説明

有機光電変換素子

【課題】高温で加熱を行う工程を含まずに、600nmにおける吸光度が高い有機光電変換素子の製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に有機層を含む有機光電変換素子の製造方法であって、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程、該塗布膜を70℃以下の温度で乾燥し有機層を形成する工程を有する有機光電変換素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)の活性層に用いる検討が活発に行われている。中でも、有機半導体材料として高分子化合物を含む組成物を用いれば、安価な塗布法で活性層を作製することができるため、様々な高分子化合物を含有する有機光電変換素子の製造方法が検討されている。例えば、共役高分子化合物であるポリ3−ヘキシルチオフェンとフラーレン誘導体であるC60PCBMと1,2−ジクロロベンゼンとを含む溶液をポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)層上に塗布し、1時間乾燥して有機層を形成する有機太陽電池の製造方法が記載されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials Vol.13 (2003) 85p
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記有機光電変換素子の製造方法は、有機層の形成の際、不活性雰囲気下、130℃程度の高温で加熱を行わないと、600nmにおける有機光電変換素子の吸光度が低いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、低温で有機層を形成し、600nmにおける吸光度が高い有機光電変換素子を製造しうる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に有機層を含む有機光電変換素子の製造方法であって、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程、該塗布膜を70℃以下の温度で乾燥し有機層を形成する工程を有する有機光電変換素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機光電変換素子の製造方法は、低温で有機層を形成し、600nmにおける吸光度が高い有機光電変換素子を製造することができるため、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の有機光電変換素子の製造方法は、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程、及び該塗布膜を70℃以下の温度で乾燥し有機層を形成する工程を含む。
【0010】
本発明の有機光電変換素子の製造方法を用いることにより、有機層中のチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の結晶化が起こり、チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の吸収波長が長波長化する。そのため、有機光電変換素子の600nmにおける吸光度が高くなる。600nmにおける吸光度が高いことは、有機光電変換素子の光電変換効率が高くなる要因となる。本発明の有機光電変換素子の製造方法は、70℃を超える高温条件を用いずに、チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の結晶化を促進させるため、製造に必要なエネルギーを低下させることができる。
【0011】
<含硫黄複素環化合物>
本発明に用いられる含硫黄複素環化合物は、縮合多環構造もしくはビチオフェン構造を有することが好ましい。
【0012】
ビチオフェン構造を有する含硫黄複素環化合物としては、式(1)で表される化合物又は式(2)で表される化合物等があげられる。

(1)
〔式中、複数個あるR1は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。mは0から10の整数を表す。〕

(2)
〔式中、複数個あるR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アリーレン基又は窒素原子を有する2価の複素環基を表す。n1は2から10の整数を表し、n2は1から3の整数を表し、n3は1から3の整数を表す。Ar1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよく、Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0013】
式(1)中、R1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
【0014】
式(1)中、R1で表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキル基でもよく、その炭素数は通常1〜20程度である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、3−メチルブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ラウリル基等が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0015】
式(1)中、R1で表されるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよく、その炭素数は通常1〜20程度である。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ラウリルオキシ基等が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基の例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等があげられる。
【0016】
式(1)中、R1で表されるアルキルチオ基は、直鎖状でも分岐状でもよく、シクロアルキルチオ基であってもよく、その炭素数は通常1〜20程度である。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ラウリルチオ基等が挙げられる。前記アルキルチオ基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキルチオ基の例としては、トリフルオロメチルチオ基等があげられる。
【0017】
式(1)中、R1で表されるアリール基としては、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を持つもの、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜48である。前記アリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基、式(5)で表される基があげられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。C1〜C12アルコキシフェニル基として具体的には、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、イソブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、n−ペンチルオキシフェニル基、n−ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、n−ヘプチルオキシフェニル基、n−オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、n−ノニルオキシフェニル基、n−デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、n−ラウリルオキシフェニル基等があげられる。C1〜C12アルキルフェニル基として具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、n−ヘプチルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−ノニルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基等があげられる。前記アリール基中の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。

(5)
(式(5)中、gは1〜6の整数を表し、hは0〜5の整数を表す。)
【0018】
式(1)中、R1で表されるアリールオキシ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、好ましくは6〜48であり、アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。C1〜C12アルコキシフェノキシ基として具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、n−プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、n−ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、s−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、n−ペンチルオキシフェノキシ基、n−ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、n−ヘプチルオキシフェノキシ基、n−オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、n−ノニルオキシフェノキシ基、n−デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、n−ラウリルオキシフェノキシ基等が挙げられる。C1〜C12アルキルフェノキシ基として具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、s−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、n−ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−ヘプチルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−ノニルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−ドデシルフェノキシ基等があげられる。
【0019】
式(1)中、R1で表されるアリールチオ基は、芳香環上に置換基を有していてもよく、炭素数は通常6〜60程度であり、アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジルチオ基、トリアジルチオ基等があげられる。
【0020】
式(1)中、R1で表されるアリールアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数は通常7〜60程度であり、アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等があげられる。
【0021】
式(1)中、R1で表されるアリールアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、炭素数は通常7〜60程度であり、アリールアルコキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等があげられる。
【0022】
式(1)中、R1で表されるアリールアルキルチオ基としては、置換基を有していてもよく、炭素数は通常7〜60程度であり、アリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基等があげられる。
【0023】
1は、電荷輸送性の観点からは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0024】
式(1)で表される化合物としては、例えば下記の化合物があげられる。
【0025】

【0026】
式(2)中、R2で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及びアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。また、R2で表されるハロゲン原子としては、前述のR1の場合と同様の原子があげられる。
【0027】
2としては、電荷輸送性の観点からは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0028】
式(2)中、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。また、Rで表されるハロゲン原子としては、前述のR1の場合と同様の原子があげられる。
【0029】
としては、電荷輸送性の観点からは、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0030】
式(2)中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、アリーレン基又は窒素原子を有する2価の複素環基を表す。
【0031】
ここでアリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、ベンゼン環を持つもの、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリーレン基は置換基を有していてもよい。この置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状のアルキル基又は炭素数1〜20のシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基等があげられる。アリーレン基における置換基を除いた部分の炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。また、アリーレン基の置換基を含めた全炭素数は、通常6〜100程度である。
【0032】
アリーレン基としては、フェニレン基(式1〜3)、ナフタレンジイル基(式4〜13)、アントラセン−ジイル基(式14〜19)、ビフェニル−ジイル基(式20〜25)、ターフェニル−ジイル基(式26〜28)、縮合環化合物基(式29〜35)、フルオレンジイル基(式36)、ベンゾフルオレン−ジイル基(式37〜39)、ジベンゾフルオレン−ジイル基(式40)等が例示される。
【0033】


【0034】


【0035】


【0036】


【0037】


【0038】

【0039】


(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。複数個存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0040】
式1〜40中、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及びアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。また、Rで表されるハロゲン原子は、前述のR1の場合と同様の原子があげられる。
【0041】
ここで窒素原子を有する2価の複素環基とは、窒素原子を有する複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。該2価の複素環基は置換基を有していてもよい。前記窒素原子を有する複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、窒素原子を環内に含むものをいう。窒素原子を有する複素環化合物は環内に、さらに、酸素原子、硫黄原子、セレン原子等を含んでいてもよい。該2価の複素環基の中では、芳香族複素環基が好ましい。該2価の複素環基における置換基を除いた部分の炭素数は通常3〜60程度である。また、該2価の複素環基の置換基を含めた全炭素数は、通常3〜100程度である。
【0042】
窒素原子を有する2価の複素環基としては、例えば以下のものが挙げられる。
ピリジンージイル基(式101〜106)、ジアザフェニレン基(式107〜110)、キノリンジイル基(式111〜125)、キノキサリンジイル基(式126〜130)、アクリジンジイル基(式131〜134)、ビピリジルジイル基(式135〜137)、フェナントロリンジイル基(式138〜140)、窒素原子を含む5員環複素環基(式141)、窒素原子を含む5員環縮合複素基(下式142〜149)等が例示される。
【0043】


【0044】


【0045】


【0046】


【0047】


【0048】


【0049】


【0050】

(式中、Rは、前記で定義したとおりである。複数個存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0051】
式(2)で表される化合物としては、例えば下記の化合物があげられる。
【0052】

【0053】
本発明に用いられる含硫黄複素環化合物は、縮合多環構造を有していてもよい。ここで、縮合多環構造とは、2個以上の芳香環が縮合(縮環)した構造をいう。縮合多環構造中に、硫黄原子を含むことが好ましく、硫黄原子を1〜3個有することがより好ましい。芳香環としては、チオフェン環、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チアジアゾール環、チアゾール環等があげられる。縮環する芳香環の数は、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。縮合多環構造としては、2個のチオフェン環が縮環した構造、チオフェン環とベンゼン環が縮環した構造、チアジアゾール環とベンゼン環が縮環した構造、チアゾール環とベンゼン環が縮環した構造、チオフェン環と2個のベンゼン環が縮環した構造、2個のチオフェン環とベンゼン環が縮環した構造、2個のチオフェン環と2個のベンゼン環とが縮環した構造等があげられる。
【0054】
縮合多環構造を有する含硫黄複素環化合物としては、式(3)で表される化合物又は式(4)で表される化合物等があげられる。


(3)
〔式中、複数個あるRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。p1は0から5の整数を表し、p2は0から5の整数を表す。〕


(4)
〔式中、複数個あるRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。〕
【0055】
式(3)中、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及びアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。また、Rで表されるハロゲン原子としては、前述のR1の場合と同様の原子があげられる。
【0056】
4としては、電荷輸送性の観点からは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0057】
式(3)で表される化合物としては、例えば下記の化合物があげられる。
【0058】

【0059】
式(4)中、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及びアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。また、Rで表されるハロゲン原子としては、前述のR1の場合と同様の原子があげられる。
【0060】
としては、電荷輸送性の観点からは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0061】
式(4)で表される化合物としては、例えば下記の化合物があげられる。
【0062】

【0063】
本発明の有機光電変換素子の製造方法において、有機光電変換素子が有する有機層中に含まれる含硫黄複素環化合物は、一種類であっても二種類以上であってもよい。
【0064】
<共役高分子化合物>
本発明の有機光電変換素子の製造方法に用いられる共役高分子化合物は、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する。ここで、共役高分子化合物とは、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる高分子、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造および二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子等を意味する。共役高分子化合物の例としては、繰り返し単位として、非置換または置換のフルオレンジイル基、非置換または置換のベンゾフルオレンジイル基、非置換または置換のジベンゾフランジイル基、非置換または置換のジベンゾチオフェンジイル基、非置換または置換のカルバゾールジイル基、非置換または置換のフランジイル基、非置換または置換のピロールジイル基、非置換または置換のベンゾチアジアゾールジイル基、非置換または置換のフェニレンビニレン基、非置換または置換のチエニレンビニレン基、および非置換または置換のトリフェニルアミンジイル基からなる群から選ばれる一種以上の基とチオフェンジイル基とを有し、該繰り返し単位同士が直接または連結基を介して結合した高分子である。
【0065】
チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物において、前記繰り返し単位同士が連結基を介して結合している場合、該連結基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル等が挙げられる。
【0066】
本発明に用いられるチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物は、電荷輸送性の観点からは、式(6)で表される繰り返し単位を有すること、又は式(6)で表される繰り返し単位及び式(7)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。

(6) (7)
〔式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基またはアリールアルキルチオ基を表す。〕
【0067】
6〜R15で表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基およびアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。
【0068】
前記チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5×10〜1×10であることが好ましく、1×10〜1×10であることがより好ましい。
【0069】
本発明の有機光電変換素子が有する有機層中に含まれるチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物は、一種類であっても二種類以上であってもよい。
【0070】
前記チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物は、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体を合成し、それを、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により重合することにより合成することができる。
【0071】
チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の中でも、レジオレギュラーポリ3-置換チオフェンが好ましい。
【0072】
<レジオレギュラーポリ3−置換チオフェン>
本発明に用いることができるレジオレギュラーポリ3−置換チオフェンは、式(8)で表される繰り返し単位を有する。


(8)

〔式中、Qは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。〕
【0073】
Qで表されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基及びアリールアルキルチオ基としては、前述のR1の場合と同様の基があげられる。
【0074】
<溶媒>
本発明に用いられる溶媒は、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類溶媒等が挙げられる。本発明に用いられる含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物との組成物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0075】
<有機層の製造方法>
本発明の有機光電変換素子の製造方法は、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程、及び該塗布膜を70℃以下の温度で乾燥し有機層を形成する工程を有する。本発明に用いられる溶液は、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物との組成物を、溶媒に溶解させて製造することができる。有機層中に、さらに電子受容性化合物を含む場合は、該溶液を、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物と電子受容性化合物との組成物を、溶媒に溶解させて製造することができる。また、有機層中に、さらに電子供与性化合物を含む場合は、該溶液を、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物と電子供与性化合物との組成物を、溶媒に溶解させて製造することができる。
【0076】
前記組成物中の含硫黄複素環化合物の重量は、チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10000重量部であり、より好ましくは1〜1000重量部である。組成物中に電子受容性化合物が含まれる場合、組成物中の電子受容性化合物の重量は、含硫黄複素環化合物の重量とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の重量の合計を100重量部とすると、1〜10000重量部であることが好ましく、10〜2000重量部であることがより好ましい。組成物中に電子供与性化合物が含まれる場合、組成物中の電子供与性化合物の重量は、含硫黄複素環化合物の重量とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の重量の合計を100重量部とすると、1〜100000重量部であることが好ましく、10〜1000重量部であることがより好ましい。
【0077】
前記塗布膜は、前記溶液を、一方の電極上に塗布して成膜する。
溶液から成膜する方法には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0078】
本発明において、塗布膜を乾燥して有機層を形成する温度は70℃以下である。好ましくは、0〜60℃である。前記乾燥は、大気雰囲気下で行っても不活性雰囲気下で行ってもよく、真空雰囲気下で行ってもよい。好ましくは、不活性雰囲気下である。また、乾燥時間は、1分〜2時間が好ましい。
【0079】
<有機層>
本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子は、有機層を有し、該有機層には、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とが含まれる。有機層中の含硫黄複素環化合物の重量は、チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10000重量部であり、より好ましくは1〜1000重量部である。
【0080】
前記有機層には、さらに電子受容性化合物が含まれていてもよい。電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体、カーボンナノチューブ、2、9−ジメチル−4、7−ジフェニル−1、10−フェナントロリン等のフェナントロリン誘導体等が挙げられ、とりわけフラーレン類及びその誘導体が好ましい。
【0081】
電子受容性化合物が含まれる場合、有機層中の電子受容性化合物の重量は、含硫黄複素環化合物の重量とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の重量の合計を100重量部とすると、1〜10000重量部であることが好ましく、10〜2000重量部であることがより好ましい。
【0082】
フラーレン類としては、C60、C70、C84等が挙げられる。フラーレン誘導体としては、C60、C70、C84等の誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。
【0083】

【0084】

【0085】
前記有機層には、さらに電子供与性化合物が含まれていてもよい。電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0086】
電子供与性化合物が含まれる場合、有機層中の電子供与性化合物の重量は、含硫黄複素環化合物の重量とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の重量の合計を100重量部とすると、1〜100000重量部であることが好ましく、10〜1000重量部であることがより好ましい。
【0087】
前記有機層には、電荷輸送性、電荷注入性を損なわない範囲で、含硫黄複素環化合物、チオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、電子供与性化合物、電子受容性化合物以外の成分を含んでいてもよい。
【0088】
<有機光電変換素子>
本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に含硫黄複素環化合物と繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とを含む有機層を有する。含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物との組成物は、電子受容性化合物として用いることも電子供与性化合物として用いることもできる。また、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の一方が電子供与性化合物であり、他の一方が電子受容性化合物である場合は、電子供与性体と電子受容体の両方の機能を有する場合がある。これらの態様の中では、該組成物が電子供与性化合物として用いられることが好ましい。
【0089】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0090】
本発明の有機光電変換素子の具体例としては、
1.一対の電極と、該電極間に含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とを含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられた電子供与性化合物を含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子;
2.一対の電極と、該電極間に電子受容性化合物を含有する第一の有機層と、該第一の有機層に隣接して設けられた含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とを含有する第二の有機層とを有する有機光電変換素子;
3.一対の電極と、該電極間に含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物と電子供与性化合物とを含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子;
4.一対の電極と、該電極間に含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物と電子受容性化合物とを含有する有機層を有する有機光電変換素子;
5.一対の電極と、該電極間に含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物と電子受容性化合物とを含有する有機層を少なくとも一層有する有機光電変換素子であって、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子;
が挙げられる。
【0091】
また、前記5.の有機光電変換素子では、有機層中におけるフラーレン誘導体の重量が、含硫黄複素環化合物の重量とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物の重量との合計を100重量部とすると、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0092】
ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子としては、前記3、前記4.又は前記5.が好ましく、前記5.がより好ましい。また、本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の有機層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層が挙げられる。
【0093】
含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物との組成物を電子供与体として用いる場合、有機光電変換素子に好適に用いられる電子受容体は、電子受容体のHOMOエネルギーがチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物のHOMOエネルギー及び含硫黄複素環化合物のHOMOエネルギーよりも高く、かつ、電子受容体のLUMOエネルギーがチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物のLUMOエネルギー及び含硫黄複素環化合物のLUMOエネルギーよりも高くなる。また、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物との組成物を電子受容体として用いる場合、有機光電変換素子に好適に用いられる電子供与体は、電子供与体のHOMOエネルギーがチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物のHOMOエネルギー及び含硫黄複素環化合物のHOMOエネルギーよりも低く、かつ、電子供与体のLUMOエネルギーがチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物のLUMOエネルギー及び含硫黄複素環化合物のLUMOエネルギーよりも低くなる。
【0094】
本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0095】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。また、電極の一方は、透明な電極であることが好ましい。
【0096】
前記付加的な層としての電荷輸送層、即ち、ホール輸送層、電子輸送層に用いられる材料として、それぞれ後述の電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0097】
本発明の有機光電変換素子の製造方法は、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程を有する。ここで、一方の電極上に塗布するとは、電極の表面に塗布してもよく、また、電極上に付加的な層を形成し、電極の上方である該付加的な層の表面に塗布してもよい。
【0098】
本発明の製造方法で製造される有機光電変換素子における前記有機層としては、例えば、含硫黄複素環化合物とチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物とを含有する有機薄膜を用いることができる。
【0099】
前記有機薄膜は、膜厚が、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0100】
前記有機薄膜のホール輸送性を高めるため、前記有機薄膜中に電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物として、含硫黄複素環化合物以外の低分子化合物及び/又はチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物以外の重合体を混合して用いることもできる。
【0101】
<素子の用途>
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0102】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
<実施例1>
レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン(シグマアルドリッチ社より購入。Mn〜64000。以後、「P3HT」と記載する。)を1%(重量%)の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。さらに、P3HTの重量に対して等倍重量のC60PCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、アメリカンダイソース社製、商品名ADS61BFB)を電子受容体として溶液に混合した。その後、P3HTの重量に対して500重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した。ついで、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を作製した。得られた塗布溶液をガラス基板上に、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、真空雰囲気下、23℃で60分乾燥させ、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。有機薄膜の吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−670)で測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0105】
<実施例2>
P3HTの重量に対して100重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0106】
<実施例3>
P3HTの重量に対して50重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0107】
<実施例4>
2,2’−ビチオフェンにかえて2,2’:5’,2’’−ターチオフェンを、P3HTの重量に対して100重量%となるよう溶液に混合した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0108】
<実施例5>
2,2’−ビチオフェンにかえて化合物(A)を、P3HTの重量に対して100重量%となるよう溶液に混合した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。

化合物A
【0109】
<実施例6>
2,2’−ビチオフェンにかえて3,3’−ビチオフェンを、P3HTの重量に対して100重量%となるよう溶液に混合した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0110】
<比較例1>
2,2’−ビチオフェンを添加しないで塗布溶液を作製した以外は、実施例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。600nmにおける吸光度を表1に示す。
【0111】
表1

【0112】
<実施例7>
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
P3HTを1%(重量%)の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。その後、P3HTの重量に対して500重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した。さらに、P3HTの重量に対して等倍重量のC60PCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、アメリカンダイソース社製、商品名ADS61BFB)を電子受容体として溶液に混合した。ついで、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液を作製した。
【0113】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記塗布溶液を用い、スピンコートにより塗布し、塗布膜を形成した。その後、真空雰囲気下で60分乾燥し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚約100nm)である有機層を得た。塗布操作及び乾燥は23℃で行い、23℃より高い温度にするための加熱操作は行わなかった。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nmの膜厚で蒸着し、次いでAlを100nmの膜厚で蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10−3Paであった。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO−SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率を求めた。結果を表2に示す。
【0114】
<実施例8>
P3HTの重量に対して100重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した以外は、実施例7と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を求めた。結果を表2に示す。
【0115】
<実施例9>
P3HTの重量に対して50重量%となるように、2,2’−ビチオフェンを溶液に混合した以外は、実施例7と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を求めた。結果を表2に示す。
【0116】
<比較例2>
2,2’−ビチオフェンを添加しないで塗布溶液を作製した以外は、実施例7と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を求めた。結果を表2に示す。
【0117】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に有機層を含む有機光電変換素子の製造方法であって、繰り返し単位としてチオフェンジイル基を有する共役高分子化合物、含硫黄複素環化合物及び溶媒を含む溶液を、一方の電極上に塗布して塗布膜を形成する工程、該塗布膜を70℃以下の温度で乾燥し有機層を形成する工程を有する有機光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
含硫黄複素環化合物が式(1)で表される化合物である請求項1に記載の有機光電変換素子の製造方法。

(1)
〔式中、複数個あるR1は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。mは0から10の整数を表す。〕
【請求項3】
含硫黄複素環化合物が式(2)で表される化合物である請求項1に記載の有機光電変換素子の製造方法。

(2)
〔式中、複数個あるR2は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるRは同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Ar1及びAr2は、同一又は相異なり、アリーレン基又は窒素原子を有する2価の複素環基を表す。n1は2から10の整数を表し、n2は1から3の整数を表し、n3は1から3の整数を表す。Ar1が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよく、Ar2が複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項4】
含硫黄複素環化合物が式(3)で表される化合物である請求項1に記載の有機光電変換素子の製造方法。

(3)
〔式中、複数個あるRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。p1は0から5の整数を表し、p2は0から5の整数を表す。〕
【請求項5】
含硫黄複素環化合物が式(4)で表される化合物である請求項1に記載の有機光電変換素子の製造方法。

(4)
〔式中、複数個あるRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。〕
【請求項6】
有機層中の含硫黄複素環化合物の重量が、共役高分子化合物100重量部に対して、0.1〜10000重量部である請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
有機層中に、さらに電子受容性化合物が含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である請求項7に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
有機層中に、さらに電子供与性化合物が含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。

【公開番号】特開2011−3703(P2011−3703A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145140(P2009−145140)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】