説明

有機性廃棄物処理装置

【課題】有機性廃棄物を発酵分解処理する際に発生するガスを再利用すると共に、このガスの臭気を燃焼によって消臭する有機性廃棄物処理装置を提供する。
【解決手段】種火バーナーを併設した主バーナーからなる燃焼炉と、該燃焼炉に連設し外気を加熱する熱交換装置と、該加熱された外気を前記処理槽内に供給して循環させる循環機構と、前記発酵菌によって発酵分解処理される有機性廃棄物から発生するガスを含む空気を前記主バーナーに供給する燃焼用空気供給機構と、前記主バーナーの燃焼ガスを供給し前記処理槽を外装から加熱する加熱機構を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物などの処理装置であって、とくに好気性発酵菌を利用する有機性廃棄物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有機性廃棄物処理装置は、処理槽に生ゴミ等の有機性廃棄物を投入し、撹拌羽根を回転させることにより処理槽内の有機性廃棄物と発酵菌とを混ぜ合わせるとともに、撹拌羽根から処理槽内に温風を吹き出すことによって有機性廃棄物から水分を蒸発させ、有機性廃棄物に適度な温度と湿度を与えることにより、効果的な発酵を確保して有機性廃棄物の発酵分解を促進させるように構成されている。
【0003】
しかしながら、上記の有機性廃棄物処理装置では、処理機から送出される排気がそのまま外部に放出される構造となっており、排気の悪臭が外部にまき散らされるという問題があり、処理装置に付随して脱臭装置を設置する必要があった。
【0004】
そこで、処理槽に投入された被処理物に向けて温風を送出する温風発生器と、処理槽内の湿潤した温風を除湿するとともに、除湿された空気を筐体の外部に排出することなく、前記温風発生器に環流して温風発生器から再度処理槽に送出させる温風の循環送風手段とを設けた有機性廃棄物処理装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−239514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている有機性廃棄物処理装置は、処理槽と、温風発生器と、温風の循環送風手段とを密閉可能な筐体内に収容し、処理槽内で発生する臭気が外部に放出させない構造とするものであるが、外気と完全に遮断した状態で温風を循環させることは極めて困難なものであり、必然的に臭気が外部に漏れるものであり、脱臭のための脱臭装置が必要となるものであった。
【0007】
上記の問題点に鑑み本発明者は、有機性廃棄物を好気性発酵菌によって発酵分解処理する際に発生するガスを再利用すると共に、バーナーの燃焼によって脱臭を行なうことができる有機性廃棄物処理装置を提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明の有機性廃棄物処理装置は、有機性廃棄物を投入する処理槽と、種火バーナーを併設した主バーナーからなる燃焼炉と、該燃焼炉に連設し外気を加熱する熱交換装置と、該加熱された外気を前記処理槽内に供給して循環させる循環機構と、前記発酵菌によって発酵分解処理される有機性廃棄物から発生するガスを含む空気を前記主バーナーに供給する燃焼用空気供給機構と、前記主バーナーの燃焼ガスを供給し前記処理槽を外装から加熱する加熱機構を備えたことを第一の特徴とする。
【0009】
この構成において、主バーナーの燃料は通常の灯油、重油だけでなく天ぷら油、廃油などの代替燃料が使用され、また燃焼用空気として処理槽内で発生する臭気を含んだガスが使用され、種火バーナーによって着火される。
【0010】
そして、前記燃焼用空気送気機構は、排気ファンと三方弁とスクラバー装置を備え、前記主バーナーの点火及び消火によって燃焼用空気の送気経路を変更可能とすることを第二の特徴とする。
【0011】
さらに、前記スクラバー装置は、木炭等の多孔質吸着材を複数充填したメッシュ状の開口を有する筒状体と、該筒状体を複数連動して周方向に回動させる駆動機構と、前記筒状体の上方から洗浄水を供給するスプレー装置と、からなり、上記燃焼用空気を前記筒状体の下方から供給すると共に、前記スプレー装置による散水によって前記燃焼用空気の除塵及び脱臭を行なうことを第三の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る有機性廃棄物処理装置によれば、主バーナーの燃焼ガスを処理槽の外部加熱として利用することが可能であり、また熱交換装置によって加熱された外気は、処理槽内を循環して有機性廃棄物の発酵処理に使用され、また、処理槽内で発酵処理される有機性廃棄物から発生する臭気を含んだガスは、処理槽内で循環する加熱された外気と共に再度主バーナーの燃焼用空気として利用され、主バーナーの燃焼の際に脱臭できるという効果を有する。
【0013】
尚、主バーナーの燃料には灯油、重油だけでなく、天ぷら油、廃油などの代替燃料が使用できる。
【0014】
さらに、燃焼用空気の送気経路を三方弁によって変更することが可能であり、主バーナーの消火後であっても、燃焼用空気に含まれる臭気を含んだガスをスクラバーによって脱臭できるという効果を有する。
【0015】
しかも、スクラバー装置は、木炭等の多孔質吸着材を複数充填したメッシュ状の開口を有する筒状体と、該筒状体を複数連動して周方向に回動させる駆動機構と、前記筒状体の上方から洗浄水を供給するスプレー装置と、からなり、上記燃焼用空気を前記筒状体の下方から供給すると共に、前記スプレー装置による散水によって前記燃焼用空気の除塵及び脱臭を行なうことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る有機性廃棄物処理装置の一実施例を示す正面説明図である。
【図2】図1の平面説明図である。
【図3】図2のA−A線矢視説明図である。
【図4】図2のB−B線矢視説明図である。
【図5】スクラバー装置の説明図である。
【図6】筒状体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施例を示す図面を参照しながら説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の有機性廃棄物処理装置の一実施例を示す正面説明図、図2は図1の平面説明図、図3は図2のA−A線矢視説明図、図4は図2のB−B線矢視説明図、図5はスクラバー装置の説明図、図6は筒状体の説明図である。
【0018】
図1乃至図4に示すように、本発明の有機性廃棄物処理装置1は、有機性廃棄物を処理する処理槽2と、この処理槽2と接続して、有機性廃棄物の発酵に必要な熱を供給する熱交換装置3と、この熱交換装置3の熱源である燃焼炉4と、処理槽2内で発生するガスを含む空気を前記主バーナーに供給する燃焼用空気供給機構5と、から構成されている。
【0019】
処理槽2は、上部に投入口6を有し側面底部がU字型に形成された中空の箱体であり、有機性廃棄物、水分調整材及び発酵用菌体を投入口6から投入可能とする。処理槽2の長手方向には貫通軸7と、この貫通軸7を回動させる駆動モーター8が接続され、この貫通軸7に取付けられた攪拌用スクリュー(図示せず)の回動によって有機性廃棄物、水分調整材及び発酵用菌体を攪拌する。そして、後述する熱交換装置3によって加熱された外気を取り込んで有機性廃棄物、水分調整材及び発酵用菌体を所定の温度で加熱し発酵を促進する。
【0020】
処理槽2の底部には処理槽2の外装から加熱するジャケット部9が形成されており、後述する熱交換装置3に使用された熱風が循環して、処理槽2内に投入された有機性廃棄物、水分調整材及び発酵用菌体を所定の温度で加熱する。そして、発酵処理後、熟成された有機性廃棄物は有機肥料或いは飼料用原料として排出口10から排出される。ここで処理される有機性廃棄物としては、食品残渣、水産加工廃棄物、畜産し尿、汚泥、動物性残渣などが挙げられ、また水分調整材としては米糠、粉砕籾殻などが使用される。そして、発酵用菌体としては好気性菌体である内城菌などが使用される。
【0021】
熱交換装置3は、二重の筒状体からなり、燃焼炉4から中央筒状体3a内に送気される熱風と、外気取込みファン11によって吸引され外側筒状体3bと中央筒状体3aの間を通過する外気で熱交換を行い、中央筒状体3a内に送気され熱交換に使用された熱風は、上述したジャケット部9へ供給される。一方外側筒状体3bと中央筒状体3aの間を通過し、熱交換によって加熱された外気は、循環ブロア12によって吸引されて処理槽2内の上部に供給され、有機性廃棄物、水分調整材及び発酵用菌体を加熱する。
【0022】
燃焼炉4は、種火バーナー13と主バーナー14からなる燃焼装置を有し、熱交換装置3の下部に連通して取付けられており、処理槽2内で発生するガスを含む空気を、後述する燃焼用空気供給機構5によって供給して、燃料供給装置(図示せず)から供給される灯油などの燃料を燃焼させる。尚、種火バーナー13は主バーナー14の着火後消火される。また、燃料としては灯油以外でも、粘度10cp以下で熱量6000Kcal
の自燃性を有する天ぷら油、廃油などの代替燃料も利用可能である。
【0023】
燃焼用空気供給機構5は、排気ファン15と、三方弁16と、スクラバー装置17と、これらを接続する配管18とから構成されており、処理槽2及び燃焼炉4と連設する。そして処理槽2内で発酵処理される有機性廃棄物から発生する臭気を含んだガスは、処理槽内で循環する加熱された外気と共に排気ファン15によって吸引されて、三方弁16を介して燃焼炉4の主バーナー14に送気され、燃焼用空気として利用される。また、主バーナー14の燃焼が停止すると、三方弁16により主バーナー14への接続がスクラバー装置17へと切り替わり、臭気を含んだガスの粉塵と臭気を除去して大気へ放出させる。
【0024】
上記構成からなる本発明の有機性廃棄物処理装置1は、処理槽2内に投入される有機性廃棄物の発酵処理に必要な熱源として、熱交換装置3によって得られたクリーンな外気が使用される。また、処理槽2の外装に形成されたジャケット部9には、熱交換に使用された主バーナー14からの熱風が循環し、処理槽2全体を外部から加熱する。この処理槽2の内、外からの加熱によって、投入された有機性廃棄物の発酵処理を常に安定して行なうことができる。
【0025】
さらに、上記燃焼用空気供給機構5によって、処理槽2内で発酵処理される有機性廃棄物から発生する臭気を含んだガスは、処理槽内で循環する加熱された外気と共に主バーナー14の燃焼用空気として利用され、燃焼炉4内で高温の燃焼熱によって脱臭することができるため、外部に臭気が発散することがない。
【0026】
次に、図5及び図6に従って、本発明の有機性廃棄物処理装置1に使用するスクラバー装置17について説明する。
【0027】
図に示すように、スクラバー装置17は、中空の筐体からなる本体19の下部にガス流入口(図示せず)を設け、上部にガス排出口(図示せず)を形成し、本体19の中央には表面にメッシュ状に開口部が形成された複数の筒状体20取付けられ、駆動装置(図示せず)によって周方向に回動可能とされている。また本体上部にはスプレー装置が設置されており、筒状体20方向に散水する。
【0028】
筒状体20は、その内部に木炭21が複数充填されており、表面にメッシュ状の開口部を有し上記したガスの通過やスプレー装置による散水の通過を自在とする。そして側面一端側には上記駆動装置と連結する連結管22が設けられており、駆動装置の回動伝達軸23と連結して周方向に回動可能とされている。筒状体の材質としては、防錆性のステンレスが望ましいが、FRPなどの強化プラスチックであっても構わない。
【0029】
排気ファン14によって吸引される有機性廃棄物の発酵時に発生する臭気を含んだガスは、三方弁16を介してスクラバー装置17のガス流入口から本体19内に送気され、複数の筒状体20を通過しながらガス排出口から大気へ放出される。この際、複数の筒状体20は常に連動して周方向に回動しており、筒状体20内の木炭21とガスとの接触面積を変化させると共に、上部に設けられたスプレー装置からの散水によってガスに含まれる粉塵と臭気成分が取り除かれる。尚、落下した水は、一端受けタンクに溜められた後、再度ポンプによって散水装置へ送られて利用される。また、本実施例においては水を使用する例で説明したが、次亜塩素酸ソーダ溶液なども使用できる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の有機性廃棄物処理装置による有機性廃棄物の処理例を説明する。
(有機性廃棄物)
動物性残渣 1000Kg
野菜残渣 1000Kg
(水分調整材)
米ぬか、粉砕籾ガラ 650Kg
(発酵菌体)
内城菌 265g
(処理条件)
加熱時間 10〜13時間
冷却時間 2〜2.5時間
【0031】
(結果)
生成された、製品は水分量15%以下の粗粉であり、悪臭などの発生もなく肥料や飼料の原料として活用できた。
【0032】
以上、本発明の有機性廃棄物処理装置によれば、主バーナーの燃焼ガスを処理槽の外部加熱として利用し、また熱交換装置によって加熱された外気は、処理槽内を循環して有機性廃棄物の発酵処理に使用される。また、処理槽内で発酵処理される有機性廃棄物から発生する臭気を含んだガスは、処理槽内で循環する加熱された外気と共に再度主バーナーの燃焼用空気として利用され、主バーナーの燃焼の際に脱臭できる。さらに、燃焼用空気の送気経路を三方弁によって変更することが可能であり、主バーナーの消火後であっても、燃焼用空気に含まれる臭気を含んだガスをスクラバーによって脱臭できる。
【符号の説明】
【0033】
1 有機性廃棄物処理装置
2 処理槽
3 熱交換装置
3a 中央筒状体
3b 外側筒状体
4 燃焼炉
5 燃焼用空気供給機構
6 投入口
7 貫通軸
8 駆動モーター
9 ジャケット部
10 排出口
11 外気取込みファン
12 循環ブロア
13 種火バーナー
14 主バーナー
15 排気ファン
16 三方弁
17 スクラバー装置
18 配管
19 本体
20 筒状体
21 木炭
22 連結管
23 回動伝達軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に食品廃棄物などの有機性廃棄物と、水分調整材と、好気性発酵菌とを投入し、撹拌羽根により処理槽内で前記有機性廃棄物と、水分調整材と、好気性発酵菌を撹拌するとともに、前記発酵菌の作用により有機性廃棄物を発酵分解処理する有機廃棄物処理機であって、有機性廃棄物を投入する処理槽と、種火バーナーを併設した主バーナーからなる燃焼炉と、該燃焼炉に連設し外気を加熱する熱交換装置と、該加熱された外気を前記処理槽内に供給して循環させる循環機構と、前記発酵菌によって発酵分解処理される有機性廃棄物から発生するガスを含む空気を前記主バーナーに供給する燃焼用空気供給機構と、前記主バーナーの燃焼ガスを供給し前記処理槽を外装から加熱する加熱機構を備えたことを特徴とする有機廃棄物処理機。
【請求項2】
前記燃焼用空気送気機構は、排気ファンと三方弁とスクラバー装置を備え、前記主バーナーの点火及び消火によって燃焼用空気の送気経路を変更可能とすることを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記スクラバー装置は、木炭等の多孔質吸着材を複数充填したメッシュ状の開口を有する筒状体と、該筒状体を複数連動して周方向に回動させる駆動機構と、前記筒状体の上方から洗浄水を供給するスプレー装置と、からなり、前記燃焼用空気を前記筒状体の下方から供給すると共に、前記スプレー装置による散水によって前記燃焼用空気の除塵及び脱臭を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性廃棄物処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−17926(P2013−17926A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151618(P2011−151618)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(596015907)株式会社修電舎 (1)
【出願人】(592152303)株式会社太陽機械製作所 (3)
【Fターム(参考)】