説明

有機化合物分離膜及び有機化合物分離方法

【課題】本発明の分離膜は、大量生産が可能であり、劣化しにくい分離膜及び高効率な分離方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明の分離膜は、水−有機化合物混合液から当該有機化合物を分離するための分離膜であって、1)前記分離膜は、樹脂に有機金属錯体が分散されてなり、2)前記有機金属錯体は、下記一般式(1);
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)を構成単位とする単結晶構造であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機化合物分離膜及び有機化合物分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスから創製されるバイオマスアルコールは、通常、水に数重量%程度含まれた混合液の状態となっている。当該バイオマスアルコールを高濃度に濃縮する際一般的に蒸留が行われるが、そのような水を多量に含んだ状態で蒸留を行うと、エネルギーが大量に必要となる。そのため、近年、エネルギー節約の観点から、蒸留の代わりにパーベーパレーション(浸透気化法)を行う方法、予めパーベーパレーション法を行った後に蒸留を併用する方法などが行われている。
【0003】
このようなパーベーパレーション法として、例えば、疎水性ゼオライトをはじめとする結晶性無機多孔質を分離膜として用いた方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記方法では疎水性ゼオライト等の無機多孔質結晶を薄膜状等にすることが必要になり、かかる無機多孔質結晶を無欠陥でかつ薄膜状、板状、管状等に大量合成できない問題がある。また、バイオマス発酵層内で水−有機化合物混合液の分離を長時間行うと、ゼオライト表面の疎水性である-Si-O-Si-O-構造が部分的に分解され、親水性であるSi-OH(水酸基)に変化することにより、ゼオライトの疎水性能が保持できなくなる。その結果、分離性能が劣化する問題も生じている。
【特許文献1】特開平6−99044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大量生産が可能であり、耐久性のある分離膜及び高効率な分離方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、特定の構造を有する分離膜を用いることにより、上記目的を達成するに至った。すなわち、本発明は、下記の分離膜及びそれを用いた分離方法に係る。
【0007】
項1.水−有機化合物混合液から当該有機化合物を分離するための分離膜であって
1)前記分離膜は、樹脂に有機金属錯体が分散されてなり、
2)前記有機金属錯体は、下記一般式(1);
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)
を構成単位とする単結晶構造である、
ことを特徴とする分離膜。
【0008】
項2.Rはフェニル基である、項1に記載の分離膜。
【0009】
項3.Rは−C−で示される複素環式基である、項1又は2に記載の分離膜。
【0010】
項4.前記樹脂が疎水性樹脂である、項1〜3のいずれかに記載の分離膜。
【0011】
項5.前記疎水性樹脂がポリジメチルシロキサン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリテトラフルオトエチレンからなる群のうち少なくとも1種である、項4に記載の分離膜。
【0012】
項6.有機化合物が、酸素原子を含有する炭素数7以下の化合物である、項1〜5のいずれかに記載の分離膜。
【0013】
項7.水−有機化合物混合液から有機化合物を分離する方法であって、
下記式(1):
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)
を構成単位とする有機金属錯体単結晶が樹脂に分散されてなる分離膜を用いてパーベーパレーション法を行うことにより、水−有機化合物混合液から有機化合物を分離する工程を備えた、有機化合物分離方法。
【0014】
項8.前記水−有機化合物混合液中の有機化合物の含有量が0.5〜15重量%である、項7に記載の有機化合物分離方法。
【0015】
項9.前記有機化合物が、酸素原子を含有する炭素数7以下の化合物である、項7又は8に記載の分離方法。
【0016】
本発明の分離膜は、水−有機化合物混合液から当該有機化合物を分離するための分離膜であって
1)前記分離膜は、樹脂に有機金属錯体が分散されてなり、
2)前記有機金属錯体は、下記一般式(1);
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)
を構成単位とする単結晶構造である、ことを特徴とする。
【0017】
このような錯体構造は、その一部が弱い分子間力によって結合し、単結晶を形成していると考えられるため、ある種の柔軟性をその固体構造中に有している。その柔軟性により、単結晶中の細孔の大きさ(幅)が、被吸着物質の分子径に合わせて、自発的に変化し、その結果、多種の分子径が異なる物質(例えば、アルコール等)を選択的かつ高効率で吸着することを可能とする。
【0018】
また、有機金属錯体を用いるため、ゼオライトを用いた場合に生じる-Si-O-Si-O-構造の分解による-Si-OH(水酸基)への変性といった問題が生じず、耐久性に優れる。
【0019】
本発明では、特に下記一般式(2)のような構造を構成単位としていることが好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
(ただし、Mは、Cu(II)又はRh(II)等を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基等を示す。)
は置換基を有することのあるアリール基等を示す。置換基としては、例えば、炭素数1〜5等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基;F,Cl,I等のハロゲン原子などが挙げられる。置換している数も限定的でなく、1〜5のいずれであってもよい。
【0022】
この中でも、Rは置換基を有していないもの、すなわち、フェニル基(C−)であることが特に好ましい。
【0023】
は、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。
【0024】
この複素環式基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。アルキル基は、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分枝状のアルキル基である。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。複素環式基に置換している置換基の数は1〜4のいずれであってもよい。
【0025】
複素環式基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよいが、本発明では特に不飽和が好ましい。
【0026】
また、下記式(3)〜(5)のいずれかで示される基が好適に挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
(但し、R〜R14はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3までのアルキル基等を示す。)
この中でも、式(3)で示される基(すなわち、−C−で示される複素環式基及びこれに上記置換基が置換したもの)又は式(5)で示される基がより好ましい。最も好ましくは、下記式(6)で表される基(すなわち、式(3)で示される基であって、かつR〜Rが全て水素原子である基)、又は式(5)で示される基である。
【0029】
【化3】

【0030】
本発明の有機錯体金属の具体例として好ましいものは下記一般式(7)である。
【0031】
【化4】

【0032】
(ただし、Mは、Cu(II)又はRh(II)等を示し、Rは上記一般式(3)〜(5)のいずれかで示される基等(より好ましくは式(3)又は(5)で示される基、最も好ましくは式(6)又は(5)で示される基)である。)
上記構成単位の繰り返し数は限定的でなく、外形(結晶粒径)によって適宜決定される。
【0033】
本発明の有機金属錯体は、実質的に単結晶構造を形成している。単結晶とは、任意の結晶軸に着目したとき、いずれの部分においても結晶軸の向きが実質的に同じである状態をいう。
【0034】
本発明の有機金属錯体は、多孔質単結晶であることが好ましい。具体的には、結晶中に平均幅0.2〜2nm程度(より好ましくは、0.3〜1nm程度)の細孔(又は空隙)を有しているものが好ましい。このような大きさの細孔を有していることにより、本発明の分離膜は当該細孔に有機化合物(例えば、低級アルコール等)を細孔(又は空隙)中に収容でき、その結果、水−有機化合物混合液から有機化合物のみを分離することが可能となる。
【0035】
なお、この細孔の平均幅は、単結晶X線構造解析により測定された値である。
【0036】
本発明で用いる樹脂は限定的でないが、疎水性樹脂であることが好ましい。疎水性樹脂としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上で使用することができる。
【0037】
このような疎水性樹脂を用いることにより、上記有機金属錯体単結晶を親水性に維持でき、性能劣化を防止できる。
【0038】
また、上記の樹脂の中でも、透明性を有するものが好ましい。
【0039】
本発明は、上記有機金属錯体が上記樹脂に分散されてなる。配合割合は、限定的でないが、通常樹脂100重量部に対して、有機金属錯体0.1〜20重量部程度、好ましくは1〜10重量部程度ある。
【0040】
分散されている有機金属錯体の平均粒子径は限定的でなく、製造される分離膜の厚み等により適宜決定されるが、通常、0.1〜5000μm程度、好ましくは1〜2000μm程度である。
【0041】
分離膜の形状は特に限定されず、通常は、シート状、フィルム状、板状、管状等である。分離膜の厚みは、形状等により適宜決定すればよいが、通常1〜10000μm程度、好ましくは100〜3000μm程度とすればよい。
【0042】
なお、樹脂に分散されている有機金属錯体単結晶の少なくとも一部は、分離膜を貫通している、すなわち、分離膜の両面に表出している。これにより、水−有機化合物混合液から当該有機化合物を分離することが可能となる。
【0043】
有機金属錯体単結晶を上記樹脂に分散する方法としては、例えば、有機金属錯体単結晶を公知又は市販の粉砕装置(例えば、メノウ乳鉢等)により物理的に所望の大きさに粉砕した後、当該単結晶を溶融した樹脂に添加し、混合する方法等が挙げられる。
【0044】
有機金属錯体単結晶は、公知の方法によって製造できる。例えば、金属塩、有機カルボン酸(R−COOH(Rは一般式(1)中のRと同一である。))及び置換ピラジン(Rを構成する化合物)を溶媒に添加及び反応させることにより製造することができる。また、有機カルボン酸の金属塩を溶媒中で置換ピラジンと反応させることによっても製造することができる。
【0045】
このような溶媒は限定的でないが、好ましくはメタノール及び/又はアセトニトリル等である。金属塩としては、金属が銅の場合は、例えば、酢酸銅、ギ酸銅、硫酸銅、硝酸銅及び炭酸銅等が好ましく、特に酢酸銅が好ましい。また、金属がロジウムの場合は、例えば、安息香酸ロジウム(II)二量体、酢酸ロジウム、ギ酸ロジウム、硫酸ロジウム、硝酸ロジウム及び炭酸ロジウム等が好ましく、特に酢酸ロジウムが好ましい。
【0046】
反応温度は特に限定されず、0℃〜70℃程度で可能であるが、室温において特に良好な結果が得られる。反応時間は特に限定されないが、通常、3時間〜1週間程度で良好な結果が得られる。
【0047】
反応させる金属塩と有機カルボン酸の比率は特に限定されないが、モル比で通常、1:2〜1:8程度である。金属塩と置換ピラジンの比率は、モル比で通常、1:0.5〜1:10程度である。
【0048】
本発明の分離膜は、特にパーベーパレーション法等により水−有機化合物混合液から有機化合物を分離することに好適に用いられる。
【0049】
分離できる有機化合物は限定的でなく、有機金属錯体の種類等により幅広い範囲から選択できる。例えば、バイオマスアルコールや、酸素原子を含有する炭素数7程度以下(好ましくは5程度以下)である有機化合物が好適に挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、ジオキサン等からなる群から選択させる少なくとも1種が挙げられる。
【0050】
水−有機化合物混合液中の有機化合物の含有割合は特に限定されないが、0.1〜30wt%程度が好ましく、0.5〜15wt%程度がより好ましい。
【0051】
本発明のパーベーパレーション法は、上記本発明の分離膜を用いる限り限定的でなく、常法に従って行えばよい。
【0052】
具体的には、例えば、図1に示すように、水−有機化合物混合液含有層(フィード部)1と減圧部5の間に本発明の分離膜2を配置し、必要に応じてフィード部を攪拌しながら、所望の温度に保てばよい。これにより、コールドトラップ3に、透過物(有機化合物)が捕集される。
【0053】
減圧部は、大気圧より圧力が下がっていればよいが、本発明では、好ましくは10torr以下、より好ましくは2torr以下である。これにより、より一層効率よく有機化合物を分離できる。
【0054】
水−有機化合物混合液の温度は限定的でなく、通常、10〜35℃程度、好ましくは10〜30℃程度とすればよい。
【0055】
分離係数は、分離する有機化合物等に応じて適宜決定されるが、通常5〜5000程度、好ましくは100〜3000程度である。分離係数(α)は次式に従って算出することができる
a = (Ya/Yb)/(Xa/Xb)
ただし、Xaは、フィード部中の有機化合物の重量分率を示し、Xはフィード部中の水の重量分率を示し、Yaは透過液中の有機化合物の重量分率を示し、Yは透過液中の水の重量分率を示す。
【0056】
透過流速も、分離する有機化合物等に応じて適宜決定されるが、通常50〜5000g/mh程度、好ましくは100〜1000g/mh程度である。透過流束の求め方は(透過物の重量(g))÷(膜面積(m2)×透過処理時間(h))によって求めることができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明の分離膜によれば、樹脂に一般式(1)で表される構成単位を有する有機金属錯体単結晶構造が分散されているため、水−有機化合物混合液から、有機化合物を選択的に高効率で分離できる。
【0058】
本発明の分離膜によれば、有機金属錯体単結晶を用いるため、ゼオライトを用いた場合に生じる-Si-O-Si-O-構造の分解による-Si-OH(水酸基)への変性といった問題が生じず、耐久性に優れる。
【0059】
本発明の分離膜によれば、高分子膜が疎水性であるため、分離膜の性能劣化を防止することができる。
【0060】
本発明の分離法によれば、特にバイオマスアルコールなどを高効率で分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1
酢酸銅(II)一水和物 80mg (2.4x10-4mol)及び安息香酸117.2mg (8.4x10-4mol)をメタノール80mlに溶かした。これを濾過した後、ピラジン8.0mgを加えて室温で24時間反応させることにより、青色の単結晶(Cu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶)12.2mg (収率58.6%)を生成した。これをメノウ乳鉢を用いて、一辺の平均長が約0.5mmとなるように粉砕した。
【0063】
この得られた一辺の平均長が0.5mmのCu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶0.2gとポリジメチルシロキサン(PDMS)(信越化学製)10gとを混合して5mm厚、300mm×300mmのPTFE板上に広げて混合物を流して同形状のPTFE板で挟み50℃、24hで硬化することにより厚み300μmの膜とした後、直径32mmの円形に裁断した。得られた膜をテフロン(登録商標)板からはがした後、真空中、65℃で乾燥することにより、本発明の分離膜を製造した。
【0064】
製造した分離膜を、図1に示すようにパーベーパレーション装置内に取り付け、30℃にて下記表1の各有機化合物(水中に5重量%含有)に対して各個別にそれぞれ分離測定を行った。コールドトラップ内に捕集した透過物をガスクロマトグラフ(島津製GC-17A)で構成を調べ、以下の式より分離係数ならびに透過流束を算出した。この結果を表1に併記する。
透過流束=(透過物の重量(g))÷(膜面積(m2)X透過処理時間(h))
分離係数a= (Ya/Yb)/(Xa/Xb)
(Xaは、フィード部中の有機化合物の重量分率を示し、Xはフィード部中の水の重量分率を示し、Yaは透過液中の有機化合物の重量分率を示し、Yは透過液中の水の重量分率を示す。)
【0065】
【表1】

【0066】
実施例2
ポリスルホン500g(ACROS製)を200℃に加熱して溶解し、これに Cu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶10gを混合して同温度に加熱した厚さ4mm、300mmX300mmのガラス板に流して同形状のガラス板で挟み、室温まで温度が下がるまで放置した。厚み200μmの膜にした後、32mmの円形に裁断して実施例1と同様にして、本発明の分離膜を製造した。
【0067】
製造した分離膜を実施例1と同様にして分離測定を行ったところ、表2に示す結果が得られた。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例3
Cu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶10gをポリフッ化ビニル800g(デュポン社製)に混合して210℃で10分以上加熱し、厚み300μmの膜とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の分離膜を製造した。
【0070】
製造した分離膜を実施例1と同様にして分離測定を行ったところ、表3に示す結果が得られた。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例4
Cu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶10gをポリプロピレン600g(日本ポリケム株式会社製、商品名「ポリプロピレン超低融点ランダム共重合体」)に混合して120℃で10分以上加熱し、厚み250μmの膜とした以外は、実施例2と同様にして、本発明の分離膜を製造した。
【0073】
製造した分離膜を実施例1と同様にして分離測定を行ったところ、表4に示す結果が得られた。
【0074】
【表4】

【0075】
実施例5
メタクリル酸メチルとメタクリル酸パーフルオロアルキル(85:15)(キシダ化学社製)とのブロック共重合体700gにCu[(OCOC6H5)4(C4H4N2)]単結晶10gを混合して190℃で10分以上加熱し厚さ4mm、300mmX300mmのガラス板に流して同形状のガラス板で挟み、室温まで温度が下がるまで放置した。厚み250μmの膜とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の分離膜を製造した。
【0076】
製造した分離膜を実施例1と同様にして分離測定を行ったところ、表5に示す結果が得られた。
【0077】
【表5】

【0078】
実施例6
実施例1において、酢酸銅(II)一水和物 80mg (2.4x10-4mol)の代わりに、安息香酸ロジウム(II)二量体40mg (0.84x10-4mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の分離膜を製造した。
【0079】
製造した分離膜を実施例1と同様にして分離測定を行ったところ、メタノールの分離係数は1500(透過流束2500g/m2h)、エタノールの分離係数は2000(透過流束4000g/m2h)であった。
【0080】
評価
上記表1〜5等から明らかなように、本発明の分離膜はバイオマスアルコールの分離係数が1000以上と良好な分離測定結果を示し、分離膜として優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、実施例1〜6で用いたパーベーパレーション法の測定装置の概略図を示す。
【符号の説明】
【0082】
1.バイオマス層(フィード部)
2.当該分離膜
3.コールドトラップ
4.減圧ポンプ
5.減圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水−有機化合物混合液から当該有機化合物を分離するための分離膜であって
1)前記分離膜は、樹脂に有機金属錯体が分散されてなり、
2)前記有機金属錯体は、下記一般式(1);
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)
を構成単位とする単結晶構造である、
ことを特徴とする分離膜。
【請求項2】
はフェニル基である、請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】
は−C−で示される複素環式基である、請求項1又は2に記載の分離膜。
【請求項4】
前記樹脂が疎水性樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜。
【請求項5】
前記疎水性樹脂がポリジメチルシロキサン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリテトラフルオトエチレンからなる群のうち少なくとも1種である、請求項4に記載の分離膜。
【請求項6】
有機化合物が、酸素原子を含有する炭素数7以下の化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜。
【請求項7】
水−有機化合物混合液から有機化合物を分離する方法であって、
下記式(1):
−[M(OCOR]− (1)
(ただし、Mは、銅(II)又はロジウム(II)を示し、Rは、置換基を有することのあるアリール基を示し、Rは、窒素原子を2個有する複素環式基を示す。)
を構成単位とする有機金属錯体単結晶が樹脂に分散されてなる分離膜を用いてパーベーパレーション法を行うことにより、水−有機化合物混合液から有機化合物を分離する工程を備えた、有機化合物分離方法。
【請求項8】
前記水−有機化合物混合液中の有機化合物の含有量が0.5〜15重量%である、請求項7に記載の有機化合物分離方法。
【請求項9】
前記有機化合物が、酸素原子を含有する炭素数7以下の化合物である、請求項7又は8に記載の分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−55326(P2008−55326A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235553(P2006−235553)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】