有機光起電力素子
【課題】効率が非常に改善された有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。
【解決手段】有機系感光性オプトエレクトロニクス素子は例えば、直列の、複数の積層型サブセルを備えた最適化された有機太陽電池である。サブセルとしては、銅フタロシアニン(CuPc)をドナー、ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)をアクセプタとして用いる。またAgを前方と後方のセルの間の薄い層として用いる。各層の厚さが最適化された複数の積層型サブセルを備え、電子障壁層を用いる光起電力セルを製造することにより、大きな電力変換効率が実現される。
【解決手段】有機系感光性オプトエレクトロニクス素子は例えば、直列の、複数の積層型サブセルを備えた最適化された有機太陽電池である。サブセルとしては、銅フタロシアニン(CuPc)をドナー、ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)をアクセプタとして用いる。またAgを前方と後方のセルの間の薄い層として用いる。各層の厚さが最適化された複数の積層型サブセルを備え、電子障壁層を用いる光起電力セルを製造することにより、大きな電力変換効率が実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に感光性有機オプトエレクトロニクス素子に関する。より詳細には、それは有機光起電力素子、例えば有機太陽電池を対象とする。さらに、それは、最適化され、効率が大幅に改善された有機太陽電池を対象とする。効率の向上は材料選択、素子の構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクス素子は材料の光学的又は電子的特性によって、電磁放射を発生もしくは検出するか、あるいは周囲の電磁放射から発電する。感光性オプトエレクトロニクス素子は電磁放射を電気に変換する。太陽電池は、光起電力(PV)素子としても知られており、周囲の光から電力を発生させるために用いられる。PV素子は、電力を消費する負荷に電力を供給して、例えば光源、熱源となり、あるいはコンピュータ又は遠隔モニタリング又は通信機器などの電子機器を作動させるために使用される。太陽又は他の周囲の光源による直接照射が利用できない時に、機器の運転を継続できるように、これらの発電用途ではしばしば、バッテリ又は他のエネルギー貯蔵素子を充電することが行われる。本明細書では、用語「抵抗型負荷」は、電力を消費又は貯蔵する、素子、機器又はシステムを表す。
【0003】
従来、感光性オプトエレクトロニクス素子はいくつかの無機半導体、例えば結晶性、多結晶性及びアモルファスシリコン、ガリウム砒素、テルル化カドミニウムなどから構成されていた。本明細書では、用語「半導体」は、熱又は電磁励起により電荷担体が誘起された時に電気を伝導することができる材料を表す。用語「光伝導」は一般に、電磁放射エネルギーが吸収され、電荷担体の励起エネルギーに変換されて、担体が材料内で電荷を伝える、すなわち輸送することができる過程に関連する。本明細書では、用語「光伝導体」及び「光伝導性材料」は、電磁放射を吸収して電荷担体を生じるというそれらの性質で選ばれる半導体材料を表すのに用いられる。
【0004】
太陽電池は、入射太陽光エネルギーを利用できる電力に変換できる効率により特徴づけられる。結晶又はアモルファスシリコンを利用する素子が、商業的用途を占有しており、あるものは23%以上の効率を達成している。しかし、効率的で、特に大面積の結晶系素子は、効率を低下させる重大な欠陥のない大きな結晶を作り出す際の固有の問題のために、製造が困難でまた高価である。他方、高効率アモルファスシリコン素子は依然として安定性が悪い。現在の市販アモルファスシリコンセルの安定な効率は、4ないし8%である。経済的な製造コストで、許容できる光電変換効率を達成するための比較的最近の努力は、有機光起電力セルの使用に集中している。
【0005】
PV素子は、それらが負荷を通して接続され光を照射されると、光により電圧を発生する。外部の電気的負荷なしに照射された場合に、PV素子はその可能な最大の電圧、V開回路又はVocを発生する。その電気的接点を短絡してPV素子が照射された場合に、最大の短絡電流、又はIscが流れる。発電のために実際に使用される場合、PV素子は有限の抵抗型負荷に接続され、電力出力は電流と電圧の積、I×Vで与えられる。PV素子により発生する最大の全出力は、積、Isc×Vocを超えることは本質的に不可能である。負荷の値が最大の電力抽出のために最適化された場合に、電流と電圧は、それぞれ値、Imax及びVmaxをもつ。
【0006】
太陽電池の性能指数は、以下にように定義されるフィル因子(fill factor)ffであり、
【数1】
Isc及びVocは実使用では決して同時には得られないので、ffは常に1より小さい。しかし、ffが1に近いと素子はより効率的である。
【0007】
適当なエネルギーの電磁放射が有機半導体材料、例えば、有機分子結晶(OMC)、あるいはポリマーに入射した時、光子を吸収して励起分子状態となりうる。これは、S0+hν⇒S0*、と記号で表される。ここで、S0とS0*はそれぞれ基底及び励起分子状態を表す。このエネルギー吸収は、π結合でありうるHOMOの束縛状態から、π*結合でありうるLUMOへの電子移動、あるいは同じことであるが、ホールのLUMOからHOMOへの移動に関連する。有機薄膜光伝導体では、生成する分子状態は一般に、励起子、すなわち準粒子として輸送される、束縛状態の電子−ホール対であると考えられている。別の対のホール又は電子との再結合ではなく、元々の電子とホールとが互いに再結合する過程を表す対再結合(geminate recombination)の前に、励起子にはかなりの寿命がありうる。光電流を生じるためには、通常、接触している2種の異なる有機薄膜の間のドナー−アクセプタ界面で、電子−ホール対が分離されなければならない。電荷が分離されないと、それらは、入射光より低エネルギーの発光により放射として、あるいは発熱により非放射的に、消光としても知られる対再結合過程で再結合しうる。これらのどれかが起こることは感光性オプトエレクトロニクス素子では望ましくない。
【0008】
接点での電場又は不均一性により、励起子は、ドナー−アクセプタ界面で解離するよりもむしろ消光し、電流に正味の寄与をしないであろう。したがって、光で生成した励起子を接点から離しておくことが望ましい。これは、接合の近くでの励起子の解離により遊離される電荷担体が、付随する電場により分離される機会を増すように、接合に近い領域に励起子の拡散を限定する効果がある。
【0009】
相当の容積を占める電場を内部に生成させるために、通常の方法では、特にそれらの分子の量子エネルギー状態の分布に関して、適当に選択された伝導性をもつ2種の材料層を並置する。これら2種の材料の界面は光起電力ヘテロ接合と呼ばれる。通常の半導体理論では、PVヘテロ接合を形成する材料は、一般にn、もしくはドナー型、又はp、もしくはアクセプタ型のいずれかであるとして表示されている。ここでn型は大多数の担体種が電子であることを示す。これを、比較的自由なエネルギー状態の多数の電子をもつ材料と見ることもできるであろう。p型は大多数の担体種がホールであることを示す。このような材料には比較的自由なエネルギー状態の多くのホールがある。バックグラウンドの、すなわち光により生成したのではない大多数の担体種の濃度は主に、欠陥又は不純物による意図的でないドーピングにより決まる。不純物の種類と濃度は、HOMO−LUMOギャップと呼ばれる、最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)の間のギャップ内の、フェルミエネルギーの値又は準位を決める。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等しいエネルギー値により示される、分子の量子エネルギー状態の統計的占有を特徴づける。LUMOエネルギーに近いフェルミエネルギーは電子が主な担体であることを示唆している。HOMOエネルギーに近いフェルミエネルギーはホールが主な担体であることを示唆する。このように、フェルミエネルギーは通常の半導体の主な特性であり、典型的なPVヘテロ接合は従来p−n界面であった。
【0010】
用語「整流(rectifying)」は、とりわけ、界面が非対称な伝導性をもつ、すなわち界面が1方向に優先的に電子電荷を輸送する機能をもつことを示す。整流は通常、適当に選択された材料間のヘテロ接合で内部発生する電場に関連している。
【0011】
有機半導体の重要な性質は担体移動度である。移動度は、電場に応答して伝導性材料内を電荷担体が動くことができる容易さの程度を示す。自由担体濃度とは異なり、担体移動度は大部分、結晶の対称性及び周期性などの、有機材料の固有の性質により決まる。適当な対称性と周期性により、HOMO準位の量子波動関数の重なりが大きくなってホールの移動度が大きくなり、あるいはLUMO準位の重なりが大きくなって電子移動度が大きくなりうる。さらに、有機半導体、例えば3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)のドナー又はアクセプタ性は、比較的大きな担体移動度と相反することがある。例えば、化学的推論はPTCDAについてドナー、又はn型の特性を示唆するが、実験では、ホール移動度が電子移動度より数オーダー大きいことを示すので、ホール移動度が重要な因子である。この結果は、ドナー/アクセプタの規準による素子構成予測は、実際の素子性能により支持されないであろうということである。有機材料のこれら独特の電子特性のために、それらを「p型」もしくは「アクセプタ型」及び「n型」もしくは「ドナー型」として指定するよりもむしろ、「ホール輸送層」(HTL)あるいは「電子輸送層」(ETL)という言い方がしばしば用いられる。この命名法では、ETLは優先的に電子伝導性であり、HTLは優先的にホール輸送性であろう。
【0012】
典型的な従来技術の光起電力素子構成は有機2重層セルである。2重層セルでは、電荷分離は主に有機へテロ接合で起こる。内部発生する電位は、接触してヘテロ接合を形成する2種の材料間のHOMO−LUMOエネルギー差により決まる。HTLとETL間のHOMO−LUMOギャップのオフセットがHTL/ETL界面の回りに電場を発生する。
【0013】
有機PVセルには、従来のシリコン系素子に比べて多くの利点がありうる。有機PVセルは、軽量で、材料使用が経済的であり、低コスト基板、例えば柔軟なプラスチックフィルム上にそれを積層できる。しかし、有機PV素子は通常、量子収率(吸収されるフォトンと生成キャリア対、又は電磁放射と電気変換効率の比)が比較的小さく、1%以下の程度である。これは、部分的には、真性の光伝導過程の2次的な性質によると考えられている。すなわち、担体の生成には励起子の生成、拡散及びイオン化が必要とされる。しかし、励起子の拡散長(LD)は通常、光吸収長(〜500Å)よりすっと小さいので(LD〜50Å)、複数の又は多くの積層された界面をもち厚く、したがってまた抵抗性のセル、又は光吸収効率が低く薄いセルを用いるかの間で折り合いをつけることが求められる。ドープされた有機単結晶の使用、共役ポリマーのブレンド、及び励起子の拡散長が大きい材料の使用を含めて、効率を上げる様々な手法が例示されている。この問題は、さらに別の方向、すなわち様々なセル配置構成を用いること、例えば共堆積されたp及びn型顔料からなる混合層をさらにもつ3層セル、あるいはタンデム型セルの作製など、から取り組まれた。
【0014】
以前の文献に示されたように、タンデム型セルの開回路電圧(Voc)は、単セルのそれのほぼ2倍の大きさでありうる。M.Hiramoto、M.Suezaki、and M.Yokoyama、Chemistry Letters、327(1990)。残念なことに、得られた電力変換効率は単セルより小さかった。これは、前方のセルが後方のセルに来る光の強度を減衰させるという事実に帰せられた。したがって、後方セルにより発生する光電流は減少し、結果的に電力変換効率を限定する。さらなる推定は、タンデム型素子の全体としての厚さが2倍になることにより直列抵抗が増し、これもまた電力変換効率に影響を与えるであろうということであった。
【0015】
セルの性能を向上させるために、量子収率、したがってまた電力変換効率を上げることができる材料と素子構成が望ましい。我々はここで、厚さが最適化された複数の積層型サブセルを備え、電子障壁(blocking)層を用いる光起電力セルの作製により、大きな電力変換効率を実現した。本発明によれば、材料選択、素子構成及び素子加工技術の改善により、4%を上回る電力変換効率をもつ有機PVセルの製造が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献2】米国特許第6,097,147号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】M.Hiramoto、M.Suezaki、and M.Yokoyama、Chemistry Letters、327(1990)
【非特許文献2】L.A.A.Petterson et al.,J.Appl.Phys.86,487(1999)
【非特許文献3】Peumans et al.,Applied Physics Letters 2000,76,2650〜52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、効率が非常に改善された有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
効率の向上は材料選択、素子構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【0020】
本発明は、素子効率を向上させるように選択された材料を含む、有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。本発明の目的は、アノード層、ホール輸送(ドナー型)層、電子輸送(アクセプタ型)層、及びカソードを備える、効率が向上した素子を提供することである。フラーレン化合物が、本発明の素子のETLで使用するのに好ましい材料である。
【0021】
本発明はまた、素子効率を向上させる構成を備える、有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。本発明の目的は、アノード層とカソードの間に直列に積層された複数のサブセルをもつ有機PV素子を提供することである。それぞれのサブセルは、電子ドナー層、及び電子ドナー層と接する電子アクセプタ層を備える。サブセルは電子−ホール再結合ゾーンにより隔てられている。有利には、素子はまた1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)及び1つのカソード平滑化(smoothing)層を含む。
【0022】
本発明の目的は、光起電力性能が向上した有機PV素子を提供することである。この目的のために、本発明は、大きな外部量子効率で作動しうる有機PV素子を提供する。
【0023】
本発明の別の目的は、電荷担体をさらに効率的に光で生成するように、入射光の吸収を向上させた感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、向上したVoc及び向上したIscをもつ感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】タンデム型素子(2個のサブセルからなる)を示す。各サブセルは、銅フタロシアニン(CuPc)/3,4,8,10−ペリレンテトラカルボキシリック−ビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)ヘテロ接合を備える。タンデム型素子の2個のサブセルは、銀薄膜により隔てられている。後方のサブセルとAgカソードの間に、BCPからなる電子障壁層が示されている。
【図2】図1に示されるタンデム型素子に対して提案されるエネルギー準位の略図を示す。このセルの作動は次の通りである:光子が2個のサブセルの一方に吸収され、励起子を生成し、それは有機膜に拡散しうる。CuPc/PTCBI界面が、励起子分離の活性サイトを提供する。CuPc/PTCBI界面での、光により生成した励起子の解離により、ホール(白丸)はCuPc層に輸送され、他方、電子(黒丸)はPTCBI層に輸送される。前方のセルで生成したホールは、ITO電極により収集される。後方のセルで発生した電子はAgカソードにより収集される。後方セルからのホールと前方セルからの電子はサブセルの間のAg層に向けて輸送され、そこでそれらは再結合する。
【図3】最適化以前のタンデム型素子(白四角)と単セル素子(黒四角)の、1sunの照射下のI−V特性(電流密度と電圧)を示す。セル構成は次の通り:タンデム型素子−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/20ÅAg/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg、単セル素子−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg。
【図4】様々な厚さの前方セルをもつタンデム型セルの短絡電流密度(左の軸)と開回路電圧(右の軸)を示す。測定は1sunの照射下に実施される。Isc及びVocのいずれも、前方セルの厚さが220Åあたりに最大値があることに注意。これは前方セルの構造:110ÅCuPc/110ÅPTCBIに対応する。前方セルの厚さが220Åより大きい素子では、前方セルの光吸収の増加により、後方セルでの光強度が低下し、このために素子電流が限定されるので、Iscは低下する。220Åより厚さが小さい場合は、基板の粗さ、並びに有機層での島の形成により、Iscは減少する。
【図5】2種のタンデム型セルのI−V特性の比較を示す:1つはBCP層をもち(黒四角)、他方はもたない(白四角)。BCP層は後方セルに組み込まれる。測定は、1sunの照射下に実施される。BCP層をもつタンデム型セルで、光電流密度のかなりの増加を明らかに見ることができ、こうして、タンデム型PVセルに対するEBLの考え方の有用性が確認される。
【図6】タンデム型セルにより、AM1.5、1sunの照射下に発生する、短絡電流密度(Isc)と開回路電圧(Voc)のAg層厚さ依存性を示す。Vocは一定であるが、Iscは、Ag層の厚さの減少でかなり増加し、堆積されたAg層の最小厚さ(5Å)で、最大値に達する。Voc及びIscはAg層がない素子ではかなりの低下を示す。セルの性能のAg中間相の厚さへの認められた依存性は、前方及び後方サブセルの間に挿入された非常に少量のAgでさえ、それらの間の界面での再結合サイトとなるのに十分であることを示している。
【図7】タンデム型セルにより、AM1.5、1sunの照射下に発生する、短絡電流密度(Isc)と開回路電圧(Voc)のBCP層厚さ依存性を示す。Vocは相当に一定であるが、Iscは、BCP層の厚さへの依存性を示し、BCP層の厚さが約100から120Åで最大値に達する。Voc及びIscはBCP層がない素子ではかなりの低下を示す。
【図8】最適化されたタンデム型セル:ITO/PEDOT/110ÅCuPc/110ÅPTCBI/5ÅAg/150ÅCuPc/250ÅPTCBI/800ÅAgの、AM1.5の太陽光シミュレーションスペクトルでの様々な入射エネルギー密度に対する、I−V特性の第四象限(forth quardrant)を示す。約100mW/cm2が1sunの強度に相当する。
【図9】最適化されたタンデム型セル:ITO/PEDOT/110ÅCuPc/110ÅPTCBI/5ÅAg/150ÅCuPc/250ÅPTCBI/800ÅAgの、様々な入射光強度で測定されたI−V特性を示す。この最適化されたタンデム型素子の電力変換効率は、約0.5sunの光強度で約2.5%の最大値に達する。
【図10】ITO及びPEDOT:PSSアノードをもつ素子に対して提案されるエネルギーの略図を示す。電極(ITO、PEDOT:PSS、及びAl)のフェルミ準位エネルギーとCuPc、C60、及びBCPのHOMO及びLUMO準位が示されている。ITO及びPEDOT:PSSの仕事関数のデータは、T.M.Brown et al.、Appl.Phys.Lett.75、1679(1999)による。C60のイオン化ポテンシャルと電子親和力は、R.Mitsumoto et al.、J.Phys.Chem.A102、552(1998)からのものであり、またI.G.Hill et al.、J.Appl.Phys.86、4513(1999)が、CuPc及びBCPの場合に用いられた。電極の仕事関数及びHOMO準位は、紫外光電子分光法により得られたものであり、±0.1eVの誤差棒をもつ。LUMO準位はHOMO準位と光学的エネルギーギャップから見積もられた。
【図11】(上側の枠)アノードがITO(セルA、四角)、又はITO/PEDOT:PSS(セルB、丸)のいずれかである、アノード/200ÅCuPc/200ÅC60/150ÅBCP/800ÅAlの素子の電圧に対する電流密度のプロットを示す。白い記号は暗がりで取られたI−V曲線を表し、黒い記号は100mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの照射下に取られたI−V曲線を表す。下側の枠は、同じ素子についての電圧に対する光電流密度のプロットを示す(セルA:X印付き四角、セルB:X印付き丸)。光電流は、暗がりと照射下に取られたI−V曲線の間で相違がある。セルAの光電流をDV=+0.50Vだけ移動させたもの(セルA*、破線)もまた示されており、これはセルBの光電流曲線と重なっている。
【図12】ITO/PEDOT:PSS/50ÅCuPc/200ÅC60/100ÅBCP/800ÅAlの素子の、100mW/cm2のAM1.5Gの照射下における、電流−電圧特性を示す。PEDOT:PSS膜は、無処理(黒四角)、酸素プラズマで処理(10W、100mTorr、30s:白四角)あるいはArプラズマで処理(10W、100mTorr、30s:白丸)のいずれかであった。差込図は、ITO/PEDOT:PSS/200ÅCuPc/400ÅC60/BCP/800ÅAl素子の、100mW/cm2強度をもつAM1.5Gの照射下における短絡電流を、BCP層の厚さの関数として示す。データ点(白丸)を結ぶ滑らかな曲線は目のガイドである。
【図13】最適化された素子構造:ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlの、様々な強度のAM1.5Gの照射下における電流−電圧特性を示す。最大の電力出力が、照射強度>150mW/cm2で示され、ffへの直列抵抗の影響を例示している。
【図14】(a)ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlの層構造をもつ最適化された素子のηp、ff及びVocを、入射光エネルギーの関数として示す。(b)同じ素子の外部量子効率を波長の関数として示す。AM1.5Gの太陽光スペクトルに相当するフォトンフラックスもまた比較のために示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の前記及び他の特徴は、添付の図面を援用しながら行った、例示的実施形態の詳細な以下の説明により、より容易に明らかになるであろう。
【0027】
本発明は効率が非常に改善された有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。効率の向上は材料選択、素子構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【0028】
本発明は、アノード層、ホール輸送(ドナー型)層、電子輸送(アクセプタ型)層、及びカソードを備える、効率が向上した有機PV素子を提供する。材料選択の改善により、効率が向上した素子を作製することができる。本発明の一実施形態では、ETLがフラーレン化合物を含む。有利には、素子はまた、1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)を含む。さらに、素子は電荷移動層もまた含んでいてもよい。
【0029】
本発明はまた素子効率が向上する素子構成を提供する。一実施形態では、本発明は、複数のサブセルからなる積層型感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供する。それぞれのサブセルはドナー−アクセプタのヘテロ接合を備える。サブセルは電子−ホール再結合ゾーンにより隔てられている。本発明の好ましい実施形態では、電子−ホール再結合ゾーンは不連続であってもよい極めて薄い金属層を含む。本発明の素子は1個又は複数のサブセルを含みうる。好ましくは、素子は2から5個のサブセルからなるであろう。真空蒸着、スピンコーティング、有機気相堆積、インクジェット印刷及び当技術分野で知られている他の方法を用いて、有機光伝導層を作製することができる。
【0030】
有機光伝導体の大きな体積抵抗により、これらの材料を比較的薄い膜で用いることが望ましい。しかし、薄い感光層は入射光の僅かな部分しか吸収しないであろうから、薄膜光伝導体の外部量子効率は厚膜光伝導体のそれより小さいであろう。しかし、適切な素子配置構成により、本明細書に記載されるもののような薄膜有機素子の外部量子効率を、さらに向上させることができる。光活性層は薄いので、吸収層の有効厚を増す手段を提供する素子配置構成が好ましいであろう。このような構成の1つは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,198,091号、6,198,092号、及び同時係属出願の第09/136,377号に記載される積層型素子である。本明細書では、用語「積層」、「積層型」、「マルチセクション」及び「マルチセル」は、1つ又は複数の電極又は電荷移動層により隔てられた、複数の光伝導材料層をもつオプトエレクトロニクス素子を表す。以後に、用語「サブセル」が用いられる場合、それは感光性有機オプトエレクトロニクス構造体を表す。サブセルが感光性オプトエレクトロニクス素子として単独で用いられる場合には、それは通常、一対の完全な電極、すなわち正極及び負極を含む。本明細書で開示されるように、いくつかの積層型構成では、連接するサブセルが、共通の、すなわち共有される電極又は電荷移動層を用いることが可能である。別の場合には、隣接するサブセルは共通の電極又は電荷移動層を共有しない。このように、サブセルには、各サブユニットがそれ独自の電極をもつか、あるいは電極又は電荷移動層を隣接するサブユニットと共有するかに関係なく、そのようなサブユニット構造体が含まれる。
【0031】
ヘテロ接合セルの開回路電圧は、電極材料にほとんど依存せず、有機薄膜間のHOMO−LUMOギャップエネルギーオフセット値、並びにそれらの不純物ドーピング濃度により決まる。したがって、ITO/有機2重層/金属のセル、並びに金属/有機2重層/金属のセルの性能は、有機2重層材料のパラメータにより主に影響されるであろうと予想することができる。次々と2つ以上のヘテロ接合を堆積すると、前方のセルのアクセプタ層と後方セルのドナー層の間に逆ヘテロ接合を形成することになるであろう。この逆へテロ接合の形成を防ぐために、電子−ホール再結合ゾーンが個々のサブセルの間に挿入される。電子−ホール再結合ゾーンにより、前方のセルから侵入する電子と後方のセルからのホールとの再結合のためのスペースが提供される。
【0032】
直列に電気的に接続されたサブセルからなるPV素子は、より高い電圧の素子となる。サブセルのヘテロ接合となるドナー材料とアクセプタ材料はいくつかのサブセルでは同じであってもよく、あるいはドナー及びアクセプタ材料は特定の素子のサブセルでは異なっていてもよい。素子の各サブセルが「バランスされている」こと、すなわち各サブセルにより発生する電流の量がほぼ等しいことが重要である。各サブセルが、約10%未満の偏差で同じ電流を発生することが好ましい。電流のバランスはサブセルの個々の層の厚さを調節することにより、またサブセルの個々の層を構成する材料の選択により達成される。例えば、入射光が一方向にだけ透過する場合、積層型サブセルの厚さは、入射光に直接最も曝される最外層のサブセルを最も薄いサブセルとして、増加する。別法として、サブセルが反射性表面(例えば、金属カソード)上に重なっている場合、元々の方向と、反射による方向から各サブセルに入る放射の総計に合わせて、個々のサブセルの厚さを調節することができる。我々は、素子のサブセルをバランスさせることにより、最高の性能を達成できるということを見出した。
【0033】
吸収以外に、励起子拡散長は、層の厚さを選択する場合に考慮すべき重要な点である。吸収により生み出される励起子は、ドナー−アクセプタ界面に十分近くなければならない。光により生成する励起子は、電荷分離が起こりうるために、対再結合の前にドナー−アクセプタ界面に拡散しなければならない。吸収と拡散のいずれも、それらはいずれも距離の指数関数であるから、容易にモデル化して最適なセルの厚さを実現できる。
【0034】
複数のサブセルからなる素子により生成する電流は、「直列に接続された」サブセルにより発生する電流の最小のものに等しい。個々のサブセルの層の厚さが、励起子拡散長Ldよりずっと大きい場合、電流は光の強度に比例し、これは前方のサブセルにより減衰するので、電流は最後部のサブセルにより限定される。減衰要因を減らすためには、一般的に言えば、個々の層の厚さが活性領域の広がりの程度、すなわち、〜30Åないし〜100ÅであるLdの程度になるまで、前方及び後方ヘテロ接合界面の間の距離を縮めることができる。
【0035】
本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子は、太陽電池、光検出器又は光電池として機能しうる。本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子が太陽電池として機能する時には常に、光伝導性有機層に用いられる材料及びその厚さを、例えば、素子の外部量子効率を最適化するように選択するとよい。本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子が光検出器又は光電池として機能する時には常に、光伝導性有機層に用いられる材料及びその厚さを、例えば、素子の感度を望みのスペクトル領域に対して最大化するように選択するとよい。
【0036】
具体的には、個々の層の厚さを調節して、積層型素子のサブセルの全数を選択することとの組合せで、1個のセルで可能な外部量子効率より大きな外部量子効率が得られるように、素子の外部量子効率を最大化することができる。本明細書では、用語「外部量子効率」は、全入射光を感光性オプトエレクトロニクス素子が電力に変換できる効率を表し、用語「内部量子効率」と区別され、本明細書では後者は、吸収された放射を感光性オプトエレクトロニクス素子が電力に変換できる効率を表す。これらの用語を用いると、所与の1組の周囲放射条件下で、個々のサブセルで実現しうる最大の内部量子効率に近い外部量子効率を、このような周囲条件下で達成するように、積層型感光性オプトエレクトロニクス素子を設計することができる。
【0037】
層の厚さを選択する際に用いうるいくつかのガイドラインを考慮することにより、この結果を実現できる。ほとんどの励起子の解離は界面で起こるであろうと考えられているので、励起子拡散長LDは層の厚さLより大きいか同程度であることが望ましい。LDがLより小さい場合、多くの励起子は解離の前に再結合するであろう。太陽電池に入射するほとんどすべての放射が吸収されて励起子を生成するように、光伝導層の全厚さが電磁放射吸収長、1/α(αは吸収係数である)の程度であることがさらに望ましい。さらに、有機半導体の大きな体積抵抗率による余計な直列抵抗を回避できるように、光伝導層の厚さはできるだけ薄くすべきである。
【0038】
したがって、これらの競合するガイドラインでは、感光性オプトエレクトロニクスセルの光伝導性有機層の厚さを選択する際には本質的に折り合いをつけることが求められる。このように、一方では、最大量の入射光を吸収するために、吸収長と同程度であるかより大きい厚さが望ましい(単セルの素子では)。他方、光伝導層の厚さが増加すると、2つの望ましくない効果が増大する。1つは有機半導体の大きな直列抵抗によるものであり、有機層の厚さの増加により、素子抵抗が増し効率が低下する。別の望ましくない効果は、光伝導層の厚さの増加により、電荷分離界面の有効場から離れた位置で励起子が生成する可能性が大きくなることであり、対再結合の可能性が増大する結果になり、やはり効率が低下する。したがって、素子全体としての量子効率を大きくするような仕方で、これらの競合する効果をバランスさせる素子構成が望ましい。複数の積層型サブセルを用いることにより、光伝導性有機層を非常に薄くすることができる。
【0039】
具体的には、前記の競合する効果、すなわち、素子の光伝導性材料の吸収長、これらの材料内の励起子拡散長、これらの励起子の光電流発生効率、及びこれらの材料の抵抗を考慮することにより、与えられた1組の周囲の放射条件で、これら特定の材料の最大の内部量子効率が得られるように、個々のセルの層の厚さを調節することができる。励起子の拡散長は比較的小さい値を持つ傾向があり、また典型的な光伝導性材料の抵抗は比較的大きい傾向があるので、最大の内部量子効率を達成することに関しては、最適なサブセルは通常、比較的薄い素子であろう。しかし、このような光伝導性有機材料の吸収長は励起子拡散長に比べて相対的に大きい傾向があるので、このように最適な薄い感光性オプトエレクトロニクスサブセルは、最大の内部量子効率をもちうるが、入射光の僅かな部分だけがこのように最適なサブセルにより吸収されるであろうから、比較的小さな外部量子効率をもつ傾向があるであろう。
【0040】
個々のサブセルの外部量子効率を向上させるために、かなり多量の入射光を吸収するように、光伝導性有機層の厚さを大きくすることができる。追加で吸収された放射を電力に変換する内部量子効率は、その最適なサブセルの厚さを超えて厚さを増すにつれて、徐々に低下するであろうが、サブセルの外部量子効率は、吸収のさらなる増加が外部量子効率をまったく増加させえないと思われる特定の厚さに達するまでずっと増加するであろう。光で生成した励起子の拡散長をはるかに超えて光伝導層の厚さが増加すると、サブセルの内部量子効率は急速に低下する傾向があるので、サブセルの最大外部量子効率は、より厚いサブセルの厚さが実質的にすべての入射光を吸収するのに十分となるかなり手前で、達成されるであろう。このように、単一の比較的厚いセルによるこの手法を用いて達成できる最大外部量子効率は、サブセルの厚さが最大内部量子効率を実現するのに望ましいものよりかなり大きいという事実によってだけでなく、さらに、このようなより厚いサブセルもまだ入射光全部を吸収できないという事実によっても限定されている。したがって、これらの2つの効果により、より厚いサブセルの最大外部量子効率は、最適の厚さの最適なサブセルで達成されうる最大の内部量子効率よりかなり小さいと予想されるであろう。
【0041】
個々のサブセルの厚さが活性領域の厚さより小さい場合、サブセルの厚さをさらに薄くすることにより吸収が減少し、このために効率が直線的に減少する。各サブセルに電流バランスがあるので、本発明の素子のサブセルの最大数は、このバランスがなお可能なセルの厚さに相当する。積層された各サブセルは、そのセルの活性領域と同じ厚さであり、内部深くに積層されたセルがバランス規準に合致するような量の電流を依然として発生できるべきである。
【0042】
積層型素子の各サブセルは、ヘテロ接合をなすアクセプタ材料及びドナー材料を含む。ドナー材料はアクセプタ材料のそれより小さいイオン化ポテンシャルをもつ。さらに、ドナー層のイオン化ポテンシャルHOMO/LUMOギャップは、アクセプタ層のそれより小さくなければならない。一般に、ドナー又はアクセプタ層を構成する材料は、可能な最長の励起子拡散長をもつべきであり、したがってまた好ましくは、平坦な芳香族分子のように、分子を規則的に積層するのに向いている材料である。
【0043】
アクセプタ材料は、例えば、ペリレン、ナフタレン、フラーレン又はナノチューブからなりうる。好ましいアクセプタ材料は3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)である。
【0044】
別法として、アクセプタ層はフラーレン材料からなっていてもよい。本発明は、フラーレン、例えばC60を含むETLを組み込み、これまでに例示された有機薄膜PVセルを超える、実質的に向上した電力変換効率を示す素子を提供する。結果の改善は主に、C60で77±10Å(L.A.A.Petterson et al.、J.Appl.Phys.86、487(1999))程度のフラーレンの大きな励起子拡散長の結果であると考えられている。これを、PTCBIの30±3Åの励起子拡散長と比較することができる。さらに、フラーレン薄膜中の電子伝導により大きな電圧降下は生じない。
【0045】
本発明で有用なフラーレンは広い範囲の大きさ(分子あたりの炭素原子の数)をもちうる。本明細書では、フラーレンという用語には、バックミンスターフラーレン(C60)及び関連する「球状」フラーレン並びにカーボンナノチューブを含めて、炭素単体の様々なかご状分子が含まれる。例えばC20〜C1000の範囲の、当技術分野において知られているものから、フラーレンを選択することができる。好ましくは、フラーレンはC60からC96の範囲から選択される。最も好ましいフラーレンはC60又はC70である。修飾されたフラーレンがアクセプタ型であり電子移動度特性を保持するならば、化学的に修飾されたフラーレンを用いることも可能である。
【0046】
アクセプタ層に隣接して、有機ドナー型材料の層がある。アクセプタ層とドナー層の境界は、電場を内部に生成するヘテロ接合を形成する。ドナー層に好ましい材料は、フタロシアニン又はポルフィリン、あるいはこれらの誘導体又は遷移金属錯体である。銅フタロシアニン(CuPc)が特に好ましいドナー材料である。
【0047】
電子−ホール再結合ゾーンにより積層型素子の個々のサブセルを分離することができる。この層は前方のセルのアクセプタ層と後方のセルのドナー層の間の逆ヘテロ接合の形成を防ぐ役目をする。個々のサブセルの間の層は、前方のサブセルから入る電子と後方のサブセルからのホールが再結合するゾーンを提供する。前方のサブセルから入る電子と後方のサブセルからのホールの効率的な再結合は、光誘起電流を積層型素子で起こそうとする場合に必要である。好ましくは、電子−ホール再結合ゾーンは薄い金属層を含む。金属層は、光が後方の(複数の)セルに到達できるように、十分薄くて半透明でなければならない。この目的のために、金属層の厚さは約20Åより薄いことが好ましい。金属膜が約5Åの厚さであると特に好ましい。これらの極めて薄い金属膜(〜5Å)は連続膜でなく、むしろ孤立した金属ナノ粒子からなると考えられている。驚くべきことに、この極めて薄い金属層は連続ではないが、それは依然として電子−ホール再結合層として有効である。この層に用いられる好ましい金属には、Ag、Li、LiF、Al、Ti、及びSnが含まれる。銀がこの層に特に好ましい金属である。金は、それがギャップ中間(mid−gap)状態を導入するとは知られていないので、この層にとってよい選択であるとは考えられていない。別の実施形態では、電子−ホール再結合ゾーンは、電子−ホール再結合が速くなる、電子活性欠陥領域を含む。この欠陥は、例えば、加熱、制御された不純物の導入、あるいは関連の有機層堆積中のエネルギー粒子への暴露よる、この界面の限定された損傷により導入されうる。エネルギー粒子は、例えば、熱的にあるいはRFプラズマにより励起されうる。
【0048】
感光性オプトエレクトロニクス素子で用いられる電極、又は接点は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる同時係属出願第09/136,342号に示されるように、考慮すべき重要な点である。本明細書では、用語「電極」及び「接点」は、光により生成した電力を外部回路に送る、あるいは素子にバイアス電圧をかけるための媒体となる層を表す。すなわち、電極、又は接点は、感光性有機オプトエレクトロニクス素子の光伝導活性領域と、外部回路へ、又はそこから電荷担体を輸送する配線、リード線、トレース又は他の手段との間のインターフェースとなる。感光性オプトエレクトロニクス素子では、素子外部から最大量の周囲の電磁放射を光伝導活性内部領域に受入れられることが望ましい。すなわち、電磁放射は(複数の)光伝導層に到達しなければならず、そこでそれは光伝導性吸収により電気に変換されうる。このことにより、電気的接点の少なくとも1つが入射電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射すべきであることが必然的に求められる。すなわち、このような接点は実質的に透明でなければならない。対向電極は、吸収されずにセルを通過した光が反射されてセルを通るように、反射性の材料であってよい。本明細書では、1つの材料層あるいは異なる材料の連続する数層は、その1つの層又は複数の層が、少なくとも50%の周囲の電磁放射を、関連する波長で、その1つの層又は複数の層を透過させる場合に、「透明」であると言われる。同様に、関連する波長で周囲の電磁放射を、50%より少ないが、いくらか透過させる層は、「半透明」であると言われる。
【0049】
電極は、好ましくは、金属又は「金属代替物」からなる。本明細書では、用語「金属」は、単体金属からなる材料、例えばMg、そしてまた2種以上の単体金属からなる材料である金属合金、例えばMg:Agと表記され、MgとAgを合わせたもの、の両方を含めて使用される。ここで、用語「金属代替物」は、通常の定義の範囲内では金属でないが、特定の適切な用途で望まれる、金属のような性質をもつ材料を表す。電極及び電荷移動層に広く用いられている金属代替物には、ドープされたワイドバンドギャップ半導体、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、及び亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)などの透明導電性酸化物が含まれる。特に、ITOは、多量にドープされた縮退n+半導体で、それを約3900Åより大きな波長に対して透明にする、約3.2eVの光学的バンドギャップをもつ。別の適切な金属代替物は、透明導電性ポリマーのポリアニリン(PANI)及びその化学的近縁物である。広範な非金属材料から金属代替物をさらに選択することができ、ここで、用語「非金属」は、化合していない形態で金属をその材料が含まないという条件で、広範な材料を含むことを表そうとするものである。金属が、単独で、あるいは合金として1種又は複数の他の金属との組合せで、化合していない形で存在する場合、その金属は、別の言い方では、その金属の形態で存在している、あるいは「遊離金属」であると言われる。したがって、本発明の金属代替物電極は、「無金属」と言われることがあり、ここで用語「無金属」は、化合していない形態での金属を含まない材料を含むということを明示的に表している。遊離金属は通常、金属格子内を電子伝導帯で自由に動ける大量の価電子から生じる金属結合の形態をもつ。一方、金属代替物は、金属構成成分を含みうるが、それらはいくつかの根拠で「非金属」である。それらは、純粋な遊離金属でもないし、またそれらは遊離金属の合金でもない。金属が金属の形態で存在する場合、電子伝導帯が、他の金属の性質の中でもとりわけ、電気伝導性を大きくしまた光反射率を大きくする傾向がある。
【0050】
本発明の実施形態では、感光性オプトエレクトロニクス素子の1つ又は複数の透明電極として、Parthasarathy他の米国特許出願第09/054,707号(「Parthasarathy‘707」)に開示されるような、透明性の高い、非金属、低抵抗カソード、あるいはForrest他の米国特許第5,703,436号(「Forrest‘436」)に開示されるような、高効率、低抵抗金属/非金属化合物カソードが含まれ、両特許は参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、それぞれの型のカソードは、透明性の高い、非金属、低抵抗カソードの形成では、有機材料、例えば銅フタロシアニン(CuPc)上に、あるいは高効率、低抵抗金属/非金属化合物カソードの形成では、薄いMg:Ag層上に、スパッタリングでITO層を堆積させるステップを含む製造プロセスで調製される。Parthasarathy‘707は、ITO層がその上に堆積された有機層でなく、有機層がその上に堆積されたITO層は、効率的なカソードとして機能しないことを開示している。
【0051】
本明細書では、用語「カソード」は、次のように用いられる。周囲の放射を受け、抵抗型負荷に接続され、外からの印加電圧がない、非積層型PV素子又は積層型PV素子の単一ユニット、例えば太陽電池では、電子は隣接する光伝導性材料からカソードに移動する。同様に、本明細書では、用語「アノード」は、照射を受ける太陽電池では、ホールは、隣接する光伝導性材料からアノードに移動する、というように用いられる。なお、ホールは、反対方向に動く電子と等価である。これらの用語が本明細書で用いられる時、アノード及びカソードは電極又は電荷移動層であることに注意されたい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、積層された有機層は、米国特許第6,097,147号、Peumans et al.、Applied Physics Letters 2000、76、2650〜52、及び1999年11月26日に出願された同時係属出願第09/449,801号(参照によりいずれも本明細書に組み込まれる)に記載される、1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)を含む。より大きな内部及び外部量子効率が、光で生成した励起子を解離界面の近くの領域に閉じ込めて、感光性有機物/電極の界面での励起子の寄生(parasitic)消光を防ぐEBLを含めることにより達成された。励起子が拡散しうる空間を限定すること以外に、EBLはまた、電極を堆積中に導入される物質に対する拡散バリアとしても機能しうる。ある状況では、EBLを、放っておくと有機PV素子を機能しなくするかもしれないピンホール又は短絡欠陥を埋めるのに十分な厚さにすることができる。したがって、EBLは、電極が有機材料上に堆積される時に生じる損傷から脆弱な有機層を保護する助けとなりうる。
【0053】
EBLは、隣接する有機半導体のLUMO−HOMOエネルギーギャップより実質的に大きなLUMO−HOMOエネルギーギャップをもつことから、励起子の障壁となる性質を得ていると考えられ、EBLは、隣接する有機半導体から励起子が流入しないようにしている。したがって、閉じ込められた励起子は、エネルギーのことを考えるとEBLに存在することを禁じられている。EBLが励起子の障壁となることは望ましいが、EBLがすべての電荷の障壁となることは望ましくない。しかし、隣接するエネルギー準位の性質により、EBLは必然的に一方の符号の電荷担体の障壁となるであろう。設計により、EBLは、2つの層、通常は有機感光性半導体層と電極又は電荷移動層の間に常に存在するであろう。隣接する電極又は電荷移動層は、ここではカソード又はアノードのいずれかということになろう。したがって、素子の所定の位置のEBL用材料は、望みの符号の電荷が電極又は電荷移動層へ輸送されるのを妨げないように選択されるであろう。適切なエネルギー準位の整合により、電荷輸送に対する障壁は存在せず、直列抵抗を増加させない。例えば、カソード側のEBLとして用いられる材料が、電子に対する望ましくない障壁をできるだけ小さくするように、隣接するETL材料のLUMO準位によく釣り合ったLUMO準位をもつことが望ましい。
【0054】
材料が励起子の障壁となる性質は、そのHOMO−LUMOエネルギーギャップに固有の性質ではないことを理解すべきである。ある材料が励起子の障壁体(blocker)として機能するかどうかは、隣接する有機感光性材料の相対的なHOMO及びLUMO準位に依存する。したがって、それが使用される素子に関係なく、単独で一群の化合物を励起子障壁体と認定することは不可能である。しかし、本明細書の教示により、当分野の技術者は、ある材料が、有機PV素子を構成する1組の選択された材料と共に用いられる時、励起子障壁層として機能するかどうかを識別できるであろう。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、EBLは、アクセプタ層と(後方のサブセルの)カソードの間に位置する。EBLとして好ましい材料には、約3.5eVのLUMO−HOMO分離があると考えられる2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン又はBCPとも呼ばれる)、あるいはビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリノアート)−アルミニウム(III)フェノラート(Alq2OPH)が含まれる。BCPは、隣接するアクセプタ層からカソードへ電子を容易に輸送できる効果的な励起子障壁体である。通常、EBLは前方のサブセルには含まれないであろう。電子−ホール再結合ゾーンに隣接してEBLを配置することは、電荷担体が再結合ゾーンに達することを妨げるのでセルの効率を低下させうる。
【0056】
3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジイミド(PTCDI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリック−ビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、及びこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、適当なドーパントでEBL層をドープすることができる。本発明の素子に堆積された時、BCPはアモルファスであると考えられる。本発明のアモルファスと思われるBCP励起子障壁層は膜の再結晶を示し、これは高強度の光のもとでは特に速い。結果としての多結晶材料へのモルフォロジーの変化により、短絡、空隙又は電極材料の侵入などの起こりうる欠陥をもつ品質の劣る膜になる。こうして、この効果を示す、BCPなどのいくつかのEBL材料を、適当な、比較的大きく安定な分子でドープすることがEBL構造体を安定化して性能を低下させるモルフォロジー変化を防ぐことが見出された。さらに、所定の素子において電子を輸送するEBLを、そのEBLのLUMOに近いLUMOエネルギー準位をもつ材料でドープすると、空間電荷を蓄積し性能を低下させるかもしれない電子トラップを確実に形成させないようにする助けとなるであろうということが理解されるべきである。さらに、比較的低濃度のドーピングで、孤立したドーパントサイトでの励起子生成を最小化すべきであることも理解されるべきである。このような励起子は周囲のEBL材料により拡散することを効果的に禁じられているので、このような吸収は素子の光変換効率を低下させる。
【0057】
代表的実施形態にはまた、透明な電荷移動層が含まれうる。本明細書では、電荷移動層は常にではないが無機物であることが多く、また、電荷移動層は通常光伝導性でないように選択されるという事実により、電荷移動層はETL及びHTL層と区別される。本明細書では、用語「電荷移動層」は、電極に似ているが、電荷移動層は電荷担体をオプトエレクトロニクス素子の1つのサブセクションから隣接するサブセクションに送るだけであるという点において電極と異なる層を表すために用いられる。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態では、電荷移動層はアノードとドナー層の間に位置する。この層の好ましい材料には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)の膜が含まれる。PEDOT:PSS層はアノード平滑化層として機能する。アノード(ITO)とドナー層(CuPc)の間にPEDOT:PSS層を導入すると、製造歩留りが100%近くになる。我々は、これは、スピンコートされたPEDOT:PSS膜がITOを平坦化できることによるとするが、その粗い表面は、もしそうしなければ、薄い分子膜を貫く短絡を生じうるであろう。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、次の層を堆積させる前に、1つ又は複数の層をプラズマで処理してもよい。例えば、温和なアルゴン又は酸素プラズマでこれらの層を処理することができる。この処理は、それが直列抵抗を低下させるので有益である。次の層の堆積前に、温和なプラズマ処理をPEDOT:PSS層に行うことには、特に利点がある。
【0060】
素子の効率を増すために、光子に薄い吸収層を何回も通過させる集光器構成を利用することができる。「集光器付き多重反射高効率感光性オプトエレクトロニクス素子(Highly Efficient Multiple Reflection Photosensitive Optoelectronic Device with Optical Concentrator)」という名称の、同時係属の米国特許出願第09/449,800号(以後、「‘800出願」)は、吸収を大きくし、集光効率を高める集光器を用いるための光学的配置構成を最適化することにより感光性オプトエレクトロニクス素子の光変換効率を上げる、構造設計を用いてこの問題を扱っており、参照により本明細書に組み込まれる。感光性素子のこのような配置構成は、入射光を反射性キャビティ又は導波路構造体内に閉じ込めて、光伝導性材料の薄膜を通しての多重反射により光をリサイクルすることで、材料を通しての光の経路を実質的に増大させる。したがって、‘800出願に開示される配置構成は、体積抵抗を実質的に増加させることなく素子の外部量子効率を向上させる。このような素子の配置構成に含まれるのは、第1反射層;光学的マイクロキャビティ干渉効果を避けるために入射光の光学的コヒーレンス長よりすべての寸法で大きくあるべきである透明絶縁層;透明絶縁層に隣接する透明第1電極層;透明電極に隣接する感光性ヘテロ構造;及びやはり反射性である第2電極;である。
【0061】
‘800出願はまた、反射表面の一方、あるいは効果的に集められ、感光性材料を含むキャビティに送られる電磁放射の量を増やすために、ウィンストン(Winston)集光器のような集光器に連結する導波路素子の外側の側面のいずれかの開口部を開示する。例示的な非結像(non−imaging)集光器には、切形(truncated)放物面などの円錐形集光器、及びトラフ型(trough−shaped)集光器が含まれる。円錐形に関しては、直径d1の入口円形孔に±θmax(受光角の半分)内で入る放射を素子は集め、放射を直径d2のより小さい出口孔に向け、損失は無視でき、いわゆる熱力学的限界に近づけることができる。この限界は所定の視野角での許される最大集光である。円錐形集光器は、トラフ型集光器より大きな集光比を与えるが、受光角がより小さいために、日中太陽に追随させる必要がある。(本明細書に組み込まれる、W.T.WelfordとR.Winstonによる「高集光非結像光学系(High Collection Nonimaging Optics)」(以後は、「WelfordとWinston」)、pp172〜175、Academic Press、1989による)。
【0062】
本発明の例示的実施形態の素子が組み立てられ、実施例のデータが記録された。本発明の以下の実施例は例示であり本発明の限定ではない。
【実施例1】
【0063】
例示的実施形態を作製する。前洗浄したITOガラス基板上に、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT)の300Åの厚い層でスピンコートする。スピンコーティングを4000rpmで40秒間実施し、次に減圧下1時間110℃で30分乾燥する。有機材料をトレイン(train)昇華により精製する。PVセルを有機材料の熱蒸発(室温、10−6Torr、堆積速度1.5〜2Å/sec)により、ITO/PEDOTガラス上に次の順序で形成する:ドナー−アクセプタ−金属−ドナー−アクセプタ−金属。個々の層の厚さを、例えば結晶振動子膜厚モニタの使用により制御する。銅フタロシアニン、CuPcをドナーとして用い、ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)をアクセプタとして用いる。Agを、前方と後方のセルの間の薄い(約5〜20Å)層として、また頂部金属電極材料として用いる。頂部電極(800Åの厚さ)を、直径1mmの円形のシャドウマスクを通して堆積させる。
【0064】
電力変換効率を、AM1.5の白色光を与える太陽シュミレータの照射下に空気中で測定した。光の強度を減光フィルタを用いて変えた。1sunの入射光強度での単一(黒四角)及びタンデム型(白四角)セルの電流−電圧(I−V)特性を図1に示す。セル構造は次の通り:タンデム型−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/20ÅAg/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg、標準の単セル基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg。タンデム型セルにより発生した開回路電圧は単セルに比べて2倍である。タンデム型セルによる光電圧は2倍であるが、タンデム型セルの短絡電流は単セルのそれよりかなり低い。
【0065】
我々は、PV素子の基板として、真新しいITOガラスとPEDOTで被覆されたITOとを比較した。最も薄い素子(個々の層の厚さは約100Åより薄い)では、予め堆積させたPEDOT層が、恐らくITOに比べて表面粗さが少ないために、短絡の発生を防ぐという結果になった。実際に、AFM測定により、粗さの値がPEDOTと無被覆ITOでそれぞれ、約20Å及び45Åであることが明らかになった。
【0066】
300Å未満の層の厚さをもつ素子では、Vocは、PEDOT基板上に調製された素子の方がいくらか大きいが、短絡電流(Isc)はいくらか小さい。PEDOT層を含む素子により生じた光電圧の増加は、CuPc/C60素子で特に明らかであり、この光電圧は、エネルギーバンドの不適切な組合せと電極の仕事関数の差の両方に原因がありうることを示している。
【0067】
薄い膜と対照的に、約350Å以上の層の厚さをもつ素子では、無被覆ITO基板の使用には利点がある。これは、このような基板では基板のモルフォロジーの重要性が低下し、追加のPEDOT層は寄生的吸収並びに付加的な直列抵抗の原因となる。
【0068】
励起子障壁層(EBL)の考え方の助けで、さらなる改善をすることができる。アクセプタ(PTCBI)及び電子収集電極の間に、バンドギャップの大きい電子伝導層(BCPなど)を組み込むことで、外部量子効率が増加する。これは、励起子の拡散と続いての電極での励起子の消光をPCBが防げることに関係している。タンデム型素子でこの考え方を試すために、我々はBCP層をもつPVセルともたないものを調製した。図5は後方のセルに組み込まれた100ÅのBCP層をもつタンデム型素子(黒四角)ともたないもの(白四角)のI−V特性を示す。この特性は1sunの照射下に測定された。光電流密度のかなりの増加が明らかに見られ、タンデム型PVセルにEBLの考え方を応用して有益であることが確認される。
【0069】
後方セルの一部分として(すなわち厚いAg電極の前に)BCP層を含めることには利点があるように思えるが、前方セルの一部分として(すなわち、薄いAg中間層の前に)それを含めると、素子の能力は急激に低下する。これはBCPの輸送サイトが、厚いAg層の堆積の派生的結果として表れることを示している。
【実施例2】
【0070】
例示的実施形態を作製する。前洗浄したガラス基板上に、〜1400Åの厚さの透明導電性インジウム−スズ酸化物(ITO)アノード(40Ω/sqのシート抵抗をもつ)で被覆する。溶剤で洗浄後、基板をO2プラズマ(50W、100mTorr、5分)で処理する。特に指摘しなければ、次にこのITO膜に、4000rpmで40秒間、溶液をスピンコートし、後で90℃で15分間、真空乾燥することにより、(320±10)Åの厚さのPEDOT:PSSの膜で被覆する。商品として有機材料を入手でき、温度勾配昇華を用いて精製する。膜を、室温、高真空(〜1×10−6Torr)で、次の順序で成長させる:50Åから400Åの厚さのドナー性の銅フタロシアニン(CuPc)膜、次に100Åから400Åの厚さのアクセプタ性C60膜。次に、50Åから400Åの厚さのバソクプロイン(BCP)を堆積させる。カソードはAlからなり、1mmの直径の円形孔をもつシャドウマスクを通して熱蒸発により堆積させる。電力変換効率を、AM1.5G(エアマス1.5、全天)スペクトルを生成するように設定された太陽シュミレータによる照射下に測定する。強度は較正された広帯域光出力計を用いて測定し、減光フィルタを用いてそれを変える。量子効率を、波長可変単色光を用いて、50%のデューティサイクルで、〜400Hzで測定する。
【0071】
図11で、我々は、別の基板に同時に成長させた、アノード/200ÅCuPc/200ÅC60/150ÅBCP/800ÅAlという構造の2個のセルの、暗がり(白い記号)と太陽光照射下(黒い記号)での電流−電圧(I−V、上側の枠)及び光電流−電圧(下側の枠)特性を比較する。セルA(四角)を無被覆ITO上に成長させ、一方セルB(丸)では、ITOをPEDOT:PSSで予め被覆した。PEDOT:PSS層の導入により、順方向バイアスにより〜10のファクタだけ暗電流(白丸)が増加する。対照的に、逆方向バイアスをかけた暗電流は不変である。さらに、PEDOT:PSSの存在はまた、光電流特性を、電圧ΔV=(0.50±0.05)Vだけ移動させ、PEDOT:PSSホール注入層をもつ場合ともたない場合のポリマー発光ダイオードについての最近の電界吸収(electroabsorption)の研究に合致している、T.M.Brown et al.、Appl.Phys.Lett.75、1679(1999)。これらの変化は、フェルミ準位を0.50VだけCuPcの最高占有分子軌道(HOMO)に近づける、ITOのそれに比べて大きいPEDOT:PSSの仕事関数により説明される。この結果、ホール注入に対するより小さい障壁のために、CuPc層への電流注入が増加し、したがってまた順方向バイアスのもとでの暗電流が増加する。これはまた電荷を分離させる内部発生静電ポテンシャル(Vbi)を0.50Vだけ増加させて(図10)、光により生成した電荷の収集を大きな正の電圧で向上させ、したがってまた電力変換効率を増加させる。
【0072】
図12は、PEDOT:PSS層の温和なプラズマ処理(10W、30s、100mTorr、100sccmAr又はO2)が、ITO/PEDOT:PSS/50ÅCuPc/200ÅC60/100ÅBCP/800ÅAlの層構造をもつ素子のI−V特性に及ぼす、400mW/cm2(4sun)の強度のAM1.5Gの太陽光照射下での効果を示す。フィル因子(ff)は、無処理PEDOT:PSSでの0.36から、O2での0.41、及びAr処理PEDOT:PSS膜での0.49まで増加する。処理は明らかにPEDOT:PSS層の表面電子構造を変化させて、担体収集性が向上する。我々はまた、我々のPVセルにPEDOT:PSSを導入すると、製造歩留りが100%(すなわち、様々な厚さの、>50個の測定された素子で、短絡は認められなかった)に近くになることに注目している。これが実現する理由は、スピンコートしたPEDOT:PSS膜が、粗面のままであれば分子薄膜を介して短絡を起こすと思われるITOを平坦化することができることであると考えている。
【0073】
イオン化ポテンシャルと光学的エネルギーギャップの差から見積もられたC60の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギーは、BCPのそれより(1.0±0.2)eVだけ下にある(図10)。光学的エネルギーギャップはLUMO準位の位置について間接的な見積もりを与えるに過ぎないという事実にもかかわらず、光で生成された電子はそれでもやはり、C60のLUMOから、BCPのLUMOにより形成された障壁を越えて、それ程の電圧降下又は直列抵抗を招くことなく、カソードに輸送されなければならない。このことは、BCPを横切る電子輸送は、金属カソードの堆積中に誘起される、LUMOより低い状態を通じて主に起こることを示唆する。この証拠は図11の差込図に与えられており、それは、ITO/PEDOT:PSS/200ÅCuPc/400ÅC60/BCP/Al素子の、100mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの照射のもとでの短絡電流密度(Jsc)を、BCP層の厚さの関数として示している。Jscの始めの増加は、活性層が金属カソードから離れるときの、吸収効率の増加による。次に、JscはBCPの厚さが>150Åで指数関数的に急に低下する。このことは、高温金属原子の熱化(thermalization)により誘起される、BCPのLUMOより低い欠陥状態が、C60層からカソードへの電子輸送を促進することを示唆する。これらの状態は、光キャリアの生成速度を超える速度で担体を取り出すのに十分な密度で、BCPの内部〜150Åの距離にわたって生成する。
【0074】
図13に、我々は、最適化素子構造:ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlのI−V特性を、入射光エネルギー密度の関数として示す。この素子の、入射光エネルギー密度の関数としての外部電力変換効率(ηp)、開回路電圧(Voc)及びFFが図14aにプロットされている。変換効率ηpは、44mW/cm2(0.44sun)の入射エネルギーレベルで、(3.7±0.2)%の最大値に達し、より強い照射強度では、(6.2±1.2)Ω−cm2のセル直列抵抗(Rs)のために急に低下する。150mW/cm2の照射強度で、ηp=(3.6±0.2)%、Jsc=18.8mA/cm2、Voc=0.58V、及びff=0.52であり、一方、1200mW/cm2の照射では、Jscは138mA/cm2のように大きく値になる。直列抵抗の影響を図13で明白に見ることができる。強度>150mW/cm2では、最大の電力出力に比較的小さい電圧で到達するので、ffの値、したがってまたηpは小さくなる。CuPc/PTCBI/BCPセルでの結果と対照的に、直列抵抗の影響を増大させる、より大きい電力変換効率の結果として、最大電力変換効率の広い平坦域は見られない。図14bには、この素子の外部量子効率と太陽光スペクトル密度が波長の関数としてプロットされている。C60の光電流への寄与が、λ=400nmから550nmの間で発生しており、他方、CuPc層はλ=550nmから750nmで寄与しており、その結果、λ<750nmの太陽光スペクトルが完全にカバーされている。
【0075】
要約として、我々は、EBLを用いる有機太陽電池の効率は、材料選択及び加工パラメータに応じて、従来のセルよりかなり大きいものでありうることを示した。特に、接点の最適化と共に、大きな励起子拡散長をもつC60の使用により、150mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの太陽光照射下で、外部電力変換効率は(3.6±0.2)%となる。我々は、これらのCuPc/C60の2重ヘテロ構造セルと共に光閉じ込め構造を用いることなどの、これらの素子のさらなる改良により、電力変換効率は5%を超えるであろうと予想する。このように、本発明は、少なくとも約3.6%のエネルギー外部変換効率をもつ有機太陽電池を対象とする。
【0076】
本発明が特定の実施例及び好ましい実施形態に関連させて説明されたが、本発明はこれらの実施例と実施形態に限定されないことが理解される。したがって、特許請求の範囲に記載される本発明は、当分野の技術者には明らかであろうように、本明細書に記載される特定の実施例及び好ましい実施形態による変形形態を含む。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に感光性有機オプトエレクトロニクス素子に関する。より詳細には、それは有機光起電力素子、例えば有機太陽電池を対象とする。さらに、それは、最適化され、効率が大幅に改善された有機太陽電池を対象とする。効率の向上は材料選択、素子の構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【背景技術】
【0002】
オプトエレクトロニクス素子は材料の光学的又は電子的特性によって、電磁放射を発生もしくは検出するか、あるいは周囲の電磁放射から発電する。感光性オプトエレクトロニクス素子は電磁放射を電気に変換する。太陽電池は、光起電力(PV)素子としても知られており、周囲の光から電力を発生させるために用いられる。PV素子は、電力を消費する負荷に電力を供給して、例えば光源、熱源となり、あるいはコンピュータ又は遠隔モニタリング又は通信機器などの電子機器を作動させるために使用される。太陽又は他の周囲の光源による直接照射が利用できない時に、機器の運転を継続できるように、これらの発電用途ではしばしば、バッテリ又は他のエネルギー貯蔵素子を充電することが行われる。本明細書では、用語「抵抗型負荷」は、電力を消費又は貯蔵する、素子、機器又はシステムを表す。
【0003】
従来、感光性オプトエレクトロニクス素子はいくつかの無機半導体、例えば結晶性、多結晶性及びアモルファスシリコン、ガリウム砒素、テルル化カドミニウムなどから構成されていた。本明細書では、用語「半導体」は、熱又は電磁励起により電荷担体が誘起された時に電気を伝導することができる材料を表す。用語「光伝導」は一般に、電磁放射エネルギーが吸収され、電荷担体の励起エネルギーに変換されて、担体が材料内で電荷を伝える、すなわち輸送することができる過程に関連する。本明細書では、用語「光伝導体」及び「光伝導性材料」は、電磁放射を吸収して電荷担体を生じるというそれらの性質で選ばれる半導体材料を表すのに用いられる。
【0004】
太陽電池は、入射太陽光エネルギーを利用できる電力に変換できる効率により特徴づけられる。結晶又はアモルファスシリコンを利用する素子が、商業的用途を占有しており、あるものは23%以上の効率を達成している。しかし、効率的で、特に大面積の結晶系素子は、効率を低下させる重大な欠陥のない大きな結晶を作り出す際の固有の問題のために、製造が困難でまた高価である。他方、高効率アモルファスシリコン素子は依然として安定性が悪い。現在の市販アモルファスシリコンセルの安定な効率は、4ないし8%である。経済的な製造コストで、許容できる光電変換効率を達成するための比較的最近の努力は、有機光起電力セルの使用に集中している。
【0005】
PV素子は、それらが負荷を通して接続され光を照射されると、光により電圧を発生する。外部の電気的負荷なしに照射された場合に、PV素子はその可能な最大の電圧、V開回路又はVocを発生する。その電気的接点を短絡してPV素子が照射された場合に、最大の短絡電流、又はIscが流れる。発電のために実際に使用される場合、PV素子は有限の抵抗型負荷に接続され、電力出力は電流と電圧の積、I×Vで与えられる。PV素子により発生する最大の全出力は、積、Isc×Vocを超えることは本質的に不可能である。負荷の値が最大の電力抽出のために最適化された場合に、電流と電圧は、それぞれ値、Imax及びVmaxをもつ。
【0006】
太陽電池の性能指数は、以下にように定義されるフィル因子(fill factor)ffであり、
【数1】
Isc及びVocは実使用では決して同時には得られないので、ffは常に1より小さい。しかし、ffが1に近いと素子はより効率的である。
【0007】
適当なエネルギーの電磁放射が有機半導体材料、例えば、有機分子結晶(OMC)、あるいはポリマーに入射した時、光子を吸収して励起分子状態となりうる。これは、S0+hν⇒S0*、と記号で表される。ここで、S0とS0*はそれぞれ基底及び励起分子状態を表す。このエネルギー吸収は、π結合でありうるHOMOの束縛状態から、π*結合でありうるLUMOへの電子移動、あるいは同じことであるが、ホールのLUMOからHOMOへの移動に関連する。有機薄膜光伝導体では、生成する分子状態は一般に、励起子、すなわち準粒子として輸送される、束縛状態の電子−ホール対であると考えられている。別の対のホール又は電子との再結合ではなく、元々の電子とホールとが互いに再結合する過程を表す対再結合(geminate recombination)の前に、励起子にはかなりの寿命がありうる。光電流を生じるためには、通常、接触している2種の異なる有機薄膜の間のドナー−アクセプタ界面で、電子−ホール対が分離されなければならない。電荷が分離されないと、それらは、入射光より低エネルギーの発光により放射として、あるいは発熱により非放射的に、消光としても知られる対再結合過程で再結合しうる。これらのどれかが起こることは感光性オプトエレクトロニクス素子では望ましくない。
【0008】
接点での電場又は不均一性により、励起子は、ドナー−アクセプタ界面で解離するよりもむしろ消光し、電流に正味の寄与をしないであろう。したがって、光で生成した励起子を接点から離しておくことが望ましい。これは、接合の近くでの励起子の解離により遊離される電荷担体が、付随する電場により分離される機会を増すように、接合に近い領域に励起子の拡散を限定する効果がある。
【0009】
相当の容積を占める電場を内部に生成させるために、通常の方法では、特にそれらの分子の量子エネルギー状態の分布に関して、適当に選択された伝導性をもつ2種の材料層を並置する。これら2種の材料の界面は光起電力ヘテロ接合と呼ばれる。通常の半導体理論では、PVヘテロ接合を形成する材料は、一般にn、もしくはドナー型、又はp、もしくはアクセプタ型のいずれかであるとして表示されている。ここでn型は大多数の担体種が電子であることを示す。これを、比較的自由なエネルギー状態の多数の電子をもつ材料と見ることもできるであろう。p型は大多数の担体種がホールであることを示す。このような材料には比較的自由なエネルギー状態の多くのホールがある。バックグラウンドの、すなわち光により生成したのではない大多数の担体種の濃度は主に、欠陥又は不純物による意図的でないドーピングにより決まる。不純物の種類と濃度は、HOMO−LUMOギャップと呼ばれる、最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)の間のギャップ内の、フェルミエネルギーの値又は準位を決める。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等しいエネルギー値により示される、分子の量子エネルギー状態の統計的占有を特徴づける。LUMOエネルギーに近いフェルミエネルギーは電子が主な担体であることを示唆している。HOMOエネルギーに近いフェルミエネルギーはホールが主な担体であることを示唆する。このように、フェルミエネルギーは通常の半導体の主な特性であり、典型的なPVヘテロ接合は従来p−n界面であった。
【0010】
用語「整流(rectifying)」は、とりわけ、界面が非対称な伝導性をもつ、すなわち界面が1方向に優先的に電子電荷を輸送する機能をもつことを示す。整流は通常、適当に選択された材料間のヘテロ接合で内部発生する電場に関連している。
【0011】
有機半導体の重要な性質は担体移動度である。移動度は、電場に応答して伝導性材料内を電荷担体が動くことができる容易さの程度を示す。自由担体濃度とは異なり、担体移動度は大部分、結晶の対称性及び周期性などの、有機材料の固有の性質により決まる。適当な対称性と周期性により、HOMO準位の量子波動関数の重なりが大きくなってホールの移動度が大きくなり、あるいはLUMO準位の重なりが大きくなって電子移動度が大きくなりうる。さらに、有機半導体、例えば3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)のドナー又はアクセプタ性は、比較的大きな担体移動度と相反することがある。例えば、化学的推論はPTCDAについてドナー、又はn型の特性を示唆するが、実験では、ホール移動度が電子移動度より数オーダー大きいことを示すので、ホール移動度が重要な因子である。この結果は、ドナー/アクセプタの規準による素子構成予測は、実際の素子性能により支持されないであろうということである。有機材料のこれら独特の電子特性のために、それらを「p型」もしくは「アクセプタ型」及び「n型」もしくは「ドナー型」として指定するよりもむしろ、「ホール輸送層」(HTL)あるいは「電子輸送層」(ETL)という言い方がしばしば用いられる。この命名法では、ETLは優先的に電子伝導性であり、HTLは優先的にホール輸送性であろう。
【0012】
典型的な従来技術の光起電力素子構成は有機2重層セルである。2重層セルでは、電荷分離は主に有機へテロ接合で起こる。内部発生する電位は、接触してヘテロ接合を形成する2種の材料間のHOMO−LUMOエネルギー差により決まる。HTLとETL間のHOMO−LUMOギャップのオフセットがHTL/ETL界面の回りに電場を発生する。
【0013】
有機PVセルには、従来のシリコン系素子に比べて多くの利点がありうる。有機PVセルは、軽量で、材料使用が経済的であり、低コスト基板、例えば柔軟なプラスチックフィルム上にそれを積層できる。しかし、有機PV素子は通常、量子収率(吸収されるフォトンと生成キャリア対、又は電磁放射と電気変換効率の比)が比較的小さく、1%以下の程度である。これは、部分的には、真性の光伝導過程の2次的な性質によると考えられている。すなわち、担体の生成には励起子の生成、拡散及びイオン化が必要とされる。しかし、励起子の拡散長(LD)は通常、光吸収長(〜500Å)よりすっと小さいので(LD〜50Å)、複数の又は多くの積層された界面をもち厚く、したがってまた抵抗性のセル、又は光吸収効率が低く薄いセルを用いるかの間で折り合いをつけることが求められる。ドープされた有機単結晶の使用、共役ポリマーのブレンド、及び励起子の拡散長が大きい材料の使用を含めて、効率を上げる様々な手法が例示されている。この問題は、さらに別の方向、すなわち様々なセル配置構成を用いること、例えば共堆積されたp及びn型顔料からなる混合層をさらにもつ3層セル、あるいはタンデム型セルの作製など、から取り組まれた。
【0014】
以前の文献に示されたように、タンデム型セルの開回路電圧(Voc)は、単セルのそれのほぼ2倍の大きさでありうる。M.Hiramoto、M.Suezaki、and M.Yokoyama、Chemistry Letters、327(1990)。残念なことに、得られた電力変換効率は単セルより小さかった。これは、前方のセルが後方のセルに来る光の強度を減衰させるという事実に帰せられた。したがって、後方セルにより発生する光電流は減少し、結果的に電力変換効率を限定する。さらなる推定は、タンデム型素子の全体としての厚さが2倍になることにより直列抵抗が増し、これもまた電力変換効率に影響を与えるであろうということであった。
【0015】
セルの性能を向上させるために、量子収率、したがってまた電力変換効率を上げることができる材料と素子構成が望ましい。我々はここで、厚さが最適化された複数の積層型サブセルを備え、電子障壁(blocking)層を用いる光起電力セルの作製により、大きな電力変換効率を実現した。本発明によれば、材料選択、素子構成及び素子加工技術の改善により、4%を上回る電力変換効率をもつ有機PVセルの製造が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献2】米国特許第6,097,147号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】M.Hiramoto、M.Suezaki、and M.Yokoyama、Chemistry Letters、327(1990)
【非特許文献2】L.A.A.Petterson et al.,J.Appl.Phys.86,487(1999)
【非特許文献3】Peumans et al.,Applied Physics Letters 2000,76,2650〜52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、効率が非常に改善された有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
効率の向上は材料選択、素子構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【0020】
本発明は、素子効率を向上させるように選択された材料を含む、有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。本発明の目的は、アノード層、ホール輸送(ドナー型)層、電子輸送(アクセプタ型)層、及びカソードを備える、効率が向上した素子を提供することである。フラーレン化合物が、本発明の素子のETLで使用するのに好ましい材料である。
【0021】
本発明はまた、素子効率を向上させる構成を備える、有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。本発明の目的は、アノード層とカソードの間に直列に積層された複数のサブセルをもつ有機PV素子を提供することである。それぞれのサブセルは、電子ドナー層、及び電子ドナー層と接する電子アクセプタ層を備える。サブセルは電子−ホール再結合ゾーンにより隔てられている。有利には、素子はまた1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)及び1つのカソード平滑化(smoothing)層を含む。
【0022】
本発明の目的は、光起電力性能が向上した有機PV素子を提供することである。この目的のために、本発明は、大きな外部量子効率で作動しうる有機PV素子を提供する。
【0023】
本発明の別の目的は、電荷担体をさらに効率的に光で生成するように、入射光の吸収を向上させた感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、向上したVoc及び向上したIscをもつ感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】タンデム型素子(2個のサブセルからなる)を示す。各サブセルは、銅フタロシアニン(CuPc)/3,4,8,10−ペリレンテトラカルボキシリック−ビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)ヘテロ接合を備える。タンデム型素子の2個のサブセルは、銀薄膜により隔てられている。後方のサブセルとAgカソードの間に、BCPからなる電子障壁層が示されている。
【図2】図1に示されるタンデム型素子に対して提案されるエネルギー準位の略図を示す。このセルの作動は次の通りである:光子が2個のサブセルの一方に吸収され、励起子を生成し、それは有機膜に拡散しうる。CuPc/PTCBI界面が、励起子分離の活性サイトを提供する。CuPc/PTCBI界面での、光により生成した励起子の解離により、ホール(白丸)はCuPc層に輸送され、他方、電子(黒丸)はPTCBI層に輸送される。前方のセルで生成したホールは、ITO電極により収集される。後方のセルで発生した電子はAgカソードにより収集される。後方セルからのホールと前方セルからの電子はサブセルの間のAg層に向けて輸送され、そこでそれらは再結合する。
【図3】最適化以前のタンデム型素子(白四角)と単セル素子(黒四角)の、1sunの照射下のI−V特性(電流密度と電圧)を示す。セル構成は次の通り:タンデム型素子−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/20ÅAg/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg、単セル素子−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg。
【図4】様々な厚さの前方セルをもつタンデム型セルの短絡電流密度(左の軸)と開回路電圧(右の軸)を示す。測定は1sunの照射下に実施される。Isc及びVocのいずれも、前方セルの厚さが220Åあたりに最大値があることに注意。これは前方セルの構造:110ÅCuPc/110ÅPTCBIに対応する。前方セルの厚さが220Åより大きい素子では、前方セルの光吸収の増加により、後方セルでの光強度が低下し、このために素子電流が限定されるので、Iscは低下する。220Åより厚さが小さい場合は、基板の粗さ、並びに有機層での島の形成により、Iscは減少する。
【図5】2種のタンデム型セルのI−V特性の比較を示す:1つはBCP層をもち(黒四角)、他方はもたない(白四角)。BCP層は後方セルに組み込まれる。測定は、1sunの照射下に実施される。BCP層をもつタンデム型セルで、光電流密度のかなりの増加を明らかに見ることができ、こうして、タンデム型PVセルに対するEBLの考え方の有用性が確認される。
【図6】タンデム型セルにより、AM1.5、1sunの照射下に発生する、短絡電流密度(Isc)と開回路電圧(Voc)のAg層厚さ依存性を示す。Vocは一定であるが、Iscは、Ag層の厚さの減少でかなり増加し、堆積されたAg層の最小厚さ(5Å)で、最大値に達する。Voc及びIscはAg層がない素子ではかなりの低下を示す。セルの性能のAg中間相の厚さへの認められた依存性は、前方及び後方サブセルの間に挿入された非常に少量のAgでさえ、それらの間の界面での再結合サイトとなるのに十分であることを示している。
【図7】タンデム型セルにより、AM1.5、1sunの照射下に発生する、短絡電流密度(Isc)と開回路電圧(Voc)のBCP層厚さ依存性を示す。Vocは相当に一定であるが、Iscは、BCP層の厚さへの依存性を示し、BCP層の厚さが約100から120Åで最大値に達する。Voc及びIscはBCP層がない素子ではかなりの低下を示す。
【図8】最適化されたタンデム型セル:ITO/PEDOT/110ÅCuPc/110ÅPTCBI/5ÅAg/150ÅCuPc/250ÅPTCBI/800ÅAgの、AM1.5の太陽光シミュレーションスペクトルでの様々な入射エネルギー密度に対する、I−V特性の第四象限(forth quardrant)を示す。約100mW/cm2が1sunの強度に相当する。
【図9】最適化されたタンデム型セル:ITO/PEDOT/110ÅCuPc/110ÅPTCBI/5ÅAg/150ÅCuPc/250ÅPTCBI/800ÅAgの、様々な入射光強度で測定されたI−V特性を示す。この最適化されたタンデム型素子の電力変換効率は、約0.5sunの光強度で約2.5%の最大値に達する。
【図10】ITO及びPEDOT:PSSアノードをもつ素子に対して提案されるエネルギーの略図を示す。電極(ITO、PEDOT:PSS、及びAl)のフェルミ準位エネルギーとCuPc、C60、及びBCPのHOMO及びLUMO準位が示されている。ITO及びPEDOT:PSSの仕事関数のデータは、T.M.Brown et al.、Appl.Phys.Lett.75、1679(1999)による。C60のイオン化ポテンシャルと電子親和力は、R.Mitsumoto et al.、J.Phys.Chem.A102、552(1998)からのものであり、またI.G.Hill et al.、J.Appl.Phys.86、4513(1999)が、CuPc及びBCPの場合に用いられた。電極の仕事関数及びHOMO準位は、紫外光電子分光法により得られたものであり、±0.1eVの誤差棒をもつ。LUMO準位はHOMO準位と光学的エネルギーギャップから見積もられた。
【図11】(上側の枠)アノードがITO(セルA、四角)、又はITO/PEDOT:PSS(セルB、丸)のいずれかである、アノード/200ÅCuPc/200ÅC60/150ÅBCP/800ÅAlの素子の電圧に対する電流密度のプロットを示す。白い記号は暗がりで取られたI−V曲線を表し、黒い記号は100mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの照射下に取られたI−V曲線を表す。下側の枠は、同じ素子についての電圧に対する光電流密度のプロットを示す(セルA:X印付き四角、セルB:X印付き丸)。光電流は、暗がりと照射下に取られたI−V曲線の間で相違がある。セルAの光電流をDV=+0.50Vだけ移動させたもの(セルA*、破線)もまた示されており、これはセルBの光電流曲線と重なっている。
【図12】ITO/PEDOT:PSS/50ÅCuPc/200ÅC60/100ÅBCP/800ÅAlの素子の、100mW/cm2のAM1.5Gの照射下における、電流−電圧特性を示す。PEDOT:PSS膜は、無処理(黒四角)、酸素プラズマで処理(10W、100mTorr、30s:白四角)あるいはArプラズマで処理(10W、100mTorr、30s:白丸)のいずれかであった。差込図は、ITO/PEDOT:PSS/200ÅCuPc/400ÅC60/BCP/800ÅAl素子の、100mW/cm2強度をもつAM1.5Gの照射下における短絡電流を、BCP層の厚さの関数として示す。データ点(白丸)を結ぶ滑らかな曲線は目のガイドである。
【図13】最適化された素子構造:ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlの、様々な強度のAM1.5Gの照射下における電流−電圧特性を示す。最大の電力出力が、照射強度>150mW/cm2で示され、ffへの直列抵抗の影響を例示している。
【図14】(a)ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlの層構造をもつ最適化された素子のηp、ff及びVocを、入射光エネルギーの関数として示す。(b)同じ素子の外部量子効率を波長の関数として示す。AM1.5Gの太陽光スペクトルに相当するフォトンフラックスもまた比較のために示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の前記及び他の特徴は、添付の図面を援用しながら行った、例示的実施形態の詳細な以下の説明により、より容易に明らかになるであろう。
【0027】
本発明は効率が非常に改善された有機系感光性オプトエレクトロニクス素子を提供する。効率の向上は材料選択、素子構成及び/又は素子加工技術の改善により達成される。
【0028】
本発明は、アノード層、ホール輸送(ドナー型)層、電子輸送(アクセプタ型)層、及びカソードを備える、効率が向上した有機PV素子を提供する。材料選択の改善により、効率が向上した素子を作製することができる。本発明の一実施形態では、ETLがフラーレン化合物を含む。有利には、素子はまた、1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)を含む。さらに、素子は電荷移動層もまた含んでいてもよい。
【0029】
本発明はまた素子効率が向上する素子構成を提供する。一実施形態では、本発明は、複数のサブセルからなる積層型感光性有機オプトエレクトロニクス素子を提供する。それぞれのサブセルはドナー−アクセプタのヘテロ接合を備える。サブセルは電子−ホール再結合ゾーンにより隔てられている。本発明の好ましい実施形態では、電子−ホール再結合ゾーンは不連続であってもよい極めて薄い金属層を含む。本発明の素子は1個又は複数のサブセルを含みうる。好ましくは、素子は2から5個のサブセルからなるであろう。真空蒸着、スピンコーティング、有機気相堆積、インクジェット印刷及び当技術分野で知られている他の方法を用いて、有機光伝導層を作製することができる。
【0030】
有機光伝導体の大きな体積抵抗により、これらの材料を比較的薄い膜で用いることが望ましい。しかし、薄い感光層は入射光の僅かな部分しか吸収しないであろうから、薄膜光伝導体の外部量子効率は厚膜光伝導体のそれより小さいであろう。しかし、適切な素子配置構成により、本明細書に記載されるもののような薄膜有機素子の外部量子効率を、さらに向上させることができる。光活性層は薄いので、吸収層の有効厚を増す手段を提供する素子配置構成が好ましいであろう。このような構成の1つは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,198,091号、6,198,092号、及び同時係属出願の第09/136,377号に記載される積層型素子である。本明細書では、用語「積層」、「積層型」、「マルチセクション」及び「マルチセル」は、1つ又は複数の電極又は電荷移動層により隔てられた、複数の光伝導材料層をもつオプトエレクトロニクス素子を表す。以後に、用語「サブセル」が用いられる場合、それは感光性有機オプトエレクトロニクス構造体を表す。サブセルが感光性オプトエレクトロニクス素子として単独で用いられる場合には、それは通常、一対の完全な電極、すなわち正極及び負極を含む。本明細書で開示されるように、いくつかの積層型構成では、連接するサブセルが、共通の、すなわち共有される電極又は電荷移動層を用いることが可能である。別の場合には、隣接するサブセルは共通の電極又は電荷移動層を共有しない。このように、サブセルには、各サブユニットがそれ独自の電極をもつか、あるいは電極又は電荷移動層を隣接するサブユニットと共有するかに関係なく、そのようなサブユニット構造体が含まれる。
【0031】
ヘテロ接合セルの開回路電圧は、電極材料にほとんど依存せず、有機薄膜間のHOMO−LUMOギャップエネルギーオフセット値、並びにそれらの不純物ドーピング濃度により決まる。したがって、ITO/有機2重層/金属のセル、並びに金属/有機2重層/金属のセルの性能は、有機2重層材料のパラメータにより主に影響されるであろうと予想することができる。次々と2つ以上のヘテロ接合を堆積すると、前方のセルのアクセプタ層と後方セルのドナー層の間に逆ヘテロ接合を形成することになるであろう。この逆へテロ接合の形成を防ぐために、電子−ホール再結合ゾーンが個々のサブセルの間に挿入される。電子−ホール再結合ゾーンにより、前方のセルから侵入する電子と後方のセルからのホールとの再結合のためのスペースが提供される。
【0032】
直列に電気的に接続されたサブセルからなるPV素子は、より高い電圧の素子となる。サブセルのヘテロ接合となるドナー材料とアクセプタ材料はいくつかのサブセルでは同じであってもよく、あるいはドナー及びアクセプタ材料は特定の素子のサブセルでは異なっていてもよい。素子の各サブセルが「バランスされている」こと、すなわち各サブセルにより発生する電流の量がほぼ等しいことが重要である。各サブセルが、約10%未満の偏差で同じ電流を発生することが好ましい。電流のバランスはサブセルの個々の層の厚さを調節することにより、またサブセルの個々の層を構成する材料の選択により達成される。例えば、入射光が一方向にだけ透過する場合、積層型サブセルの厚さは、入射光に直接最も曝される最外層のサブセルを最も薄いサブセルとして、増加する。別法として、サブセルが反射性表面(例えば、金属カソード)上に重なっている場合、元々の方向と、反射による方向から各サブセルに入る放射の総計に合わせて、個々のサブセルの厚さを調節することができる。我々は、素子のサブセルをバランスさせることにより、最高の性能を達成できるということを見出した。
【0033】
吸収以外に、励起子拡散長は、層の厚さを選択する場合に考慮すべき重要な点である。吸収により生み出される励起子は、ドナー−アクセプタ界面に十分近くなければならない。光により生成する励起子は、電荷分離が起こりうるために、対再結合の前にドナー−アクセプタ界面に拡散しなければならない。吸収と拡散のいずれも、それらはいずれも距離の指数関数であるから、容易にモデル化して最適なセルの厚さを実現できる。
【0034】
複数のサブセルからなる素子により生成する電流は、「直列に接続された」サブセルにより発生する電流の最小のものに等しい。個々のサブセルの層の厚さが、励起子拡散長Ldよりずっと大きい場合、電流は光の強度に比例し、これは前方のサブセルにより減衰するので、電流は最後部のサブセルにより限定される。減衰要因を減らすためには、一般的に言えば、個々の層の厚さが活性領域の広がりの程度、すなわち、〜30Åないし〜100ÅであるLdの程度になるまで、前方及び後方ヘテロ接合界面の間の距離を縮めることができる。
【0035】
本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子は、太陽電池、光検出器又は光電池として機能しうる。本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子が太陽電池として機能する時には常に、光伝導性有機層に用いられる材料及びその厚さを、例えば、素子の外部量子効率を最適化するように選択するとよい。本発明の感光性有機オプトエレクトロニクス素子が光検出器又は光電池として機能する時には常に、光伝導性有機層に用いられる材料及びその厚さを、例えば、素子の感度を望みのスペクトル領域に対して最大化するように選択するとよい。
【0036】
具体的には、個々の層の厚さを調節して、積層型素子のサブセルの全数を選択することとの組合せで、1個のセルで可能な外部量子効率より大きな外部量子効率が得られるように、素子の外部量子効率を最大化することができる。本明細書では、用語「外部量子効率」は、全入射光を感光性オプトエレクトロニクス素子が電力に変換できる効率を表し、用語「内部量子効率」と区別され、本明細書では後者は、吸収された放射を感光性オプトエレクトロニクス素子が電力に変換できる効率を表す。これらの用語を用いると、所与の1組の周囲放射条件下で、個々のサブセルで実現しうる最大の内部量子効率に近い外部量子効率を、このような周囲条件下で達成するように、積層型感光性オプトエレクトロニクス素子を設計することができる。
【0037】
層の厚さを選択する際に用いうるいくつかのガイドラインを考慮することにより、この結果を実現できる。ほとんどの励起子の解離は界面で起こるであろうと考えられているので、励起子拡散長LDは層の厚さLより大きいか同程度であることが望ましい。LDがLより小さい場合、多くの励起子は解離の前に再結合するであろう。太陽電池に入射するほとんどすべての放射が吸収されて励起子を生成するように、光伝導層の全厚さが電磁放射吸収長、1/α(αは吸収係数である)の程度であることがさらに望ましい。さらに、有機半導体の大きな体積抵抗率による余計な直列抵抗を回避できるように、光伝導層の厚さはできるだけ薄くすべきである。
【0038】
したがって、これらの競合するガイドラインでは、感光性オプトエレクトロニクスセルの光伝導性有機層の厚さを選択する際には本質的に折り合いをつけることが求められる。このように、一方では、最大量の入射光を吸収するために、吸収長と同程度であるかより大きい厚さが望ましい(単セルの素子では)。他方、光伝導層の厚さが増加すると、2つの望ましくない効果が増大する。1つは有機半導体の大きな直列抵抗によるものであり、有機層の厚さの増加により、素子抵抗が増し効率が低下する。別の望ましくない効果は、光伝導層の厚さの増加により、電荷分離界面の有効場から離れた位置で励起子が生成する可能性が大きくなることであり、対再結合の可能性が増大する結果になり、やはり効率が低下する。したがって、素子全体としての量子効率を大きくするような仕方で、これらの競合する効果をバランスさせる素子構成が望ましい。複数の積層型サブセルを用いることにより、光伝導性有機層を非常に薄くすることができる。
【0039】
具体的には、前記の競合する効果、すなわち、素子の光伝導性材料の吸収長、これらの材料内の励起子拡散長、これらの励起子の光電流発生効率、及びこれらの材料の抵抗を考慮することにより、与えられた1組の周囲の放射条件で、これら特定の材料の最大の内部量子効率が得られるように、個々のセルの層の厚さを調節することができる。励起子の拡散長は比較的小さい値を持つ傾向があり、また典型的な光伝導性材料の抵抗は比較的大きい傾向があるので、最大の内部量子効率を達成することに関しては、最適なサブセルは通常、比較的薄い素子であろう。しかし、このような光伝導性有機材料の吸収長は励起子拡散長に比べて相対的に大きい傾向があるので、このように最適な薄い感光性オプトエレクトロニクスサブセルは、最大の内部量子効率をもちうるが、入射光の僅かな部分だけがこのように最適なサブセルにより吸収されるであろうから、比較的小さな外部量子効率をもつ傾向があるであろう。
【0040】
個々のサブセルの外部量子効率を向上させるために、かなり多量の入射光を吸収するように、光伝導性有機層の厚さを大きくすることができる。追加で吸収された放射を電力に変換する内部量子効率は、その最適なサブセルの厚さを超えて厚さを増すにつれて、徐々に低下するであろうが、サブセルの外部量子効率は、吸収のさらなる増加が外部量子効率をまったく増加させえないと思われる特定の厚さに達するまでずっと増加するであろう。光で生成した励起子の拡散長をはるかに超えて光伝導層の厚さが増加すると、サブセルの内部量子効率は急速に低下する傾向があるので、サブセルの最大外部量子効率は、より厚いサブセルの厚さが実質的にすべての入射光を吸収するのに十分となるかなり手前で、達成されるであろう。このように、単一の比較的厚いセルによるこの手法を用いて達成できる最大外部量子効率は、サブセルの厚さが最大内部量子効率を実現するのに望ましいものよりかなり大きいという事実によってだけでなく、さらに、このようなより厚いサブセルもまだ入射光全部を吸収できないという事実によっても限定されている。したがって、これらの2つの効果により、より厚いサブセルの最大外部量子効率は、最適の厚さの最適なサブセルで達成されうる最大の内部量子効率よりかなり小さいと予想されるであろう。
【0041】
個々のサブセルの厚さが活性領域の厚さより小さい場合、サブセルの厚さをさらに薄くすることにより吸収が減少し、このために効率が直線的に減少する。各サブセルに電流バランスがあるので、本発明の素子のサブセルの最大数は、このバランスがなお可能なセルの厚さに相当する。積層された各サブセルは、そのセルの活性領域と同じ厚さであり、内部深くに積層されたセルがバランス規準に合致するような量の電流を依然として発生できるべきである。
【0042】
積層型素子の各サブセルは、ヘテロ接合をなすアクセプタ材料及びドナー材料を含む。ドナー材料はアクセプタ材料のそれより小さいイオン化ポテンシャルをもつ。さらに、ドナー層のイオン化ポテンシャルHOMO/LUMOギャップは、アクセプタ層のそれより小さくなければならない。一般に、ドナー又はアクセプタ層を構成する材料は、可能な最長の励起子拡散長をもつべきであり、したがってまた好ましくは、平坦な芳香族分子のように、分子を規則的に積層するのに向いている材料である。
【0043】
アクセプタ材料は、例えば、ペリレン、ナフタレン、フラーレン又はナノチューブからなりうる。好ましいアクセプタ材料は3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)である。
【0044】
別法として、アクセプタ層はフラーレン材料からなっていてもよい。本発明は、フラーレン、例えばC60を含むETLを組み込み、これまでに例示された有機薄膜PVセルを超える、実質的に向上した電力変換効率を示す素子を提供する。結果の改善は主に、C60で77±10Å(L.A.A.Petterson et al.、J.Appl.Phys.86、487(1999))程度のフラーレンの大きな励起子拡散長の結果であると考えられている。これを、PTCBIの30±3Åの励起子拡散長と比較することができる。さらに、フラーレン薄膜中の電子伝導により大きな電圧降下は生じない。
【0045】
本発明で有用なフラーレンは広い範囲の大きさ(分子あたりの炭素原子の数)をもちうる。本明細書では、フラーレンという用語には、バックミンスターフラーレン(C60)及び関連する「球状」フラーレン並びにカーボンナノチューブを含めて、炭素単体の様々なかご状分子が含まれる。例えばC20〜C1000の範囲の、当技術分野において知られているものから、フラーレンを選択することができる。好ましくは、フラーレンはC60からC96の範囲から選択される。最も好ましいフラーレンはC60又はC70である。修飾されたフラーレンがアクセプタ型であり電子移動度特性を保持するならば、化学的に修飾されたフラーレンを用いることも可能である。
【0046】
アクセプタ層に隣接して、有機ドナー型材料の層がある。アクセプタ層とドナー層の境界は、電場を内部に生成するヘテロ接合を形成する。ドナー層に好ましい材料は、フタロシアニン又はポルフィリン、あるいはこれらの誘導体又は遷移金属錯体である。銅フタロシアニン(CuPc)が特に好ましいドナー材料である。
【0047】
電子−ホール再結合ゾーンにより積層型素子の個々のサブセルを分離することができる。この層は前方のセルのアクセプタ層と後方のセルのドナー層の間の逆ヘテロ接合の形成を防ぐ役目をする。個々のサブセルの間の層は、前方のサブセルから入る電子と後方のサブセルからのホールが再結合するゾーンを提供する。前方のサブセルから入る電子と後方のサブセルからのホールの効率的な再結合は、光誘起電流を積層型素子で起こそうとする場合に必要である。好ましくは、電子−ホール再結合ゾーンは薄い金属層を含む。金属層は、光が後方の(複数の)セルに到達できるように、十分薄くて半透明でなければならない。この目的のために、金属層の厚さは約20Åより薄いことが好ましい。金属膜が約5Åの厚さであると特に好ましい。これらの極めて薄い金属膜(〜5Å)は連続膜でなく、むしろ孤立した金属ナノ粒子からなると考えられている。驚くべきことに、この極めて薄い金属層は連続ではないが、それは依然として電子−ホール再結合層として有効である。この層に用いられる好ましい金属には、Ag、Li、LiF、Al、Ti、及びSnが含まれる。銀がこの層に特に好ましい金属である。金は、それがギャップ中間(mid−gap)状態を導入するとは知られていないので、この層にとってよい選択であるとは考えられていない。別の実施形態では、電子−ホール再結合ゾーンは、電子−ホール再結合が速くなる、電子活性欠陥領域を含む。この欠陥は、例えば、加熱、制御された不純物の導入、あるいは関連の有機層堆積中のエネルギー粒子への暴露よる、この界面の限定された損傷により導入されうる。エネルギー粒子は、例えば、熱的にあるいはRFプラズマにより励起されうる。
【0048】
感光性オプトエレクトロニクス素子で用いられる電極、又は接点は、いずれも参照により本明細書に組み込まれる同時係属出願第09/136,342号に示されるように、考慮すべき重要な点である。本明細書では、用語「電極」及び「接点」は、光により生成した電力を外部回路に送る、あるいは素子にバイアス電圧をかけるための媒体となる層を表す。すなわち、電極、又は接点は、感光性有機オプトエレクトロニクス素子の光伝導活性領域と、外部回路へ、又はそこから電荷担体を輸送する配線、リード線、トレース又は他の手段との間のインターフェースとなる。感光性オプトエレクトロニクス素子では、素子外部から最大量の周囲の電磁放射を光伝導活性内部領域に受入れられることが望ましい。すなわち、電磁放射は(複数の)光伝導層に到達しなければならず、そこでそれは光伝導性吸収により電気に変換されうる。このことにより、電気的接点の少なくとも1つが入射電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射すべきであることが必然的に求められる。すなわち、このような接点は実質的に透明でなければならない。対向電極は、吸収されずにセルを通過した光が反射されてセルを通るように、反射性の材料であってよい。本明細書では、1つの材料層あるいは異なる材料の連続する数層は、その1つの層又は複数の層が、少なくとも50%の周囲の電磁放射を、関連する波長で、その1つの層又は複数の層を透過させる場合に、「透明」であると言われる。同様に、関連する波長で周囲の電磁放射を、50%より少ないが、いくらか透過させる層は、「半透明」であると言われる。
【0049】
電極は、好ましくは、金属又は「金属代替物」からなる。本明細書では、用語「金属」は、単体金属からなる材料、例えばMg、そしてまた2種以上の単体金属からなる材料である金属合金、例えばMg:Agと表記され、MgとAgを合わせたもの、の両方を含めて使用される。ここで、用語「金属代替物」は、通常の定義の範囲内では金属でないが、特定の適切な用途で望まれる、金属のような性質をもつ材料を表す。電極及び電荷移動層に広く用いられている金属代替物には、ドープされたワイドバンドギャップ半導体、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、及び亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)などの透明導電性酸化物が含まれる。特に、ITOは、多量にドープされた縮退n+半導体で、それを約3900Åより大きな波長に対して透明にする、約3.2eVの光学的バンドギャップをもつ。別の適切な金属代替物は、透明導電性ポリマーのポリアニリン(PANI)及びその化学的近縁物である。広範な非金属材料から金属代替物をさらに選択することができ、ここで、用語「非金属」は、化合していない形態で金属をその材料が含まないという条件で、広範な材料を含むことを表そうとするものである。金属が、単独で、あるいは合金として1種又は複数の他の金属との組合せで、化合していない形で存在する場合、その金属は、別の言い方では、その金属の形態で存在している、あるいは「遊離金属」であると言われる。したがって、本発明の金属代替物電極は、「無金属」と言われることがあり、ここで用語「無金属」は、化合していない形態での金属を含まない材料を含むということを明示的に表している。遊離金属は通常、金属格子内を電子伝導帯で自由に動ける大量の価電子から生じる金属結合の形態をもつ。一方、金属代替物は、金属構成成分を含みうるが、それらはいくつかの根拠で「非金属」である。それらは、純粋な遊離金属でもないし、またそれらは遊離金属の合金でもない。金属が金属の形態で存在する場合、電子伝導帯が、他の金属の性質の中でもとりわけ、電気伝導性を大きくしまた光反射率を大きくする傾向がある。
【0050】
本発明の実施形態では、感光性オプトエレクトロニクス素子の1つ又は複数の透明電極として、Parthasarathy他の米国特許出願第09/054,707号(「Parthasarathy‘707」)に開示されるような、透明性の高い、非金属、低抵抗カソード、あるいはForrest他の米国特許第5,703,436号(「Forrest‘436」)に開示されるような、高効率、低抵抗金属/非金属化合物カソードが含まれ、両特許は参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、それぞれの型のカソードは、透明性の高い、非金属、低抵抗カソードの形成では、有機材料、例えば銅フタロシアニン(CuPc)上に、あるいは高効率、低抵抗金属/非金属化合物カソードの形成では、薄いMg:Ag層上に、スパッタリングでITO層を堆積させるステップを含む製造プロセスで調製される。Parthasarathy‘707は、ITO層がその上に堆積された有機層でなく、有機層がその上に堆積されたITO層は、効率的なカソードとして機能しないことを開示している。
【0051】
本明細書では、用語「カソード」は、次のように用いられる。周囲の放射を受け、抵抗型負荷に接続され、外からの印加電圧がない、非積層型PV素子又は積層型PV素子の単一ユニット、例えば太陽電池では、電子は隣接する光伝導性材料からカソードに移動する。同様に、本明細書では、用語「アノード」は、照射を受ける太陽電池では、ホールは、隣接する光伝導性材料からアノードに移動する、というように用いられる。なお、ホールは、反対方向に動く電子と等価である。これらの用語が本明細書で用いられる時、アノード及びカソードは電極又は電荷移動層であることに注意されたい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、積層された有機層は、米国特許第6,097,147号、Peumans et al.、Applied Physics Letters 2000、76、2650〜52、及び1999年11月26日に出願された同時係属出願第09/449,801号(参照によりいずれも本明細書に組み込まれる)に記載される、1つ又は複数の励起子障壁層(EBL)を含む。より大きな内部及び外部量子効率が、光で生成した励起子を解離界面の近くの領域に閉じ込めて、感光性有機物/電極の界面での励起子の寄生(parasitic)消光を防ぐEBLを含めることにより達成された。励起子が拡散しうる空間を限定すること以外に、EBLはまた、電極を堆積中に導入される物質に対する拡散バリアとしても機能しうる。ある状況では、EBLを、放っておくと有機PV素子を機能しなくするかもしれないピンホール又は短絡欠陥を埋めるのに十分な厚さにすることができる。したがって、EBLは、電極が有機材料上に堆積される時に生じる損傷から脆弱な有機層を保護する助けとなりうる。
【0053】
EBLは、隣接する有機半導体のLUMO−HOMOエネルギーギャップより実質的に大きなLUMO−HOMOエネルギーギャップをもつことから、励起子の障壁となる性質を得ていると考えられ、EBLは、隣接する有機半導体から励起子が流入しないようにしている。したがって、閉じ込められた励起子は、エネルギーのことを考えるとEBLに存在することを禁じられている。EBLが励起子の障壁となることは望ましいが、EBLがすべての電荷の障壁となることは望ましくない。しかし、隣接するエネルギー準位の性質により、EBLは必然的に一方の符号の電荷担体の障壁となるであろう。設計により、EBLは、2つの層、通常は有機感光性半導体層と電極又は電荷移動層の間に常に存在するであろう。隣接する電極又は電荷移動層は、ここではカソード又はアノードのいずれかということになろう。したがって、素子の所定の位置のEBL用材料は、望みの符号の電荷が電極又は電荷移動層へ輸送されるのを妨げないように選択されるであろう。適切なエネルギー準位の整合により、電荷輸送に対する障壁は存在せず、直列抵抗を増加させない。例えば、カソード側のEBLとして用いられる材料が、電子に対する望ましくない障壁をできるだけ小さくするように、隣接するETL材料のLUMO準位によく釣り合ったLUMO準位をもつことが望ましい。
【0054】
材料が励起子の障壁となる性質は、そのHOMO−LUMOエネルギーギャップに固有の性質ではないことを理解すべきである。ある材料が励起子の障壁体(blocker)として機能するかどうかは、隣接する有機感光性材料の相対的なHOMO及びLUMO準位に依存する。したがって、それが使用される素子に関係なく、単独で一群の化合物を励起子障壁体と認定することは不可能である。しかし、本明細書の教示により、当分野の技術者は、ある材料が、有機PV素子を構成する1組の選択された材料と共に用いられる時、励起子障壁層として機能するかどうかを識別できるであろう。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、EBLは、アクセプタ層と(後方のサブセルの)カソードの間に位置する。EBLとして好ましい材料には、約3.5eVのLUMO−HOMO分離があると考えられる2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン又はBCPとも呼ばれる)、あるいはビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリノアート)−アルミニウム(III)フェノラート(Alq2OPH)が含まれる。BCPは、隣接するアクセプタ層からカソードへ電子を容易に輸送できる効果的な励起子障壁体である。通常、EBLは前方のサブセルには含まれないであろう。電子−ホール再結合ゾーンに隣接してEBLを配置することは、電荷担体が再結合ゾーンに達することを妨げるのでセルの効率を低下させうる。
【0056】
3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックジイミド(PTCDI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリック−ビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、及びこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、適当なドーパントでEBL層をドープすることができる。本発明の素子に堆積された時、BCPはアモルファスであると考えられる。本発明のアモルファスと思われるBCP励起子障壁層は膜の再結晶を示し、これは高強度の光のもとでは特に速い。結果としての多結晶材料へのモルフォロジーの変化により、短絡、空隙又は電極材料の侵入などの起こりうる欠陥をもつ品質の劣る膜になる。こうして、この効果を示す、BCPなどのいくつかのEBL材料を、適当な、比較的大きく安定な分子でドープすることがEBL構造体を安定化して性能を低下させるモルフォロジー変化を防ぐことが見出された。さらに、所定の素子において電子を輸送するEBLを、そのEBLのLUMOに近いLUMOエネルギー準位をもつ材料でドープすると、空間電荷を蓄積し性能を低下させるかもしれない電子トラップを確実に形成させないようにする助けとなるであろうということが理解されるべきである。さらに、比較的低濃度のドーピングで、孤立したドーパントサイトでの励起子生成を最小化すべきであることも理解されるべきである。このような励起子は周囲のEBL材料により拡散することを効果的に禁じられているので、このような吸収は素子の光変換効率を低下させる。
【0057】
代表的実施形態にはまた、透明な電荷移動層が含まれうる。本明細書では、電荷移動層は常にではないが無機物であることが多く、また、電荷移動層は通常光伝導性でないように選択されるという事実により、電荷移動層はETL及びHTL層と区別される。本明細書では、用語「電荷移動層」は、電極に似ているが、電荷移動層は電荷担体をオプトエレクトロニクス素子の1つのサブセクションから隣接するサブセクションに送るだけであるという点において電極と異なる層を表すために用いられる。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態では、電荷移動層はアノードとドナー層の間に位置する。この層の好ましい材料には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)の膜が含まれる。PEDOT:PSS層はアノード平滑化層として機能する。アノード(ITO)とドナー層(CuPc)の間にPEDOT:PSS層を導入すると、製造歩留りが100%近くになる。我々は、これは、スピンコートされたPEDOT:PSS膜がITOを平坦化できることによるとするが、その粗い表面は、もしそうしなければ、薄い分子膜を貫く短絡を生じうるであろう。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、次の層を堆積させる前に、1つ又は複数の層をプラズマで処理してもよい。例えば、温和なアルゴン又は酸素プラズマでこれらの層を処理することができる。この処理は、それが直列抵抗を低下させるので有益である。次の層の堆積前に、温和なプラズマ処理をPEDOT:PSS層に行うことには、特に利点がある。
【0060】
素子の効率を増すために、光子に薄い吸収層を何回も通過させる集光器構成を利用することができる。「集光器付き多重反射高効率感光性オプトエレクトロニクス素子(Highly Efficient Multiple Reflection Photosensitive Optoelectronic Device with Optical Concentrator)」という名称の、同時係属の米国特許出願第09/449,800号(以後、「‘800出願」)は、吸収を大きくし、集光効率を高める集光器を用いるための光学的配置構成を最適化することにより感光性オプトエレクトロニクス素子の光変換効率を上げる、構造設計を用いてこの問題を扱っており、参照により本明細書に組み込まれる。感光性素子のこのような配置構成は、入射光を反射性キャビティ又は導波路構造体内に閉じ込めて、光伝導性材料の薄膜を通しての多重反射により光をリサイクルすることで、材料を通しての光の経路を実質的に増大させる。したがって、‘800出願に開示される配置構成は、体積抵抗を実質的に増加させることなく素子の外部量子効率を向上させる。このような素子の配置構成に含まれるのは、第1反射層;光学的マイクロキャビティ干渉効果を避けるために入射光の光学的コヒーレンス長よりすべての寸法で大きくあるべきである透明絶縁層;透明絶縁層に隣接する透明第1電極層;透明電極に隣接する感光性ヘテロ構造;及びやはり反射性である第2電極;である。
【0061】
‘800出願はまた、反射表面の一方、あるいは効果的に集められ、感光性材料を含むキャビティに送られる電磁放射の量を増やすために、ウィンストン(Winston)集光器のような集光器に連結する導波路素子の外側の側面のいずれかの開口部を開示する。例示的な非結像(non−imaging)集光器には、切形(truncated)放物面などの円錐形集光器、及びトラフ型(trough−shaped)集光器が含まれる。円錐形に関しては、直径d1の入口円形孔に±θmax(受光角の半分)内で入る放射を素子は集め、放射を直径d2のより小さい出口孔に向け、損失は無視でき、いわゆる熱力学的限界に近づけることができる。この限界は所定の視野角での許される最大集光である。円錐形集光器は、トラフ型集光器より大きな集光比を与えるが、受光角がより小さいために、日中太陽に追随させる必要がある。(本明細書に組み込まれる、W.T.WelfordとR.Winstonによる「高集光非結像光学系(High Collection Nonimaging Optics)」(以後は、「WelfordとWinston」)、pp172〜175、Academic Press、1989による)。
【0062】
本発明の例示的実施形態の素子が組み立てられ、実施例のデータが記録された。本発明の以下の実施例は例示であり本発明の限定ではない。
【実施例1】
【0063】
例示的実施形態を作製する。前洗浄したITOガラス基板上に、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT)の300Åの厚い層でスピンコートする。スピンコーティングを4000rpmで40秒間実施し、次に減圧下1時間110℃で30分乾燥する。有機材料をトレイン(train)昇華により精製する。PVセルを有機材料の熱蒸発(室温、10−6Torr、堆積速度1.5〜2Å/sec)により、ITO/PEDOTガラス上に次の順序で形成する:ドナー−アクセプタ−金属−ドナー−アクセプタ−金属。個々の層の厚さを、例えば結晶振動子膜厚モニタの使用により制御する。銅フタロシアニン、CuPcをドナーとして用い、ペリレンテトラカルボキシリックビス−ベンゾイミダゾール(PTCBI)をアクセプタとして用いる。Agを、前方と後方のセルの間の薄い(約5〜20Å)層として、また頂部金属電極材料として用いる。頂部電極(800Åの厚さ)を、直径1mmの円形のシャドウマスクを通して堆積させる。
【0064】
電力変換効率を、AM1.5の白色光を与える太陽シュミレータの照射下に空気中で測定した。光の強度を減光フィルタを用いて変えた。1sunの入射光強度での単一(黒四角)及びタンデム型(白四角)セルの電流−電圧(I−V)特性を図1に示す。セル構造は次の通り:タンデム型−基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/20ÅAg/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg、標準の単セル基板/300ÅCuPc/300ÅPTCBI/800ÅAg。タンデム型セルにより発生した開回路電圧は単セルに比べて2倍である。タンデム型セルによる光電圧は2倍であるが、タンデム型セルの短絡電流は単セルのそれよりかなり低い。
【0065】
我々は、PV素子の基板として、真新しいITOガラスとPEDOTで被覆されたITOとを比較した。最も薄い素子(個々の層の厚さは約100Åより薄い)では、予め堆積させたPEDOT層が、恐らくITOに比べて表面粗さが少ないために、短絡の発生を防ぐという結果になった。実際に、AFM測定により、粗さの値がPEDOTと無被覆ITOでそれぞれ、約20Å及び45Åであることが明らかになった。
【0066】
300Å未満の層の厚さをもつ素子では、Vocは、PEDOT基板上に調製された素子の方がいくらか大きいが、短絡電流(Isc)はいくらか小さい。PEDOT層を含む素子により生じた光電圧の増加は、CuPc/C60素子で特に明らかであり、この光電圧は、エネルギーバンドの不適切な組合せと電極の仕事関数の差の両方に原因がありうることを示している。
【0067】
薄い膜と対照的に、約350Å以上の層の厚さをもつ素子では、無被覆ITO基板の使用には利点がある。これは、このような基板では基板のモルフォロジーの重要性が低下し、追加のPEDOT層は寄生的吸収並びに付加的な直列抵抗の原因となる。
【0068】
励起子障壁層(EBL)の考え方の助けで、さらなる改善をすることができる。アクセプタ(PTCBI)及び電子収集電極の間に、バンドギャップの大きい電子伝導層(BCPなど)を組み込むことで、外部量子効率が増加する。これは、励起子の拡散と続いての電極での励起子の消光をPCBが防げることに関係している。タンデム型素子でこの考え方を試すために、我々はBCP層をもつPVセルともたないものを調製した。図5は後方のセルに組み込まれた100ÅのBCP層をもつタンデム型素子(黒四角)ともたないもの(白四角)のI−V特性を示す。この特性は1sunの照射下に測定された。光電流密度のかなりの増加が明らかに見られ、タンデム型PVセルにEBLの考え方を応用して有益であることが確認される。
【0069】
後方セルの一部分として(すなわち厚いAg電極の前に)BCP層を含めることには利点があるように思えるが、前方セルの一部分として(すなわち、薄いAg中間層の前に)それを含めると、素子の能力は急激に低下する。これはBCPの輸送サイトが、厚いAg層の堆積の派生的結果として表れることを示している。
【実施例2】
【0070】
例示的実施形態を作製する。前洗浄したガラス基板上に、〜1400Åの厚さの透明導電性インジウム−スズ酸化物(ITO)アノード(40Ω/sqのシート抵抗をもつ)で被覆する。溶剤で洗浄後、基板をO2プラズマ(50W、100mTorr、5分)で処理する。特に指摘しなければ、次にこのITO膜に、4000rpmで40秒間、溶液をスピンコートし、後で90℃で15分間、真空乾燥することにより、(320±10)Åの厚さのPEDOT:PSSの膜で被覆する。商品として有機材料を入手でき、温度勾配昇華を用いて精製する。膜を、室温、高真空(〜1×10−6Torr)で、次の順序で成長させる:50Åから400Åの厚さのドナー性の銅フタロシアニン(CuPc)膜、次に100Åから400Åの厚さのアクセプタ性C60膜。次に、50Åから400Åの厚さのバソクプロイン(BCP)を堆積させる。カソードはAlからなり、1mmの直径の円形孔をもつシャドウマスクを通して熱蒸発により堆積させる。電力変換効率を、AM1.5G(エアマス1.5、全天)スペクトルを生成するように設定された太陽シュミレータによる照射下に測定する。強度は較正された広帯域光出力計を用いて測定し、減光フィルタを用いてそれを変える。量子効率を、波長可変単色光を用いて、50%のデューティサイクルで、〜400Hzで測定する。
【0071】
図11で、我々は、別の基板に同時に成長させた、アノード/200ÅCuPc/200ÅC60/150ÅBCP/800ÅAlという構造の2個のセルの、暗がり(白い記号)と太陽光照射下(黒い記号)での電流−電圧(I−V、上側の枠)及び光電流−電圧(下側の枠)特性を比較する。セルA(四角)を無被覆ITO上に成長させ、一方セルB(丸)では、ITOをPEDOT:PSSで予め被覆した。PEDOT:PSS層の導入により、順方向バイアスにより〜10のファクタだけ暗電流(白丸)が増加する。対照的に、逆方向バイアスをかけた暗電流は不変である。さらに、PEDOT:PSSの存在はまた、光電流特性を、電圧ΔV=(0.50±0.05)Vだけ移動させ、PEDOT:PSSホール注入層をもつ場合ともたない場合のポリマー発光ダイオードについての最近の電界吸収(electroabsorption)の研究に合致している、T.M.Brown et al.、Appl.Phys.Lett.75、1679(1999)。これらの変化は、フェルミ準位を0.50VだけCuPcの最高占有分子軌道(HOMO)に近づける、ITOのそれに比べて大きいPEDOT:PSSの仕事関数により説明される。この結果、ホール注入に対するより小さい障壁のために、CuPc層への電流注入が増加し、したがってまた順方向バイアスのもとでの暗電流が増加する。これはまた電荷を分離させる内部発生静電ポテンシャル(Vbi)を0.50Vだけ増加させて(図10)、光により生成した電荷の収集を大きな正の電圧で向上させ、したがってまた電力変換効率を増加させる。
【0072】
図12は、PEDOT:PSS層の温和なプラズマ処理(10W、30s、100mTorr、100sccmAr又はO2)が、ITO/PEDOT:PSS/50ÅCuPc/200ÅC60/100ÅBCP/800ÅAlの層構造をもつ素子のI−V特性に及ぼす、400mW/cm2(4sun)の強度のAM1.5Gの太陽光照射下での効果を示す。フィル因子(ff)は、無処理PEDOT:PSSでの0.36から、O2での0.41、及びAr処理PEDOT:PSS膜での0.49まで増加する。処理は明らかにPEDOT:PSS層の表面電子構造を変化させて、担体収集性が向上する。我々はまた、我々のPVセルにPEDOT:PSSを導入すると、製造歩留りが100%(すなわち、様々な厚さの、>50個の測定された素子で、短絡は認められなかった)に近くになることに注目している。これが実現する理由は、スピンコートしたPEDOT:PSS膜が、粗面のままであれば分子薄膜を介して短絡を起こすと思われるITOを平坦化することができることであると考えている。
【0073】
イオン化ポテンシャルと光学的エネルギーギャップの差から見積もられたC60の最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギーは、BCPのそれより(1.0±0.2)eVだけ下にある(図10)。光学的エネルギーギャップはLUMO準位の位置について間接的な見積もりを与えるに過ぎないという事実にもかかわらず、光で生成された電子はそれでもやはり、C60のLUMOから、BCPのLUMOにより形成された障壁を越えて、それ程の電圧降下又は直列抵抗を招くことなく、カソードに輸送されなければならない。このことは、BCPを横切る電子輸送は、金属カソードの堆積中に誘起される、LUMOより低い状態を通じて主に起こることを示唆する。この証拠は図11の差込図に与えられており、それは、ITO/PEDOT:PSS/200ÅCuPc/400ÅC60/BCP/Al素子の、100mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの照射のもとでの短絡電流密度(Jsc)を、BCP層の厚さの関数として示している。Jscの始めの増加は、活性層が金属カソードから離れるときの、吸収効率の増加による。次に、JscはBCPの厚さが>150Åで指数関数的に急に低下する。このことは、高温金属原子の熱化(thermalization)により誘起される、BCPのLUMOより低い欠陥状態が、C60層からカソードへの電子輸送を促進することを示唆する。これらの状態は、光キャリアの生成速度を超える速度で担体を取り出すのに十分な密度で、BCPの内部〜150Åの距離にわたって生成する。
【0074】
図13に、我々は、最適化素子構造:ITO/PEDOT:PSS(Ar処理)/200ÅCuPc/400ÅC60/120ÅBCP/1000ÅAlのI−V特性を、入射光エネルギー密度の関数として示す。この素子の、入射光エネルギー密度の関数としての外部電力変換効率(ηp)、開回路電圧(Voc)及びFFが図14aにプロットされている。変換効率ηpは、44mW/cm2(0.44sun)の入射エネルギーレベルで、(3.7±0.2)%の最大値に達し、より強い照射強度では、(6.2±1.2)Ω−cm2のセル直列抵抗(Rs)のために急に低下する。150mW/cm2の照射強度で、ηp=(3.6±0.2)%、Jsc=18.8mA/cm2、Voc=0.58V、及びff=0.52であり、一方、1200mW/cm2の照射では、Jscは138mA/cm2のように大きく値になる。直列抵抗の影響を図13で明白に見ることができる。強度>150mW/cm2では、最大の電力出力に比較的小さい電圧で到達するので、ffの値、したがってまたηpは小さくなる。CuPc/PTCBI/BCPセルでの結果と対照的に、直列抵抗の影響を増大させる、より大きい電力変換効率の結果として、最大電力変換効率の広い平坦域は見られない。図14bには、この素子の外部量子効率と太陽光スペクトル密度が波長の関数としてプロットされている。C60の光電流への寄与が、λ=400nmから550nmの間で発生しており、他方、CuPc層はλ=550nmから750nmで寄与しており、その結果、λ<750nmの太陽光スペクトルが完全にカバーされている。
【0075】
要約として、我々は、EBLを用いる有機太陽電池の効率は、材料選択及び加工パラメータに応じて、従来のセルよりかなり大きいものでありうることを示した。特に、接点の最適化と共に、大きな励起子拡散長をもつC60の使用により、150mW/cm2の強度をもつAM1.5Gの太陽光照射下で、外部電力変換効率は(3.6±0.2)%となる。我々は、これらのCuPc/C60の2重ヘテロ構造セルと共に光閉じ込め構造を用いることなどの、これらの素子のさらなる改良により、電力変換効率は5%を超えるであろうと予想する。このように、本発明は、少なくとも約3.6%のエネルギー外部変換効率をもつ有機太陽電池を対象とする。
【0076】
本発明が特定の実施例及び好ましい実施形態に関連させて説明されたが、本発明はこれらの実施例と実施形態に限定されないことが理解される。したがって、特許請求の範囲に記載される本発明は、当分野の技術者には明らかであろうように、本明細書に記載される特定の実施例及び好ましい実施形態による変形形態を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード;
電子ドナー層及び電子ドナー層と接する電子アクセプタ層を各サブセルが備える、直列の複数のサブセル、
サブセルを隔てる電子−ホール再結合ゾーン、及び
カソード
を備え、各サブセルにより発生する電流がほぼ等しい感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項2】
励起子障壁層が電子アクセプタ層とカソードの間に位置する請求項1に記載の素子。
【請求項3】
励起子障壁層がBCPを含む請求項2に記載の素子。
【請求項4】
励起子障壁層がAlq2OPHを含む請求項2に記載の素子。
【請求項5】
アノード平滑化層が電子ドナー層とアノードの間に位置する請求項1に記載の素子。
【請求項6】
アノード平滑化層がPEDOT:PSSを含む請求項1に記載の素子。
【請求項7】
電子ドナー層がフタロシアニン又はポルフィリンを含み、電子アクセプタ層がペリレン、ナフタレン、フラーレン又はナノチューブを含む請求項1に記載の素子。
【請求項8】
アノードが透明導電性酸化物から選択される請求項1に記載の素子。
【請求項9】
アノードがITOから選択される請求項8に記載の素子。
【請求項10】
電子−ホール再結合ゾーンが半透明金属層である請求項1に記載の素子。
【請求項11】
電子−ホール再結合ゾーンが、Ag、Li、LiF、Al、Ti、及びSnの層から選択される請求項1に記載の素子。
【請求項12】
電子−ホール再結合ゾーンがAgの層である請求項11に記載の素子。
【請求項13】
電子−ホール再結合ゾーンが約20Åより薄い請求項1に記載の素子。
【請求項14】
金属層がナノ粒子からなる請求項10に記載の素子。
【請求項15】
電子−ホール再結合ゾーンが電子活性欠陥領域を含む請求項1に記載の素子。
【請求項16】
電子輸送層がPTCBIであり、
ホール輸送層がCuPcであり;
電子−ホール再結合ゾーンがAgであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項2に記載の素子。
【請求項17】
電子輸送層がフラーレンであり、
ホール輸送層がCuPcであり;
電子−ホール再結合ゾーンがAgであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項2に記載の素子。
【請求項18】
外部電力変換効率が、1sunの照射で少なくとも1%である請求項1に記載の素子。
【請求項19】
アノード;
光伝導性有機半導体材料からなるホール輸送層;
フラーレンを含む、ホール輸送層上の電子輸送層;
励起子障壁層;及び
カソード;
を備える感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項20】
励起子障壁層が電子輸送層とカソードの間に位置する請求項19に記載の素子。
【請求項21】
励起子障壁層がBCPを含む請求項20に記載の素子。
【請求項22】
励起子障壁層がAlq2OPHを含む請求項20に記載の素子。
【請求項23】
アノード平滑化層が電子ドナー層とアノードの間に位置する請求項19に記載の素子。
【請求項24】
アノード平滑化層がPEDOT:PSSを含む請求項23に記載の素子。
【請求項25】
PEDOT:PSSがプラズマで処理された請求項24に記載の素子。
【請求項26】
フラーレンがC60からC96の範囲の大きさから選択される請求項19に記載の素子。
【請求項27】
フラーレンがナノチューブである請求項19に記載の素子。
【請求項28】
アノードが透明導電性酸化物から選択される請求項19に記載の素子。
【請求項29】
アノードがITOから選択される請求項28に記載の素子。
【請求項30】
電子輸送層がC60であり、
ホール輸送層がCuPcであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項20に記載の素子。
【請求項31】
外部電力変換効率が少なくとも約3.6%である請求項19に記載の素子。
【請求項32】
電子輸送層、ホール輸送層、及び励起子障壁層が、導波路を形成する2つの平行反射平面の間に配置される請求項19に記載の素子。
【請求項33】
2つの反射表面の1つが素子に光を入射させる開口部をもつ請求項32に記載の素子。
【請求項34】
反射表面に平行な方向から光が素子に入れるように、2つの反射表面の間に透明な孔をもつ請求項33に記載の素子。
【請求項35】
フラーレンを含む電子輸送層を少なくとも1個のサブセルが含む、複数の感光性オプトエレクトロニクスサブセルを備える積層型感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項36】
サブセルが励起子障壁層及び電子輸送層に隣接するホール輸送層をさらに含む請求項35に記載のサブセル。
【請求項37】
励起子障壁層がBCPを含み、電子輸送層に隣接する請求項36に記載の素子。
【請求項38】
電子輸送層がC60であり、
ホール輸送層がCuPcであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項35に記載の素子。
【請求項39】
アノード、ホール輸送層、フラーレンを含む電子輸送層、励起子障壁層及びカソードを備える感光性有機オプトエレクトロニクス素子の製造方法であって、
(a)アノード上にホール輸送層を堆積させるステップ、
(b)ホール輸送層上に電子輸送層を堆積させるステップ、
(c)電子輸送層上に励起子障壁層を堆積させるステップ、及び
(d)励起子障壁層上にカソードを堆積させるステップ
を含む方法。
【請求項1】
アノード;
電子ドナー層及び電子ドナー層と接する電子アクセプタ層を各サブセルが備える、直列の複数のサブセル、
サブセルを隔てる電子−ホール再結合ゾーン、及び
カソード
を備え、各サブセルにより発生する電流がほぼ等しい感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項2】
励起子障壁層が電子アクセプタ層とカソードの間に位置する請求項1に記載の素子。
【請求項3】
励起子障壁層がBCPを含む請求項2に記載の素子。
【請求項4】
励起子障壁層がAlq2OPHを含む請求項2に記載の素子。
【請求項5】
アノード平滑化層が電子ドナー層とアノードの間に位置する請求項1に記載の素子。
【請求項6】
アノード平滑化層がPEDOT:PSSを含む請求項1に記載の素子。
【請求項7】
電子ドナー層がフタロシアニン又はポルフィリンを含み、電子アクセプタ層がペリレン、ナフタレン、フラーレン又はナノチューブを含む請求項1に記載の素子。
【請求項8】
アノードが透明導電性酸化物から選択される請求項1に記載の素子。
【請求項9】
アノードがITOから選択される請求項8に記載の素子。
【請求項10】
電子−ホール再結合ゾーンが半透明金属層である請求項1に記載の素子。
【請求項11】
電子−ホール再結合ゾーンが、Ag、Li、LiF、Al、Ti、及びSnの層から選択される請求項1に記載の素子。
【請求項12】
電子−ホール再結合ゾーンがAgの層である請求項11に記載の素子。
【請求項13】
電子−ホール再結合ゾーンが約20Åより薄い請求項1に記載の素子。
【請求項14】
金属層がナノ粒子からなる請求項10に記載の素子。
【請求項15】
電子−ホール再結合ゾーンが電子活性欠陥領域を含む請求項1に記載の素子。
【請求項16】
電子輸送層がPTCBIであり、
ホール輸送層がCuPcであり;
電子−ホール再結合ゾーンがAgであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項2に記載の素子。
【請求項17】
電子輸送層がフラーレンであり、
ホール輸送層がCuPcであり;
電子−ホール再結合ゾーンがAgであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項2に記載の素子。
【請求項18】
外部電力変換効率が、1sunの照射で少なくとも1%である請求項1に記載の素子。
【請求項19】
アノード;
光伝導性有機半導体材料からなるホール輸送層;
フラーレンを含む、ホール輸送層上の電子輸送層;
励起子障壁層;及び
カソード;
を備える感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項20】
励起子障壁層が電子輸送層とカソードの間に位置する請求項19に記載の素子。
【請求項21】
励起子障壁層がBCPを含む請求項20に記載の素子。
【請求項22】
励起子障壁層がAlq2OPHを含む請求項20に記載の素子。
【請求項23】
アノード平滑化層が電子ドナー層とアノードの間に位置する請求項19に記載の素子。
【請求項24】
アノード平滑化層がPEDOT:PSSを含む請求項23に記載の素子。
【請求項25】
PEDOT:PSSがプラズマで処理された請求項24に記載の素子。
【請求項26】
フラーレンがC60からC96の範囲の大きさから選択される請求項19に記載の素子。
【請求項27】
フラーレンがナノチューブである請求項19に記載の素子。
【請求項28】
アノードが透明導電性酸化物から選択される請求項19に記載の素子。
【請求項29】
アノードがITOから選択される請求項28に記載の素子。
【請求項30】
電子輸送層がC60であり、
ホール輸送層がCuPcであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項20に記載の素子。
【請求項31】
外部電力変換効率が少なくとも約3.6%である請求項19に記載の素子。
【請求項32】
電子輸送層、ホール輸送層、及び励起子障壁層が、導波路を形成する2つの平行反射平面の間に配置される請求項19に記載の素子。
【請求項33】
2つの反射表面の1つが素子に光を入射させる開口部をもつ請求項32に記載の素子。
【請求項34】
反射表面に平行な方向から光が素子に入れるように、2つの反射表面の間に透明な孔をもつ請求項33に記載の素子。
【請求項35】
フラーレンを含む電子輸送層を少なくとも1個のサブセルが含む、複数の感光性オプトエレクトロニクスサブセルを備える積層型感光性有機オプトエレクトロニクス素子。
【請求項36】
サブセルが励起子障壁層及び電子輸送層に隣接するホール輸送層をさらに含む請求項35に記載のサブセル。
【請求項37】
励起子障壁層がBCPを含み、電子輸送層に隣接する請求項36に記載の素子。
【請求項38】
電子輸送層がC60であり、
ホール輸送層がCuPcであり、また
励起子障壁層がBCPである、
請求項35に記載の素子。
【請求項39】
アノード、ホール輸送層、フラーレンを含む電子輸送層、励起子障壁層及びカソードを備える感光性有機オプトエレクトロニクス素子の製造方法であって、
(a)アノード上にホール輸送層を堆積させるステップ、
(b)ホール輸送層上に電子輸送層を堆積させるステップ、
(c)電子輸送層上に励起子障壁層を堆積させるステップ、及び
(d)励起子障壁層上にカソードを堆積させるステップ
を含む方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図10】
【公開番号】特開2009−188409(P2009−188409A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−42821(P2009−42821)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2003−504476(P2003−504476)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42821(P2009−42821)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2003−504476(P2003−504476)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】
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