説明

有機化合物の回収方法、肥料、植物育成方法、廃棄物再利用設備

【課題】各種の有機性廃棄物を処理して有価な有機化合物を回収するだけでなく、その際に発生するエネルギーを利用したり処理残渣を肥料として用いて植物を育成するなど、有機系廃棄物を極めて有効に利用することができるようにする。
【解決手段】大豆粕、焼酎粕などを原料とし、アミノ酸、大豆ペプチドなどを製造する。水産系廃棄物を原料としてアミノ酸、リン脂質、ペプチド、タンパク質、不飽和脂肪酸などを製造する。燃料や電力エネルギーはバイオマスエネルギーセンター2から食物リサイクル工場1や、植物工場3に供給される。収穫した植物を食物リサイクル工場1へ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品系、農業系、林業系、水産系などの有機性廃棄物を化学的に処理した後、分離処理して有機化合物を回収する方法、肥料、植物育成方法、及び廃棄物再利用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物を処理して有価物を回収するシステムが近年種々提案されている。例えば、特開平8−214841には、魚介類の内臓を発酵処理してエキスを製造する方法が記載されている。
【0003】
特開2003−175382には、ダム漂流物や間伐材、倒木などを発酵処理して肥料を製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8−214841
【特許文献2】特開2002−102897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、各種の有機性廃棄物を処理して有価な有機化合物を回収するだけでなく、その際に発生するエネルギーを利用したり処理残渣を肥料として用いて植物を育成するなど、有機系廃棄物を極めて有効に利用することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の有機化合物の回収方法は、タンパク質及び/又はデンプン類を含有する有機性廃棄物を、化学的処理を施した後、分離処理して、アミノ酸、不飽和脂肪酸、ペプチド類、リン脂質、及びタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を回収することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の有機化合物の回収方法は、請求項1において、有機性廃棄物が食品系廃棄物、農業系廃棄物、林業系廃棄物及び水産系廃棄物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の有機化合物の回収方法は、請求項2において、食品系の廃棄物が、大豆粕、菜種粕、麹粕(酒粕)、焼酎粕、及び米ぬかからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の有機化合物の回収方法は、請求項2において、農業系の廃棄物が、農産物から有価部分を除去した後の、茎、わら、葉、及び根からなる群から選ばれる少なくとも1種か、又は市場で消費されなかった農産物であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の有機化合物の回収方法は、請求項2において、林業系の廃棄物が、間伐材又はこれから得られる木材チップもしくはバークであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6の有機化合物の回収方法は、請求項2において、水産系の廃棄物が、死魚、魚体を処理した後の、頭、内臓、魚皮、及び骨からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7の有機化合物の回収方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、化学的処理が、発酵、酸又はアルカリによる加水分解処理、及び超臨界物質との接触による分解・改質処理からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項8の有機化合物の回収方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、化学的処理後の分離が、抽出法、晶析法、及びイオン交換法からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項9の有機化合物の回収方法は、請求項1ないし8のいずれか1項において、有機化合物を回収した後の残渣をバイオマスにより処理して、発生する熱エネルギーを回収することを特徴とするものである。
【0014】
請求項10の植物育成用の肥料は、請求項1ないし9のいずれか1項の有機化合物の回収方法において前記有機化合物を分離処理した後の残渣よりなるものである。
【0015】
請求項11の植物育成方法は、請求項10に記載の肥料を用いたものである。
【0016】
請求項12の廃棄物再利用設備は、有機化合物の回収を行うための有機化合物回収設備と、該有機化合物回収設備から排出される有機化合物回収後の残渣の少なくとも一部をバイオマスにより処理して熱エネルギーを回収するエネルギー回収設備と、該有機化合物回収設備から排出される有機化合物回収後の残渣の少なくとも一部を植物育成用の肥料として使用する植物育成設備とを有してなり、該エネルギー回収設備で得られたエネルギーの少なくとも一部を、該有機化合物回収設備及び/又は前記植物育成設備のエネルギー源として使用することを特徴とするものである。
【0017】
請求項13の廃棄物再利用設備は、請求項12において、前記植物育成設備で育成して得られた植物又はそれらから発生する農業系廃棄物を、前記有機化合物回収設備に供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、例えば大豆粕、焼酎粕などを原料とし、アミノ酸、大豆ペプチドなどを製造することができる。また、水産系廃棄物を原料としてアミノ酸、リン脂質、ペプチド、タンパク質、不飽和脂肪酸などを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0020】
第1図は本発明の一例を示すフローである。
【0021】
このシステムでは、大豆粕、菜種粕、麹粕(酒粕)、焼酎粕、米ぬかなどの食品系廃棄物や、農産物から有価部分を除去した後の茎、わら、葉、根、あるいは市場で消費されなかった農産物や古くなった備蓄米などの農業系廃棄物、間伐材、倒木などから得られる木質チップ・バーク等の林業系廃棄物、死魚や、魚体を処理した後の頭、内臓、魚皮、骨などの水産系廃棄物、植物工場3で生産される、穀類、芋、豆類及び同工場で発生する葉、茎、根などの植物性廃棄物を原料とする。
【0022】
これらの原料のうち水産系廃棄物、食品系廃棄物、農業系廃棄物については、植物リサイクル工場1にて化学的処理を施し、次いで分離処理し、有価な有機化合物を回収する。
【0023】
化学的処理としては、発酵、抽出、晶析、イオン交換などを必要に応じて組み合わせて行うのが好ましい。
【0024】
分離処理方法としては、抽出、晶析、イオン交換などが例示される。
【0025】
有機化合物としては、抗酸化物質(例えばDHA、EPA、コラーゲン、コンドロイチンなど)、大豆ペプチド、混合アミノ酸などが例示される。抗酸化物質は、健康食品に利用することができる。大豆ペプチドは調味料に利用することができる。混合アミノ酸は飼料に利用することができる。
【0026】
具体的には、例えばカンパチ、マグロ等の魚を処理した残りの頭、内臓、骨を煮出し、魚油を得る。この魚油を抽出、精製することにより、プラズマローゲン、アンセリン、カルノシンなどを得ることができる。煮出し残渣からは、加水分解し、抽出、精製することにより混合アミノ酸を得ることができる。
【0027】
大豆粕や焼酎粕からは、加水分解、分離して混合アミノ酸を得ることができる。
【0028】
この食物リサイクル工場1で生じた残渣については、バイオマスエネルギーセンター2に送って利用する。
【0029】
バイオマスセンター2では、この残渣の他に、上記の木質チップなどの林業系廃棄物や、動物性廃棄物(例えば糞、羽根、骨、皮、死体等)を受入れ、焼却処理してエネルギーを取り出す。また、メタン発酵させてメタンガスを生成させ、これを燃料として直接に用いたり、燃料電池に導いて発電を行ってもよい。燃料や電力エネルギーはバイオマスエネルギーセンターから食物リサイクル工場や、植物工場に供給される。
【0030】
植物工場3では、食物リサイクル工場1からの残渣を肥料として用いると共に、必要に応じバイオマスエネルギーセンター2から供給されるエネルギーを利用して植物の栽培を行う。この植物としては、炭水化物源として活用しやすい穀類、芋、豆類などが好適である。植物工場で収穫した植物を、原料の一部として、食物リサイクル工場へ送る。
【0031】
なお、この食物リサイクル工場1の使用エネルギー(電力、燃料)の少なくとも一部として、バイオマスセンター2で生産されるものを用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一例を示すフローである。
【符号の説明】
【0033】
1 食物リサイクル工場
2 バイオマスエネルギーセンター
3 植物工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及び/又はデンプン類を含有する有機性廃棄物を、化学的処理を施した後、分離処理して、アミノ酸、不飽和脂肪酸、ペプチド類、リン脂質、及びタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を回収することを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項2】
請求項1において、有機性廃棄物が食品系廃棄物、農業系廃棄物、林業系廃棄物及び水産系廃棄物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項3】
請求項2において、食品系の廃棄物が、大豆粕、菜種粕、麹粕(酒粕)、焼酎粕、及び米ぬかからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項4】
請求項2において、農業系の廃棄物が、農産物から有価部分を除去した後の、茎、わら、葉、及び根からなる群から選ばれる少なくとも1種か、又は市場で消費されなかった農産物であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項5】
請求項2において、林業系の廃棄物が、間伐材又はこれから得られる木材チップもしくはバークであることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項6】
請求項2において、水産系の廃棄物が、死魚、魚体を処理した後の、頭、内臓、魚皮、及び骨からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、化学的処理が、発酵、酸又はアルカリによる加水分解処理、及び超臨界物質との接触による分解・改質処理からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項において、化学的処理後の分離が、抽出法、晶析法、及びイオン交換法からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、有機化合物を回収した後の残渣をバイオマスにより処理して、発生する熱エネルギーを回収することを特徴とする有機化合物の回収方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項の有機化合物の回収方法において前記有機化合物を分離処理した後の残渣よりなる植物育成用の肥料。
【請求項11】
請求項10に記載の肥料を用いた植物育成方法。
【請求項12】
有機化合物の回収を行うための有機化合物回収設備と、
該有機化合物回収設備から排出される有機化合物回収後の残渣の少なくとも一部をバイオマスにより処理して熱エネルギーを回収するエネルギー回収設備と、
該有機化合物回収設備から排出される有機化合物回収後の残渣の少なくとも一部を植物育成用の肥料として使用する植物育成設備とを有してなり、
該エネルギー回収設備で得られたエネルギーの少なくとも一部を、該有機化合物回収設備及び/又は前記植物育成設備のエネルギー源として使用することを特徴とする廃棄物再利用設備。
【請求項13】
請求項12において、前記植物育成設備で育成して得られた植物又はそれらから発生する農業系廃棄物を、前記有機化合物回収設備に供給することを特徴とする廃棄物再利用設備。

【図1】
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【公開番号】特開2009−183815(P2009−183815A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24022(P2008−24022)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】