説明

有機化合物

本発明は、アリピプラゾールの新規の多形型およびそれらを製造するための方法に関する。本発明はさらに、新規型を含む医薬組成物に関し、および統合失調症の治療における新規型の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリピプラゾールの新規の多形型およびこれらの製造方法に関する。本発明はさらに、該新規の型を含む医薬組成物および統合失調症の治療における該新規の型の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アリピプラゾール、すなわち7−[4−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−1−ピペラジニル]ブトキシ]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノンは、統合失調症の治療において有用な抗精神病薬である(Merck Index、モノグラフ番号00791、CAS登録番号129722−12−9)。アリピプラゾールの合成および単離が、EP367141 B1およびUS5006528に記載されている。更なる結晶性無水型または水和型が、WO03/026659に開示されている(従来の水和物、水和物A、従来の無水物、無水物B、無水物C、無水物D、無水物E、無水物F、無水物G)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それにもかかわらず、商業規模の医薬品加工に適した特性を有するアリピプラゾールの別の多形型が未だ必要とされている。本発明は、アリピプラゾールの新規の多形型およびそれらの製造方法を提供することによりこれらの必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、10.0、11.6、15.7、16.3、18.5、20.4、21.8、22.2および23.3度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールの型Xに関する。
【0005】
本発明はさらに、17.4、18.1、19.6、23.3および27.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。
【0006】
本発明はまた、11.5、17.3、18.5、19.8、23.1、24.4および26.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物にも関する。
【0007】
本発明は、
a)アリピプラゾールを適した溶媒に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温またはそれ以下にゆっくりと冷却して結晶化させる段階、
c)アリピプラゾールの結晶型Xを場合により単離する段階、
を含む、アリピプラゾールの型Xを調製するための方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、アリピプラゾールの適した溶媒中の懸濁液に型Xの結晶の種晶を入れ、アリピプラゾールの用いられた型を型Xに変換するために、該懸濁液が、適した温度で撹拌されることを特徴とする、アリピプラゾールの型Xを調製するための方法を提供する。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、
a)アリピプラゾールをエタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0010】
1つのさらなる態様において、本発明は、
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をエタノールで希釈する段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0011】
1つのさらなる態様において、本発明は、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に変換するためにアリピプラゾールのエタノール中の懸濁液が適した温度で撹拌されることを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、
a)アリピプラゾールをメタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0013】
1つのさらなる態様において、本発明は、
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒中にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をメタノールで希釈する段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0014】
1つのさらなる態様において本発明は、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールメタノール溶媒和物に変換するために、アリピプラゾールのメタノール中の懸濁液を適した温度で撹拌することを特徴とする、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、医薬として用いるための、アリピプラゾールの型Xまたはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物にも関する。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、統合失調症の治療のための医薬を調製するためのアリピプラゾールの型Xの使用またはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の使用に関する。
【0017】
1つのさらなる態様において、本発明は、アリピプラゾールの型Xの有効量またはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の有効量および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物に関する。
【0018】
本発明のその他の目的、特徴、利点および態様は、以下の記述から当業者に明らかとなる。しかしながら、記述および以下の特定の実施例が、本発明の好ましい実施形態を示しながら例示としてのみ示されることを理解されたい。開示される本発明の精神および範囲内の種々の変更および改変は、記述を読むことによりおよび本開示の他の部分を読むことにより当業者に、容易に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書中において、用語「粗」は、洗浄および/または再結晶しておらず、存在し得る不純物を除去していないアリピプラゾールの結晶をいう。
【0020】
本明細書中において、用語「結晶性」は、洗浄および再結晶して不純物を除去したアリピプラゾールの結晶をいう。
【0021】
本明細書中において、用語「非晶質」は、規則的な結晶性構造を欠く固体物質に関する。
【0022】
用語「室温」は、本明細書中において、適用される温度が重大でなく、維持されなければならない正確な温度値がないことを示す。通常、「室温」は、約15℃から約25℃の平均温度を意味すると理解される(例えば、EU Pharmacopeia5.0,6頁を参照)。
【0023】
本発明の発明者らは、アリピプラゾールの新規多形を特定した。この新規多形は、独特な物性を有し、例えば典型的な粉末X線回折パターン、赤外スペクトルまたは特徴的な熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)曲線により特徴付けることができる。これらの特徴の各々は、それ自体だけでも新規の多形を明確に定義および特定するのに十分であるけれども、それらはまた互いに組み合わされ得る。
【0024】
本発明は、10.0、11.6、15.7、16.3、18.5、20.4、21.8、22.2および23.3度の2θ(2シータ)にピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする新規のアリピプラゾールの型Xに関する。
【0025】
アリピプラゾールの型Xの特徴的な粉末X線回折パターンを図4に示し、いくつかの特徴的なピークを表1に列挙する。従って、1つの好ましい実施形態において、本発明は、実質的に表1および図4に従う粉末X線回折パターンを特徴とする新規のアリピプラゾールの型Xに関する。
【0026】
アリピプラゾールの型Xはまた、図1に示すような典型的な赤外スペクトルによっても特徴付けることができる。従って、1つのさらなる好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図1に従う赤外スペクトルを特徴とするアリピプラゾールの型Xに関する。特徴的なバンドは、2939、2803、1677、1374、1191、1168、1045、868、822および736cm−1に存在する。
【0027】
また、アリピプラゾールの型Xは、5°K/分の加熱速度で典型的なDSC曲線を示し、実質的にTGA分析における質量損失がない。アリピプラゾールの型Xの典型的なサーモグラムを図7に示す。型XのDSC曲線が、約119℃および149℃の開始温度を有する2つの特定の吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【0028】
従って、1つのさらに好ましい実施形態において、本発明は、示差走査熱量測定において、5°K/分の加熱速度で約119℃および149℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とするアリピプラゾールの型Xに関する。
【0029】
アリピプラゾールの型Xは新規の無水型であり、以後「型X」とも称する。これは、特に安定であるので、大量の調製および取り扱いに適している。アリピプラゾールの型Xは、低吸湿性であることが見出されており、実質的にアリピプラゾールの水和型に転換しない。このことは、図10に示す型Xの水分吸着等温線から分かり得る。
【0030】
本発明はさらに、17.4、18.1、19.6、23.3および27.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。
【0031】
アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の特徴的な粉末X線回折パターンを図5に示し、いくつかの特徴的なピークを表2に列挙する。従って、1つの好ましい実施形態において本発明は、実質的に表2および図5に従う粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。
【0032】
アリピプラゾールエタノール半溶媒和物はまた、図2に示すような典型的な赤外スペクトルによって特徴付けることができる。従って、1つのさらなる好ましい実施形態において本発明は、実質的に図2に従う赤外スペクトルを特徴とするアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。特徴的なバンドは、2949、2816、1670、1378、1192、1171、1047、854、830および746cm−1に存在する。
【0033】
また、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物は、TGA曲線における典型的な段階および5°K/分の加熱速度での特徴的なDSC曲線を示す。アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の典型的なサーモグラムを、図8に示す。アリピプラゾールエタノール半溶媒和物のDSC曲線(ピンホールを有するサンプル皿)は、約97℃の開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【0034】
従って、1つのさらなる好ましい実施形態において、本発明は、示差走査熱量測定において5°K/分の加熱速度で、約97℃の開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。
【0035】
もう1つの態様において、本発明は、11.5、17.3、18.5、19.8、23.1、24.4および26.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物に関する。
【0036】
アリピプラゾールメタノール溶媒和物の特徴的な粉末X線回折パターンを図6に示し、いくつかの特徴的なピークを表3に列挙する。従って、1つの好ましい実施形態において、本発明は、実質的に表3および図6に従う粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物に関する。
【0037】
アリピプラゾールメタノール溶媒和物はまた、図3に示すように典型的な赤外スペクトルによっても特徴付けることができる。従って、1つのさらなる好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図3に従う赤外スペクトルを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物に関する。特徴的なバンドは、2942、2814、1671、1377、1199、1174、1037、857、824および746cm−1に存在する。
【0038】
また、アリピプラゾールメタノール溶媒和物は、TGA曲線における典型的な段階および5°K/分の加熱速度で特徴的なDSC曲線を示す。アリピプラゾールメタノール溶媒和物の典型的なサーモグラムを図9に示す。アリピプラゾールメタノール溶媒和物のDSC曲線(ピンホールを有するサンプル皿)は、約113°
Cの開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【0039】
従って、1つのさらなる好ましい実施形態において、本発明は、示差走査熱量測定において、5°K/分の加熱速度で、約113°
Cの開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物に関する。
【0040】
前記で述べたように、上記のデータの各々だけでも、新規のアリピプラゾールの多形の各々を特徴付けるのに十分である。従って、本発明のさらなる実施形態は、その典型的な粉末X線回折パターンまたはその典型的な赤外スペクトルまたはその典型的な熱重量分析/示差走査熱量測定の曲線を特徴とする各多形に関する。
【0041】
1つの実施形態において、本発明は、
a)アリピプラゾールを適切な溶媒中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)アリピプラゾールの結晶型Xを場合により単離する段階、
を含む、アリピプラゾールの型Xを調製するための第1方法を提供する。
【0042】
上記第1方法に従ってアリピプラゾールの型Xを調製するために、例えばWO03/026659に開示されている型(従来の水和物、水和物A、従来の無水物、無水物B、無水物C、無水物D、無水物E、無水物F、無水物G)などのアリピプラゾールのいずれかのその他の型が用いられ得る。また、非結晶質型および低結晶性順序の型などのアリピプラゾールの非結晶性型、または粗アリピプラゾールもまた用いられ得る。
【0043】
特に、上述した本発明のアリピプラゾールの他の新規の型、すなわちアリピプラゾールエタノール半溶媒和物およびアリピプラゾールメタノール溶媒和物またはアリピプラゾール水和物は、アリピプラゾールの型Xを調製するために用いられ得る。当然ながら、アリピプラゾールの2つ以上の異なる型の混合物を用いることもできる。従って、1つの好ましい実施形態において、上記第1方法の段階a)において用いられる型は、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物および/またはアリピプラゾールメタノール溶媒和物および/またはアリピプラゾール水和物である。
【0044】
上記第1方法に従って、適した溶媒は、物質がその中で高度に可溶性ではない溶媒である。適さない溶媒は、純水、エタノールまたはメタノールである。なぜなら対応する溶媒和物が形成されるからである。1つの好ましい実施形態において、上記第1方法の段階a)において用いられる溶媒は、アセトン、テトラヒドロフランまたは2−プロパノールである。なお、より好ましい溶媒は、2−プロパノールである。
【0045】
アリピプラゾールを溶解するために適用される加熱温度は、用いる溶媒の沸点に依存するが、通常50℃から100℃の範囲内である。好ましい温度は、溶媒の沸点である。2−プロパノールを用いる場合、アリピプラゾールは、好ましくは加熱することにより2−プロパノール1リットルあたり約20gから約40gの濃度で、最も好ましくは2−プロパノール1リットルあたりアリピプラゾール約30gから約35gの濃度で溶解する。
【0046】
上記第1方法の結晶化段階b)は、アリピプラゾールの型Xの種晶を添加することにより促進され得る。従って、1つの好ましい実施形態において、上記第1方法の段階b)において、アリピプラゾールの型Xの種晶が添加される。1つの好ましい実施形態において、種晶は、約80℃から40℃の間の温度で、好ましくは約70℃から50℃の温度で、好ましくは約70℃から60℃の温度で、アリピプラゾールの2−プロパノール中の溶液に添加され、次いで該懸濁液は、第1段階において約60℃から40℃の温度、好ましくは約50℃から40℃の温度までゆっくりと冷却され、続いて第2段階において該懸濁液を約20℃から0℃、好ましくは10℃から0℃までさらに冷却される。場合により該懸濁液は40℃から60℃の温度に、好ましくは約50℃から60℃の温度に再び加熱され、上述したように再び冷却される。
【0047】
もう1つの実施形態において、本発明は、アリピプラゾールの適切な溶媒中の懸濁液に型Xの結晶の種晶を入れ、アリピプラゾールの用いられた型を型Xに変換するために適した温度で、該懸濁液を撹拌することを特徴とするアリピプラゾールの型Xを調製するための第2方法を提供する。
【0048】
上述した第1方法についてと全く同じように、アリピプラゾールの型Xを調製するためのこの第2方法についても、アリピプラゾールのいずれかのその他の型が、即ちいずれかの結晶性非溶媒和または溶媒和の型、非結晶性または非晶質の型または粗アリピプラゾールが、用いられ得る。好ましくは、本発明のアリピプラゾールの他の新規の型、即ちアリピプラゾールエタノール半溶媒和物およびアリピプラゾールメタノール溶媒和物またはアリピプラゾール水和物が、用いられ得る。
【0049】
しかしながら、この第2方法は、与えられた条件下で型Xよりも熱力学的に不安定なアリピプラゾールのいずれかの型の溶液介在変換に基づく。従って、型Xへの変換は、型Xが約60℃未満の温度で最小ギブス自由エネルギーを有するという事実に起因して熱力学的に制御された方法である。結果的に、アリピプラゾールの全ての公知の固体結晶性または非結晶性型は、本方法において用いられ得る。
【0050】
上記の第2方法に従えば、適した溶媒は、アリピプラゾールと結晶性溶媒和物を形成せず、物質がその中で高度に可溶性でない溶媒または溶媒混合物である。1つの好ましい実施形態において、アリピプラゾールの型Xを調製するために上記の第2方法において用いられる溶媒は、2−プロパノール、アセトン、1−ブタノールまたは1−プロパノールから選択される。
【0051】
アリピプラゾールの懸濁された型を型Xに変換するために、懸濁液を撹拌する温度は、アリピプラゾールの型および用いられる溶媒に依存する。室温または高温を適用することができるが、通常10℃から60℃の範囲内である。しかしながら、アリピプラゾールの用いられた型が懸濁液の状態のままであり、溶解しないように、溶媒および温度を選択することが重大である。従って、適した溶媒および温度を決定することは、十分に当業者の一般的な知識の範囲内である。
【0052】
1つの好ましい実施形態において、溶媒は、2−プロパノールであり、好ましい温度範囲は、アリピプラゾールの型Xの形成時に、約10℃から約80℃、好ましくは約60℃から約40℃の温度、最も好ましくは約60℃から約50℃の温度である。次に、アリピプラゾールは、溶液を冷却した後に単離される。型Xの形成に十分な時間は、数分間(例えば、15から30分間)から数日間(例えば、2から6日間)まで変動する。場合により合間に、懸濁液は、より低温に(例えば、ある温度からおよそ周囲温度に)冷却され得、次いで該懸濁液は、望ましい温度まで再加熱される。
【0053】
1つのさらなる実施形態において、本発明は、
a)アリピプラゾールをエタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための第1方法を提供する。
【0054】
上述したアリピプラゾールの型Xを調製するための方法についてと全く同じように、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するためのこの第1方法についても、アリピプラゾールのいずれかのその他の型、即ちいずれかの結晶性非溶媒和のまたは溶媒和の型、いずれかの非結晶性または非晶質の型および粗アリピプラゾールが、用いられ得る。好ましくは、本発明のアリピプラゾールの他の新規の型、即ちアリピプラゾールの型Xおよびアリピプラゾールメタノール溶媒和物またはアリピプラゾール水和物が、用いられ得る。
【0055】
アリピプラゾールを溶解するために適用される加熱温度は、用いる溶媒の沸点に依存するが、通常50℃から100℃の範囲内である。好ましい温度は、溶媒の沸点である。
【0056】
約60℃未満の温度でエタノール半溶媒和物を乾燥させることは、種々の適した条件下の種々の方法において行うことができる。乾燥時間および乾燥温度は、反比例するので、例えば、乾燥時間が長くなるほど乾燥温度は低く、乾燥時間が短くなるほど乾燥温度は高くなる。特に適したおよび好ましいのは、室温で空気乾燥すること、室温で、真空下で一晩乾燥すること、または50℃で2時間乾燥することである。
【0057】
あるいは、エタノール半溶媒和物を調製するための溶媒として純粋なエタノールを用いる代わりに、アリピプラゾールを、アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒、例えば塩化メチレン、テトラヒドロフランまたはアミドなど(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン)に溶解してよい。適した溶媒は、室温で約10mlまたはそれ未満の体積の溶媒中に1グラムのアリピプラゾールを溶解することができる溶媒である。良好な溶解性のために、溶媒は、少量しか必要でない。濃縮溶液は、次にエタノールで希釈され、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の結晶化をもたらす。
【0058】
この方法は、高収率のアリピプラゾールエタノール半溶媒和物を提供し、粗アリピプラゾールの精製のための実用的な方法であることも表している。なぜなら、また粗アリピプラゾールの不純物のほとんどがアリピプラゾールエタノール半溶媒和物よりもより可溶性であり、溶液中に残存するからである。
【0059】
従って、1つのさらなる実施形態において、本発明は、
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をエタノールで希釈する段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための第2方法を提供する。
【0060】
1つの好ましい実施形態において、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための上記の第2方法において用いられる溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンから選択される。
【0061】
段階a)において用いられるアリピプラゾール型および乾燥段階d)の実施に関して、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための第1方法について上述したのと同じことが適用される。
【0062】
1つのさらなる実施形態において、本発明は、アリピプラゾールのエタノール中の懸濁液を、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に変換するために、適した温度で撹拌することを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための第3方法を提供する。
【0063】
用いられるアリピプラゾール型に関して、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための第1および第2方法について上述したのと同じことが適用される。
【0064】
アリピプラゾールの懸濁された型をアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に変換するために、懸濁液を撹拌する温度は、室温であっても、高温であってもよい。通常、これは、10℃から40℃の範囲内である。しかしながら、アリピプラゾールの用いられた型が懸濁液の状態のままであり溶解しないように温度を選択することが重大である。従って、適した温度を決定することは、当業者の通常の知識の十分な範囲内である。
【0065】
本発明はまた、
a)アリピプラゾールをメタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための第1方法にも関する。
【0066】
アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するためのこの第1方法に対しても、アリピプラゾールのいずれかの型、即ちいずれかの結晶性の非溶媒和または溶媒和型、いずれかの非結晶性または非晶質型および粗アリピプラゾールが、用いられ得る。好ましくは、本発明のアリピプラゾールのその他の新規の型、即ちアリピプラゾールの型Xおよびアリピプラゾールエタノール半溶媒和物またはアリピプラゾール水和物が、用いられ得る。
【0067】
約60℃未満の温度におけるメタノール溶媒和物を乾燥させることは、種々の適切な条件下の種々の方法において行うことができる。乾燥時間および乾燥温度は、反比例するので、例えば乾燥時間が長くなるほど乾燥温度は低く、乾燥時間が短くなるほど乾燥温度は高くなる。特に適したおよび好ましいのは、室温で空気乾燥すること、室温で真空下で一晩乾燥することまたは50℃で2時間乾燥することである。
【0068】
別に、メタノール溶媒和物を調製するための溶媒として純粋のメタノールを用いる代わりに、アリピプラゾールを、アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒、例えば塩化メチレン、テトラヒドロフランまたはアミドなど(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン)に溶解してよい。適した溶媒は、室温で約10mlまたはそれ未満の体積の溶媒中に1グラムのアリピプラゾールを溶解することができる溶媒である。良好な溶解性のために、溶媒は、少量しか必要でない。濃縮溶液は、次にメタノールで希釈されて、アリピプラゾールメタノール溶媒和物の結晶化をもたらす。
【0069】
この方法は、高収率のアリピプラゾールメタノール溶媒和物を提供し、粗アリピプラゾールの精製のための実用的な方法であることも表している。なぜなら、また粗アリピプラゾールの不純物のほとんどがアリピプラゾールメタノール溶媒和物よりも、より可溶性であり溶液中に残存するからである。
【0070】
従って、もう1つの態様において、本発明は、
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をメタノールで希釈する段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための第2方法に関する。
【0071】
1つの好ましい実施形態において、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための上記の第2方法において用いられる溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンから選択される。
【0072】
段階a)において用いられるアリピプラゾール型および乾燥段階d)の実施に関して、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための第1方法について上述したのと同じことが適用される。
【0073】
1つのさらなる実施形態において、本発明は、アリピプラゾールのメタノール中の懸濁液を、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールメタノール溶媒和物に変換するために適した温度で撹拌することを特徴とする、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための第3方法を提供する。
【0074】
用いられるアリピプラゾール型に関して、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための第1および第2方法について上述したのと同じことが、適用される。
【0075】
アリピプラゾールの懸濁された型をアリピプラゾールメタノール溶媒和物に変換するために懸濁液を撹拌する温度は、室温であっても、高温であってもよい。通常、これは10℃から40℃の範囲内である。しかしながら、アリピプラゾールの用いられた型が懸濁液の状態のままであり溶解しないように温度を選択することが重大である。従って、適した温度を決定することは、当業者の通常の知識の十分な範囲内である。
【0076】
本発明のアリピプラゾールの新規の型は、抗精神病薬として単独で、または1つ以上の適した薬学的に許容できる担体と一緒にその新規の型を含む、適した医薬組成物の型で用いられ得る。本発明のアリピプラゾールの新規の型を含む医薬組成物は、公知の方法に従って調製される。
【0077】
従って、本発明は、医薬として用いるためのアリピプラゾールの型Xまたはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に関する。
【0078】
アリピプラゾールの新規の型は、統合失調症の治療に特に有用である。従って、本発明はまた、統合失調症の治療のための医薬を調製するための、アリピプラゾールの型Xまたはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の使用にも関する。
【0079】
本発明はさらに、アリピプラゾールの型Xの有効量またはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の有効量および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物に関する。この医薬組成物は、当分野の状況において公知であるような、およびWO03/026659において他の結晶性型および多形型に対して記載されているような湿式造粒方法を介して調製され得る。もう1つの適した調製方法は、速溶解性錠剤(flash−melt tablet)を形成することであってよい。
【0080】
本発明は、さらに、以下の実施例を参照して記載される。これらの実施例は、例示目的のためだけに提供されるものであり、決して本発明を限定するために意図されるものではない。
【0081】
(実施例) ダイアモンドATRを備えたBRUKER FTIR−Tensor27を用いて、赤外スペクトルを記録する。XRPDを、AXS−BRUKER粉末X線回折計D−8上に、以下の取得条件:筒型陽極:Cu;発電装置の起電力:40kV;発電装置の電流:40mA;開始角度:2.0°θ;終了角度:40.0°θ;ステップサイズ:0.01°θ;1ステップあたりの秒数:2秒を用いて記録する。示差走査熱量測定(DSC)を、DSC7(Perkin−Elmer,Norwalk、Ct.、USA製)によって、Pyris2.0ソフトウェアを用いて実施する。サンプルを、25μlのAl‐パン中に秤量する。乾燥窒素をパージガスとして用いる(パージ:20ml/分)。
【0082】
熱重量分析を、Windows(登録商標) NT用のPyrisソフトウェアを用いて熱重量分析システムTGA−7(Perkin−Elmer,Norwalk、Ct.、USA製)、50μL白金パン、窒素パージガス(サンプルパージ:20mL/分、バランスパージ:40mL/分)を用いて実施する。
【実施例1】
【0083】
EP367141B1に記述されているようにして得られたアリピプラゾール無水物型A25gを、250mlイソプロパノール中で撹拌して、透明な溶液が得られるまで煮沸状態で加熱する。撹拌しながら室温まで冷却した後、その沈殿生成物を濾過し、室温で真空中一晩乾燥して、本明細書中で型Xと称する無水多形の24.12g(96.5%)を得る。
【0084】
上記で得られたアリピプラゾール無水物の型X結晶は、2939、2803、1677、1374、1191、1168、1045、868、822および736cm−1にピークを有する赤外スペクトルを提供する(図1)。
【0085】
特徴的なXRPD角、格子面間隔および相対強度を有する、アリピプラゾールの型XのXRPDパターンを、表1および図4に示す。
【0086】
【表1】


【0087】
アリピプラゾールの型Xは、5°K/分の加熱速度で典型的なDSC曲線を示し、TGA分析において実質的に質量損失を示さない。アリピプラゾールの型Xの典型的なサーモグラムを図7に示す。型Xは、約119℃および149℃の開始温度の2つの特異的な吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【実施例2】
【0088】
EP367141B1に記述されているようにして得られるアリピプラゾール無水物型Aの5gを20mlテトラヒドロフラン中で撹拌して、透明な溶液が得られるまで煮沸状態で加熱する。室温まで冷却した後、その懸濁液を更に3時間撹拌し、次いで冷蔵庫中で2日間放置する。その沈殿生成物を濾過し、室温で真空下で一晩乾燥して、生成物の型Xの2.95g(59%)を得る。
【実施例3】
【0089】
WO03/026659の参考実施例1中に記述されているようにして得られる7gのアリピプラゾール無水物型Aの懸濁液を50mlのアセトン中で撹拌し、7.5時間加熱還流する。その混合物を濾過し、不溶性固体を室温でデシケーター内で一晩乾燥して、生成物の型X4.48g(64%)を得る。
【実施例4】
【0090】
EP367141B1に記述されているようにして調製される粗アリピプラゾール100gを無水エタノール1500ml中に懸濁し、次いで加熱還流する。得られた溶液を室温までゆっくりと冷却して生成物を結晶化する。0℃で1時間撹拌した後、沈殿生成物を濾過し、室温で真空中17時間乾燥して、生成物のエタノール半溶媒和物102.7g(97.7%)を得る。その結晶は、無色板状の形である。その生成物中のエタノールの含有量は、約5.0重量%である。すなわちその化合物は、アリピプラゾール1モルあたり0.5モルのエタノールを含むエタノール半溶媒和物である。上記で得られるアリピプラゾールのエタノール半溶媒和物は、2949、2816、1670、1378、1192、1171、1047、854、830および746cm−1にピークを有する赤外スペクトルを提供する(図2)。
【0091】
特徴的なXRPD角、格子面間隔および相対強度を有するアリピプラゾールエタノール半溶媒和物のXRPDパターンを、表2および図5に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
アリピプラゾールエタノール半溶媒和物は、5°K/分の加熱速度でTGAおよびDSC分析において典型的な吸熱曲線を示す。アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の典型的なサーモグラムを図8に示す。アリピプラゾールエタノール半溶媒和物は、約97℃の開始温度の吸熱ピーク、それに続く発熱事象および約139℃および148.5℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【実施例5】
【0094】
EP367141B1に記述されているようにして調製される粗アリピプラゾール100gを1500mlの無水エタノール中に懸濁し、次いで加熱還流する。得られた溶液を室温までゆっくりと冷却して生成物を結晶化する。0℃で1時間撹拌した後、沈殿生成物を濾過し、50℃で真空中2時間乾燥する。
【実施例6】
【0095】
EP367141B1に記述されているようにして得られるアリピプラゾール無水物型Aの15gを1600mlのメタノールに加え、その混合物を加熱還流して透明な溶液を得る。次にその溶液を室温までゆっくりと冷却し、さらに2時間撹拌して、冷蔵庫内で数日間放置する。沈殿した結晶を吸引により単離し、室温で真空中乾燥して生成物のメタノール溶媒和物15.2g(93.7%)を得る。この結晶は、無色板状の形である。この生成物中のメタノールの含有量は、約6.7重量%である。すなわち、この化合物は、アリピプラゾール1モルあたり1モルのメタノールを含むメタノールモノ溶媒和物である。
【0096】
上記で得られたアリピプラゾールのメタノール溶媒和化合物は、2942、2814、1671、1377、1199、1174、1037、857、824および746cm−1にピークを有する赤外スペクトルを提供する(図3)。特徴的なXRPD角、格子面間隔および相対強度を有するアリピプラゾールメタノール溶媒和物のXRPDパターンを、表3および図6に示す。
【0097】
【表3】


【0098】
アリピプラゾールメタノール溶媒和物は、5°K/分の加熱速度で、TGAおよびDSC分析において典型的な吸熱曲線を示す。アリピプラゾールメタノール溶媒和物の典型的なサーモグラムを図9に示す。アリピプラゾールメタノール溶媒和物が、約113℃の開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象および約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを示すことが分かり得る。
【実施例7】
【0099】
EP367141B1に記述されているようにして得られる粗アリピプラゾール無水物型Aの1gをジクロロメタン10ml中に溶解する。その溶液をメタノール40mlで希釈し、次いで冷蔵庫中に一晩放置する。沈殿した結晶を吸引により単離し、室温で真空中乾燥して生成物のメタノール溶媒和物0.93g(86.0%)を得る。
【実施例8】
【0100】
実施例4のエタノール半溶媒和物5gを、上記実施例1で得られる種晶を用いてイソプロパノール55mlから再結晶化する。収量は、アリピプラゾールの型Xの4.5g(94.6%)である。
【実施例9】
【0101】
エタノール半溶媒和物の代わりに上記実施例5で得られるメタノール溶媒和物3gを用いて実施例8を反復する。収量は、アリピプラゾールの型Xの2.7g(96.8%)である。
【実施例10】
【0102】
実施例8を反復するが、その出発物質としてエタノール半溶媒和物を用いる代わりにWO03/026659の参考実施例3に記述されているようにして得られるアリピプラゾール水和物の5gを用いる。収量は、アリピプラゾールの型Xの4.5g(93.6%)である。
【実施例11】
【0103】
EP367141B1に記述されているようにして得られるアリピプラゾール無水物型Aの5gおよびアリピプラゾールの型Xの0.5gをイソプロパノール55mlに懸濁し、50℃で一晩加熱し、次いで4日間室温で撹拌する。反応混合物の不溶性部分を濾過により回収し、室温で真空中一晩乾燥してアリピプラゾールの型X4.6g(92%)を得る。
【実施例12】
【0104】
EP367141B1に記述されているようにして得られるアリピプラゾール無水物型Aの5gをエタノール50mlに懸濁し、室温で3時間撹拌する。その固体を濾過し、室温で真空中17時間乾燥してアリピプラゾールのエタノール半溶媒和物の5.0g(95.1%)を得る。
【実施例13】
【0105】
EP367141B1に記述されているようにして得られるアリピプラゾール無水物型Aの33gのイソプロパノール1000ml中の懸濁液を還流温度に加熱する。得られた透明溶液を撹拌しながら65℃まで冷却し、次いでアリピプラゾール型Xの0.3gの種晶を入れる。さらに60℃まで冷却した後、アリピプラゾール型Xの0.3g種晶(第2回分)を加える。次いでその混合物を50℃までゆっくりと1時間かけて冷却し、次いで50℃から0℃に1時間かけて冷却する。0℃で1時間撹拌した後、得られた懸濁液を50℃に再加熱し、この温度で1または2時間撹拌し、次いで再度0℃に冷却する。1時間撹拌した後、沈殿生成物を濾過し、室温で真空中一晩または60℃で3時間乾燥して、アリピプラゾールの型Xの31.8g(94.5%)を得る。
【実施例14】
【0106】
実施例22において記述されたようにして得られるアリピプラゾール水和物5gをイソプロパノール80mlに懸濁し、アリピプラゾール型X0.5gの種晶を加え、50℃で一晩撹拌する。その懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、室温で真空下17時間乾燥してアリピプラゾール型X4.61g(85.5%)を得る。
【実施例15】
【0107】
水和物の代わりに出発物質としてエタノール半溶媒和物5gを用いて実施例14を反復する。収量は、アリピプラゾールの型Xの4.51g(84.3%)である。
【実施例16】
【0108】
実施例6において記述されたようにして得られるアリピプラゾールメタノール溶媒和物2gをイソプロパノール30mlに懸濁し、アリピプラゾールの型X0.5gの種晶を加え、50℃で一晩撹拌する。その懸濁液を室温まで冷却し、濾過し、室温で真空下17時間乾燥して、アリピプラゾール型X1.94g(77.2%)を得る。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】アリピプラゾールの型Xの赤外スペクトルを示す図である。
【図2】アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の赤外スペクトルを示す図である。
【図3】アリピプラゾールメタノール溶媒和物の赤外スペクトルを示す図である。
【図4】アリピプラゾールの型Xの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5】アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6】アリピプラゾールメタノール溶媒和物の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図7】アリピプラゾールの型Xの熱重量分析および示差走査熱量測定曲線を示す図である。
【図8】アリピプラゾールエタノール半溶媒和物の熱重量分析および示差走査熱量測定曲線を示す図である。
【図9】アリピプラゾールメタノール溶媒和物の熱重量分析および示差走査熱量測定曲線を示す図である。
【図10】アリピプラゾールの型Xの水分吸着等温線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10.0、11.6、15.7、16.3、18.5、20.4、21.8、22.2および23.3度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、アリピプラゾールの型X。
【請求項2】
実質的に表1および図4に従う粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項1に記載のアリピプラゾールの型X。
【請求項3】
実質的に図1に従う赤外スペクトルを特徴とする、請求項1に記載のアリピプラゾールの型X。
【請求項4】
示差走査熱量測定において、5°K/分の加熱速度で、約119℃および149℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とする、請求項1に記載のアリピプラゾールの型X。
【請求項5】
17.4、18.1、19.6、23.3および27.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物。
【請求項6】
実質的に表2および図5に従う粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項5に記載のアリピプラゾールエタノール半溶媒和物。
【請求項7】
実質的に図2に従う赤外スペクトルを特徴とする、請求項5に記載のアリピプラゾールエタノール半溶媒和物。
【請求項8】
示差走査熱量測定において、5°K/分の加熱速度で、約97℃の開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とする、請求項5に記載のアリピプラゾールエタノール半溶媒和物。
【請求項9】
11.5、17.3、18.5、19.8、23.1、24.4および26.9度の2θにピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とするアリピプラゾールメタノール溶媒和物。
【請求項10】
実質的に表3および図6に従う粉末X線回折パターンを特徴とする、請求項9に記載のアリピプラゾールメタノール溶媒和物。
【請求項11】
実質的に図3に従う赤外スペクトルを特徴とする、請求項9に記載のアリピプラゾールメタノール溶媒和物。
【請求項12】
示差走査熱量測定において、5°K/分の加熱速度で、約113℃の開始温度を有する吸熱ピーク、それに続く発熱事象、並びに約139℃および148℃の開始温度を有する2つの吸熱ピークを特徴とする、請求項9に記載のアリピプラゾールメタノール溶媒和物。
【請求項13】
a)アリピプラゾールを適した溶媒中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)アリピプラゾールの結晶型Xを場合により単離する段階、
を含む、アリピプラゾールの型Xを調製するための方法。
【請求項14】
段階a)において用いられる型が、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物および/またはアリピプラゾールメタノール溶媒和物および/またはアリピプラゾール水和物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階a)における溶媒が、アセトン、テトラヒドロフランまたは2−プロパノールであり、および/または段階b)において、アリピプラゾールの型Xの種晶が添加される、請求項13または請求項14に記載のアリピプラゾールの型Xを調製するための方法。
【請求項16】
溶媒が、2−プロパノールであり、好ましい温度範囲が、約40℃から約70℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アリピプラゾールの適した溶媒中の懸濁液に型Xの結晶の種晶を入れ、該懸濁液が、アリピプラゾールの用いられた型を型Xに変換するために、適した温度で撹拌されることを特徴とする、アリピプラゾールの型Xを調製するための方法。
【請求項18】
溶媒が、2−プロパノール、アセトン、1−ブタノールまたは1−プロパノールから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
溶媒が、2−プロパノールであり、好ましい温度範囲が、約40℃から約60℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
a)アリピプラゾールをエタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法。
【請求項21】
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をエタノールで希釈する段階、
c)結晶性エタノール半溶媒和物を単離する段階、
d)該エタノール半溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法。
【請求項22】
アリピプラゾールのエタノール中の懸濁液が、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールエタノール半溶媒和物に変換するために、適した温度で撹拌されることを特徴とする、アリピプラゾールエタノール半溶媒和物を調製するための方法。
【請求項23】
a)アリピプラゾールをメタノール中に加熱することにより溶解する段階、
b)該溶液を室温以下にゆっくりと冷却して、結晶化させる段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための方法。
【請求項24】
a)アリピプラゾールが室温で可溶性である溶媒にアリピプラゾールを溶解する段階、
b)該溶液をメタノールで希釈する段階、
c)結晶性メタノール溶媒和物を単離する段階、
d)該メタノール溶媒和物を約60℃未満の温度で乾燥させる段階、
を含む、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するための方法。
【請求項25】
溶媒が、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンから選択される、請求項21または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アリピプラゾールのメタノール中の懸濁液が、アリピプラゾールの用いられた型をアリピプラゾールメタノール溶媒和物に変換するために適した温度で撹拌されることを特徴とする、アリピプラゾールメタノール溶媒和物を調製するため方法。
【請求項27】
医薬として用いるための、アリピプラゾールの型Xまたはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物。
【請求項28】
統合失調症の治療のための医薬を調製するための、アリピプラゾールの型Xまたはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の使用。
【請求項29】
アリピプラゾールの型Xの有効量またはアリピプラゾールエタノール半溶媒和物の有効量および薬学的に許容できる担体を含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−531477(P2008−531477A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552585(P2007−552585)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000725
【国際公開番号】WO2006/079548
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】