイト:AlOOH)であってもよい。有機化合物と無機粒子との結合をより強固にするという観点からは、水の超臨界または亜臨界条件下において、オキシ水酸化物のように、無機粒子の構造の一部に水酸基が含まれていることが好ましい。
【0018】
高温高圧水が亜臨界状態となる条件下で合流させる場合には、無機粒子の表面近傍に水酸基が形成される一方、無機粒子の内部には水酸基が形成されにくくなる。無機粒子の内部に水酸基が生成し過ぎることが好ましくない場合には、高温高圧水が亜臨界状態となる条件下で、高温高圧水、無機粒子および有機化合物を合流させることが好ましい。例えば、無機粒子が樹脂材料と混合して使用するAl等のフィラーである場合には、無機粒子の熱伝導性を確保することが好ましい。超臨界または亜臨界状態の高温高圧水の存在下でAlがオキシ水酸化物に変化すると、無機粒子の熱伝導性が低下してしまう。無機粒子(特に金属酸化物)の用途がフィラーである場合には、無機粒子の熱伝導性を確保するために、高温高圧水が亜臨界状態となる条件下で、高温高圧水、無機粒子および有機化合物を合流させることが好ましい。
【0019】
上記の製造方法では、無機粒子は、セラミックであることが好ましく、Al、TiO、MgO、NiO、CeO、SnO、SiO、Fe、Co、BN、AlNからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を主成分とすることがより好ましい。樹脂材料と混合して用いるフィラーとしては、Al、BN、AlNを好適に用いることができる。
【0020】
上記の製造方法では、有機化合物は、水酸基と脱水縮合反応等によって化学結合し、無機粒子の表面の水酸基と結合される化合物であればよい。具体的には、有機化合物は、水酸基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の基を有していてもよい。より具体的に例示すると、有機化合物は、蟻酸、酢酸等のカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリシン、アラニン、アミノ安息香酸等のアミノ酸および上記化合物の誘導体や、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を挙げることができる。これらの有機化合物は、無機粒子の表面の水酸基と反応して、エステル結合、エーテル結合等を形成して無機粒子の表面に修飾される。
【0021】
上記の製造方法は、例えば、図1に示す有機修飾無機粒子の製造装置によって実現できる。図1において、製造装置10は、第1管路1と、第2管路2と、第3管路3を備えている。第1管路1と第2管路2は、第1混合部11において接続されており、第1管路1と第3管路3は、第2混合部12において接続されている。第1管路1には、超臨界または亜臨界状態の水である高温高圧水が、図1の左から右の方向に体積流量F1で流れている。第2管路2には、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子が、図1の上から下の方向に体積流量F2で流れている。第3管路3には、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物が、図1の上から下の方向に体積流量F3で流れている。第1混合部11には、高温高圧水が体積流量F1で流入するとともに、第2管路2から無機粒子が体積流量F2で流入し、混合流体となる。この混合流体の体積流量は、F1+F2である。第2混合部12には、この混合流体が体積流量F1+F2で流入するとともに、第3管路3から有機化合物が体積流量F3で流入する。高温高圧水、無機粒子および有機化合物の混合流体は、図1の左から右の方向に体積流量F4で流れ、回収される。なお、図示していないが、本願に係る有機修飾無機粒子の製造装置は、必要に応じて、従来公知の高温高圧水等の加熱・加圧処理機構、高温高圧水、無機粒子および有機化合物の混合流体の冷却機構や、洗浄機構等を含んでいてもよい。
【0022】
第1混合部11と第2混合部12との距離L1を調整することによって、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から時間T以上経過した後に、無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させることができる。第1混合部11と第2混合部12との間の流動断面積がSである場合に、第1混合部11と、第2混合部12との距離L1が、下記式(1)の条件を満たすようにすればよい。
L1≧T(F1+F2)/S …… (1)
なお、図1に示すように、距離L1は、第1管路1の流路断面の面積重心と第2管路2の流路断面の面積重心との間の距離を示す。なお、第2管路2および第3管路3は、円管路であるから、流路断面の面積重心は、円形の流路断面の中心に一致する。
【0023】
体積流量F1、F2の単位がcc/分であり、無機粒子は、流動断面積Sの単位がcmである場合に、第1混合部11と、第2混合部12との距離L1(cm)が、L1≧0.5(F1+F2)/Sの条件を満たすようにすれば、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から時間0.5分以上経過した後に、無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させることができる。
【0024】
上記の製造方法では、また、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から無機粒子と高温高圧水の混合流体に有機化合物をさらに合流させるまでの時間(以下、時間T1という。)は、1分以上かつ10分以下が好ましく、1分以上5分以下がより好ましく、1分以上3分以下が特に好ましい。時間T1が0.5分以上であれば無機粒子の表面に水酸基を生成することができるが、時間T1を1分以上にすれば、無機粒子の表面により確実に水酸基を生成することができる。また、無機粒子の表面の水酸基の量は、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から3分程度で飽和することがあり、3分より長く保持しても無機粒子の表面の水酸基の量が変わらない場合がある。また、無機粒子と高温高圧水を合流させた時から10分より長くなると、無機粒子の内部まで水酸基が生成される傾向がある。無機粒子の内部に生成された水酸基は、無機粒子の表面に生成された水酸基と比べて、有機化合物と結合して分散性を向上させる機能が低い。このため、無機粒子の表面に確実かつ効率よく水酸基を生成するために、時間T1は、1分≦T1≦10分が好ましく、1分≦T1≦5分がより好ましく、1分≦T1≦3分が特に好ましい。さらに、無機粒子の内部に生成された水酸基は、無機粒子の熱伝導率を低下させる原因となり得る。このため、無機粒子を熱伝導性のフィラー等の用途に利用する場合には特に、無機粒子の内部における水酸基の生成によって無機粒子の熱伝導性を低下させないために、時間T1は、10分以下であるのが好適である。なお、同様に、製造装置については、体積流量F1、F2の単位がcc/分であり、無機粒子は、流動断面積Sの単位がcmである場合に、第1混合部11と、第2混合部12との距離L1(cm)が、(F1+F2)/S≦L1≦10(F1+F2)/Sの条件を満たすことが好ましく、(F1+F2)/S≦L1≦5(F1+F2)/Sの条件を満たすことがより好ましく、(F1+F2)/S≦L1≦3(F1+F2)/Sの条件を満たすことがより好ましい。
【0025】
無機材料に2種以上の有機化合物を化学結合させる場合には、それぞれの有機化合物を時間をずらして高温高圧水と無機粒子との混合流体に合流させてもよい。すなわち、製造装置には、第2混合部は複数あってもよい。例えば、2つの有機化合物を合流させる場合には、第1の有機化合物を混合させるための第2混合部と、第2の有機化合物を混合させるための第2混合部がそれぞれ設けられていてもよい。
【0026】
超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と無機粒子を予め混合することによって、無機粒子の表面に十分に水酸基が形成されることについては、以下に示すように、図1に示す製造装置を利用して試料0〜試料5を調製し、図2〜図4に示す拡散反射スペクトル分析を行うことによって確認した。
【0027】
(試料1)
無機粒子として、株式会社フジミ製アルミナ(Al)粒子WA#10000(中心粒径700nm)を用い、水を溶媒としてアルミナスラリーを調整した。高温高圧水は、温度:350℃、圧力:30MPaの亜臨界状態で、体積流量F1:117cc/分(常温常圧での体積流量に換算すると、75cc/分)で第1管路1に流通させた。なお、第1管路1としては、流動断面積Sが2.32mmの円管を用いた。第2管路2に体積流量F2:23cc/分(常温常圧での体積流量に換算すると、15cc/分)でアルミナスラリーを流通させ、第1混合部11において、高温高圧水にアルミナスラリーを合流させた。第1管路1の第1混合部11よりも下流の部分に、温度保持手段が設けられており、第1混合部11において高温高圧水とアルミナスラリーが混合流体となった後、この混合流体の温度を350℃で151秒間保持した。その後、混合流体を冷却し、処理済みのアルミナを取り出して試料1とした。なお、高温高圧水とアルミナスラリー、およびこれらの混合流体の密度は0.643g/cmである。
【0028】
(試料2)
高温高圧水の温度を390℃とし、高温高圧水とアルミナスラリーとの混合流体の温度を390℃で101秒間保持した以外は、試料1と同様の処理を行って、処理済みのアルミナを取り出して試料2とした。なお、試料2で用いた高温高圧水(温度:390℃、圧力:30MP)は、超臨界状態であり、高温高圧水とアルミナスラリー、およびこれらの混合流体の密度は0.420g/cmである。試料1と常温常圧時の体積流量が等しくなる条件で流量を調整した。
【0029】
(試料3)
第1混合部11において高温高圧水とアルミナスラリーを合流させて混合流体とした後、0.12秒後に、さらに第2混合部12においてオレイン酸を体積流量F3:2.5cc/分(常温常圧での体積流量)で加えた後、エタノールで洗浄し、遠心分離する処理を10回繰り返した以外は、試料1と同様の処理を行って、処理済みのアルミナを取り出して試料3とした。なお、第1混合部11と第2混合部12との距離は12cmであった。
【0030】
(試料4)
オレイン酸を加えた後のアルミナをエタノールで洗浄し、ろ過分離する処理を10回繰り返した以外は、試料3と同様の処理を行って、処理済みのアルミナを取り出して試料4とした。
【0031】
(試料5)
オレイン酸を加えた後のアルミナをトルエンで洗浄し、遠心分離する処理を10回繰り返した以外は、試料3と同様の処理を行って、処理済みのアルミナを取り出して試料4とした。
【0032】
(試料0)
試料1〜5で材料として用いたアルミナを試料0とした。
【0033】
試料0〜5について、Bio Rad Digilab社製のFTS−55Aおよびバーンズコレクターを用いて赤外拡散反射スペクトル分析を行った。結果を図1に示す。俣、図2には、試料1〜5から試料0のスペクトルを差し引いた差分スペクトルを示す。
【0034】
図2〜4に示すように、試料1〜5において、波数が3690,3670cm−1においてAl−OH結合の伸縮振動に由来する吸収ピークが観察され、3290,3095cm−1においてベーマイトに特徴的なAl−OH結合もしくはアルミナの結合水のOH伸縮振動に由来する吸収ピークが観察された。また、1590cm−1においては、アルミナの結合水のOH伸縮振動に由来する吸収ピークが観察された。これらのピークは、試料1,2において試料3〜5よりも大きくなっており、試料1,2では、アルミナ表面に水酸基が多く形成されていることがわかった。第1管路1は、流動断面積Sが2.32mmの円管であるから、試料1と同様の条件でアルミナを処理した後に、オレイン酸等の有機化合物を合流させるには、式(1)より、第1混合部11と第2混合部12との距離を148mにすればよい。また、試料2と同様の条件でアルミナを処理した後に、オレイン酸等の有機化合物を合流させるには、式(1)より、第1混合部11と第2混合部12との距離を151.5mにすればよい。
【0035】
上記のとおり、本願に係る製造方法および製造装置によれば、超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と無機粒子とを予め混合し、無機粒子の表面に十分に水酸基が形成された後に、有機化合物を合流させるため、有機化合物の官能基と、無機粒子の水酸基との化学結合が形成され易くなる。その結果、無機粒子の表面に強く結合された有機化合物の量が多くなり、無機粒子の表面改質効果を向上させることができる。また、有機化合物が強固に結合して洗浄等によって脱離し難くなるため、高耐久の有機修飾無機粒子を製造することができる。
【0036】
本願においては、連続式の有機修飾無機粒子を製造する装置において、高温高圧水の流路(第1管路1)と無機粒子の流路(第2管路2)との接続部(第1混合部11)と、高温高圧水の流路と修飾材として用いる有機化合物の流路(第3管路3)との接続部(第2混合部12)との距離L1を調製するだけで、簡便に無機粒子の表面に水酸基を形成することができる。従来、無機粒子の有機修飾を行う前に、予め水熱処理によって無機粒子の表面に水酸基を形成することは行われていたが、水熱処理工程と有機修飾工程は別の工程として行われており、工数が多くなり、装置コストが高くなるという問題があった。本願では、一つの装置で一連の操作で無機粒子の表面に水酸基を形成する工程と有機修飾を行う工程を行うことができるため、製造工程が簡便となるという効果が得られる。有機化合物の量が多く強固に結合した有機修飾無機粒子を連続式の製造装置で簡便に製造できる。
【0037】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0038】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
1 第1管路
2 第2管路
3 第3管路
10 製造装置
11 第1混合部
12 第2混合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子と、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物とを合流させて、前記有機化合物を前記無機粒子の水酸基と化学結合させて有機修飾無機粒子を製造する方法であって、
前記無機粒子と前記高温高圧水を合流させた時から0.5分以上経過した後に、前記有機化合物を、前記無機粒子と前記高温高圧水の混合流体に、連続的に流動させながらさらに合流させる、有機修飾無機粒子の製造方法。
【請求項2】
前記無機粒子と前記高温高圧水は、水の亜臨界条件下で合流される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記無機粒子と前記高温高圧水を合流させた時から1分以上かつ10分以下経過した後に、前記無機粒子と前記高温高圧水の混合流体に前記有機化合物をさらに合流させる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機粒子は、Al、TiO、MgO、NiO、CeO、SnO、SiO、Fe、Co、BN、AlNからなる群から選ばれる少なくとも1以上を主成分とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記有機化合物は、水酸基、カルボニル基、アミノ基、チオール基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、チタノール基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項の製造方法によって製造された、有機修飾無機粒子。
【請求項7】
超臨界または亜臨界状態の高温高圧水と、水の存在下で表面に水酸基を有する無機粒子とを合流させる第1混合部と、
前記無機粒子と前記高温高圧水との混合流体に、水酸基と化学結合する官能基を有する有機化合物を合流させる第2混合部とを備えた有機修飾無機粒子の製造装置であって、
前記高温高圧水は、体積流量F1(cc/分)で前記第1混合部に流入し、
前記無機粒子は、体積流量F2(cc/分)で前記第1混合部に流入し、
前記第1混合部と前記第2混合部との間の流動断面積がS(cm)である場合に、
前記第1混合部と、前記第2混合部との距離L1(cm)は、L1≧0.5(F1+F2)/Sの条件を満たしている、製造装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−34952(P2013−34952A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173844(P2011−173844)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】